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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第6回 福祉・保健部会

ページ番号35858

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第6回 福祉・保健部会

日 時 : 平成11年8月31日(火) 午前10時~12時15分

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「瑞雲の間」

 

議 事 :

(1) 京都市基本構想(第2次案)について     

(2) 次期基本計画策定に向けた論点整理について     

(3) その他

 

出席者 : 

乾   亨(右京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学産業社会学部教授) 

北川 龍彦(京都市民生児童委員連盟会長) 

北村よしえ(京都市精神障害者家族会連絡協議会会長) 

玄武 淑子(京都市老人クラブ連合会会長) 

竹下 義樹(京都市身体障害者団体連合会副会長) 

中原 俊隆(京都大学大学院医学研究科教授)

◎浜岡 政好(佛教大学社会学部長) 

浜田きよ子(高齢生活研究所代表) 

宮下れい子(市民公募委員) 

森田 久男(北区基本計画策定懇談会座長,元佛教大学教授)   

横田 耕三(京都府医師会会長)

○渡邊 能行(京都府立医科大学付属脳・血管系老化研究センター教授)                               

 

以上12名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長

 

 

1 開会

浜岡部会長

  第6回「福祉・保健部会」を開催させていただく。

 

 

2 議事

(1) 京都市基本構想(第2次案)について

浜岡部会長

  本日はご議論いただきたい案件が2件ある。1件目は「京都市基本構想(第2次案)」についてで,各部会やパブリックコメントのご意見を踏まえて起草委員会で取りまとめた第2次案をご議論いただきたい。2件目は「次期基本計画策定に向けた論点整理」についてで,これまでのテーマ別討論で出た意見のポイントを「計画論点整理メモ」として整理したものの内容についてご議論いただきたい。

  それでは,最初に第2次案について私から資料を説明し,その後で委員の皆さんのご意見をいただきたい。

  第2次案作成に当たっての基本スタンスには,一気に読めるよう分量を抑えたこと,主語を「わたしたち京都市民」として市民のまちづくりの指針として位置付けたこと,平易な言葉で書くよう努めたこと,の3つのポイントがある。また,構想全体のストーリーの明確化が図られている。

  続いて資料1の目次をご覧いただきたい。第1章のタイトルが変更されており,第1次案の論理構成に加え新たな生活価値として「信頼」を実現していくことを示している。第2章は構成を大幅に変更しており,3節に分けて京都の進むべき指針をより明らかにした。第2章の構成変更については,資料2の別紙資料を参考にしていただきたい。第3章は市民と行政の信頼のもと,こうしたくらしとまちづくりを市民が主体的に市政に参加することにより実現していくことが大きな意味を持つとの考え方に立って,市政参加のあるべき姿を描き,最後は市民自らが自問する形での将来への宣言を行う記述としている。

  本文の修正内容については事前に送付した資料ですでにご確認いただいており,大きな変更箇所のみをピックアップして簡単に説明したい。

  前文ではこの構想が21世紀の最初の四半世紀における京都のグランドビジョンであることを宣言している。最後の段落で行政の責任を明記しており,起草委員長はこれにより本文を「わたしたち京都市民は」という主語でそろえることができると判断したということである。

  第1章については,第1節では「持続可能な社会」という表現が付け加えられ,「信頼」についての問題提起がされている。第2節は大きな変更はない。第3節では「得意わざ」という言葉に議論があったため,タイトルを「得意とするところ」,本文では「特性」と変更している。また,当部会でも「反省する視点が必要」とのご意見が出ていたが,京都の問題点を踏まえたうえで,こうした特性を生かしていくべきという考え方から最終段落が書き加えられている。また,「都市文化の伝統を守り育てようとしてきた」「かど掃きに象徴されるような生活文化」などの文言が当部会からの意見を踏まえ書き加えられている。第4節は方向性が見えにくいとの意見を踏まえ,このまちに実現したいのは「信頼」であるとして,その背景と目指す方向性を明記している。

  第2章については,当部会での「住み続けられるまちが大事」「京都は一色ではなく多様だ」といったご意見を踏まえて,まず冒頭で第1章と第2章の関係を整理している。第1節では各項で「わたしたち京都市民はこのようなまちをめざす」としたうえで,それはどのようなまちで,その実現のために何をしていくかを書き,最後に「わたしたち京都市民はこのようなまちをつくっていく」として締めくくる構成になっている。外国籍市民,人権,男女共同参画,防災対策の充実など,各項で記述が強化されている。「障害者」という表現については当部会でも賛否が分かれたが,起草委員会では結論として「障害者」という言葉を残している。また,「健康の保持・増進」「循環経済のなかで…持続可能なまち」といった文言が,当部会でのご意見を踏まえ盛り込まれている。

  第2節は「産業経済や文化がこのような形で展開されているまち」という構成になっている。(1)では企業が相互に信頼して支え合う「産業連関都市」の形成を打ち出し,環境や福祉分野での新しい産業の展開や観光都市づくりに触れたうえで,世界の人々が集まりそこを舞台に能力を発揮できる場所にしていくということで結んでいる。(2)では美術・音楽や教育についての記述や「しまつの文化」,また,当部会での議論を踏まえ「社会生活のなかで守るべき公共心」という文言が付け加えられている。第1次案の「本当の気品」という表現は「品格のある華やぎ」に変更されている。

  第3節は,基盤整備は市民のくらしと産業経済の両方を支えるものという位置付けが明らかにされている。情報関係もここで触れられている。また,ゾーンの中に地域があり,その中に住民の生活があり,必要とされる機能があるという当部会の意見を踏まえ,「市民が日常的な生活機能を身近に享受でき…高密度な都市をめざす」という書き方がされ,さらに南部についての記述が強化されている。

  第3章については,第1次案が市民参加を脅迫的に強制し,行政が市民をあやつるような文章が多いというご意見を踏まえ,前文で市民の市政への参加という考え方に整理している。第1節では分かりにくいというご批判のあった文章の表現を改めている。第2節では,議会制民主主義についての記述を変更し,NPOなどを「都市の一員」と位置付け,最後の段落で市民と行政が協力し合える仕組みを整理している。第3節は,タイトルを市政参加の理念を最も充実した形で実現している都市として,市民と行政との厚い信頼関係が築かれるという表現に変更し,最後は呼びかける形で締めくくり,私たちの市民憲章というイメージを打ち出している。

  資料3はパブリック・コメントを事務局で整理したものであり,第2次案の検討の際に参考にしていただきたい。

  今後のスケジュールについては,資料4をご覧いただきたい。第2次案についての各部会での議論を踏まえて起草委員会で第3次案を作成し,10月1日に開催予定の審議会総会に諮り,そこで了承が得られれば答申案として取りまとめたいというのが起草委員会の意向である。当部会で基本構想案についてご議論いただくのは本日が最後の機会となるので,忌憚のないご意見をいただきたい。また,それらのご意見の取り扱いについては部会長である私にご一任いただきたい。

  それでは,どこからでもご意見をいただきたい。

 

渡邊副部会長

  この部会にとって第2章第1節(2)は大切な部分で,「健康の保持・増進」という表現を入れていただいたのはいいが,「スポーツやレクリエーション活動による」というように,健康の保持・増進がスポーツやレクリエーション活動によってしか得られないかのような書き方がされているのは困る。健康の保持・増進にとってスポーツやレクリエーションより,それ以外の生活習慣や環境の問題のほうが大きいので,こういう書き方はこの部会としては納得できない。

  その下の部分に「保健医療・福祉サービス」とあるが,「保健・医療・福祉サービス」あるいは「保健・医療・福祉のサービス」ではないか。

  教育的支援と環境的支援が健康づくりに大事であり,(3)の部分でも健康に言及してほしいという意見を述べたところ,あえて書かなくてもいいとのことで入れられなかった。そういう起草委員会の考え方は,健康に対する環境的支援は京都市としては必要ないということを強調していることになり,納得できない。健康を保持・増進するために市民としても市政としてもあらゆる対応をとらなければならない。そこに信頼が生まれる。ここではある特定の部分だけを取り上げているように感じる。

 

森田委員

  信頼を強調されているのはいいと思うが,信頼とは結果として生まれてくるものだ。特に「厚い」という形容詞はどうかと思う。また,最後が「市民が何ができるか考えろ」という締めくくり方になっているが,市民の責任と義務を強調しなければならないのは当然だとしても,それで終わるというのは表現として適切ではないのではないか。

  「京都を,市政参加の理念をもっとも充実したかたちで実現している都市としたい」というところはこれでいい。将来それを目指していくということであれば,この部分を最後に持ってきてはどうか。市民に自分自身が何をできるか考えろというのは適切な表現ではない。

 

北村よしえ委員

  健康に対する問題が数多く提起されているが,心の健康が見落とされているのではないかと感じた。京都は長い歴史と文化を持つ世界にまれな立派な都市であり,市民は心の豊かな市民であるという誇りを持っていると思うので,心に関する健康を入れていただきたい。

  第2章第1節(2)のスポーツ振興などについて書かれた部分に付け加えてはどうか。

 

浜岡部会長

  「心身ともに」という表現があるが,もう少し心の健康についても触れたほうがいいというご意見だ。

  宮下委員は前回「障害者」という言葉に対する意見を唱えておられたが,最終的に第2次案では「障害者」という言葉は残されている。

 

宮下委員

  やはり「障害者」とレッテルを貼るような表現の仕方はどうかと思う。「障害のある人」や「ハンディのある人」という表現にしてほしい。障害者を家族に持つ何人かの知人の意見も聴いたが,障害のある子供を育てている親には,普通の子供と同じように育てたいという思いがある。バスの中などでほかの子供たちに「障害者や」と自分の子供が指差されているのを見ると,いたたまれない気持ちになる。本当は障害という言葉がなくなればいい。障害者は広い範囲での個性を持った人たちだと思うので,表現について配慮してほしい。

 

乾委員

  第2章第1節の(2)と(3)のどちらか,あるいはどちらにも入れられると思うが,「住み続けられるまちづくり」というキーワードがほしい。文意としては「支えあう」もしくは「安心してくらせる」の中に制度やものづくりだけでなく地域コミュニティの話が含まれていると思う。地域コミュニティを育むためにも,一人一人が地域で安心して暮らせるためにも,住み続けられるまちづくりが求められているという表現がほしい。

  (2)に入れるとすれば,支え合い,地域コミュニティ,そのための住み続けられるまちづくりというニュアンスになる。(3)では「安心してくらせるまち」の物理的,制度的条件整備について書かれているが,それは安全を守る必要条件であっても安心を支える十分条件にはなりえない。(3)に入れるなら,地域の中で見守られる,もしくはお互いに分かり合うというニュアンスの記述になるのではないか。

 

森田委員

  第2章第1節に書かれている「信頼」は人間相互の信頼を表わしているように思う。それが最後に一転して「市民と行政の信頼」というように信頼という言葉が使われている点は再考すべきではないか。

 

浜岡部会長

  全体を「信頼」というキーワードで貫こうという意図があり,各章で信頼という言葉が使われている。

 

竹下委員

  第2章第2節(2)の最後の段落に「守るべき公共心」という言葉があるが,これは何を指すのか。

 

浜岡部会長

  都市生活の共通のルールのようなものではないか。

 

竹下委員

  前段では個性も含めていろいろ書かれているのに,それを受ける言葉として「守るべき公共心」は適当ではない。「守るべき公共心を十分身につけたとき」と言われると,何か行儀のいい人間というような枠の中でとらえようとしているようで,違和感がある。

 

浜岡部会長

  第1次案の「公共精神の息づいた」という表現を残そうとしてこういう表現になったのではないか。

 

北川龍彦委員

  第2章第1節で,「子どもも高齢者も,障害のあるひともないひとも…」とあるが,これは決まり文句だ。その後の水平社やライトハウスについての記述についても,京都市民がこういったものをどこまで認識しているのか疑問だ。「人権尊重の文化と先進的な取組を継承し,さらに発展させていく」という表現だけでいいのか。これだけでは中身が分からない人もあるのではないか。水平社やライトハウスがどういうもので,それが人権尊重と信頼の中にどう生かされているのか,それを発展させていくと言うが,何を求め,何を根拠に,何をどう自覚しながらそれを発展させていかなければならないのかということが書かれていない。

  水平社やライトハウスのような過去のものだけが具体的に出てきて,対象となる人の気持ちを除外して,楽観的に見ていく人の気持ちだけを美しい言葉で書いているようではいかがなものかと思う。「障害者」という言葉にしても,障害のある人の気持ちを十分に考えたとき出てくる言葉なのか,外部から見てこうあるべきだという無責任な援助のような書き方をしていいのか。障害のある人本人とその家族の気持ちはこんな美しい言葉で表現されるものではない。信頼と言うが,何を信頼するのかが人権問題の中でも明確でないように思う。

  例えば,障害のある人とない人は天と地ほど違う。障害のある人には大変な苦痛があるわけで,障害のない人がそれを理解し,障害のある人をもっと尊重していくことが,現実のくらしの中に生かしていくという意味でも必要ではないか。過去の活動を継承し発展させていくにしても,まずそれらの活動を認識しなければならないわけで,単に継承し,発展させていくと書くだけでなく,今後どういう場でそれを認識していくのかを明示する必要があるのではないか。

  対象者である人の気持ちを汲んでいくことがいちばん重要だが,水平社やライトハウスの記述でそれが表現できるのか。これらの活動に対する認識がない市民も多い中で,こういう文面でいいのかどうか。例えば,自分や家族が障害を持っていれば障害のある人がどれだけ苦労しているかが分かるが,それが分からない人,すなわち障害のない人がどうやって障害のある人を理解し,心のふれあいを図り,信頼関係を結んでいくのかという個々の気持ちの持ち方がいちばん重要であるのに,このような記述でいいのかどうか。

 

渡邊副部会長

  固有名詞や人権尊重という言葉でなく,日々のくらしの中で人間としてどう考えるのかというその中身を書かなければならないのではないか。個人個人の持つ重みや,悔しい思いや悲しい思い,何とかしたいという思いをきちんと書こうとするならば,人権尊重というような書き方でなく,その中身を記述しなければならないというご意見だと思う。

 

中原委員

  前文に一文入れることで京都市民と京都市との関係が分かるということだが,基本構想はあくまでも行政の中でつくるものだ。今の北川委員のご意見も,先の渡邊委員の健康づくりをレクリエーションやスポーツに限定するのは矮小化だといったご意見も,おっしゃるとおりだと思う。京都市がこの基本構想に書いてあることを忠実に実施していけば,京都市政は失敗する。このように美辞麗句が並んでいると,うわすべりになっていくように感じる。

  この基本構想に対してだれがどう対応していくかということがきちんと書かれていない。最後に「自分で考えろ」という表現が出てくると,いったいこの基本構想は何なのかという印象を持つ。だれに何を期待しているのか。少なくとも京都市にやってほしいこと,行政に期待することを書いているのだということを明示すべきだ。基本構想の位置付け,「わたしたち京都市民は」という主語で書かれていることの中身,すなわちだれが何をすればいいのかを分かりやすく示してほしい。

  近年では健康づくりのためには生活習慣や環境整備に重点を置くべきことは常識になっているが,この基本構想ではスポーツやレクリエーションに限定すべきだと書かれていると受け取られると,基本構想はマイナスでしかない。現実の京都市の行政はそんなことで動いているわけではない。そういう目で吟味をし始めると,他の分野でも穴だらけだと思う。基本構想自体がどういうものなのかという位置付けが分からないが,市の行政に何を期待しているのか,NPOやボランティア団体に何を期待しているのかをもう少しはっきり記述すべきだ。

  前文かどこかで構想の位置付けを示しておく必要がある。これは基本構想であって基本計画ではないという基本的考え方があるのだと思うが,計画の中に構想にないことは盛り込んではいけないということになるのかどうか。この構想がすべての人に同じように理解されるか非常に疑問だ。

  行政の中で基本構想等審議会という形で審議されているわけだから,起草者がどう思おうと,これは行政に対する要望,行政に対する指針であるとだれもが考えるのであり,その中で市民一人一人が考えろと言うのはおかしいのではないか。この段階に至って文章を根本的に変えることは無理だと思う。これは包括的な方向を示したものであって,例えば健康づくりはスポーツとレクリエーションであると思われていた昔にもどるということをこの構想は示しているのだととられては困るという意味で,「細部にこだわらず,最新の考え方と方法を随時取り入れながらやるべきである」といった記述を入れてはどうか。新しい基本計画をつくる場合にも「基本構想の精神は十分踏まえるべきだが,進むべき道はそのとき考える」といったことを示しておかないと,例えば心の健康についてはどこにも書かれていないが,こんな構想でいいのかという意見が出てくる。

 

浜岡部会長

  構想と計画の関係をどう整理するかだが,前文で触れられているように,ここには行政の様々な計画の指針として使われるだけでなく,京都市民のまちづくりの指針でもありたいという視点が盛り込まれている。主語を市民としていることに象徴されるように,方向としては従来の構想を超える部分を含んでおり,この辺が市民にうまく受け止められるかどうかだ。

 

北川龍彦委員

  逃げたような文面であれば基本構想ではない。2025年に向けていろいろ開拓し改革していこうということを市民に訴え,市民にそれを理解してもらおうとするとき,分かっていることを再確認して押し付けることでいいのか。それならば,過去を反省して,ここをこうすればいいという形のものにすればいい。ソフトであれハードであれ,これを基本構想として市民が理解し,自覚していかなければならない。その内容がはっきりしていれば,基本計画の中に生かしていけるが,例えば人権問題についても,水平社やライトハウスなど「今まではこれをやりました」ということが書かれているが,市民全体にそういった活動が浸透していない中でこれをもとに基本方針を決めても,何の進展もないのではないか。前段では世間一般のことを書き,後段で今後発展させていこうとする中身については水平社やライトハウスに結び付けて,それを継承発展させていこうという書き方がされている。過去のことを並べて「これを再確認して勉強してください」という基本方針で終わるのか。これから2025年に向けての市民の心構えとしての高度な考え方を押し付けていくのか,しつけていくのかということになるが,押し付けだけではどうにもならないのではないか。

 

乾委員

  構想とはアピールであると同時に憲法の前文のようなものだと思うので,今の段階ではいかにこの文章の中に具体的な言葉を潜り込ませておくかが大事ではないか。行政が何かしたときに構想に書いてあることと違うではないかと言える,あるいは行政職員が何か新しい試みをしようとしたときにこの中に書かれているからバックアップできるという性質のものだと思う。北川委員のご意見は,水平社やライトハウスについて書くだけではバックアップにはならない,エッセンシャルなキーワードをきちんと入れておかなければならないということだと思う。

  そうした考え方に基づき,さらに表現についての意見を述べると,先ほど申し上げた「住み続けられる」という話は,第2章第3節に入れたほうがいいのではないかと思う。ここでは都市整備の話が書かれているが,その辺りに「ただしそのときに地域コミュニティがより発展していく方向が望まれる,そのためには住み続けられるためのまちづくりが求められている」という表現を入れてはどうか。都市基盤を整備していくときに,地域コミュニティが崩壊していく場合がある。マンション問題にしても,マンションを建てること自体は悪ではないが,マンションが建つことで十数件の街区の中に突然新たに百戸が入ってくると,地域は混乱する。最近「地域共生」という概念が出てきているが,それを1つの方向性として入れておけば,「安心してくらせるまち」がソフト,ハード両面で完遂できる。そういう意味で,基盤整備の中に地域コミュニティが発展するための住み続けられるまちづくりということを入れておくべきだ。

  第2章第1節(2)には,「かつて地域社会がもっていた近隣住民の相互扶助のしくみ」といった表現で地域コミュニティが大切だということが書かれている。この部分で修正していただきたいところが2箇所ある。

  1つは「そのためには,保健医療・福祉の制度や…改編される必要がある」の次の接続詞が「とりわけ」となっているが,ここでは前の部分で書かれていることをやったうえでという意味で,「とともに」という並列の接続詞であるべきだ。

  もう1つは「地域社会のもっていた近隣住民の相互扶助のしくみ」という部分で,アクションを意味する「相互扶助」という言葉を入れると「やってください」ということになり,地域に過大な負担を背負わせる状況をつくりかねないので,ここは相互扶助を含む「支え合い」という言葉にしておいたほうがいいように思う。手助けもするが,ときによっては見守りなども含むような表現にしておいたほうがいい。さらに「くらしを支えるNPOの育成」を加え,制度やしくみ,地域社会,NPOという3本柱にしてほしい。

 

北村よしえ委員

  社会のコミュニケーションが薄くなっている現状の中で,高齢者に対する介護保険が準備されているが,21世紀にはこれがどうなるのか。その谷間に落ちてしまった精神障害者は地域でどういうネットワークづくりや支え合いができるのか,見当もつかない状況にある。社会性がなくなりコミュニケーションが薄く人心が疲弊しているのは,京都だけでなく日本全体の問題ではあるが,これから地域で介護する,障害者を支えるというときに,そこのギャップがたいへん大きいのではないかと,介護を受ける側としては心配している。

  「市民しんぶん」に京都市の介護保険の目標達成率が出ていたが,施設もヘルパーも十分足りているということだ。精神障害者の場合も再発を繰り返すと生活能力が落ち,ヘルパーの支えがないと入院するしかなくなる。入院するくらいなら自殺したほうがいいという人もいる。この構想の中には「くらしのなかの信頼と安心」「ひとりひとりが支え,支えられるまち」という理想的な言葉があるが,京都市が21世紀に向かってここだというポイントが感じられない。通り一遍のきれいな文章になっていて,心が満たされない思いがしている。

  具体的には,精神障害者については福祉政策が遅れ,制度も施設もずいぶん遅れている。今年の4月に法律が改正され精神障害者にもホームヘルパーが認められるようになったが,京都市では実現していない。目標値を超えてホームヘルパーがおられるのであれば,それらの人に精神障害者にかかわっていただけるのではないか。

 

 浜岡部会長

  それについては基本計画の中で具体的議論として出てくることになると思う。本日の2件目の議題でも関連する報告がある。

 

横田委員

  先ほどから問題になっているスポーツとレクリエーションについては,なぜこんなところに出てくるのか分からない。昭和20年代であればこれでいいが,現時点ではこれではおかしいので変える必要がある。

  第2章第1節(2)の第2段落で,最後の文章は「工夫が求められる」という評論家的な表現でなく,「工夫が必要である」とすべきだ。

  この部分では少子化は,30年,50年たっても変わらないという意味で「社会のあらゆるしくみを…改編する必要がある」と言っているのか,社会のしくみを改編すれば少子化はなくなるという意味で言っているのか。その下の段落には具体的に「子どもを安心して産める環境づくり…」と少子化対策についての記述がある。未来永劫少子化の状況は変わらないから社会を改編すべきだと言っているのか,少子化対策の一環として言っているのかでこの部分は文章の意味が全く逆になる。

 

浜岡部会長

  後段から考えれば,子供を安心して産める社会に変えていこうということになる。

 

横田委員

  そうすると,接続詞は「また」でなく「そうするならば」あるいは「具体的には」ということになる。接続詞に注意しないと矛盾が生じる。 

 

浜岡部会長

  本日問題になった点で,「障害者」という言葉についてはこれまでにも議論があり,本部会としては賛否両方の意見が出て決着がつかなかった。「公共心」という言葉については,森田委員の「パブリックマインド」「公共への関心」,「譲歩・妥協も含めて近代市民性を身につけるべき」という表現を入れてはどうかというご提案や,乾委員の「一人一人の思いやりや活動を大切にしながらも,共生できる空間をつくり上げていくことの大切さ」というくらいの表現にしてはどうかというご意見を踏まえて,そういった内容を「公共性」という言葉で表現している。これについてもこうした表現にしてはどうかというご意見があれば反映したいが,時間の関係上,本部会での第2次案についての議論はこのあたりで終わりたい。

  言い足りないことを含めご意見があればメモで事務局に9月2日までにご提出いただき,それを受けて起草委員会に諮りたい。

 

(2) 次期基本計画策定に向けた論点整理について

浜岡部会長

  これまで当部会で福祉や保健に関してかなりご意見が出ている。それを4つの課題に整理してまとめたものが資料5であり,テーマ別討論では十分議論が尽くせなかったことやそれ以降新しく考えられたことを含めてご意見をいただきたい。

  介護保険についてはこれまで委員の皆さんから多くのご意見やご質問があり,実施に向けての作業も進んでいるので,最初に介護保険の現況について,続いてこの3月に京都市が策定した「こころのふれあいプラン」の概要について事務局から説明いただく。これらの説明を踏まえて意見をお出しいただけば,それらを付け加えて論点整理メモを修正し,10月1日の審議会総会に次期基本計画策定に向けてのこの部会での議論という形で提出したい。

  横田委員から前々回の部会時に意見メモが提出されていたが,計画についてのご提案ということだったので,本日お配りした。横田委員から付け加える点等があれば,後ほどご発言いただきたい。

 

事務局(土江田介護保険準備室長)

  ――(介護保険制度について説明,プロジェクター使用)――

 

事務局(今井保健衛生推進室部長)

  ――(「こころのふれあいプラン」について説明)――

 

浜岡部会長

  ご意見やご質問があればうかがいたい。論点整理メモはこれまでの部会での議論をもとに,基本計画を議論していくための材料として事務局でまとめたものであり,ここに載っていないと議論ができないという性質のものではない。どうしても論点として入れてほしいというご意見があれば,この場でご発言いただきたい。

 

横田委員

  10年前と比べて大きく変わった点は,介護保険が導入されたことと,精神衛生法の改正だと思うが,私がこのメモに書いた内容はかなり盛り込まれている。

  この場で申し上げたいのは,京都市の出生率は常にワースト3に入っており,21世紀のテーマとして少子化対策が必要だということだ。論点整理メモを見ると第5部会で触れられているようだが,国では少子化対策を厚生省がやっていることもあり,第2部会として,ぜひ保健・医療の項目の1つとして少子化対策を入れていただきたい。

 

浜田委員

  「高齢者福祉」の「21世紀の施策の方向」のところに,「老連の相互支援活動のような小さなスケールの運動が京都市全体に広がっていけば,元気な人が増え,医療費もかからずにすむ社会になる」とあるが,ここでは「元気な人が増える」ということが「相互扶助」の形でしかとらえられていない。今元気な人がそのままの生活を維持できるように,医療面でも心理的,社会的なさまざまな観点からもその人の元気なままの生活を支援するシステムが必要だと思う。相互扶助ということだけではなく,以前デンマークでは予防訪問のような元気な高齢者が価値観を変えずに生活していけるシステムがあり,病院や特別養護老人ホームなどに入る人が減っているという話をしたが,そういう元気な人が元気であり続けられるシステムについても,今後の施策の中でご一考いただきたい。

 

浜岡部会長

  本日は論点整理メモについてほとんど議論できなかったが,ご意見があれば事務局にお寄せいただけば,それを加えてもう一度整理し直し,基本計画の議論に盛り込んでいきたい。

 

(3) その他

浜岡部会長

  次に,『都市研究・京都』の原稿募集ということで,資料6について事務局から説明をお願いしたい。

 

事務局(葛西政策企画室担当部長)

  ――(資料6「「都市研究・京都」第12号の原稿募集について」について説明)――

 

浜岡部会長

  特に質問がなければ,これで本日の議事は終了したい。

  今後の予定としては,10月1日の審議会総会で了承が得られれば,基本構想案という形で答申が行われ,その後市会に提案されることになる。次期基本計画については,本日は十分議論できなかったが,メモ等でお寄せいただいた意見を含めてテーマ別の論点整理メモを整理し直し,それを踏まえて調整委員会で計画の枠組みづくりが行われることになる。その間部会は休会となり,再開は来年になる予定である。

  それでは本日はこれで閉会としたい。

 

 

3 閉 会

 

 

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