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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第7回 環境・市民生活部会

ページ番号35853

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第7回 環境・市民生活部会

日 時 : 平成11年7月6日(火) 午前10時~12時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲の間」

 

議 事 : 京都市基本構想(第1次案)について

 

出席者 : 

浅岡 美恵(気候ネットワーク代表) 

石田 一美(京都市東山消防団団長) 

片山戈一郎(日本労働組合総連合会京都府連合会会長) 

笹谷 康之(西京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学理工学部助教授) 

田尾 雅夫(京都大学大学院経済学研究科教授)

○高月  紘(京都大学環境保全センター教授) 

田端 泰子(山科区基本計画策定懇談会座長,京都橘女子大学文学部教授) 

土岐 憲三(京都大学工学部長)

◎内藤 正明(京都大学大学院工学研究科教授) 

仲尾  宏(京都芸術短期大学造形芸術学科教授) 

J・A・T・D・にしゃんた(市民公募委員) 

野口 寿長(京都市体育振興会連合会副会長) 

村井 信夫(各区市政協力委員連絡協議会代表者会議幹事) 

増田 優一(京都市副市長)                                

 

以上14名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長

 

 

1 開会

内藤正明部会長

  第7回環境・市民生活部会を開催させていただく。

 

 

2 議事

○ 京都市基本構想(第1次案)について

内藤正明部会長

  本日は基本構想の第1次案についてご意見をいただく。最初に作成の経緯や内容について説明し,その後議論に入りたい。

  最初に,ご欠席の服部委員からご意見をいただいているのでご紹介する。「この基本構想は京都人の思いを受けとめた今後の基本となるものであり,すべての市民に内容を伝達する手段や構想実現に向けての機構など同時並行的に具体的な構想を立ててほしい」というご意見だ。

  第1次案は起草委員会で各部会での基本構想に関する意見を一とおり見たうえで作成された。第1次案に十分盛り込まれていない点,また,まだご指摘いただいていない観点から修文すべき点があればご指摘いただきたい。どこをどう直すか,どこにどう付け加えるか,具体的なご意見をいただきたい。各委員にはそれぞれのご意見があると思うが,部会全体としての集約を考えたい。

  また,これまでのご意見の中で基本計画で議題となるべきテーマについては計画論点整理メモとして各委員にお送りしており,次の部会以降でご審議いただくことになっている。

  なお,できるだけ広く情報公開しながら意思決定していくという観点から,第1次案を要約した素案を『市民しんぶん』で市民に公開し,パブリックコメントを募集している。パブリックコメントと部会での議論を踏まえて起草委員会で第2次案を作成し,次の部会で再度ご審議いただくことになる。

  それでは,要点を説明したい。全体は3章構成になっている。第1章で将来像を描き,第2章で過去から現在までの京都市の歴史を踏まえ,市民やまちづくりのあり方を示している。第3章ではこれからどういう都市をつくっていくかというまちづくりのしくみに力を入れて書かれている。

  前文では,京都の構想の歴史,現在の情勢,それを踏まえての今回の基本構想の定義が書かれている。第1章は,第1節で現在の世界が歴史的にどういう状況にあるか,文明論に立ち返りながら現在の都市文明のあり方を解説している。それから,今の社会情勢全般や地方分権の流れなどを意識しながら,どういう問題があり,それがどういう流れになっていくかが記述されている。第2節ではそういう状況を踏まえて,京都市民のこれまでのアクティビティに言及し,歴史・文化の蓄積のもとに新しいものを率先してつくり上げてきた特徴が書かれている。第3節では京都市民は長い歴史の中でどういう「得意わざ」を育んできたかがまとめられており,そういう特性が21世紀の都市のあり方の基本として役に立つのではないかというスタンスで書かれている。第4節では若干具体的なところに踏み込んでいる。ここまでは過去の歴史的レビューに位置づけられる。

  第2章の第1節では大きく3つの目標が掲げられ,第2節では3つの柱を立てている。いくつか大事なキーワードが散りばめられていることがお分かりいただけると思う。第3節は,京都の産業の振興の方向性についてのヒントとして,京都の「得意わざ」を生かした長寿命で付加価値の高いものづくり,高度の情報技術がこれからの産業の方向性にマッチしているのではないかということや新しい基盤整備について記述されている。第4節では精神的なものも含めた歴史遺産をこれからの創造にどう生かしていくかが書かれている。特に,京都の「得意わざ」をここで改めて「めきき」の文化など5つのキーワードで京都の文化の特徴として再認識しようということが強調されている。

  これまで当部会では第3章に関する議論が多かったが,特に第3章について当部会のご意見を多くいただきたいという事務局からの要請がある。

  第3章では,最初に市民参加によりどう京都市の行政を進めていくのかが書かれている。参加の形態についてはいろいろな考え方があり,議会制民主主義制度の下,具体的にどういう市民参加の形が望ましいかについては,起草委員会でも議論があった。これは本日ご議論いただく1つのポイントではないかと思う。「統一的な国家的施策が優先される時代から地域の個性や独自性を重視する時代へと時代が大きく変わるなかで」,また,地方分権の流れの中でどういう市民参加の形があるのか,参加には責任が伴うということも含めてご議論いただきたい。

  第2節は,より具体的に市政参加のしくみをどうつくるかということで,情報化の進展による情報公開が前提となること,あらゆる側面で不可欠になっているNPOをはじめとする市民グループの自発的行動等をどう支援していくか,そのしくみをどうつくるかについても言及されている。また,「外国人や長期滞在者も含めたまちに住む人の意見」というように,市民の範囲を広げることが意図されている。

  第3節は以上のような背景を踏まえて,市民参加の先進都市として京都がどういうことをしていけばいいかということで,市民によるネットワークづくりやルールづくり,行政が媒介役として積極的にかかわっていくこと,産官学民のかかわりあいをどう考えるかといったことが書かれている。「縦割り行政の改善と区レベルへの分権の工夫が不可欠である」という部分には,当部会での意見が反映されている。

  それでは,前文から順にお気づきの点があればコメントをいただきたい。

 

浅岡委員

  後の記述ともかかわってくるが,前文の最後の部分をどう認識するか。「2025年を目標年次とする25年間の京都の市政,ならびに市民のくらしとまちづくりの基本方針を描く」とあるが,2025年の時点のまちの姿を思い浮かべながら書くのか,そこに至るまでのまちづくりを書くのか。どちらかだけか,両方なのか。2025年のまちの姿を到達点として考え,そこに至る道筋も考えていこうということだと思うので,前文はこれでいいと思うが,それに見合った形で後の本文も書かなければならない。

 

内藤正明部会長

  2025年の到達点だけでなく,そこに至るきちんとしたシナリオも描かれていることを明示したほうがいいのかもしれない。問題はそういうことが本当に書かれているかどうかだが,それについては後ほどご議論いただきたい。

  次に第1章についてご意見をいただきたい。どういう都市を目指すのかは人によっていろいろなご意見があると思う。背景となる日本社会の変動の中に京都市が位置づけられるわけだが,そのあたりの認識はこれで正しいのか。「大量生産・大量消費・大量廃棄型の都市文明のあり方に対して…」の部分は当部会の提言を踏まえて書かれている。「人権,健康,福祉,安全,環境など」の部分でも,当部会のサブテーマがキーワードとして重視されている。「一都市が単独では解決することが困難で,国や他の都市などと協力しあいながら取り組む必要のあるものが多い」という記述があるが,一方で分権や個性の尊重といった方向も書かれており,この2つのバランスは難しい。

 

浅岡委員

  ここに書かれていることには賛成だが,後半で地方行政の中で何ができるかという観点を越えて,日本全体,世界全体がどうあるべきかということ,われわれがその先頭に立とうという姿勢を強く打ち出していくことが大事だ。

  3章立ての構成が分かりにくい。第1章は後の基本方針を導き出すための目標であり,本文では次世代に対する責任を果たす地域づくりをするということ,市域にかかわらず「人類史的ともいえる諸課題に取り組む基本姿勢をあきらかにする」というように新しい姿勢をとることを宣言しているが,要約では「難しい」ということで終わっており,問題だ。国内的な少子化,高齢化等も考えるべき大事な課題ではあるが,現時点でこれからどの程度できるかを考えるのか,将来はこうしようと考えて,そこにどう到達しようかと考えるのかで,構想全体の基本的スタンスが変わってくる。最初に積極的姿勢を共有できればいいと思う。

  第2節の「別次元」という言い方が気になる。これまでと違う枠組づくりをするときに京都の蓄積が別の提案をしていることになるという指摘自体はいいと思う。第4節に第3章の参加につながる記述を入れておいたほうがいい。文化に関する表現にとどまっており,それも第2節,第3節につながった書き方になっているが,第3章第1節につなげた形で第4節に市民参加的な言葉を加えてはどうか。

  第1章を単独で完結させ,目指すものを明示してはどうか。第1章は目指すものを記述すると位置づけられているのか,別の観点から書かれているのかが現状では分からない。

 

内藤正明部会長

  都市の姿として完結した形で示そうとしているが,第2章以降にも「めざす姿」の部分が記述されていないわけではない。はっきりと第1章で京都の将来の姿を描き,第2章で京都がどういう位置づけにあるか,第3章でそれに向かって具体的にどういうプロセスでどういうことをやっていくのかを書くというように,章ごとにメリハリをつけるのは難しい。第1章で目指すべき都市の姿を明確に書き切るべきだというご意見だと思う。

 

笹谷委員

  前回案に比べてたいへん良くなっており,平易な言葉でここまで書かれていることは評価したい。2025年の具体像がどこまで見えるかということでは,われわれ全体のイメージがこの程度なのかと思う。

  第1章は「都市の姿」となっているが,第2章の第1節には「まちの姿」という表現があり,どちらで何を言うのかよく分からない。背景としての歴史的風土や自然についてはある程度書かれているが,循環型社会をつくるバックボーンとしての自然として,固有名詞として「三山」だけでなく「鴨川」を出すべきかどうかとか,「緑」という言葉はあるが,水の循環や大気の循環,大地,山林や動物まで含めたものが京都の自然であり,そういうところを書き込んでほしい。これは第1章になるのか,第2章第2節の「安全と自然環境」の部分に書き込むべきなのか分からない。全体の構成が分かりにくい。

  再生可能エネルギーで地域が自立していくということも含め,エネルギーについてもひとこと論じてほしい。環境の立場から,どの辺りにそういう趣旨が入るのか。

  個別の話をすれば,第1章の第1節に「地域社会の多様な個性」とあるが,「個性」より「固有性」のほうがいいのではないか。第1章はこのままでもいいが,第3章については「個性」を「固有性」に直していただきたい。「国や他の都市などと協力しあいながら」の部分では,「世界」や「都市地域」まで含めてはどうか。また,第4節で「産業,福祉,教育,観光,行政サービス…」と並んでいる部分に「環境」も入れてほしい。25年先の具体像をどう共有すればいいのかは難しい。

  イメージをいきなり描くのは無理なので,第1章では歴史をさかのぼり,その中のいい部分や変わってきた部分を回想しながら将来を描いているのだと思うが,それと第2章第1節との関係がよく分からない。第1章のビジョンと第3章のそれをつくっていくプロセスの間にあるのが第2章ということになる。

 

内藤正明部会長

  第2章では「適正生産と循環経済への転換」や「新しい都市交通システムの構築」など,具体的な方策が出ている。第3章はそれを実現していくためのソフトなしくみと理解してはどうか。

 

土岐委員

  第1章は浅岡委員のおっしゃった意味での目標だと思う。第2章がそれに至るまでの具体的姿,途中経過の姿であり,第3章はそれを達成するための手立て,手段ではないか。そういう意味では第3章が手軽過ぎないか。市民と行政の話だけで終わっている。第1章,第2章でいろんなことが書かれているが,それを達成するために市民だけでできることもあり,NGOができることもあり,行政だけでできる市民の口出しすべきでないこともあるかもしれない。あるいは,市と国とがタイアップしてやることもあるかもしれない。もっと広い範囲をカバーすべきであり,そうでないとこの目標は達成できない。そういう観点で見ると第3章が限定的ではないかという印象を持った。

 

浅岡委員

  章の位置づけについては,どの方向をとるのかこの案でははっきりしていない。土岐委員がおっしゃるように章の切り分けをしているわけではないのではないか。どの方向を目指すのか,どういう章分けをするかについてもこの場で議論すべきだ。

  どの章に分けるかは別にして,大きな流れを第1章の冒頭でとらえ,京都の人材的な特質もその続きで書かれている。それを前提にして2025年を目標に何を描くかというとき,第2章で書かれていることはあまりにも従来型に過ぎる。冒頭で書かれたことに対応するもの,どこを柱とするかという観点が必要ではないか。

  1つは,今の世代の人権や幸福を少子化,高齢化といった社会状況の中でどう保障していくかも重要な課題ではあるが,次世代に受け継ぐべき産業や環境やまちづくりなど,長い時間で対応しなければならない課題により優先的に取り組むということが最初にあるほうがいいのではないか。それを考えつつ,現在直面しており,今後25年間直面し続けるであろう少子化や高齢化等の課題にどういう姿勢で臨むのかということで,一人一人の生かされるまちをどうつくるのかはもちろん大事だ。

  もう1つは,2025年の社会像として3つくらい柱を立てるとすれば,参加型,共生型の社会をつくっているのだということが第2章に出てくる必要があるのではないか。産業の観点の中にくらしの記述がかなり入っているが,このように切り分けると説明しにくい。第3章ではここに書かれていることだけを書くのも1つの案で,もっと大きく目標達成のためのさまざまなルートを書くのも1つの案であり,どちらかを選択すればいい。参加型,共生型の社会をつくっていくということは,そこだけにとどまらず,コンテンツとして第2章の中にあってしかるべき課題だと思う。

 

内藤正明部会長

  章立てのメリハリから内容,項目のあり方まで密接にからんでご議論があるが,これまでのご意見を整理すると次の3つに分けられる。章の位置づけ,メリハリをどうするかということ,今後どう修正すべきか,それに応じて内容の記述の入れ替えや付け加えるべき必要があるのではないかということ,細かいキーワードが抜けているというご指摘もあった。大きく3つに分けてこれからの議論を進めたい。

 

仲尾委員

  第1章は努力の跡が見える文章だと思う。第4節の最後は「わたしたち京都市民は」と非常にはっきり書かれているが,できるだけ具体的な言葉で,分かりやすいキーワードをたくさん入れたほうがいい。この部分も,もはや「価値観を模索しながら」ではないのではないか。冒頭の部分で触れられているように,環境や自然との共存・共生,人と人との共存・共生,そういう価値観をつくらなければ人類に未来はないという結論は出ている。本当の人間らしい社会を京都につくっていくような価値観として明記したほうが,より市民の自覚が深まるのではないか。また,「安らぎと魅力に満ちた」というだけでは休息と観光というように誤解される。同時に「一人一人の生きがいが実現できるまち」ということがキーワードとして大事ではないか。どんな仕事,どんな年齢,どんな階層であろうと,一人一人の人生の生きがいが京都で実現できるという到達点を生み出すまちであってほしい。

  第2章第1節の(1)に「外国人や長期滞在者を含め」とあるが,「外国人」は京都市の国際化推進大綱では「外国籍市民」とされている。市民という側面を出さないと,外国人というと一定のイメージを描きがちなので,ここも「外国籍市民」という言葉に改めるべきだ。また「長期滞在者」とは留学生や単身赴任の人を意味しているのか,よく分からない。外国籍市民については,いろいろな文化背景を持った人々が京都に住んでおり,その文化を互いに尊重しなければならないという意味で,「多文化の共生」をキーワードとして入れてほしい。

  第3章では,例えば冒頭で「市政の主人公は市民である」という基本的なことをもう少しはっきり打ち出すべきではないか。今は市民と行政との協力や市長と議会の権能といった分かり切ったことの叙述になっている。

 

内藤正明部会長

  「主役は市民」というスタンスは十分あり,起草委員会では逆に行政は何もしなくていいのか,行政がこう変わらなければならないということを書く場所がないという議論もあった。それが文章の中にきちんと表現できていないかもしれない。

 

石田委員

  第2章第2節の「安全と環境保全」は,普通火災,交通事故をテーマとした記述になっている。京都には近年大地震もなく,先の震災の被害もほとんどなかったが,市内には袋路や木造家屋が多く,大震災が起きた場合たいへんな被害を被る。地震などの大規模災害からくらしを守るにはどうするか,くらしの中の知恵や工夫によりどう環境を守るか,防災公園の整備やライフライン防災機能の強化などの基盤整備についても具体的に文章の中に盛り込んでいただきたい。

 

内藤正明部会長

  具体的なものは基本計画になるが,この数行の記述で災害について十分書かれているとは言えない。

 

野口委員

  この構想は市民がこれからの25年の長期にわたり京都を活性化する原動力となると思う。このとおり実行できればすばらしい。京都を活性化するためには官民が一体となってやっていかなければ難しい。策定から実行まで25年間の長期にわたる構想であり,25年前と比較して非常にテンポの早い世の中になっているので,思い切った施策を考えていただきたい。

  第2章第2節の「健康と福祉」では医療と福祉サービスのことしか書かれていないが,健康や福祉はもっと幅広いものだ。健康ということではその基礎としてのスポーツが抜けており,スポーツ施設の充実を図る文章を入れていただきたい。福祉では社会福祉協議会と市とのタイアップを盛り込んでいただきたい。

  先のヘリ視察時に山裾が荒れていることを痛感した。産業や大学の流出が問題になっているが,産業や大学の発展の余地としての山裾の開発も考えていただきたい。

 

内藤正明部会長

  ここでは病気になったときの医療サービスとリハビリ的な話は書かれているが,スポーツも含め病気にならないための予防的なしくみの大事さは書かれていない。

 

にしゃんた委員

  第1章第1節で「一都市が単独で解決することが困難」とあるが,他の都市がやるなら動くというように,こういう書き方をされると人権等について京都市が自発的に動く気がないようにも読める。

  「わたしたち京都市民」という言葉が使われているが,「外国人や長期滞在者」は市民ではないのか。外国人や長期滞在者を市民として扱うことが意識改革につながると思う。

  第1章第3節で,日本の文化の形成に差別を受けてきた人々が貢献しているという歴史的背景を書いてはどうか。このことは現在でも暗黙の了解とされているが,25年先には余計あやふやになっているのではないかと思う。日本の文化がどう形成されたかという経緯を書くことも,差別や人権保護につながるのではないか。

  第2章第1節の(1)には高齢者や障害者のことが書かれているが,マイノリティという意味では,ここに外国人を入れてはどうか。

 

内藤正明部会長

  ここでは「すべてのひと」ということが言いたいので,必ずしも弱者をピックアップしているわけではない。入れるとすれば,「外国人であろうが日本国籍であろうが」ということが対で入ってもいいかもしれない。

  「京都だけではできない」という表現が,後ろ向きにとられるということがあるかもしれないというご指摘があったことを起草委員会に伝えたい。

 

田端委員

  第1章の表題と中身が一致していない。第1章では京都がこれまで目指し,これからも目指す姿が過去に重点をおいて書かれており,表題を変えればいいのではないか。第2章では今現在の問題点が取り上げられ,第3章ではそれをどう解決して2025年を迎えるかということが書かれている。3章立ての構成はいいが,表題と中身にそぐわない点がある。

  2点目は,第2章第1節の(2)で,相互扶助や福祉の問題で主役になっているのは女性であり,「この分野で主役となっている女性への施策の遅れをとりもどす工夫」という表現を最後のパラグラフに入れていただければ,女性への取組も必要だという姿勢が明らかになるのではないか。

  第2章第3節に「三山」という表現があるが,東山と北山と愛宕山を指しているのか。西は丘陵なので西ヶ丘と言っていた歴史があり,この表現はそぐわない気がする。

  第3章は行政レベルでの自主性をもっと考えてほしい。東京では区単位でISOを取得しているところがあり,京都市内でもそういう動きがある。市民が自主的にやらなければならないということだけでなく,行政側の姿勢も提案すべきだ。

 

村井信夫委員

  文案は,これだけのまとめをしていただきありがたい。21世紀は「環境と人権の世紀」であると言われる。現段階の文案でも第2章第2節で「人権の尊重」など書かれているが,その前の第1章第1節の「人権,健康,福祉,安全,環境など,現在の市民生活にかかわる問題」について「さまざまな知恵を絞り出していかなければならない」として受けてある。このあたり環境と人権ということが何か薄いような気がする。

 

浅岡委員

  第1章はこれまでの取組,第2章は今考えること,第3章はこれからどうしようかということが書いてあるという印象を持たれるようでは困る。よく読めば書いてあるが,2025年を目指すのだという特徴が十分伝わっていない。第1章では目指すものが書かれているということが誰にも分かるように文章を修正すべきだ。第4節に第2,3節がそのままつながってるからそういう印象を与えるので,第4節をそれらしく書き直せばいい。

  要約版の冒頭にあるように中身が位置づけられていない。われわれの議論がまだ尽くされていないことを反映しているのだと思うが,この構想を2025年までに色あせるようなものにはしたくない。村井委員のおっしゃったように,第2章に具体的柱として,もっとメリハリをきかせることが大事ではないか。第2章のキーワードの切り分け方は,第1節,第2節が繰り返しになっていることも含めて考え直す必要がある。第1節から第4節まであわせて,共通項として3本くらい柱を選んでいただきたい。1つは「人権」ではないか。「人が生かし生かされる」ということが性別や年代,国籍を含めて,健康に生きられるということも含めてまとめる要素になる。

  第2章第2節の「安全と環境保全」の部分に書かれている環境の書き方では,バスに信号の優先権を加えるということくらいしか出てこない。第3節の「産業の振興」のところには都市計画まで入っている。このように分けることに問題がある。両方含めて将来の世代に引き継げるような環境であり産業であるとするのがふさわしいのではないか。もう1つは,その社会は共生の社会だということが,参加とのからみでも柱になるのではないか。共通する部分でもっと柱がないかと思う。

  また,「人が美しい」というところで「満ち足りた顔をしている」という解説を加えるのは誤解を招く。住む人がみんな満ち足りた顔をしたまちなど考えられない。多くの犠牲をともなうわけで,それをどう解決していくかが社会の問題だ。

 

土岐委員

  第2章第2節の「安全と環境保全」を丁寧に読むと,最初の4行は第1章に書かれるべき目標を書いてあるにすぎない。「たとえば」ということで自動車交通のことだけが書かれている。第2章はもう少し具体的な,あるべき姿があってしかるべきだ。そういう観点から,最後のパラグラフの「そのために」の前に,災害や事故,環境汚染の原因を除くための方策や,万一そういう事態が起きた場合どうするか,それを京都の地勢やまちの姿と組み合わせて早急に充実する必要があるといったことを書かなければならない。危機管理の話だが,日本人はあまりにも今日は安全だから明日も安全だろうという期待にすがって生きているようで心配だ。万一のときにどうするのかという観点がないと,単なる目標設定だけで終わってしまう。

 

内藤正明部会長

  全体の分量についての条件はあるのか。例えば「安全と環境保全」のところでは自動車交通しか例示するスペース的余裕がないのか。ここではおっしゃるように危機管理のような包括的な表現のほうがいい。

 

土岐委員

  「たとえば」以下の部分はいらない。一方で,「健康と福祉」のところではかなり具体的なことが書かれているが,こういう文章の場合レベルをそろえる必要があると思う。ある部分は細かくある部分は包括的では違和感がある。(2)のレベルから見ると(3)は目標だけに終わっているように感じられる。

 

事務局(高木総合企画局長)

  特に字数制限はないが,市民の皆さんに一読していただくのに手ごろな長さである必要があり,そういう点で長さについて配慮はされていると思う。

 

内藤正明部会長

  その中で言葉を選ぶとすれば,バランスとレベルをどうするかということだ。

 

高月副部会長

  当部会で議論してきたことはかなり書かれているが,今の状態で次の世紀を迎えるのは難しいという共通認識はあると思うので,「持続可能な発展」,「循環型社会」というキーワードがあってもいいのではないか。

  文章について気になるところは,第1章第2節の「現代の消費社会の価値観とは異なったものの感じ方や考え方が…」の部分は現状を表現するにとどまっているが,これを生かさなければならない。そういう意味では,第3節で「節度のある別の生き方を示す用意のある…」とあるが,「用意のある」というのはどういう意味なのか。もう節度のある別の生き方をしなければならない。京都の「得意わざ」に「しまつ」があるが,無駄をはぶいた洗練された生き方であり,それをキーワードとして入れると「節度のある生き方」と結びついてくるのではないか。それと関連して,京都の伝統ある工芸等の中には使い捨て文化との決別という視点で過去のくらしを振り返り生かしていけるところがある。それを市民文化の成熟のあたりに書いていただいてはどうか。循環型社会,持続可能な社会を目指すというときに,「節度のある」生き方が必要になる。今は節度がない状態になっていると思うので,この言葉を入れていただきたい。

  第3章では,循環型社会の中で市民や行政がどう取り組んでいくかということが書かれてもいいのではないか。市民自治に関する記述はかなり入っていると思う。

 

内藤正明部会長

  「成長管理」のようなことが産業のところに入らなければならないのかもしれない。第1次案では持続可能性や循環は表に見えない書き方がされている。

 

仲尾委員

  第3章で何が言われているのかは整理しないとよく分からないが,市民参加とは行政への異議申し立て権の保障だと思う。多様な形で自分のまちのことについて考え意見を述べ,それが合意を得ていくというプロセスを大事にしなければならない。例えば行政区レベルでの市民集会の取組を制度的に保障していくことが必要だ。住民投票についてはいろんなご意見があると思うが,神戸や徳島の例を見ても,行政も議会ももっと謙虚になっていただきたい。住民投票を文言としてこの中で書くことにはいろいろご意見があると思うが,多様な市民の発言権を保障する場をつくっていく,それに行政も議会も耳を傾けるということがうたわれるべきではないか。

 

内藤正明部会長

  起草委員会では異議申し立て権や住民投票についても議論されたが,あえてそれを明記せず,こういう表現にしてある。そのあたりの議論を事務局から紹介してもらいたい。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  第3章第2節の「政策立案にあたって行政は」のところに市民の異議申し立て権,いろいろな考えを表明していただき,訊(き)いていく手法が書かれている。住民投票を現時点でどう書くかという起草委員会での議論の結果として「ときに応じて市民が直接に代替案を提示できるしくみ」という表現がされている。

 

内藤正明部会長

  「住民投票」と明示せずこういう表現になっているが,明示すべきだというご意見だと思う。再度起草委員会で検討したい。

 

笹谷委員

  田端委員からご指摘のあった「三山」については歴史的事実も含めて調べていただきたい。

  第2章第1節の(1)では,子どもたちが学ぶことばかりでなく,社会的活動に参加することまで含めて,子どもの意見も市政にとって大切だということを書いてほしい。第3節に「産業の業務機能を集積させた市街地」とあるが,「業務機能」という表現は適切でない。最近ではSOHOなどが出てきて,産業の形態そのものが変わりつつある。ここでは職住接近のことを書いてはどうか。

  第3章では,問題に気づき,問題解決を試みようとする市民が手をあげれば問題が解決でき,そのためのNPOや市民グループが容易につくれ,活動できるということが書かれなければならない。分権の記述はこれでは不十分だ。区に分権してほしい。区だけでなく自治連合会,町内会レベルに下ろす場合や,NPOに下ろす場合もある。今の市町村は中途半端だと言われるが,広域自治体でやらなければならないこともある。行政の持つ機能を明確に分けて,どの機能を市が担い,どの機能を区,NPO,自治連合会等が担うかを考えなければならない。

  また,ここでは市役所そのものについて述べられていない。現状はひどい縦割りなので,ラインだけでなくスタッフが動けるようにすべきだ。今の行政の中だけで解決できる問題もあると思う。行政は人,金,もの,情報を持っているが,一人ひとりの職員がタコつぼ的情報しか持たないので,総合的な施策ができない。他部局に対しても非協力的だ。

  第3節に「縦割り行政の改善と区レベルへのさらなる分権への工夫」と書かれているが,もっと具体的に書かなければならないし,半分は実験しながらやらなければならないのではないか。どの機能をどこが分担するかを考えるためには,いろんな場所で同時に動きながら,その動きを反映しないと書き切れない。いろんな行政計画があり,例えば環境局では新エネルギービジョンを市民委員を入れたりパートナーシップ組織と連携しながらつくっていくことになる。京のアジェンダ21フォーラムは1つの試金石で,市民活動の支援センターが多数出てきたとき,より本当のパートナーシップ組織が生まれることを期待したい。それが見えるように書かなければならないのではないか。

 

内藤正明部会長

  広域でやるべきこと,市レベル,区レベルに下ろすべきこと,NPOというように,主役が誰かというあたりは整理が必要かもしれない。

 

土岐委員

  第3章は第2章までの話を実現する手立てが書かれていると理解しているが,その観点から見るとあまりにも市民の視点に限定され過ぎているのではないか。第2章に書かれている産業の振興や環境保全にしても,市民と市だけでなく,産業界との連携も必要だ。市民文化の成熟も文化的な諸団体との連携なくして達成できるとは思えない。「市民が主人公」だということは第1節の「わたしたち市民は市政の主体である」という記述だけで十分だ。もう少しほかの要因もあってしかるべきではないか。

 

浅岡委員

  「協力」という言葉をどういう意味で使っているかをもっと明確にしていただきたい。ここで「協力」と「政策形成への参加」を含めて「参加」と言うと誤解を招く。基本的トーンが「協力」になっている。

  もう1点は「わたしたちは」「行政は」「市民は」と主語がランダムに出てくるが,市民,市,議会といった主語とそれぞれの役割が分かるように書かなければならない。

  各セクターのパートナーシップによって政策形成し,遂行もしていくということを前面に出すべきだ。「考える必要がある」というトーンで書かれており,構想の準備段階のように感じられる。明確な方向が冒頭に掲げられるべきだ。それと関連して,議会あるいは市長との関係が書かれた部分は誤解を招く。議会制民主主義という表現は地方政治の場合は必ずしも適切ではない。国は議院内閣制をとっているが,地方の場合は代表制はとっていても議院内閣制ではなく,直接請求権を市民に与えている。代表制の政治の問題点は皆が承知しており,「市会と市長がそれぞれの機能をはたすことにより,市民の望む市政が着実に進められることになる」のであればこんなことを書く必要はない。なぜこう書かなければならないのか。

  積極的な言葉もあるが,行きつもどりつするので分かりにくい。産業界や様々な人を含めて協力ではなくパートナーシップ,協働を進めていくということが後ろのほうに申し訳程度に書かれているが,このことが前面に来るべきだ。また,市長や議会との関係を書くのであれば,議会はこういう役割をし,市長はこういう役割をするということを書くべきだ。

 

内藤正明部会長

  最後に,特に言っておきたいことがあればうかがいたい。

 

笹谷委員

  基本構想を一般市民だけでなく子どもたちに見てもらえるようにしてほしい。誰にどう見てもらうか,未来につなげるのだということを書いてほしい。

 

内藤正明部会長

  本日言い残したことがあれば,メモにして事務局にお送りいただきたい。ご意見の取扱いについては私にご一任いただきたい。

  本日の議論を部会として整理し,起草委員会に報告することになるが,起草委員会で各部会の意見を踏まえて取りまとめた第2次案を,次回の部会で再度ご審議いただくことになる。また,基本計画の論点を整理したものを各委員にお送りしているが,それについてもご意見をうかがいたい。次回は8月下旬から9月上旬に開催の予定となっている。

  それでは,本日はこれで閉会したい。

 

 

3 閉 会

 

 

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