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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第10回 都市整備・交通部会

ページ番号35872

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第10回 都市整備・交通部会

日 時 : 平成12年6月14日(水) 午前10時~12時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲」

 

議 事 :

(1) テーマ別討論「都市施設整備のあり方」について     

(2) その他

 

出席者 :

◎飯田 恭敬(京都大学大学院工学研究科教授) 

上村多恵子(詩人,京南倉庫㈱代表取締役社長) 

川崎  清(左京区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,立命館大学理工学部教授)

○北村 隆一(京都大学大学院工学研究科教授) 

清水 三雄(異業種交流コスモクラブ会長) 

野間光輪子(京町家再生研究会幹事) 

三木 千種(市民公募委員) 

宗田 好史(中京区基本計画策定懇談会座長,京都府立大学人間環境学部助教授) 

山田 浩之(下京区基本計画策定懇談会座長,京都大学名誉教授,大阪商業大学大学院地域政策学研究科長) 

中谷 佑一(京都市副市長)

                                

以上10名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長

 

 

1 開 会

飯田部会長

  ただいまから,第10回都市整備・交通部会を開催させていただく。

 

 

2 議 事 

(1) テーマ別討論「都市施設整備のあり方」について

飯田部会長

  本日は基本計画素案作成に向けたテーマ別討論の最終回になる。本日までの討論を踏まえ調整委員会で素案を作成することになるので,よろしくお願いしたい。

  それでは,京都市から資料の説明をしていただく。

 

交通局(江草局長)

  資料の説明の前に,前回ご議論いただいた公共交通の運賃制度について説明させていただく。市バス・地下鉄の運賃設定については能率的な経営の下に適正なコストを受益者に負担いただくことを原則としている。加えて公共交通事業の公益性の観点から,運賃以外に国及び地方公共団体から一定の財政支援をいただく仕組みとなっている。特に地下鉄事業については,国及び地方公共団体から建設費用の7割程度を補助金等で支援いただくことにより,運賃水準の抑制が図られる仕組みである。

  市バスについては,規制緩和時代を迎え価格競争が予測される中で,仮に運賃を100円に引き下げた場合,現行ダイヤで輸送可能な限界である約3割増の旅客の増加を見込んでも,市バス,地下鉄事業それぞれで新たに年間80~90億円程度の減収が予測される。従って,一律的な単純な値下げでは財政が逼迫する厳しい状況になる。

  地下鉄については,制度的には一定の間隔で運賃改定,旅客の増加を見込み,開業後約30年で収支を合わせる仕組みになっているが,人口の減少,低経済成長の中でこの運賃制度が保たれるかどうか非常に厳しい状況にある。

  ――(引き続き,資料「基本計画検討資料「都市空間のあり方」「都市施設整備のあり方」(交通)」に基づき説明)――

 

水道局(瀬戸局長),下水道局(吉村局長),建設局(野嶋局長)

  ――(資料「基本計画検討資料「都市施設整備のあり方」(上水道・下水道・河川)」に基づき説明)――

 

清水委員

  地下鉄と市バスの運賃設定については,受益者負担の意味を再検討すべきだ。地下鉄や市バスの受益者は乗客だけではない。公共交通機関の利用者が増えることで自動車交通が減ると,交通事故が減ったり振動や排気ガスが少なくなるなど,利用者以外の人も受益者となる。地下鉄や市バスに乗らない人にもコストを負担してもらっていいのではないか。運賃を100円にすれば80億円の減収になるということだが,減収分を広く市民に負担してもらうことも検討してはどうか。

 

交通局(乾部長)

  現在の輸送力で約1.3倍の乗客の輸送が可能であるが,それを前提にしても運賃を100円にした場合,年間バス事業で90億円,地下鉄事業で80億円の減収となる。

 

清水委員

  1.3倍に乗客が増えるのなら大変なメリットであり,80~90億円の減収でも十分検討に値する。

  地下鉄東西線の社長が他の公社の副理事長を兼任していたという報道があったが,地下鉄や市バスは21世紀の京都市交通の基幹であり,社長は民間のように24時間経営に専念すべきだ。巨額の税金を投入して建設した地下鉄であり,地下鉄と市バスという公共交通の2本柱をいかに活性化するかを考えなければならない。

  もう1つは,車が走りやすくなることと同時に,安く安全に駐車できることも重要だ。観光客を温かく迎える意味でも,公営駐車場を24時間利用できるようにしてはどうか。

 

飯田部会長

  受益者負担については直接的便益と間接的便益があり,どこまで考えるかは難しい問題だ。公共交通の利用者が増えれば沿線の商業活動が活性化するなど,いろんな面があるが,経済学的にはどのように考えればいいのか。

 

山田委員

  この試算は仮定であって,100円に運賃を値下げすることによって実際に1.3倍に乗客が増えるかどうか分からない。利用者以外の受益を前提として赤字を市財政で負担していくという考え方もあるが,それは最終的には税金を使うことに市民の合意が得られるかどうかの問題になる。日本では制度的に乗り越えなければならない問題もある。沿線に公共施設を持ってくるなど,京都市全体として地下鉄をもっと利用してもらうための土地利用を考えるのも1つの方策だ。

 

上村委員

  市バスや地下鉄の問題については,京都経済同友会の観光産業部会で提言をまとめたことがある。地下鉄と市バスのターミナル連携が悪いうえ,市バスの系統に重複が多く,その大半が四条通を通っている。住民ニーズに基づいてつくられた系統とは思うが,トータルな体系の下で有機的に結びついているとは言えない。昔の市電のように環状に走らせるなど,観光客にも分かりやすい市バス網にして,系統番号も行き先が分かりやすいように整理してはどうか。また,市バスを地下鉄のターミナルごとに集約し,市バスから地下鉄に乗り換えたときには乗り換え運賃を無料にして,代わりに地下鉄と重複するバスの系統は廃止してはどうか。もう一度トータルに市バス,地下鉄の連携も含め利用者の視点に立って見直す必要があるという趣旨で提言をまとめているので,参考にしていただきたい。

  事業性と料金設定については,採算に合わないから公益事業でせざるをえない面もある。京都の場合建設費が高い時代になってから地下鉄を整備したこともあり,償却上の負担が他都市と比べて大きい。アメリカなど外国のPFIや民間委託,民間経営で乗客数を増やすためにいろいろな工夫をしている例を参考にしてはどうか。

  もう1点は,バリアフリーの施策と同時に,世界からVIPが京都に来られるときに地下鉄や市バスが利用できるような施設整備を考えてほしい。昨年カナダから首相率いる300人の経済視察団が京都に来る計画があり,大人数なのでバスや自動車ではなく地下鉄やJRを使って移動するシミュレーションをしたが,車寄せやVIP専用の出入口がないため,警備の関係上不可能という結論になった。障害者や高齢者のための施設を整備するとき,VIPを迎えることも同時に考えてほしい。

 

飯田部会長

  バスと地下鉄の連携については前回も議論になった。目的地への直達サービスをするか,乗り換えをして多頻度で利用できるようにするかということだが,料金も含めて今の制度の枠内では実現が難しい。地下鉄と市バスの連携について市交通局の考え方を聞かせていただきたい。

 

交通局(江草局長)

  バスと地下鉄のネットワークで市域を面的にカバーすることが,市の交通事業運営で最も重要な課題であり,地下鉄東西線の開通にともないバス系統検討委員会を設けてご議論いただいた。少系統多便型にする場合,乗り継ぎの物理的抵抗感と運賃の問題が出てくる。物理的問題についてはまちづくりの観点から考えていかなければならないし,運賃の問題については割り引いた分乗客が増える展望がなければ,事業者として乗継ぎ料金を無料にするところまで踏み切れない。地下鉄とバスの機能的連携やバスの系統を分かりやすくすることについては,今後の検討課題と考えている。

 

北村隆一副部会長

  市域を地下鉄と市バスで面的にカバーすることは重要であり,バスの系統の整理・再編などやるべきことは多い。

  近い将来規制緩和によって,独占的にすべての地域にサービスを供給する代わりに他の事業者の参入を規制するという現在の立場が崩れた場合,京都市交通局はどういう役割を果たしていくべきなのか。

  受益者負担と市民の合意形成についても,市が全域にサービスすることを前提とする場合と,民間が参入して市は特定のサービスを提供する場合とでは全く考え方が違ってくる。規制緩和を視野に入れて,京都市の提供する交通サービスの規模や内容等を考えるべきだ。

 

交通局(江草局長)

  規制緩和時代に市バス事業が生き残れるかどうかは非常に厳しい状況だ。決算資料を配布しているが,バス事業で経常損益として約19億円の赤字を出しており,これを見ても経営上は民間に負けている。公共交通としての位置付けを明確にし,市民の足を守っていくという観点に立って,経営体質を改善しなければならない。この4月から「経営健全化プログラム21」を策定し,3年間全職員の5%以上の給与,ボーナスのカット,ノルマアップによる職員数削減等,総給与費の3割削減を目標に,5年間で経常収支を合わせる計画を立てて取り組んでいる。

  規制緩和時代に生き残るために,地下鉄とバスのネットワークを持っていることは公営交通の有利な点であり,その観点からも地下鉄と市バスの乗継ぎの利便性と運賃設定は大きな課題である。規制緩和で民間が京都市交通局のエリアに入ってきた場合には徹底してその事業者と闘わなければならないと考えており,そのために100円バスの試行やバス専用1日乗車券の値下げ,スルッと関西への加入等,乗客の利便性の追求とサービスの向上により乗客を増やすことを基本的スタンスとして取り組んでいる。

 

宗田委員

  運賃を100円にした場合のシミュレーションは興味深い。会計決算概要を見ると,バスで43億円,地下鉄で209億円の赤字が出ており,一般会計からの繰入金がバスで年間83億円,地下鉄で140億円となっている。運賃を半額にするとさらにバスは80億円,地下鉄は90億円赤字が増えるということだ。財政収支の健全化のために職員給与の削減を行っているということだが,どのような料金体系にすれば最も利益率や利用率が上がるか,どのような路線の組み方をすれば経営が健全になるかという,「攻め」の部分の試算もしておられると思うので,その内容をもっとオープンにしてほしい。

  世界的には料金を半額にして公共交通の利用を促進することで,環境やまちづくりの課題の解決を図る自治体が増えている。公共交通は乗客を運ぶだけでなく,都市環境の負荷を軽減する責務もあり,その場合の一般会計からの繰入れの理由や起債の名目は環境政策になる。例えば環境政策審議会で議論されているように,現在は揮発油税は道路財源とされているが,公共交通優先を考えるなら,自動車利用者から徴収した税金を公共交通に使ってもいいのではないか。公共交通の運賃を下げることで利用率が上がればどのような経済効果や環境効果があるかについても,多様なシミュレーションの方法が出てきている。

  環境を優先するまちづくりにとって最も合理的なあり方である公共交通の経営体質を考えた場合に,民営化を考えざるを得ない状況も出てくる。

  国や地方自治体のあり方,企業のあり方,環境政策のあり方等が大きな転換期にさしかかっている中で公共交通,公共事業を考えるという難しい課題に取り組んでいるわけで,本日の資料をもっと豊富にして,市民的な議論にまで広げていく必要がある。個人的には,環境のためなら80億円程度一般会計からの繰入金が増えてもいいのではないかという印象を持ったが,今の京都市の財政状況を考えると難しい。ただ,この数字にはいろいろな意味があるということを申し添えたい。

 

飯田部会長

  今はバスはバス,地下鉄は地下鉄で独自に経営しているが,トータルとして経営することも考えられる。交通を都市政策全体の中で考えることもできる。従来のやり方は壁に突き当たっており,抜本的に変えなければならない。規制緩和されれば,儲かるところだけ民間が参入するということになりかねない。市交通局がどう生き残るかということでは,巨額な投資が求められ新規参入が困難な地下鉄を生かすしかない。最悪のケースを想定して都市交通のあり方を考えるべきだ。

 

中谷委員

  交通の問題に対する市民の関心が高い中で,経営の赤字がいちばんの問題だ。仮に今の規模で新しい会社を興せば黒字になる。公務員賃金体系で職員の給与が上がっており,過去の負債を背負って経営している点が最大の悩みだが,全てを一気に切り替えることはできない。

  バスの路線を分かりやすくすると言っても,少系統多便型にして乗り換えるほうがいいという意見もあれば,多少分かりにくくても目的地まで1本で行けるほうがいいという意見もある。1つのものさしでは割り切れないので,いろいろな事情に対応できるよう,皆さんのご意見を参考に努力したい。

 

清水委員

  運賃を下げれば3割乗客が増えるのであれば,来年からでも早速やるべきだ。東京都の石原知事が2年後にディーゼル車の都内通行を禁止すると発表したところ,とても対応できないと言われていた技術が後から追いかけてきて2年後には実現しそうな状況になっている。運賃を下げることで地下鉄と市バスをフルに利用してもらえるのであれば,財政の問題は後から考えてはどうか。

 

飯田部会長

  いろいろな考え方があるが,行政を担当する立場から考えると難しいのではないか。

 

北村隆一副部会長

  受益者負担は鉄則ではない。海外ではいろいろな原則で公共交通運営費を捻出している。運輸政策審議会でも上下分離方式で軌道等の整備は国でやり,独立採算で償還しなくてもいいのではないかという答申が出ている。制度面での障害を京都が率先して乗り越えていってほしい。

  上下水道について,町家がマンションに建て替わっているが,戸数が増えることで都心部での水の使われ方が急激に変わっているように思う。これに対応した十分な上下水道のインフラはあるのか。上下水道だけでなく駐輪場等も含めて,今の都市のインフラが低層木造住宅から高層マンションへの転換に対応していけるのかどうか。

 

水道局(瀬戸局長)

  京都市全体で見ると,世帯数は増えているが給水人口は増えていない。企業活動の停滞や節水意識の高まり,節水機器の普及等により近年の水使用量は横ばいから減少傾向にあり,浄水場,配水施設等には余裕がある。町家のマンションへの建て替わりには十分対応できる。

 

下水道局(吉村局長)

  下水道使用量も水道使用量に比例している。使用戸数は年間8千~1万戸程度の増加となっているが,大企業が市外に移転するなど大口使用が減少している。処理場では現在150万3000トンの処理能力があるが,日平均で約7割の量を処理している状況であり,余裕はある。

 

飯田部会長

  神戸の震災直後は水を買うために車で動いたことが交通混乱の一因となった。上水道について,これまで取り組んできた主な施策・事業の中に「耐震性貯水槽の整備」が挙がっているが,耐震性貯水槽が整備されれば震災時の不要な交通を削減できる。この4つでどの程度まかなえるのか,将来的な増設を予定しておられるのか。

 

水道局(瀬戸局長)

  市全体の防災計画の中で,消防局が主体となって拠点に地下型の貯水槽を数箇所つくっている。水道事業独自では浄水場,周辺部の貯水タンクを緊急時の貯水槽として使えるよう,国の補助制度により緊急遮断装置を設置している。また,消防局との共同計画の中で営業所や資材貯蔵所等4箇所の事業所に100トン規模の貯水タンクを整備している。

 

建設局(野嶋局長)

  堀川や西高瀬川など市内の河川については,消防用水として利用できるよう検討している。

 

上村委員

  上水道について,「水質汚濁防止法に基づく地下水質の常時監視」とは具体的にはどういうことか。また,どのようにして今後市民意識を高めていこうと考えているのか。下水の汚泥処理について,溶融石材化以外の有効利用の可能性は探っているのか。

 

水道局(瀬戸局長)

  水道局独自で地下水質の常時監視をしているわけではなく,環境局が京都市域全体で地点を定めて地下水を採水し,水質検査を実施している。

 

下水道局(吉村局長)

  汚泥の有効利用について,年間含水率が74~5%の汚泥が12~3万トン発生する。これを脱水焼却すると14分の1から15分の1に減量する。京都市では処分場が少ないため,全国に先駆けて全量焼却に取り組んできた。現在も尼崎等で埋立て処理をしているが,埋立てから有効利用へと方向転換しつつある。一部を焼いて溶融石材化しているほか,焼却灰を歩道のブロック利用やタイル加工など,年間発生量の20%を有効利用している。将来的には全量の有効利用を考えている。

 

川崎委員

  従来都市インフラと言われていたものに環境インフラ的な考え方を導入しながら,総合的な環境対策や制御,リサイクルを考えていかなければならない。個別問題ではないように思う。汚染その他を総合的に定点観測するための監視システムを構築し,それに応じた制御システムを考えなければならない。

  京都市では家庭廃油のディーゼル燃料化や資源ゴミの回収などを行っているが,全体的に見ればまだ不徹底で,回収処理とリサイクルシステムの構築が必要だ。民間をインキュベートする,半公共的リサイクルの生産システムを構築するなど,ぜひ研究課題として進めてほしい。

 

飯田部会長

  この問題はどこかの部会で検討されているのか。

 

事務局(葛西政策企画室長)

  環境・市民生活部会で検討していただいている。

 

飯田部会長

  環境・市民生活部会に今のご意見を伝えていただきたい。本日は最終回であり,交通,上下水道,河川以外の一般的な都市施設についてもご意見をいただきたい。

 

山田委員

  河川に関しては治水と環境の2つの側面があり,後者については親水空間の問題がある。京都は一部に非常に優れた親水空間があるが,全体としてはまだまだ不十分であり,もっと親水空間をつくる必要がある。親水空間にはウォーターフロント開発的側面があり,集客施設にもなる。その点では鴨川の床は世界的に誇れるウォーターフロント開発であり,観光の分野と重なるが,もう少しそういう部分を書き込んではどうか。京都府の管轄ということで鴨川についてひとことも触れられていないのは,市民としていちばん大事なものを忘れられている感じがする。治水以外でも鴨川は京都市民に大きくかかわっているのだから,もっと鴨川の親水空間をよくすることに積極的に取り組んでほしい。

 

川崎委員

  鴨川に伏流水の通る地下トンネルをつくる計画があるが,小さい堰をつくって水生動植物の保護を図り,景観上問題なく水量調節することを考えてはどうか。河川断面を大きくしないと水量調節ができないが,その障害になっているのが橋げたであり,鴨川の橋を全て支柱のない橋に取り替えてはどうか。橋の下の空間が橋脚があることで貧弱になっている面がある。地下水のトンネルをつくる前に河川改修等で工夫すべき点はあるのではないか。

 

宗田委員

  親水空間について,堀川の整備は地域住民から提案して公共事業を地域に持ってきた21世紀を展望する京都らしい事例だと思うが,京都市民の水辺意識がずいぶん変わってきていることを理解する必要がある。過去15~20年の間に鴨川沿岸でスポーツやレクリエーションをする市民は確実に増えている。過去20年間に鴨川の市民の利用方法が変わってきたというデータはあるのか。従来のように鴨川について,景観という古い捉え方をしている人もいるが,今までなかったような形で鴨川を利用する人たちが出てきており,ポン・デ・ザール問題は1つの転換点だったように思う。都市施設としての鴨川はアメニティ空間,集客という意味で非常に重要だ。

 

建設局(野嶋局長)

  今までの河川整備は洪水を防ぐため,直線的なコンクリート壁をつくり,断面を確保して早く海に流してしまうという方向で進めてきた。河川法の改正や市民のニーズもあり,都市の河川については親水性の確保が重要な課題となっている。今後市民のご意見を聴きながら整備していきたい。鴨川が貴重なアメニティ空間であることは十分認識しており,河川管理者にも整備を進めていただけるよう訴えていきたい。

 

野間委員

  資料には「安らぎのあるくらし」という表現が何度も出てくるが,安らぎのあるくらしを引っ張ってくるという観点で考えなければならない。何を軸とするかはっきりしないと方向が定まらない。京都の上下水道も河川も非常に整備されており,市民は断水や洪水の心配もなく安心して暮らしている。それでは今求められている安らぎのあるくらしとは何かと考えると,環境や教育,高齢者が動きやすいかといった問題になる。公共交通にしても,大量に運搬しているメリットを明確にして市民に訴えるべきだ。バリアフリーや高齢者が動きやすいということに乗継ぎがネックになっている。歩いて楽しめるゾーンが整備されれば高齢者が動くことによる経済効果も出てくる。公共交通利用を本格的に推進していくなら自家用車はどう減少させるのかなど,啓発していく視点に立って進めていくべきだ。

 

清水委員

  上水道について,資料に「京都市高度浄水処理基本計画」が挙がっているが,水道水は塩素やトリハロメタンなどの問題があって危険だということを聞く。現状の水道水の安全性と,新しい浄水処理方法について説明していただきたい。

  安らぎのあるくらしと関連して,先日,長岡京市で育った娘が祇園で生活したいと突然言い出した。祇園の人に親切にされ,川の水がきれいでヒゴイが泳いでいるのを見て心が安らいだと言うのだが,京都にはそういうソフトとハードの一体化したすばらしい財産があることを再認識すべきだ。

 

水道局(瀬戸局長)

  京都市の水道水は琵琶湖から疏水で引いた原水を処理しているが,厚生省の水質基準を十分クリアしており,一生飲み続けても健康に問題はない。塩素の量もごく微量であり,人体に被害が出るレベルではない。高度浄水処理基本計画は環境ホルモンやダイオキシン,臭いの処理など新たな問題への対応を調査研究したものであり,現在の琵琶湖疏水の水質では,高度処理は実施しないという結論が出ている。

 

川崎委員

  公共交通の問題について,運賃を100円にすることで経常収益の赤字に加えてさらに80億円の赤字が増えるのは市の財政にとって負担である。また,運賃を下げると利便性やサービスが悪くなり悪循環が起こるのではないかと心配だ。むしろ利便性やサービスの向上により魅力ある公共交通機関をつくる努力のほうが大切だ。

  もう1つは,自転車の利用環境整備の問題で,自転車は歩行者と共存するのか車と共存するのかはっきりしない。道路交通法では車道を走ることになっているが,実際は歩道を走っていることが多い。空間に余裕があって自転車道の整備ができればいいが,空間で解決できない場合は時間制限やマナーで解決するしかない。総合的な自転車の利用方法を確立する必要がある。歩く人にとって歩きやすいということとも関連するが,施設整備の観点で解決できない部分をどうするかについても検討していただきたい。

 

北村隆一副部会長

  自転車問題は非常に難しく,違法駐輪の問題ばかりが注目されて問題の本質が見えないところがある。これまで自転車が走行し駐輪する場所について本腰を入れて整備してこなかった。道路交通法では自転車は基本的に車道を走行し,特別に表示が出ている歩道は通行してもいいことになっているが,実際はほとんどの歩道は通行禁止になっている。自転車が歩道を走るのは,世界的に見ると異常な事態だ。なぜ歩道を走るかというと車道を走ることが怖いからであり,問題は自動車を運転している人の認識にあるのではないか。自動車の運転者には自転車が車道を走る権利があるという認識がない。どんな交通手段を使っていても同等に道を使う権利はあるという認識が必要である。

 

川崎委員

  日本のように空間が少なく施設整備ができないところではマナーを徹底するしかない。自転車は必ず車道側を走るように徹底すればかなり変わってくる。無灯火自転車が多いなど,自転車についての走行のルールは徹底されていない。それを徹底することが第一で,その上で不足している部分は施設整備しなければならない。路上駐車が多いので自転車の走行が阻害されている面もある。お金や空間があって施設整備ができればいいが,空間プログラムで足りないところはソフトで解決しなければならない。

 

北村隆一副部会長

  停止信号を無視する自転車に交通切符を切るというような取り締まりも必要だ。ただ,自転車が車道を通行するものだという認識を自動車運転者に持ってもらうことが重要ではないか。自転車を使う人のモラルやマナーにも改善すべき点があるというご意見については同感だ。

 

清水委員

  自転車が歩道を走るのは自動車が怖いからで,それをやわらげるためには自転車を右側通行にすべきだ。そういう大胆な発想の転換が必要だ。

 

山田委員

  自転車利用に関して京都は安らぎのあるまちではないのは明らかで,駐車車両が問題なのではないか。道路の空間利用については,ロードプライシングも含めてソフトのあり方,TDMを真剣に考えていくべきだ。また,公共交通を新会社にすれば黒字になるということだが,それなら上下分離して地下鉄路線は京都市,運営は別会社にすれば解決する可能性があるわけで,経営形態も含めて公共交通を考えなければならない。  

 

(2)  その他

飯田部会長

  言い足りない点については,メモで6月18日までに事務局にお出しいただきたい。本日いただいたご意見については調整委員会に報告し,素案づくりの中で生かしたい。次回は8月下旬に基本計画の素案をご検討いただく予定である。

  それでは,本日はこれで閉会としたい。

 

 

3 閉 会

 

 

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