京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第2回 審議会
ページ番号35840
2001年2月1日
21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第2回 審議会
日 時 : 平成11年2月3日(水) 午後3時~5時
場 所 : 都ホテル「山城の間」
議 事 : 新基本構想の基本的考え方について
出席者 :
(1) 浅岡 美恵(気候ネットワーク代表)
(1) 石田 一美(京都市東山消防団団長)
副会長 稲盛 和夫(京都商工会議所会頭)
(4) 上村多恵子(詩人,京南倉庫(株)代表取締役社長)
(5) 梶田 真章(法然院貫主)
(1) 片山戈一郎(日本労働組合総連合会京都府連合会会長)
(5)部会長 金井 秀子(京都教育大学名誉教授,京都文教短期大学児童教育学科教授)
(4) 川崎 清(左京区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,立命館大学理工学部教授)
(3) 川原 陸郎(京都みやこ信用金庫会長)
(2) 北川 龍彦(京都市民生児童委員連盟会長)
(5) 北川 龍市(京都市日本保育協会会長,京都市社会福祉協議会会長)
(2) 北村よしえ(京都市精神障害者家族会連絡協議会会長)
(4) 木村 陸朗(京都府バス協会会長)
(2) 玄武 淑子(京都市老人クラブ連合会会長)
(2) 小林 達弥(市民公募委員)
(3) 坂上 守男(京都市観光協会会長)
(5) 佐々 満郎(京都府私立中・高等学校長会事務局長)
(5) 佐々木博邦(市民公募委員)
(1) 笹谷 康之(西京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学理工学部助教授)
(4) 清水 三雄(異業種交流コスモクラブ会長)
(5) 庄村 正男(京都市PTA連絡協議会会長)
(1) 田尾 雅夫(京都大学大学院経済学研究科教授)
(5) 高月 嘉彦(NHK京都放送局長)
(1) 滝川 文子(京都市地域女性連合会会長)
(2) 竹下 義樹(京都市身体障害者団体連合会副会長)
(3) 竹村 寿子(市民公募委員)
(3) 武邑 光裕(京都造形芸術大学メディア美学研究センター所長)
(1) 田端 泰子(山科区基本計画策定懇談会座長,京都橘女子大学文学部教授)
部会長 内藤 正明(京都大学大学院工学研究科教授)
(1) 仲尾 宏(京都芸術短期大学造形芸術学科教授)
(2) 中原 俊隆(京都大学大学院医学研究科教授)
(5) 永田 萠(イラストレーター)
(5) 西川 國代(京都市保育園連盟副理事長)
会 長 西島 安則(京都市立芸術大学長,京都大学名誉教授)
(4) 西村 毅(京都青年会議所直前理事長)
(1) J・A・T・D・にしゃんた(市民公募委員)
(1) 野口 寿長(京都市体育振興会連合会副会長)
(4) 野間光輪子(京町家再生研究会幹事)
(3)副部会長 橋爪 紳也(伏見区基本計画策定懇談会座長,京都精華大学人文学部助教授)
(5) 八田 英二(大学コンソーシアム京都理事長)
(2)部会長 浜岡 政好(佛教大学社会学部教授)
(2) 浜田きよ子(高齢生活研究所代表)
(5) 韓 銀順(京都市生涯学習総合センター講師)
(4) エルウィン・ビライ(京都工芸繊維大学工芸学部講師)
(5) 福田 義明(京都市私立幼稚園協会副会長)
(3) 古川 敏一(京都府中小企業団体中央会会長)
(4) 三木 千種(市民公募委員)
(3) 三谷 章(市民公募委員)
(4) 三村 浩史(南区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,関西福祉大学教授)
(2) 宮下れい子(市民公募委員)
(3) 向囿 好信(京都市ベンチャービジネスクラブ代表幹事)
(3) 村井 康彦(上京区基本計画策定懇談会座長,京都市歴史資料館長)
副会長 村松 岐夫(京都大学大学院法学研究科教授)
(2) 森田 久男(北区基本計画策定懇談会座長,元佛教大学教授)
(4) 山田 浩之(下京区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,大阪商業大学大学院地域政策学研究科長)
(2) 横田 耕三(京都府医師会会長)
(3)部会長 吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授)
副会長 鷲田 清一(大阪大学大学院文学研究科教授)
(2)副部会長 渡邊 能行(京都府立医科大学付属脳・血管系老化研究センター教授)
(1)(3)(4) 中谷 佑一(京都市副市長)
(1)(3)(4) 増田 優一(京都市副市長)
以上61名
(50音順,敬称略)
(1)…環境・市民生活部会
(2)…福祉・保健部会
(3)…文化・観光・産業部会
(4)…都市整備・交通部会
(5)…教育・人づくり部会
1 開 会
西島会長
予定の時間になったので開会したい。
昨年10月の総会以降,各部会や起草委員会が開催され,どういう基本構想を立てるかについて議論してきた。起草委員会の第1次案に対して各部会で専門の切り口からご意見をいただいたが,こういう形で構想をつくってはどうかという起草委員会の案ができ上がったので,本日はそれを中心にご議論いただきたい。
最初の案では,昭和53年の世界文化自由都市宣言を背景に,2025年にどういう京都を目標に考えていくのかという議論があったが,それに対して各部会から現在の危機感が表れていないというご意見をいただいた。新しい時代の価値観がいかに変わっていくかを,京都の目指す都市像にもっと色濃く入れた方がいいというご意見もいただいた。いろんな意味で大きな転換期であるというご意見は各部会に共通している。
画一から多様への転換とか,大量生産・大量消費に基本をおいた過去半世紀,生活のあり方や考え方の根本的なところをもっと掘り下げるべきではないか,人と心ということをじっくり考える広い意味での教育や学習,何を中心に次の時代を考えるかということについてもご意見をいただいた。各部会のご意見はすべて,部会長から起草委員会に報告していただいている。
テーマによっては,部会で縦割りにして議論したのでは奥行のある総合的審議が難しいというご意見もあったが,起草委員会の場では部会長に部会を代表していただくと同時に,起草委員会のメンバーとして全体について議論していただいている。
また,各区の懇談会の座長に部会に属していただいているが,それぞれの区としてのご意見で,全体の基本構想に関することがあれば,この場でご発言いただきたい。
最近「未来への責任」ということが言われる。将来構想を考えるときに未来からの声を踏まえる必要があるということで,最後に,京都市が実施した作文コンクールの受賞作品の朗読を聞かせていただき,今後の心にとどめておきたい。
2 議 事
○ 新基本構想の基本的考え方について
西島会長
本日の最初の議事は「新基本構想の基本的考え方について」で,まず起草委員長からこれについてご説明いただく。
鷲田副会長
会長からご報告いただいたように,新基本構想の基本的考え方をまとめるため4回にわたり起草委員会で審議を重ねてきた。各部会では,基本的枠組みと第1次案について,2回にわたり議論いただいた。お寄せいただいた多くのご意見やご助言に深く感謝申し上げる。
本日お諮りする「新基本構想の基本的考え方(案)」は,各部会のご意見をできるだけ盛り込み,起草委員会で作成したものである。今後この案を基に起草委員会で文章化していきたいと考えており,本日はこの案に対する忌憚のないご意見をいただきたい。
それでは中身の説明に入りたい。P.1,2の部分については,各部会でご承認いただいており,基本的なところだけ確認しておきたい。
新基本構想は現在の社会や都市生活が直面している一般的普遍的問題を押さえるとともに,その問題を何とか解決し,さらに大きな夢のあるものへと膨らませていかなければならないということで,都市の問題と都市の抱きうる夢を並行して書いていこうという志である。都市を考えるときに,住民が第一であることは間違いないが,そこに住み,働き,学び,憩うすべての人の「こんな都市であってほしい」という夢を表現したい。
続いて,新基本構想の策定に当たり特に留意した点を5つにまとめている。
[注:以下 ( ) 内の数字は、資料の○内の数字を意味する。]
(1)は今回の新基本構想の策定に当たっては,市民がどういう形で市政に参加し,京都というまちをつくり,京都の文化や経済を育てていくのかという公共的なものへの市民のかかわり方をつっこんで書くという方針で,最初に掲げている。
(2)は京都市民の自らへの励ましの意味も含め,市民がこれまで培ってきた得意技,文化・経済・福祉などにおいて培ってきた能力が,来るべき21世紀の都市生活にとってもたいへん重要なものであることを再確認しながら,21世紀の都市生活一般にとって意味あるものに培っていくという志を表している。
(3)は大都市が共通して抱え込んでいる普遍的課題と,京都がそれにどう取り組むか,何ができるのかという京都に即した問題を並行して書き込んでいくということだ。
(4)は(1)とも関連するが,市民の責任と望まれる行政のあり方についてきちんと記述すること, 最後にできるかぎり平易な言葉で書くということ, 大きくこの5つの留意点を確認して策定に当たることになった。
次に具体的な中身に入っていく。構成に関して,各章で何を書くかをはっきりさせるため,第1次案ではなかった括弧書きの部分を付け加えた。第1章では現代の都市文明,人類の文明が直面している課題を確認したうえで,2025年の京都が理想としている都市の姿を理念的に記述する。第2章ではくらしとまちづくりの方向性を示す。第3章は今回の新基本構想案のポイントとなるもので,市民参加の内容を可能な限り書き込み,これからのあるべき市政や市民生活について積極的提言を行う意欲を持つべきであるということから,この章についてはさらに検討を続けていきたいと考えている。
本日お諮りしたいのは P.3以降の部分,新基本構想の基本的考え方についての具体的な内容,新基本構想の中にどういう内容の文言や議論,考え方を書き込んでいくかということの確認である。これについては全文読ませていただき,必要であれば補足説明をさせていただきたい。各部会でご検討いただいた第1次案を参照して変更箇所等をご確認いただきたい。――(資料「新基本構想の基本的考え方(案)」P.3 以降の案文朗読及び補足説明)――
第1章の1節及び2,3節は第1次案とかなり内容が変わっている。特に1節については現代の都市が解決を迫られている問題がどういうものであるか,その深刻な内容や状況の厳しさを感じられる内容にすべきだという意見を取り入れ,全面的に新しく書き足した。
2節の最初の部分は,第1次案では「世界文化自由都市宣言の精神を引き継ぎ,それを現時点で再解釈する中で」という表現をしていたが,新しい時代に向けての市民生活の目標の大枠をはっきり提示する積極的な内容にしたほうがいいのではないかというご意見を取り入れて表現を変え,それを3つに分類し列挙した。
3節は,京都市民の育んできた市民の特性,文化的能力を再発見,再確認し,それをもって現在の文明の諸課題に対処する方向性を具体的に明示するため新たに付け加えた。
第2章では市民のくらしに重点をおき,めざすべき京都の形を考えている。第1次案の「豊かなまち」を「生き生きしたまち」に変えた。「豊かなまち」というと経済的側面の豊かさを無視することができないが,心身ともに含めた豊かさについては3節で書き,ここでは「豊か」という言葉を削除した。「美しい」という言葉は凡庸だという意見もあるが,京都市は市民憲章以来美しいまちを誇りにしてきており,また京都市以外の人から近年京都のまちの景観の崩れに対して厳しいご意見をいただいているので,「美しいまち」という言葉は残した。また,物理的景観の問題だけでなく,人が生き生きと満ち足りた気分でくらし,多様な人生の可能性を思い描けるまちという,表情の美しさを強調した。
「2 市民のくらしの基本」は全面的に書き加えた。個人の趣味や考え方はさまざまであっても,市民生活として考えた場合,その最も基本的あり方はこうでないかという考え方に基づいている。「(1)人権文化」については,水平社やライトハウスなど人権文化発祥の地としての京都や,現在世界人権問題研究センターや市役所内に人権文化推進部がある人権文化の積極的発信地としての京都を考え,さらに未来に人権文化を先進的に創造していくという,過去・現在・未来の三重の意味で考えている。
「3 活力のあるまちづくり,成熟したまちづくり」は第1次案では「成熟社会,都市の気品」だったが,豊かなまちとはどういうものかという観点を入れて,見出しを変えた。「めきき」「たくみ」という言葉の定義についてはその前に書いたが,これは文化だけでなく産業・経済や教育などの中でも生かされなければならない。
第3章の記述については起草委員会で検討中であり,さらに検討を続けるという意味でここに組み込んだ。他都市の基本構想でもこの部分を十分に書き込む前例がないので,議論を尽くして慎重に文案化していきたい。これから京都市民が新しい公共性のあり方を構築する際の考え方や仕組み,制度については具体的に書き込む必要がある。その場合の市民の責任,なすべき負担や行政の責任,役割についても比較的つっこんだ記述をしたい。1節及び4,5,6節の最初の部分は新たに書き加えている。
第3章に関しては,実現に至る道のりをきちんと考えておく必要がある。例えば市民の自治意識,責任意識が成熟していく過程,実績を積み上げていく過程,法的環境の整備がいろいろ模索されねばならない。特に市民の責任については,引き続き各部会の意見をいただき,それを基に検討を重ねていきたい。
最後の2行は,京都市が市民参加の理念を実現している先進都市としてこれからの都市生活のモデルを提示していくという志で,第1章の最後の部分と対応しており,最後にまとめとして記述している。
以上がこれまでの4回の起草委員会の議論を踏まえ,2度にわたり各部会から頂だいした多くの意見を取り入れ,起草委員会でとりまとめた案である。
西島会長
京都が目指す都市の姿について議論をすると,京都が非常に古いまちだという側面が表に浮かぶこともあるし,新しい時代に向かって先進的にいろんな試みをしたまちだという側面が浮かぶこともある。ここには京都市民の知恵や感受性,市民の目指すまちやくらしの基本について書いてあるが,京都が本来持っていた大事なものが薄れていったり,捨ててはいないが横に置いたまま来てしまったことへの反省と,将来に向けそれらを見つめ直して,自分の前に提示しないと大変なことになるという危機感がある。
きれいごとばかりだというご意見もあるかと思うが,これは中間の考え方で,今後も各部会からご意見をいただきながら秋までには新基本構想をまとめ,新基本計画の策定に入ることになる。
時代はどんどん変わっていく。世界文化自由都市宣言を出したのが20年前の昭和53年,高度経済成長の陰りやほころびが出ていた頃で,もう一度京都の良さを議論した結果があの宣言に出ている。それから20年経ち,さらにこれから先の20年,25年を考えたときに,未来は霧の中にある,混とんとしていると言って済ますのでなく,くっきりとした目標を立て,計画を着実に実行できるものにしようという思いを込めて書かれている。ぜひご意見を賜りたい。
竹下委員
全体的には前向きに書かれていて異論はないが,1箇所後向きの印象を受ける言葉がある。第3章4節の「情報の時機に適した公開」の部分で,この文言を書き込んだ趣旨を聞かせていただきたい。
西島会長
情報公開は市民参加の最も基本的条件だが,「時機に適した」という言葉にこめられた意味を起草委員長から説明いただく。
鷲田副会長
情報は何らかの形で整理して出さなければならないので,公開にそれなりの時間がかかると思うが,市民の適切な判断が可能になるよう,「できるだけ速やかに」という意味でこの表現を用いている。
西島会長
「時機に適した」と言うと,行政の判断で,今は情報を出そうとか出さないでおこうという意味にとられかねない。できる限り早く意義のある情報を出していくという意味を,分かりやすい言葉ではっきりと書き,どちらともとれるような表現は避けたい。
北川龍彦委員
P.3に「文明史的課題を突きつけられている」「世界文明が突きつけられている課題」というように,「突きつけられている」という京都らしからぬ文言で厳しく表現されているが,「突きつけられている」というのは何を意味しており,またどういう形で突きつけられているのか。
「世界文明」という言葉も大きすぎて,理念としてはいいかもしれないが,京都人や京都にこのような言葉が当てはまるのか。文明史的課題をどのように突きつけられているのか,市民に分かるように説明していただきたい。
西島会長
起草委員会では現代の世界文明や,中世から近世,現代への移り変わりについての文明史的議論と並行して,その中で京都はどういう立場や生き方をしてきたかという議論をしてきた。「突きつけられている」というのは,世界が自らに突きつけているという意味だ。
19世紀中ごろに産業革命や覇権競争,進化や進歩,弱肉強食という新しい考え方が西洋の新しい文明として力を持ってきたとき,日本は鎖国を解いて開国した。文明開化の後やってきたのは,半世紀の戦争だった。環境がすでに手遅れに近い状態になって,世界中が今初めて近代文明とは何だったかを自ら考え直している。そういう議論の中から出てきた文言だ。
北川龍彦委員
日本の国としてはそのような見解もいいが,京都市民が京都市の構想の中でこれを見て,どう解釈するか問題だ。大きく世界の問題を出すのは結構だが,文末では「地域だけで解決できるものではない」と受けている。この「地域」とは京都なのか日本なのか,身近な地域を表しているのか,漠然としていて理解しにくい。世界的に見ることはいいが,上の句,中の句,下の句が分かりやすい文面にしてほしい。京都の中で「突きつけられている」と言うと,受けとり方はいろいろある。
西島会長
世界と京都の問題では,例えば一昨年地球環境京都会議があった。地球環境問題は市民の生活の問題でもある。京都宣言を美辞麗句で終わらせず,地域の生活や運動の中に表し,京都のローカルな問題でなく世界に発信できるモデル都市にしていく。これも1つの考え方だと思う。昨年の世界遺産会議にも世界の注目が集まったが,人類の文化の中で,どういう姿勢で新しい意味での公共が対処するかもたいへん大事だ。
なぜ京都がという中に,非常に身近なことでありながらその影響は世界に及ぶであろうということをはっきり出せばいいのではないか。やってはいるが不完全で連携が不足しているとか,NGOなどのグループの活動が公の行動の起点につながっていく仕組みはまだまだで,世界のどの都市もそういう問題を抱えている。京都市が新しい意味での公共の姿を打ち出すことができればいい。そういう手本になることを実行して世界が注目している小さい都市がいくつかあるが,京都のような大規模なまちでそういうことができるといい。
北川龍彦委員
「突きつけられている」という言葉は残すのか。
西島会長
言葉としてはいろいろ考えてみたい。非常に強く感じているという意味で,受け身の言葉ではない。
北川龍彦委員
地球温暖化の問題にしても,自然破壊をしてきた側がこれでは具合が悪いということを,やっていない側に突きつけている。突きつけている者が突きつけられている者であるかのような表現は良くない。
また,「京都」と言っているが,京都市なのか京都府なのか,それもはっきりしてほしい。
川崎委員
全体の印象と具体的な提案を申し上げたい。文面については異論はないし,優れたものだと思う。
印象としては,まず1つはたいへん精神的,問題提起型で,それも「対案を示さなければならない」という意味での問題提起で,具体的対策との整合性がどうなっているのか分からない。それは基本計画が終わらないと出てこないと思うので,基本構想を基本計画の指針として出し,基本計画が終わった後でふり返ってみることも必要だ。
もう1つは,今から約10年前に新京都市基本計画を策定したが,そのときいろいろ都市構造や基盤整備の問題がうたわれ,積み残しのままになっているものも多い。継承すべき点,修正すべき点があると思うが,前回の基本計画との整合性がよく分からない。都市は生き続けており,途中で突然政策が変わるものではない。
3つほど具体的提案がある。先ほどから都市文明の転換点という話が出ており,一般的にもそう受けとめられている。京都には文化論はたくさん出たが,文明論は出ていない。環境問題はまさに文明論の問題であり,京都が地球温暖化会議の開催地であったことを契機に,総合的な意味で新しい文明とは何か,環境とは何かを探究する,京都と世界を結びつけるメディアとしての研究センターのようなものが必要だ。基本構想に入れていただくか,あるいはそういう芽を基本構想の中に表現していただきたい。
2番目は暮らしのあり方,市民のあり方,生活のあり方はイメージできるが,市民が生活する都市は与えられた都市なのか。都市の基盤整備があってこそそういう生活や暮らしができるのではないか。道路をつくると困るというのと道路をつくってほしいというのはトレードオフの関係だ。豊かな美しい生活と安全な暮らしもトレードオフで,安全性を捨てて美しさをとるのか,美しさを捨てて安全性をとるのか。都市の基盤整備は往々にしてトレードオフの問題になるが,それをどうするのか。
左京区の懇談会の座長をしているが,ここに書かれている品格のある市民や暮らしは,京都の中心地域の生活のあり方がイメージされている。左京区に多い農山村の人々の暮らしのあり方はここからはイメージできない。左京区にはもう少し広域的に考えて基盤整備してほしい,道路をつけてほしいという声がある。住環境,生活・暮らしにも,都市の基盤整備をどうするのかという視点が必要だ。
前の新基本計画では「グレーター京都」という概念が出された。京都市だけでなく,京都の都市圏全体で 330万人くらいのエリアを考えなければならない。左京区も大津市と接していて,道路をつくるにしても基盤整備をするにしても,京都が単独でやるのでなく,そうした広域的視点がどうしても必要になるのではないか。
3番目は,ここには「自然」という言葉が出ていない。京都というとどうしても「文化」が先に出て,文明や自然についてはあまり出てこない。左京区は広大な自然を抱え,山村の暮らしがあるが,そこに暮らす人の地場産業と自然保護,京都の都市内の人の健康資源としての自然の問題を扱わないと,農山村と都市が結ばれていかない。そうしたことも基本構想の中で,視点としてお考えいただきたい。
西島会長
京都と世界をつなぐ文化・文明のあり方について掘り下げて考えること,具体的な暮らしのあり方について今後の基盤整備や安全性,美観の問題等を計画の中できちんと出すということ,京都の範囲の問題や自然の問題など,いろいろ重要なご指摘をいただいた。
川崎委員から左京区の問題についてのご発言があったが,各区の懇談会の座長から基本構想全体に直接かかわるテーマで発言が必要なことがあれば,ご発言いただきたい。
仲尾委員
2点気付いたことを申し上げたい。
1つは,第2章の「市民がめざすまちの姿」で,「だれもがこの都市の住民として誇りと愛着をもって生活することのできるまち」という非常にいい理念を提示していただいており,具体的には子供や障害者の問題が出ているが,ここに京都市民の 100人に3人を占める外国籍市民が欠けている。異なった文化を持ってそれぞれの国からやってきた人たち,あるいは二世三世として京都に住んでいる人たちの文化を受容していくことが京都の国際化の実質化,多文化社会をつくっていくことに役立つことを強調すべきだ。 P.4に「(1)人種や宗教,国家や社会体制の制約を超えて」とあるが,冷戦構造の崩壊後の世界を見ると民族的憎悪がいろんな危機の引き金になっている。そういう点で,異なった民族性の受容が必要だ。
第2点は,第3章は「5 市民の責任,行政の役割」の後に「6 市民参加の先進都市へむけて」という構成になっているが,「市民参加のしくみをどのように整え,その実績をどのように積み上げていったらいいのか」という回路の問題が先にあって,その回路の中で市民1人ひとりの責任,行政の役割という問題を立てないと,いきなり市民が責任を問われ,行政がそれを補完すると言っても,6節とつながらない。第3章の5節と6節は入れ替えたほうがいい。
西島会長
外国籍の市民の数は今後ますます増えると思う。国際交流会館などはずいぶん活用されているが,新しい時代に向けてああいう施設をもっと充実すべきだ。
鷲田副会長
6節の前半部分を5節の前,4節と5節をつなぐ箇所に持ってくれば議論の筋道は流れる。最後の2行は宣言のような形で目標として掲げたい。
田端委員
構想全体については,反省点が抜けていてきれいごとに終わっている感じがする。 P.4に「(2)高い自治能力」とあるが,たしかに京都では中世に権力に対して市民が自治を貫いたということがあるが,その実態は家持ちの男性家長の自治だった。女性の立場から見ると,明の部分を書くだけでなく,その反面の排除の論理も直視していただきたい。京都は外来の人に対して冷たいというのも,それとかかわっているのではないか。反省点は基本計画に回すとしても,事実としてあった部分については訂正してほしい。
全体に女性に対する施策を取り入れていく姿勢があってもいいのではないか。部会で出た「ジェンダー」という言葉を入れていただいたことは感謝するが,他の市町村では子育て支援や女性の行政参加について具体的施策をしているところがあり,そのような具体的案を盛り込める言葉を構想の中に入れていただきたい。
山科区の座長をしているが,区からもいろいろ意見が出ている。山科区の場合,ボランティアセンターを京都市に1ヵ所つくってもそこまで出ていくのは大変だとか,ボランティアをするにしても遠いところに行くのはつらいという意見もある。そういう問題も含めて,各区の独自性が生かせる案にしていただきたい。
鷲田副会長
きれいごとだけでなく,反省面についても書き込むようにというご意見はよく分かるので,記述について検討したい。
女性に対する施策をどう盛り込むかについては,人権問題一般の中にさまざまな形で支え合うという表現で盛り込んでいるが,積極的に女性という概念を盛り込むかどうかについては,起草委員会や部会で議論していきたい。
山田委員
たいへん気品のあるすばらしい文章になっているが,3点について意見を述べたい。「交流」という概念が欠けている。世界文化自由都市宣言でも「自由な文化交流」という概念がいちばん重要だ。京都は全国からたくさんの学生や観光客が集まるまちであり,京都の市民文化もよそからきた人がつくったものが非常に多い。そういう点で「交流」という観点,観光客や学生のまちであるという観点を重視してほしい。
「批評性の高い文化」という言葉が出てくるが,「創造」が弱いのではないか。「文化を創造し続ける」とか,「創造性のある学習機会」というように使われているが,もう少し全体にあってもいいと思う。
また,「模索する」という言葉が3回も出てくるが,これは1回くらいでいいのではないか。
三谷委員
本日は時間がないので,書面で意見を出せるようにしてほしい。
西島会長
これだけ多数にお集まりいただき,基本的問題について短時間でご意見をいただくことには無理がある。本日の新基本構想の基本的考え方についての議論はこのあたりで終わり,ただ今ご提案があったように,もう少しこの部分を根本的に変えてはどうかとか,全体の構成についてこうしてはどうかという基本的問題について,書面で事務局のほうにお出しいただきたい。
この言葉は不適当ではないかといったご指摘も非常に重要だ。起草委員会で何度も使っているうちに,この言葉はこういう意味だと決めて書いていることもあるので,そういうご意見もいただきたい。
最後に起草委員長からひとことお願いしたい。
鷲田副会長
十分時間をとれなかったが,貴重な意見,特に基本構想の根幹にかかわるようなご意見をいただき感謝している。前回各部会からいただいた意見については,第2次案でかなり生かせたと思うので,今回いただいた意見や文面でいただく意見についても,起草委員会で検討し,生かしていきたい。
具体的に何をするかは基本計画に向けて各部会の議論と並行して考えていくことであり,基本構想の段階では京都市民のこれからのまちづくりや暮らしづくりの志,方向性を提示する作業が中心にならざるをえない。今回示した基本的な考え方,原案を承認いただければ,これに基づき内容のさらなる検討や文案の具体的詰めの作業を半年かけてやっていきたい。部会からもそのつど基本構想の考え方についてのご意見を寄せていただければと思う。
西島会長
行政区別の懇談会の座長に各部会に入っていただいているが,構想全体に区の意見をどう生かしていくかは大切なことなので,区の意見についても事務局に文書で寄せていただきたい。今後起草委員会でそれらをどう構想の中に生かすかを詰めたい。
今後も継続してご意見をいただくということで,本日は中間段階としてこういう基本的考え方で認めていただきたい。
(拍手)
3 小中学生作文コンクール「21世紀の京都・私の夢」市長賞(最優秀賞)受賞者による作品朗読
西島会長
未来に対する現在の責任ということが言われるが,過去も現在も未来の中にあり,未来は現在の中にあるということは,最近の課題をとらえる際に大事な基本的考え方だと思う。
京都市が昨秋「21世紀の京都・私の夢」ということで作文を募集し,167校から3,788名の応募があった。子供たちが京都に託す夢は現代の中にある未来の声であって,これを踏まえないと未来に対するビジョンは描けない。作文コンクールの最優秀賞である市長賞の受賞者に来ていただいているので,これから作品の朗読をお願いしたい。
(小学生低学年の部,小学生高学年の部,中学生の部の市長賞受賞者3名による作品の朗読)
西島会長
今日は本当にいい作文を聞かせていただきありがとう。
4 閉 会
西島会長
それでは本日の審議会はこれで閉会とする。今後ともよろしくお願いしたい。
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