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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第11回 文化・観光・産業部会

ページ番号35877

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第11回 文化・観光・産業部会

日 時 : 平成12年8月25日(金) 午後2時~4時30分

 

場 所 : 都ホテル「愛宕の間」

 

議 事 :

(1) 京都市基本計画素案について     

(2) その他

 

出席者 : 

内田 昌一(京都市中央卸売市場協会会長) 

坂上 守男(京都市観光協会会長) 

竹村 寿子(市民公募委員) 

武邑 光裕(東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授)

○橋爪 紳也(伏見区基本計画策定懇談会座長,大阪市立大学文学部助教授) 

三谷 章(市民公募委員) 

村井 康彦(上京区基本計画策定懇談会座長,京都市歴史資料館長) 

山上 徹(同志社女子大学現代社会学部教授)

◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授) 

高木 壽一(京都市副市長)                               

 

以上10名

◎…部会長     (50音順/敬称略)

○…副部会長

 

 

1 開 会

吉田部会長

  第11回「文化・観光・産業」部会を開会させていただく。

 

 

2 議 事

(1) 京都市基本計画素案について

吉田部会長

  本日は京都市基本計画素案についてご審議いただく。まず素案の位置付けについて説明したい。この素案は5つの部会での検討結果を持ち寄って調整委員会で作成したものであり,今後の各部会でのご議論,パブリックコメントでいただく市民のご意見を踏まえて,調整委員会で「基本計画第1次案」を作成することになる。その後さらに必要に応じて修正を加えて,年内に市長に答申することを想定している。この素案の位置付けは第1次案作成に向けてのたたき台であるとご理解いただきたい。

  引き続き,素案について当部会とかかわりの深い部分を簡単に説明したい。目次をご覧いただくと分かるように,信頼をキーワードにした行政と市民のパートナーシップという基本構想の考え方を軸にして,従来のような行政分野別の縦割りでない横断的な構成となっている。

 ――(資料1「京都市基本計画素案」に基づき説明)――

 議論の前に3つの視点について改めてお願いしておきたい。

  1つ目は「スクラップアンドビルドの考え方に基づく政策の取捨選択」という視点である。京都市の財政見通しは他都市と比較してもたいへん厳しく,調整委員会では「お金がないというところから議論を始めるべきではない」「法定外目的税を設けるなど積極的な議論をすべき」「予算配分のメリハリをつけるべき」といった意見があった。新たに取り組んだり継続して取り組む政策だけでなく,撤退すべき分野についてもご議論いただきたい。

  2つ目は21世紀の計画であり,しくみや制度のあり方まで踏み込んで議論していただきたい。前例にとらわれない大胆な政策の立案を今回の計画の特徴にしたい。これまでは基本的考え方についてご議論いただいてきたが,実施に当たってどういうしくみが必要かを既存の枠組みを超えた大胆な発想で議論いただきたい。

  3つ目は「計画にメリハリをつけるための重点政策の抽出」という視点である。調整委員会でも「網羅的に政策を掲げた素案を基にして,何を重点に取り組むのかを議論すべき」,「基本構想にある「信頼の構築」や新たな市民生活の理想を世界に先駆けて見出し実現していくという文章に対する具体的な答えを提示すべき」といった意見が出ており,それも踏まえてご議論いただきたい。

 

山上委員

  本部会は特に第2章に関係していると思われるが,先日『東洋経済』に21世紀は観光が基幹産業となるので,京都市でも観光をさらに振興したいという京都市長の発言が掲載されていた。目次を見ると観光という言葉はないが,「魅力」という言葉が多用されている。第1節2の「奥深い魅力」とはどういうことかよく分からない。第2節はかなり具体的だが,第1節は分かりにくいので,第1節と第2節を逆にしてはどうか。また,「~づくり」という言葉が多用されており,ハードとソフトが使い分けられているのだと思うが,違いが分かりにくい。

 

吉田部会長

  本部会ではこれまで資源はあるのだからそれをうまくネットワークしてはどうかという議論がされた。それを「~づくり」という表現にしているのだと思うが,誰がどうつくるのかが具体的に分かるようにすべきだ。

  「魅力」という言葉が多いのは,逆に言えば魅力がなくなってきたことを示しており,鼓舞する意味で多用されているのではないか。ユーザーの立場からの魅力ということを京都の人は忘れているのではないかという批判はあると思う。言葉の使い方については今後調整委員会で考えたい。

 

坂上委員

  観光については,第2章第1節2で観光都市・京都の直面している問題について網羅的に示されており,たいへん結構だと思う。京都市の観光振興計画の中にも謳われているが,(4)「京都をあげての観光振興推進体制の確立」が基本になるのではないか。各界各層の代表者に参加してもらい,観光に関する推進体制を早期につくることが大事だ。京都市では市長が観光客5千万人という目標を掲げ,市役所に市長を委員長とする推進機構が発足しているが,そうした取組を各界に広げていくべきだ。

  (1)で観光資源の有効活用について書かれているが,「平成女鉾」の問題など,長年の伝統に支えられているセレモニーと,時代にあった新しいイベントが相克関係にあってうまく進まない部分がある。こうした問題について現場で相互理解できるようにしていかなければならない。

  広域観光については,京阪神,京滋奈という考え方もあれば,松江,金沢,京都といったネットワークもある。それらを多角的に取り上げていただきたい。観光客には行政のテリトリーは関係ない。各県の代表者が接触を密にして共同で推進していく体制づくりが大事だ。

  それと関連して,京都と大阪で国際会議の取り合いをしているところがあるが,首都圏に対抗して関西に国際会議を誘致するためには,少なくとも京阪神でコンベンション・ビューローを一体化し,共同で誘致を進め,それぞれの機能に応じて分担していく体制づくりが必要ではないか。

  観光というよりは文化に関する問題だが,最近首都機能の移転に関して,文化庁を京都にという議論がある。実際に文化庁を京都に持ってくるのは困難なので,学術,文化,芸術に関する国家的セレモニーやイベントを京都に持ってきて,少なくともソフト面で京都が文化首都の役割を果たすようにすべきだ。ハードの観光資源については,人気の高い御所や離宮の一般公開の機会を増やし,拝観を容易にする努力をしていただきたい。

 

吉田部会長

  広域連携については,機構的には関西広域連携協議会が提案して推進機構をつくることになると思う。基本計画に関西広域連携協議会に協力してもらうことを書いたほうがいい。関西広域連携協議会に京都市が協力すると明記することが得策かどうかは分からないが,計画に挙げることによって京都が関西のリーダーシップをとっていく姿勢を示したほうがいいかもしれない。

  他方で,京都市内の推進機構を1つにしなければならないということは常に言われており,市役所内に設置された組織を軸に推進すると書いておいたらいいのではないか。また,御所の公開だけでなく,寺社の秘仏などを見せる機会が増えれば観光資源になる。

 

産業観光局(西口局長)

  ご指摘のような事業項目は今回の素案ではこの部分に該当すると思う。この6月に市長をキャップに関係局長をメンバーとした庁内組織を設置し,観光客にとって利便性の高いものは市民にとっても利便性が高いという視点から既存の行政の見直しに取り組んでおり,それは記述していただいていいのではないか。

 

吉田部会長

  首都機能的なものがどこまで京都で分担できるか分からないが,国際的な観光サミットを開いて日本や世界の観光行政の指針を打ち上げることも重要だ。

 

坂上委員

  文化庁を京都に持ってくるのは困難だと思うので,学士院賞など学術,文化,芸術関係の国家行事を京都で行い,一般市民に公開することを考えてはどうか。

 

吉田部会長

  京都市として中央省庁分散に関しての情報は持っておられるのか。

 

事務局(星川総合企画局長)

  先の総選挙の際に文化庁や中小企業庁など本省の外局を各地域に移して,日本全体の均衡ある発展を図ってはどうかという構想が打ち出され,新内閣のミレニアムの政策にも示されている。国政レベルでの取組はされると思うが,市の基本計画にどこまで書き込むかについては慎重に対応すべきだ。

 

吉田部会長

  国の行事を京都市でやってほしいと市の基本計画の中に書き込むのは難しいので,国の行事を誘致することになる。観光や文化,芸術に関するCOP3のような国際的行事を誘致するということを柱に書き込むことは重要だ。

 

内田委員

  素案を読んで感じたことを2つ申し上げたい。スポーツに関連して,第1章第2節3(6)「スポーツ活動の機会や施設に恵まれたまちづくり」の部分に書いてある施策がそれぞれ実現できればいい。京都市は5大都市の中で最もスポーツ施設が貧弱な都市ではないかと思う。財政の問題があるので言いにくいが,イ(エ)の「全天候型運動施設」については近年各地に立派な施設ができており,「整備」ではなく「建設」として,積極的に取り組んでいただきたい。

  観光と京都の食文化はたいへん関連が深い。京料理や京のおばんざいなども京の食文化であり,基本計画にぜひ「食文化会館の建設」を盛り込んでいただきたい。京都には古い料理屋がたくさんあるが,後継者がいないために廃業して,老舗に伝わる秘伝書が散逸してしまうことも多いと聞く。食文化センターでそうした秘伝書を収集保存し,京都の食の歴史が分かるような取組ができればいい。

 

吉田部会長

  建物はともかく,後継者育成や技術継承について把握できる場がないのは問題だ。予算の関係もあり,施設をつくると明記するかどうかは市としての判断があると思うが,食文化に関して観光協会に相当するものをつくることを考えてはどうか。「温かく迎える」という意味では,京料理だけでなくお茶なども含めて,総合的にフォローするセンターをつくるべき時期ではないか。

 

産業観光局(西口局長)

  伝統文化産業の中の非食品については,消費者にPRし,歴史に触れてもらえる京都市の施設としてふれあい館があるが,食についてはない。

 

吉田部会長

  建物も含めて,食文化センターをつくっていくことを柱にすべきだ。

 

竹村委員

  和装産業の低迷にともない町家が壊され3階建ての家に建て替わっているが,それによって子どものいる家庭が増えて町内の活気が増すといういい面もある。京都市としては町家を残すつもりなのか,新しい家に建て替わってもいいと考えているのか。若い人の感性や能力を引き出すために町家を利用し,IT関係でも芸術や伝統産業でもいいから,地場産業に代わるクリエイティブな生産活動をしてもらってはどうか。今は若い人が町家に入ろうとしても,家賃が高く修理が必要であるなど,経済面で二の足を踏む面がある。京都市としても地場産業や町家に関する施策として,場合によっては府と協調して家賃補助や修理費用補助をしてはどうか。

 

吉田部会長

  町家の保護については第1章第3節3(1)エ(イ)に「京町家再生プラン」が挙がっているが,これを産業のところに再掲して,産業や若者の活躍の場に町家を使うということを書いてはどうか。

 

三谷委員

  ディズニーランドが成功している理由はリピーターを創生する力にある。リピーターを獲得するために京都は何をすればいいのかが課題で,もう一度京都に行ってみたいと思わせるためには,新しい京都の見方を提案するシステムが必要だ。例えば,五山の送り火にしても,通常のように正面から平面的に見るのではなく,横から見れば煙や炎の上がる様子や火が消されていく様子が立体的に観察できる。また,送り火の中では鳥居型だけが広沢の池に映るそうだが,そうした珍しい姿をうまくPRすることで二度三度と京都に行ってみようという人が出てくる。第2章第1節2(3)か(4)に入れるといいと思うが,「観光客を温かく迎える」ということを広い目でとらえ,違った見方を教えるシステムが必要だ。落柿舎にしても観光客は立て札だけ読んで帰っているが,『嵯峨日記』にどう書かれているとか,もともとは別の場所にあったといったプラスアルファの情報を提供することで,「次はあそこを見に行こう」と思ってもらえる状況をつくるべきだ。

 

吉田部会長

  これまでにも京都に来る人にはプロ級の知識を持った人が増えており,水準の高いインフォメーションを提供するしくみをつくっておかなければならないという議論をした。第2章第1節2(2)アに「情報技術(IT)の活用等観光情報の発信」とあるが,発信する情報の内容の水準を高める必要がある。

 

坂上委員

  観光情報の発信については,現状では行政,観光協会,観光連盟,新聞社などがそれぞれホームページをつくって取り組んでいるが,これを一元化して,強力で内容のある情報を発信すべきだ。

 

吉田部会長

  プロ級の情報は専門家につくってもらわなければならない。また,専門的な知識を得たいと考えている人にどうやってそうしたホームページにアクセスさせるかは難しい。

 

三谷委員

  季節に応じて説明が異なるような資料があればいい。資料館で見られる映像情報などを現場で見られるようにできないか。

 

村井康彦委員

  京都市の歴史博物館づくりに関連して,フィールド・ミュージアムの観点から地域の文化財や観光地をどう発掘するかを議論しているが,行政区別の議論はどのような形で基本計画に入ることになるのか。

 

吉田部会長

  第1次案を作成する段階で本日の議論やパブリックコメント,他部会での意見などをまとめて入れることになる。とりあえず今までの部会での議論は何らかの形で入っていると思うが,不十分な点はご指摘いただきたい。

 

村井康彦委員

  各部会からの意見が吸い上げられ,こういう形でまとまっていることは分かる。構想作成時にも「華やぎ」や「安らぎ」といった言葉でいい面だけが取り上げられ,京都市の抱える深刻な問題が取り上げられていないという意見を申し上げたが,この素案も同様だと思う。上京区の懇話会では西陣の話題になると絶望的な雰囲気になる。この素案ではジャンルごとに一般化された理想的なあり方だけが書かれており,どうするかという具体的なプランもうまくまとまってはいるが,これらをどのような形で各部局が取り上げ,具体的に個別の問題にどう取り組んでいくのかが分からない。この素案は京都市としてのグローバル・スタンダードの形で書かれており,どの都市でも通用するようなものになりかねない。区別の問題を取り上げることによって重点化,個別化していくことになるが,そういう意味で地域的な問題を取り上げるべきだ。例えば,上京区は思いのほか若者人口は多いのだが,その多くは学生であり,地域の住民であってそうでない曖昧な存在である学生を地域の活性化にどう取り込むか,あるいは取り込む必要はないのかが議論されている。学生や若者は抽象的存在としてあるのではない。また,大学は現在定員を確保できないという厳しい状況にあり,実際に学生を教えている立場としては,第2章第1節3に書かれているようなハイレベルの話にはなかなか達しないと感じる。

  最近は各大学で京都学や京都文化論を取り上げているが,個別の大学が地域社会とかかわり,地域を理解し,地元に還元していく形での地域文化の掘り起こしが必要で,その成果はフィールド・ミュージアムにも生かせるのではないか。新しいシステムをつくる方向については異論はないが,大学についても,もう少し各大学の地域に根ざした活動を援助できる方向はないのか。

 

吉田部会長

  基本構想で書かれていた文明の危機感が,基本計画では抜けている。どういう書き方をするかは難しいが,調整委員会で問題提起したい。京都市としてはどのように考えているのか。

 

事務局(星川総合企画局長)

  調整委員会での議論次第だが,基本計画の最初に書くのも1つの方法だと思う。現状と課題がはっきりしていないと,なぜこういう取組をするかが市民に分かりにくいので,各章ごとに現状と課題をデータなどを入れて押さえるのもいいのではないかと思う。

 

吉田部会長

  商工会議所の産業振興ビジョンでは厳しい現状を踏まえて,不可避なところと対応できることを分ける書き方にした。だめなところを支えるのであれば全力で支えなければならないが,全部を支えることはできない。それにどう対応するかということを基本計画で書く必要があるのかどうか。

  第3章で区ベースで行政を進めていくことが書かれているが,村井委員のご意見は京都市域内の地域問題を前面に出したほうがいい,例えば,節の次のレベルの項目に区を置いてはどうかということか。

 

村井康彦委員

  京都市における分権化とは,区に主体を移していくということなのか,いきなり市民に移すのか。区の役割が今後どうなっていくかということが分からないが,そのことが同時に地域の問題をどう解決していくかにつながるのではないか。

 

吉田部会長

  調整委員会でも区を市民とのパートナーシップの軸にしたいという議論はしているが,むしろ区分権を1つの節としてもいいのではないか。京都市の地方分権,市民と行政のよりよいパートナーシップのために,区の機能を強化するということだ。

 

文化市民局(中野局長)

  第3章第1節2(2),3(4),第2節2(4),第3節2(4)等の小項目で地方分権も含め,区が主体となり,なおかつ住民主体でやっていこうということが書かれている。また,第4節では評価まで含めて市民とともにやっていこうという書き方がされている。内容的には網羅されていると思うが,インパクトが足りないということではないか。

 

吉田部会長

  役割の強化や情報発信能力などについて書かれているが,もう少し主体的な表現が必要だ。調整委員会でも京都市から区に主体的役割を持たせたいという話があったが,まだ文章的にも概念的にも固まっていない。第3章については今後調整委員会で議論したい。

 

村井康彦委員

  ここにはやるべきことはすべて書いてあり,個々の答はよく書かれていると思うが,区や地域をどう位置づけるかという観点がない。

 

吉田部会長

  今までに調整委員会でも議論したが,区の位置づけを明らかにすることは重要だ。

  大学については,京都の大学だから安泰ということはありえない時代であり,京都市はもっと大学を応援してもらいたい。人口に比例してつぶれると大学数は2分の1になるかもしれない。人口を増やすことは不可能なので,他地域の大学をつぶして京都の大学だけが生き残るしかないが,そのために京都市としてどういう戦略がありうるのか。高さ制限等の法的規制はずいぶん緩和されたが,それも含めて,大学の戦略をどう市がサポートするかも柱として示しておく必要がある。

 

橋爪副部会長

  4点申し上げたい。1点目は観光を振興するということは書かれているが,観光を産業とみなし,きちんと定義して,いかにビジターズ・インダストリーを産業連関都市の中に位置づけるかという視点が全く抜け落ちている。観光にかかわる学科や専攻コースを京都の各大学がつくっているが,卒業生が就職する場が確保されないと人材は流出してしまう。「観光産業」とすると従来型になってしまうので,観光にかかわる何らかの産業の概念をどこかにきちんと記述していただきたい。

  2点目は,観光の分野で何らかの重点施策が必要だ。第2章第1節2(2)で戦略的マーケティングにより他の都市と違う方法論を持って,競争力をつけていくということを明記してほしい。他都市の観光施策を見ていても,例えばシンガポールには数百人規模のスタッフ,百億円規模の予算を持ったコンベンション&ツーリスト・ビューローがある。きちんとした誘致の戦略がないと,秘仏を開帳してもどこにも伝わらない。新しいツーリズムが京都から次々と提案されているという情報発信が必要で,それも含め広い意味で「世界から多くの人が集まる京都を目指す」ということを重点取組として掲げてもらいたい。それと関連して,第2章第2節2や3などに関西広域連携協議会との連携やイベントについて書かれているが,そういう従来は文化や国際交流の施策であったものを観光の施策として見直していくという部分が弱い。再掲すればいいのではなく,今まで観光とは関係ないと思われていた施策も,観光の視点から見直すと優先順位が上がるということが見えるように,観光の部分で記述していただき,それによって京都から新しいツーリズムを提案していく姿勢を示してほしい。

  3点目は,今後さまざまなエージェントができると思うが,PFIやNPOへの運営委託などとも関連して,財源の確保の仕方を各自治体がもっと工夫しなければならない。福祉にも観光産業を育てるためにも財源が必要だ。法定外目的税については第3章第2節2(3)にささやかに書かれているだけだが,財政にかかわる項目はもっと上位概念としてもいいのではないか。

  4点目は,重点施策の中に高度集積地区だけでなく,広い意味での南部地域のまちづくりを取り上げていただきたい。新たな産業集積としてだけでなく,伏見との連携ということでは観光や他の施策ともかかわってくる。南部で従来の京都と違う新しい京都をつくっていくということを重点的施策として取り上げてほしい。

 

吉田部会長

  本気でやるなら観光税を課さなければならない。大阪に負けないコンベンション・センターをつくり,世界中に事務所をおいて国際会議を誘致するつもりならば,観光業者から1%の売上税をとるくらいの腹をくくらなければならない。財源がないと他の観光都市との競争に勝てない。

 

橋爪副部会長

  アメリカでカジノをつくるときに,売上げの一部を福祉に使うとか,ベッド・タックスの一部を文化にまわすといったことがされている。使い道が問題だ。

 

山上委員

  すでにおこしやす委員会で検討されているかもしれないが,第2章第1節2(3)で,観光ボランティアやもてなしをする人材の育成を挙げておく必要がある。「迎える」というのは玄関口で迎えるだけという印象があるが,全日程を温かくもてなさないとリピーターになってもらえない。「送る」ことも大切だ。ここでは「迎える」という言葉を使わず,「温かくもてなすしくみづくり」としてはどうか。

 

武邑委員

  外野の視点から感想を述べたい。文化や観光はかつての工業社会や伝統的な経済を牽引してきた産業に取って代わるものであり,文化や観光が新しい産業をつくり出すという観点に立つと,この部会のアプローチは京都の未来を創出していくために非常に重要だ。最近の地方自治体のこうした計画では2ページに一度くらいは「IT」という言葉が入っているが,この素案にはITという言葉があまり出てこないのでほっとした。ただ,ここには京都の観光や文化を経済や産業の視点でどう捉えるのかという視点が欠落している。文化は経済や商業ではないという考え方が古くからあるが,文化や観光が次世紀における大きな産業資源であるということは京都がもっと認識すべき点ではないか。京都が観光の魅力を失いつつあるのは,外から求めているものと内から提供しているものとのギャップが生じているからだと思う。外側の視点に立ち,世界や他県の人が京都に何を求めているのかを具体的に抽出し,京都の文化資源の価値を再点検する必要がある。現在,科学技術庁で日本の無形の文化資源を総点検する作業に取り組んでいるが,伝統として残っている文化だけでなく,日本がこの百年でどんな文化を失ってしまったかを主眼にしようとしている。失われてしまったものが次世紀に復元され回復される可能性もあり,そのためには何が失われたかをきちんと記録しておかなければならない。

  大学のまち交流センターにデジタルアーカイブ研究センターが入るが,京都の玄関にIT環境の中で世界をつなげていくハブ機能を持った情報拠点ができることになる。地域情報の発信,分権改革と地方自治の確立,地域文化のアイデンティティ確立のための手法として,デジタルアーカイブは全国的な注目を集めており,情報技術は観光客や住民に対して情報アクセスを提供し,多様なコミュニティや文化を認め合っていくための手段として位置づけられている。今はいろんな機関がホームページを持って京都の観光情報を世界に発信しているが,分散しているため,京都市が世界の表玄関としてどう文化を発信していくかというクオリティが低くなっている。これを機に観光や文化にかかわる公式ホームページを総点検し,外部のマーケティングの情報を導入しながら,多言語に対応した,よりクオリティの高い情報発信に集約していくべきだ。それが観光や文化の世界との結節になるのではないか。

  そのほかには,京都には点としてのいくつかの観光スポットはあるが,面的なものや滞在型の体験を提供していく考え方も必要ではないか。食文化の話があったが,外務省が3年前に海外から日本に来る人たちのニーズを調査したところ,食が第一位だった。京都の食文化を情報として発信し,京都の自然や環境の中で味わうという実態的な体験をしてもらう。情報発信力と実態性の確保がかみ合ったとき初めて文化と観光の歯車がまわっていくのではないか。

 

吉田部会長

  書き方に関するご指摘については第1次案に反映したい。

  個人的には京都には温泉センターがないことが不満だが,ものづくりについても京都ならではの資源活用ということが言われ続けている。ある地方では温泉に施設をつくって工芸を体験させ,みやげものとして売っているが,ああいうものを京都にもつくってはどうか。

 

産業観光局(西口局長)

  京都では全市が博物館ということでネットワーク型の整備を考えるか,旧来の囲い込み型の博物館をつくるかという議論が続いている。おっしゃるような施設は各地にできているが,すべてがうまくいっているわけではない。点在的なもののネットワーク化については交通アクセスが課題だ。

 

吉田部会長

  京都のセンター部分の観光については当部会でほぼ合意が得られているが,京都のセンター部分をネットワークすればいい。資源の活用とは単にものを売るだけではなく,体験させるしくみづくりであり,つくることと売ることをセットにして多角的に稼げるしくみを考えなければならない。京都のセンター部分を観光や産業に活用するということを強調してはどうか。

 

橋爪副部会長

  今のご意見に関しては,第2章第2節4(1)エ(ア)に若干盛り込まれているが,書き方を変えれば観光の項目にもなる。先日オープンした福井県の恐竜博物館では親子で石を砕いて化石を探す体験学習のイベントを実施しているが,近くに発掘現場があるのでいずれはフィールドミュージアムとして整備したいという学芸員の意向がある。青森の三内丸山も同様で,遺跡発掘は観光資源でもある。構想や研究ではなく事業として成立させる必要がある。

 

山上委員

  第2章第2節2(7)では,文化と産業,文化と観光の連携については書かれているが,観光と産業については書かれていない。観光の産業化については批判があるかもしれないが,産業を文化化する努力も必要で,地場産業や伝統産業と観光産業との連携も盛り込んでほしい。

 

吉田部会長

  「産業の文化化」ではなく,「文化の産業化」が重要であり,京都市交響楽団をもっと活用するなど,既にあるものを使った文化の産業化を柱とすべきだ。茶道などももっと産業としての高度化を図ってもらいたい。

  本日は第2章第3節2に関するご意見がほとんど出なかったが,この部分に関連の深い堀場委員,向囿委員にはご意見をいただくようにしたい。産業は戦略的でなければならないが,すべての人の生活にかかわる問題なので戦略的にある部分を切り捨てることには問題がある。また,民間の活動であり,市のできる範囲は大きくないが重要だという矛盾したところがあり,このあたりについては産業関係の委員のご意見をうかがいたい。また,第2章第1節4は,21世紀は若者の世紀であり,文化性において京都の若者の活力が低下しているので,かつてのバイタリティを回復してほしいという趣旨で柱を立ててもらったが,具体的な施策が乏しいので,この部分についてもアイデアがあれば出していただきたい。

  市から本日の議論に対してご発言はないか。

 

産業観光局(西口局長)

  新たなご指摘もあり,産業観光局としても関係局と協議しながら課題として取り組んでいきたい。

 

(2) その他

吉田部会長

  本日の議論をとりまとめて第1次案に盛り込みたい。さらにご意見があれば,メモで9月1日までに事務局に提出していただきたい。調整委員会には部会長から報告し,できるだけここでの議論を生かした基本計画にしたいと考えている。次回は10月20日に総会を開催し,基本計画第1次案を審議する予定である。その際には行政区別計画もご参照いただく。

  それでは,本日はこれで閉会したい。

 

 

3 閉 会

 

 

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