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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第2回 文化・観光・産業部会

ページ番号35833

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第2回 文化・観光・産業部会

日 時 : 平成10年12月21日(月) 午前10時~12時

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲の間」

 

議 事 :

(1) 審議会の進め方について     

(2) 第1・2回起草委員会開催結果報告     

(3) 関連冊子説明     

(4) テーマ別討論「文化について」

 

出席者 : 

伊住 政和(裏千家副本部長,京都市ユースボランティア21顧問) 

上平  貢(京都市芸術文化協会理事長,京都市美術館長) 

川原 陸郎(京都みやこ信用金庫会長) 

坂上 守男(京都市観光協会会長) 

竹村 寿子(市民公募委員) 

中村 弘子(千家十職塗師十二代中村宗哲) 

古川 敏一(京都府中小企業団体中央会会長) 

三谷  章(市民公募委員)

◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授) 

中谷 佑一(京都市副市長)    

 

以上10名 

◎…部会長     (50音順/敬称略)

 

 

1 開 会

吉田部会長

  第2回「文化・観光・産業部会」を開会させていただく。

 

 

2 委員紹介(前回欠席委員)

吉田部会長

  最初に,前回ご出席いただけなかった委員に簡単に自己紹介をお願いしたい。

 

伊住委員

  茶道裏千家で,お茶を中心とする伝統文化に携わっている。自分自身で会社も経営しており,伝統文化的コンテンツを生かし現代とのつながりを考えた,多岐にわたる事業化に取り組んでいる。文化・観光・産業という得意なフィールドに入れていただいたと思っている。 

 

上平委員

  京都市美術館に勤務している。京都工芸繊維大学を定年後,嵯峨美術短期大学学長,併せて京都市の芸術文化協会の世話役も務めており,芸術の大学にかかわってきた。また現在市美術館を中心に京都市の芸術文化に対していろいろかかわりを持っている。

 

坂上委員

  京都新聞社に勤務するとともに,この5月から京都市観光協会の会長を務めている。

 

中谷委員

  副市長として文化市民局を担当している。

 

中村委員

  家業のほうでは中村宗哲を名乗って,漆器をつくっている。茶の湯の塗物をつくっており,「職家(しょっか)」といって作家的仕事もすれば職人的仕事もする。個人的な一品ものもつくるが,産業的に千単位のものもつくっている。

 

 

3 議 事

(1) 審議会の進め方について

吉田部会長

  それでは,議事に入りたい。最初に2件報告がある。1つはこの審議会の進め方で,正副会長,部会長による協議の結果,資料1のような進め方で行うことになった。――(資料1「審議会の進め方について」に基づき報告)――

 

(2) 第1・2回起草委員会開催結果報告

吉田部会長

  次に,起草委員会についての報告をさせていただく。第1回は出席させていただいたが,第2回は部会長,副部会長ともに都合で出席できなかったため,まず第1回について私から報告させていただく。――(資料2-1「第1回起草委員会検討状況報告」に基づき報告)――

  第2回起草委員会については,事務局から報告いただく。

 

事務局(人見政策企画室長)

  ――(資料2-2「第2回起草委員会検討状況報告」に基づき報告)――

 

吉田部会長

  起草委員会へのフィードバックを良くするという方針で進めていくことになっているので,ぜひいろいろご議論,ご注文をいただき,部会の意見を反映させていきたい。

 

(3) 関連冊子説明

吉田部会長

  第1回に基礎資料の説明をお願いしたが,事務局から市の財政についての補足説明をお願いしたい。

 

事務局(前葉政策企画室参事)

  ――(関連冊子「京都市財政のあらまし」について説明)――

 

(4) テーマ別討論「文化について」

吉田部会長

  それでは本日のテーマ別討論に入っていきたい。本日は「文化」ということで,京都市の文化行政に対する取組の状況や今後の課題等について,事務局から資料を説明していただいた後意見交換に入りたい。

 

事務局(坪倉文化市民局長)

  ――(資料3「「文化」の視点から新基本構想を考える」に基づき説明)――      

 

吉田部会長

  全国初の音楽高等学校というのはどういうものか。一種の単位制高校のようなものか。

 

事務局(人見政策企画室長)

  平成9年4月に市立芸大の隣接地に公立の音楽高等学校を開校した。

 

吉田部会長

  資料では建物とイベントの話が書いてあるが,中身の話がなく,また,市の中にある既存の仕組みとの関連がよく分からない。

  ハコをつくるのは簡単だが,中身をつくるのは大変だ。京都にはコンサートホールより前に交響楽団があったのは立派で,全国で数千という音楽堂ができても,オーケストラのあるまちはほとんどない。

  京響の歴史は古いのか。楽団員は市の職員だと聞くが,給与はどうなっているのか。

 

事務局(坪倉文化市民局長)

  職員の身分は嘱託になっており,市職員に準じた給与体系になっている。自由に能力を発揮してもらうということから,嘱託という制度を採っている。

 

事務局(石野文化部長)

  京響は昭和31年4月の創設で,設立後40年になる。

 

伊住委員

  行政の基本構想だから,いろんなところに配慮して総花的になってしまうのは仕方がない。最初に財政事情の話を聴いてしまうと,何もできないと釘を刺されているようだ。

  京都まつりや映画祭,デジタル・アーカイブなどにかかわっているが,行政はどこまで責任を持つのか。今の状況を見ていると,フレームワークはつくったので後は勝手にしなさい,という印象を受けるが,それではなかなか滑り出さない。

  また,最終的には資源をうまく使ったソフトビジネスとしてお金を回収していかないと,京都の財政も豊かにならない。京都から事業を興すことに力を入れていかなければならない。文化産業や文化事業という言い方をするが,京都の伝統文化のほとんどは衰退し切っている。どの事業もフレームワークはやりましたというだけで終わってしまうのではないか。たくさん項目をつくる目くばりもいいが,ここに力を入れておけばここまでの発展性があるというように,どこまで広がりがあるかを想定しながら議論していかなければならない。

 

事務局(坪倉文化市民局長)

  京都まつりには多数の市民に参加をいただいており,将来的には市民の方々に計画を立案し実施していただく,市民の手でつくっていただくという方向付けをしているが,現在そこまで至っていない。

  ハコものについては,現在,元明倫小学校を活用し,京都芸術センターを計画中で,制作や発表の場とするとともに,京都の芸術文化活動の情報を全国的に発信し,さらに若手芸術家や研究者が議論をかわし共同作品をつくる場とすることを考えている。特に運営方法が従来と違い,京都市と芸術家,さらに市民とのパートナーシップを基本的な考え方としている。

  京都市芸術文化振興計画の柱として,1つは芸術文化委員会の設置,庁内振興会議の設定,さらには京都芸術センターの設立,芸術活動の支援策を考えている。

 

吉田部会長

  公的部門がインフラを持ち,中身は民間がどうぞご勝手にというのは基本的発想だと思うが,一方で民間のいろんな資源があり,市民がそのインフラを上手に使えないとか,民間の文化資源と公的部門のインフラがうまくマッチングしていないために,せっかくつくっても効率が悪いということがけっこうあるのではないか。その間のコーディネーションをどうするか。パートナーシップという言い方をされたが,委員会をつくってやるのはあまり効率的ではない。

 

上平委員

  行政がどれだけ芸術文化振興をやれるかという問題で,基本的には芸術家や市民が芸術文化を自分の問題としてとらえなければいけない。芸術は自発性,創造性,主体性が起動力とならなければ動き出さない。行政としてできることは,場の提供など触発する状況設定をしていくことで,行政が文化をつくることはありえない。つくるのは主人公である市民自身であるべきだ。

  先般,芸術文化協会で「低成長下における文化のあり方」をテーマに座談をした。京都はさまざまな文化が共生する知恵を持っている。それぞれの異分野が交流し,触発し,刺激し合うという意味で,祭りやイベントは直接的交流の仕掛けになるのではないかという話をした。行政がやるべきことは起爆剤を仕掛けることだ。

 

吉田部会長

  主は民間だから,基盤整備を公的部門がすることになる。問題はそれをうまくコーディネートできるかどうか,市が本当に必要なものをつくっているのかどうかだ。同じ設備をつくるなら,もう少し京都の資源を生かせるものをつくるべきだ。

 

坂上委員

  ハコものの話と関連するが,東京への一極集中を是正する観点から首都機能の移転が言われ,候補地の選択が進んでいる。数年前に例えば文化庁を京都にという話があったが,それは立ち消えになっている。ハコものを持ってくるのは難しいが,学術と文化に関連したソフト,イベントやセレモニーの類を京都でできないかと思う。

  例えば,国家的祭事として学士院賞や芸術選奨の授与など,いろいろ学術文化に関連したセレモニーがあるが,現在はすべて東京で行われている。こういうものを部分的にでも京都に持ってくることで,文化首都の役割が果たせる。今より積極的に文化首都の建設という方向が打ち出せるのではないか。

  もう1点は,文化・観光・産業部会を横に貫くものとして,情報発信があると思う。現在文化に関する情報のほとんどは東京発で,東京の切り口,東京から見た京都文化になっている。京都から発信する,京都の切り口での情報発信が必要になるのではないか。その点ではジャーナリズムの責任もある。今後情報発信は例えば衛星放送といった形で発展していくと思うが,ソフトづくりに関しては京都が主体となってやるべきだ。そういう意味で,今回のデジタル・アーカイブ構想のスタートは望ましい方向だと考えている。

 

竹村委員

  ハードよりソフトを大事にするということで,市民1人ひとりが観光で来られた方に対しておこしやすと心から歓迎するという,ソフトの部分が大切だと思う。

  横浜の住宅地域に障害者の通園施設をつくるとき,住民の反対があったが,心を動かすことが文化であって,全面介護の子供たちは一生懸命生きることで文化をつくり出しているのだということを関係者が住民1人ひとりに説いてまわった。今では住民が給食ボランティアや送迎ボランティアとして施設を支え,施設の多目的ホールで絵画や音楽などを楽しんでいる。文化は心を感動させ,生活を豊かにする,人を成熟させるもとであり,基本になっているのは心のふれあいだと思う。京都市民の心のふれあい,一緒になって頑張るんだというような,行政とか委員会とか,上からのものでない啓蒙が大事ではないか。 

 具体的には,京都市の南部にスポーツセンターをつくって若い人を取り入れるとか,京都市が全世界に京都市をアピールするコマーシャルをTVやインターネットでどんどん流すことも大事だと思う。

 

吉田部会長

  京都市のコマーシャルはどんなものをやっているのか。

 

事務局(坪倉文化市民局長)

  文化市民局関係分だけで言えば,現在「情報網洛中洛外」,ホームページの京都市情報館を活用していろんな情報を流している。

 

吉田部会長

  役所のものは見栄えは良くても知りたいことは書いていない。企業などは儲けたいポイントだけコマーシャルすればいいが,行政はすべての人の多様な欲求に同時に応えようとするから難しい。

 

三谷委員

  文化施設については,文化の共有の場をいかにつくるかということに尽きる。京都は金を払わないと見られない都市だ。以前日曜にブリティッシュ・ミュージアムに行ったとき無料だった。上野の美術館や東京現代美術館も65歳以上という条件付きで無料の日があった。京都でも二条城や植物園など高齢者が無料になっている施設はあるが,文化の共有ということでは,もう少しそういうことを考えるべきだ。

  京都には小さな似たような施設がたくさんあって,どこに何があるか,どういう性格のものかよく分からない。ああいうものを統合して便利な場所にまとめてはどうか。新しいものをつくるのではなく既存のものを見直し,整理しないと,よそから来た人ばかりか京都の人間でもよく分からない。専門家でない人にも分かる姿にしないと,文化の共有はできない。

 

事務局(坪倉文化市民局長)

  文化・スポーツ施設の利用料については,動物園は小学生以下を無料にするとか,敬老乗車証を持った人や障害者の方々には,様々な施設で無料にしているが,その他の人には応分の負担をお願いしている。

  博物館や美術館を1ヵ所に集めるのは,それぞれの設置経過が異なるので非常に難しい。市としてはむしろネットワーク化を図っていくことが大切だと考えている。

 

吉田部会長

  経済学ではラムゼイ・プライシングということが言われるが,簡単に言うと,よく使うものは値段を高くし,使わないものは安くする,混んでいるものは高くし,空いているものは安くする。そういう意味では,日曜日に入館料をたくさんとって,平日は無料にするというのが経済効率がいいことになる。

 

古川委員

  2点ほど申し上げたい。かつて京都は日本画において文化都市であった。行政の指導力によってそうするのは至難の業で,自然発生的になるべくしてなることだが,せっかく文化・観光・産業というコンビネーションで,将来にわたって大きな観点から考えるというのであれば,そういう考えがあるのかどうか。

  もう1点は,市美術館や近代美術館,資料館,京大や工繊大など,それぞれの施設が膨大な名作を所蔵している。現在は各自が独自で展示の計画をしているが,文化・観光ということではそれらの有機的なネットワークで総合的な展示をしてはどうか。

 

吉田部会長

  今までの意見に共通するのは,京都にはたくさん文化の資源があるが,それが生かされていないのではないかということだ。ハード・インフラはつくってもソフト・インフラをつくらないから,どこに何があるか分からないし,どう使えばいいのか分からなかったり,ハード・インフラと民間でやっている活動がうまくマッチングしないといった問題が起こってくる。

 

中村委員

  京都にたくさんある文化財と市民がどう遊ぶかが課題ではないか。市民がそれらを楽しむことによって新しい文化が生まれてくると思う。近年は作家や個人が主体になっていて,作り手の議論ばかりが多く,つくったものを楽しむほうの使い手の議論が少ない。私がつくっているものは千家などお茶をやっている人が楽しむために注文してこられるもので,京都の美術工芸はそうやって育ってきた。もっと市民に遊びや集いを奮い起こすような仕掛けが必要ではないか。

  市民がその気になれば,京都はいろいろな発見があるところで,町名だけでも歴史を語っている。町内だけでも市民の手で歴史が描き出せる。そういうものが積み重なっていくと,京都のまちはもっと歴史的に,深い楽しみができると思う。

  地方都市に行くと,そこに住む人たちが中央から離れるほど時間をたくさん持ち,文化を楽しんでいる。右肩下がりになっている現在,京都が昔楽しんだような楽しみ方ができるのではないか。トルコに旅行した際,スプーンを打ち鳴らして踊る文化がある地域で,観光客が史跡で現地の人と一緒にスプーンを打ち鳴らして踊った。そういう楽しみ方はちょっとしたきっかけ,市民の思いでできる。

  京都にはまだ反骨の精神がある。江戸時代に幕府が江戸に移り,光悦や光琳が京都で,政治権力から離れて自由な制作活動をしたことを思えば,現在もっと京都の人は中央のことを考えず,自由にものをつくり,新しい面白い遊び方を考えられるのではないか。

 

吉田部会長

  伝統的な遊びは昔は賃金が安かったから可能だったが,今は高くて普通の人にはとてもアクセスできない。需要が下がるのでやる人がなくなるという悪循環に陥っているように思う。通常経済では必要なものには高い値段がつくが,文化の場合果たしてそれでいいのか。

 

中村委員

  お茶などは個人の財産を楽しむわけではなく,皆と一緒でなければ楽しめない。共有して楽しめる方法が何かあるのではないか。

 

吉田部会長

  今まではトラディショナルな文化の議論が中心だったが,シアター1200などを含めて,新しい分野の文化をどう取り入れていくかについて京都ではあまり議論が盛んでないような気がする。

 

川原委員

  京都まつりは市民の祭をつくろうということで建都1200年を機に始められ,企業や市民が参加してやっている。4大祭になるには 100年かかるか50年かかるか分からないが,続けていればそうなっていくと思う。

  実際に京都まつりに参加していて感じるのは,行政はフレームをつくるだけだという話があったが,そのつくり方も不親切だということだ。各地に無形文化財として祇園祭があり,立派な鉾が保存されているが,九州から京都に来てもらうのに,解体や組立て運搬などで膨大な費用がかかった。ハコものをつくるにしてももっと知恵を使ってはどうか。

  例えば,京都市長が全国に呼びかけ,各地の無形文化財が京都まつりに加わる意義を説き,京都市の財政状況を説明して,協賛して来てもらう。祭りが盛大になれば集まってくる人も増えるので,各地の文化財にとっても京都に来ることに意味がある。これには府市の協調の問題もあり,知事から知事へ協力を頼むなど府ももっと協力すべきだ。

 

吉田部会長

  結局,財産があるけれども十分に働いていない。またそれを軸にしていろいろ呼び込めばいいということだが,それを市の仕事としてどうしていけばいいのか。京都には各地域に地元の祭りがあるが,そういうものをどう活用していくか。

  情報発信するにしても,インフラをつくるのが民間でできないとすれば行政にやってもらわなければならない。情報が1ヵ所で分かるようにし,まとめて世界に発信して遊びに来てもらえるようにする。情報インフラをつくるのは大変だ。行政の中で問題なのは職員のローテーションで,こういう分野に入る人は一生それだけをやるほうがいいのではないか。2年のローテーションでは,やっと分かった頃には転勤ということになる。ただ文化ボスにならないように工夫が必要だ。

  また,外国では博物館や美術館に学芸員がいて説明してくれるが,日本ではそういうことがない。京都市だけでなくソフトに対する投資はどこも小さい。ボランティアで活動している人たちのネットワークもない。ネットワークをつくるにはコストがかかるので,それを市がやるのも1つの方法だと思う。

 

中谷委員 

  ハコものをつくっていくことには,行政が糸口をなすということと,市民の最低限の文化を育てていくという二つの面がある。文化会館や体育施設を市民の要望に応じて各地につくってきたが,それについては市民に十分利用いただいている。

  文化は生活のうるおいやゆとりになるものだが,利用しやすいものにしなければならない。京響の公演は4千円くらいだが,南座の顔見世のように2万5千円程度となるとなかなか行けない。そういう点である程度行政の支援が必要だと思う。

  京響も財政が厳しいときにはやめてはどうかという話もあった。しかし,市民需要からは離れた分野であっても,支援してくれる人がいたので今日がある。今ある最低の需要に応えることと同時に,今の市民需要からかけ離れていても2025年にはこういうものがいるのではないかということを考えてほしい。特に都市特性を打ち出すという意味では,京都市の場合いちばん強い都市特性は文化ではないかと思う。

 

吉田部会長

  ウィーンでも演奏会の料金はけっこう高い。南座には2万5千円でも観に行くわけで,高いと行かないなら安くすればいいのか,行かないものはやめてしまえばいいのか,その辺りが難しい。

  ウィーンの場合は,コンサートホールやオペラ座もあるが,多くの演奏会が宮殿や教会で催されている。京都にはたくさんの寺があるのだから,それを活用すればお金をかけずにできる方法があると思う。

  問題は,行きたいと思うような面白いものをどうやってつくるかで,行政がつくることができないならどう仕組んでいくかだ。そういう意味では音楽学校をつくったのはいいと思う。教育機関をつくって全国から若い人を集めるのは,行政にできるプラスになる話だ。

  行政と民間のコーディネーションということでは,行政のやるべきところであまり金をかけずに,もっと必要なものをつくる仕組みをつくれないか。情報インフラ的なものをお金をかけずにつくる方法がないかを探ってみても面白いのではないか。

 

伊住委員

  文化・観光・産業ということだが,それぞれのテーマで議論するだけでなく,それらを串刺しにするものがないと議論が散漫になってしまう。そういうテーマやキーワードをみつけることが大事だと思う。そこで,情報でこれからの時代は食っていこうではないかということだが,情報化時代には情報の編集の仕方が大事になる。

  ライバルが増えてきているせいもあり,近年は国際会議の誘致も難しくなっているが,京都は情報発信しているようでしていないのではないか。雑誌媒体などで京都らしい京都のイメージは大量に出ており,そのイメージを守り続けなければならない使命感があるが,一方で町並みは悪くなってきており,もてなしする人の心もつながっていない。

  どういう情報やイメージを発信していけばいいのか,もう少し内部で議論すべきだ。国際会議の誘致にもそれが大事だと思う。国内だけでなくアジアにライバルが増えてきており,行政にひっぱってもらいながら,受皿としての産業,市民というレベルでの新しいイメージを発信していかなければならない。従来型の古い都のイメージを守り続けることが大事なのか,それもあるけれども,新しいどんなキーワード,イメージ,言葉,機能があるのか,もう少し選んでいく必要がある。発信する前に内部でよく揉んでおく必要があるのではないか。

 

吉田部会長

  発信と言ったとき,新しい資源をつくることと新しい手段をつくることの両方の問題があると思うが,それを市にやってもらうのが適当かどうか。そういうことが得意でない人が市の職員になっていて,むしろ民間の人のほうが才能があるのであれば,民間でどういう仕組みをつくっていくか。市にお願いして新しい京都市のイメージをつくると,また委員会をつくってあちこち角をとったまんまるなものができて,面白くないものになる。これは公的部門の宿命のようなものだ。

 一方で,手段のほうも予算がないのでできないということになる。例えば京都と東京の間に情報ハイウェイ,専用回線をつくって,行政通信にアクセスすれば通話料を無料にするといったことを言っても,予算がつかない。そういうところをどう形づくっていくか。

  新しいコンセプトやイメージをつくる人,伝達する人の基本は民間になるが,私的部門と公的部門がつながっていないことが問題だ。資源を生かし切れず,新しい動きをつくり出せていないという問題をどう解決していくか。ヨーロッパが文化的に発展しているのは,王様のポケットマネーでやっているからで,公的部門がやるとどうしても面白くないものになる。民間がつくっていくものを行政がどうサポートするかということではないか。

 

三谷委員

  外国は比較にならないほどスケールが大きい。特に大学の施設など,カナダでも韓国でも非常に立派なのでびっくりした。文化的なものにお金をかけないのは,現代日本の特色ではないか。

  分散してちょこちょこものをつくっても立派なものはできない。21世紀に向かって若い人のために残すとすれば,人がびっくりするような大きなものを便利な場所につくるべきだ。今便利な場所でなくても,将来交通機関との関係で必ず便利になる場所を選んでつくるべきだ。

  京都は景観の関係で北の方には高層の建物の建築が制限されているが,地下利用をもっと考えてはどうか。ハーバード大学のグラウンドは地下にあるそうだが,日本では地下というと駐車場程度しかなく発想が貧困だ。もう少し長い目で見て,他国のやっていることに学ぶべきだ。スケールの大きいものをつくることと,利用できる場所をもっと利用することを考えなければならない。

  京都は狭いまちでありながら不便で,観光シーズンになると動きがとれなくなるにもかかわらず,交通規制も考えられていない。総合的に考えないとうまくいかないと強く感じる。

 

吉田部会長

  行政の文化的な投資を効率化していかないと,世界に通じる水準のものにはなかなかならない。これはジレンマで,文化は住民のものだから住民がアクセスしやすくするか,水準を高くするために集中するかということになり,トレードオフの関係になる。

 

上平委員

  21世紀の将来を考えると,若手育成が何よりも優先すべきことではないか。次の時代を担う芸術家を育てていく必要がある。つくり手と使い手の話があったが,つくることと鑑賞享受の両方があって芸術文化は成り立つ。新たな芸術文化の担い手の育成は,今やらなければならない焦眉の課題で,伝統と新しい力の育成をタイアップさせていくことが京都らしい重要な点だと思う。

  文化には広い意味では学術も含まれるが,大学のまち交流センターや芸術センターの構想を強力に推進していただきたい。芸術の場合はつくり手と受け手の出会いの場が大事で,それが刺激になって新しいものが育っていく。ハコものでは発表の場についても考えてほしい。

  各地域に文化施設ができることも必要だが,1つのゾーンの中にレベルの高い芸術を市民が鑑賞享受できる立派な施設をつくっていただきたい。その意味で岡崎は1つの有力な場所だと思う。

 

吉田部会長

  世界では現在の産業振興の方向は,大学をつくって技術開発や文化開発をして産業の核にしていくことにある。そのわりに,京都は学生を大事にしていない。せっかく学生を集めていても活用していないし,行き場もつくっていないのは,大きな問題だ。

  本日のご議論では,情報インフラの形成,官と民とのコーディネーションの問題,分散と集中の問題,ネットワークの活用といった議論が出た。どちらかというと今まではつくらなければならないものを中心にやってきたが,それらがほぼできたと考えれば,これからは立派なソースができ,それが世界に発信される仕組みをどう官民でつくっていくかということに話は尽きるのではないか。

  次回は1月13日の開催予定となっている。よろしくお願いしたい。

 

 

4 閉 会

 

 

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