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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第6回 環境・市民生活部会

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2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第6回 環境・市民生活部会

日 時 : 平成11年5月26日(水) 午前10時~12時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲の間」

 

議 事 :

(1) テーマ別討論「環境・エネルギー」について     

(2) その他

 

出席者 : 

浅岡 美恵(気候ネットワーク代表) 

石田 一美(京都市東山消防団団長) 

笹谷 康之(西京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学理工学部助教授) 

須藤 眞志(京都産業大学外国語学部教授)

○高月  紘(京都大学環境保全センター教授) 

滝川 文子(京都市地域女性連合会会長) 

田端 泰子(山科区基本計画策定懇談会座長,京都橘女子大学文学部教授) 

内藤 しげ(住みよい京都をつくる婦人の会会長)

◎内藤 正明(京都大学大学院工学研究科教授) 

J.A.T.D.にしゃんた(市民公募委員) 

野口 寿長(京都市体育振興会連合会副会長) 

村井 信夫(各区市政協力委員連絡協議会代表者会議幹事)                                

 

以上12名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長

 

 

1 開会

内藤正明部会長

  第6回環境・市民生活部会を開催させていただく。

 

 

2 議 事 

テーマ別討論「環境・エネルギー」について

内藤正明部会長

  最初に「環境・エネルギー」についての京都市の取組状況及び今後の課題について事務局から説明いただく。

 

事務局(小森環境局長)

  ――(資料1「「環境保全・環境共生」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」,資料2「「廃棄物の適正処理・リサイクル・まちの美化」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」,資料3「「エネルギー」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」について説明)――

 

 内藤正明部会長

  今の事務局の説明について質問があればご発言いただきたい。

 

笹谷委員

  この資料にはISO14001,環境学習エコロジーセンターといった新しい取組が書かれておらず,議論の材料として不十分である。環境の問題は2年前の,京(みやこ)のアジェンダ21以降もかなり変わっている。

 

内藤正明部会長

  資料は「21世紀の課題」として要約されているが,抽象的に書かれているので,今おっしゃったような具体的な取組については分かりにくいように思う。

 

事務局(小森環境局長)

  この資料は今までの取組をまとめたものであり,環境学習エコロジーセンターや京のアジェンダ21の取組など,現在取り組んでいるものについては書き切れていない。

 

内藤正明部会長

  ご指摘のような新しい取組は目玉としては大事だと思うので,加えられる段階があれば加えていただきたい。

 

笹谷委員

  今は環境については各自治体が競って取り組んでいるので,ISO14001や再生化エネルギーについてこの場の委員にもう少し詳しい説明資料を出さないと,きちんと議論できないのではないか。この資料だけでは京都市は遅れているという印象をまぬがれない。

 

内藤正明部会長

  このテーマは進展が早い。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  各部会のテーマ別討論ではそれぞれのテーマについて,主に現行基本構想の策定後実施されてきた施策に対する評価と,21世紀に向けての課題の分析をしていただいている。このテーマで今後21世紀に向けてどのような課題が中心に出てくるか,それを基本構想,基本計画にどう書き込んでいくかということについてご議論いただきたい。

 

内藤正明部会長

  そういう意味では,この資料に基づき現状について議論するとともに,これからの発展的提案ということで載せていくと考え,新しいご提案を出していただきたい。

 

滝川委員

  「門掃き」というすばらしい京都の伝統が,居住環境が変わったこともありどんどん失われている。未来をめざしたまちづくりを考えるときに,そういう意識をもう一度根付かせていくべきだ。

  私たちの団体は地域に根付いた団体であり,まず自分の足元からということで,廃油のリサイクルや生ゴミの水切りなど自分たちができるところから環境を整え,まちを美しくしていくことを基本に活動している。自分たちの団体だけではできない部分については,行政や各種団体,企業が力を合わせて取り組むことが,将来光り輝く京都にしていく基本ではないか。地道に足元から取り組む団体と高いレベルから取り組む団体とが,うまくパートナーシップを図っていく必要がある。

 

田端委員

  家庭ゴミについては伸びも少なく,いろんな取組が始められており,将来は明るいが,問題は産業廃棄物対策だと思う。市として産業廃棄物の増大に対してどのような方針をとっているのか,事業者に対してどういう指導をしているのか,また,環境保全公社の役割をどのように考えているのか。

 

事務局(小森環境局長)

  環境保全公社に関しては,現在,京都府と共に財政支援を行っており,技術指導を含め,職員を派遣している。環境保全公社では日量100トンが処理できるが,まだフル稼働できていない状況なので,そういうところに産業廃棄物を誘導していく必要がある。また,産業廃棄物は,市域外での処理が拒否される傾向にあり,市域内で処理しなければならない。それについては「産業廃棄物処理指導計画」の策定を検討中であり,それに基づき指導していきたい。

 

内藤しげ委員

  先日,千里のリサイクルプラザを見学した。これは市民と企業と行政が財団法人をつくり,「考え,学び,生かす」ことをテーマとして建設されたもので,1~3階は清掃工場で,5つに分別されたゴミが効率よく処理されており,4~5階は工房で,市の指導員と市民が一緒になって電化製品や自転車の修理,古着の再生等を行っている。月に何回か再生したものを即売する。今後京都で清掃工場を建設するときには,そういう市民との接点となる施設にしていただきたい。

 

滝川委員

  そういう施設をつくろうとすると,市民の反対運動が起こる。京都市を良くしていこう,自分たちの生活や環境を良くしていこうというとき,そういった施設を自分の地域に建てるのは嫌だが,よそに建つならいいという市民意識を変えていかないとすばらしい施設づくりはできない。

 

笹谷委員

  行政で一方的につくるのではなく,もっと市民に委ねたほうがいいのではないか。杉並区で清掃工場に対する反対運動があったときには,反対運動をした市民も含め市民参加の委員会を設置した。その中で,ゴミは江東区や東京湾に埋め立てればいいわけではないということが合意され,区内のどこに建てればいいかが議論され,5箇所くらい候補地が決められた。結局,当初区役所が選んだ場所に建てることになったが,そのときには非常にスムーズに進んだ。京都市の清掃行政を見ると,そういう社会的フリクションを起こしてきたことに対する反省がない。

  何度も言っているように縦割りを排除し,交通や観光など他局も含め連携できる体制が必要ではないか。京のアジェンダ21フォーラムなどをそういうところに位置づけてほしい。

  2番目に,「エコビジネス」を大きく書いてほしい。昨今は環境報告書や環境会計など,グローバルスタンダードに遅れないためにどうすればいいかが社会的関心事になっている。すべてがグローバルスタンダードになる必要はなく,京都のローカルな持味を徹底的に生かすという観点からも,伝統産業が環境負荷を与えないという観点からも,商工・観光とタイアップした環境産業政策を前面に出すべきだ。市民エコビジネスを大きくしていくことを1つの項目として掲げてほしい。

  もう1つは,市民に知らせる仕組みをつくりたい。商業的に地理情報システムを使って商店街を活性化する動きがあるが,市民団体や企業,NGOの活動を誉めるなど,ホームページを見れば市民の活動が分かる環境情報システムをつくれないか。産業振興課には京都の伝統産業をデジタルアーカイブ化して新しい産業を興していこうという動きがある。市民の活動も同様にコンピュータを使って支援する。これも1つの項目として起こしていただきたい。

 

内藤正明部会長

  今のご意見の中には,起草委員会でキーワードとして重視されているものもあり,それに関しては次回以降にご議論いただくことになると思う。

 

浅岡委員

  中間まとめをしなければならない段階に,環境に関して本日のような議論をしているようでは,2025年を見通した京都市のグランドビジョンをどうするかというイメージを提供するものは出てこないのではないか。京都市が将来に向けてどういうまちづくりをするのかというとき,環境を重視し,市民が協力しながら取り組むことを大きな柱とするという位置づけがどこにもない。

  資料のまとめ方を見ても環境部局での整理ができていない状況であり,他局と調整のうえで京都市全体のグランドビジョンをどうつくるのか,そこに環境をどう位置づけるのかについての示唆が全く得られない。なぜこれから京都市が環境の問題を考えていくのかという整理が必要で,課題もそういう点から整理してもらいたい。それは産業など他部局との関連性を言わずしてできることではない。位置づけからつくり直す必要がある。

  高いレベルの話と足元の話があるというご意見があったが,足元が本当に大事であり,なおかつその足元の活動や課題がどのように全体につながっているかということを,どうこの計画の中に示すのか。だから足元が大事なのだ,一緒にやりましょうということをどう伝えられるのか。それなくして今回の計画はありえない。その視点がどこにも見えない。

  どう推進するかが大きな課題で,その推進のためにこういうイメージで,ここに重点をおいてやりましょうという市民に対するメッセージがなければ,今までと何も変わらない。グランドビジョンはある意味で市長の政治的メッセージでなければならないが,市民にどういうイメージを訴えようとしているかが見えない。京のアジェンダ21フォーラムで私たちが時間をかけてやっていることが何なのかということが見えない。この部会の中ですら,アジェンダにかかわっている委員しか何をやろうとしているのか分からない話を,どうして市民に納得できるように伝えられるのか。

  よほど元気を出してこの問題を位置づけないと,グランドビジョンづくりは失敗する。どう推進するかということでは,1人ひとりがどう参加するかということへのエンカレッジももちろんあるが,原因施設と言われるものも含めて,つくらなくていいものはつくらず,つくらなければならないものはつくるという議論や合意形成をどうするのかという部分に切り込む必要がある。

  この問題への対応のためにはもう一度検討の機会を持つ必要があるのではないか。この課題が重要だと思えばこそ,他の部会の方に納得していただける議論をしなければならない。

 

内藤正明部会長

  このテーマの重要性を全体のビジョンの中に反映させたいという強い思いは皆同じだと思う。もう1回このテーマについて検討の機会を持つかどうかも含め,ご議論いただきたい。

 

田端委員

  山科区の懇談会では,最初から東部山間埋立地と,外環状線による排気ガスの身体への悪影響という2つの問題提起がされていた。ゴミ減量に積極的に取り組むとか,ゴミを出さない運動をするといった,市民の側の問題意識は定着してきたように思うが,最初から出ていた2つの課題が解消されない。どんな問題でも,市民と行政との合意形成に労を惜しまないことを基本姿勢にしていただき,そのルールをつくっていくことを基本構想に書き込んでいただく必要がある。

  産業廃棄物の問題は市民が運動をしても解決できない。市に役割分担していただき,事業者に対する方針をたて,しっかりした指導をしていただくことが必要ではないか。

 

内藤正明部会長

  市民参加についていろいろ意見が出ている。京のアジェンダ21などをきっかけに市民参加の新しい方式を提案できたと思うが,行政側には戸惑いやネガティブな評価があるようで,行政の意識は変わりにくいと感じる。グランドビジョンの中では市民参加の重要性は十分強調されていると思うが,それが職員一人ひとりに浸透するのはまだこれからだ。

 

笹谷委員

  市役所職員は縦割りで,他の部門でやっていることを知らないことが多い。市民参加型のワークショップやパートナーシップ推進室の設置など,横断的組織をつくりパートナーシップを強力に推進することについては合意されていると思っていたが,そうでなければ問題だ。

 

事務局(高木総合企画局長)

  市政を推進していくうえでの基礎的条件として必要だということで,市長からも強くパートナーシップの推進を指示されるとともに,この問題を担当する局長級の企画監が置かれている。この4月には総合企画局にパートナーシップ推進室が設置され,パートナーシップ推進計画の策定を目指し取組を始めている。各局の庶務課長がパートナーシップ推進室に兼務しており,役所内での横のつながりをもった形で進めていきたい。

 

笹谷委員

  全国でも見られないすばらしい推進体制だと思うが,そういう体制を前提にしながら,本当に市民参加を推進するための仕組みをすべての事業の中で組み立てていく必要がある。西京区の座長として,2回ワークショップを実施した。1回目は西京区の魅力を持ち寄ろうということで,2回目は環境をテーマにしたワークショップを行ったが,盛況で,中でも小学生の地球環境問題に関する提案はすばらしかった。継続していくためには予算や体制が不十分であり,各局の事業として区レベルに下りて話をしていく必要がある。わくわくワークショップ全国交流会には京都市職員も参加しておられたが,そういう力がいろいろある。

  これから環境の話はもっと難しくなっていく。例えば交通の問題でも,路面電車を導入するとか,中心部への車の乗り入れを規制するとか,自転車で行けるまちにしようという話が出てくる。そういうことまで合意形成しなければならない。イギリスやデンマークではフューチャーサーチ会議といったワークショップの手法が開発されており,市民やNGO,行政などにセクターを分けて,利害関係者全員が集まり3,4日かけて,問題を共有し,未来を描き,そこに至るプロセスで自分たちのセクターは何ができ,どこに課題があるのか話し合う。そういう合意形成の大きなワークショップをやらなければならない時代になっている。その際,役所の中のパートナーシップも推進していただきたい。厳しい財政事情の中で国も地方を見捨てる時代には,パートナーシップを築いた都市が生き残る。このことを京都市も十分認識してほしい。

 

内藤正明部会長

  環境から少し距離をおいた立場の委員からもご発言をいただきたい。

 

須藤委員

  数年前に学生を連れてドイツに行ったときに,環境問題が話題になった。ドイツでは50~60年代に急速な経済成長による環境の汚染で,黒い森の3分の1が枯れ,東ドイツでは美術館や彫刻が真っ黒になった。ベルリンやフランクフルトで,それに対する反省として何をしているかが話題になったとき,行政と市民がいかに協力するかということと同時に,いかにして市民を教育するかが重要だという話が出ていた。例えばドイツではゴミの分別が徹底しているが,市民がそれを守っているのは,行政の指導や教育が浸透したからだ。いかに協力するかを学校教育から生涯教育に至るまで市民に教育していかないと,誰かがやってくれるとか,行政が責任を持ってくれると市民が考えていたのでは解決できない。

  ドイツでも初期は政府,行政の責任ということでやっていたがうまくいかなかった。いかに市民が協力し,共生していくかという教育がされていなかったことが失敗の原因だということだった。資料には行政の責任としていろんなことをやるということは書かれているが,いかにして市民教育にかかわるかという部分が抜けている。市民生活の主体である市民の方々の協力や,それに対する行政による教育が必要ではないか。

 

にしゃんた委員

  専門家でない一市民の感想としては,ゴミを出してはいけないということを新聞などではよく目にするが,京都市の現状がどうなのか分からない。市の掲示板などで,このようにゴミの量が増えているといった現状をフィードバックすることも大事ではないか。

  スリランカでは家庭から出るゴミを各家庭で処分している。最近燃えないゴミも燃やしているのは問題だが,牛乳ビンなどはデポジット制でビンを返すとお金が返ってくるし,包装紙には新聞紙を使うなどリサイクルがうまくできている。先進国の実情を研究すると同時に,昔の日本はどうだったかということを見直せば,より明確にビジョンづくりができるのではないか。

 

内藤しげ委員

  出雲市では白いゴミ袋に名前を書いてゴミを出している。ゴミ袋は1週間に1枚は無料で配布されるが,それ以上ゴミを出す家はゴミ袋を買わなければならない。消費者が包装の過剰なものを買わなくなり,ゴミが減ったということだ。清掃事業にはお金がかかる。京都のような大都市では難しいかもしれないが,たくさんゴミを出す場合は有料にすることを考えてはどうか。また,出雲市の場合は地域にゴミ減量の委員がいて,ゴミ回収日には当番が名前の書いていないものをチェックする。それによってたいへんゴミが減ったということだ。

 

高月紘副部会長

  このテーマの切り口として,主体性の位置づけが問題だ。資料は,あくまでも行政が何かを市民に対してするという構成になっている。過去の流れからやむをえないところもあるが,21世紀に向かって新しい京都をつくっていくときに,従来型のスタイルでは耐えられない。普及する,市民参加を呼び掛けるというスタンスで書いているかぎり,この部会での委員の同意は得にくい。抽象的だが,これはすべてにかかわる問題だと思う。いかに市民の主体性をこの中でつくりあげていくか,それに対してどう行政がサポートしていくかという視点で構成を見直す必要がある。

 

内藤正明部会長

  それが情報や教育とセットにならなければならない。行政は市民や事業者など京都市を構成するメンバーの総意を受けて作業するサーバントであり,自分の意思でどんどん動いてもらっては困る。どこに市民の意思があるのか,21世紀に京都市民が京都をどうしたいのかを主体的に出していかなければならない。

 

野口委員

  京都は豊かな自然に恵まれており,野生の動物がたくさんいる。猟友会に関係しているのだが,雌の鹿を撃ってはいけないという法律ができて,鹿が増え過ぎて農林業に被害が出ている。またニホンカモシカも増えている。自然環境を破壊すると野生の生物は入ってこない。以前は西賀茂,上賀茂のあたりにはキジがたくさんいたが,今は1羽もいない。府の林務課が放鳥しているが,孵化させて生まれたものを自然に放しても狸や狐に食われて生き残るのは1割にすぎず,経費の無駄だと言われている。行政も猟友会などとタイアップして,野生の動物の適正な保護に努めてほしい。

  北山には以前は御猟場があったが,今はスギやヒノキを伐採に便利なように直線に植えてあり,外敵に襲われるため野生の動物は棲みつかない。また,実のなるかん木を植えないので餌がなく,サルやイノシシなど野生の動物が里に出てくる。人間の社会が野生の動物を受け入れることは難しい。京都市は自然環境が豊かな都市であり,森林整備計画に基づいて,野生の動物を保護してほしい。ただし,あまり過保護過ぎてもいけない。人間がいかにうまく受入体制をつくり,自然環境の中で動物が生活できるようにするかも,これからの京都の課題の1つではないか。

 

内藤正明部会長

  抽象的に言えば「自然や野生との共生」ということで,共生するとはどういうことかをもっと真剣に考えなければならない。どこまで人間が自然や野生とかかわりをもってつきあっていくかのポリシーを京都も問われている。今まではテーマになっていないので,今回のテーマとして考えてみてもいいかもしれない。

  エネルギーについてもご発言いただきたい。

 

浅岡委員

  エネルギーについても同様に,どうしようとしているのか,具体的な推進のイメージが見えない。須藤委員のご意見に同感で,パートナーシップの推進は市民がそれにこたえられるものになっていくことなくしてありえない。行政の職員も同じで,個をどう鍛えるか,どう励ますかが行政の大きな課題だと思う。

  ドイツの都市の場合はきちんとした方針があり,その方針が市民との間で共有されている。京都の場合も方針の明確化なくして中身はできない。環境問題を全体の中にどう位置づけるかを,大きな枠組みづくりの中で示してほしい。行政はこういうことをやっていますと言っても,プライオリティをつけないと市民にメッセージとして伝わらない。京のアジェンダ21フォーラムでも,個人の参加は少なく,そこをどう乗り越えるかはこれからの課題だが,それはトップからの大きなメッセージなくしてはできない。それを明確にしてほしい。今回のグランドビジョンもそうした柱が立たないかぎり,ほとんど意味がない。

  行政はいつも計画づくりをしているが,何かを実行したいから計画をつくるのであって,実現したいことが行政の中になければならない。計画をつくる人が実施する責任を負っているということを自覚して計画づくりをする仕組みがなければならない。これまでは計画をつくれば役割が終わるという形での仕組みがあったように思うが,そこを逆転していただきたい。方針は何か,実現しなければならない目標は何かということの中で,サブスタンスとして環境を充実していただきたい。

  パートナーシップは,共有されている目標を,手法も含めて合意の範囲内でどう実現するかという部分で非常に重要だ。合意形成しなければならない部分は,パートナーシップよりむしろ利害の対立をどう調整するか,市民に権限を与えるのかという部分だ。そこを分けて考えなければならない。環境については大きな方針では合意があるが,個々の問題については必ずしも合意があるわけでなく,深刻な議論をしなければならない部分がある。その部分への対応のルールをきちんとつくらなければならない。行政が理解する枠の中でどう推進するかというパートナーシップでは,市民の参加意欲を呼ばない。市民は手足でしかないという懐疑心を常に持つことになる。行政が決めたことは決めたことということではなく,もっと議論を深めることや,それを進めるための大きな基本方針の合意が必要で,そこに環境問題をどう位置づけるかということなくして進まない。3段階くらいレベルがあると思う。

  エネルギーについても,自然エネルギーを普及させるという位置づけがない。こういう施策を入れてはどうかという議論の前にそれが必要だ。

 

石田委員

  中華料理店を経営しており,地域の料飲組合の役員をしている。以前は廃油は石けんの固形材料に使う買取業者があったが,近年はそういう業者もなく,金を払って回収してもらっていた。京都市が廃食油の燃料化事業を始めたので,組合に諮って実行している。営業関係のものだけでなく,家庭で出る廃油についてもゴミ収集車に廃油受けなど,回収できる処置をとれば,水の汚染も少なくなるのではないか。

 

野口委員

  船岡山公園で北区のふれあいまつりを実施したが,事前に区民しんぶんとポスターでディーゼルエンジン燃料用の廃油を回収するという案内をしたところ,かなりの量が集まった。全市的にやれば相当量集まるのではないか。市民に呼び掛け,回収方法も工夫して取り組んでいただきたい。

 

内藤正明部会長

  廃油以外にも食品関係の廃棄物はたいへんな量になり,1つひとつ解決していくのはたいへんなことだ。

 

笹谷委員

  環境教育については京のアジェンダ21フォーラムでも位置づけている。京都市は人口の10%が学生,2%が大学教職員であり,「大学センターなどがイニシアチブをとり,各大学での取組を支援するとともに,学生センターなどの機関と連携をとって環境教育を進めていくことも必要」と提言している。それ以外にも,企業や行政の職員を対象とした研修や生涯学習,NGOでやっていることを相互に乗り入れるべきだ。市役所の職員研修などは市民といっしょにやらなければ意味がない。

  再生可能エネルギーについては,市民参加,市民所有のものを増やしていくべきだ。デンマークで風力発電が爆発的に伸びたのは,個人が所有する,あるいは市民が組合をつくって保有するという政府の明確な方針があったからだ。バイオマスにしても風力発電でも,可能性はいろいろある。新エネルギービジョンの話も明確に位置づけていく必要がある。

  京のアジェンダ21は行政計画であるけれども,パートナーシップ計画であり,市民計画であり,事業者計画でもあるということを事務局には重視していただきたい。そういうパートナーシップ計画を全部についてつくらないと,京のアジェンダ21フォーラムのようなものは実現できない。

  ISOの取得という話があるが,プランを立てるだけでなく,実行してみてその目標値に達しているか,本当に成果があるのか常に見直す。そういうマネジメントシステムを動かす必要がある。ISO14001や9001など行政はずいぶん取得している。これからISOの考え方は市のいろんな機関に広まっていくことを認識していただきたい。また,企業やNGOの様々な活動を紹介する事務局に市役所がなってほしい。

  景観の話は別の部会のテーマかもしれないが,町並み以前に三山の自然や京都らしさ,場所らしさ,歴史性,文化性が体得できる深みのある場所の意味と価値が大切で,そういうものをつくっていくことについても明記しておかなければならないのではないか。

 

浅岡委員

  いかに市民をしっかりさせるかはいわゆる生涯教育,学校教育を超えなければ実現できない。パートナーシップのプロセスに参加することが教育になる。自然の問題にしてもそれをどうしたらいいかを一緒に考え,行動する場が必要だ。

  小学校への新エネルギーの導入にしても,全体から見ると非常に少ない。それをどう活用するのかという視点がないと,意義が5分の1にも100分の1にもなってしまう。それが教育となり,発想が変わっていく場となるようにしなければならない。教育は100年の計と言われるが,100年かかっていては追い付かない。5年くらいで効果が表れる学習プロセスを考えるべきだ。

  そういう意味で京のアジェンダ21や景観・まちづくりセンター,エコロジーセンターをどう位置づけていくのか。いずれの機関もまちづくりという観点でオーバーラップしているのに,別々に仕事をしているようでは困る。それぞれの部局ができるところしかやらないと,教育効果も減殺される。NPO支援センターをつくっても,サブスタンスにつながらないと生かされない。それはトップの責任だと思う。

 

村井信夫委員

  醍醐地域には清掃工場,下水処理場があるが,その建設に当初からかかわってきた。反対運動があったり,環境汚染の問題がある。理解を深めるために施設見学を受け入れているが,かつて原子力の研究をしている学者が見学に来られたとき,最初は自らの立場を名乗らずに,こんなところにわれわれが住んでいるのは不思議だというような問題提起をされ,そして帰りぎわに名刺を出された。学者には自分の研究分野の安全性も含めた話をしていただきたい。

  廃油の有効利用など,環境局でもいろいろ取り組まれている。公害対策協議会などを通じた話し合いの機会にも行政が前向きにやっておられることを感じる。いろいろな取組の中での整合性についてもっと研究していただきたい。

 

高月紘副部会長

  研究者には自分のやっていることは正当化したいという気持ちがあるが,いろんな視点があるということは謙虚に考えなければならない。今議論していることにもいろんな側面があるが,そこを市民も一緒に議論し,合意形成していくことが非常に重要だ。行政が一方的に決めて進めていく今までのスタイルではいけない。時間がかかり,行政もしんどいが,そういう努力がこれから必要になってくる。

 

内藤正明部会長

  エネルギーの問題は技術の問題のように思われがちだが,われわれがこれからどう生きていくか,どう社会をつくり直すかということとエネルギーは不可分だと思う。原子力で大量発電するような社会を欲するなら,リスクを覚悟でそれしか選択がないかもしれない。廃油や太陽光をこまめに使う社会は,今のような技術や産業の仕組みとは大きく変わった社会でなければならないのではないか。単に太陽を利用する技術を開発して今の社会につなげば何とかなるということではないと思う。技術は技術として一般市民と無関係に専門家が研究すればいいものではない。

  とくにご意見がなければ,これで本日のテーマ別の討論を終了させていただきたい。

 

(2) その他

笹谷委員

  本日の資料の内容は全面的に変える必要がある。2010年までにCO2排出量を10%削減,ISOを導入して計画行動,チェック見直しを市役所の全業務について行う,同時にそれを市民参加型で行うといったことを書かないと,目標が不明確で話にならない。そういうパートナーシップのビジョンをどうするのか。

 

内藤正明部会長

  今後の予定としては,本日いただいたご意見を取り入れた形で,6月下旬に起草委員会の原案がフィードバックされてくることになり,そこで最終案に向けてのご意見をいただく機会がある。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  本日の議論にはミクロの観点からの施策に関するご意見と,マクロの視点から基本構想に書き込んではどうかというご意見の2とおりあった。前者の環境・エネルギー部門に関するご意見については,部会で今まで議論していただいたテーマについてまとめ,基本計画の策定に向けて,引き続きこの部会でご議論いただくことになる。また,グランドビジョンをどうつくるかというマクロのご意見については,部会長にとりまとめていただき起草委員会に持ち寄るというスタイルで進めたいと考えている。

 

内藤正明部会長

  次に基本計画の策定というステップがあって,そのレベルできちんと言わなければならないことがたくさんある。今後の作業の中で,ビジョンとしての理念的な構想と基本計画に盛り込むものとの仕分けをしていきたい。

 

笹谷委員

  資料の点線で囲まれた部分が基本構想で,その下が基本計画と考えていいのか。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  囲みの中は,それ以下に書かれているものの要約で,本日の部会での議論の材料として事務局から提供したものであって,これに従って基本構想や計画が書かれていくわけではない。基本構想や基本計画はここでのご議論をもとにこれからつくっていくことになる。

 

内藤正明部会長

  次回の開催予定は7月6日(火)となっている。そこで起草委員会の構想素案が出されるので,これまでの議論が本当に生かされているのかを総合的にご議論いただく機会になる。

 

笹谷委員

  箇条書きでこの論点は抜かさないでほしいということを書いたものを提出したい。行政が何をするかでなく,市民が主体性をもって取り組めるという観点から,それを行政がどうサポートするかというように書き直さないと了承しないということで,突き返す作業ができるのか。

 

事務局(高木総合企画局長)

  本日提出させていただいた資料は討議資料であり,これを書き直すことはしない。ここでご議論いただいた内容が基本構想や基本計画に盛り込まれる。

 

内藤正明部会長

  本日の議論が材料になって今後の作業が進むとご理解いただきたい。

 

笹谷委員

  市民が主体性をもって取り組めることが前提のものが出てくると考えていいのか。

 

事務局(高木総合企画局長)

  この部会でのご意見がそういうところに集約されれば,基本構想にそれが盛り込まれることになる。

 

内藤正明部会長

  起草委員会での取捨選択はあると思うので,そこで欠けた部分については次回にご意見をいただきたい。

  以上で本日の議論は終了したい。

 

 

3 閉 会

 

 

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