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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本計画第1次案/第1次案 第1章

ページ番号35767

2001年2月1日

第1章 安らぎのあるくらし

・日々のくらしのなかで人権が大切にされ,高齢者や障害者をはじめ,すべてのひとが積極的に社会参加ができる場所や機会に恵まれたまちの実現に向けた取組を進める。また,学校と家庭・地域との連携の下,心豊かで社会性を身につけた子どもたちを育(はぐく)み,だれもがいきいきとくらせるまちをめざす。

・保健・医療・福祉などくらしの基盤となるサービスや支援ネットワークを充実することで,子どもを安心して産み育て,すべてのひとが心身ともに健やかにくらせる,ひとりひとりが支え,支えられるまちをめざす。

・ひとりひとりがくらしに節度をもち,環境への負担の少ない持続可能なまち,「歩くまち・京都」の実現に向けた取組を進めるとともに,防災機能が強化され,犯罪や事故などのない,だれもが安心してくらせるまちをめざす。

 

2010年の市民のくらしとまち

 

 

第1節 すべてのひとがいきいきとくらせるまち

1 ひとりひとりが個人として厚く尊重される

基本的方向
 日々のくらしのなかに人権を大切にし,尊重し合う習慣が根付いた「人権文化」を築いていくことにより,子どもも高齢者も,女性も男性も,障害のあるひともないひとも,また国籍や民族,生まれや生い立ちに関係なく,すべてのひとがいきいきとくらせるまちをめざす。

 

(1) 日々のくらしのなかに人権を大切にし,尊重し合う習慣が根付いた「人権文化」の構築

ア 人権尊重の考え方が日常生活に根付いていくための広報・啓発など多彩な取組の推進

 人権文化がしっかりと根付いた社会の構築に向け,市民しんぶん,テレビ,ラジオ,パンフレット,ポスター,インターネットなどの各種広報媒体の特性を生かした広報・啓発活動を推進するとともに,憲法月間,人権月間,人権強調月間における講演会など各種啓発事業を実施する。
 また,市民の興味,関心や学習段階に対応した学習の場や教材の提供などを進めるとともに,参加型・体験型の学習など,多様な手法を取り入れた学習機会を提供する。さらに,人権教育に関する調査,研究を行うとともに,市民に幅広く人権教育に関する情報を提供し,人権にかかわる相談について適切な対応を図ることができるよう,相談体制の整備と関係機関との連携を強化する。

イ 保育所,幼稚園,学校などにおける人権教育の推進

 子どもを主体として捉えた「児童の権利に関する条約」を踏まえながら,保育所や幼稚園においては,集団の中で,ひとりひとりが人権を尊重する気持ちを育(はぐく)むとともに,将来にわたって思いやりと協調性に富んだひととなるための基礎を培う。
 さらに,学校においては,みずから進路を切り拓き,自立して生活することができる力を培うとともに,人権の大切さを理解し,人権尊重を規範とした行動の定着に向けた取組を行う。

ウ 豊かな共生社会を目指した社会参加と交流の推進

 だれもが社会を構成する一員として,自己の希望に応じて社会活動に参加することは,自己実現を図るための当然の権利である。すべてのひとの平等な社会参加を支援するとともに,区民ふれあい事業,高齢者と子ども等世代間の交流事業など,市民相互の幅広い交流を促進する。

エ 市民の自主的な取組の支援の推進

 地域,学校,企業・職場,家庭など,市民がかかわるさまざまな場面において,人権教育の自主的な取組が進められるよう,地域や企業などにおける学習活動を効果的に進めていくための指導者の養成や人権研修会への講師(市民啓発推進員)の派遣,学校・幼稚園・保育所における保護者対象の学習会の開催など多様な支援を行う。

オ 世界人権問題研究センターの整備

 人権問題の総合的な調査,研究や関連機関との連携,交流を推進し,市民がその成果を享受することができるよう,その拠点となる施設として,「(財)世界人権問題研究センター」の施設整備を京都府と協調しながら進める。

 

(2) 男女がともに自立,参画,創造する男女共同参画社会の実現

ア 男女の人権の尊重

 (ア) 女性に対するあらゆる形態の暴力への対策強化

 セクシュアルハラスメント(性的いやがらせ),ドメスティックバイオレンス(夫や恋人からの暴力),性犯罪など,女性に対するあらゆる形態の暴力は,女性の基本的人権を侵害するものであり,男女共同参画社会を形成していくうえで克服すべき重要な課題である。すべてのひとが女性に対する暴力について正しい理解が得られるよう広報・啓発活動を行うとともに,特にドメスティックバイオレンスの被害者支援策として,関係機関の連携のもと,シェルターなどの保護体制を整備する。

 (イ) メディアにおける人権尊重の取組

 高度情報通信社会の進展のなかで,メディアによる情報の影響はさらに拡大するものと予想される。男女平等の視点から,メディアにおける人権尊重の自主的取組を促進させるとともに,メディア・リテラシー(メディアからの情報を読み解く能力)の向上のための啓発を進める。

 (ウ) 生涯を通じた女性の健康の保持・増進

 性や母性に関する学習活動や情報提供の拡充などにより,母性を尊重し保護するとともに,学校や地域における性教育・健康教育の充実,女性に対する健康診断や健康増進,産前産後の支援,相談体制の充実などにより,女性の健康の保持・増進に努める。

 (エ) 男女平等の視点に立った生涯学習・啓発の推進

 生涯にわたって多様な学習機会の確保に向け,京都市女性大学をさらに発展させるとともに,社会教育,家庭教育,学校教育のそれぞれの場で,男女平等の視点に立った教育・学習の一層の充実を図る。さらに,「女性総合センター(ウイングス京都)」における情報提供,学習・研修活動など多彩な事業を展開するとともに,「男女共同参画市民会議(ウイングス・フォーラム)」の開催や啓発誌の充実を通じて,男女共同参画社会の実現に向けた意識改革を進める。

イ 職場,家庭,地域における男女共同参画の実現

 (ア) 就業における男女平等の確保

 女性が自分らしく安心して働き続けられるよう,男女平等な雇用環境を確保するための普及啓発に努めるとともに,雇用・労働問題に関する各種情報の提供や相談体制を充実する。また,女性の職業能力の開発・育成や女性の起業を支援する。

 (イ) 男女の家庭,地域社会への参画

 男女共同参画社会では,個人の生きがいの場が職場,家庭,地域社会にバランスをとって展開されることが必要であり,男女の家庭責任共同分担の促進,地域活動・ボランティア活動等社会活動への男女共同参画を進める。

 (ウ) 子育てや介護支援の充実

 働く女性の増加と就労形態の多様化に対応した育児・保育環境などの整備や子育て支援ネットワークの構築,高齢者の社会参加の推進,介護支援などの取組を推進する。

ウ 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

 市政の政策・方針決定過程への女性の参画を進めるため,各種審議会などへの女性の参画を促進するとともに,女性職員の管理職などへの登用を一層促進し,職域の拡大と能力開発を進める。

エ 国際活動の支援

 女性問題に関する国際会議への女性の参加の促進など,すべての女性の地位向上に貢献するため,自主的国際活動を支援する。

オ 「第3次男女共同参画推進計画」の策定・推進と「男女共同参画推進条例」の制定

 男女がともに自立し,その個性と能力を十分に発揮できる豊かな社会の実現に向け,社会経済状況の変化や国際社会の動向に対応した「第3次男女共同参画推進計画」の策定・推進を図るとともに,男女共同参画社会のしくみづくりとして「男女共同参画推進条例」を制定し,市民,事業者,行政の連携強化を推進する。

 

(3) 子どもの人権の尊重

ア 子どもたちの権利擁護,虐待防止 [P38「2子どもを安心して産み育てる」(5)イに再掲]

 児童虐待の早期発見,早期対応,未然防止を図るため,児童相談所の機能や体制の充実を図るとともに,市民への広報・啓発活動の推進,関係機関の協力体制を強化する。
 また,「児童の権利に関する条約」,「児童福祉法」の理念に基づき,子どもを大人が保護・指導する対象としてではなく,子ども自身の意思を尊重した権利擁護システムを構築する。

イ 公共心を培う教育の推進 [P30「3子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ」(2)イ(ア)に再掲]

 社会の基本的なルールの認識がなく,自己中心的で,善悪の判断に基づいた自己規律ができない子どもたちが増えている。こうした状況に対し,子どもたちに命の大切さはもとより社会におけるルールなど物事の判断基準を養い,公共心を培う教育を進める。
 また,児童会や生徒会活動などを活性化するなかで,子どもたちの社会性や自主性を育(はぐく)む。

 

(4) 高齢者の人権の尊重

ア 高齢者の自立と社会参加の支援

 高齢者がみずからの居場所を確認でき自信をもってくらせる長寿社会の実現をめざし,介護サービスの質的向上を図るとともに,高齢者の自立を支援し社会参加を促進するための取組を進める。

イ 痴ほう性高齢者等の権利擁護[P34「1すべてのひとが相互に支え合い安心してくらす」(2)エ(イ)に再掲]

 痴ほう性高齢者をはじめ,介護が必要な高齢者に対するプライバシーの侵害や虐待防止のための積極的な広報・啓発活動を推進するとともに,専門相談体制の整備を進める。

 

(5) 障害のあるひとの人権の尊重

 障害のあるひとが特別な存在として見られるのではなく,障害のあるひともないひとも同じ生活が送れる社会こそ普通の社会であるという「ノーマライゼーション」の理念の下,建物や道路などについての物理的な壁,障害だけを理由に社会参加を妨げるような制度的な壁,障害のあるひとに対する誤った知識や偏見によるこころの壁を取り除くため,保健・医療,福祉,教育,就労・雇用などの分野において,総合的な取組や施設の整備などを積極的に推進するとともに,障害に関する正しい認識の普及に向け,広報・啓発活動を充実する。とりわけ,精神障害に対する誤解や偏見はいまだ根強い状況にあるため,精神に障害のあるひとの社会復帰の道筋を一見して理解できるかたちで示す複合的社会復帰モデル施設を整備し,精神障害に関する正しい認識の普及を図る。

 

(6) 特別施策としての同和対策事業の終結とその後の取組

ア 特別施策としての同和対策事業の終結

 同和地区のおしなべて低位な実態を解消して一般地域との格差を是正し,住民の生活基盤の安定,向上と自立を促進する事業や人権意識の高揚をめざした事業を一般施策を補完する特別施策として推進してきたことや,同和地区住民の努力とがあいまって,住環境や住民の生活実態が大きく改善されてきた。このことを踏まえ,特別施策としての同和対策事業の廃止や一般施策への移行などの見直し,改革を進めているところであり,法期限である2001年度末には,特別施策としての同和対策事業を終結する。

イ 一般施策での取組の推進

 今日の同和地区においては,若年・壮年層の地区外流出,地区内人口の減少,これに伴う高齢化の急激な進展や地域コミュニティ機能の低下,ひとり親家庭の増加,大学進学率の格差,住宅の老朽化に伴う建替えなどの課題が存在し,一方で就職,結婚時の差別につながる身元調査などの実態がある。これらの諸課題については,他の人権問題の解決のための取組と同様に,広く市民を対象とする一般施策により同和問題の早期解決を図る。

 (ア) 住民の自立を支援する取組の推進

 保護者の子育てに関する自立支援や地域の子育て支援を柱とする保育の取組,同和教育の成果を普遍化した人権教育や保護者の教育力向上に関する支援などの教育の取組,住宅の建替えを契機とする,将来にわたり良好な住環境のなかで子どもからお年寄りまでの多様な世代が安心して永住でき,住民が快適にくらせるまちづくりの取組などにより,住民の自立に向けた自主的な努力を支援する。

 (イ)周辺地域との交流と共生をめざした取組

 隣保館などの公共施設の地域に開かれたコミュニティセンターとしての有効活用,生涯学習の推進,自主的・主体的活動の促進,周辺地域も含めた住民相互の交流をめざした地域の交流の取組,広く周辺地区を視野に入れた住民の健康の保持・増進を図るための,とくに在宅高齢者を地域ぐるみで支えるしくみとしての保健・医療・福祉のネットワークづくりなどにより,周辺地域も含め,さまざまなひとが交流し,共生する地域社会づくりを支援する。

 

(7) 多文化共生社会の実現

ア 市政への参画の拡充

 外国籍市民を含む委員で構成する「外国籍市民施策懇話会」の開催などを通じて,外国籍市民の声を市政に反映させる取組を推進するとともに,外国籍市民の市職員への採用の拡大を進める。また,外国籍市民が地域活動に参加しやすい環境づくりに取り組む。

イ 多様なニーズに対応した情報提供・相談体制の充実

 外国籍市民の多様化,増大するニーズに対応するため,国際交流協会,市民・民間団体などとの連携強化や外国籍市民ボランティアの登用を進め,行政の各分野並びに生活全般にわたる,効率的かつ双方向の情報提供・相談体制を充実する。

ウ 住宅問題への対策の強化

 外国籍市民に対する入居差別の解消に向けて,留学生と家主の交流会の開催など,宅地建物取引業者や家主に対する啓発・指導の強化を図るとともに,入居に伴う不安を払拭するための情報提供や相談体制を充実する。さらに,市営住宅への入居に関する情報提供を充実する。

エ 就職差別の解消に向けた取組の推進

 公正な採用選考が行われるよう,市民や企業等を対象に研修会やシンポジウムの開催など啓発を強化するとともに,各業界団体や求人者に対して外国籍生徒の積極的な採用に向け,関係機関との連携を図りながら進路指導を充実する。

オ 人権意識の高揚のための教育・啓発の推進

 日本人及び外国籍のすべての児童・生徒が,自国の文化と伝統を理解し,他国・他民族との違いを尊重し,ともに生きる国際協調の精神を養うことをめざし,正しい理解と認識を深めるための学習機会や交流の場の提供や啓発活動を充実する。さらに,外国籍の児童・生徒への日本語教育,日本社会への適応教育の充実など,学校でのより幅広くきめ細かな指導を通して子どもたちの教育保障を図るとともに,外国人保護者の不安の解消に向け,保護者との円滑な連絡体制の整備を進める。
 また,外国籍市民への差別や偏見の解消に向け,「多文化共生社会」をテーマとしたシンポジウムの開催などを通じた啓発を進める。

 

(8) 現代社会における多様な人権問題への対応

ア HIV等の感染症についての正しい知識と理解の普及

 市民がHIVなどの感染症について正しい知識を身につけ感染症を予防できるとともに,患者・感染者に対する理解や偏見の是正に向け,理解しやすい内容により効果的な啓発を進める。

イ 現代社会における多様な人権問題への対応

 刑を終えて出所したひと,婚外子,路上生活者(ホームレス)などに対する差別や偏見,インターネットなどを利用した人権侵害等,多様な人権問題に対する正しい認識と理解をもつと同時に,自分の身近な問題として,考え,対処する力を身につけられるよう教育・啓発活動を進める。

 

 

2 すべてのひとがいきいきと活動する

基本的方向
 子どもから高齢者まですべての市民がいきいきとくらせるまち,とくに高齢者や障害のあるひとひとりひとりが,住み慣れた地域社会のなかで,積極的に社会参加ができる場所や機会に恵まれ,多くのひとたちとふれあいながら社会の一員としての生きがいを持って活躍できるまちの実現をめざす。

 

(1) だれもがずっとくらし続けたくなるすまい・まちづくり

ア 安らいだ気持ちでくらせるすまいづくり

 (ア)市民の多様な都市居住形態に応じた住宅の供給

 多様な世代が都市に集まって住むということは,地域で育(はぐく)んできた相互扶助や生活の知恵の継承など,長い間都市生活を営んできた京都市民の得意とするところを生かした地域コミュニティの醸成につながる。市民が地域社会のなかで安らいだ気持ちで心豊かにくらせるまちをめざし,多様な世代が共生する都市居住を進める。
 そのために,特定優良賃貸住宅の供給や定期借地権付住宅の供給など,若年層や子育て世帯の都心居住を促進するとともに,住宅に困窮する低所得者層に対して,公営住宅の的確な供給を行うなどの住宅施策を進める。
 また,市民の世帯構成の変化等に応じた住居選択の幅を広げるため,中古住宅市場やリフォーム市場の水準の向上と活性化を進め,既存住宅を有効に活用する。

 (イ) 高齢者や障害のあるひとがくらしやすい住宅の整備

 高齢者や障害のあるひとが自立して,快適な生活を安心して営むことができるよう,福祉施策との連携のもと,民間活力を生かしながら,既存住宅の改修を含めた住宅のバリアフリー化の普及に努めるとともに,高齢者向けの賃貸住宅の供給など,高齢者や障害のあるひとがくらしやすい住宅の整備を促進する。
 また,生活援助員の派遣,緊急通報システムの整備など生活支援サービスの充実に関する検討や在宅福祉を支援する新たな居住形態に関する検討を行うとともに,バリアフリー等に対応した住宅に改修・建替えをするための相談事業を充実する。

 (ウ) 住宅施策の基本的な指針となる新たな「住宅マスタープラン」の策定・推進

 少子高齢化,単身世帯の増加など,住生活を取り巻く社会情勢の大きな変化に対応するべく現行の「住宅マスタープラン」を見直し,多様化,複雑化する市民の居住ニーズに対応した良好な都市居住の実現に向けて,住宅施策を総合的,計画的に展開するための基本的な指針となる新たな「住宅マスタープラン」を定める。
 良好な都市居住の実現には,市民,事業者による営みが重要であり,「住宅マスタープラン」を市民,事業者,行政が共有し,協働による住宅施策を展開する。

イ ひとにやさしいまちづくりの推進

 すべてのひとがいきいきと都市生活を楽しむためには,だれもが気軽にまちに出歩くことができるような「ひとにやさしいまちづくり」を推進していくことが必要である。
 そのため,多くのひとびとが利用する建築物等を新たに整備する際には,すべてのひとが利用しやすいデザイン(ユニバーサルデザイン)が採り入れられ,バリアフリー化された歩行空間が整備されるよう,「人にやさしいまちづくり要綱」等に基づく協議を行う。既存建築物については,バリアフリー化の改修手法を検討し,既存公共建築物の計画的なバリアフリー改修を行うとともに,要綱の施設整備基準に適合した建築物の維持管理の状態を調べる福祉パトロールを実施する。
 また,市民,事業者,行政がともにバリアフリーについて学ぶ講座を創設するなど,ひとにやさしいまちづくりの普及に努める。

ウ 良質な住宅・居住環境の整備 

 (ア)分譲マンションの適切な維持管理を誘導,支援する方策の検討

 区分所有法により多くのひとが集まって住む分譲マンションは,都市における主要な居住形態のひとつであるが,その維持管理に係る諸問題が近年大きな社会問題となってきている。そこで分譲マンションの適切な維持管理を誘導,支援する方策の検討を進める。

 (イ)適正な品質,性能を有し,環境や健康に配慮した良質な住宅の普及

 建築物の安全性と適法性を確保し,市民が安心して良質な住宅を取得できるような新築住宅市場を整備する。そのため,適正な工事監理の実施,中間検査や完了検査の的確な実施を促進するとともに,瑕疵保証制度の徹底や住宅性能表示制度の普及に努める。
 また,省エネルギー,高耐久,廃棄物,アレルギー等の面で環境や健康に配慮した良質な住宅の普及に努める。

 (ウ) 狭小・老朽化した市営住宅の総合的改善の推進

 狭小で老朽化した既存の市営住宅の計画的な建替えや長期管理を前提とした改善など,既存の市営住宅を有効に活用する。
 また,団地の再生に当たっては,福祉施設等の導入,地域の景観形成,環境問題への対応など地域のまちづくりへの寄与という視点を重視しつつ進める。

 (エ) 市民のすまいづくりのための住情報交流拠点の充実

 住情報の交流拠点である「すまい体験館」を中心として,住宅・住環境に関する相談体制の充実と住情報提供を行い,高齢者対応や耐震性の向上など良質な住宅の建築,維持管理などの普及,啓発を進める。

エ 京都に合った木造住宅の継承・創造[P60「1まちを美しくする」(4)に再掲]

 京都のまちを特徴付けている京町家をはじめとする木造住宅については,優れた町並み景観や都市のなかの住宅としての工夫を,時代に応じたかたちで発展的に継承する。そのため,「京町家再生プラン」に基づく伝統的な意匠による木造建築物の保全・再生・活用を促進するとともに,環境や防災面等を考慮した新素材や新技術を活用した木造建築物の開発,既存木造住宅の改修手法の検討などに取り組む。また,安全性を確保したうえでの規制の柔軟な運用や制度の見直しなどの検討を進め,京都に合った新しい木造住宅の開発・普及について検討する。

オ 「住み続けられるまちの形成」に向けた住環境の整備推進

 住環境整備施策は,安全性や,居住性等の観点から住環境の整備が必要な地域において,多様な世代が快適に安心して住み続けられるまちをめざして,住宅地区改良事業や密集住宅市街地整備促進事業等を展開し,住環境の整備と地域コミュニティの醸成を図ってきた。今後は,これまで培ってきた経験と蓄積を生かすなかで,住民と行政が協力連携して魅力のある,将来にわたり地域コミュニティや地区活力が維持できる自立的なまちの形成を図るための各種施策を実施する。
 また,崇仁地区における住環境の整備については,住宅地区改良事業の早期完了を図るとともに,東九条地区における密集住宅市街地整備促進事業とあわせて京都駅周辺の交通至便な立地特性を生かしたまちづくりを進める。さらに,三条鴨東地区については,京阪三条駅ターミナルとの隣接条件を生かした住環境の整備をめざして,住宅地区改良事業を進める。

 

(2) 高齢者や障害のあるひとが積極的に社会参加できる機会の提供

ア 「市民すこやかセンター」の整備

 「中央老人福祉センター」を移転・改編し,豊かで活力ある長寿社会の実現をめざしたさまざまな施策を総合的に進める基幹施設として「市民すこやかセンター」を開設する。同センターにおいては社会参加を促進する啓発活動,ボランティア活動等の自主的な活動を支援するための情報提供やリーダーの養成,活動のきっかけづくりなど,高齢者の社会参加を支援する。

イ 地域において高齢者が生きがいをもって社会参加できる機会の拡大

 高齢者が生きがいをもって社会参加できるよう,老人クラブ活動をはじめとしたさまざまな自主的なグループの活動に対して支援を行うとともに,健康の増進や教養の向上,レクリエーションのための施設である老人福祉センターや,集会やクラブ活動の場である老人クラブハウス等をはじめとした,地域で気軽に社会参加できる拠点の整備を促進する。
 また,高齢者が子どもたちとも交流できる,入浴施設やスポーツ施設,公園などを備えた総合的な施設を整備する。

ウ 世代を超えた交流の場となるイベント開催の促進・支援

 「市民すこやかフェア」など高齢者をはじめすべての市民が世代を超えて交流でき,また高齢者が行う活動の発表の場ともなるイベントの開催を促進・支援する。

エ 障害のあるひとの自立と社会参加の促進

 在宅の身体障害や知的障害のあるひとの自立と社会参加を促進するため,通所により日常生活の訓練や軽作業などを実施する日帰り介護(デイサービス)事業を充実させるとともに,重度の知的障害のあるひとが外出しなければならない時に,付き添うひとがなくても不自由しないよう,ガイドヘルパーを派遣する。
 また,地域社会で孤立しがちな精神に障害のあるひとの自立と社会参加を促進するため,地域住民やボランティアとともに気軽に社会参加でき,社会性や社交能力も養える「精神障害者ふれあい交流サロン」を増設する。

オ みんなで楽しめるスポーツの普及 [P42「3心身ともに健やかにくらす」(7)ア(イ)に再掲]

 これまであまりスポーツに参加しなかった高齢者や障害のあるひとでも,気軽に体を動かすことができ,積極的に社会参加できるよう,だれもが親しめるスポーツやレクリエーション活動を普及・振興することにより,世代を超えてみんなでスポーツに親しめる環境づくりをめざす。

カ 情報通信技術を生かした新しい社会参加への支援

 外出できなくても多くのひとびととの交流ができ,情報の受け手であるだけでなく発信者ともなれる,インターネットなどの情報通信技術(IT)を生かした新しい社会参加について,情報機器の基礎技術の習得をはじめとした支援を行う。

 

(3) 高齢者や障害のあるひとの能力向上や働く場の確保

ア 高齢者が能力を発揮し働ける場の確保

 高齢者が長年培った知識,技能,経験を生かし,社会にとって大切な人材として,その能力を発揮し希望に応じて働けるよう,継続雇用の斡旋,啓発や自発的な職業能力開発の奨励,起業に関する総合相談等を行うとともに,高齢者に地域に密着した仕事を提供する「シルバー人材センター」の事業拡大に向けた支援を行う。また,高齢者の雇用創出につながる地域の非営利民間組織(NPO)の活動に対する支援についても検討する。

イ 障害のあるひとが地域で生活しながら働き,活動できる場の整備促進

 障害のあるひとが地域で自立した生活を送れるよう,就労に向けた訓練や仕事に就き働ける場である通所授産施設や福祉工場等の整備を促進する。
 また,法制度外の施設である共同作業所の運営が安定するよう支援するとともに,その特色を生かしながら法定施設である小規模通所授産施設へ移行できるよう支援する。
 さらに国や府と連携して,事業主等に対して障害のあるひとの雇用促進についての啓発を行う。

ウ 情報通信技術(IT)を生かした就労支援

 インターネットなどの情報通信技術(IT)を生かし,高齢者や障害のあるひとが自宅等で仕事に従事できるよう,情報機器の基礎技術の習得や実践的な技能の向上等を図ることのできる事業を実施する。

 

(4) だれもがいきいきと働けるまちづくり

ア 勤労者福祉の向上を図るための総合的な施策の展開

 勤労者福祉施策の総合的な展開を図るため,勤労者のニーズの調査を行うとともに,勤労者に係る各分野の施策(勤労者福祉の向上,女性の働く権利の保障,高齢者の雇用拡大,障害のあるひとの雇用拡大,就労の充実,外国籍市民の雇用環境の向上,勤労者と子育て支援など)の効率的な連携を進める。

イ 勤労者への支援の充実

 低利の生活資金の融資をはじめとする勤労者融資制度やインターネット,情報誌を通じた労働に関する情報提供,勤労者福祉の向上を目的に実施する事業など,勤労者に対する支援を充実する。

ウ 勤労者の学習意欲や社会的地位の向上を図る勤労者教育の推進

 勤労者の学習意欲及び社会的地位の向上(キャリアアップ)を図るため,「京都労働学校」については,資格取得講座など勤労者のニーズに対応した科目を充実する。

 

 

3 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ

基本的方向
 子どもたちにとって,「家庭」が最も安心できる場所となり,温かく,また時には厳しく見守る「地域」の存在が必要である一方,集団のなかで子どもたちの可能性を開花させる「学校」の果たす役割もまた大きい。
 家庭・地域・学校がそれぞれの役割に応じた教育責任を果たすとともに,三者が一体となった取組を進めるなかで,生命や人権,社会的規範等を尊重する心豊かで社会性を身につけ,みずから考え,生きる力を備えた子どもたちを育(はぐく)む。

 

(1) 学校と家庭・地域の連携

ア 開かれた学校づくりと家庭・地域の教育力の向上

 (ア)開かれた学校づくり

 校長の求めに応じ,保護者や地域住民が学校運営に参画する「学校評議員制度」の活用や,各々の学校の特徴を生かすための「学校評価システム」の導入,就学前の子どもをもつ保護者を対象とした授業参観の実施,学校だよりやホームページによる学校情報の発信など,学校と家庭・地域が双方向に結ばれた関係をつくり,地域の特性を踏まえた特色ある学校運営・教育活動を展開する。
 また,学校の敷地や余裕教室などを地域に開放し,生涯学習や福祉などの地域活動の拠点として学校施設を活用する。 さらに,都心部の小規模校については,地域の協議を基本に統合を進め,その跡地活用については,長期的な展望に立って検討を行う。

 (イ)家庭・地域における教育力の向上

 子どものしつけなど人生最初の教師ともいえる家庭や地域の役割をもう一度見直し,学校との連携のもと,PTAや青少年健全育成団体の活動を支援するとともに,保護者相談を充実するなど家庭や地域における教育力の向上を図る。
 また,家庭・地域が主体的に学校教育活動を支援する「ボランティア人材バンク」を充実する。

 (ウ)学校休業日における子どもたちの体験的活動の推進

 子どもたちが学校休業日を有意義に過ごせるよう学校を開放し,地域の各種団体が主体的に行う,昔の遊びや伝統産業など地域の特色に応じた体験の場づくりを支援する。
 また,「子どもボランティアリーダー」を養成し,子どもたちが地域活動に企画段階から主体的にかかわることができる取組を進めるとともに,地域の生涯学習資源を活用した学習プログラムを開発する。

イ  「人づくり21世紀委員会」の活動の推進[P37「2子どもを安心して産み育てる」(4)イに再掲]

 「子どもたちのために何ができるか」を親の役割や大人の責任を確かめ合うなかで,市民みんなで考え,行動し,情報発信する場として「人づくり21世紀委員会」の活動を進め,子どもを地域で育(はぐく)む気運を高める。

 

(2) 子どもたちの社会性を高める教育の推進

ア 京都の歴史や伝統文化に親しみ次代へ引き継ぐ教育の推進

 西陣織や京焼・清水焼などの伝統産業,茶道,華道,日舞,能などの伝統文化や伝統芸能,京都の祭など,京都でしかできないさまざまな体験活動を推進し,京都の歴史や伝統文化に親しみ,次代へ引き継ぐ京都ならではの教育を展開し,子どもたちに京都のまちづくりの使命感を育(はぐく)むことにもつなげる。

イ 豊かな人間性とたくましさを育む教育の推進

 (ア)公共心を培う教育の推進[P22「1ひとりひとりが個人として厚く尊重される」(3)イに再掲]

 社会の基本的なルールの認識がなく,自己中心的で,善悪の判断に基づいた自己規律ができない子どもたちが増えている。こうした状況に対し,子どもたちに命の大切さはもとより社会におけるルールなど物事の判断基準を養い,公共心を培う教育を進めることで,ひととひととの相互の信頼に基礎を置く社会の再構築をめざす。
 また,児童会や生徒会活動などを活性化するなかで,子どもたちの社会性や自主性を育(はぐく)む。

 (イ)子どもたちの心の居場所づくり

 教育相談の要となるカウンセリングセンターの設置,臨床心理士等の資格をもったスクールカウンセラーの配置拡大,担任の教職員との連携強化,余裕教室を活用した「心の教室」の設置など子どもたちの心の相談体制づくりを推進する。
 また,学校内において別室での支援を要する児童・生徒のための相談員の配置,不登校児童・生徒の新たな出会いと発見を支援する「ふれあいの杜(もり)」(適応指導教室)や「不登校児童・生徒支援連絡協議会」の活動を充実する。
 さらに,子どもたちの置かれた状況などに配慮し,通学区域の弾力的な運用に努める。

 (ウ)子どもたちの心や体を健やかに育む教育の推進

 性教育,エイズ教育や薬物乱用防止教育などの健康教育,生徒指導の充実に努める。
 また,スポーツ少年団やスポーツ教室,合同部活動などによる基礎体力や競技力の向上,豊かな感性を養う芸術教育など,子どもたちの心や体を健やかに,たくましく育(はぐく)む教育を推進する。
 さらに,中学校における弁当と学校給食の自由選択制の導入や小学校における栄養のバランスのとれたおいしい「手作り給食」などを通して,望ましい食生活習慣に関する教育を進める。

ウ 子どもたちの生きる力の基礎を育む教育の推進

 (ア)ひとりひとりに応じたわかる授業の展開

 30人学級を展望した学級編制の弾力化,習熟度別学習の推進などゆとりある学習のなかで,子どもたちが基礎的な学力を確実に身につけ,豊かな個性を伸ばせるよう,ひとりひとりに応じたわかる授業の展開を図る。

 (イ)さまざまな体験によるみずから考える力の育成

 「総合的な学習の時間」の活用や職場体験,奉仕活動,長期の宿泊学習,作文・読書などにより,子どもたちが多様な価値観に触れることで,みずから学び,考え,主体的に行動できる生きる力を養う。

 (ウ)高度情報化や国際化などに対応できる子どもたちの育成

 高度情報化に対応しコンピュータを扱うことができ,膨大な情報のなかから必要なものを選択できる力を養う情報教育,国際社会に対応できる国際理解教育,地球規模に拡大した環境問題を身近なところから考える環境教育など,新たな時代に対応できる教育を充実する。
 また,企業家精神の育成や商習慣の学習など,将来の京都の産業人,企業人を生み出す基礎となる教育を進める。

エ ひとりひとりを大切にする人権教育の推進

 さまざまな人権問題が社会問題として現存していることを厳しく受け止め,今まで積み上げてきた同和教育をはじめとする人権問題解決への取組を踏まえ,学校教育のあらゆる分野でひとりひとりを大切にする人権教育を進める。
 また,子どもひとりひとりの良さや可能性を引き出し,伸ばすことを重視するとともに,子どもたちがお互いを認め支え合い,ともに生きることの大切さを学ぶなど,人権という普遍的文化の担い手の育成をめざした教育を進める。

 

(3) 障害のある子どもの教育の推進

ア 養護育成教育の充実

 障害のある児童・生徒ひとりひとりの発達段階等に応じた指導の充実や教育内容の改善,医療的介護をはじめとした障害の重度重複化等への対応,交流教育の推進などに努める。
 また,発達や情緒,言語,聴覚などに障害のある子どもの教育の場として育成学級や通級指導教室を充実し,地域の学校で学びたいという保護者や子どもたちの要望にこたえる。

イ 地域に根ざした養護学校への再編

 市内北部に新たな養護学校を整備し,総合制・地域制の養護学校に再編するとともに,子どもたちの社会参加を促進する新たな高等部教育により,地域でともに支え合って学ぶ養護学校教育を充実する。

 

(4) 教職員の能力・意識の向上

 個人面接やクラブ・ボランティア活動歴の重視など,総合的な判断に基づき,教育への情熱にあふれ,人間性豊かで指導力を有する人材を教職員として採用する。
 また,医療機関やスクールカウンセラーとの連携を密に小児疾病や心的疾患に対応し,子どもたちと心を通わせるとともに,情報教育,国際理解教育など今日的な課題に対応し時代の変革期における教育についての課題意識をもつ,保護者から信頼される教職員を養成する。
 このため,教職員研修,教育研究の中核施設である「永松記念教育センター」において,先進的な教育情報の収集・提供などの機能を充実するとともに,教職員研修に関する受講システムの開発など総合的な研修体系をつくる。

 

(5) ゆとりと潤いのある学習環境づくり

ア 時代に対応した学校施設の整備

 障害の有無などにかかわらず,安心して快適に利用できるユニバーサルデザインや温もりと潤いを感じる「木」の使用を進めるとともに,学校施設の防災機能を強化する。
 さらに,情報通信技術(IT)の進展に対応するための情報ネットワークの整備,学校に安らぎの空間を創造する「花と緑のグリーンベルト事業」や「学校ビオトープ(小さな生態系)事業」を進める。

イ 自然と触れ合う野外活動施設の整備

 海に接する機会が少ない子どもたちが海での生活を体験し,また,京都の山の豊かな自然を身近に体験できる野外活動施設を整備し,集団活動のなかでたくましさを養う機会をつくる。

ウ 若者に魅力ある高校づくり

 (ア)市立高校の改革と施設整備の充実

 京都の特性を生かした工業・商業・芸術等の専門教育を充実するなど,時代の進展に応じた市立高校の改革や施設整備を進める。
 また,「西京商業高校」については,全面改築とあわせて,起業家精神やコミュニケーション能力,情報活用能力,国際感覚などを育成する新たな学科を開設する。

 (イ)私立高校や専修学校・各種学校との連携

 私立高校教育の振興に向けて私立高校等への補助を行うとともに,私立高校や専修学校・各種学校と連携した進路開拓事業などを進める。

 

第2節 ひとりひとりが支え,支えられるまち

1 すべてのひとが相互に支え合い安心してくらす

基本的方向
 だれもが住み慣れた地域社会のなかで,そのひとらしい幸せな日常生活が健やかに送れるよう,保健・医療・福祉などくらしの基盤となるサービスや支援ネットワークが充実しているまちの実現をめざす。

 

(1) 住み慣れた地域のなかで支え合うしくみづくり

ア 地域社会での相互支援のしくみの再構築

 (ア)地域コミュニティの活性化

 地域住民,社会福祉協議会や保健協議会などの保健福祉関係団体,民生委員・児童委員,ボランティア,医療機関や社会福祉事業者等との連携を強めることにより,地域社会全体で支援の必要なひとの生活を支える地域コミュニティの活性化を図る。

 (イ)「地域福祉計画」の策定と推進

 家庭や地域において,年齢や障害の有無にかかわらず,そのひとらしい幸せな生活が送れるよう,「地域福祉計画」を策定して,身近なところでの保健・医療・福祉サービスの総合的な展開を図る。

イ 福祉ボランティア活動の推進

 (ア)「ボランティアセンター」の整備

 市全域を網羅して市民の福祉ボランティアに関するあらゆる活動を支援する中核的機能をもち,災害時には福祉ボランティア活動の総合的な拠点となる「ボランティアセンター」を開設するとともに,行政区域における福祉ボランティア活動の拠点である「各区ボランティアセンター」の運営についても支援を行う。
 また,高齢者や障害のあるひとを含め,ボランティア活動への参加意欲をもったさまざまな立場の市民が実際に活動しやすいよう,同センター等における多種多様な活動プログラムの開発を支援する。

 (イ)福祉ボランティア活動に関する情報システムやネットワークの構築

 「ボランティアセンター」の整備に合わせ,「各区ボランティアセンター」とのネットワーク化により,市域・区域における福祉ボランティアに関する情報の収集や提供,個人・グループの登録,需給調整等ができる情報システムを充実させる。
 また,ボランティア活動の推進団体などの関係機関やグループ等が,相互に情報交換したり共同で事業を行うための全市的なネットワークとして「京都市ボランティア活動連絡会議」の創設を支援する。

 (ウ)地域における精神保健福祉に関するボランティア活動の推進 

 地域で生活する精神に障害のあるひとを地域で支える取組を支援するとともに,その活動を通じて効果的な啓発を進めるための「こころの健康支援パートナー」を養成する。

 

(2) 高齢者とその家族の生活を支えるサービスの充実

ア 介護保険給付対象の在宅及び施設サービスの基盤整備

 (ア)介護サービスを安定して供給するための人材の育成と確保

 介護サービスの安定した供給のために不可欠である専門職種についての人材確保や,高い倫理性やプライバシー尊重の徹底など介護サービスに携わる人材の質的な向上に向けて,事業者の努力に任せるのみではなく,人材の育成や研修の充実など必要な支援を行う。

 (イ)地域的なバランスを考慮した施設整備の促進

 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム),介護老人保健施設や介護療養型医療施設(療養型病床群等)について,地域的なバランスも考慮しながらさまざまな手法により,社会福祉法人や医療法人による整備を促進する。

 (ウ)サービス事業者の参入促進のための情報提供

 介護サービスの量的確保や利用者の選択と競争によるサービスの質的な向上を図るため,多様な事業者が介護サービス市場に参入し,地域のなかで活動できるよう,市民のニーズや他の事業者によるサービスの供給状況などの情報を提供する。

 (エ)介護保険施設の運営に係る情報提供や助言・指導

 介護保険施設から利用者の処遇や施設の運営,設備等についての相談があった場合,「市民すこやかセンター」において必要な情報の提供や助言・指導を行うとともに,施設に対して先進的な処遇例などの紹介を行う。

 (オ)介護サービスの評価と苦情処理体制の構築

 市民がより良質の介護サービスを提供する事業者を選択できるよう,事業者による自己評価と利用者によるユーザー評価を組み合わせたサービスの評価事業を実施し,その結果を公表する。
 また,第三者による評価の導入をめざし,評価機関のあり方や実施方法についての検討を進め,サービスの質をより正確に計測するシステムをつくる。
 市民からの介護サービスに関する苦情・相談については,その内容を分析したうえで事業者にフィードバックできる体制を充実させるとともに,中立的な第三者による苦情・相談処理体制の導入をめざす。

イ 介護保険給付対象外の在宅サービスの充実

 (ア)ひとり暮らしの高齢者等に対する支援サービスの充実

 ひとり暮らしの高齢者等が安心して生活できるよう,社会福祉法人など民間事業者等を活用した配食サービス事業の充実,老人福祉員の増員,緊急通報システム事業の充実など,その需要の増加に応じて支援サービスを充実させる。

 (イ)京都市高齢者すこやか生活支援事業の実施

 介護保険の適用が受けられない概ね60歳以上の高齢者が,住み慣れた地域での生活が続けられるとともに,介護が必要な状態にならないよう,訪問介護(ホームヘルパーの派遣),日帰り介護(デイサービス),短期入所生活介護(ショートステイ)等の支援サービスを実施する。

 (ウ)家庭で高齢者を介護する家族に対する支援

 家族向けの介護実習等について学習内容を充実させるとともに,介護技術の向上とあわせ,将来その経験を生かして社会に貢献できるよう,ホームヘルパー養成研修の受講に対する支援を行う。
 また,短期入所施設に緊急対応用の入所枠を確保し,家族の急な入院,葬祭への出席など,緊急の利用に対応できる体制を整備する。

ウ 介護保険給付対象外の施設サービスの充実

 介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)や痴ほう性高齢者向けのグループホームについては,今後,施設の内容が市民の間に浸透していくにしたがって,需要が増大すると考えられるため,立地条件等も考慮しながら,引き続き事業者による整備を促進する。
 また,老朽化した養護老人ホームについて,入所者の処遇向上の観点から改修や建替えなどの整備を進める。

エ 痴ほう性高齢者施策の推進

 (ア)専門相談体制の整備

 「市民すこやかセンター」において,本人や家族からの生活や介護等に関する相談に応じる総合相談事業に加え,地域では対応の難しい高度な相談の受け皿として,専門スタッフによる相談体制をつくり,センター内の短期入所施設(ショートステイ)を活用しながら相談に応じるとともに,介護技術の指導・助言を行う。
 また,それらのノウハウを生かし,痴ほう介護の研究及び研修を実施する拠点としての役割を充実させる。

 (イ)権利擁護施策の推進 [P22「1ひとりひとりが個人として厚く尊重される」(4)イに再掲]

 介護保険制度の導入により,これまで措置として実施してきた介護サービスはそのほとんどが事業者と利用者の契約を基本とすることになるため,民法上の「成年後見制度」やそれを福祉面から補完する「地域福祉権利擁護事業」についての情報提供や啓発,介護に従事するひとに対する研修,虐待や権利侵害等に対応する訪問相談援助員制度の創設,法律関係や社会福祉,医療関係等の機関や団体による権利擁護ネットワークの構築などに取り組む。

 

(3) 障害のあるひととその家族を支えるサービスの充実

ア 介護等支援サービス体制整備(ケアマネジメント体制整備)

 福祉サービスの提供方式が,措置制度から利用契約制度へと移行(社会福祉基礎構造改革)することに伴い,地域でくらす障害のあるひとや家族が,必要とする保健・医療・福祉サービスを適切に利用できるよう,本人の心身の状況や希望等を勘案して,利用するサービスの種類や内容を選択した計画を作成し,それに基づくサービスが確保できる体制を整備する。

イ 地域社会での生活を支援する在宅サービスの充実

 (ア)地域社会のなかでのサービスや支援ネットワークの充実

 障害のあるひとに対して,在宅福祉サービス等の利用援助や障害当事者同士の相談(ピアカウンセリング)など,身近な地域で総合的な生活支援や情報提供等を行う「障害者生活支援事業」を実施する。
 また,障害の特性や日常生活の状況に応じた訪問介護(ホームヘルパーの派遣)の充実,利用施設の拡大による短期入所生活介護(ショートステイ)の充実とともに,それらの精神に障害のあるひとへの適用拡大を図る。

 (イ)コミュニケーション(情報伝達)手段等の確保

 障害,とくに視覚,聴覚,音声言語の機能障害のあるひとが,地域で安心して生活し社会参加できるよう,情報通信機器の活用や手話通訳などの専門職員の養成等,多様なコミュニケーション(情報伝達)手段を確保することにより,障害の状況に応じて必要な情報を必要な時期に容易に入手できる体制を整備する。

 (ウ)地域における障害児(者)療育体制の充実

 既存の社会福祉施設等を有効に利用し,在宅の障害児(者)に対して外来の方法や家庭等に出向いての療育や相談,各種福祉サービスの利用に関する援助等を実施する体制を整備するとともに,重症の心身障害児(者)が運動機能等の訓練を行い,あわせて保護者等の家庭における療育技術を習得できるよう,身近な地域での通園による療育を促進する。

 (エ)障害のあるひとを介護する家族への支援の充実

 障害のあるひとを介護する家族等が一時的に介護から離れ,心身をリフレッシュして介護力や家族機能を活性化できる「レスパイトサービス事業」を充実する。
 また,精神に障害のあるひとへの適用拡大を図る。

 (オ)権利擁護対策の推進

 これまで措置として実施してきているサービスが,今後,事業者と利用者の契約が基本となるため,民法上の「成年後見制度」やそれを福祉面から補完する「地域福祉権利擁護事業」についての情報提供や啓発,介護従事者に対する研修,虐待や権利侵害等に対応する訪問相談援助員制度の創設,法律関係や社会福祉,医療関係等の機関や団体による権利擁護ネットワークの構築などに取り組む。

ウ 施設サービスの充実

 (ア)福祉ホーム,グループホーム設置の促進

 障害のあるひとの社会復帰や自立を促進できるとともに,地域での生活の場である福祉ホームやグループホームの設置を促進する。グループホームについては公営住宅等の活用を図る。

 (イ)地域生活支援センター設置の促進

 精神に障害のあるひとに対する日常生活の支援や相談機能,地域交流活動などを行うことにより,社会復帰と自立,社会参加の促進を図る地域生活支援センターの設置を促進する。

 (ウ)老朽化した障害者福祉施設等の整備

 「京都ライトハウス」等の老朽化した障害者福祉施設について,改修や建替などの整備を進める。
 また,新たに障害のあるひとの在宅生活を支援する,通所型の総合施設としての「ふれあいセンター」の整備を進めるとともに,市南東部に障害者福祉施設を中心とした総合的な福祉の拠点となる施設を整備する。

 (エ)対象者の枠を越えた施設の相互利用の推進

 障害のあるひとが身近な地域において授産施設等の各種施設が利用できるよう,障害の種別を越えた相互利用を促進する。

エ 「次期障害者基本計画」の策定と推進

 障害のあるひとの「完全参加と平等」という理念を継承するとともに,社会福祉基礎構造改革を踏まえた「次期障害者基本計画」を策定し,障害の種別を越えた総合的な施策を進める。

 

 

2 子どもを安心して産み育てる

基本的方向
 全国的に少子化が進むなか,子どもたちにとって最も大切な役割を担う家庭を基本として,それを補完するかたちで,社会全体で子育てを支援し,子どもを安心して産み育てられるしくみづくり,子どもたちがのびのびと健やかに成長できるしくみづくりを進める。
 このことにより,親が子育てを楽しいと感じ,子どもたちがいきいきと活動できる場所や機会に恵まれ,親と子の笑顔あふれる,子育てのしやすいまちをめざす。

 

(1) 母と子のいのち・健康を守る保健医療の充実

ア 妊産婦の心身の健康の保持・増進

 健康な子どもを産み育てるためには,妊産婦の心と身体の健康が重要であることから,妊産婦の疾病や妊娠の異常を検査,指導する健康相談の実施,妊娠や子育てに関する基本的な知識を普及するとともに,仲間づくりの場でもある母親教室の開催など,出産前後に対する支援を進める。

イ 母子保健医療体制の充実

 保健医療面での子育ての不安解消を図るため,乳幼児の健康診断の充実や現代病ともいわれているアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患,子ども特有の病気への対応など,母親と子どもの総合的な保健医療体制を充実する。
 また,子育て家庭の負担を軽減するため,乳幼児の医療費助成を充実する。

ウ 子どもの事故防止

 子どもたちの不慮の事故を防ぐため,モデルハウスでの体験や事故予防の学習,応急処置の講習などが受けられる「子ども事故防止センター」を開設する。

 

(2) 安心して子育てができる保育サービス等の提供

ア 子育て家庭のニーズに応じた保育サービスの充実

 男女共同参画社会づくりが求められるなか,女性の社会進出の増加などに対応する「低年齢児保育」,就労時間帯の多様化などに対応する「時間延長保育」や「休日保育」,短時間就労や緊急時などに対応する「一時保育」を充実するなど子育て家庭のニーズに対応した多様な保育サービスを提供する。その一環として保育所に通所中の児童が病気回復期にあり,集団での保育が困難な時期に一時保育を行う「乳幼児健康支援デイサービス」の実施個所を拡大する。
 また,地域の保育需要に合わせて保育所定員を調整し,保育所入所の待機児童の解消を図る。
 さらに,保育所の開所前後や急な残業,軽い病気のときなどに,子育て家庭が相互に育児援助を行う「ファミリーサポート事業」を創設する。

イ 幼児保育・教育の充実

 民営保育所の運営の安定化を支えている職員の処遇改善制度への支援を行う。
 また,子育て家庭の負担を軽減するため,保育所における適切な保育料の設定,本市の幼稚園児の9割以上が通園している私立幼稚園における就園奨励費や教材費の補助,事業費助成などを行うとともに,私立幼稚園の振興を図るため,国と府に対し助成措置の充実を要望する。

 

(3) 障害のある子ども,養護に欠ける子どもの子育て支援

ア 障害のある子どもの保育の充実

 障害児を受け入れている保育所に対し保育士の加配を行うとともに,新たな受入れに必要な施設のバリアフリー化に対し助成するなど,障害児の保育環境の向上を図る。
 また,「学童クラブ事業」における障害のある子どもの受入れ体制の充実を図る。

イ 児童養護施設等における子育て支援の充実

 仕事などにより親の帰宅が夜間になることが多い家庭の子どもを対象に,児童養護施設などで親が帰宅するまで夕食をとりながら過ごす「トワイライトステイ事業」を進めるとともに,児童養護施設などの児童が宿泊を伴う家庭生活を体験する「週末里親等短期里親事業」を推進する。
 また,虐待を受けた児童を養護するため,児童養護施設などの受入れ体制を充実する。

  

(4) 子育ての支援を求める家庭への応援体制の構築

ア 子育て支援の総合センター機能の充実

 「子育て支援総合センターこどもみらい館」において,保育所・幼稚園,国・公・私立の垣根を越えた共同機構としての研究・研修機能を充実するとともに,医療機関等との連携による総合相談機能,市民の多様な子育てニーズに合った講座やセミナーなどを通じた情報発信・交流機能を強化する。

イ 地域から全市レベルまでの重層的な子育て支援ネットワークの充実 [P29「4 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ」(1)イに再掲]

 子育てを家庭だけの責任にとどめるのではなく,地域の各種団体などと連携しながら重層的に子どもを見守るネットワークを構築し,社会全体の力で子育てを支援する必要がある。
 このため,保育所をはじめ,児童館,幼稚園において子育てに関する情報提供や相談・講座,子育てサークルを行うなど,地域における子育て力の向上を図る「地域子育て支援ステーション」の設置を進める。
 また,児童福祉施設や関係機関における行政区レベルの子育て支援ネットワークとしての「子ども支援センター」の機能を強化するとともに,「児童福祉センター」などの拠点施設を中心とした「京都子どもネットワーク連絡会議」,たくましく思いやりのある子どもたちの育成等について,市民みんなで考え,行動し,情報発信する「人づくり21世紀委員会」活動など全市レベルの取組を進める。

 

(5) 子どもたちがのびのびと健やかに成長できるしくみづくり

ア 子どもたちのさまざまな体験の場づくり

 (ア)高齢者と子どもの交流促進

 子どもたちが老人ホームを訪れるなど,長い人生経験のなかでさまざまな知恵を蓄え,またゆとりのある時間をもつ高齢者と世代を超えて交流できるしくみをつくる。

 (イ)子どもの遊び場や居場所の確保[P60「1まちを美しくする」(3)ア(イ)に再掲]

 自然のなかでの体験やふれあいを通じて,子どもたちの感性を豊かにする身近な遊び場として,宝が池公園「新・子どもの楽園」や地域の公園緑地を整備する。
 また,地域における学校施設の活用や神社仏閣などの開放の促進と,地域のボランティアの協力により子どもたちの多彩な体験的活動の場の提供を図る。

 (ウ) 児童館・学童クラブ事業の充実

 学校の余裕教室や敷地なども活用しつつ,「1中学校区1児童館」を基本に,地域の需要に応じた児童館の計画的な整備を進めるとともに「学童クラブ事業」の実施箇所を拡大する。
 また,子育て家庭の就労時間の多様化に対応するため,同事業の実施時間を延長する。

イ 子どもの権利擁護,虐待防止[P22「1ひとりひとりが個人として厚く尊重される」(3)アに再掲]

 児童虐待の早期発見,早期対応,未然防止を図るため,児童相談所の機能や体制の充実を図るとともに,市民への広報・啓発活動の推進,関係機関の協力体制を強化する。
 また,「児童の権利に関する条約」,「児童福祉法」の理念に基づき,子どもを大人が保護・指導する対象としてではなく,子ども自身の意思を尊重した権利擁護システムを構築する。

 

 

3 心身ともに健やかにくらす

基本的方向
 すべての市民が,その生涯を通して心身ともに健やかにいきいきとくらせるよう,市民ひとりひとりの心身の健康づくりへの意識を高めるとともに,総合的な保健予防対策や衛生的な生活環境づくりによって健康に生活できる環境が整備され,適切な保健・医療サービスが受けられるまちの実現をめざす。
 また,生涯を通して,だれでも,いつでも,どこでもスポーツに親しむことができる豊かなくらしの実現に向け,市民やスポーツ振興団体等とのパートナーシップのもと,スポーツに親しむ機会と場の提供に努める。

 

(1)市民ひとりひとりの健康の増進

ア 市民みずからが主体となって行う健康づくり

 (ア)健康の自己管理意識の促進

 健康診査や健康教育などの保健事業を通じて,自分の健康は自分で守るという市民ひとりひとりの健康に対する意識の高揚を図る。特に喫煙については,その健康に及ぼす影響に関する情報の提供や公共の場所における分煙対策,禁煙支援等を進める。

 (イ)多様な健康づくり活動の促進

 市民がその年齢や体力に応じて,安全かつ効果的な健康づくりを自主的に行えるよう,「健康増進センター」や保健所等における健康づくり事業を進めるとともに,地域のなかで自主的に健康づくりの実践活動を進めるグループに対する支援を行う。

 (ウ)地域ボランティア活動の促進

 市民参加による地域に根ざした保健事業を展開するため,保健協議会等の活動を通じて地域ボランティアの育成を促進する。

イ 保健所を中心とした健康づくり

 (ア)病気の原因をもとから絶つ一次予防の推進

 各世代に応じた健康づくりに関する正しい知識を普及するため,健康に関する情報の収集や発信を充実させる。
 また,生活習慣の改善が重要であることから,栄養,運動,休養,喫煙,アルコール等に関する正しい生活習慣の普及啓発を進める。

 (イ)健康についての評価(ヘルスアセスメント)に基づく保健サービスの実施

 老人保健事業の機会を活用して個人の生活習慣や社会・生活環境などを把握し,それらの評価をもとに個々人に応じた健康教育や訪問指導等の保健サービスを計画的に実施する。
 また,健康診査等の結果資料を最大限に活用し,効率的,総合的な保健事業を実施するための情報システムの導入を図る。

 (ウ)介護を要する状態になることの予防の推進

 寝たきりや痴ほうの原因となる疾患を予防し,高齢期になってからの生活の質を高めるため,機能訓練や訪問指導などの老人保健事業,歯科疾患予防対策等を進める。
 また,退院した脳卒中患者等が寝たきりになることを防止し,充実した生活が送れるよう,地域におけるリハビリテーションを支援する体制を整備する。

 

(2) 市民の健康をしっかりと守る取組の推進

ア 健康危機管理体制の整備

 医薬品,毒物・劇物,食中毒,感染症その他何らかの原因による市民の生命や健康を脅かす事態に対し,情報の入手から医療体制の確保等までを円滑に進め,被害の発生予防や拡大防止のために迅速な対応がとれるよう,関係機関との連携のもとに危機管理体制の整備を進める。

イ 難病対策の推進

 難病患者等が地域において安心して生活できるよう,医療相談や介護サービス等を実施するとともに,訪問相談の体制整備を行うなど,保健所が中心となって,在宅の難病患者等に対するきめ細かな療養支援を行う。

ウ 結核をはじめとした感染症対策の推進

 (ア)結核をはじめとした感染症についての正しい知識と理解の普及・啓発の推進

 再興感染症である結核をはじめとした感染症やその予防について,正しい知識や患者・感染者の人権擁護に関する正しい理解を高めるための啓発を行う。特に再興感染症である結核については,結核検診が確実に実施され,早期に発病予防及び発見ができるよう,健康診断の実施義務者や検診対象者への働きかけを進める。

 (イ)発生に関する情報の提供

 市民や医療機関等に対して注意を喚起するとともに,適切な予防対策が講じられるよう,発生動向調査等の情報を速やかに提供する。

 (ウ)感染症医療についての基盤整備

 市民が安心して感染症医療を受けることができるよう,習熟した医師等の育成や確保,指定医療機関の施設整備や搬送体制の充実など,地域医療の基盤整備を進める。

エ 歯科保健対策の推進

 高齢化が進展するなか,生活の質を高める快適な食生活を支える歯の健康はますます重要になるが,壮年期から増加する歯科疾患は個人の生活習慣に大きく影響されるため,8020運動(80歳で20本の歯を残す運動)を推進し,幼児期,学齢期からの歯科保健指導や学童う歯対策事業をはじめ,成人,妊婦歯科健診相談指導,歯周病予防の健康教育など,「歯の健康づくり」を進める。

 

(3) 保健医療サービスを支える体制の整備

ア 保健所の機能強化

 人口の高齢化や出生率の低下,疾病構造の変化など,地域保健を取り巻く状況の変化を踏まえ,企画調整機能を有する中核機関としての役割を果たせるよう,健康づくりを市民とともに進める拠点,あるいは地域における健康危機管理の拠点,精神保健福祉を推進する拠点等として保健所の機能強化を図る。

イ 「京都市立病院」の整備

 災害時の医療活動及び応急救援活動等の地域医療を支える拠点として施設整備を行う。

ウ 「京都市衛生公害研究所」の再編・整備

 地域の特性に応じた地域保健対策を効果的に進め,健康危機管理能力を向上させるため「京都府保健環境研究所」との共同化を図り,京都における地域保健,生活衛生,環境保全に関する中核研究所として,より効率的に密度の高い調査研究,試験検査等を行えるよう再編・整備する。

エ 看護婦(士)確保対策

 高齢化の進展や介護保険制度の導入,疾病構造の変化など,市民の健康を取り巻く状況の変化に的確に対応し,求められる人材を育成,確保するため,「京都市立看護短期大学」について,そのあり方を検討するとともに,看護婦(士)養成施設への助成等を通じて看護婦(士)の確保に向けた対策を進める。

  

(4) 精神保健・医療・福祉サービスを支える体制の整備

ア 「こころの健康増進センター」の機能強化

 市民のこころの健康の保持増進から,専門スタッフの育成,保健所の地域精神保健福祉活動に対する支援,精神障害の予防や治療,精神障害者の社会復帰の促進まで,本市の精神保健福祉の中核機関としての役割を果たせるよう,その組織体制を含め機能の強化を図る。

 イ 安心して地域生活が送れる精神科救急医療システムの整備

 精神科医療が入院中心の治療体制から通院や地域ケアを中心とする体制へと変化するなか,精神に障害のあるひとが地域で安心して生活できるよう,精神疾患の急激な発症や症状の悪化に対応し,早期に治療できる精神科救急医療システムの整備を進める。

 

(5) 生活衛生の推進

ア 食品衛生対策の推進

 食品を取り扱う営業者に対し,原材料の調達から最終製品の出荷までの全工程を対象とした新たな管理手法であるHACCP方式の導入について助言,指導を行い,食品の製造,加工等の各段階における衛生管理の高度化を図る。
 また,食中毒を予防するための情報提供,講習会,家庭用手引書の作成などの啓発活動や原因究明の迅速化を図る検査機器の整備を進める。

イ 総合的な居住衛生対策の推進

 住まいの空気に起因するアレルギーや化学物質過敏症等の健康被害に関する市民への情報提供,居住衛生の調査や指導など,従来の害虫や飲用水対策と合わせた居住衛生対策を進める。

ウ 動物愛護対策等の推進

 家庭動物の飼育,健康相談や危害の防止,生活環境の保全など家庭動物の諸問題に対応するとともに,児童・幼児に対する情操教育の場としての「動物愛護センター」を設置するなど,動物愛護事業を進める。
 また,ペットを介して感染症に罹患する危険性が増大していることから,人畜共通感染症の流行状況を把握するとともに,市民に対する啓発や指導を行う。

 

(6) 保健医療施策の計画的な推進

ア 「新京都市保健医療計画」の策定と推進

 少子高齢化の進展,疾病構造の変化,健康への関心の高まり,介護保険制度の導入や社会保障の基礎構造改革など,市民の保健,医療,福祉を取り巻く状況が大きく変化するなかで,今後の保健医療施策を総合的,計画的に実施していくため,新たな「京都市保健医療計画」を策定する。

イ 「市民健康づくりプラン」の策定と推進

 国が進めている21世紀における国民の健康づくり運動「健康日本21」の趣旨を踏まえ,壮年期死亡の減少や,寝たきりや痴ほうにならずに生活できる期間(健康寿命)の延伸を目的とし,生活習慣上の危険因子など指標となる具体的な目標を定めて,その目標を達成するための諸施策を体系化した「市民健康づくりプラン」を策定する。
 また,それに基づき,医療機関,企業,団体,マスメディア,非営利団体,職域保険者,学校などとの連携体制の構築による市民健康づくり運動を進める。

  

(7) スポーツ活動の機会や施設に恵まれたまちづくり

ア スポーツ振興事業の充実 

 (ア)地域における市民の自主的なスポーツ・レクリエーション活動への支援の充実

 地域を中心としたスポーツサークル活動の振興など,地域における市民の自主的なスポーツ・レクリエーション活動や青少年のスポーツ活動の場の確保をはじめとした支援を充実する。

 (イ)みんなで楽しめるニュースポーツの普及 [P27「2すべてのひとがいきいきと活動する」(2)オに再掲]

 これまでスポーツに参加しなかった人でも気軽に体を動かすことができるよう,市民に親しみやすいニュースポーツの普及・振興を図ることにより,高齢者や障害のあるひと,女性や子どもたちもみんなでスポーツに親しめる環境づくりを進める。

 (ウ)国際的な競技大会の開催

 「京都シティハーフマラソン」を開催することにより,スポーツの振興のみならず永い歴史と文化の都を舞台に展開する新しい「スポーツ文化」の世界への発信をめざすとともに,多くの市民との交流を深め,国際親善意識などを高める。

イ スポーツ及びレクリエーション施設の整備

 (ア)全天候型運動施設の整備

 天候などに左右されることなく市民がスポーツやレクリエーションなど,多目的に利用できる全天候型運動施設の整備を進める。

 (イ)地域体育館の全市的な配置及び公共空間等の活用

 地域におけるスポーツ活動拠点となる,地域体育館の全市的な配置を進めるとともに,河川敷など公共空間の多目的利用や,民間施設や遊休地のスポーツ施設としての活用策を検討する。

 (ウ)自然とふれあえるスポーツ・レクリエーション活動の場の整備,充実

 京都の豊かな自然環境を育(はぐく)んでいる周辺の山々や河川などの水辺環境を生かした,自然とふれあえるスポーツ・レクリエーション活動の場を整備,充実する。

ウ スポーツ振興体制の充実

 体育振興会,体育協会などスポーツ振興組織の活動への支援を行うとともに,体育指導委員や有資格指導者などの活用により,市民がスポーツ活動に取り組みやすい体制づくりを進める。
 また,スポーツ教室やスポーツサークル,各種大会などのスポーツに関するさまざまな情報を提供できる体制の整備を図る。

エ 市民スポーツ振興計画の推進

 多種多様化する市民のスポーツに対するニーズにこたえ,地域と共生したスポーツ文化を築くため,市民と行政の協働により策定した「市民スポーツ振興計画」を推進する。

 

第3節 だれもが安心してくらせるまち

1 環境への負担の少ない持続可能なまちをつくる

基本的方向
 「地球温暖化防止京都会議(COP3)」の開催都市として,市民,事業者,行政のパートナーシップのもと,二酸化炭素(CO2)排出量の削減や資源・エネルギーの有効利用など総合的な地球温暖化防止対策に積極的に取り組むとともに,ごみの発生抑制とリサイクル,廃棄物の適正処理を推進する。
 さらに,環境負荷低減に向けた市民の自主的な活動を支援し,ひとりひとりがくらしに節度をもち,環境への負担の少ない持続可能なまち「環境共生型都市・京都」を実現する。

 

(1) 市民と一体となった「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」を核とした環境問題への取組

ア 環境にやさしいくらし(エコライフ)へ誘導する省資源・省エネルギーのシステムづくり

 ものの長期使用,ごみの減量化,リサイクルしやすい商品の購入,無駄の少ないエネルギーの利用など市民ひとりひとりの環境にやさしいくらしへの誘導と住まいの断熱化,太陽エネルギー等自然エネルギーの利用などを進める。

イ 環境配慮型商品の市場拡大と環境を大切にする消費者づくり

 環境のことを考えて商品づくりを行う企業及び環境を大切にした商品を購入する消費者の育成とあわせて,製造業者,流通業者,消費者などが連携・協働して,少しでも環境への負担を減らした商品を積極的に購入するグリーン購入ネットワークづくりを進める。

ウ 新しい産業システムの構築を支援するエコロジー型新産業システムづくり

 環境にやさしい取組を進める企業を認証する「京都版環境管理認証制度(KES)」を創設し,より多くの企業が環境保全活動に取り組むように誘導するとともに,資源の循環を重視した事業の育成及び各事業者間の連携を図り,新しい産業構造を誘導する。

エ 環境にやさしい新しい観光(エコツーリズム)都市づくり[P53「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)イ,P72「2魅力ある観光を創造する」(1)エに再掲]

 多様化する観光客のニーズに対応して,環境学習の施設や自然とのふれあいを体験できる地域などをつなぐ観光コースの開発,徒歩や自転車による市内観光,宿泊施設における環境のことも考えたサービス提供などの取組により,環境と調和したかたちでの京都の観光産業を発展させるエコツーリズム観光都市づくりを進める。

オ 公共交通・自転車利用など環境にやさしい交通計画の促進

 公共交通機関の利用,大気汚染防止や低燃費など環境への負担の少ない自動車の普及,自転車の利用,自動車交通量の抑制など,環境,子ども,高齢者,障害のあるひとや旅行者にやさしい交通計画を促進する。

カ 京都の文化遺産,有形無形の文化財など,地域の文化,環境を活用するエコミュージアム(地域まるごと博物館)づくり[P53「4歩いて楽しいまちをつくる」(1)イに再掲]

 京都の環境にやさしい伝統的なライフスタイルと結びついている,文化遺産,有形無形の文化財,伝統行事,工芸品,町衆の生活などを地域まるごと博物館として,地域の住民がかかわって,生涯学習や観光資源に活用するとともに,それらを次世代に継承する。

 

(2) 環境と共生するくらしの実現

ア 環境教育・学習の推進

 (ア)環境に関する教育・学習の場の提供

 すべてのひとが,環境への理解を深め,環境を大切にする心を育成し,美化・清掃活動やリサイクル活動など,ひとりひとりが身の回りのできることから主体的に実践できる資質や能力の育成をめざし,家庭・地域と学校が連携した総合的な環境教育を展開する。
 また,自然体験などを通じて自然や生態系のしくみを理解し,自然を大切にする心を育(はぐく)んでいけるよう,公園,散策道,水辺環境など自然とふれあえる場や機会を確保するとともに,情報網「洛中洛外」による環境に関する講座の紹介や市民生活センターでの資料の提供など,環境に関する学習機会や情報提供を進める。

 (イ)環境にやさしい実践活動の輪を広げる拠点施設「環境学習・エコロジーセンター」の整備と活用

 地球温暖化防止の取組を発信していくための拠点,さらにごみ問題から地球環境問題まで幅広い視点に立った「環境意識」の定着を図るために,市民や事業者が「学び・育つ」「調べ・考える」「参加し・行動する」という“3つの場”の拠点となる「環境学習・エコロジーセンター」の整備と活用を進める。

イ 資源及びエネルギーの有効利用

 (ア)省エネ型ライフスタイルの実践の支援

 家庭での環境家計簿の利用,市民,事業者,環境NGOなどの連携による温暖化防止活動優秀団体などの表彰,実践活動報告などを通して,省エネ型ライフスタイルの実践を支援する。

 (イ)市役所(本庁舎)などでの環境マネジメントの国際規格ISO14001 認証取得

 環境に配慮し,環境への負担の少ない持続可能なまちの実現をめざし,本庁舎をはじめとした環境マネジメントの国際規格の認証取得の拡大を進める。

 (ウ)「京都市地域新エネルギービジョン」に基づく,新エネルギーの利用促進

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を抑制するため,市民,事業者,行政の連携のもと,太陽光発電システムや廃食用油のバイオディーゼル燃料化などの再生可能(自然)エネルギー,廃棄物の余熱利用や工場廃熱等のリサイクルエネルギーなど新エネルギーの導入を促進する。

 (エ)環境保全に向けた市の先導的な取組の推進

 市内有数の大事業者,消費者である京都市役所が率先して,環境負荷が小さい製品やサービスの購入,市バスや公用車への低公害車の導入など,環境への負担の少ないオフィスづくりを進める。
 また,公共建築物の長寿命化や屋上緑化,雨水・自然エネルギーの有効利用,道路など公共空間における省資源・省エネルギーの取組など,環境への負担の少ない公共施設の整備を進める。

ウ 生活環境の保全

 (ア)ダイオキシン類対策の推進

 大気,河川水質・底質,土壌,地下水のモニタリング調査に加え,母乳,農作物,上水道におけるダイオキシン類濃度調査を実施し,市民の健康への影響を含めた幅広いモニタリング調査を行うことにより,ダイオキシン類による環境汚染の防止と市民の健康の保護を目的とした総合的かつ計画的な対策を進める。
 また,クリーンセンターをはじめとする本市の焼却施設について,ダイオキシン類の排出削減対策を進めるとともに,民間の廃棄物処理施設や小型焼却炉についても排出抑制に向けた指導を行う。

 (イ)大気汚染対策

 工場や施設への規制や監視,公害防止協定の締結,大気汚染状況の常時監視を行うとともに,有害大気汚染物質のモニタリング調査を継続実施する。

 (ウ)水質汚濁対策

 公共用水域及び地下水の監視を継続して行うとともに,公共用水域に排出水を排出している工場・事業場の検査を継続して行う。

 (エ)騒音,振動,悪臭対策

 工場や施設及び建設作業への規制や監視を実施するとともに,悪臭物質を排出している工場・事業場のうち,周辺の生活環境に影響を与えていると判断(悪臭苦情の継続)される工場・事業場に対し,悪臭の測定や調査を実施する。

 (オ)自動車公害対策の総合的な取組の推進

 地球温暖化対策に重点を置き,排出ガス最新規制適合車の民間セクターへの普及拡大や流通部門の共同集配化,公共交通機関の優先運行システムの導入,低騒音舗装の敷設や道路緑化などの沿道環境改善事業の推進,低公害車への融資制度の充実など,関係機関と連携した総合的な取組を進める。

エ 「総合地球環境学研究所」(国立)の創設促進[P76「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(5)ア,P79「1個性と魅力あるまちづくり」(1)ア(ウ)に再掲]

 地球規模の環境問題の解決に向け,人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野を総合化し,新しい視点に立って研究を行う「総合地球環境学研究所」の建設を国に働きかける。

 

(3) 廃棄物を出さない循環型社会の構築

ア 「循環型社会形成推進基本法」の理念を踏まえた取組の推進

 循環型社会の形成に向けた取組の基本的枠組みである「循環型社会形成推進基本法」とその関連法令に則り,実効ある取組を進める。

イ ごみの発生抑制を基本とするごみの減量とリサイクルの推進

 (ア)市民と一体となったごみの減量とリサイクルの促進に向けた行動計画の推進

 循環型社会及びポスト消費社会が実現された,ごみの発生しない循環型の産業社会の形成をめざすゼロエミッションを基本とする「環境共生型都市・京都」の実現をめざし,ごみの減量とリサイクルの促進に向け,「ごみ減量推進会議」と一体となった,市民・事業者・行政の協働による取組を進める。

 (イ)廃食用油を利用したディーゼルエンジン燃料化事業の推進

 地域住民の協力のもと,廃食用油の回収事業を全市域に拡大するとともに,回収した廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製するための施設を建設し,燃料の安定供給と市内における資源循環の確立を進める。

 (ウ)ごみ減量・リサイクル推進店の拡充と不用品,古紙リサイクルの推進

 事業者及び市民のごみ減量意識の高揚を目的とし,ごみの減量やリサイクルの推進に積極的に取り組んでいる店を「めぐるくんの店」(ごみの減量・リサイクル推進店)として認定し,その拡充を進める。
 また,不用品の再利用による,ごみの発生抑制及びごみの減量化を図るために,「不用品リサイクル情報案内システム」により市民から寄せられた不用品の情報提供を進めるとともに,紙資源を有効利用するために,「ごみ減量推進会議」と連携した,古紙集団回収などを支援し,古紙リサイクルの推進と再生紙の利用を進める。

 (エ)事業系廃棄物の減量・リサイクルを促進する大規模事業所減量指導の充実

 事業系廃棄物の減量・リサイクルを図るため,大規模事業所を対象に減量指導を行っていくとともに,対象事業所のさらなる拡大を検討する。

ウ 建設副産物や下水汚泥,下水道施設の有効利用

 (ア)建設副産物の再利用

 コンクリート,アスファルト,木材などの建設副産物の発生抑制,再利用の促進及び適正処理を図る。また,再利用率の低い土砂については,「建設発生土情報交換システム」を構築することにより工事間流用に取り組み,再利用を促進する。    

 (イ)下水道整備などによる水質保全・改良

 市域における汚水処理普及率100%をめざして下水道整備を進めるとともに,合流式下水道施設の改善を図る。また,市内河川や下流水域の水質保全のため,下水道施設における高度処理を進める。

 (ウ)下水道施設から発生する汚泥などの有効利用や施設の多目的利用

 下水道施設から発生する汚泥などを建設資材として有効利用することにより処分量の減量化を図るとともに,貴重な水資源として下水道処理水や貯留雨水の有効利用を進める。
 また,下水処理場やポンプ場の公園としての利用,下水道管内の情報通信網としての利用など,多目的利用の検討を進める。

エ 資源ごみ収集の取組の推進

 (ア)缶・びん・ペットボトルに加えてプラスチック製容器などの分別収集の拡充

 ごみ減量やリサイクルを促進するため,空き缶・空きびん・ペットボトルに加え,プラスチック製容器など「容器包装リサイクル法」を踏まえた分別収集への取組を進める。また,資源ごみ排出のための推奨袋を利用して,適正な排出ルールの徹底を市民に呼びかける。
 さらに,紙パック,使用済筒型乾電池の回収を促進するため,回収拠点の増設を進める。

オ 産業廃棄物の発生抑制や指導・取締りの強化,適正処理対策の推進

 (ア)適正処理の推進

 野外焼却や不法投棄など不適正処理を防止し,また,廃棄物の処理に伴う生活環境保全上の支障を生じさせないために,不適正処理などに対する監視・指導体制の強化や産業廃棄物管理票等,処理に関する情報の管理システムの充実,事業者,処理業者における自主的な廃棄物適正管理体制の確立に向けての誘導施策や支援体制の整備など,安全で環境への負担の少ない廃棄物処理システムの構築を進める。

 (イ)処理・処分施設の設置促進

 事業者の設置する施設についてダイオキシンによる環境汚染などが社会問題化しているなか,より安全で信頼性の高い処理施設が求められており,周辺住民の生活環境の保全に十分配慮した施設の配置を指導する。

 (ウ)社会意識の高揚

 排出事業者や処理業者の環境管理の取組を進め,表彰制度を導入するなど優良業者,業界団体の育成に努める一方,市民参加型の普及啓発として市民と一緒に取り組むシンポジウムやフォーラムの実施など,産業廃棄物の適正処理体制の確立や循環型社会への一体となった取組を進める。

カ 廃棄物処理施設の整備

 (ア)既存クリーンセンターの再整備や中間処理施設の整備

 将来の可燃ごみ量に対応するとともに,適正かつ確実なごみ処理を継続するため,順次耐用年限を迎える既存クリーンセンターについては,ダイオキシン類の低減化など最新設備を備えた建替えや改修整備を進める。
 また,缶・びん・ペットボトルのリサイクルの促進に対応した中間処理施設の整備を進めるとともに,プラスチック製容器包装廃棄物に係る中間処理施設の整備に取り組む。

 (イ)ごみをエネルギー源として利用する余熱利用施設の整備

 耐用年限を迎えるクリーンセンターの再整備に合わせ,ごみの余熱エネルギーを利用した,広く市民が利用できる施設の整備を検討する。

 (ウ)焼却灰を安定化,再資源化する焼却灰溶融施設の整備

 クリーンセンターにおけるごみの焼却灰から,長期的安定性に優れ,埋立ての際の覆土材等として利用可能な固化物(溶融スラグ)を生成する再資源化施設の整備に取り組む。

 

 

2 災害に強く,日々のくらしの場が安全である

基本的方向
 木造建築物や袋路の多い京都のまちの特色に配慮する一方,貴重な文化財を守るという歴史都市の課題を踏まえ,都市の空間や建築物の防災機能を強化するなど,地震などの大規模な自然災害に強いまちづくりを進めるとともに,市民とのパートナーシップのもと,ひとりひとりが災害から身を守る知恵や工夫を日々のくらしのなかに生かした災害に強いひとづくり・組織づくりを進める。

 

(1) 京都のまちの特色を生かした災害に強いまちづくり

ア 総合的かつきめ細やかな都市空間・建築物の防災対策の推進

 (ア)災害に強い都市空間の形成

 地震など大規模災害に強い都市づくりを進めるため,地震対策などの調査研究を推進し,その成果を地震被害想定の見直しなど防災対策に生かしていく。災害時に不特定多数のひとが利用する建築物や地下街,避難場所や避難路となる公園や道路などの公共空間について,あるべき防災機能の基準を定め防災機能の強化や耐震対策を進めるとともに,上下水道施設の高度情報化である管理システム(マッピングシステム)の構築などライフラインの防災性の向上やこれらの収容空間となる共同溝などの整備を進める。

 (イ)災害に強い建築物,すまいづくり

 防災活動や避難の拠点となる市・区庁舎,消防署,学校施設など公共建築物の耐震改修を促進するとともに,「木造住宅耐震診断士派遣事業」の実施など民間建築物における耐震診断,耐震改修を促進する。また,不特定多数のひとが利用する施設の消防用設備の設置指導,住宅用防災機器の普及,家庭や地域ごとの防火防災指導の強化による安全対策を進めるとともに,京都らしい木造の町並みを将来にわたって継承するため,合意形成の図られた一定の区域における準防火地域の制限に代わる新たな防災性能確保のための規制誘導策の創設,袋路の協調建替えの促進など,京都の良さを生かしつつ災害に強いすまいづくりを進める。

イ 上下水道施設の整備と防災対策の推進

 (ア)上水道の整備

 安全な水を安定して供給するため,浄水処理方法の高度化の研究を進めるとともに,水道施設の整備を進める。さらに,地震などの災害に備え,浄水場施設や配水管などの耐震化や断水時における応急給水体制として,配水池の増強や耐震性貯水槽の整備などにより飲料水を確保する。

 (イ)下水道の整備

 既存施設の改築や既設幹線の連結,下水処理場・ポンプ場における基幹施設・設備の複数系列化などにより,耐震性やシステム全体の安全性・柔軟性を高める。また,浸水に対する安全性を向上させるため,河川事業と連携して,雨水幹線やポンプ場の整備を進める。一方,情報通信網の整備に関しては,光ファイバーの下水管内敷設の検討を進める。

ウ 総合的な治山・治水対策の推進

 水害を防止するための河川整備については,河川のもつ多様な自然環境や潤いのある水辺空間の場としての機能を生かした治水対策を進めるとともに,下水道事業などとの連携による河川への集中的な雨水の流出を抑制する総合的な治水対策を進める。また,山,崖崩れなどの地盤災害を防止するため,風致景観やレクリエーション機能,空気浄化機能など森林のもつ多面的機能を生かして森林を保全・育成する。さらに,台風や大雨による水害発生時に迅速に対応するため,地理情報システム(GIS)などを活用した被害予想シミュレーション機能を有する総合的な水害対策支援システムを整備する。

 

(2) 災害から身を守る知恵や力を身につける災害に強いひとづくり

ア 京都の歴史的な町並みを災害から守るため,市民みずからが考え行動する防災啓発・教育の推進

 災害発生時に効果的な災害応急・復旧対策を実施するためには,市民ひとりひとりが防災に対する知識や技術をもち,それに裏付けられた行動力の発揮が一層求められている。
 そのために,地震調査結果や危険箇所情報などの各種防災情報や災害情報を市民や京都を訪れるひとびとに対して多様な手法で提供するとともに,災害時に地域の自主防災活動の中心的存在となる自主防災組織リーダーの養成や,職場や地域などあらゆる機会を通じた防災教育や防災訓練などを実施し,防災意識の向上と災害時における対応力の向上を促進する。
 とくに,戦前の木造住宅の比率が高く,袋路など狭い通路が多いなど,災害に対して脆弱な都市構造を有する京都において,震災時には,同時多発的火災の発生のおそれがあるとともに,交通機能の麻痺や断水などによる消防活動の阻害により,被害が甚大になることが予想される。震災時の火災被害を軽減するため,平素から市民や事業所などへの出火防止対策や初期消火体制を充実する。

イ 高齢者や障害のあるひと,子どもや若者に対する防火防災安全対策の推進

 介護支援専門員やホームヘルパーをはじめとする保健福祉関係者に対して,防火防災に関する研修を実施し,高齢者や障害のあるひとに対して防火防災指導を行う防火アドバイザーを養成するとともに,各種福祉団体と連携を図りつつ,きめ細やかな地域ぐるみの防火防災安全対策を進める。
 また,教育機関などと連携を図り,学校教育における防火防災のカリキュラムを充実するとともに,地域コミュニティにおける幼少年教育や大学生の自主的活動などを対象に防火防災指導を進める。

ウ 市民ひとりひとりの応急手当能力の向上

 事業所従業員,自主防災組織員,学校教職員,保育関係者などを対象に応急手当普及啓発の核となる応急手当普及員を養成するとともに,あらゆる市民を対象に普通救命講習を実施するなど,ひとりひとりの応急手当能力の向上を促進する。

 

(3) 市民のくらしと豊かな文化・歴史の蓄積を守る災害に強い組織づくり

ア 自主防災組織等の活動を通した,市民・地域の防災力の向上

 地域のコミュニティー意識の高揚と,それに基づく地域住民などによる防災体制の確立をめざし,自主防災組織ごとに,市民みずからが,地域の実情に応じた「市民防災行動計画」を策定し災害に備えるとともに,自主防災組織と事業所との連携のもと,災害発生時の支援に関する協議や合同訓練の実施など,地域ぐるみの防災体制を確立する。
 また,火災原因のトップである放火火災を防止するため,市民と関係機関の連携のもと,放火されない環境づくりを進める。

イ 市民防災会議の創設

 市民各層の代表者の参画により,家庭や地域における防災の取組について討議,交流し,家庭,地域の防災力の充実とネットワークの強化を図るとともに,討議結果や提案を行政へ提言する市民防災会議を創設し,市民と行政との協働による災害に強い京都の実現をめざす。

ウ 文化財の防火・防災対策の推進

 京都には世界文化遺産をはじめ,国宝,重要文化財,伝統的建造物群保存地区など,世界に誇る文化財が多数存在している。これらの文化財を火災から守り,後世に伝承していくため,消火設備,警報設備など,文化財防災施設の設置指導や防火指導などを引き続き実施するとともに,平常時の火災予防や災害発生時の消火,通報,文化財の搬出などがより迅速に実施できるよう,地域住民と文化財関係者との連携のもと,文化財市民レスキュー体制を確立する。

エ 消防活動体制の整備

 近年の社会情勢の変化により,市民の日常生活を脅かす火災や事故が複雑多様化・大規模化してきている。火災をはじめとする災害による被害を最小限にとどめるため,消防署などの整備,高度情報化に対応した消防防災通信ネットワークの構築,最新技術を導入した消防装備や車輌などの整備,あらゆる災害に対応した迅速確実な消防活動を支援する総合施設の整備を進める。
 さらに,安全で災害に強い地域コミュニティの形成に中心的な役割を果たす消防団と地域との連携の強化に向け,青年層,女性層の消防団活動への積極的な参加を促進するとともに,地域防災の中核となる消防団器具庫などの整備を進める。

オ 山の緑を火災から守る体制の整備

 貴重な森林資源やすそ野に広がる文化財を火災から守るため,防火水槽などの整備や消火用水としての雨水や河川などの有効活用を図るとともに,空中消火や効果的な部隊運用の実施など山林火災消火体制の整備を進める。また,山林所有者,近隣住民,ハイカーなどへの出火防止啓発を充実する。

カ 救急体制の充実

 救急出動件数は増加傾向にあり,高齢化社会の進展に伴い今後も増加傾向は続くものと予想される。
 多様な救急需要に対応した効果的な救急活動を展開するため,救急救命士の計画的養成と教育の充実,高規格救急自動車の計画的配備を進めるとともに,ヘリコプターによる機動的な救急活動を充実する。
 また,第二日赤救命救急センターの再整備支援や関係医療機関との連携の強化,適切な応急手当が実施できる市民の養成など,救命効果の向上に向けた取組を進める。

キ 地震など大規模災害への備え

 21世紀前半は近畿内陸の活断層が活動期にあることから大地震に対する備えが求められており,また地球環境の変動などにより従来にない厳しい気象状況の出現も憂慮されている。そのため,大規模な災害に備え,災害の予防,発災時の応急対策,復旧対策,復興計画を総合的に定める本市をはじめ国,自衛隊や京都府,警察,京都府医師会,日本赤十字社,ライフライン・鉄道事業者などの防災関係機関の参画を得た「京都市地域防災計画」に基づき,本市の防災対策を強化する。

 (ア)耐震性貯水槽等の整備

 地震発生時における消火用水の確保及び飲料水の確保を目的に,耐震性貯水槽及び飲料水兼用型耐震性貯水槽の計画的な整備を行う。

 (イ)「防災水利構想」の策定

 大規模災害時に必要となる消火用水,飲料水,生活用水などを確保するため,河川,池,井戸,地下水などあらゆる水源について,親水空間の創出など,地域特性や環境整備にも配慮しながら「防災水利構想」を策定し,大規模災害時における総合的かつ効率的な取組を行う。

 (ウ)ボランティア活動への支援体制の充実

 災害時に大きな役割を果たすボランティア活動について,災害時のシステム構築を進めるとともに,リーダーやコーディネーターを育成するなど,ボランティア活動が円滑に行われるための支援体制を充実する。

 (エ)地域における防災備蓄施設の充実

 震災直後は流通機構の混乱や道路障害などにより食料や生活必需品などの物資調達が困難になることから,緊急調達体制が確保されるまでの間の物資備蓄について,区庁舎などの整備にあわせて区や広域の拠点ごとに備蓄施設の拡充を図るとともに,被災者への供給の迅速化を図るため,避難収容施設や学校の余裕教室を活用した地域レベルでの備蓄機能を充実する。

 

 

3 日常生活における身近な安全や安心を確保する

基本的方向
 日常生活における身近な安全や安心を確保するため,市民,事業者,警察,関係機関と連携し,市民の自主的な防犯・事故防止活動の支援,犯罪,事故などを未然に防ぐまちづくりを進めるとともに,社会環境の変化に対応できる自立した消費者の育成に向け,消費者教育や啓発活動,情報提供を進める。

 

(1) 犯罪や事故のない安全なまちづくり

ア 地域が主体となった生活安全対策の推進

 犯罪や事故のないだれもが安心してくらせるまちを実現するため,地域住民及び各種住民団体,事業者,京都市,警察その他関係機関がお互いに連携をとり合い,一体となって地域の安全活動に取り組んでいけるよう,行政区を単位とした「生活安全推進協議会」を設置し,地域が主体となった積極的な活動を展開する。

イ 生活安全に関する知識の普及・啓発活動の推進と人材の育成

 市民しんぶん,テレビやラジオなどを活用して,市民や観光旅行者などへの生活安全に関する情報提供・啓発活動を進める。また,市民や事業者などが生活安全についての専門的,実践的知識を習得できるよう講習会や研修会を開催するとともに,安全なまちづくり運動など実践的な活動を通じてリーダーとなる人材を育成する。

ウ 交通安全に関する施策の推進

 市民や観光旅行者などを交通事故の被害から守るため,「歩行者の安全」を確保するという視点を取り入れ,交通安全啓発や自転車歩行者道など交通安全施設の整備,違法駐車などの防止対策,放置自転車対策を進める。

エ 市民の自主的活動への支援

 市民みずからが積極的に生活安全に関する知識を理解していくこと,あるいは,地域単位で地域住民や各種住民団体が一体となって,地域の安全のために幅広く活動していくなどの市民の自主的活動は,地域における犯罪や事故を未然に防止するうえで果たす役割は大きい。そのため,警察その他関係機関と連携し,物的支援の推進や顕彰制度の創設など市民の自主的活動への支援を進める。

オ だれもが犯罪や事故から安心してくらせる環境づくりの推進

 公共的建築物や道路,公園などの施設の設置に際し,防犯や事故防止の視点を取り入れ,バリアフリー化社会の実現に向けた取組を進めるとともに,児童や生徒などの安全な通学を確保するための通学路安全対策の推進,高齢者や障害のあるひとに対する緊急通報システム事業の推進,警察などと連携した青少年の非行防止対策の推進,観光旅行者などの安全確保のための情報提供など,だれもが安心してくらせるまちの実現をめざした取組を進める。

カ 犯罪及び事故発生時の緊急体制の整備と被害者などへの支援の推進

 地域住民及び各種住民団体,警察その他関係機関との連携のもと,犯罪や事故発生時に素早い対応がとれるよう,危機管理マニュアルの作成など緊急体制の整備を進める。また,犯罪や事故に巻き込まれた被害者やその家族,関係者などが受けた心の傷に対するケア等の支援体制の確立や暴力事案などに対応できる専門家による相談窓口の設置などを進める。

 

(2) 消費者が自立し安心してくらせるまちづくり

ア 消費者の自立に向けた多様な学習の機会の整備

 (ア)消費者問題への理解を深める消費者月間事業の開催

 消費者団体,事業者団体,行政の三者が一体となって消費者月間実行委員会を構成・運営し,消費者問題をはじめ,地域のくらしや環境問題,産業などについても相互理解を深めることにより,市民の消費生活の向上を図る。

 (イ)消費者の選択眼を養うための啓発事業の推進

 消費者契約上のトラブル,ごみ問題を引き起こす過大包装などに関する問題意識を喚起するとともに,消費者被害の防止や消費者問題に対する理解を深めるために,各種講座,教室,セミナーなどを開催する。
 また,場所別(家庭・地域・職場など)や年代別(若年層,高齢者層など)に応じた学習・研修活動を効果的に実施する。

 (ウ)「市民生活センター」の利用の促進

 消費生活相談,一般相談,法律相談,税務相談,交通事故相談などの相談事業を行う「市民生活センター」において,資料の充実など多様化する相談内容に対応できる体制づくりを進め,関係者の利用を促進する。

イ 消費者への積極的な情報の発信

 (ア)消費者のニーズに対応した情報内容の充実

 消費者が求める情報を的確に把握し,わかりやすく提供していくために,センターに寄せられる消費生活相談を基礎に消費者被害の分析や消費生活の向上を実現していくうえで必要な情報を整理するとともに,消費者のニーズにあった情報をできるだけ多く発信できるように情報内容を充実する。

 (イ)消費者被害の未然・拡大防止のための適切かつ迅速な情報提供

 消費者利益の増進及び悪質商法などによる消費者被害の未然・拡大防止を図るため,パンフレットなどの啓発資料を作成するとともに,テレビ,ラジオ,インターネットなどの各種広報媒体を活用し,適切かつ迅速な情報提供を行う。

 

 

4 歩いて楽しいまちをつくる

基本的方向
 日本を代表する歴史文化都市,人間尊重・環境共生型都市にふさわしいまちであり続けるために,歩いて楽しいまち,「歩くまち・京都」の実現をめざす。「歩くまち・京都」とは,歴史文化資産や自然環境と調和した歩く魅力のあるまち,だれもが歩きたくなるような安全・快適な交通環境が整ったまち,生活目的が身近な地域で歩いて果たせるまちである。また,来訪者にとっても,歩くことによってその価値をより深く楽しむことができるまちである。そのようなまちを築くため,歩くまちの魅力と,歩くための条件を整備する。この目的を通じて,環境への負担の少ない交通行動を市民と行政が協働で推進する。

 

(1) 歩く魅力のあるまちづくり

ア まちの美化推進活動や沿道景観整備

 (ア)まちの美化の推進[P58「1まちを美しくする」(1)アに再掲]

 市民ひとりひとりがごみを捨てない,捨てさせないという意識を高めるため,市民,事業者,行政が一体となってごみの散乱を防止,清掃するなど,まちの美化に努める。また,山中の不法投棄対策や歩道等の放置自転車対策等,快適に歩くことができる環境を維持するため,監視指導体制を強化する。

 (イ)屋外広告物の規制や指導等[P59「1まちを美しくする」(2)イ(エ)に再掲]

 屋外広告物等に関する条例等に基づき,屋外広告物等を地域の特性に調和したものになるよう規制や指導をするほか,違反広告物の撤去等を実施するなど,景観の向上,歩行空間の安全確保を図る。

 (ウ)京都駅前,御池通等における沿道景観の整備促進

 本市の主要な玄関口である京都駅の駅前通りや御池通シンボルロード等において,歩道の景観を向上させることにより,沿道建築物等の景観の向上を誘導する。

 (エ)清潔で利用しやすい公衆便所の整備

 観光地やひとのよく集まるところなど,周辺環境から望まれるところに,歩くまちを支援する施設として,清潔で利用しやすい周辺の景観などと調和した公衆便所を整備する。

イ 観光地や商店街の活性化と歩くまち [P43「1環境への負担の少ない持続可能なまちをつくる」(1)エ,カ, P70「1産業連関都市としての独自の産業システムをもつ」(3)イ,P72「魅力ある観光を創造する」(1)エに再掲]

 市街地の文化遺産や有形無形の文化財など,地域の文化,環境を活用する地域まるごと博物館づくり,徒歩や自転車による環境にやさしい観光などを進めるエコツーリズム観光都市づくりなど,歩くことの価値が実感できる観光を振興する。
 また,歩行者優先的な地区等において,都市基盤整備と商業活性化策を一体的に進める中心市街地活性化事業を推進するなど,観光客も含めた歩くひとを集め,商店街の活性化を促進する。

ウ 職住共存地区における「歩くまち・京都」の推進[P72「2 魅力ある観光を創造する」(1)オ,P80「1個性と魅力あるまちづくり」(1)イ(イ)に再掲]

 都心部において職と住が共存してきた中心的な地域である「職住共存地区」を「歩くまち・京都」を実現するための先導的な地区ととらえ,「歩いて楽しいまちづくり構想」を策定,推進する。そのため,自動車の通行制限や歩道のバリアフリー化等歩行空間の快適化,多様な世代に対応した良質な居住環境の整備,生活を支える諸機能の魅力を高める施策を検討し,居住者や事業者にとっても来訪者にとってもまちに親しみがわき,安全快適で歩くことが楽しくなるようなまちの整備を推進する。また,「京町家再生プラン」に基づく伝統的な意匠による木造建築物の保全・再生・活用,袋路の協調建替え,共同建替えを促進する。

エ まちの景観

 (ア)市街地における景観形成と水と緑を生かした歩くまち[P58「1 まちを美しくする」(2)イ,P79「1個性と魅力あるまちづくり」(1)イ(ア)に再掲]

 都心を中心とする市街地においては,景観保全・整備に係る地区の指定,歴史的意匠建築物の指定,良質な市有建築資産の再生利用等を通じて,京都固有の魅力的な町並みと調和した景観形成を促進する。
 21世紀の京都の新たな活力を担う南部地域においては,緑豊かで,ゆとりと潤いのある歩行空間と沿道景観の形成を促進する。
 また,鴨川など市街地における自然環境の骨格となる河川等においては,良好な水辺環境の整備に努め,緑を生かした歩行空間の整備を進める。

 (イ)自然と歴史的な景観の保全と歩くまち[P58「1 まちを美しくする」(2)ア(ア),P72「2魅力ある観光を創造する」(1)エ,P79「1個性と魅力あるまちづくり」(1)ア(ア)に再掲]

 三方の山々やその山すそ等において,緑豊かな景観や歴史的風土等を保全することに加えて,地区の景観と調和したみちの整備に努め,歴史的文化や自然を歩いて楽しむことができる舞台づくりに取り組む。また,土地所有者の協力を得ながら京都一周トレイル事業を進める。

 

(2) 歩くまちの歩行空間の形成と自転車利用の促進

ア 緑豊かで安全快適な歩行空間ネットワークの形成

 高齢者や車椅子利用者等だれもが安全で快適に利用できる歩行空間を確保するため,鉄道駅や福祉施設,病院,学校などを結ぶ歩行者が多い道路を歩行空間ネットワークとしてとらえ,歩道のバリアフリー化や自動車通行を制限する歩行者優先の道路であるコミュニティ道路や歩車共存道路の整備された地域づくりに取り組む。
 また,街路樹の整備のほか学校における「花と緑のグリーンベルト事業」や「生け垣緑化助成事業」等により公共公益施設や民有地の緑を増加させ,歩いて楽しい花と緑豊かなまちの整備を促進する。
 さらに,鴨川に架かる橋及び歩道橋の調査や検討,電線類地中化による歩行空間の拡大,情報通信技術(IT)を活用した歩行者支援システムの検討など,安全快適な歩道の整備を目的とする各種施策を進めする。

イ 自転車利用の促進

 歩行者のための施策に加え,歩行者の安全に配慮した自転車利用を促進させることにより,自家用車利用の機会が少なくてすむまちをつくる。
 歩行空間を安全に保つため,放置自転車を生み出さない自転車等駐車場や自転車走行空間の整備に努める。また,都市型レンタサイクルの導入により,自転車駐車空間の効率的活用や自転車と公共交通機関との乗継ぎ行動を促進する。
 さらに,地域と一体になった啓発活動などにより,自転車利用マナー・ルールの確立を進めるとともに,歩行者の安全確保等から放置自転車等の撤去を強化する。

 

(3) 歩くまちの交通体系の確立

ア 歩くまちの交通網の整備[P82「2多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(1)に再掲]

 「歩くまち・京都」は,地域ごとの特性に応じた鉄道,バス,タクシーなどの公共交通機関の活用と,その端末交通手段(鉄道駅やバス停までの交通手段)となる歩行,自転車走行を支える空間の確保に努めることにより,ひとが過度に自動車に頼らず移動できる交通体系の実現をめざす。
 そのため,道路網の形成に当たっても,地域ごとの生活・商業・観光などの視点において,歩く機能の充実に努める。
 自動車交通についての対応は,自動車公害防止計画との整合を図りながら,企業を含む市民と警察を含む行政が一体となって検討し,円滑な流れが実現できるように努める。また,自動車だけでなく歩行者や自転車,バスなど公共交通機関のための道路として,街区形成の視点に配慮しながら,環状道路の整備や都市計画道路の計画見直しなど,効果的な道路整備・再編計画を推進する。
 さらに,現状道路空間を有効に活用するため,道路の利用の仕方に工夫を求める交通需要管理施策(TDM施策)を推進しつつ,交通体系のあり方を検討し,安全快適で効率の良い,ひとや環境にやさしい交通体系の実現をめざす。

イ 交通需要の管理

 特定地域への自動車流入抑制策など,道路の利用の仕方に工夫を求める,交通需要管理施策(TDM施策)を検討し推進する。
 また,公共交通と自動車交通の連携を考慮した適正な駐車場配置を検討するなど,駐車場整備計画を見直す。
 さらに,情報通信技術を活用した駐車場案内システムや高度道路交通システム(ITS)の検討を推進し,物流の合理化を促進することにより,合理的な交通行動を誘導する。

ウ 交通社会実験や交通情報システムの活用

 新しい交通政策のあり方を検討するに当たっては,さまざまな立場や視点から評価する必要がある。そのため,施策の導入に先立ち市民の協力を得ながら試験的に取り組む,交通社会実験を必要に応じて実施する。さらに,交通情勢調査の基礎データをはじめとする交通に関する様々な情報の一元化を図るとともに,交通状況のきめ細かな分析行うため,交通情報システムを構築する。

 

(4) 歩くまちの公共交通の充実

ア 公共交通優先型の交通体系の実現

 「歩くまち・京都」の理念の下,環境への負担の少ない交通体系,自動車交通に過度に依存しない公共交通優先型の交通体系を確立する。
 公共交通機関は,市民の支持を得られるよう,路線網や乗車券制度,サービス施設について常に調査研究しながら改善し,利用しやすい有機的な公共交通輸送サービス網を整備する。
 また,バスや鉄道輸送のサービスを絶えず充実させるとともに,運賃や乗車券制度の改善,公害対策・バリアフリー化についても推進・支援する。
 利便性の高い,経済性にも優れた公共輸送サービスを提供するため,軽量軌道公共交通機関(LRT)などの新しい公共交通のあり方については,「歩くまち・京都」の理念を念頭に,検討を進める。

イ バス輸送サービスの充実

 身近な市民の足であるバス輸送を,一層乗りやすくするために,公共車両優先システム(PTPS)等への参加や少系統多便型への取組,地下鉄との連携強化を念頭に置き,運賃制度等の改善を図りながら,バス路線再編に取り組む。
 また,乗合バス事業の自由化(需給調整規制廃止)への対応,利用者の利便性を重視したサービスの充実をめざし,100円循環バスや観光旅客用路線の運行充実の検討など,経営の健全化を図りながら新たなバス輸送サービスの充実に取り組む。

ウ 鉄道輸送サービス網の充実[P83「2多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(3)アに再掲]

 鉄道輸送サービスは,定時性が高く環境への負担が少ない公共交通機関の基幹的な役割を担っている。そのため,地下鉄鉄道網の充実を図るとともに,JR線や民鉄線鉄道網のサービス,各鉄道機関の結節機能の充実を促進する。

エ 公営交通の利用を促進する運賃・乗車券制度の改善

 公営交通が率先して,地下鉄やバスなどの公共交通が利用しやすい運賃・乗車券制度について検討し,経営の健全化を図りながら実施する。

オ 市バス・地下鉄等のバリアフリー化,低公害化の推進

 利用しやすい公共交通であるためには,市バス・地下鉄等のバリアフリー化の推進,駅前広場等の改善,交通結節ターミナルの機能充実を図るとともに,バスについては,環境負担の少ない低公害・低燃費仕様の車種を導入していく。

 

 


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