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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想案

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2001年2月1日

京都市基本構想等審議会

平成11(1999)年10月6日に,京都市基本構想等審議会会長から市長に提出された基本構想案です。

 

(まえがき)

 ここに掲げる「京都市基本構想」は,21世紀の最初の四半世紀における京都のグランドビジョンを描くものである。
 京都市は,1978(昭和53)年,京都がめざす都市のあり方を「世界文化自由都市」としてとらえ,これを世界に向けて宣言した。この理想を実現するために,1983(昭和58)年には,伝統を生かしつつ未来に向かっていつもいきいきと創造を続けるまちをめざし,2000年という将来を展望した「京都市基本構想」を策定した。この構想に基づいたまちづくりを推進するために,1985(昭和60)年には「京都市基本計画」を策定したのに続き,さらに1993(平成5)年には「新京都市基本計画」を立て,21世紀の文化首都をめざし,「平成の京(みやこ)づくり」を進めてきた。全世界のひとびとが,民族,宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに自由に集い,開かれた文化交流を行う都市として,京都は「世界のなかの京都」という大きな視野のなかでとらえられてきた。たとえば,1996(平成8)年には世界歴史都市連盟のまとめ役に選出され,翌1997(平成9)年には地球温暖化防止会議の開催地に選ばれ,京都議定書が採択されるなど,その歴史的な知恵を生かし,都市文明のあるべき姿を率先して追求するという役割を世界から期待されてきた。
 そして世紀の変わり目を迎え,社会と経済の情勢は,予想をはるかにしのぐようなかたちで変化しつつある。その変化は,明治以来の日本社会を動かしてきた原理,あるいは戦後日本が目標にしてきた社会のあり方の根本にかかわるものであって,ひとびとに日々のくらしのあり方を変えるよう求めるところがある。わたしたちは歴史のこの転換期に,これまでのくらし方の生かすべきところ,改めるべきところをひとつひとつ見定めながら,ひとりひとりが市民としての誇りと責任感とをもって市政に積極的に参加し,都市とそこに住む市民のくらしの設計をしなければならない。
 わたしたち京都市民は,ここに,わたしたちが望む2025年までのくらしとまちづくりを市民の視点から描く。京都市は,この基本構想に示す市民のくらしとまちづくりの実現に向けて,総合的かつ計画的な行政の運営を図るものとする。また,市民をはじめ京都にかかわるすべてのひとや組織が,この構想の実現に向け,積極的に取り組むことが期待される。

 

第1章 京都市民の生き方

第1節 文明の大きな転換期のなかで

 わたしたちが住むこの日本は,戦後の荒廃のなかから立ち上がり,目をみはるような速さで,「豊かな」社会を,そして世界有数の長寿社会を実現してきた。しかし,世紀の変わり目を迎えてわたしたちは,経済成長率の低下や少子高齢化による社会構造の大きな変化など,社会のしくみに大きな転換を迫るような事態に直面している。
 とりわけ,消費の急速な拡大がもたらした大量の廃棄物の発生や環境破壊の実態は深刻である。わたしたちは,これまで細心の注意をもって周りのいのちとの共生を図ってきたその文化的伝統を見失い,結果としてみずからの生命と文明の存続とを脅かすような事態に立ち至っている。膨張し続ける社会はもはやありえない。大量生産・大量消費・大量廃棄型の都市文明のあり方に対して,わたしたちは環境との調和をめざす持続可能な社会をつくっていく必要があり,これは次世代に対するわたしたちの大きな責任である。
 昨今の日本社会においては,政治,行政,金融,企業経営,教育などの分野で,これまで確実なもの,安全なものとして信じられ,慣行とされてきたさまざまの社会的な制度やしくみへの信頼が大きく揺らいでいる。これを放置すれば,21世紀には,信頼の崩壊という社会の基盤を揺るがす危機を招くことにもなりかねない。現代社会が直面するさまざまな課題を克服し,長期的な視点に立って持続可能な社会をつくっていくためにも,この社会に,そしてさまざまな世代間に,信頼というものを構築し直すことが強く求められている。
 こうした問題は市民生活の基本にかかわるものであり,早急な解決が求められる。しかもその多くは,一都市の問題として対応を図るだけでなく,国や他の都市などと協力し合いながら取り組む必要のあるものである。わたしたちは今,これらの問題を十分に視野に入れながら,21世紀の新たな価値観を生み出し,それに基づく社会のあり方を探っていかねばならない。

 

第2節 京都市民の姿勢

 わたしたち京都市民は,琵琶湖疏水の開削をはじめ,日本最初の小学校の設置や市電の敷設など「京都策」と呼ばれる近代化政策に全国に先駆けて取り組んできた。しかし,同時に,そういう近代化とは別な生き方をもさまざまなかたちで維持してきた重層的な都市文化をもっていることは,自信をもって認めてよい。京都は,戦災による破滅的な被害を免れた数少ない大都市のひとつである。だからこそ,現代社会の価値観とは異なったものの感じ方や考え方が今もまちの懐に息づいている。わたしたちには,そういう歴史を断ち切るのではなくて引き継いでいこうという強い意欲がある。
 この意欲を,新しいものへの意欲と調和させつつ実現することはたしかに並大抵のことではない。しかし,その豊かな文化と歴史の蓄積によって,わたしたちは同時代の文明に対してさまざまな対案を示すことができるはずである。そのためにわたしたちは,明治以降の社会の急速な近代化のなかで達成されたものと失われたもの,戦後の社会の民主化と高度成長のなかで得られたものと棄(す)てられたもの,それらをきちんと見分ける知恵を備えた市民でありたい。

 

第3節 京都市民の得意とするところ

 わたしたち京都市民は,これまで,このまちに住むひとりひとりが人間として誇りと安心をもって生きることができるための基本的な条件の整備に努めるとともに,効率や競争を過度に重視し,大量消費を繰り返してきたこれまでの社会のあり方に対して,それとは別の節度ある生き方を示しうるような都市文化を培ってきた。
 改めて振り返れば,京都市民は,1200年を超える歴史のなかで,自立性の高い市民文化を育(はぐく)み,磨き上げてきた。たとえば,みずからの生活をみずからの責任で律する自治の伝統を大切に守ってきた。地域社会のなかで,かど掃きに象徴されるような独特の生活習慣も身につけてきた。伝統と革新のまれにみる緊張関係のなかでまちを運営してきた。このまちには産学ともに自由で先駆的な気風があり,それを育むために,学びの多様な機会を設けてきた。自然環境との調和を保った美しい里の風景をもつとともに,匠(たくみ)のわざと高い付加価値とをあわせもったものづくりの文化を養ってきた。人権の尊重や福祉への取組においても,先進的な試みを続けてきた。
 京都には,また,もてなしの心や宗教的な癒(いや)しの文化がある。それが,都心の風情(ふぜい)や,地域の行事など生活のさまざまな場面に浸透していて,ひとびとに深い潤いを与えている。それに緑豊かな自然環境が都心のすぐそばにあって,ここに住むひと,訪れたひとが深い精神的充足をもって時間を過ごすことができる。
 こうした京都の市民文化は市外のひとびとからも厚い信頼を得てきたが,これは,伝統をただ守り続けてきたのではなく,つねに全国に先駆けた取組を行ってきた京都市民の努力の積み重ねによる。もっとも近年は,高度経済成長期の画一的な価値観やそれに伴う東京一極集中など社会経済情勢の大きなうねりにのみ込まれ,その先駆ける力が十分に発揮できていないし,都市の活性化にもうまくつながっていない。それどころか,これらの特性を生かさなければ京都はいずれ都市として行き詰まるという,切迫した危機感さえある。
 産業や観光の伸び悩み,工場や大学の市外流出,文化の創造力と発信力の低下,都心の空洞化,風情ある町並みの消失など,京都は今,さまざまの深刻な問題を抱え込んでいる。京都がこれらの問題のひとつひとつにきちんと対処し,これからも都市としての魅力と活力をもち続けるために,わたしたち京都市民は,これまで長い時間をかけて培ってきたものの感じ方や考え方のひとつひとつを京都市民の特性としてもう一度洗い直し,21世紀のくらしの基本として改めて鍛え上げていきたい。

 

第4節 これからの京都市民の生き方

 わたしたちの社会においては,さまざまな信頼がその基礎になければならない。社会のしくみや制度への信頼は,わたしたちのくらしを支える基盤となる。また,学校や家庭のなかの信頼,地域社会のなかでのひととひととの信頼,市民と行政の間の信頼から,ものづくりや経済活動における信頼,健康なくらしに必要な恵み豊かな自然環境への信頼まで,信頼は社会の営みにおいて欠くことのできないものである。
 しかし,わたしたちがこれまで自明のものとして抱いてきたこれらの信頼が、今大きく揺らぎつつある。わたしたちの京都というまちをとっても,高度な技術と細心の品質管理を誇るものづくり,節度と信用のある商い,濃(こま)やかなもてなしの文化など,かつて「京もの」や「京風」という名に象徴されてきたような文化への信頼が少なからず損なわれてきている。また町内や学区などにみられる地域住民の相互信頼も,かつてほどの確かさをもっていない。京都というまちが内外から得てきた厚い信頼を,21世紀においてもなおもち続けることができるのか。京都は今,大きな岐路に立たされている。
 わたしたち京都市民は,これからのくらしやまちのあるべきすがたを描き,それを実現していくなかで,それを通して,信頼が基礎にある社会をめざしたい。そして,わたしたち京都市民がこれまで細心の注意を払って築き上げてきたくらしとものづくりのあり方や自治の伝統を,こうした将来のまちづくりに大いに活用していきたい。すでに述べたような京都市民の得意とするところをこれからのまちづくりに生かし,つなげていくなかで,信頼を基礎とするような社会のあり方が,市民生活のさまざまな次元でひとつひとつ具体的にかたちづくられていく。わたしたち京都市民は,その過程に個人としての責任をしっかり確認しつつかかわっていくことによって,21世紀の社会に求められる新たな市民生活の理想を世界に先駆けて見いだし,実現していきたい。

 

第2章 市民のくらしとまちづくり

 京都の各地域には,ひとびとの多様な生活文化がある。また,京都のまちには,働き,学び,憩うために市外から訪れる多くのひとびととのさまざまな交流がある。わたしたち京都市民は,京都にかかわるさまざまなひとびとと深く交わるなかで,京都を,だれもがこのまちに住むことの誇りとこのまちへの愛着をもちつつ,ずっとここでくらし続けたいと思えるようなまちにしたい。京都を,くらしに安らぎがあり,まちに華やぎがある,そういう住みやすい場所にしたい。そのためのくらしとまちづくりの方針をここに掲げる。そうしたくらしとまちづくりを京都市民の特性を生かして実現していくなかで,信頼を基礎とする社会が築き上げられるものと信じる。

 

第1節 安らぎのあるくらし

1 すべてのひとがいきいきとくらせるまち

 わたしたち京都市民は,子どもも高齢者も,女性も男性も,障害のあるひともないひとも,また国籍や民族,生まれや生い立ちに関係なく,すべてのひとが自分の居場所を確認し,自己の資質を十分に発揮しつつ,いきいきと活動できる場所と機会に恵まれたまちをめざす。
 そのために,被差別の民衆が集まり日本で初めての人権宣言を行った全国水平社の設立や,先駆的な障害児教育と福祉事業のなかで設立された京都ライトハウスなど,京都の人権尊重の文化と先進的な取組を継承し,発展させ,互いを思いやる心にあふれた市民生活をつくっていく。
 すべてのひとがいきいきとくらせるまちは,まず,市民の生き方に選択肢が多く,生涯を通じてみずからの能力を向上させる機会が豊富にあるまちであり,だれもが等しく就労の機会をもつ豊かなまちである。それはまた,高齢者が,ひとりでも買物など日常の生活行動ができ,その経験を生かして積極的に社会参加ができる機会に恵まれたまちでもあり,長い人生経験のなかでさまざまな知恵を蓄え,しかもゆとりのある時間をもつ,社会にとって大切な人材として尊重されるまちでもある。それはさらに,将来の京都を担う,心豊かで優れた社会性を身につけた子どもたちを育てるための教育環境が,学校,家庭,地域を通じて整えられているまちであり,子どもたちが,学校のなかで知識を習得するだけでなく,地域のなかで他のひとびとの多様な価値観やくらし方に触れながら,みずからの生き方を学んでいようなまちである。そして,さまざまの異なった社会的・文化的背景をもつひとびとが交わり,互いの違いを認め合いながら,社会生活のなかで守るべき公共心を深く身につけたうえで,それぞれに充足した生活を営むことができるような,開放的で居心地のよいまちである。このようなまちは,市民ひとりひとりが抱え込んでいるさまざまな困難や不幸が他のひとびとによって懐深く受けとめられ,相互の厚い信頼のなかで,それを解決しようとひとびとが助け合っているところに見いだされるものである。
 このようにすべてのひとがいかなる差別もなく,ひとりひとりが個人として厚く尊重されることが考えや行動の基本となるまち,多様な考え方や生き方が迎え入れられ,それらの交流のなかからより豊かな人間関係が育まれるようなまちを,わたしたち京都市民はつくっていく。

 

2 ひとりひとりが支え,支えられるまち

 支えを必要とするひとが別の場面で支える側に回るような,柔軟な相互支援のつながりがこれからますます不可欠となっていくなかで,わたしたち京都市民は,必要なときに支えを求めるその道筋がだれにも見えやすく整備されているまちをめざす。
 少子高齢化が進むなか,高齢者や子ども,そして障害のあるひとが,個人としての生きがい,社会の一員としての生きがいを感じつつ,のびのびとくらせるようになることが大切である。そのためには,保健・医療・福祉の制度や雇用・就業形態をはじめとして,社会のあらゆるしくみが少子高齢社会,男女共同参画社会にふさわしいものへと改編される必要がある。また,かつて地域社会がもっていた住民の相互支援のしくみを,現代の生活環境に合うようなかたちにつくり直す工夫が必要となる。
 とりわけ,子どもを安心して産み,育てられる環境づくり,すべての子どもたちがのびのびと健やかに成長できる環境づくりなど,子育てと子どもの自立に対する支援のしくみが十分に整っていることは,まちづくりの重要な課題である。
 そのようなまちは,だれもが心身ともに健やかにくらせるまちでもある。そこでは,ひとびとが健康に生活できるよう環境が整えられ,スポーツやレクリエーション活動のための機会や施設にも恵まれている。だれもがいつでも適切な保健・医療・福祉のサービスを受けられる。病気になっても十分な療養が受けられ,急がずに,しかし確実に社会復帰できるためのさまざまな支援体制が備わっている。とりわけ,障害や難病のあるひと,高齢者が,住み慣れた地域社会のなかで,市民としての日常生活を豊かな心持ちで送ることができるようなサービスや支援ネットワークが充実している。
 わたしたち京都市民は,このように,ひとりひとりが支え,支えられるまちをつくっていく。そして京都を,ひとびとが自分の老後や後続世代の生活に不安を抱くことなく,安らいだ気持ちでくらせるまちにする。

 

3 だれもが安心してくらせるまち

 わたしたち京都市民は,日々のくらしの場が安全であり,緑豊かで,環境への負担も少ないようなまちをめざす。
 そのためにわたしたちは,木造建築物や袋路の多い京都のまちの特色に配慮しながら,地震などの大規模な自然災害に強いまちづくりを進め,都市施設や建築物の防災機能を強化する。ひとりひとりが災害から身を守る知恵や工夫を日々のくらしのなかに生かすとともに,災害に強い組織づくりを進める。
 わたしたちはまた,交通事故や犯罪からも安全であるための基礎的な条件が満たされているまち,そして高齢者や子ども,障害のあるひとが安全にくらせるようなまちをつくっていく。
 わたしたちはさらに,経済活動を適正生産・適正消費・最少廃棄の循環経済のなかで営み,日々のくらしのなかで環境に負担をできる限りかけない生活を送ることにより,持続可能なまちをつくっていく。そして,自動車交通に過度に依存しない公共交通優先型の交通体系を,先進技術を利用して総合的に構築しつつ,歩くことが楽しくなるようなまちづくりに取り組む。
 このようにしてわたしたち京都市民は,ひとりひとりがくらしに節度をもち,だれもが安心してくらせるまちをつくっていく。

 

第2節 華やぎのあるまち

1 活力あふれるまち

 わたしたち京都市民は,ものづくりの伝統を生かし,産業経済に活気のある華やいだまちをつくっていく。
 京都に地盤を置くさまざまな産業活動がさらなる活力を得るには,互いの技術にも企業文化にも厚い信頼を置き,相互にきめ細かく支え合うような産業連関都市,より具体的には,高度情報社会,環境調和型社会,高齢社会に対応した京都独自の産業システムを構築していく必要がある。それは,伝統産業から先端技術産業まで,農林業から観光産業,サービス産業まで,高品質・長寿命で付加価値の高いものづくりのわざや高度な情報技術,さらには洗練されたデザインや斬(ざん)新な企画力をもつシステムである。
 また,リサイクル社会やマルチメディア社会に対応した環境や福祉の分野などで新しい産業を展開するとともに,大学等における研究・教育システムや対事業所サービスなど,企業の本社機能や研究開発機能を支援するさまざまな基盤が充実したまちづくりが求められる。
 さらに,地域に密着した商業の振興を図り,奥深い魅力と温かいもてなしの心をもつ観光都市づくりを進めることが重要である。
 このように活気あふれるまちをつくることにより,ベンチャービジネスなど新しい息吹に満ちた産業の担い手の活躍の舞台が開かれると同時に,安定した雇用機会も創出される。まちがにぎわい,若いひとたちがいきいきと学び働ける場が増えるとともに,世界のひとびとがこの地に集まり,ここを舞台にみずからの能力を十分発揮できる機会も増える。
 わたしたち京都市民は,このようにして,京都が世界のなかでその存在感を主張し続けることができるよう,活力あふれるまちづくりを進める。

 

2 魅力あふれるまち

 わたしたち京都市民は,これまでに生み出され,培われ,磨き上げられてきた市民文化をさらに成熟させ,より豊かで華やぎのある市民文化をかたちづくっていく。
 市民文化の成熟とは,市民ひとりひとりの幸福が「人間の尊厳」に深くかかわり,物質的なレベルから精神的なレベルまで,社会的なものから芸術的なものまで,その中身が多様でかつ豊かであり,その具体的なイメージも明確に描けるような文化のあり方を意味する。京都という地に,そのような成熟した文化を実現するためには,神社仏閣や仏像・絵巻物など有形の文化財,伝統芸能や季節ごとの行事など無形の文化財,緑豊かな自然や歴史をたっぷり包み込んだ美しい町家と町並み,創造性の高い大学や研究機関,伝統産業から先端技術産業まで優れた技術力を蓄積してきた企業群,ひとびとの心のよりどころとなってきた宗教文化,市民の日常生活に深く浸透している伝統工芸,茶道や華道などの伝統文化,高い水準を維持してきた芸術文化,さらには市民がもつ独特の美的感覚やくらしの知恵など,京都が培ってきたあらゆる文化資源の間で活発な交流を起こし,広く国内外との多彩な交流を通じて,それらを今まで以上に生かしていく必要がある。
 市民文化の成熟にはまた,まちづくりを主体的に担っていくようなひとづくりが不可欠であり,とりわけ子育てや教育の役割が大きい。また,生涯にわたって,みずからを磨き,高める機会に恵まれていることも必要である。ここで大切なのは,京都市民が時間をかけて培ってきたいくつかの卓越した能力を改めて思い起こし,次の時代に向けてさらに磨き上げていくことである。それは,たとえば,本物を見抜く批評眼(「めきき」の文化)であり,ものづくりの精密な技巧(「たくみ」の文化)であり,冒険的な精神(「こころみ」の文化)であり,創造的な学習・研究への意欲(「きわめ」の文化)であり,来訪者を温かく迎える心(「もてなし」の文化)であり,節度のある生活態度(「しまつ」の文化)である。
 こうした市民文化の成熟にはさらに,市民がそれぞれに自分を生かし,ゆとりをもって楽しくくらしていくためのまちのにぎわいとくつろぎの場が必要である。そうしたひとびとの濃やかな交わりのなかでこそ,まちに本当の華やぎが生まれる。市民どうしの信頼ある結びつきも,日々のこのような楽しい交流を通して初めて生まれてくる。その場合に,守るべき文化資源がたくさんあるということは,都市としての条件整備に限定を加えるどころか,逆に,将来につながるくらしの知恵と想像力の資源を豊かにもっているということを意味する。
 わたしたち京都市民は,このようにして,京都が華やぎのある美しいまちとしてその存在感を示すことができるよう,魅力あふれるまちづくりを進める。

 

第3節 まちの基盤づくり

 これらの市民のくらしや,京都においてなされる,あるいは京都を発信地としてなされる諸活動を円滑に行えるようにするには,生活の利便性・快適性に優れ,生活に潤いのある住み心地のよいまち,多様な経済・文化活動を支える基盤のしっかりしたまちをつくっていかねばならない。そのために,環境への負担軽減に十分配慮しつつ,都市の骨格となる交通軸など,ひとやものの円滑な流れを支える安全・快適な交通体系をはじめ,公園・緑地,教育・文化・スポーツ施設,住宅・住環境,河川,上下水道などの基盤を整備するとともに,歴史的風土や自然環境と調和した町並みの美しさを守り,山林や農地の保全を図る。同時に,多様な情報資源を多くの市民が共有するとともに,世界に向けて積極的な情報発信ができるよう情報関連産業を活性化させ,流動化し進化し続ける通信や放送分野のデジタル化の動きにも十分に対応できるまちをつくる。
 また,地域の個性や自然的・歴史的な条件を十分に考慮して,「保全・再生・創造」を基本としたまちづくりを進める。永い歴史に支えられた自然的風土である三方の山々,文化財や史跡の点在する山麓(ろく)部,そしてゆとりと景観に恵まれた住宅地の一帯は,自然と歴史的な景観の保全に努める。伝統的な町家や町並みが数多く維持され,商業・業務機能が集積し,職・住・文・遊が織り重なる歴史豊かな市街地は,調和を基調とする都心の再生に努める。そして南部は,高度集積地区を中心に,21世紀の京都の新たな活力を担う創造のまちづくりに努める。このような大きな枠組みのなかで,それぞれの地域において市民が日常的な生活機能を身近に享受でき,かつ,多彩で個性的な機能をもつようなまちづくりを進めることにより,京都全体としてまとまりのある良好な都市環境を形成していく。
 言うまでもなく,こうしたまちづくりは,市域を越え,周囲の隣接社会とよく協力してこそ実行できる。関西のなかの京都,日本のなかの京都,そして世界のなかの京都を強く意識しながら,わたしたちはこのまちづくりを進める。

 

第3章 市民がつくる京都のまち

 このような市民のくらしとまちづくりは,市民と市政とが,それぞれの役割を果たしながら互いに協力し合い,ひとつひとつの課題の解決に向けて努力していくなかで初めて実現される。そして,外国籍のひとを含め,市民が市政に主体的に参加するためのしくみやかたちが具体的に整えられる過程において,市民と行政の相互信頼に基づく協力関係が構築されていく。

 

第1節 市民の市政への主体的な参加

 地域社会が抱えるさまざまな課題は,もとより地域社会の一員としての住民が主体的に発言し,調整し,解決すべき事柄であるが,生活のなかに一定程度のゆとりが生まれてくるに伴い,こうした課題の解決に積極的にかかわっていきたいというひとびとの意欲も高まってきている。複雑で多面的な構造をもつ現代社会においては,市民のそれぞれの価値観に基づいて市政への期待や要望も多様化してきており,市民が市政に参加するに当たって,さまざまなレベルでの多様なしくみを求める声が高まりつつある。また情報化の進展によって,市民の社会活動の間にも,多岐にわたるきめ細かなネットワークが生まれ,市民の側での市政参加の条件は整いつつあり,たとえば保健,福祉,教育,スポーツ,防災,まちづくりなどさまざまな分野で市民参加の取組が進んできている。これらの問題は市民の切実な関心事であり,市民ひとりひとりが実際にそれらにかかわっていく方法や手続が,さらにきめ細かく考案され,整備されていかねばならない。
 そうしたなか,わたしたち京都市民は,市民としての市政へのかかわり,またひとりの人間としての地域社会へのかかわりにおいて,ひととひととのどのような結びつきを実現したら,そして社会のどのようなしくみを実現したら,幸福なくらしを手に入れることができるのかを,自分たちの問題としてしっかり考えていきたい。
 市民にとってより身近な地方公共団体に権限が移る地方分権の流れは,国による画一的な施策が優先される時代から,地域の個性や独自性を重視する時代への大きな転換を意味する。このような改革のなかで,市政はますます重みを増していくが,そのような時代だからこそ,市民が市政に積極的に参加することで,市民の意思はより直接的に反映され,大きな力を発揮することになる。また,低成長・少子高齢化の時代を迎え,今後さらに財政上の制約が厳しくなることが予測されており,市民と行政との新しいかたちでの協力関係が必要とされている。
 わたしたち京都市民は,公開された十分な情報を基に市政に責任をもってかかわり,また,市政の方向性に関する議論に主体的に参加する。そのために行政は,市民の市政参加のしくみとかたちを早急に整えていく。こうした努力の過程で,質の高い行政サービスの実現と市政運営の効率化が図られるとともに,市民と行政との相互の信頼関係も築かれ,ともにさまざまな困難を克服していくことができる。

 

第2節 市政参加のしくみとかたち

 市政の主体は言うまでもなく市民であり,市民は市長や市会議員を選出する。市長は,市民の意向を踏まえた市政推進の方針を示しつつ,そのリーダーシップと実行力を十分に発揮しなければならない。市会は,市民の代表として市の重要な意思決定を行う議事機関であり,行政が市民の意向に沿って適正に執行されているかについても審議する。市民の負託を受けた市長と市会は,できる限り多くの市民の満足が得られるよう,市政における車の両輪としての役割をそれぞれ着実に果たす。
 昨今,市民の自治意識の高まりとともに,地域における住民の助け合いのしくみを整え,共通の問題は住民みずからがその解決に当たる試みが,いろいろな規模,いろいろな次元でなされている。従来の自治組織だけでなく,市民の自発的な活動によって組織された多面的なネットワークを通して,さまざまな市民行動がかたちづくられてきている。
 高度情報社会のなかで,市政への参加のかたちは,ますます多様になり,参加は,個人でも十分に可能となりつつある。また,企業,大学,宗教法人,民間非営利団体など各種の法人・団体の活動は,今後一層重要なものとなる。これらの法人・団体は,わたしたち市民がひとりひとりではとても担いきれないような重要な機能を果たす都市の一員であり,行政は,そうした組織への支援をさまざまな角度から行う用意がなくてはならない。
 そして,市民と行政とがこのように刺激し合いつつ,ともに積極的な意思と責任とをもって都市運営を担うためには,独自の自治組織を築いてきたわたしたち京都市民の自由と自治の伝統をさらに発展させ,すでにさまざまなかたちで現れている市政参加の芽を,パートナーシップ,すなわち市民と行政との対等な立場での協力関係へと培っていく必要がある。
 市民の市政参加が実現されていくためには,政策の立案と決定,施策の実施とその評価の全段階で,市民と行政とがともに責任ある主体として協力し合っていけるしくみをつくっていくことが必要である。具体的には,政策の立案に当たって,政策の選択肢と十分な情報が市民に公平かつ速やかに開示され,意見を述べる機会が多くつくられるとともに,時に応じて市民が直接に異議を唱え,代替案を提示できるしくみも設定されねばならない。そして,そうした意見が可能な限り尊重されるなかで立案され,決定された政策に基づく個別の施策の実施段階においても,市民は積極的な役割を担う。そして市民が施策を適切に評価できるよう,行政はそれらの実施結果に関する十分な情報を市民に提供しなければならない。こうした一連の過程を円滑にかつ確実に実行することによって初めて,市民と行政とのパートナーシップは,確かなものとして構築される。そしてそのために,新しい情報メディアの活用やワークショップなどの合意形成手法の活用,地域ごとの課題に応じたきめ細かな参加など,さまざまな場や分野における多様な参加のための手法が編み出される必要がある。

 

第3節 市民と行政の厚い信頼関係の構築

 市民は,社会のさまざまな網の目のなかで生活している。そうした公共の事柄を最もよいかたちで,しかも公平に運営していくうえで,わたしたち京都市民は,そのひとりひとりが社会生活のさまざまな場面で,市政に参加する権利を有し,十分な行政サービスを受ける一方で,それぞれに責任を負い,負担を引き受ける。
 市民の責任ある行動の実現のためには,行政はつねに市民の視点に立って,市民の意見や提案をより総合的・客観的に整理・評価し,そのうえで,それらを具体的な政策としてまとめ,実行していく責任がある。また,行政はみずからの行財政のあり方をつねに見直す用意がなくてはならない。さらに,行政は市民による社会生活上のネットワークづくり,ルールづくりに媒介役として積極的にかかわっていき,市民の要請に応じてすぐに市民の社会的活動をさまざまな角度から支えるという,柔軟な行政のあり方を模索しなければならない。そのためには,縦割り行政の改善が必要であるとともに,市民がより身近なところでその地域の独自性を生かしつつ意思決定を行い,またきめ細かな行政サービスを受けられるよう,区レベルへのさらなる分権の工夫が不可欠である。
 わたしたち京都市民は,京都を,こうした市政参加の理念を最も充実したかたちで実現しているまちとしたい。それをともにめざすなかでこそ,市民と行政との厚い信頼関係は築かれる。

 

(むすび)

 わたしたち京都市民は,わたしたちの望むこれからのくらしとまちづくりを,京都市の基本構想としてここに示した。京都市は,この基本構想を実現するための施策・事業を市政の各分野において具体化し,着実に実施することにより,市民のための市政推進を図る。

 


 

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