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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第1回 文化・観光・産業部会

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2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第1回 文化・観光・産業部会

 日 時 : 平成10年10月26日(月) 午前10時30分~12時30分

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「ロイヤルホール」

 

出席者 :
市田ひろみ(服飾研究家)
川原 陸郎(京都みやこ信用金庫会長)
竹村 寿子(市民公募委員)
橋爪 紳也(伏見区基本計画策定懇談会座長,京都精華大学人文学部助教授)
古川 敏一(京都府中小企業団体中央会会長)
溝川 幸雄(京都府農業会議副会長)
三谷  章(市民公募委員)
向囿 好信(京都市ベンチャービジネスクラブ代表幹事)
村井 康彦(上京区基本計画策定懇談会座長,京都市歴史資料館館長) 森谷 尅久(東山区基本計画策定懇談会座長,武庫川女子大学生活環境学部教授)
◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授)
増田 優一(京都市副市長)

 

以上12名
◎…部会長     (50音順/敬称略)

 

1 開 会

 

 

2 部会長あいさつ
吉田部会長
 第1回文化・観光・産業部会を開会させていただく。第1回審議会の総会で会長からの指名により部会長を務めさせていただくことになった。よろしくご協力のほどお願いしたい。
 本日の部会は公開ということになっている。近年は地方公共団体の審議会などは公開するようになっているが,報道関係者の席を設けるとともに,市民の方々にも傍聴いただいているので,ご了承いただきたい。
 「文化・観光・産業」は京都市の中核をなす存在であり,この部会でまとめたものが今後の市政のお役に立てればと思う。
 本日は第1回でもあり,最初にお1人ずつ自己紹介をお願いしたい。

 


3 委員紹介
増田委員
 この3月に副市長に就任したばかりで,あまり京都の事情に明るくない。グランドビジョンの策定にとって大切な時期なので,よろしくお願いしたい。

 

森谷委員
 武庫川女子大に勤務しており,東山区の基本計画策定懇談会の座長でもある。基本構想の策定に向けて尽力したい。

 

村井康彦委員
 京都市の歴史資料館の館長をしているが,滋賀県立大学の地域文化学科で近江文化論,近江の地域論を研究している。上京区の懇談会のまとめ役も務めており,間を行ったり来たりする役割をさせていただきたい。

 

向囿委員
 京都市ベンチャービジネスクラブの代表幹事を務めている。この11月には新勧業館で「ものづくり元気フェア」を開催し,京都ベンチャー大賞の表彰式と記念講演会を行う。京都ベンチャークラブの事務局は京都市産業振興課にあり,会員数は80数社,協賛会員が15社ほどで,その中でベンチャービジネスについてのいろんな取組をしている。

 

三谷委員
 公募委員として参加している。右京区の奥嵯峨に住んでいる。京都生まれの京都育ちで,長岡京市や向日市に住んだこともあるが,基本的には京都人だと思っている。以前は塗料産業に携わっており,リタイア後は,接着剤業界の役員を務めた。京都大学の大学院では発酵生理学を勉強し,卒業時には農薬化学を専攻したので公害問題にも関心がある。
 また,アメリカンフットボールの関西協会の役員を約6年間務め,スポーツにも関心を持っており,この中では数少ない産業界の出身ということもあり,できるだけお役に立ちたい。

 

溝川委員
 農業関係ということで委員にさせていただいたのだと思う。現在京都府農業会議の副会長をしている。専業は京野菜の生産農家で,すぐき,賀茂なすなどをつくっている。

 

古川委員
 京都府中小企業団体中央会の会長であると同時に,京都商工会議所の中小企業担当の副会頭をしている。両者は京都の中小企業の繁栄のためという基本方針においてはいささかも隔たりはないのだが,問題によって意見の発表に多少表現の違いがある点についてご理解をいただきたい。

 

橋爪委員
 精華大学に勤務している。専門は建築学,都市計画だが,最近は観光学を勉強している。基本構想に関しては,国際コンペの専門審査委員やテレビ討論会の司会など,これまでにもいろいろかかわってきており,最後までなりゆきを見届けたいと考えている。

 

竹村委員
 京都で生まれ育ったただのおばちゃんで,何の肩書きもない。 21世紀は軍事大国,経済大国がつぶれ,人々が住民としてまちの中に連帯感を持ちながら,1人ひとりが創造性を生み出す,個性の輝く時代ではないかと思う。
 ずっと西陣に住んでいるが,この不況の西陣の状況には目に余るものがある。蓄積されている優れたデザインや技術を次の世代の若者たちに継承し,単なる和洋の統合を超えた世界に通用するデザインの発信地として京都が輝かないかと考えて市民公募委員に応募した。

 

川原委員
 今年から京都みやこ信金の会長をしている。よろしくお願いしたい。

 

市田委員
 文化・観光・産業という連動した3つのテーマに,伝統の分野から何か提案できればと考えている。

 

 

4 議 事
(1) 副部会長の指名
吉田部会長
 まず最初に副部会長の指名をさせていただく。部会長が欠席の場合の議事の進行や起草委員会への代理出席をお願いすることになるが,規定により部会長が指名することになっている。橋爪委員にお願いしたい。

 

(2) 基本構想の視点,枠組み,キーワード,理念等について
吉田部会長
 前回の全体会議に欠席した方もおられると思うので,事務局から資料の説明をお願いしたい。

 

事務局(人見政策企画室長)
 (「21世紀・京都のグランドビジョン」の策定についての説明)

 

吉田部会長
 優先度,メリハリをつけるということは,過去日本人が最も不得意とするところで,これをどう実現していくかは難しい問題だ。そのためにこういう部会を設けられたわけで,ぜひご協力をお願いしたい。
 今日は自由討論ということだが,まず市田委員から順に自由にご発言いただきたい。

 

市田委員
 一昨日講演で伊東に行った。熱海で降り,海岸に沿った温泉街を通って伊東に入ったが,海岸通のメインの中堅ホテルがほとんど倒産して,散々な状態だった。タクシーの運転手さんに聞くと,この2年くらいで全部つぶれたということだ。平成7年に来たときには賑わっていたのに,どうしてかと尋ねると,「熱海は自惚れていた,黙っていても客が来ると思っていたんだ」とおっしゃったので,どきっとした。私は「おこしやす京都委員会」の委員長をしているので,そういう精神的な心の文化のようなものの話をさせていただきたいと思う。
 「京都元気大賞」には全国から8千通の応募があったが,応募作品の80%が「寂しかったから京都に行った,そして元気が出た」というような,ヒーリングのまち京都,癒しのまち京都のイメージだった。ヒーリングだけでなく,若者が夢を持って暮らしていけるようなまちになればいいと思う。

 

川原委員
 別府の人と話す機会があったが,別府も客が来なくなっているそうで,「別府は天下の名湯であるということにあぐらをかいていた」と反省していた。このたび立命館がアジア太平洋大学を別府に開設しようとしているが,別府市が土地を提供し,すでに建設が始まっている。都市にとって大学は非常に大事だという話だ。
 京都市から内外の声や市民の声を聴いているという説明があったが,グランドビジョンという名前にふさわしい壮大なビジョンであっていいのではないか。また,少し目線を広く持って,狭いエリアにとどまらず奈良や滋賀などとの「旧首都連合」を考えてはどうか。
 一方,地方分権も重要な問題だと思う。戦後復興期には効率が優先され東京一極集中が便利だったが,近年地方分権を求める声が高まっている。広域行政という話も出ているが,少なくとも京滋奈で旧首都,旧みやこ連合を構想する中で新しいビジョンを見つけていくことが,歴史や文化を尊重することにもつながる。地方分権の趨勢を合わせて考えると,今までのパラダイムにこだわらない広域の構想があっていいのではないか。

 

竹村委員
 西陣織という産業を通して,各織屋がそれぞれデザインや技術を開発し,独自のカラーを出しているが,中国で量産し在庫がだぶついている状況を見ると,ニーズ調査を十分にしていないのではないか。企業は吸収合併して存続を図っているのに,和装産業は「のれん分け」で同業者が増えてどうしようもなくなっている。
 自分のところは自分でという「一国一城の主人」という意識があって,京都市の進めているデザインのデジタル・アーカイブ事業への協力もなかなか得られないということを聞く。そういった京都の気風を一概に悪いものとせず,逆にうまく独自性プラス連帯感を養うような方向に持っていければいいと思う。
 京都のまちはお年寄が多くなってきているが,やはり若者がまちにいないと活気がなくなる。ものづくりや伝統産業に関して京都には染織から映画まで,掘り起こせば若者に魅力あるものがたくさんある。マルチメディアとドッキングさせれば素晴らしいものが生まれるのではないか。

 

古川委員
 申し上げたいことは2点ある。1つは府市の問題で,中小企業対策等の現況を見ても,府市ができるだけ早く特別区のように一体化する必要がある。
 もう1つは中小企業の激変で,かつてなかった事態が起こっている。中小企業対策は国の経済政策の根本であるはずだが,この40年間ほとんど変化していない。国のやるべき中小企業対策を府市に求めることには無理があるが,府市としても何らかの対策を考えるべきではないか。伝統産業には力がなく,業界の自助努力にも限度がある。例えば丹後ちりめんの生産が低減しているが,それを悲観するだけでなく積極的にどうするかが問題だ。大きなグランドビジョンも必要だが,同時にその前提として細かいビジョンへの配慮が必要ではないか。

 

溝川委員
 農業からの視野で申し上げると,京都では都市化が進み周辺部は山裾まで開発されている。都心には御所を中心に緑の要素も若干あり,周辺部には公園のある地域もあるが,京都には非常に緑地空間が少ない。都市化の中でどう緑の空間を確保するかが課題になる。農地を公園化することは,環境問題や教育問題などの解決にもつながる。神戸の震災被害を見ても,これからのまちづくりには,より緑地が重要になっていくのではないか。

 

三谷委員
 スポーツの観点から文化について話してみたい。京都はスポーツにとっては非常に不便なまちだ。京都大学と立命館大学のゲームが大阪の長居競技場であったが,本来京都でやるべきものだ。京都であれだけの観客を収容できるのは西京極競技場しかないが,今は球技には使われていない。宝が池の球技場は不便な場所にあり,グランド設備も極めて悪い。
 独自性ということから考えても,もっといい場所に競技場があっていいのではないか。例えばセントルイスの競技場は市役所の前,都市の真ん中にあるが,そういうものが思い切って建てられるような雰囲気がないと,京都のスポーツは育っていかない。

 

向囿委員
 京都の21世紀を考えるうえで地方分権は大事な問題だが,地方分権の基本には地方財政がなければならない。財政をどうするか,産業をどう育成していくか。 1997年5月に政府が21世紀に伸びる15の産業分野を閣議決定した。医療・福祉,生活文化,情報通信,新製造技術,流通・物流,環境,ビジネス支援,海洋,バイオテクノロジー,都市環境整備,航空宇宙,新エネルギー・省エネルギー,人材,国際化,住宅の15分野で,市場の規模は現在の200兆円が2010年には510兆円,雇用面では現在の1060万人が2010年には1800万人になるという予測がされている。
 従来の産業だけではこれから厳しく,新規産業が必要となってくる。市場規模予測,雇用規模予測についても,ある程度京都としてどうするかという目標を決める必要がある。どういう企業や起業家を育成していくか,どういう場所でその産業を興すか。それを踏まえたうえで,京都の財政をどう確保していくかという観点から産業を育成していく必要がある。各論に入る前にそういう全体像をまず考えるべきだ。

 

村井康彦委員
 右肩上がりの成長は望めないという話があったが,空間的にも京都は三方を山に囲まれ開けているのは南だけというまちだ。都市として日本でいちばん熟成していると言えるが,熟成の後は実が落ちるだけで,絶えず新しい要素の注入を考える必要がある。
 そういう点では大学の流出は京都にとって痛い。新しい空気を持ち込む学生が出て行くということは,京都のまちが澱むいちばんの原因で,大学に関する規制の緩和を考えなければ京都は老化するばかりだ。
 個性ある選択をということだが,個性があることとまちを単純化することとは別だ。京都が生き延びてきたのは,複合文化の都市であったからで,様々な要素が混在し,相互に影響を与えたり絡み合ったりしていることが京都の生命力になっている。逆に,単純な構造の都市はその都市を成り立たせている要素がなくなると一挙に滅びる。例えば堺のまちは中世後期には京都を凌駕する経済力を持っていたが,江戸時代にはほとんど見るべきものがなくなってしまった。京都はその点経済的に貧乏でも足腰が強いところがある。
 北部は住宅,南部は生産…というようにまちを区分けするのもまちづくりの1つの考え方だが,北部にスポーツ施設が,中心部に公園がつくれないということではなく,その地域の人にとって快適な生活ができるということを基本に据えながら,絶えず複合的要素を持ったまちづくりを考えることが必要なのではないか。
 やはり広域化が必要だと思う。過疎地では都会に出た若者をUターンさせるための試みがことごとく失敗して,現在は交流人口を増やすための施設づくりやイベントを熱心にやっている。「県境サミット」と称して県境を越えた近隣市町村の連携も試みている。京都市と過疎地を同一レベルで論じることはできないが,盆地のまちをどうするかとともに,周辺地域とゆるやかな連合体をつくって様々なことを試みていくことを考える必要があるのではないか。

 

森谷委員
 京都は日本で最も成熟した都市だからこそ,21世紀は難しい。京都は高齢先進都市で,なかでも東山区は高齢化率が25%を超えており,観光資源も京都で最大というおもしろい地域だ。 21世紀に入って10年もすれば京都全体が東山区のような高齢先進都市になる。一般的には,高齢化は運動能力や記憶力が低下するというようにマイナスにとらえられがちだが,マイナスのイメージをプラスに変えていくことが京都市が21世紀に取り組む大きな課題の1つになると思う。
 現在東山区で70歳以上の人がどのくらい仕事をしているか調べているが,おそらく京都でいちばん多いと思う。東山区は21世紀の京都の1つの典型ではないかと思う。高齢者が仕事を続けられる産業,知識があるゆえに参加できる産業を考えていかなければ,京都はだめになる。そういう意味では観光には可能性がある。
 また,成熟都市は女性や子供にとってもいい都市だが,これからは若者のまちを考えなければならない。そういう面でバランスのいいまちを考える。若い人が都心部に帰ってこないと京都はだめになる。都心部でもいろいろ性質が異なる地域があるが,1つの方向付けが必要ではないか。
 いちばん恐ろしいのは精神の老化だ。成熟都市にとって意識改革が非常に大事になると思う。

 

増田委員
 まだ京都に来て半年にしかならないこともあり,客観的立場から発言したい。これまで市街地開発に携わってきて感じるのは,経済全体で供給量が過剰になっていることだ。市街地を開発するとき,今まで事務所を入れるかホテルを入れるかというようなまちづくりの内容がある程度イメージでき,それによってまちの再開発,活性化ができていたのだが,これからのまちの開発,再開発を考えたとき,新しい時代の需要が何か, 21世紀の市民が本当に欲するものが見えない。
 もう1つは心の中が空虚になっていて,未来に投資するベンチャー・スピリット,意欲そのものがなくなっている。不況になるとどうしてもその日暮らしになり将来のビジョンがなくなる。将来のビジョンがきちんと示せないから,今をがまんできない。グランドビジョンはそういった現在の閉塞状況を打開するために必要だと理解している。
 将来の姿をきちんと市民に示して,コンセンサスをまずつくる。その際,旧来型でない新しい需要に応え,豊かな市民生活を実現するようなものを盛り込むことが重要であって,総花的にしないというのは単一のものでイメージをつくるということでなく,もっと高い次元で市民の方向性を示すものができればということだ。
 文化が花開くためには人やものや金や情報といった相当な吸収力,土壌がなければならない。歴史的に見ても,経済的豊かさやゆとりがなければ文化は花開かない。また文化がなければ新しい産業が起きない。文化を考える場合にはそれを支える産業振興も考えなければならないし,同時に新しい文化やライフスタイルを創り出し新しい産業を興すというように,いろいろフィードバックしながら考えなければならないということだと思う。京都は千年以上「みやこ」が原動力だった。その後百年は「元みやこ」の力でやってきた。これからはその力もなくなり,どういった力で 150万都市を引っぱっていくのか,そういったビジョンづくりが必要になってくる。個々の話は各委員のお話のとおりで,それらがうまくまとめられ,共通の認識ができればいいと思う。

 

吉田部会長
 京都市民になったのは3年前でその前は茨木市に住んでいた。京都に来て,予想以上にパフォーマンスが良くなった。現在の住居は北山通に面しているので交通の便も環境も良く,曼殊院や詩仙堂,コンサートホールも近い。都市機能もあり,職場にも近い。都市というのは何でもすべてある,多様性があるということが重要だと思う。
 都市論では昔は機能的にゾーニングして,単純化してシステム化してやっていくというのが中心だったが,最近の都市開発はもっと経営的になっていて,都市を複雑系としてとらえ,いろんな要素が微妙に絡って,全体としてパフォーマンスを良くすることを考えなければならない。
 昨日ニューヨークの再生を取り上げたテレビ番組を見たが,非常におもしろかった。サンフランシスコもレポートされていて,全面的に民間活力を導入して都市再開発している。従来はそれぞれの機能を高めることによって効用を上げ,それによって生じる利害の調節をするのが都市経営だったが,それではできない。ではどうするかというのが難しくて,今までの理論がまちがっていることは証明できるが,それ以上のことはできない。
 グランドデザインやグランドビジョンは,昔のようにシステム的ではなく,むしろ構想や直感の世界になってくる。そこから逆に実行する手段を探してくるのが現在のやり方になるのではないか。その際重要になるのは今ある資源,観光や文化,教育,大学,伝統産業,先端産業等々をいかに生かしていくか,そういう仕組みを考える必要がある。過去のように補助金で誘導して済むわけではなく,社会資本をつくればそれで済むということではない。どうやってそういった潜在的な資源の力を引き出すかが課題だと思う。
 大学にいて直観的に感じる京都にないものは,私のゼミ生の就職先で,大学か役所しか就職先がなく,コアになるような産業にいる者は転勤で京都に来るというような状況だ。京都にはもっと知的な産業がたくさんできて,ゼミ生の半分が京都で就職できるようになれば,この部会の目的は達成されたと言えるのではないか。

 

橋爪副部会長
 20世紀的な都市のありようが端的に表れているのが大正から昭和初期にかけての都市計画で,グレイターキョウト,大京都市を宣言し,周辺市町村を合併し,より大きな土地の中に使い道まで決めながら将来的な京都の発展を描いてきた。面的に大きくして人をどんどん増やすというのが20世紀的大京都市構想だったのに対して, 21世紀はある程度人の手の入った市域で質的に違う使い方を考えていく,都市のマネージメント,維持管理が重要になってくる。今まで工業地帯だったところが21世紀にも工業地帯であるとは限らない。従来のように単に用途を塗り替えるというようなものではないだろう。
 ニューヨークでは,工業のため,流通のための場所をアーチストや若者の集まるまちや観光地に変えていくといったように,「遷移」していくことが地域の使い方が切り変わっていく中で大事ではないか。まちの特徴をとらえながら段階的に変化を促していく施策があっていい。まちのマネージメントの中にそういった新しい方法論が埋め込まれていくことがあっていいのではないか。
 従来の形の施策に加えて,領域を超えるようなプログラムを都市として考えられていいのではないか。この部会は「文化・観光・産業」となっているが,この「・」に意味があり,境目の領域に何か新しいアイデアがあるのではないかと思う。部会を横断し,領域の境目で新しいアイデアが生まれてくることが従来型でないという意味だと思う。もう1つ大事な点は,20世紀型の都市は地域のバランスをとってきた。東に何か施設ができれば西でも南でも同じような施設をつくり,市域全般に同じような施策をとるのが当然だった。しかし,これからは東山区と伏見区とで状況が変わってくる。 21世紀前半には伏見区の人口はそれほど極端に減らないだろう。各地域の個性や歴史を踏まえて,地域ごとの特徴を生かした将来像をきちんと描いていくことが大事だ。それぞれ性格が違うが魅力的な地域が連合していることが京都全体の個性であり,パリのような世界的な都市も地域に特徴がある。東京も政治家とアパレル関係の人では中心と考えるエリアが違う。京都においてそういうことが生まれてくるかどうか。学生にとって中心的なエリアはどこで,ある産業の人にとって中心的なエリアはどこというように,魅力的な特徴をつくっていくことが非常に大事だと思う。

 

吉田部会長
 基本構想の視点,枠組み,キーワード,理念等という視点から言い忘れたことがあれば発言していただきたい。

 

竹村委員
 21世紀には国際化が大きな問題になる。東南アジアの人々がいろいろな目的を持ってたくさん日本に入ってこられると思う。京都にもそれを受け入れられるような設備や各地域に根ざす施策をしていくべきだ。高齢化,少子化の時代には,いかに国際化で融合するかも大事な視点だと思う。

 

吉田部会長
 初めてということでとりあえず皆さんの意見をお話しいただき,委員間の意思疎通の第一歩ということで始めさせていただいた。今日の議論は起草委員会に報告させていただくことになる。
 次回以降の部会では,1983年に策定された基本構想がどのように評価でき, 21世紀の課題はどうかということで,テーマ別に議論を進めさせていただきたい。テーマ別というと縦割りになってしまってよくないが,とりあえず議論の切り口ということで,文化,観光,産業,高度情報化などを議論していきたい。次回は文化について議論をお願いすることになると思う。それについて事務局から何かあればお願いしたい。

 

事務局(前葉政策企画室参事)
 (資料「市民アンケート調査報告書」「市民の皆さんからの提案・意見集」「審議会委員応募小論文意見一覧」「市政の各分野の構想・計画等について」「主要指標に見る京都市の位置(大都市比較)」のうち,文化・観光・産業にかかわる部分について説明)

 

吉田部会長
 では次回は文化についてご議論いただくということで,本日は閉会とさせていただく。

 

 

5 閉会

 

 

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