京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第8回 文化・観光・産業部会
ページ番号35864
2001年2月1日
21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第8回 文化・観光・産業部会
日 時 : 平成12年4月26日(水) 午前10時~12時
場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲」
議 事 :
(1) 基本計画策定作業の進め方等について
(2) テーマ別討論「観光」について
(3) その他
出席者 :
市田ひろみ(服飾研究家)
内田 昌一(京都市中央卸売市場協会会長)
竹村 寿子(市民公募委員)
堀場 厚((株)堀場製作所代表取締役社長)
村井 康彦(上京区基本計画策定懇談会座長,京都市歴史資料館長)
森谷 尅久(東山区基本計画策定懇談会座長,武庫川女子大学生活環境学部教授)
山上 徹(同志社女子大学現代社会学部教授)
◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授)
以上8名
◎…部会長 (50音順/敬称略)
1 開 会
吉田部会長
第8回「文化・観光・産業」部会を開会させていただく。
構想の審議以来久しぶりの開催となるが,今回からは計画についてご審議いただくことになる。構想の中の大きな柱である「くらしに安らぎ,まちに華やぎ」を文化・観光・産業にどう生かしていくかということで,具体的なご議論をお願いしたい。
議論に入る前に新任の委員をご紹介したい。一身上の都合で辞任された川原委員の後任として内田委員に,同じく石森委員の後任として山上委員に新たに委員として当部会に加わっていただく。また,3月に退任された薦田副市長の後任として高木副市長が就任され,その際の副市長の担当事務の変更により,今後当部会には,中谷,増田両副市長に代わり高木副市長に委員として加わっていただくことになった。それでは,本日ご出席の内田委員,山上委員から簡単に自己紹介をお願いしたい。
内田委員
中央卸売市場で市民の食生活を支える仕事をしている。よろしくお願いしたい。
山上委員
同志社女子大学の現代社会学部で観光学を教えている。日ごろから都市は生き物であると考えている。こういう審議会は的確な診断カルテをつくるという意味で重要であり,今後はここでつくられたカルテにのっとって手術をしていくことになると思うが,微力ながらそのお手伝いをしたい。
吉田部会長
引き続き,事務局である総合企画局の人事異動について紹介していただきたい。
――(事務局自己紹介)――
2 議事
(1) 基本計画策定作業の進め方等について
吉田部会長
部会でのテーマ別の検討と調整委員会での全体の調整ということで,調整委員会と部会とがキャッチボールしながら計画をつくっていくことになる。秋頃に総会を開き第1次案を審議し,12月には最終案を答申する予定である。構想の中で特定の部会に対応しない部分「市民のあり方,行政のあり方」や財政問題については当面,調整委員会マターとなる。
当部会では4月から6月の間に「観光」「文化」「産業」をテーマに議論することになるが,それをどう集大成するかは今後の課題となる。調整委員会と部会での議論を合わせ,素案の作成は調整委員会で行うことになる。
次に,計画の構成イメージは「前文」「政策」「推進」の3部構成になっている。参考として資料1の8ページに構想の章立てに対応した各部会での討論テーマとの関係がまとめられているが,全体イメージとしてはこのようなものを考えていただきたい。計画期間は2001年から2010年までの10年間である。
構想の主語は「わたしたち京都市民は」となっており,行政とのパートナーシップを強調した構想の趣旨を計画にも生かしていきたいということで,市長から審議会に対して三つのお願いが出ている。1点目は「市民感覚からの議論の積み重ねによる審議会の意思形成」,2点目は「行政が責任を持って実施できるものであることとの接点を見出すことによる計画の実効性の確保」,3点目は「既存の枠組みを超えた大胆な発想に基づく京都ならではの政策の立案」ということだ。
調整委員会の役割は調整機能を通じて全体をまとめていくことにあり,素案の作成においてイニシアチブをとっていくことになる。構想作成時の起草委員会の立場と比較すると,計画においては部会の専門性により重みを置くことになると思う。
進め方について特にご意見がなければ,テーマ別討論に移りたい。
(2) テーマ別討論「観光」について
吉田部会長
資料の構成について説明しておきたい。最初に構想の中の当部会のテーマに関連する記述が抜き出されている。次に検討項目が例示されているが,これにとらわれず自由に討論いただきたい。続いて参考として現在までの京都市の取組が紹介されている。
それでは,資料をご説明いただきたい。
産業観光局(平瀬観光部長)
――(資料2「基本計画検討資料「観光」」に基づき説明)――
吉田部会長
昨年も,京都にはたくさんのストックがあるが,十分活用されていないのではないかという議論をした。経済学では最近「経験財」や「感動財」ということが言われているが,物的なものが即人々の豊かさとは限らず,モノがなくても情報だけで満足する人が増えている。ある意味で観光は経験財であり感動財であるので,リピーターになって何度も来てもらうことが大事だ。南フランスのあるホテルでは,宿泊客は帰るときに来年の予約をする。それだけのリピーターがあるのは観光の力だ。京都の場合,そのあたりが淋しいように思う。
最初に市田委員から,おこしやす京都委員会での議論や問題意識を簡単にご紹介いただきたい。
市田委員
おこしやす京都委員会ではこの1年間約100人に観光大使になっていただき,部会をつくって観光誘致のアイデア募集等をしてきた。すぐに効果が現れるものではないので,今後も継続していく必要があると思う。6月にはホノルルで行われる「祭り in ハワイ」というイベントに使節団を送ることになっている。例年このイベントには日本人観光客が約5千人訪れ,アメリカ本土や東南アジアからの旅行者を合わせると7,8万人の見物客があるが,パレードに参加して京都観光のPRをしてきたい。
京都はリピーターが多いが,おこしやす京都委員会でも新しいリピーターをどうつくるかという対策を練っている。若い人向け,リピーター向け,初めて来る人向けというように,それぞれ異なるメニューづくりが課題だ。
「新しい観光資源の創出」ということで中京のテーマパーク化を提案したい。おこしやす京都委員会でも歩いて楽しめる京都について議論しているが,河原町通の四条から三条の間は店のワゴンが出ていたり不法駐輪があったりして,歩くことを楽しめる状態ではない。哲学の道や錦市場,新京極などは車が入らないが,一定の地域,例えば南北では四条通から丸太町通,東西では河原町通から烏丸通のエリアを歩行者天国にして,観光的に魅力ある整備をし,テーマパークのようにしてはどうか。三条通や姉小路通,寺町通の二条から北も整備されて歩ける通りになってきた。20年前に朝日会館前にオープンテラスをつくる提案をしたところ,警察の反対があって実現しなかったが,歩いて楽しめるということでは京都らしいオープンテラスもつくりたい。西陣などでは町家が写真スタジオやレストランなどに再生利用されているが,中京区でも地域を指定して高い建物を規制し,緑もあり,散策ができる場所にしてはどうか。そこに住んでいる人の自家用車やゴミ収集車などをどうするかについては考える必要があるが,そぞろ歩きできる場所がまちなかに必要だ。
熱海が観光地として衰退したのは大規模な団体グループ観光がなくなってきたためだが,熱海の奥座敷である伊東は小さいグループで今もにぎわっている。別府温泉の奥座敷である湯布院にも多くの観光客が訪れているが,それは湯布院が最初から車を念頭に置かない歩くまちとしてつくられているからだ。巨大な団体旅行から小グループ旅行の時代に変わってきており,京都にも歩けるまちが必要ではないか。
吉田部会長
フライブルクでは公用車以外の自動車が全面禁止になっているが,やろうと思えばできないことはない。決断の問題だと思う。
堀場委員
歩くことのできるエリアとして京都には自然に触れられる嵯峨野や哲学の道などがあるが,まちなかにもそういう場所をつくることが大切だ。ヨーロッパで観光客に人気のある都市,例えばチェコのプラハなどでは,車の道と人の歩く道がうまく分離されている。京都の場合,碁盤の目という制約があるが,通りごとに分けるなど工夫すれば可能ではないか。シャンゼリゼも人が歩くのであれだけの観光客が滞留する。人が歩くことがまちの魅力につながる。花見のシーズンには八坂神社のあたりはものすごい人出だが,そういうポイントを整備していく必要がある。
京都の場合,春秋の観光シーズンには人が集まるが,夏には祇園祭以外ほとんど人が来ない。海外の観光都市はオフシーズンにはコンベンションを誘致し,同伴の家族が楽しめるようなコースを整備したり,ホテルと提携して安く宿泊施設を提供したりして,人を集める努力をしている。ただ,京都の場合は宿泊施設はあるが,規模的に大量の人を呼び寄せる展示場がない。ミュンヘンには飛行場跡地に巨大な超一流の展示場があるが,ある程度の規模で対応しないとコンベンションは誘致できない。観光客以外の人を動員できるプログラムが京都にないと,結局大阪や神戸に流出してしまう。ベースとなっていた修学旅行も流出しており,観光だけのリピートでは限界がある。このあたりのインフラ整備は非常に重要だ。
吉田部会長
京都は昔はまち全体がメッセであり,全国から商売に人が集まってきたわけだが,近代的なメッセの仕組みをつくらなければならない。国際会議場はあるが,学会にしても5,6百人規模の会議をする適当な場所が意外にない。そのあたりでもっと工夫が必要だ。
竹村委員
政策の検討項目の「安全で快適な観光の確保のために必要な環境整備」のところで,高齢化社会に向けて観光地のバリアフリー化を考えてほしい。社寺は車椅子対応ではなく歩きにくいが,そのあたりの整備を進めてほしい。
もう1点は,「新しい観光資源の創出」のところで,京都駅の南の地域に会議場でも企業の社屋でもいいから斬新な後世に残るような建物を建てて,それを見に若い人が集まるような観光資源にできないか。社寺観光でも精神面や文化財と同時に建物を見ることが重要なポイントになっているが,建物は大きな観光資源になると思う。
吉田部会長
ウィーンの大焼却場のような芸術作品とも言うべき建物があれば面白い。
内田委員
観光客のうち修学旅行生はどれくらいか。今でも修学旅行生は観光客の中で大きな割合を占めているのではないか。
産業観光局(平瀬観光部長)
ピーク時には145万人だった修学旅行生が現在96万人で,100万人を切っている。ただし,対象となる生徒数自体が減っているので,それから考えると京都はかなり健闘している。
内田委員
大阪にユニバーサルスタジオができると,修学旅行生がそちらに流れるのではないか。最近は京都に来た修学旅行生がタクシーで京都駅に行って,JRで大阪や神戸に行き,夕方京都に戻ってくるということを聞いた。特にJRなどが昔ほど京都をターゲットにしていないことが大きな要因になっているらしいが,行政としても何らかの対策が必要ではないか。
観光客を誘致する際に,「安全な観光」という点で京都はどうなのか。観光で京都に来て事故に遇えばその人は二度と京都に来ない。もう一つは食の安全ということで,京都では食中毒が絶対起こらないようにするなど,特徴を出さなければならない。健康という観点からも食の安全は重要だ。
先日ラスベガスに行ったが,昔とたいへん変わっているので驚いた。ラスベガスは各国の有名な建築を模倣した建物によって特徴を出している。建物は非常に重要だと思うが,京都としての特徴をどう出すかが課題だ。
森谷委員
御池通は歩道も街路樹もきれいに整備され,重要な通りになってきたが,両側のまちをどうするかという戦略がまったくない。殺風景で店もない。ウォーキング・ロードの話が出ているが,京都の場合は昔から東西の通りがウォーキング・ロードだった。まず東西の通りを歩ける道として整備することを考えるべきだ。以前旧市街の千六百余町についてそれぞれの歴史を駒札にしてはどうかという提案をしたことがあるが,何億円もかかるので実現していない。これが実現すればリピーター向けのスポットにもなる。
天神川まで貫通すれば御池通は基幹道路となるが,御池通周辺に会議場やホテルなどの都市施設を整備する必要がある。四条通など南側との連絡を考えているようだが,今,御池地下街には人が集まっていない。最近東西線の開通にともない二条駅周辺にマンション等が立地して,中京区の人口が増えている。東西の通りを整備し,新しい観光資源をつくっていく必要がある。古い町並みと違う御池通としての新しい町並みをつくり上げていく努力が必要だ。
もう一つは,地方の都市に行っても京都のポスターを目にしない。東京だけでなく全国にくまなく観光情報を発信する必要があるのではないか。
山上委員
都市観光という視点から,通りの整備はぜひ検討していただきたい。
今回「花満開人来るネットワーク」というキャッチフレーズを考えた。「花」というのは桜など観光資源としての花もあるが,テーマパークのような大きな花もつくってほしいということだ。「満」というのは満足という意味で,団体客より個人を満足させる商品づくりやシステム開発が必要ではないか。「開」とはバリアフリーという意味での開放や歩行者天国なども含めたシステム開発という意味だ。「人」ということでは,若い人も含め多様化したニーズに合わせ,都市観光やショッピングもできるような集客力を高める工夫がほしいということと,もう一つはもてなしの心という意味で市民もこの中に入れたい。「来る」ということでは,リピーターを増やし,宿泊観光客を増やし滞在期間を延ばしていくようなマーケティング戦略が必要ではないか。「ネットワーク」は,スポットごとの戦略だけでなく,面的,立体的対応策を考えるということで,市民,観光関連業者,大学,寺,行政等が縦割りではなく,横に連携する必要がある。さらに,競合関係にある大阪や神戸など関西圏の諸都市とのネットワークも積極的に考えていくべきだ。京都に来た修学旅行生が大阪や神戸に行くのは仕方がないが,逆に大阪や神戸に来た観光客が京都に来るようにする協調関係がつくれるといい。キャッチフレーズを考えて,どんどん宣伝してほしい。
村井康彦委員
以前にも話したが,京都の観光客は関東から来る人が多く,西からの観光客は少ない。そういう意味では東に向けて宣伝する必要があるが,逆に西から京都に来ないことへの対策も考えるべきだ。
修学旅行生やリピーターの話が出たが,修学旅行生のタクシー観光は教師の責任放棄ではないかと思う。教師が生徒を連れてまわって説明するにはたいへんなエネルギーが必要なので,結局タクシーの運転手に教育を委ねているだけではないか。京都に来ていても実際には素通りしているだけということでは,観光客とは言えない。リピーターは京都のことをよく知っているが,地元の人間がそれに対応できていない。そういう点でもタクシーの運転手に依存している部分が大きい。タクシー業界でも観光案内ができる教育に取り組んでいるようだが,そのあたりに工夫が必要ではないか。
それ以外にも断片的なアイデアになるが,京都は秋の紅葉ばかりが強調されるが,高野川,賀茂川上流の見事な桜並木をもっと宣伝してはどうか。実現できるかどうか分からないが,鴨川の南のほうに船遊びができる空間ができないか。市役所の前の広場をカフェテラスのようにして,そこから御池通を楽しい空間にできないか。また,例えば二条城などでグッズを売るとその売上をそこでプールして二条城のために使えるような仕組みはできないのか。
吉田部会長
アトランタはコンベンション・シティにするための社会資本整備にホテル1室当たりに課税しているが,日本でも法定外目的税ということでやろうと思えばできる。地方税は基本的に目的税にし,儲けた人が負担するようにしておけば必ずペイするはずだが,それだけの企画力がない。
市田委員
湯布院の8月の映画祭のようなシーズンオフのイベントも考えなければならない。観光客は土日の木屋町や河原町界隈の若者たちを見て,およそ京都的でないのでびっくりすると思う。「安全」をうたうなら,まず美しいまちにしなければならない。エジプトは1996年の銃撃事件の後観光客が激減した。現在は渡航自粛などは解除されているが,現地の警備も厳重にされており,政府ぐるみで観光誘致に努めている。京都が「安らぎ」を言うのであれば,観光地としての安全も考えなければならない。
先日伝統産業の番組が京都にロケに来て,渡月橋から川下を撮影しようとしたところホームレスのテントがあって撮れなかった。鴨川のホームレスは現在103人だそうだが,特定の観光地からは移動してもらうようにできないのか。
安全ということでは最近自転車による交通事故が多い。自転車は歩道を走るものなのか。
吉田部会長
自転車は歩道も車道もどちらも走れるが,本当は自転車専用道路をつくるべきだ。ウォーキング専用道路をつくるなら,自転車専用ラインもつくって自転車を利用した観光も考えてはどうか。
森谷委員
幕末から明治にかけて鴨川が船運に利用されていたこともあり,村井委員のご提案のような水辺空間の利用は可能ではないか。
村井康彦委員
区別計画の中でもこのエリアを歩ける空間にしてはどうかといった議論をしているので,そういうものも取り上げていただきたい。年間を通じて月ごとに歳時記や年中行事的なものをイベントに組み込んで宣伝することはできないのか。中小都市と京都のような材料のたくさんある大都市とは違うと思う。「エメラルド・パスポート」と称して4つの県の人が県域を越えて行き来し,登録した宿泊施設や飲食店で割引きしてもらえるという例があるが,地方は広域化でなんとか生き延びようとしている。京都ではそういうものは難しいかもしれない。京都の場合はエリアを決めて密度の高い空間をつくることになるのかもしれない。
竹村委員
NHKの大河ドラマで取り上げられるとそこが観光地になるが,京都からインターネットなどを使って若い人に向けて歴史の面白さを発信できないか。若い人に京都に興味を持ってもらうことが京都の活性化につながる。私たちが子供の頃には歴史上の人物に心を躍らせた経験があるが,そういう感覚を今の若い人にも持ってもらいたい。そういう教育が今はなおざりになっているように思う。
吉田部会長
本日の議論の中で,寺社観光ではなく都市観光をというご意見があった。長浜の黒壁などが典型的だが,都市観光の場合クリエーションが必要になる。道路を歩けるようにすればいいのではなく,例えば新しい喫茶店を開くとか,その周辺の住民にクリエーションの場を提供していかなければならない。まちが常に変わっていかないと人は集まらない。
経験財ということで修学旅行は大事だと思う。京都に行って面白かったという印象をどうつくるかということで,観光ガイドのできる運転手には資格を付与するなど,タクシーをもっと活用してもいい。
博物館や美術館もただ物品を陳列しているだけでは単なる倉庫にすぎない。学芸員を置いて来館者に説明し,面白いと思わせる工夫が必要だ。高校の先生などに再教育して美術館の学芸員も兼務してもらえばいい。京都には大学も多いので,例えば京都市が契約して,大学の先生に美術館や博物館に来て説明してもらう。やはりハコモノ観光,社寺観光からの脱却が基本になる。
歩くための交通規制については,行政が警察と相談すれば,東西道路を歩行者専用にして6時以降にならないと自動車が走れないようにすることはできるはずだ。まず一つの通りを寺町や新京極とは違うタイプの観光道路にしてはどうか。人が集まれば自ずと店も集まり,また人が増えるという循環ができる。歩く目的,インセンティブをうまくつくっていくことが大事だ。
コンベンションにはもっと力を入れてほしい。京都には使えるハコモノがない。京都市がアレンジしてコンベンションセンター兼事務所のようなものを御池通周辺につくってはどうか。大阪のコンベンションホールに対抗するのでなく,5,6百人規模の学会に対応できるようなもので,京都で会議をすることが楽しくなるようなものがいい。
村井康彦委員
御池通で1カ月ごとに陶器市をするようなことはできないか。
吉田部会長
堀場委員のご意見にあったが,メッセはぜひやるべきだ。場所は南部地域にある。展示場だけでなく関連施設を同時につくるということになるとたいへんだから,コンピュータ制御型でディマンドに応じられる油小路通の交通システムを早急につくるべきだ。千葉も幕張メッセができて驚くような変化を遂げた。関西にはまだ大規模なメッセ会場がないので,大阪がつくる前に京都がつくらなければならない。
堀場委員
京都には本来の観光の財産があるので,メッセでリピートする人にとっては値打ちが倍あるはずだ。資金力のある人にもっと京都に来てもらう手立てを考えるべきだ。
吉田部会長
メッセにはハコがあればいいわけでなく,ノウハウの蓄積が重要だ。今までの京都のやり方と違うので,相当知恵を集め,仕事のできる人を集めなければならない。南部地域であれば名神を使って伊丹空港までバスを走らせれば,距離的にはまったく問題がない。関空から遠いのは問題だが,いろいろ工夫はできるのではないか。
山上委員
海外観光客誘致の話が出ていないが,現在京都には日本全体の1割程度,約40万人の外国人観光客しか来ていない。アジアの人にとって京都にどういう魅力があるか分からないが,京都に来てもらうためには関空とのアクセスも大事だが,大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)などからのアクセスも考えるべきだ。交通部会の中で観光面でのアクセスについても検討いただくよう,部会長からお願いしていただきたい。
吉田部会長
外国の場合はバスを上手に使っている。京都の主要ホテルからUSJに行けるようなバス路線をつくるとか,拠点間のリムジンバスのようなものをうまく設計すればいろんなことができるのではないか。
森谷委員
東山区の座長をしているが,高齢者が多いので小型のバスを導入してほしいという要望が多い。
吉田部会長
このたび百円バスができたが,もっと早くやっておくべきだった。
安全についても,外国のような厳重な警戒は必要ないが,観光地の安全保障についても工夫する必要がある。
森谷委員
京都は欧米人には魅力があっても,東アジアや東南アジアの人には魅力がないのではないか。
吉田部会長
観光は経験財だから,まったく知らないものを見に行くことはない。社寺観光の衰退には必然性があると思われるので,都市観光と両方考えておく必要がある。京大の新博物館も利用される施設にすべきだ。
過去の観光資源の掘り起こしや情報伝達も大事だが,今回の計画の中では都市観光を一つの柱とすることになると思う。本来,京都観光は地方から仕事に来た人がついでに観光して遊んで帰るという都市観光だった。
村井康彦委員
修学旅行生については,送り出す教師の側の教育も大切だ。京都では各大学が京都学や京都文化論の講座を持っているし,大学コンソーシアムでも京都学を取り上げている。京都市がある程度の補助をして,そういったところで担当の先生に京都について系統的に勉強してもらい,修学旅行生を送り込むところにつなげるような地道な努力が必要ではないか。
堀場委員
成田神宮に行ったときボランティアが案内してくれたが,ただ見るだけでは面白くなくても,熱心に説明してもらうと興味がわく。京都でもボランティアを組織してそういったサービスを企画してはどうか。
市田委員
上野駅で駅員に乗り継ぎまでのわずかな空き時間を利用して行ける博物館を教えてほしいと尋ねたところ,適切な対応をしてもらえなかった。タクシーの運転手でもボランティア・ガイドでも,資格を持っているということに誇りと自信を持ってもらえるような方向を考えたい。
(3) その他
吉田部会長
次回以降は「文化」「産業」をテーマに部会を開催することになる。開催日程については調整の後事務局からお知らせする。資料提供のご要望があれば事務局に言っていただきたい。
それでは,本日はこれで閉会したい。
3 閉 会
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