京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第5回 教育・人づくり部会
ページ番号35846
2001年2月1日
21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第5回 教育・人づくり部会
日 時 : 平成11年4月26日(月) 午後3時~5時
場 所 : 京都ロイヤルホテル「瑞雲の間」
議 事 :
(1) テーマ別討論「生涯学習・大学について」
(2) その他
出席者 :
◎金井 秀子(京都教育大学名誉教授,京都文教短期大学児童教育学科教授)
川阪 宏子(市民公募委員)
北川 龍市(京都市日本保育協会会長,京都市社会福祉協議会会長)
○シュペネマン・クラウス(同志社大学文学部教授)
高月 嘉彦(NHK京都放送局長)
八田 英二(大学コンソーシアム京都理事長)
韓 銀順(京都市生涯学習総合センター講師)
福田 義明(京都市私立幼稚園協会副会長)
以上8名
◎…部会長 (50音順/敬称略)
○…副部会長
1 開会
金井部会長
第5回「教育・人づくり」部会を開催させていただく。
2 議事
(1) テーマ別討論「生涯学習・大学について」
金井部会長
本日のテーマは「生涯学習・大学」で,最初に事務局から資料を説明いただく。
事務局(矢作教育長)
余暇拡大,長寿化,社会の成熟化にともない,新しい知識・技術の習得や心の豊かさや生きがいを求め,生涯学習ニーズが増大している。本市では市民の学習ニーズにこたえるため様々な施策を進めている。これからの生涯学習施策を進めるに当たっての課題を6点に整理しており,これまでの取組とともに,順を追って生涯学習部長から説明させていただく。
事務局(高桑生涯学習部長)
――(資料1「「生涯学習」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」に基づき説明,パソコンによるプレゼンテーション併用)――
事務局(高木総合企画局長)
京都には37の大学・短期大学があり,学生と教員の数を合わせると人口のおよそ1割に達する。大学には文化や学術面でも生涯学習の分野においても,京都市に多大な貢献をいただいており,また,経済の上でも大きなウエイトを占めている。京都市では,「大学のまち京都21プラン」により,大学に関しては特別の対策を講じている。内容についてはプロジェクト推進室長から説明させていただく。
事務局(高橋プロジェクト推進室長)
――(資料2「「大学」の視点から新基本構想(グランドビジョン)を考える」に基づき説明)――
金井部会長
事務局の報告について,ご意見を賜りたい。
福田委員
幼稚園教育に携わっているが,生涯学習の原点は幼児教育にあるととらえている。学歴社会,横ならび思想の中で個人の個性や能力をどのように見つけ,伸ばせるかという努力をしなければならないが,大学で飛び入学制度をもっと大胆に取り入れてはどうか。学校制度を単線型から部分的複線型に変え,高校・大学を通じて資格をとれるコースがあっていいのではないか。
たくさんの大学が部分的に市外に移転しているが,大学が京都市内にとどまれる方策を行政や市民がもっと考える必要がある。そのために規制緩和や土地の提供を積極的に考えていただきたい。
八田委員
大学コンソーシアム京都の理事長であり,その立場で意見を申し上げたい。京都はこの分野では先頭を行っており,現在,京都大学,京都工芸繊維大学以外の全大学に加盟していただき,単位互換やシティーカレッジなどいろいろな取組をしている。これから大学間の競争が激しくなるが,すべての大学が同じことをやっても意味がない。各大学が特色ある授業をし,弱い部分は他大学にお願いする。それが京都全体の大学・短大の教育水準を上げていく。シティーカレッジで授業を市民に提供したり,産業界との連携を深めていく方向に進んでいる。駅前に「京都市大学のまち交流センター」を建てていただき,来年からそこに入ることになっているが,そういう意味で京都市とは非常にうまく連携をさせていただいている。
ただ,大学の提供できる部分には限度がある。授業をすべて市民に公開するのが望ましいが,自分の大学の学生も大事にしなければならないこともあり,市民や他大学の学生にはどうしても定員枠がある。もっとたくさんの市民に入っていただけるようバックアップを市にお願いしたい。大学はサービス業であり,365日開けておくべきだ。日曜日に市民に受講していただき,それを各大学の学生も正規の授業としてとれればいいが,そこまでは進んでいない。
大学としては規制は少なく,補助は多くというのが本音だ。同志社大学も今出川の建物は古くなり,ハイテクの機械を配置しようとしても建て替えることができない。田辺に新しい建物を建てることになる。京都市内の規制は,特に最先端技術に関する学部や研究所をつくるには障害が大きい。保存も大事だがそれをあまり進めると学都の面が弱くなり,京都市に残るのは文科系の大学ばかりになる。
学生がますます少なくなる中,国際的に学問の都としての京都の評価を高め,日本人の学生が減るのなら海外の学生を受け入れるのも1つの考え方だ。留学生については向島に宿舎があるが,京都は物価が高く生活が大変だと言われている。こうした問題は1つの大学だけで対応できないので,産業界や行政にバックアップしていただきたい。
京都の大学を卒業した学生は東京か大阪で就職する。京都はベンチャービジネスのまちであり,これが雇用を吸収できれば京都の大学を卒業して京都に残る方向に進むのではないか。京都市でもベンチャービジネスの育成にお力添えいただきたい。
生涯学習に関しては,大学コンソーシアム京都としてまだまだ提供できるものがあると考えている。平成12年度から大学のまち交流センターができるが,市民の1%の需要があれば満杯になるのではないか。あちこちにこの種の建物があれば,より多くの方に学習機会を提供できる。その際,大学キャンパスの日曜日の利用も考えなければならない。これからは大学の連携体と京都市,京都府が連携し,悩みや情報を共有して同じ方向に進んでいかなければならない。大学の施設や人材をもっと活用していただきたい。
今後ますます18歳人口は少なくなり,もう2,3年すればつぶれる短大・大学が出てくると言われる。しかし,とても学費を値上げできる状況ではない。学生の授業料に依存しないよう,行政や産業界からの研究補助金を導入したり,人材や施設を市民に提供することで対価をいただくのも,生涯学習や社会教育の需要に一致するなら,収入構造を多様化していく方法のひとつではないかと思う。
北川龍市委員
「生涯学習」というのはすばらしい名称だが,ご説明いただいた市の取組について市民への情報提供はいきとどいているのか。また,地域の小さいグループで生涯学習を振興する体制をつくってほしい。
京都は学生のまちだという自負を持っていたが,大学が流出していく現状を見ると,行政による環境づくりが必要だ。まちは人がいないと死んでしまう。洛西などには空いている土地があるので,早く用地を確保し,大学が残れる環境づくりを考えてほしい。
学校と地域との関連ということでは,このたび立命館大学と社会福祉協議会で社会福祉講座を設け,学生と社会人の受講生を募集したところ,多数の応募があり,学習意欲の高さを改めて感じた。先ほど学校により特色ある取組をすべきというお話があったが,学生のまちとして市民の学習意欲にこたえるいろいろな取組を行ってほしい。
川阪委員
受講している立場からすると,大学コンソーシアム京都が実施している単位互換制度はすばらしいシステムだと思うが,定員枠が少ないのが悩みだ。京都大学と京都工芸繊維大学にも加盟していただき,授業内容を拡充し,定員も増やしていただきたい。
京都の大学は他府県の高校を卒業した学生が多く,京都の大学で勉強して他府県に就職してしまう。大学の流出が言われているが,もっと近隣の自治体と連携し,京都を学生に魅力あるゾーンにして大学流出に歯止めをかけることが大事だ。また,企業と大学の提携により,そこを共同開発の拠点にしていくということでは行政にも力になってほしい。
生涯学習については,学校コミュニティプラザ事業に携わっているが,この事業を持続発展的なものにするために,リーダーの養成を行政にお願いしたい。指導者となる人は人権や環境の問題を理論的に知っておく必要があると思う。また,遠くにある立派な施設よりも,気軽に歩いて行ける範囲内に拠点施設をつくってほしい。
生涯学習は「いつでも,どこでも,だれでも」と言われているが,費用の問題がネックになっている。年金で生活している高齢者等は受講が難しい。費用面での行政の援助がほしい。経済的理由から大学をやめていく学生も多く,育英資金のような制度で助成していただきたい。
高月嘉彦委員
子供の教育の問題については,これから先は本人の自発性を開拓しなければならない。これまでのカリキュラム主義を反省する時代にきている。生涯学習についても,カリキュラム型ではなく,これからはいろんな要求にどうこたえていくかを考え,個々の人間の多様な要求を取り込んでいけるものにすべきだ。立派な施設や興味深い講座はあるが,実際に働きながら学ぼうとすると難しい。
もう1つは,大学には本当に魅力あるもの,最先端の知的刺激を持ったものを公開していただきたい。土日に参加できるシステムについても考えていただきたい。グランドビジョンで京都に一種の知的社会をつくることをめざすなら,そこまで踏み込んだ風土づくりをすべきだ。
韓委員
「社会教育」が「生涯学習」に変わったとき,すばらしい名称だと感銘を受けた。ただ,生涯学習は一個人の幸福感を満たし,生きがいを感じるような学習活動ということだが,今はそればかりで,社会に貢献する,寄与するといった考え方は生涯学習という言葉の普及とともに薄れてきているように思う。青少年の問題にしても環境問題にしても,問題になってから議論するのでなく,先に生涯学習の場で学ぶことができればいいと思う。
大学やカルチャーセンターなど,いくらでも生涯学習の場はある。行政は講座を増やすより,市民が求めてきたときにいかに情報を提供するかというシステムについて考えるべきだ。場は十分にあるので,その場をいかに有効に活用するかを考えるべきだ。
また,学校教育のカリキュラムに疑問を感じる。大学で習ったことが実生活の役に立たない。何のために勉強したのかと思うと,むなしくなる。生涯の生活に役立つ教育を学校の中でもできないのか。以前にも話したが,女性は子供ができるといきなり母親になり,とまどうことが多い。母親教室で習うような日常の子供の世話の仕方ではなく,母親になる,子供を育てるとはどういうことかについて青少年の時代から学習する場があれば,よりよい育児ができる。人間を育てる生涯学習も必要ではないか。
生涯学習施設では,京都アスニーは職員も熱心ですばらしい。今のような状態で進められればいいと思う。
大学があるから海外からも京都に来る人が多い。アジアの人は,東京と京都が半々くらいだが,欧米系の人は,国費で京都大学と東京大学のどちらかに留学できるとすれば,たいていは京都大学を志望する。京都には歴史的な重みがあるからだが,大学が市外に出てしまうと,外国から学生は来なくなるのではないか。京都は大学があるから魅力がある。大学流出については危機感を持っている人も多く,大学も行政も苦労しているようだが,連携が十分でないためにどんどん流出している。このあたりで流出を止める施策を立ててほしい。大学だけ特別に規制緩和があってもいいのではないか。
シュペネマン副部会長
京都には大学は多いが,京都大学以外の大学には留学生は少ない。ヨーロッパの大学では定員の10%が留学生で,各国の大学法には留学生を受け入れることは大学の義務だと書かれている。ドイツの場合,ヨーロッパ諸国からはもちろん,アジアやアフリカからの留学生も多い。マインツ大学の場合は定員の15%を超えている。なぜ京都に少ないかというと,一つには留学生の入学制度が複雑だということがあるが,それは大学内の問題であり,同志社大学でも変わってきている。しかし,他方で円高でしかも物価が高いというように大学では解決できない問題もある。アメリカやドイツからでも自費留学は困難になっている。
もう一つは下宿の問題で,京都には留学生が期待するような古い下宿がなくなってきており,また,外国人には言葉や人種などの壁がある。学生マンションの家賃はとても払うことはできず,また,大学の寮も少なくなってきている。京都市として奨学金制度を考えられないものか。向島の学生センターはずいぶん評判がいいが,こういった寮を増やしてもいいのではないか。京都は国際的だと言われるが,留学生のことは各大学に任せきりで,市はあまり協力していない。ドイツでは,市役所が補助金を出して留学生の下宿を増やそうとした。京都市の場合もそういう面で行政が協力できればいいと思う。
生涯学習について,京都にはすばらしい施設や講座があり,こういう講座を持つことができるのは京都だけだと思う。しかし,プログラムに参加する人は定年退職者か仕事を持たない主婦が多い。ヨーロッパでは勤めている人も数多く参加しているが,そのためには夜間や土日の講座が必要だ。
また,エンターテイメント性の高いプログラムが多いことも疑問だ。教養的な歴史や美術も重要だが,これらは本来の教育ではない。生涯学習とは単に新しいことを学ぶということではなく,「エンパワーメント」,つまり,人が自分の問題を自分で解決できる力をつけることだ。アメリカでは,女性が自分の問題を自分あるいはグループで解決できる知識や経験,人間づくりやグループづくりが必要だというところから生涯教育が始まった。今でもエンパワーメントが生涯教育のいちばんの課題だが,情報誌に掲載されているプログラムを見る限り,例えば年金制度や健康管理など高齢者の定年退職後の準備や,リストラで50歳前後で失業する人たちが精神的,社会的問題をどう乗り超えることができるかといったニーズにこたえるものが少ない。大学にも同様の傾向があるが,生涯学習ではそれが明確に表れている。暇のある人のために面白い授業をすることが,本当に社会のニーズにこたえることになるのかは大きな疑問だ。
金井部会長
様々な問題提起をしていただいた。京都には他都市と違ったユニークな部分がたくさんあり,良いところは発展させていくべきだ。大学コンソーシアム京都の活動など,21世紀に向かって大学教育,生涯学習の充実が進みつつある。今提起していただいた問題をまとめると,学生のまち・京都から大学が流出していくこと,若者が定着しないこと,就職の場がないということ,留学生の生活は大変ということなどがあった。また,産学一体のシステムは非常に難しいが,行政がいろんなところに働きかけることが大事で,大学卒業後のサラリーマンに向けてのエンパワーメント教育を始めるべきだ。そのためには土日に講座を開くということも大切とのご意見もあった。具体的にこうすればどうかというご意見があればうかがいたい。
北川龍市委員
学校が週5日制になる。小さな地域で生涯学習を実施するとなると,大学や高校レベルの学習も大事だが,「生涯学習地域サロン」といった名称で,子育て中の母親が行けるようなもっと身近で気軽に行ける場づくり,具体的には小学校の空き教室を土日に開放して生涯学習の拠点にしていただきたい。
地域で自主的な組織をつくり,子育てや地域の民話を語り合うといったやさしいところから取り組んで,高度な内容を身につけていけるような拠点がほしい。学校の土日開放について教育委員会ではどう考えておられるのか。
事務局(矢作教育長)
資料1の P.7「(2)施設機能の充実」に書いているが,平成10年度から学校の空き教室を改修整備し,地域の寄り合いの場として「学校ふれあいサロン事業」の名称で,書道やお茶を学んだり,子供や高齢者のふれあいの場として活用していただいている。平成10年度現在52校だが,いずれは全学区で整備していきたい。
パンフレットにあるように,地元の自治連合会や自治団体等で管理運営委員会をつくっていただき,鍵を預けて土日や夜間もご使用いただいている。また,これからの課題は,地域で中心になっていただける指導者の育成・確保だと思っている。
北川龍市委員
新たに取り組む場合の窓口はどこか。制約や規約があるのか。
事務局(矢作教育長)
空き教室を整備し,ふれあいサロンとして利用できるようにするため,年度ごとに22校分ずつ予算をいただいている。事業実施に当たっては区役所の協力を得て,地元とも相談しながら進めており,生涯学習推進課が窓口になっている。
川阪委員
生涯学習には,机の前に座り一方的に難しい話を聞くとか講座を受けるというイメージがあるが,地域の方が地域のニーズにあった計画を自ら立て,参加し,実施するのが理想だと思う。講義やディスカッションなどいろいろな形がある。地域の方が参画し,経験のある方,専門家等を講師に迎えて実施することに意義がある。教育理念を踏まえた経験者にボランティアをお願いし,人権や環境の問題を取り上げていく必要がある。学校コミュニティプラザ事業の洛西南ゾーンに携わっているが,地域の方に講習を受けていただき,全面的にお願いすると一生懸命やっていただける。自治会や管理運営委員会で施設を運営するので,土日の開放は学校や地元と連携すれば難しいことではないと思う。
韓委員
生涯学習と関連して,図書館の充実を図っていただきたい。京都の図書館には専門書が少ない。どこでも手に入るような本を図書館で購入するのでなく,より専門的で新しい本を購入していただきたい。
事務局(矢作教育長)
図書館では市民が今読みたい本を読んでいただけるようにと考えて購入しているので,専門的で新しい本となると選択が難しい。新しい中央図書館は150~200万冊の蔵書を擁した,専門的な新しいニーズに対応できる図書館にしたいと考えている。現在,審議機関をつくっており,今年度中には最終答申が出る予定なので,今後検討していきたい。
事務局(高桑生涯学習部長)
生涯学習に関しては,多様化,高度化していく状況にどうこたえていくかということで,大学をはじめとする専門機関との連携が重要な課題と考えている。カリキュラムや講座だけでなく,生活の中での学習も含めた生涯学習の充実を図っていきたい。
地域に根ざした生涯学習の充実が課題というご指摘については,現在21世紀の生涯学習施策のあり方について,社会教育委員会議でもご審議いただいており,その答申を受けて,合わせて検討したい。
(2) その他
金井部会長
当部会のテーマ別課題については,本日で一通りご討論いただいたことになる。これまでの部会での討論の中で,基本構想に関連するご意見についてはとりまとめて起草委員会に報告したい。テーマ別討論の中で基本計画の策定に向けて整理すべき意見については私の方で整理し,それを討論していただく機会を設けたうえで,具体的な基本計画の策定作業に入ることになる。
新基本構想は,現在,起草委員会で文案化に向けての検討作業が進められており,6月頃に各部会が一斉に討論を行うことになる。日程は事務局で調整の後,最も出席率が高い日時に決めたい。最後に事務局から何か。
事務局(高橋プロジェクト推進室長)
大学流出の問題や留学生の問題など,大学コンソーシアム京都の協力をいただき,大学のまち交流センターを核にまちづくりに努めたい。
金井部会長
本日はこれで閉会としたい。
3 閉 会
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