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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第5回 文化・観光・産業部会

ページ番号35848

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第5回 文化・観光・産業部会

日 時 : 平成11年5月12日(水) 午後2時~4時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「瑞雲」

 

議 事 : ○ テーマ別討論「産業」について

 

出席者 : 

伊住 政和(裏千家副本部長,京都市ユースボランティア21顧問) 

市田ひろみ(服飾研究家) 

川原 陸郎(京都みやこ信用金庫会長) 

竹村 寿子(市民公募委員) 

堀場  厚((株)堀場製作所代表取締役社長) 

溝川 幸雄(京都府農業会議副会長) 

三谷  章(市民公募委員) 

向囿 好信(京都市ベンチャービジネスクラブ代表幹事) 

村井 康彦(上京区基本計画策定懇談会座長,京都市歴史資料館長)

◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授) 

増田 優一(京都市副市長)                               

 

以上11名 

◎…部会長     (50音順/敬称略)

 

 

1 開会

吉田部会長

  第5回「文化・観光・産業」部会を開会させていただく。最初に堀場委員から自己紹介をお願いしたい。

 

堀場委員

  今回初めて出席させていただくが,よろしくお願いしたい。

 

 

2 議 事

テーマ別討論「産業」について

吉田部会長

  最初にこれまでの京都市の取組状況や今後の課題について,事務局に資料説明をお願いしたい。

 

事務局(西口産業観光局長)

  京都の21世紀を考える場合に,産業の振興はどの分野より重要だと考えている。京都市の市民1人当たりの税金は約18万円,大阪市は約30万円で1人当たり約12万円の差があり,146万人に換算すると約1,750億円くらいの収入格差がある。制度上は国庫から補填されてはいるが,自主財源が少ないとやりたい仕事がなかなかできない。市民に1円でも多くの税金を払っていただくためにも産業の振興が必要だ。

  こういった大阪市との税収の差は,京都市は山林が多く固定資産税が少ないこと,さらに零細企業が多く法人市民税の収入が少ないことなどが理由で,市民1人ひとりに払っていただいている個人市民税には差がない。企業活動の活発化すなわち産業振興が喫緊の課題だ。

  ――(資料「「産業」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」に基づき説明)――

 

吉田部会長

  それでは意見交換に入りたい。資料のグラフを見ても廃業率以外のほとんどが右肩下がりで,困った状況にある。かつては経済の振興にもいろいろな方法があったが,今は手詰まりの状況で,これをどう京都市の将来ビジョンの中に入れて状況を打破していくかについて具体的方策をご提言いただきたい。「産業」は新基本構想の中核的位置を占めることになると思う。

 

川原委員

  規制のためやむをない事情があるにしても,新しい企業の創業率を高めるという点から言えば大学流出は大問題だ。京都市は以前は大学に対して冷たかったと大学関係者から聞いたことがある。今は特例措置を認め,例えば高さ制限を大学に関しては特別に緩和するようになったが,京都の若さを保つうえでも,人材育成等の京都の強さという点でも,大学の問題を深く認識する必要がある。大分県にしろ滋賀県にしろ,大学に恵まれていない府県は大学誘致に熱心だ。

  2点めに,観光が産業であるという認識が強調されていることは結構だと思う。観光は非常に知恵を要する文化度の高い知識産業で,京都が大きな観光資源を国内的・国外的に活用するという着眼に至ったことは評価したい。

  『中間報告』では「5つの創造都市」が提案されているが,それぞれについて理念をどう具体化していくかが重要だ。税収も少なく財政力が劣るが,やりたいことはたくさんある。市民の協力を得なければならないが,民度の高い150万の市民を動かすには工夫が必要で,市役所が情熱を持ち勉強して,市民にアピールしなければならない。

  最後に,京都の場合中小零細企業のまちであるということが伝統産業とかかわっている。現在,政府は中小企業基本法を変えようとしているが,それは製造業など従業員数300人以下,資本金1億円以下という中小企業の定義を,資本金3億円というように変えるものだ。補助金の一定額を保持するだけでもたいへんな時期に,そういう上方志向で法律を変えられると,京都の企業は大きな打撃を被るのではないか。強い企業が育っていくのはいいが,零細企業が割を食うことになる。こういった政治の動き,産業政策の動きに留意し,市民の関心を高めていく必要がある。

 

吉田部会長

  全体のディマンドが小さくなる中で中小企業をどうしていくか。過去の政策では地方公共団体が音頭をとって組織化,ネットワーク化,工業団地をつくるなどの集約化を進めてきた。経済状況が厳しくなり,全体のディマンドが小さくなり,しかもグローバル化で競争が厳しくなる中で,集約化は避けられない。現実にM&Aは増えており,合併して商圏や設備,人員を整理して,強い中小企業をつくらないと生き残れないわけだが,中小企業を具体的にどうしていくかは難しい問題だ。中小企業についてのご意見があればうかがいたい。

 

伊住委員

  小さい会社をいくつか経営しているが,中小企業は人材も不足しているし金もない。都道府県が中央省庁の補助金の研究をし,中小企業を指導すべきだ。景気対策で予算がついて,農林省,郵政省,通産省,労働省など各省庁から膨大な情報が出ているのに,行政の窓口では紋切型の情報しか出さない。景気対策といえばゼネコンが潤うだけだといった従来のイメージで見ていると,情報は知らない間に他人の手にわたっていく。ハードのみならずソフトに関して,京都市が補助金対策をして,中小企業に対してこういう情報がある,こういうことを研究してはどうかとアドバイスをする場があってしかるべきだ。情報のあるところには本当にたくさんの情報がある。それを研究し紹介する手立てを考えてはどうか。

 

吉田部会長

  「中小企業公的支援ガイドブック」という分厚い冊子が出ており,目的と状況に合わせて使えば有効だが,複雑すぎて普通の中小企業の人がアクセスするのは難しい。商工会議所などが窓口となっているが,あれだけ数が多いと窓口の人にも分からない。専門家を育てることをもっと真剣に考えたほうがいい。

 

堀場委員

  大学の流出は大きな問題だ。わが社には千人ほどの従業員がいるが,その8割は京都の大学の出身者で,そのうち半分は京都以外から京都の大学に来た人だ。もし堀場製作所が東京にあれば,ここまで競争力のある企業にはなれなかったと思う。京都にあるから優秀な学生が来てくれる。大学の流出については徹底的に対応策をとる必要がある。人材という点では,大学生は先行投資,将来の可能性を秘めた財産だと思う。

  税収が少ないということだが,税収を上げていくことを大きな声で言うと,何か悪のような感じがあるのは問題。税収を上げてはじめて福祉なりいろんな対応ができるという当たり前の理論が通っていない。税収を上げることが正義だという意識を市民が持たなければならない。

  中小企業については,わが社では現在数百社の中小企業の協力会社を使ってものをつくっている。大企業や中堅企業が問題視されるが,キーとなるグローバルに戦う企業を育てなければ中小企業も育たない。10~30名規模の関連協力会社のうち10社以上が世界的な品質保証基準のISO9001を取得しているが,わが社が社員を中小企業に派遣し,協力し合うことで中小企業にグローバルな品質のものをつくる力ができた。強いものをより強くしていく政策が結果的に中小企業の競争力をつけ,税収や雇用を増やすことにつながる。こういう当たり前の理論を前面に押し出して対応策を考えなければならない。ビジネスのないところに収入はなく,収入のないところに税収はなく,税収のないところにサービスはない。

 

吉田部会長

  大学は高さ制限を緩和してもらっても手狭でどうしようもない状況で,物理的な障害によって流出している。京都市にももっと考えていただきたい。

 

三谷委員

  情報,知恵を使うという意味での共同戦略が欠けているというご意見があったが,自分も京都に生まれ育ちながら大阪を拠点とする企業に勤めた。昭和30年に大学を卒業した当時は,京都の企業には積極的な受け入れ体制がなかったが,そういう性質が今も残っている気がする。

  産学共同の問題では,京都の工業試験場で漆の先端的研究をしている人がいるが,せっかく研究しても京都では実用化されない。ウレタン系統樹脂を利用した捺染技術も京都では手をつける人がいないので大阪あたりで実用化され,それから京都に入った。研究機関とタイアップして実用になる技術を開発していく部分が京都は非常に弱い。大学流出を防ぐとともに,すでにある知恵をもっと活用できるようにコーディネートするのが行政の役割ではないか。研究成果をいかに実務に結びつけていくかが京都の課題だ。

 

吉田部会長

  昨年TLO(技術移転機関:Technology Licensing Organization)法ができて,大学の特許で研究者にフィードバックしながら共同研究ができるようになり,国家公務員法の例外で人的なアドバイスもできるようになった。京都市にはTLO促進室はあるのか。

 

事務局(西口産業観光局長)

  昨年11月から染織・工業両試験場研究員の職務発明制度を設けており,特許を本人に還元でき,民間への技術移転がスムーズにできるようになる。

 

吉田部会長

  試験場だけでなく,大学のTLOを組織化するようなものも一緒にすればいいのではないか。京都には理系学部がある2つの国立大学がある。私立の場合は産学共同に問題はないが,国立は難しい。TLOの仕組みづくり,大学の特許を使って本人にフィードバックされるとともに大学にも収入が入る仕組みが国立でもできるようにするために,京都市に産学共同促進室をつくるべきだ。そこがセンターになって媒介しないと,大学の先生は実用化に興味がないからうまくいかない。中小企業でこういう仕事をしているがそれをレベルアップしたい,こういう特許があるから誰か実用化しないかというように,結びつける仕組みを市の中につくるべきだ。

 

市田委員

  京都は観光産業でいくのであれば,一般の人が知りうる方法でやらないと,一部の人だけがやっていて市民の盛り上がりはない。後発の観光地は宣伝費をかけて集客しているが,京都の場合は宣伝費をかけたからといって観光客が増えるわけではない。祖先の残した財産を生かし,集客するアイデアは出尽くしている。観光客がたくさん来てくれ,観光収入を増やすことで京都市民の生活が潤うような新しい仕掛けを考えなければならない。

  そこに労働力の問題が潜んでいる。四条通は8時になるとシャッターが下りて人がいないが,観光客が夜遊べるところが観光地としては必要だ。社員16人の零細企業を経営しているが,週40時間労働に規制されていると働きたくても働けない。国が働いてはいけないと言っていて活力が出るのか。規制が観光産業やサービス業に暗い影を落としているのは確かだ。京都が観光地として観光収入をねらうなら,従来の観光戦略でなく,若者が楽しめる場をつくるといった新しい仕掛けを考えるべきだ。どうやってサービス産業の労働力を上げるかも大きなテーマだと思う。

 

吉田部会長

  先端産業の労働者を保護する基準を同じように適用したら,中小の旅館の経営は不可能だ。労働者を搾取してはいけないが,昔の勤務体系や賃金体系に応じた構造の産業を,先端産業と同じ基準でコントロールすることはできない。

 

市田委員

  廃業率の高さの背後にはいろんなドラマがあると思う。伝統産業,和装産業では廃業もできずに倒産を待つ人もある。新聞配達をしながら生計を立てている技術者もいる。廃業率の高さにも労働規制が影響しているのではないか。

 

吉田部会長

  実態は複雑でよく調べてみないと分からない。行政としては法に反したことはできないが,観光産業を支えるしくみのないところでいくら観光振興を言っても意味がない。どういう方法がありうるのかは誰かが研究しなければならない。

 

向囿委員

  京都が持つ資源,地域のポテンシャル,京都にある技術,人材,文化,都市機能の組合せの中で,既存産業も延長しながら,全く新しい産業を創造していかなければならない。21世紀は起業家,ベンチャー企業が主役の時代で,そこに京都の資源をどう生かすかが課題になる。人間が一生のうちに必要とするものを考え,新しいニーズをいろんな角度から探すということで,人間の快適さや安全という視点から取り組めば,いろんな新しい産業ができるのではないか。人間の欲求を満足させるシステムとサービスをつくっていかなければならない。

  新規産業をどう興すかということと関連して,京都市の地域プラットホームの構想についてお聞きしたい。

 

事務局(島田商工部長)

  国で新事業創出のための法律ができ,県市単位で起業を応援する,創業期企業の応援体制をつくっていこうというものだ。京都市では財団法人高度技術研究所をネットワークの中核的支援機関として,いろんなグループ,団体に情報や知識を提供していただき,新しく企業を興す方が高度技研に行けば知りたい情報を得られる体制づくりをしていきたい。現在は各支援機関と連携し,研究作業中であり,具体的に構想が固まれば国の助成を受け,事業を立ち上げたい。

 

吉田部会長

  公的支援の1つで,総合的にうまく活用していくということだ。

 

竹村委員

  21世紀に4人に1人が高齢者になると,学びたい人が多くなると思う。子育ての終わった人が本格的に技術を学びたいと思ったときに,デザインや技術など豊富な文化がある京都の伝統産業で1週間ほど体験的に学ぶシステムをつくり,世界に発信してはどうか。また,そういう場に寺を活用できないか。京都は神社仏閣が多いので固定資産税が少ないということだが,歴史講座を開くなど神社仏閣を有効活用し,そこから税収を上げていくことはできないのか。また,京都市民と観光がかけ離れていると言われるが,市民には拝観料を2分の1にして,他の地方から人を連れてきてもらうといったことを考えてはどうか。

 

吉田部会長

  京都市と寺の関係はどうなっているのか。寺に市の仕事に協力してもらうことは大事だと思う。

 

事務局(高木総合企画局長)

  商工会議所が間に入って京都市と仏教会とが話し合いのテーブルにつき,観光振興など前向きに協力し合う関係になろうという方向にある。京都には「癒し」なども求められており,寺には市民として協力していただきたいと考えている。

 

吉田部会長

  観光だけでなく教育や癒しのまちの機能を高めるということでは,ホームページを共通して持つなど情報のネットワーク化を進めれば,寺にとってもプラスになるのではないか。

 

三谷委員

  京都の禅寺はなかなか中に入れてもらえないが,岡山の寺では国際的に座禅をしたい人を受け入れているところもある。行政が中に入ればもっとスムーズにいくのではないか。

 

事務局(島田商工部長)

  「京の冬の旅」には特別公開という形で寺に協力いただいており,20年間で200近くの社寺等に直接協力いただいている。修学旅行についても,団体割引をグループに適用したり,予約すればお坊さんが説明をするなどの形でお寺に協力していただいており,全国6千5百の学校に目録とパスポートを配っている。実際にはこれまでもお寺には観光振興にたいへんご協力いただいており,今後も拡大の方向にある。

 

吉田部会長

  自宅の近くに小さな寺があるが,参禅会をやっている。そういった有名でない寺は観光客に少しは来てほしいが,たくさんは来てほしくないという難しいところがある。

 

溝川委員

  農林業は他の産業と違い,自然が相手なので嘘がつけない。今の若い世代の農業後継者は土地を耕すという基本を忘れ,市場原理に走っているが,原点を忘れては農業はやっていられない。誇りと自信を失うとどんな商売もだめだ。

  最近は国民がグルメ化しているが,それをとらえると農業にも将来性があるのではないか。どの産業も右肩下がりで,多くの事業者が廃業に追い込まれている。農業も例外ではないが,逆に言うとライバルが消えていくのだから,そこで自分の商品をブランド化すれば活路は開ける。都市農業という生産緑地として保護された枠の中で,野菜に付加価値をつけブランド化することに活路を見出したい。

 

吉田部会長

  農家戸数が減っていく中でブランド化を図るには,農地の共有などにより集約化しなければならない。

 

溝川委員

  生産調整により放棄された農地がたくさんあり,高い固定資産税を払って自分の土地でつくるより借地のほうが元手はかからない。そういう意味では土地がなくても農業はできる。

 

吉田部会長

  若い人で農業をやりたい人が参入できるよう,農地を貸与するしくみをつくってはどうか。

 

溝川委員

  府に新規参入の斡旋窓口がある。ただし,20年30年先にはよりプロ化されないと生き残れないのではないか。

 

吉田部会長

  普通の会社では親の仕事を子供がそのまま引き継ぐわけではない。製造業をやっている人でも農業ができるようにしないと,退化してしまう。欧米では農業はハイテク産業だが,日本は農林省が管理し過ぎたのでハイテクが伸びなかった。それをもっと仕組めばいい。

  林業も問題で,京都市には山林が多いが,メンテナンスができなくなってきている。植林した木は間伐しないとちょっとした台風でもボロボロになる。

 

事務局(澤田農林部長)

  京都市の市域面積6万1千haのうち4万1千haが森林であり,市街地を災害から守り,水質浄化の機能を果たしている。戦後植えた木が間伐期を迎えているが,安価な外材が入ってきて林業そのものが生業として成り立たなくなっている。都市の住民からは「あって当たり前」の三山だが,人間の手を加えなければ森林は維持できない。

 

吉田部会長

  広葉樹はケア・フリーだが,針葉樹は相当手をかけなければならない。

 

堀場委員

  農家に行くと今まで食べたこともないおいしい野菜がある。しかし,つくるのに手間暇がかかるので市場に出せず,自分たちが食べるためだけにつくっている。農業製品のメーカーである農家がベストの製品をベストの状態で消費者に届ける努力が必要ではないか。生産性を上げるためには設備投資が必要だが,設備投資はある程度の事業規模がないとできない。今の農業は生産性を上げていくシステムになっていない。もう少しビジネスセンスを入れないと,今の形態で生産性を上げたり,輸入品に対する競争力を上げることは不可能だ。

  大規模店に行くと値段が3倍くらい高くても,輸入の野菜より国産の野菜が売れている。大規模店では産地が表示してあるので消費者に選択の自由があるが,表示がない店もある。そういったポイントをきっちり農家や流通が押さえれば,生きていく道はあると思う。基本をはずしたままに解決しようとしているところに問題があるのではないか。

 

吉田部会長

  農業は経済も経営もそのグループだけで完結していて,他の知恵を入れない。法人の農業は禁止されていた。農林業もいろんな形の知恵を入れるしくみをつくってほしい。

 

竹村委員

  子供が自然に親しむために,「みさきの家」や「花背山の家」のような施設をどんどんつくっていただきたい。シーズン中は予約がいっぱいでなかなか利用できない。子供たちが楽しみながら自然に興味を持ち,コンピュータで知識が得られるようなシステムをつくってほしい。自然に恵まれている京都ならではのものであり,それが将来大学での新技術開発にも結びつくのではないか。

 

事務局(澤田農林部長)

  森林で自然に親しむものとして「山村都市交流の森」を整備しており,これを多くの市民に利用していただきたい。

 

村井康彦委員

  産業の問題は,実際にその場にいる人,特に中小企業にかかわっておられる人の話を聞くと何も言えなくなる。上京区の懇談会の座長をしていることもあり西陣の問題に関心がある。資料の9ページで「西陣活性化モデルプランの推進」が実施済みとなっているが,事業の効果の評価はされているのか。

 

事務局(西口産業観光局長)

  モデルプランの推進としては実施済であるが,西陣の活性化策についてはその後も進行中であり,現時点での評価はしていない。

 

村井康彦委員

  いろいろなことをやっても右肩下がりになっているので,これらの事業を継続するとともに新しい事業を考えていくことも必要になる。京都市としては西陣の活性化は大きな問題だ。

  データの数字をどう読むかということでは,22ページのグラフで事業所数は持ちこたえているが,従業員数が減っている。これはある時期が来ると急激に両方がだめになるのではないか。過疎地の集落の崩壊を調査していたが,住民がゼロになったときが集落の崩壊でなく,10人でも社会的機能が成り立たなくなると一挙に集落は崩壊してしまう。事業所についてもそれと同じことが言え,この次の段階は危機的状況なのではないか。

  西陣に対してはさまざまな対策が講じられているが,もはや個々の支援対策では間に合わない段階になっている。着物を普及させるにはどうすればいいか,従業員の生活環境をどうすればいいかといったことを含めて,狭い意味での産業ではなく,マーケットや需要の問題から人々の好みまで含めての西陣の総合的な対策が考えられるべき時期にきているのではないか。

  大学の問題は議論としては出尽くしている。私自身は学生時代は百万遍のごちゃごちゃしたところで勉強し,大学とはこういうものだと思っていた。就職した大学も東山のごちゃごちゃしたところで,そこから滋賀県の新しい広々としたキャンパスに移ったとき,最初はゴーストタウンかと思った。人が集まることによって生まれるある種の活力がある。ゼミでもマンツーマンでやれば成果があがるわけではなく,5,6人いないと学生同士の切磋が生まれない。そういう意味で,学生1人当たりこれだけのスペースが必要だというように数字だけで理解するのでなく,もう少し内容に即して考えるべきだ。

  一方で普遍化,合理化,一般化するという意見が出ていたが,他方で実情に合わせた個別化が必要なのではないか。労働時間の問題などについては,労働者の労働条件を良くする,人権を守るという原理にもとるものはできないにしても,多少の個別化を考えていく必要がある。

  寺は文化財の宝庫として鑑賞の対象にされているが,宗教の場としての機能を失ってきている。地道にやっている寺もあるが,寺が本来あるべき姿を失っており,宗教者としての自覚がない。行政は宗教にかかわりたくないのが本音だと思うが,もう少し寺としてやるべきことがあるのではないかといったアドバイスは行政にもできるのではないか。

  産業の支援,ベンチャーの支援にしても特定分野に偏っては公平さを欠くというので,公平を保つために何もしないことになりかねない。そういう点では普遍化と個別化の兼ね合いを考えながら,行政として1歩でも2歩でも踏み出せる分野があるのではないか。

 

市田委員

  建都1200年のときは室町も西陣も活力があった。大きなテーマがあったので各問屋が「式部重ね」とか「平安絵巻」といったテーマをつくって商品づくりをし,お客さんを京都に連れてきて,商売をしたりサービスしたりした。今は大きなテーマがない。京都をあげて何かしようという都市としてのテーマをつくり,それにこぞって参画する状況をつくるべきだ。パリを見ると,来年は肩が張ったシルエットだというとそのテーマに向かって素材をつくるところからデザインするところまでマーケットが広がる。みんなが参加できるような21世紀の産業の目玉になるものを考えなければならない。

 

吉田部会長

  かつては経済復興や所得倍増論などがあったが,力を結集することがなくなってきた。結集しないと力にならないが,現在は結集することを誰かがデザインしてできる状況でなくなってきているのが難しいところだ。

 

堀場委員

  建都1200年では,京都の若い人にこれだけいろんな業種のタレントがいることを知ってすばらしいと思ったが,それがパワーになっていない。イベントをきっかけに京都の人間同士が理解することも大切で,そういったトリガーは必要だと思う。

  パリのファッション製品のクオリティより,京都のクオリティのほうが圧倒的に優れている。ただ,パリにはいくつもグローバル・ブランドがあり,ブランドの店が並んでいて,どこへ行けばどういうものが手に入るかが分かる。パリはビジネスに着実に結びつけている。京都の場合,せっかく京都に来たから着物を買おうと思っても,どこに行けばどういうものが手に入るのか分からない。どうせ買うなら京都でと思うような雰囲気の店や町並みやパイロット店がなく,売ろうという舞台,形ができていない。例えば西陣会館は着物の高級感とイメージが合わない。パリのいいところは見習うべきだ。

 

川原委員

  イベントは大事だ。南紀熊野体験博も人を集めている。建都1200年の際に,経済同友会で万博をやろうとして,つくば博のデータをもとに6千億円規模のイベントを企画したが,外務省に認可をもらいに行ったところ準万博も含めて2020年くらいまですでに開催地が決まっていた。京都にふさわしい壮大なイベントをするには,半世紀くらいまで先を読んでおく必要がある。

  産業活性化と関連して,南部開発にしても全体の構想についての議論は出尽くしており,そろそろまとめに入り,具体的な問題に踏み込むべきだ。長いスパン,大きいスケールで構想を固めていくことが大事だ。

  もう1つは,地方分権を急がなければならない。地方分権については憲法でうたわれていながら戦後50年間放置されていた。産業政策の中でもこのことを改めて認識すべきだ。

 

三谷委員

  京都らしい計画を立てていくうえで,京都市の都市計画を見直す必要がある。パリやオーチャードではどこで何が買えるかが分かるが,京都はばらばらで分からない。北山通ができたかと思うと山科の再開発があり,新しいものがつぎはぎにできてしまっている。キリンビール跡地も,今後の京都としてはっきり位置付けした開発が行われるようにしなければならない。

 

吉田部会長

  本日は具体的にいろいろご意見をいただいた。資源はあるが有効活用できない,情報が手に入らないというところで市が接着剤の役割を果たしてほしいという意見が共通していた。これは重要なことだが,地方公共団体はそれができないようになっている。できないようになっているのにやれというのは無理なので,アウトソーシングを徹底し,専門家に委託することを考えなければならない。中小企業の支援にしても,商工会議所に専門家をおいて,そこにアウトソーシングするしくみを考えてもいいのではないか。

  次回の予定は,現在起草委員会で新基本構想の文案化を進めているので,素案が示される時期に開催したい。日時については日程調整表にご記入いただき,それをもとに調整して後日事務局から連絡いただく。ほかに事務局から何かあるか。

 

事務局(高木総合企画局長)

  大学の問題については,工場等制限法があり定員増や学部増が認められる時代には京都市内では大幅な増設ができなかった。今日では大学の問題が変わってきている。学生の数が減ることが前提になっており,私立大学では経営が成り立たないといった危機感が強い。京都市では大学の市域外移転に危機感を持ち,「大学のまち京都21プラン」をつくり大学コンソーシアム京都をつくった。平成12年4月には京都駅の近くに「大学のまち交流センター」という建物ができる。現在コンソーシアムにはほとんどの私立大学に入っていただいているが,将来は国立の大学にも入っていただき,京都の大学に入学すれば京都全部の大学に入ったことになるというようにしていくことが理想だ。

  イベントについては,近く京都で21世紀を迎えるイベントの公募を予定しており,多くの市民や産業界の方々に参加いただけるものにしたい。

 

吉田部会長

  それでは,本日はこれで閉会したい。

 

 

3 閉 会

 

 

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