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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第8回 環境・市民生活部会

ページ番号35855

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第8回 環境・市民生活部会

日 時 : 平成11年8月25日(水) 午前10時~12時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「瑞雲の間」

 

議 事 :

(1) 京都市基本構想(第2次案)について     

(2) 次期基本計画策定に向けた論点整理について     

(3) その他

 

出席者 : 

浅岡 美恵(気候ネットワーク代表) 

石田 一美(京都市東山消防団団長) 

片山戈一郎(日本労働組合総連合会京都府連合会会長) 

笹谷 康之(西京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学理工学部助教授) 

須藤 眞志(京都産業大学外国語学部教授) 

田尾 雅夫(京都大学大学院経済学研究科教授)

○高月  紘(京都大学環境保全センター教授) 

滝川 文子(京都市地域女性連合会会長) 

田端 泰子(山科区基本計画策定懇談会座長,京都橘女子大学文学部教授) 

内藤 しげ(住みよい京都をつくる婦人の会会長)

◎内藤 正明(京都大学大学院工学研究科教授) 

仲尾  宏(京都芸術短期大学造形芸術学科教授) 

野口 寿長(京都市体育振興会連合会副会長) 

村井 信夫(各区市政協力委員連絡協議会代表者会議幹事)                                

 

以上14名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長

 

 

1 開会

内藤正明部会長

  第8回環境・市民生活部会を開催させていただく。

 

 

2 議事

(1) 京都市基本構想(第2次案)について

内藤正明部会長

  本日の議事は2件ある。これまでに出た意見の中には基本構想に盛り込むべきものもあれば,基本計画に盛り込むべきものもあり,この辺りの仕分けを意識しながら2つの議事をご議論いただきたい。

  最初に「京都市基本構想(第2次案)」について私から要点を説明したい。まず,資料2「京都市基本構想(第2次案)の考え方について」をご覧いただきたい。第2次案作成に当たっての基本的スタンスとしては,(1)一気に読めるよう分量を抑えたこと,(2)主語を「わたしたち京都市民」として市民のまちづくりの指針として位置付けたこと,(3)できるだけ平易な言葉で書くよう努めたこと,の3点である。また,第1次案に対するご意見を踏まえ,全体を通してストーリーの明確化を図る努力をした。

  続いて資料1に基づき構想の中身を説明したい。まず目次をご覧いただくと,第1章のタイトルが変わり,「信頼」が全体を貫くキーワードとして打ち出されている。第2章は構成が大幅に変更されており,身近なテーマである「くらし」に始まり産業・文化といった都市機能,その両方を支える基盤整備という展開になっている。第2章の構成変更については,資料2の別添資料を参考にしていただきたい。第3章は市民と行政の信頼のもと,こうしたくらしとまちづくりを市民が主体的に市政に参加することにより実現していくことが大きな意味を持つとの考え方に立って市政参加のあるべき姿を描き,最後は市民自らが自問する形での将来への宣言で締めくくられている。

  本文の修正内容については事前に送付した資料ですでにご確認いただいており,大きな変更箇所をピックアップして簡単に説明したい。

  前文ではこの構想が21世紀の最初の四半世紀における京都のグランドビジョンであることを宣言し,平和の概念として世界文化自由都市宣言の一文を挿入している。また,最後の段落の「京都市は…」の部分で行政の責任を明記しており,起草委員長はこれにより本文を「わたしたち京都市民は」という主語でそろえることができると判断したということである。主人公が誰か,責任主体がどこにあるかということは大事なポイントであり,後でご議論いただきたい。

  第1章については,第1節では本部会からの提言に基づき「持続可能な社会」という表現が付け加えられ,第3段落で「信頼」というキーワードを浮かび上がらせている。第2節は大きな変更はない。第3節では「得意わざ」という言葉に賛否両論があり,タイトルを「得意とするところ」,本文を「特性」と変更した。また,最終段落で京都の問題点を踏まえたうえでこうした特性を生かしていくべきということを書き加えている。第4節は「新しい次元を切り開く」というだけでは方向性が見出しにくいとの意見を踏まえ,このまちに実現したいのは「信頼」であるとして,その背景と目指す方向性を明記している。

  第2章については,まず前文を書き加え,第1章と第2章の関係を整理している。第1節では各項で目指すまちの姿を提示した後,それを実現するためのプロセスを記述し,市民が主体的に取り組むということで締めくくる構成になっている。当部会と関連の深い部分であり,外国籍市民,人権,男女共同参画,防災対策の充実など,当部会からの提案が多く取り入れられている。なお,第1次案の「つつましやかだが満ちたりた生活」という言葉は「ひとりひとりがくらしに節度をもち,安心してくらせるまち」に変えている。

  第2節はくらしの内容に踏み込んだものとなっている。産業経済をどう扱うかについては議論も多かったが,(1)では企業が相互に信頼して支え合う「産業連関都市」の形成を打ち出し,環境や福祉分野での新しい産業の展開や観光都市づくりに触れたうえで,世界の人々が集まりそこを舞台に能力を発揮できる場所にしていくということで結んでいる。(2)では美術・音楽や教育についての記述や,「しまつの文化」という高月副部会長の提言が付け加えられており,また,第1次案の「本当の気品」という表現が「品格のある華やぎ」に変更されている。

  第3節は,産業のための基盤整備のようになっているという第1次案に対するご意見を踏まえ,市民のくらしと産業経済の両方を支えるものという位置付けを明らかにした。情報関係もここで触れられており,南部についての記述が強化されている。

  第3章については,第1次案が市民参加を脅迫的に強制し,行政が市民をあやつるような文章になっているというご意見を踏まえ,前文で市民の市政への参加という考え方を整理している。第1節では分かりにくいというご意見のあった文章の表現をいくつか改めている。第2節では,議会制民主主義についての記述を変更し,最後の段落で市民と行政が協力し合える仕組みを整理している。第3節は,タイトルを市政参加の理念を最も充実した形で実現している都市として,市民と行政との厚い信頼関係が築かれるという表現に変更し,最後は呼びかける形で締めくくり,私たちがつくった私たちの市民憲章というイメージを打ち出している。

  資料3としてパブリック・コメントを事務局で整理したものを配布しているので,議論の際の参考にしていただきたい。

  議論に入る前に,今後のスケジュールを念頭においていただきたい。第2次案についての各部会での議論を踏まえて第3次案を作成し,10月1日開催予定の審議会総会に諮り答申案としてとりまとめたいというのが起草委員会の意向である。なお,今回が基本構想の文案について部会でご検討いただく最後の機会となるので,もれなくご意見をお出しいただくようお願いしたい。起草委員会での議論が必要と判断されるご意見の取扱いについては部会長である私にご一任いただきたい。

  それでは第2次案について,全体を通してご意見をいただきたい。

 

仲尾委員

  信頼を醸成するということだが,結局行政に対する信頼をどう高めるかだと思う。行政が市民に信頼してくれと強要するのではなく,行政が市民の信頼にこたえるような政策をどこまで実現できるかということでなければならない。この文章の主語は「わたしたち京都市民は」になっている。前文に一文が入っているということだが,行政は市民の信頼にこたえる政策を実現する責任があることを明記する必要があるのではないか。

  個々の表現では,第2章第1節について,(1)で「性別・年齢を問わずだれもが等しく就労の機会をもつ豊かなまち」とあるが,女性や年齢だけでなく,社会的出自や国籍や民族による就職差別が問題になっているので,「社会的出自,国籍・民族,性別,年齢を問わず」とする必要がある。

  また,(2)で「社会のあらゆるしくみが少子・高齢社会,男女共同参画社会にふさわしいものへと改編される必要がある」とあるが,同時に「多文化社会」ということを記述する必要がある。最近は中国からの帰国者とその家族や南米から来た人が増えている。いろんな文化を持った人の社会,つまり多文化社会に京都市がなりつつあるという現状を反映すべきだ。

  (3)の交通体系の記述は,「公共交通優先型の先進技術を利用した総合的交通ネットワークの構築」ではあいまいで,「公共交通体系を優先する」と言い切ったうえでないと,「先進技術の利用」ということにはならない。そのあたりを修正する必要がある。

  第3章第2節に「意見を述べる機会が多くつくられるとともに,ときに応じて市民が直接に代替案を提示できるしくみも設定されねばならない」とあり,住民投票制度を念頭に置いてこういう表現になったのだと思うが,市民に代替案を示すことを一概に要求することには無理がある。「行政の施策について,直接に異議申立て及び代替案を提示できるしくみ」と,市民の異議申立て権が保障されるという記述を入れる必要がある。その際,「住民投票制度を含め」という文言を入れればよりはっきりする。

 

田尾委員

  第3章第2節に「NPOをはじめとする市民グループや企業,大学,宗教法人,各種団体など」という表現がある。「NPO」という流行の言葉を使うことについてはそれなりの意義があり,またこの言葉がこの先10年くらいは機能するとしても,文章としては「企業,大学,宗教法人,NPOをはじめとする各種団体など」としたほうがいいのではないか。企業や大学のほうが基本的には大きなウエイトを占めると思う。NPOという言葉を入れるのはいいが,町内会や婦人会といった地域団体の位置付けが少し不足している。

 

内藤正明部会長

  「地域コミュニティ」という言葉があるが,「コミュニティ」については起草委員会でも議論があった。「NPOをはじめとする市民グループ」が最初にきているが,この順序が何を意味するのかということもある。

 

滝川委員

  京都のまちは昔から町衆が支えてきた。今は「地域団体」という言葉が使われるが,行政だけに責任を持ってもらうのでなく,地域の人間が行政を支え,市民も責任を持ちながらまちをつくっていくことが基本であり,「地域団体」を明記していただきたい。

  第2次案で「京都」ということが大きくクローズアップされている点はいいと思う。具体的で素直な,一般市民にも分かりやすい言葉で書いていただいたことに満足している。「京都市民」を主語としたところが最大のポイントだと思う。

 

内藤正明部会長

  「町衆」という言葉については異論もあり,キーワードとしては出ていない。「地域団体」の重要性については再度起草委員会に提起したい。

 

田端委員

  第2次案はいろんなことが盛り込まれ,たいへん良くなった。最初に行政の役割分担についての一文があることは評価できるが,どの部分をどう行政に役割分担してほしいかまで踏み込んで書いたほうが分かりやすい。最初の一文が生きるように各章でも考えていただきたい。

  全体を通して「わたしたち京都市民」と行政とのパートナーシップを大事にする姿勢が貫かれているが,パートナーシップを実現していくためには,どの部分を行政に役割分担してもらえばいいのかを明確にしてほしい。

 

内藤正明部会長

  前文に一文入れたからといって全体が免罪になるわけではないので,各章,各節の中で行政の責任について適切に表現できる部分があれば,入れる努力をしたい。

 

村井信夫委員

  「くらしのなかの信頼と安心」のところで,本当に京都に住んでよかったなというまちづくりを,21世紀最初の四半世紀という未来社会を見通して書かれていることに若干,先ほど仲尾委員が言われたことを加味してもらえたらと思う。

 

内藤正明部会長

  仲尾委員からは具体的な修正案も出ているので,それについては起草委員会に諮りたい。

 

内藤しげ委員

  第1章第3節に「こうした市民の努力の積み重ねのなかで,京都の市民文化は独自の信頼感を生みだしてきた」とあるが,現在全国に53の小京都があり,土地ごとに京都の文化がどのように育まれてきたかに興味を持っている。小京都を訪問して今まで京都とどのような交流があったかを聞いてきたが,小京都には京都をまねたまちづくりをしているところもあれば,祇園祭をまねた祭りがあるところもある。関連するかどうか分からないが,一言申し上げた。

 

石田委員

  この基本構想は2025年を目標とするということだが,高齢者にも言葉の意味が分かるように「NPO(民間非営利団体)」などは「( )」の中をもう少し分かりやすく書いていただけるとありがたい。

 

内藤正明部会長

  この表現で分かるかどうかについては議論がある。分かりにくい言葉については注釈をつける可能性も含めて,起草委員会で検討したい。

  ここで,事前にメモをいただいている浅岡委員,笹谷委員からご発言いただきたい。

 

浅岡委員

  最後のまとめであり,言葉遣いを自分なりに考えてメモにした。第2次案に至る過程で起草委員会や事務局はずいぶん苦労されたと思うので,これをもう少し深められないかという観点から,できるだけ前向きに書いたつもりだ。

  まず,「私たち京都市民は」という書き出しについて,我々自身が「わたしたち京都市民は」と呼びかけることはいいが,文章の中にはいわゆる市民だけでなく,行政や産業・企業体も含まれていると思われる表現がある。この審議会にも行政の委員が含まれており,行政も含めここに加わっている人皆の合意であるという趣旨だと思うが,そうであればなおさら田端委員のご指摘のように,行政が何をするのかを明記する必要がある。「わたしたち京都市民は」ということと,行政はこうしていくべきだ,産業界や企業はこういうことを考えていくべきだということとは矛盾しない。後ろに少し具体的に書いているのでご一読いただきたい。

  「信頼」については仲尾委員からもご意見があったが,どう信頼を築いていくか,その中でそれぞれの役割は何かということが大事だ。今日の信頼の喪失は行政や企業セクターの問題であり,個人の人間関係のような主観的部分より,社会システムに還元する部分に重点が置かれなければならない。そういう意味で,信頼とは何かについてもう少し明確にしてはどうかということだ。第1章第4節に「信頼感のあるまちとは…」という信頼について解説した文章があるが,これは私の申し上げている「信頼をどう回復するのか」ということにはつながらない表現だと思う。そうではなく,(行政が)積極的に自ら自分たちの責任や役割を開示し,市民あるいは他のセクターの承認を得ていくというところでとらえなければならない。信頼を「生活価値」と言っているが,「生活」は必要ない。「わたしたち京都市民は」という表現は企業や行政セクターも包含しており,生活であるととらえることはかえって企業や行政の役割を薄めてしまいかねない。

  「参加」と信頼との関係では,行政が市民の信頼をどう得ればいいのか。行政の側から考える場合と市民の側から考える場合とでは表現のニュアンスが変わってくる。第3章第1節に市民が市政に参加するとはこういうことだという解説があるが,これは行政側のとらえ方ではないか。財政が困難な状況の中でどうしていくのかが課題だというところからこういう文章が出てきていると思うが,上下を逆転して文章を整理してみたので,ご検討いただきたい。

  「初めに信頼ありき」ではないということを強調されているが,そうとは取れない表現もある。例えば第2章の前文で「厚い信頼感をもって生活できるということである」とあるが,信頼感があることが前提になっているように読める。行政がどのように信頼感を得ていこうとするのか,誰と手を組もうとしているのかというときに,「今信頼できる人たちとである」と取られるとよくない。このあたりは微修正ですむことであり,一貫されることを期待する。

  次は細かい点で,第1章第2節の最後は「見分ける」だけでは仕方がないので,もう少し言葉を足してはどうか。その次も表現に関する意見であり,ご検討いただければと思う。また,第1章第3節の「京都の得意とするところ」で,京都の問題としてこういう問題があること,それをどう克服していくかについて書き加えられているが,全体にもう少し町並みのことが柱として入ったほうがいいと思う。市街地全体の町並みをどう形成していくかが,これからの京都を美しくしていくためには大事だ。

  以前にも指摘したが,第2章第1節(1)の「そのようなまちは,住む人が安らいだ顔,満ち足りた顔をしているまちでもある」という表現は必要ないと思う。「品格あるまちの中に品格ある人」ということは大事だが,「満ち足りた」という表現は誤解をまねく。何に満ち足りるのか。皆が好き勝手なことをしていいわけではなく,人間社会とは苦しいものであり,それをどう乗り越え,どうまちづくりにコミットしていくのか,その中で達成感や満足を感じていくというところに重点を置いていただきたい。

  次は非常に細かいことだが,第2章第1節(2)で「子供を安心して産める環境づくり…まちづくりの重要な課題であろう」の部分は「あろう」とあいまいにすべきではない。少子化をどう克服するかは急を要する重要な課題だと思う。

  第2章第1節は(3)が(1),(2)と比べて短い。他の部分で述べているという見方もできるが,もう少し言葉を足せないか。逆に(2)はもう少し削れるのではないかという気がする。交通体系については先に仲尾委員からご発言をいただいた。

  第2章第2節で気になったのは,(2)の京都の文化を書こうとしているところで,「成熟した市民社会」を定義している。社会というときにはもう少し政治的な役割を書かなければならない。成熟した市民社会の中にはそれなりの文化が生まれるということなら,言葉遣いを考える必要がある。

  第2章第3節も大幅に修正されているが,基本的には企業や大学など様々な立場の人々が,個々の市民としてまちづくりの中に包含される仕組みもひとつのインフラと考える必要がある。全体の構成を変えるわけにはいかないので,もう少し言葉を入れられないか。また,物的インフラが表に出ると,第1節の(3)との調整が必要になる。「生活の利便性・快適性が確保され」というのはいいが,それはやみくもではないという表現が必要だ。また,「それぞれの街区やまちが多彩で個性的な機能をもつような高密度な都市をめざす」とあるが,癒しの雰囲気はどのまちにも必要であり,「高密度」という言葉は誤解をまねくのではないか。また,南部を「21世紀の京都の活力を担う新しい都市機能集積地域とする」とあるが,21世紀の京都の活力を南部の都市機能集積の中に期待すると記述することで,前の部分で書かれていた市民や多様な主体が主体的に取り組んでいくことが京都の活力であるという部分が誤解され,京都の活力とは結局南部の都市機能集積のことと受け取られるのではないか。「21世紀の京都の活力を担う」という表現はなくても意味は通じる。

  第3章第1節の第2段落「ひとがどのような結びつきを実現したら幸福なくらしを手に入れることができるのか」の部分では,個人の努力だけでなく,社会的仕組みが必要であることも明記しておきたい。

  第3章第2節の冒頭部分はかねてから問題になっているが,まだ気になる。「市民みずからが選択したことがらを確実に実行に移すための制度として」とあるが,「市民がみずから選択した」と言えるかどうかというところに問題がある。この数行が必要であるならば,このようにしてはどうかという案を示しているのでご検討いただきたい。

  先ほど議論のあった「NPOをはじめとする…」の部分については,NPOという言葉を使う必要はない。「民間の非営利の活動をするグループや市民団体…」でいいのではないか。その中には地域の活動をする人も入る。地域活動をする人がNPO,NGOであるわけで,別物であるかのように書く必要はない。もっとも,これからこういうものを強化していきたいという姿勢を示すのなら,表現は考える必要はあるが,明示してもいいと思う。

  田尾委員が大学や企業関係者のほうがウエイトが高いとおっしゃっていたのはそのとおりで,今欠けているのが市民の部分であり,そこを強化しないと参加ということにもならないし,民主主義も変わらない。それを強調する表現は必要だと思う。「公的役割をたんなる市政の協力者と見なすのではなく」の部分は分かりにくい。「公的役割」という表現は必要ないと思う。ここでも「誰が」ということが明記されなければならない。まず行政あるいは企業が考えることが大事なので,冒頭にも申し上げたが,主語を入れていただきたい。

  第2節の最後の部分は,行政や市会と市民とのかかわりをどう表現するかに苦労するが,少しニュアンスを変えて,行政をどうすることが必要かという主語を入れながら表現してはどうかということで,文案を示しているのでご検討いただきたい。

 

内藤正明部会長

  浅岡委員のご提案については起草委員会で議論したい。引き続き,笹谷委員からご説明をいただきたい。

 

笹谷委員

  浅岡委員のご指摘のあった「高密度」という言葉は「コンパクトシティ」を表現しているのではないか。

  田尾委員のご指摘のあったNPOについて書かれた部分については,通常「市民,市民団体,事業者,事業者団体…」という並べ方をしており,市民団体が先にくる順番でいいと思う。

  前回の部会の後で,補足する意見とその後得た情報をメモにした。問題意識としては田端委員と近く,行政がどういう役割をするかを明記する必要があると思うが,どう書いていいのかよく分からない。基本計画に書かねばならないものもあると思う。論点整理も行政のあり方についてはこの部会が総括部会としてやらなければならないのではないか。基本構想の段階で持ち越した場合は,基本計画の段階でぜひ考えてほしい。

  7/6付けのメモでは区が重要ということと,パートナーシップが重要という今までの私の論点を述べている。7/30付けのメモは,もっと共有すべき話があるのではないかということで,この審議会の中で共有し,行政の中で共有しないと,市民の中で共有できないのではないか。このままでは危機的状況になるということを十分に共有しなければならないと思う。20~30年前の欧米の都市で同じような状況があり,それを欧米の都市が克服してきた歴史を直視し,これからの破綻に備える必要がある。

  すべてについて行政が何をしなければならないということを個別に書く必要はないが,仕組みとして何をすべきかは書く必要がある。行政の事務事業評価を徹底的にやることもその1つで,どれだけのコストをかけてどれだけの行政サービスが得られたかということも含め,予算の情報を公表し,その基礎となる会計情報を透明にする。行政の役割そのものを見直し,民間企業やNPOに委託する。コストを下げるために情報機器を使うといった視点も必要だ。参加の仕組みについても,住民投票に持ち込む前の多様な参加の仕組みを求めていく必要がある。

  8/25付けのメモは中央政府が大きく変わってきているということで,各省庁の事業で外部評価制度や,事前,事業中,事後の評価制度が定着しつつあり,環境評価をするための指標もある。第3章第2節に「それらの実施結果に関する情報が明らかにされねばならない」とあるが,これをもう少し上にもってきて,情報を提示して,事前,事業中,事後に内部評価や外部評価をするという趣旨に変え,そのための情報公開について書くようにしてはどうか。

  行政のコストの削減については,中央政府では入札制度の見直しということになる。日本の中央政府の補助制度というのはデモンストレーション・プログラムの形になっていない。初めに手を挙げたところが失敗を恐れずトライする制度があって,そのやり方が成功すれば他の自治体や地域に広がっていくような,新しい社会的実験をする必要がある。

  パブリック・インボルブメントということでは,アメリカでは1990年頃に市民参加で道路づくりを始め,最初は混乱をきたしたが,近年は落ち着くところに落ち着いている。2025年になると大きく制度変革が進むことを前提に考えなければならない。

  また,事業が1年間行われないとどれだけの損失があるのかという時間管理概念や,最初からそういう情報も含めて市民に提示する方法も必要だ。どう文章に書くかは難しいが,行政のサービスの評価については補強しないといけないと思う。

  あとはどのようにこれを皆が共有していくのかが課題だ。これをどのような形で提示し,皆で共有していくのか。背景にある社会情勢や世界情勢の認識も含めて共有しないと,市民は内容を理解できない。市民にこういう状況を伝え,共有する方法も含めて議論しなければならないのではないかという問題提起になる。

 

内藤正明部会長

  それはグランドビジョン自体の問題というより社会全体や教育・啓発の問題などと絡むので,この場では問題提起として承っておきたい。具体的なご提案の中には構想に取り入れられる部分や,計画の中に仕分けたほうがいいものもあると思う。中央政府の動向についても認識はしており,京都も国の動向と連動するわけで,起草委員会でもう一度議論したい。

 

浅岡委員

  中央の動きを誘引しているのは地方の動きだと思う。実践してみてこうしたほうがよかったという結果も含めて,中央の動きを誘引する役割を果たしていくと思っていただけばいいのではないか。

 

田尾委員

  誤解のないよう申し上げておきたいが,私は企業,大学が市民グループより上であるとは考えていない。

 

浅岡委員

  大学や企業のほうが現実に社会的影響は高い。そのバランスを取るようにしなければならないということが問題ではないか。

 

田尾委員

  「NPOをはじめとする市民グループ」と「市民グループ」とではどう違うのか。ことさらにNPOを上に上げて議論する必要はあるのかということを申し上げたかった。

 

内藤正明部会長

  この部分の表現に問題があるというのは共通認識であり,起草委員会で議論したい。

 

須藤委員

  市民と行政がいかに協力,信頼関係を持つかというのが全体を貫くトーンとなっている。行政がどうあるべきか,市民がどうあるべきかを書こうとしているのだと思うが,第3章第3節にある「市政に参加する権利を有する」というのはどういう意味か。また,市民が「さまざまな負担と責任を負う」ということが何を意味しているのか分からない。市民はどういう負担や責任を負うことで市政に参加するのか理解できない。

 

内藤正明部会長

  起草委員会で多様な意見の集約としてこういう表現となっている。

 

浅岡委員

  第1次案に「負担や責任」という表現があったので,それなら「権利」も必要ということでこういう表現になったのだろう。権利,義務という関係を抽象的に入れたのでこの部分の文章が固くなり,流れが悪くなっている。この部分は取ってしまって,「さまざまな場面でそれぞれ役割を担っていく」くらいの包括的な表現でいいのではないか。「負担と責任」という言葉がどうしても必要であればこういう表現になる。

 

内藤正明部会長

  常識の範囲であれば,市民には税金を払うとかルールを守るという負担や責任があるが,それなら改めて書く必要はない。

 

須藤委員

  行政が市民からの要望にこたえるというときの負担と責任は明確で,予算をいくらにするかとか,期日や規模をどうするかということになるが,逆に市民という漠然とした概念の人たちの負担と責任が何かが理解できない。どうやって市民に負担を負わせるのか。要するに無責任な意見を言うなということなのか。

  市民は本人にとっては非常に重要だが,全体からすれば非常に身勝手な要求を行政に言ってくるかもしれない。そのときに「あなたの負担と責任は何か,全体を考えなさい,あなたの家の前の道路だけ直すわけにはいきませんよ」という意味なのか。市民は行政に要望したいことは何でも言っていい。それを行政が自分の負担と責任において整理して,それに対してこたえられることはこたえるし,こたえられないものはこたえられないということであれば分かるが,市民の負担と責任ということは分からない。

 

浅岡委員

  市民が意見を述べ,政策決定に参加する仕組みをつくる代わりに,そこで決まったことについてはリスクも一緒に引き受けてくださいということを言わんとしている。

 

内藤正明部会長

  市民は周辺の利害で要望をぶつけ,行政がそれを引き受けて判断するという従来のやり方ではなく,もっと市民の主体性を重視し今までより以上に積極的に参加すべきだと言ったとたんに,市民の側にそれに対応する責任や自己改革や意識が伴うということだが,それは当然のことであり,改めて言うと議論を引き起こすので書く必要はないという考え方もあれば,言った以上はもう少し分かりやすく書くべきだという考え方もある。

  これは憲章のようなものだから,権利と参加を高めていくといった反対給付のようなものとご理解いただき,具体的に何かということは基本計画で書いてはどうか。

 

田尾委員

  地方分権化が進めば,地方行政は政策官庁化し市民がいろんなことを言ってくるようになる。行政がそれをきちんとさばかないといけない。行政がどうかかわるかを行政として宣言していただきたい。パブリック・コメントにも,行政にもっとリーダーシップを発揮してほしいという意見がある。行政がどうするかをどこかに書いておくべきではないか。

 

仲尾委員

  最初に申し上げたが,「わたしたち京都市民は」を主語としたことで行政が市民に対してどういうスタンスでどういう責任を持とうとしているのかに触れられなくなってしまったので,前文でも個々の章でもつじつまが合わなくなっている。最初でも最後でもそれを明言したうえで,住民のさらなる自主的参加を望んでいると書けば,問題は解決するのではないか。

 

内藤正明部会長

  それについては起草委員会で議論したい。

 

(2) 次期基本計画策定に向けた論点整理について

内藤正明部会長

  残りの時間で計画論点整理メモの検討に移りたい。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  資料5はこれまで当部会でお出しいただいたご意見を事務局で整理させていただいたものだ。基本計画に向けてこういうことも論点整理として盛り込んでおくべきだというご意見があれば出していただきたい。時間が足りない場合はメモにしてお出しいただければ,事務局で整理してそれを付け加えたい。なお,論点整理メモに書かれている事項に限って基本計画を議論していくわけではなく,これはあくまでも中間的に今まで出たご意見を整理するものとご理解いただきたい。

 

内藤正明部会長

  付け加えておくべきことがあれば,時間の許す範囲でご意見をいただきたい。どの部門でもかまわないので自由にご発言いただきたい。

 

笹谷委員

  「行政の仕組みや制度の変革」をサブテーマとして起こせないか。ボランティアなどもそういう部分に含めて考えてもいいのではないか。地域団体やNPO,それぞれの分担や自己評価,外部評価という問題をどうとらえていくかが必要ではないか。行政が情報を開示するだけでなく,それ以外の団体もいろいろな情報を市民に流すなど双方向の広報も含めて,新たに項目を起こさないといけないのではないか。

 

内藤正明部会長

  部門別の話に収まらないご提案なので,別立てで記録しておきたい。

 

滝川委員

  須藤委員の発言に関連するが,市民としての責任についての考え方が大きく違うと思った。行政が予算などいろいろなものを提供している中で,地域社会の住民として自分たちでやらなければならない責任がたくさんある。私は市民の責任をそういうものと理解していた。例えばまちを美しくするにしても,行政が整備するだけではだめで,そのまちを守り育てていくのは住民でなければならない。行政にしてもらえばいいというのではまちは美しくなっていかない。そういう責任が私たちにはある。行政と市民がパートナーシップで責任を持って京都を良くしていくことが大事だと思う。第2章第1節(2)の「ひとりひとりが支え,支えられるまち」ということが責任につながるのではないか。

 

内藤正明部会長

  「責任」は具体的にはそういうことも含んだ表現だと思う。

  論点整理メモに目を通していただき,お気づきのことがあれば8月27日までにメモを提出していただきたい。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  論点整理メモに載せておかなければ今後議論ができないというものではない。一読してお気づきのことがあれば出していただき,今後の議論につないでいくという趣旨とご理解いただきたい。

 

(3) その他

事務局(葛西政策企画室担当部長)

  ――(資料6「「都市研究・京都」第12号の原稿募集について」について説明)――

 

内藤正明部会長

  最後に,副部会長からご発言いただきたい。

 

高月副部会長

  基本構想は最初の段階で,次にこれを受けて基本計画がくるということが読んだ人に分かりにくい。行政責任ということとも絡んで,予算のかかる計画等もあり,その中には市民の意見が十分に反映されなければならないが,そういうところにつなぐ構想なのだということが最初に書かれているほうがいいのではないか。

  今我々に必要なのは行動を起こすことだが,この構想の最後は「問うところからはじめよう」,まず考えましょうということになっている。基本計画の段階に早く移ることが必要だと思うので,構想と計画の位置付けを明確にして,行政の責任を基本計画と絡めて表現してはどうか。

 

内藤正明部会長

  前文の最後に「この基本構想は具体的な基本計画につながっていく…」という表現が必要だと思うが,何か理由があってあえて書かなかったような記憶がある。起草委員会で再度提案したい。以上で本日の議事は終了としたい。

  基本構想については,10月1日の審議会で了承されれば市長に答申し,その後市会で提案されることになる。基本計画については,テーマ別論点整理メモを踏まえて調整委員会で計画の枠組みづくりを行うことになるため,部会の再開は来年になる。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  補足説明しておきたい。基本構想等審議会条例に基づき,基本構想については起草委員会,基本計画については調整委員会を設置することが規定されている。内藤部会長には引き続き調整委員会の委員もお願いすることになる。調整委員会で基本計画のつくり方をご議論いただき,その後各部会と調整委員会の間でキャッチボールしながら審議していただくことになる。次回の部会の開催時期については,調整委員会で審議の進め方を決めていただいた後になる。

 

内藤正明部会長

  本部会の基本構想づくりの役目はここでいったん終わることになる。

 

笹谷委員

  論点整理メモに基づき調整委員会で原案をつくられるのであれば,抜けている観点についてのメモはいつまでに提出すればいいのか。

 

事務局(前葉政策企画室長)

  調整委員会で基本計画の枠組みづくりをどう行うかについても,今後調整委員会でご審議いただくことになる。論点整理メモについては部会のテーマ別討論で出た基本計画の議論の際に参考にしていくべきご意見を取りまとめ,総会,調整委員会にお渡しいただくという趣旨で作成しており,ここに載せておかなければ基本計画に入らないわけではない。今お気づきのことで載せておけばということがあれば,追加的にご意見をいただくことで十分だ。ご意見は8月27日(金)までにお願いしたい。

 

内藤正明部会長

  それでは,本日はこれで閉会したい。

 

 

3 閉 会

 

 

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