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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第9回 都市整備・交通部会

ページ番号35866

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第9回 都市整備・交通部会

日 時 : 平成12年5月24日(水) 午前10時~12時

 

場 所 : 都ホテル「愛宕の間」

 

議 事 :

(1) テーマ別討論「都市空間のあり方」について     

(2) その他

 

出席者 :

◎飯田 恭敬(京都大学大学院工学研究科教授)

○北村 隆一(京都大学大学院工学研究科教授) 

清水 三雄(異業種交流コスモクラブ会長) 

西村  毅(京都青年会議所特別顧問) 

野間光輪子(京町家再生研究会幹事) 

長谷川和子((株)京都放送取締役メディア企画推進局長) 

宗田 好史(中京区基本計画策定懇談会座長,京都府立大学人間環境学部助教授) 

山田 浩之(下京区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,大阪商業大学大学院地域政策学研究科長)                                

 

以上8名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長     

 

 

1 開 会

飯田部会長

  ただいまから,第9回都市整備・交通部会を開催させていただく。

  ――(部会審議の進め方,資料の構成について再説明)――

 

 

2 議事 

(1) テーマ別討論「都市空間のあり方」について

飯田部会長

  前回は総合的に都市空間のあり方について討論を行った。京都の持っている資産を生かした特色あるまちづくりについてさまざまなご意見をいただいた。本日は前回資料のほかに「交通」に関する資料を加えて,引き続き「都市空間のあり方」についてご意見をいただきたい。

  それでは,京都市から資料の説明をしていただく。なお,資料のうち「交通事業」に関する交通局からの説明及びご議論は次回にお願いしたい。

 

都市計画局(西局長),建設局(野嶋局長)

  ――(資料「基本計画検討資料「都市空間のあり方」「都市施設整備のあり方」(交通)」に基づき説明)――

 

北村隆一副部会長

  参考資料の表3「TDM紹介事例」について,供給サイドで公共交通に触れられていないのは問題ではないか。需要管理の目的は自動車の需要をなるべく減らし,他の交通手段への転換がやりやすいまちや交通施設をつくるところにあり,例えば乗換え時に初乗り運賃を払わなくていいようにするなどいろいろなことが言われている。

  どういう交通体系をつくるかは,どういうまちにしたいかという長期ビジョンに支えられなければならない。今の説明からは需要追随型の施設整備を続けていくような印象を受ける。混雑解消という形で交通施設の整備を進めると,悪循環を加速する結果になりかねない。

  「市民と行政とのパートナーシップ」の説明で「公共事業を円滑に進めていくには」という言い方がされていたが,市民参加は公共事業を円滑に進めるためのものではない。公共事業をするかどうかから決めていくのが市民参加であり,住民対策のために市民参加をするかのように受け取られる表現は改めるべきだ。

  資料B-2「都市構造・交通体系調査研究報告書」は歩くことが楽しくなるようなまちにしようということで,交通整備の基本的考え方や理念をうまくまとめたものになっていると思う。この理念を取り入れた施設整備計画にしてほしい。資料のように箇条書きで事業を列記されるとさまざまな施策がいったいどっちを向いているのかが見えてこないが,「歩くまち・京都」が交通計画・施設整備に方向性を与えるものではないか。

 

飯田部会長

  ご指摘の参考資料(表3)は京都市ではなく交通工学研究会作成のもので,道路研究者主体の研究会なので公共交通が抜けているのは仕方がない。交通については議論が出尽くしている感があるが,改めてご意見をいただきたい。

 

宗田委員

  北村副部会長から公共事業を円滑に進めるために市民参加が必要というスタンスでいいのかというご指摘があったが,今回のグランドビジョンは市民が主体となっているところに特徴があるわけで,「市民と行政とのパートナーシップ」が政策項目の3番目のテーマでいいのか。都市整備のための公共事業,交通のための公共事業を円滑に進めるために市民とパートナーシップを組むという言い方ではいけない。

  TDMは総量の規制で,その場合市民や観光客の移動をどう減らすか,移動の手段をどう自動車から代替させるかが課題になる。市民が主体ということでは,市民がどう交通や自動車,都市生活やライフスタイルを考えるかが非常に大きな問題になる。自動車交通を考える場合でも,市民の中でも都心の住民や事業者,郊外からの通勤・通学者,観光客の中にも修学旅行生と一般観光客,新幹線利用者と近郊から車で来る人というように多様な市民が想定できるので,どの種類の市民とどういうパートナーシップを組んでいくかを具体的に構築していかないと,市民にとって歩きやすいまちを実現するためのメニューは用意できない。どのように都心の交通を規制し,道路をつくり変えれば市民が車から公共交通に乗り換えてくれるかという議論は,事業の円滑な運営を図るためのパートナーシップという発想がある限り出てこない。市民にどう働きかけるかという視点が必要だ。

  京都市ではいろいろな交通需要があるが,通勤者が周辺公共交通機関の駅でキス&ライドを積極的に行ったり,立命館大学のように教員も含めて自動車での通勤・通学を制限している大学もある。嵐山のような観光地で観光客の交通量を抑制する取組もある。市民が主体となったこのような取組をどう支援するかがパートナーシップの本来の考え方であるはずだ。

  御池通のシンボルロード事業によって御池通は非常にきれいになったが,あの通りを京都市のシンボルとするためには,高名なアーチストの彫刻を置くだけでいいのか。市民が主役となって御池通をシンボルロードとして使うための演出が必要で,それは地元の事業者たちがどんな店舗を展開し,どういう活動をしていくかにかかわる。歩道や街灯はきれいに整備されているが,通りの両側に市民が憩えるような店舗や広場ができてこないのは,パートナーシップの観点からすると事業の進め方に問題があったのではないか。事業を円滑に行うための地域での話し合いは行われたかもしれないが,本当に御池通をシンボルとしてにぎわいのある都心をつくっていくための工夫が足りなかったのではないか。確かに交通施策について技術的部分での議論はし尽くされているが,「市民が主役」という観点からはまだまだ議論すべき課題があるのではないか。

 

山田委員

  「都市構造・交通体系調査研究報告書」の中で京都の交通のあり方についての方向は出ており,ビジョンとしてこれ以上のものは出せないのではないかと思う。具体的にどう実現していくのかという点で,本日の資料はいろいろな意味で物足りない。ヨーロッパの学者に「日本という国には美しい道をつくろうという思想がない」と言われたが,日本は私的空間には非常に優れた工夫があるが,公の場所を美しくするという面がたいへん弱く,都市も農村も美しい道をつくる努力をしてこなかった。京都には美しい道がなければならないが,美しいということは同時に歩いて楽しく,環境的にも快適ということであり,そういう方向でもう少し具体的な方法を考えなければならない。京都の場合は電線や電柱の地中化にもっと全力を上げて取り組むべきではないか。

  自転車が安全に走れる道についても具体的に考えなければならない。道を良くするにしても,建物を動かすことは簡単にはできないので,今ある道を利用することになる。身体障害者が移動しやすい道,街路樹をもっと植える,ボンエルフを採用するといった方向で積極的に考えなければならない。バリアフリーやユニバーサルデザインについては専門家のご意見を聴く必要があるが,京都市がそこまで考えようとしているのかどうか。

  自動車をどう使うかに論点を移すと,京都のようなまちは自動車の需要管理をもっと真剣に考えなければならない。最近ロードプライシングについて東京都や鎌倉などで実施に向けた研究がされているが,京都でも少なくとも実施できるかどうかの研究は始めてはどうか。

  国道1号線が京都の真中を通っているが,将来的には京滋バイパスを無料にして国道1号線にするというような思い切ったことを考えてもいいのではないか。京大が一部西に移転するが,京都のまち全体の活性化ということでは東西の交通を良くすることも考えなければならない。文化都市,文教都市としての京都を生かしていくうえでも,そういうことを真剣に考えなければならない。

 

野間委員

  交通は都市空間の中の移動手段であり,混雑や道路をどうするかも重要だが,市民がどういう住み方をするのか,どういう観光をしてもらうのか,経済的にどういう活動で食べていくのかといったことが総合されて初めて交通手段がどうあるべきかが浮かび上がってくるのではないか。

  高齢社会に入れば,すべてにおいてシンプルな生活が求められるようになると思う。まちなかに人が住める環境があれば,移動もシンプルになる。戦前の木造住宅のストックを住まいとしてどう使っていくのか。まちなかに住めるようにするために法律をどうしなければならないのか。どういう住み方や観光を考えるかによって交通は違ってくる。

  具体的な話では,パリのように地下道があってまちなかを走らずに都心から高速道路に出られればシンプルで使いやすいのではないか。観光についても歩いてまわれる観光をどう考えるか。シンプルな暮らし,凝縮や簡素は日本文化の特質であり京都の都市特性にも合っているので,そういう大きなくくりの中で交通問題を考えていってはどうか。

 

西村委員

  前回も言ったように,住んでいる人がいて企業がいて観光で来る人がいる。それぞれの視点や便利さがあって,それぞれが値打ちを感じる部分がある。それが今回も見えない。住民としては道が安全で便利であればいい。車より歩くほうが便利で,自転車でちょっと行けば買物ができる環境が整っていれば,自然に歩くことや自転車を選択する。企業は物流や営業のために移動しているが,できるだけ効率良く移動できる道が確保されていればその道を通る。観光客にしても車でなければ観光地に行けないから車を選択しているわけで,歩いたり自転車で行って楽しめる環境が整っていればそちらを選ぶはずだ。それぞれの立場の人がすべてOKで無理をせず選べる方法を取らないと,渋滞は解消せず,いい都市空間もできない。

  これらの人たちすべてとのパートナーシップを考えるべきだ。観光客は単純平均して月当たり3百万人,多いときには5,6百万人来ているわけで,観光客の交通を考えないと住民や企業の交通も考えられない。そのあたりをもう少し具体的に考えていくべきだ。

 

清水委員

  ここ数年で京都市および周辺部の交通渋滞は非常に緩和したと思う。それぞれが移動するときにどの交通手段を選択するかは,そのときどきで選択基準があるわけだが,基本的には時間とコスト,安全か快適かを考えて交通手段を選ぶ。今後の交通問題を検討するとき,ハード面だけでなく,ソフト面での公共交通機関の利用の仕方が非常に重要だと思う。地下鉄には5千億円もの資本投下をし,さらに毎年5百億円の固定費がかかるが,公共交通の場合は採算の効率を考えるより,市民にフルに利用してもらうことを考えなければならない。

  地下鉄と市バスを乗り継いで便利だったという体験があれば,その後はずっとそれを使う。使い慣れていないからなかなか利用できないのであって,一度使い方のノウハウをマスターすれば抵抗なく地下鉄やバスを使うようになる。地下鉄や市バスの利用効率を上げる方法として,採算を度外視して有効利用を図る意味で,企業や家庭に無記名の無料パスを配布し,無料で市バスや地下鉄を利用できるようにしてはどうか。使うことで各自がそれぞれ便利さを構築していくはずで,それが交通渋滞の緩和,排気ガスや交通事故の減少につながる。ハードで金を使って都市を改造することも必要だが,これまで莫大な投資をしてきた今ある公共交通機関をもっと市民に利用してもらうためのソフト,ノウハウを開発する手助けを行政はしなければならないのではないか。

 

長谷川委員

  テレビやラジオの番組で交通についての討論会をすると,市民から寄せられるFAXや電話が他のテーマと比較して圧倒的に多い。市民は交通に非常に関心がある。番組の中でも,市バスのルートや駐輪場についての意見や提案が寄せられるが,その背景には市民が市の施策を認知していないということがある。言い換えると,説明責任がなされていない,情報公開ができていないのではないか。これからの京都の都市づくりや交通のあり方について市民とのパートナーシップで方向性を見出していこうとするのであれば,情報を公開し,透明性のある議論をしていく必要がある。

  「保全・再生・創造を基本とするまちづくり」は京都市としてコンセンサスを得られている方向性だと思うが,例えば(1)キ「多彩な交流を支える交通基盤のあり方」のところで南部開発と連動した広域道路網が,(2)ウで南部を中心とした道路づくりが挙がっているが,市民から見るとこれらをどう関連付けて考えればいいのか分かりにくい。都市の方向性を明確にしたうえで,交通基盤の整備をうたうほうが分かりやすい。国の国土軸を見て,南部が活性化することで北部の保全・再生地域の地盤沈下がさらに進んでいくことを危惧する声がある。南部開発によって北部がどのような形で再生創造していくのかという方向性を分かりやすく示し,そのために歩いて暮らせるまちをどうつくるかという議論を展開し,さらにインフラとしてどのような整備をしていくのかについて情報提供してほしい。

 

飯田部会長

  「都市構造・交通体系調査研究報告書」で示されている方向はこれでいいと思う。自動車だけ,公共交通だけ,自転車だけ,歩行者だけというのでなく,あらゆる利用交通手段が有機的につながることが望ましい。21世紀の交通システムは,そのときの交通状況と目的に応じて最適な交通手段が利用できる形が望ましいが,そのためのシステムづくりをソフト面,ハード面を含めてどう考えていくか。京都の自動車交通量と道路面積を見ると,大阪や神戸と比べて自動車1台当たりの道路面積が小さいにもかかわらず,自動車の保有台数は伸びている。大阪や神戸より京都の道路交通状況は悪く,自動車交通がこれ以上増えると危機的な状況だ。他方で公共交通の整備,地下鉄の延伸も今の制度や財政事情を考えると難しい。今の制度を思い切って変えることまで含めて考えなければならない。

  清水委員のご意見にあった利用者からの公共交通利用のしくみも非常に大事だ。どちらかと言えばこれまで公共交通はサービスする側,つくる側,運営する側の論理でつくられてきたため,利用者にとって使いやすいサービスが考えられていない。例えば京都で地下鉄と市バスを乗り継ぐと,バス1本で行けるルートより高くつく。京都市の公共交通でありながら,地下鉄とバスで料金体系が全く違うというのも,役所の論理としては分かるが,利用者の論理としては理解できない。ロンドンは地下鉄もバスも同じ切符で乗れるが,思い切ってゾーン制にすることも考えられる。今のままで公共交通のサービスを上げ,利用者を増やすことは難しい。武蔵野や金沢では100円バスが非常に成功しているが,サービスのしくみや形態を変えれば利用してもらえる。今までの制度の枠内で考えるのでなく,新しい制度の提案も含めて考えるべきだ。

  自動車交通にはいろいろな問題があるが,道路は重要な都市基盤の一つであり,必要量は確保しなければならない。災害に強い交通環境の実現という理念が入っているが,道路にランクがあって,都市間の交通は都市間の道路を,地域内の交通は地域内の幹線道路というように,きちんと階層化されていれば,突発事故が起こっても対応できる。日本の道路は小さな道路からいきなり都市幹線に取りついているところがあって,きちんとした階層構造がない。公共交通も含めそうしたインフラをきちんとつくっていく必要がある。

  交通需要管理については,時間や路線の規制が主体だったが,神戸の震災後,災害時にはエリアを対象とした規制ができるようになった。平常時でもこういったシステムを取り入れるべきだ。また,ITSで車の誘導などが可能になったが,渋滞が緩和されるとそれによって新しい誘発需要が出てくる。誘発需要をいかに防ぐかは難しい問題で,地区の事情に合わせてメリハリをつけ,車が入れない地区を指定するなど,規制と誘導をうまく組み合わせ,公共交通の利用促進策と合わせて車の需要を管理しなければならない。財源や制度の問題まで含めたご意見をいただきたい。

 

北村隆一副部会長

  京都市だけで制度を変えていくのは非常に難しい。受益者負担の原則を無視した形で公共交通の料金体系を設定できないかというご提案があった。今まで公共交通にネガティブなイメージを持っていた人が,体験することでイメージを変え,公共交通の利用が習慣に変わっていくことは実際にある。公共交通にゾーン制を取り入れ,乗り換えが安くなれば利用者は増える。解決策はいろいろ考えられるが,実際にやろうとするとできない。2つの問題があって,1つは制度の問題だ。例えば,木屋町コミュニティ道路を本当に気持ちの良い歩きやすい道にするためには,こういう道路で事故が起きた場合の運転者や歩行者の責任は普通の道路と違うといった法整備が必要で,そうでないと本当の意味でのコミュニティ道路にはならない。公共交通の料金でもまちの美化でも,罰則に裏付けられたエンフォースされるような法整備が必要だ。そういう意味で法律,制度を変えていかなければならない。

  もう1つは市民間の合意形成をどうするかという問題だ。結果として出てくる物理的なものだけでなく,互いに意見を述べ合うプロセスそのものが重要であり,市民参加は何ができたかという軸で評価するだけでなく,その過程でどういう対話があったのかを見て評価する必要がある。交通問題に対する解決策は掃いて棄てるほどあるが,それが実現しないのは,法律制度の壁,合意形成の難しさがあるからで,そこに焦点を当てて議論すべきではないか。

 

山田委員

  財源の制約,制度の制約は大きい。特に役所はそれが先にあって,その枠内で考える傾向がある。財源や制度を考慮せず,最初はあるべき方向について議論し,その後でそれを実現するにはどうすればいいかを議論するという2段階のステップで考えていくべきだ。最初から制約を意識すると何もできない。場合によっては制度を変えることも不可能ではないので,京都から制度を変えていかなければならない。財源にしても,本当に市民が必要であれば,そちらに予算をまわすことは不可能ではない。具体化する段階では妥協も必要になるし,制度を変える努力も必要になる。京都は古いまちなので,道路空間も限定されており,それを急激に変えることはできない。それをどう利用するか,市民,観光客,企業の間で利用の配分をどう考えていくか。今までに手段としてはいろんなアイデアが出ているので,そのうちどれが望ましいかを議論すべきだ。ロードプライシングなどについては積極的に研究してみてはどうか。

 

飯田部会長

  ITSなどの新しい技術を,次の段階では地域課題に適用しようという流れがある。福祉の問題や降雪時の交通管理などさまざまな地域課題に対応できるが,京都の場合は観光交通にこういう技術を使うことを考えるべきだ。20年前にはマイカー観光拒否宣言はスローガンだけで,管理する方法がなかったが,ITSの技術を使えば実際に管理が可能になる。嵐山などでは,観光シーズンの交通量集中時には予約した車しか来ることができない駐車場があると聞いている。前回観光客5千万人は多過ぎるというご意見があったが,車以外の交通手段で来れば問題はない。新しい技術の有効利用も考えてはどうか。

 

宗田委員

  増加する1千万人の観光客が東山や嵐山に行くと問題だが,京都市の観光振興基本計画で言っているように,都市型観光で京都駅周辺や地下鉄,私鉄沿線の都心に行くようにすれば,そこで吸収できる。「都市構造・交通体系調査研究報告書」は平成9年に議論した結果をまとめたもので,その後ITSやTDMの研究会や休日交通の研究会も行われている。平成9年の段階ではまだ「歩くまち・京都」は突飛な発想に見えたが,その後河原町通や三条通,姉小路通など都心の何カ所かで「歩くまち・京都」に向けた市民団体の具体的取組が始まっており,今出川通に路面電車を復活させようという市民運動,自転車推進のグループ活動など,この2年ほどで「歩くまち・京都」のコンセンサスは徐々に広がってきた。資料「道路の整備に関するプログラム」の中にも人が主役ということに始まり,最後ににぎわいのあるまちづくりを支援するという項目が挙がっているが,歩行者を中心にした道路整備が中心市街地活性化に非常に効果があるということも,全国の事例から分かってきている。交通をゾーン指定して規制するときステークホルダーとなる地元商店街の人たちが,むしろ進んで自動車交通を規制したいと言い出す状況も出てきている。そういう市民の動きを的確に捉え,行政の取組だけでなく市民の取組事例も集め,市民合意に向けて行政がどう支援するかの戦略を考えなければならない。道路交通の規制や公共交通の利用促進も含めて,公共交通の制度や財源面に関する市民側のニーズをとらえるような研究会が必要ではないか。

 

清水委員

  地下鉄や市バスの料金の設定はどういう基準でされているのか。

 

都市計画局(交通局併任)(田中担当部長)

  運賃は,全体の経費と旅客数の予測数値などに基づき,コストとしての「原価」を算出し,運輸省において査定され,認可を経て決定されている。地下鉄の財政については,膨大な建設費の負担を長期にわたって返済するという特徴的なしくみがあり,運賃制度としては,対キロ区間制をとっている。一方,バスの運賃については,都市部において広く「均一制」がとられるなどの特色がある。

  なお,運賃設定の考え方は,他都市においても,ほぼ同様の考え方によって行われている。

 

清水委員

  原価に基づく料金設定ではなく,市民サービスという意味から,例えば地下鉄を全部無料にした場合,あるいは今の3分の1の料金にした場合,どういうメリット,デメリットがあるかというシミュレーションをしていただきたい。想像できないようなメリットが出てくるのではないか。自動車以外で都心に来れば,歩けと言われなくても歩く。そういう意味で,地下鉄の利用効率を上げることが京都市そのものの活性化につながり,他の経費の削減にもつながると思う。

 

飯田部会長

  そういうことも含めて研究会を設けて検討すべきではないか。JRは民営化して約10年になるが,値上げはしないしサービスも良くなり,乗客数も増えている。公共交通はサービスを良くし,値段を安くすれば利用者は確実に増える。

 

清水委員

  地下鉄をもっと利用してもらうには料金を安くすることがいちばん効果的だと思う。地下鉄で市内に入る人が増えると,そこから乗り継ぐバスの利用者が増えるという別のプラス面が出てくる。全市民,事業者が基本的に地下鉄を使って移動するところまで持っていってほしい。そうすれば地下鉄が有効に生かされる。

 

西村委員

  ノーマイカーデーは車のありがたさを痛感する一日だと言われる。今のご意見とは逆に,現在の京都は車を使わないとどんなに不便なまちかを検証する必要があるのではないか。公共交通を利用すればどれだけ便利か,使う側が工夫するしかけが必要で,公共交通の良さを知らしめるしかけをこの部会から発信していくべきだ。使ってみて楽しかった,便利だったという実感が伴なえば,利用者も増える。今の地下鉄は駅の出口が目的地と離れたところにあるなど,使う側の発想がない。

  市民はお客様ではなく,株主だと考えてほしい。市民は税金を払っていて,いやでも出ていけないのだから,株主に対しサービスを返す必要があると考えないと,市民参加もお互いの責任感も生まれない。

 

野間委員

  東京の地下鉄では大勢の人が複雑な路線でスムーズに運ばれている。いくつもの会社が乗り入れていて,乗り継ぎも非常にスムーズだ。東京の人が京都に引っ越してくると,習慣なので地下鉄やバスを利用する。

  市バスを利用しない理由には,小銭の手持ちがあるかとか両替が面倒だといったことがある。月2千円でどの路線でも乗れる定期券のようなものがあれば,もっと気楽に地下鉄や市バスが利用できる。

 

飯田部会長

  東京の地下鉄の場合は,利用者の利便性を考えて相互乗り入れが進んでいる。料金を安くするのは公共交通を利用してもらうインセンティブの一つだが,利用者からすれば,待たずに乗れるシステムでなければならない。今は10本のバスが行った後でやっと目的のバスに乗れるという状況だが,来たバスにすぐ乗れ,途中で乗り換え料金なしに乗り換えられるようにすればいい。30分以内であれば1回の乗り換えは無料にするといったことは,技術的にはいくらでも可能だ。バスの系統も多過ぎるが,シンプルにして乗り換えを自由にすれば台数も合理化できる。そういう思い切った発想の転換で利用者を増やし,利便性を高めてほしい。

 

宗田委員

  地下鉄の投資効果,回収をどう図るかについては,ブラジルのクリティバのように,例えば地下鉄利用を増やすような土地利用を考えてはどうか。地下鉄による移動が便利になるように,住宅も公共機関も商業地域も業務地域も沿線上に集約することが,市民の移動量を少なくし,交通の総容量を抑制することにつながる。京都市の場合も東西軸,南北軸の上に公共施設を集約して配置する配慮が必要だ。まちがこうなっているから公共交通機関をこう通すというのでなく,公共交通機関にまちが合わせるくらいの発想の転換ができればいい。

  イタリアのまちでは定期券がタバコ屋で売っているが,日本でもコンビニで回数券や定期券が買えるようにすれば売上は伸びるかもしれない。

 

北村隆一副部会長

  カリフォルニアでクリスマスの買物に行ったとき,ショッピングセンター間を車で移動しなければならないので非常に不便に感じた。京都の都心に住んでいると,徒歩でデパートや商店街をまわれる。歩いたり公共交通を利用することで多彩な体験が便利にできる構造を京都は持っている。それが中心市街地の衰退等で崩れ始めているところに問題があるが,自動車に依存しない都市構造,交通体系の利便性を全面的に生かせる方向を探るべきだ。

 

飯田部会長

  イギリスのアーバンビレッジは都心の特定地域には車を入れない方式だ。ポートランドやストラスブルグなども都心に車が乗り入れできないようにしたことで公共交通の利用が増え,商業も活性化した。ただ外国の場合は市長に大きな権限がある。

 

北村隆一副部会長

  市民は株主だという話があったが,一度交通関連部局の株主総会をしてはどうか。料金改定に際しても運輸省におうかがいをたてる前に,まず市民におうかがいをたてるべきではないか。

 

清水委員

  京都市では空室率が上がってきている。草津や京田辺市では学生向けマンションがたいへんな勢いで増えているが,地下鉄を無料にすれば学生は京都の都心で生活すると思う。地下鉄の料金を下げることによる効果は想像できないほどあるのではないか。待たずに乗れるためには便を増やさなければならないが,安くすることで利用者が増えれば便も増える。まず利用者を増やすにはどうすべきかというところから,京都の交通体系全体を見直していく必要がある。

 

飯田部会長

  建設費と管理費を利用者料金でカバーしなければならない独立採算性が前提になっているので,今の制度のもとでは利用者の料金を安くすることは難しい。外国では運営費まで補助するシステムになっている。利用者料金だけで運営するという考え方を変えなければならない。高齢者向けの無料パスは福祉の予算から出ているが,通学割引は教育の経費から出してもらうとか,環境対策費として公共交通に金をつぎ込むことも考えられる。それは財政のしくみになってくるが,公共交通が都市を維持するために必要な機能であれば,利用者以外からの金をつぎ込むことも考えていいのではないか。

 

山田委員

  地下鉄の料金を下げることについてはこれまでにも実験が行われているが,料金を下げただけではあまり利用者は増えない。地下鉄からバスに乗り継ぎやすくする,低床バスを増やすなど,利用しやすくする努力を並行してやらないと利用者は増えない。低床バスは京都市だけで導入しようとすると非常に高くつくので,全国に呼びかけて他都市と一緒に導入すれば安くできる。料金を下げるだけでなく利用しやすくしないと,車の便利さに勝てない。土地利用も含め総合的に考えなければならない。

  また,今のままで料金を安くすると,結局その負担は市民にかかってくる。税金を何に使うのが望ましいかという議論もしなければならない。公共交通料金を安くするためにはクリアしなければならない課題がたくさんある。世界的動向としては,今までは公共交通は赤字でもいいという考え方があったが,民営化が進み,公共交通の料金を上げる方向に変わってきている。税金の使い方という観点からも考えなければならない。

  今の制度を前提にする必要はなく,思い切った提案をしていただき,場合によっては制度を変えることも積極的に考えるべきだ。

 

清水委員

  料金を下げれば税金の負担率が上がるということだが,今の税制ではそれぞれの市民が地下鉄と市バスのために税金を払っているという意識がないので,料金を安くすると同時に地下鉄市バスのための目的税をつくってはどうか。前払いで料金を払っているという意識を持たせれば,乗らないと損だということになって利用者は増えるのではないか。そういったことも含めて,いろいろなシミュレーションをしてみる必要がある。

 

山田委員

  パリは目的税方式をとっている。

 

野間委員

  都心で暮らす快適さや利便性,観光客の都心への誘致など,本日のご意見から交通も含めて京都の都市生活の快適さは何かということが見えてくる。都市生活の利便性や快適さを再認識するところからスタートするべきではないか。

 

(2) その他

飯田部会長

  本日いただいたご意見については調整委員会に報告したい。次回は「都市施設整備のあり方」をテーマに6月14日(水)に開催する予定となっている。

  それでは,本日はこれで閉会としたい。

 

 

3 閉 会

 

 

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