京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第11回 環境・市民生活部会
ページ番号35874
2001年2月1日
21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第11回 環境・市民生活部会
日 時 : 平成12年6月27日(火) 午前10時~12時
場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲」
議 事 :
(1) テーマ別討論「環境」について
(2) その他
出席者 :
浅岡 美恵(気候ネットワーク代表)
石田 一美(京都市東山消防団団長)
笹谷 康之(西京区基本計画策定懇談会座長,立命館大学理工学部助教授)
須藤 眞志(京都産業大学外国語学部教授)
田尾 雅夫(京都大学大学院経済学研究科教授)
○高月 紘(京都大学環境保全センター教授)
田端 泰子(山科区基本計画策定懇談会座長、京都橘女子大学文学部助教授)
内藤 しげ(住みよい京都をつくる婦人の会会長)
◎内藤 正明(京都大学大学院工学研究科教授)
J.A.T.D.にしゃんた(市民公募委員)
野口 寿長(京都市体育振興会連合会副会長)
高木 壽一(京都市副市長)
以上12名
◎…部会長 (50音順/敬称略)
○…副部会長
1 開 会
内藤正明部会長
第11回環境・市民生活部会を開催させていただく。
2 議 事
(1) テーマ別討論「環境」について
内藤正明部会長
本日は基本計画素案の作成に向けたテーマ別討論の最終回となる。本日までの討論を受け,調整委員会で素案を作成することになるので,よろしくお願いしたい。
最初に,京都市から資料説明をお願いしたい。
環境局(小森局長)
――(資料「基本計画検討資料「環境」」について説明)――
笹谷委員
環境は市民に関心のあるテーマであり,市民参加の突破口を開いてきている分野だ。環境部署と他の部署との連携や,市民がパートナーシップを広げていくといった役所の縦割りを超える動きがあり,ISO14001などを取り入れた進行管理が進んでいる分野でもある。たくさん計画があるので,これを分かりやすく説明するための工夫が必要だ。環境を生かした産業政策や情報流通のしくみなど,積極的にまちを活性化させ,魅力を伝えるような環境政策を打ち出していくべきで,そういう観点からこれらの取組をまとめる必要がある。産業政策の中でも環境は重要な位置を占める。また,今まで行政の中になかった総合計画の進行管理のしくみも考えていかなければならない。京都市が環境の分野での進行管理や環境会計の導入の先陣を切ってほしい。
京のアジェンダ21フォーラムなどに関わっていて,全市より地域単位での取組の必要性を感じる。京都は自治連合会などがしっかりしていることもあり,区や学区単位での取組を重視しなければならない。防災や福祉なども含めた地域コミュニティを元気にする方策と連動して,できる限り区役所に分権化する方向で支援していくべきだ。
内藤正明部会長
市民参加と縦割りと進行管理,情報提供,区への分権,産業政策というキーワードが出された。京都は環境分野での市民参加や進行管理等の取組が進んでいると言えるのか。
笹谷委員
話題にはなっているが,実態として実質的にうまくつながって実現しているとは言えない。京のアジェンダ21フォーラムでも,枠組みとして他都市にない大きな組織をつくったことは誇れるが,実質的に動かしている人材等を見ていると,豊中市や日野市などのほうが進んでいるように感じる。
内藤正明部会長
他の行政部門と比較して相対的に進んでいるとは言えるかもしれない。
浅岡委員
1996年の発足時と比較すると,環境審議会の雰囲気も年々変わってきている。京のアジェンダ21フォーラムにはより広範な現場の人々が関わって,本来審議会でされるような議論がなされている。さらにフォーラムの準備段階で市民参加等の議論がされているというように,行政と事業者,地域の住民が日常的にフェイス・トゥ・フェイスで相談しながら活動しており,行政担当者の意識も高まっている。
もともとは地球温暖化防止京都会議を迎えるに当たって,国連の地球サミットで合意されたようなローカルアジェンダづくりをするために,行政や事業者,市民が円卓会議風に参加して,それぞれの問題意識を持ち寄り新しい提案をしていこうということで,このフォーラムがつくられた。当初は立ち上げて動かすだけで精一杯だったが,だんだん円卓会議としての役割を身に付けつつある。問題は,環境のローカルアジェンダなのか京都市のローカルアジェンダなのかということだ。京都市のローカルアジェンダにならないと,フォーラムでの議論の成果は身の回りのちょっとしたことにしか反映できない。
基本構想の第3章を考えるときに重要な,どういうしくみがあるか,どう運営していくか,誰がどういう役割をすればうまく動くか,何が障害であるのかといったことがこのフォーラムで先進的に経験されている。市民参加推進懇話会の中で参加のしくみを考える際にも,ここがうまく機能することがどのスキームにとっても非常に重要だと感じる。基本計画を立てる機会が京都市としてのローカルアジェンダとなるようにしていただきたい。環境を強調するのでなく,公共政策として何が必要か,経済・産業政策としてどうあるべきかという観点から,環境も欠かせないという議論をしてほしい。
京都は今までストックを消耗してきたが,これからはいいストックを増やさないと発展できない。いいストックとは何かを考えるとき,ヨーロッパ社会で議論されてきたことは京都でも共有できる。持続可能なものづくりや自然の再生等は環境政策を進めていく際の柱になると思う。全市的課題として市民と協働しながら取り組むということでは,審議会や委員会の役割も整理し直さなければならない。それと同時に参加のしくみをつくっていくべきだ。
CO2の削減目標のような大きな数値目標も大事だが,それを達成するための個別の目標が,市民や事業者の具体的な行動につながる形で数値目標化されていくことが必要だ。それが行政の動きを示すことになり,関わる人の意欲を生む。どういう数値指標をつくり,どういう数値を入れるかは簡単には決められないが,ローカルアジェンダが,それを議論し,合意形成する場となれば,まさに円卓会議的役割を果たすものになる。
環境を考えるとき,ゴミや交通,エネルギーや自然というように具体的で分かりやすい課題にブレークダウンできるので,計画もそれに合わせて分かりやすく整理し,足りないところを補充すべきだ。行政も努力しているし,事業者や市民も協力しているので,この芽をつみとらないことに重点を置いて環境政策に取り組んでいただきたい。
内藤正明部会長
1つは市民参加と審議会など意思決定の問題で,もう1つは環境とそれを包含した大きな産業政策や京都市全体の社会経済との関係で,環境一分野に留まらず,大きく捉えたほうがいいのではないかというご意見だ。
田端委員
京都でもゴミの分別は進んできたが,関東などに比べると遅れている。計画は立派だが実行が遅れているのが京都の現状だと思う。環境の分野は市民側がどれだけ努力するかが重要なので,そういう呼びかけを盛り込んでほしい。また,他府県でいろいろな取組がされているが,滋賀県の粉石けん運動を下流にいる京都として受け継いでいくというように,他の府県との連携も視野に入れて取り組む必要がある。
地域の問題では,例えば歩道がブロックで整備されていると,見た目にはいいが,車椅子の人や高齢者は使いにくいと思う。歩道をつくる際にも建設局と保健福祉局の間でもう少しきめ細かな連携をしていただきたい。地域により取組方も変わってくるので,地域の特性を生かしたきめ細かな取組が必要である。
内藤正明部会長
京都ではゴミ問題が他の自治体と比較して遅れているのか進んでいるのかについては,後ほど高月副部会長から説明していただきたい。他府県との連携については今まであまり議題にのぼらなかったが,区への分権というブレークダウンと両方が必要ではないか。もう1つは観光や環境に良くても福祉面ではどうかといった横断的調整が必要というご意見だ。
高月副部会長
行政がゴミ処理を始めた当初は公衆衛生的な面が強く,できるだけ市民をわずらわせず病害菌が出そうなものを処理するのが優れた行政サービスだった。そのため京都や大阪などの大都市は,大きな施設をつくり,すばやくゴミを回収する政策をとってきた。周辺市町村はそれに追いつけなくなり分別してゴミを減らす努力を始めたが,資源や廃棄物の問題が出てきたとき,両者の立場が逆転した。地方から京都に来た人は京都のような何でも燃やしてしまうやり方を遅れていると感じるが,時代の流れが変わってきたことにより,進んでいる,遅れているという評価の仕方も変わってきた。
これからは京都でも分別して適切な対処ができるようにしなければならないが,何でも分別して税金を使ってリサイクルすることが21世紀に環境負荷の少ない社会をつくっていくために適しているかどうかについては議論が必要だ。ペットボトルをリサイクルすることが必ずしも優れた循環型の社会をつくっていくわけではなく,ペットボトルがどんどん増えることの是非が問われなければならない。
京都市はリサイクルの取組はされているが,環境負荷が少なくなるしくみとしての廃棄物行政ができているかというと,21世紀を見通したとき十分とは言えない。最初はリサイクルや分別を定着させる段階が必要だが,次にはそれが必要かどうかも含めて検討し,発生抑制というか,そういうものをつくらないしくみを市民の中にどう根付かせていくかというステップに進まなければならない。どうやって進めていくかは難しいが,次の段階を考えておく必要がある。
リサイクルは集めたり再生するための負荷がかかる。負荷を減らそうとすれば,本当に必要なものだけを使うようにすべきだ。ものをつくるときに負荷がかかるので,なるべく使い捨てのものをつくらないしくみが必要だ。京都の伝統的特徴を生かした長持ちする,使えば使うほど価値が出てくるものに特化した産業等にしていくことが,循環型社会をつくっていくためには重要になる。循環型というとすぐリサイクルという短絡的発想になるがそうではない。
環境基本法ではリサイクルできるものは事業者の責任でリサイクルすることになっているが,それ以外のものについては事業者責任が問われていない。むしろリサイクルしにくいものについてどうしていくかが問われなければならない。今回の基本法ではそういう観点が抜けている。京都市の計画の中でも有害なものへの対応が十分でないので,この点についても検討が必要だ。
先の計画を立てるのは難しいが,市民に分別やリサイクルの必要性を説いていく段階から,次に発生抑制的ライフスタイルをつくるにはどうしていくかという計画も必要ではないか。
内藤正明部会長
価値観や世の中の規範が大きく変わるとき,何が最適かを見極めるのは難しい。ゴミを減らすと経済に影響が出るので,減らすのはやめて循環産業を興そうという話になりがちだ。京都は特徴を生かして高品質で長持ちする経済に変わろうというご提案をいただいた。
須藤委員
環境は誰もが関心を持ち,具体的に直面している問題だ。ベルリンでは分別の箱も大きく市民も協力的だったが,環境政策は市民教育と表裏一体の関係にある。設備を整えても人々がルールを守らなければ意味がない。環境の設備をつくったときにはそれがうまく運営されるような市民教育制度等が必要だ。
環境問題には対立する価値観の闘いのようなところがある。一方で道路やダムはつくらなければならないが,他方でそれによって木を切らなければならない。どこかで決断しないと環境問題は解決できない。東京都はディーゼル車を都内に入れないと宣言したが,大型の車から小さな車に乗り換えて都内に入ることになると,コストがかかりものの値段が上がるかもしれない。それよりディーゼル車の規制が重要という判断があるのだと思う。京都にもかつてマイカー観光禁止というキャッチフレーズがあったが,京都は観光で生きているまちであり,マイカー観光禁止は観光の障害になる。このように環境問題には価値観の対立が背景にあって決断が難しい。行政が取り組むときには説得力のある決断をしなければならない。
ドイツで32年後に原発を全廃するという決定が行われた。32年後の電力を何で補うかという具体的計画はないが,政策決定としての強い決断がある。
アメリカで生活しているときにはディスポーザーがほとんどの家庭にあり,生ゴミを出した経験がない。日本でもディスポーザーをつける場合には税金面の優遇があるとか,下水を改良するとかすれば生ゴミの問題は解決するのではないか。
内藤正明部会長
ディスポーザーの問題は,水で努力するか,ゴミで努力するか,燃やして大気で努力するか,技術論としては難しい。いろいろな選択肢の中で何が本当に環境にいいかは分からない。
環境と経済や産業,豊かさとの衝突が起こるという問題については,先に笹谷委員,浅岡委員からはむしろ環境が新しい産業や豊かさを生む起爆剤になりつつあるのではないかというご意見があった。
笹谷委員
高月副部会長のおっしゃったように,すぐできることと長期的にできることを位置付けておく必要がある。エネルギー面では,25年先にはエネルギー源を自前で確保することが常識になっているなど,相当変わるのではないか。
環境分野での対立は商工行政や農業行政,都市計画行政など他の分野に比べて少なくなっている。環境については長期的にはメリットが社会全体に還元されることも分かっている。民間企業はISO14001を取って省エネ・省資源の取組をしている。また,IT化により物流をなくし適正な生産をすることにより,アメリカなどではCO2排出量やエネルギー使用量が減っている。
総合計画の進行管理のためには審議会の再編が必要である。環境審議会は市民組織が立ち上がったときには市民参加を阻害するという意見もある。審議会等は段階的に減らしていったほうがいい。総合計画の進行管理のための学術委員会は必要かもしれないが,それも市民が参加していたほうがいい。欧米のローカルアジェンダは総合計画と環境基本計画を一緒にしたようなものだ。それを市民が参加して毎年チェックするような方向にもっていく必要がある。
大型スポーツ施設などを例として言うと,投資に対してどれだけのメリットがあるのかを十分議論しなければならない。すべての事業について事前,事業中,事後の評価をして,それを市民に明らかにするしくみが必要だ。
内藤正明部会長
これからはコストパフォーマンスの評価が必要だが,スポーツなどは利益の評価が難しい。情報公開が評価にうまくつながるように,工夫して情報を提示しなければならない。
内藤しげ委員
これまで五条通周辺の住民は観光バスが道路脇に止まるので迷惑していたが,住民が立ち上がることにより,五条通に止まる観光バスは少なくなった。最近の修学旅行生は市バスやタクシーで観光している。
須藤委員のおっしゃるように,環境問題は市民教育だと思う。明日山科区の埋立地と南区のリサイクルセンターを見学に行くが,じかにそういうところを見ることで市民の意識は変わる。前回も申し上げたが,ゴミ1袋にこれだけの処理費がいるということを市民に知らせてほしい。市民意識を高めないとゴミの量は減らない。行政はもっとPRしていただきたい。
内藤正明部会長
住民の声で観光バスが少なくなったということだが,百円バスのようにそうした新しい動きを加速するしかけができるといい。
野口委員
環境は非常に幅が広い。先日網野町に行ったとき,中国からの黄砂で洗濯物が干せない状態だった。酸性雨にしても,中国や韓国の工場地帯から出る煤煙のせいで日本に酸性雨が降り,森林を傷めているが,京都市だけではどうしようもない。中央政府に呼びかけて国際的に規制していただきたい。
北山にはゴミの不法投棄が多かったが,大学生のボランティアを募って山間部のゴミ回収を区役所と共同でやっており,近年はずいぶん改善されてきた。また,洛北地域では学生マンションが増えるに伴い,生ゴミを荒らすカラスが増えているが,これも何とかしてほしい。ゴルフ場の農薬規制により洛北の自然環境は良くなり,ホタルもよみがえった。一人一人が住んでいる地域の環境を守っていかなければならないと思う。
内藤正明部会長
外国の問題は市レベルでは解決が難しい。CO2の問題などには多少は言及しておくべきだろう。
石田委員
祇園の周辺では朝の停留所が非常に汚いが,それを毎朝掃除している人もいる。タバコのポイ捨てなどの取締りを強化するとか,掃除する人を顕彰するとか,賞罰に関する規定がないと身近な環境問題は解決しない。
野口委員
警察は犯罪を起こさない限り取り締まれない。
にしゃんた委員
13年前に日本に来たときはボストンバッグ1つだけだったが,1年たたないうちに部屋がものでいっぱいになった。スリランカはものがないところなのでものを大事にする習慣があるが,日本では手に入るものを全部大事にしているとものでいっぱいになってしまうので,捨てる習慣を身につけた。以前にも申し上げたが,スリランカのものを大切にする心には学ぶべき点があるのではないか。
スリランカでは生ゴミは各家庭で庭に埋めて処理している。ビンなどはデポジットで店に返せばお金が戻ってくるシステムになっている。京都市として製造業に対して働きかけ,デポジット制度を導入することはできないのか。いくらリサイクルしても,つくる側がペットボトルをどんどんつくっていては意味がない。スーパーなどの買物袋を有料にしても京都の産業に影響は出ないのではないか。
街頭のゴミ箱もデザインが重視されているせいであまりゴミが入れられない。頻繁に回収しないのであればもっと容量の大きいものを置くようにしてはどうか。環境問題かどうか分からないが,夜の木屋町などを大音量の音楽を流しながら通行している自動車を取り締まることはできないのか。また,大阪などでは建物の屋上の緑化が進んでいるが,京都でもそうした取組が必要ではないか。
京都の環境問題の特徴が何かが分からない。京都市として何がいちばん問題かということをピックアップして,それに対する対策を練る必要がある。産業界への働きかけにしても,地方自治体としての権限を生かして取り組むべきではないか。欧米では一般ゴミを固形燃料化したり有料化しているが,京都もそうしていくべきだ。市民は一般論としては環境問題を分かっているが,京都がどういう状況にあるかということは分かっていない。きちんと噛み砕いて分かるようにして市民に伝えないと,コンセンサスは得られない。学生などはゴミの分別をしていないが,学生が市民として京都への認識を深めるためにも,もっと思い切ったことをやってもいいのではないか。それが宣伝にもなる。
内藤正明部会長
スリランカでゴミが少ないのはものが少ないからで,日本に来るとゴミを出さざるを得ない。そうしなくていいようなしくみをつくればいい。先ほどの石田委員のご意見にあったように,ゴミを捨てた人に対するペナルティもなく,掃除している人への顕彰制度もない。法的に警察で取り締まることも難しいとなれば,経済的な手段でデポジット制度を取り入れてはどうかと考えるのが自然だが,いくら提案しても日本では実現しない。屋上緑化についても同様だが,技術が進んでいるので今後はそういう取組も出てくるかもしれない。さらに,京都の特徴を浮き彫りにする計画をどうつくるかというご意見もあった。
田尾委員
京のアジェンダ21の資料を見ると,これをそのまま実現していくと行政にかなりのコストがかかり,たいへんなことになる。行政だけでやろうとするのではなく,市民にコストを負担してもらうしかない。
浅岡委員
経済との関係については,環境を経済にマイナスであると一面的にとらえるべきではないという考え方はすでに定着している。ビジネスチャンスととらえる経営者は増えているし,ドイツが環境に熱心なのもそのせいだ。産業構造が変われば勝者と敗者が出るのは当然であるが,敗者側に鉄鋼,電力等現在の基幹産業が多いため,たいへん強い抵抗がある。京都は敗者側が少なく勝者側が多いところであり,そういう意味ではやりやすい。ヨーロッパは創業者利益を得ようとして急いでいるが,日本は遅れているので,そういう意味で京都が創業者利益を得られる可能性がある。経済政策の中で環境を方向性としてもっと明確に打ち出してほしい。
京都市としての政策を議論しているわけだが,政治的意思決定が大きなウエイトを占める。ヨーロッパの先進的自治体は京都市とはまったく違う高いレベルで,化石燃料をゼロにするとか環境ですべてを統一するという目標を掲げている。京都市がアジェンダ21でやろうとしていることはどの国でも都市でも当たり前のことだということを認識しておくべきだ。国レベルでは環境基本計画の5年目の見直しがされているが,まだまだ基本的進行方向がすっきりせず,なかなか動かない。京都市が1歩先んじて動くことが大事で,ここで抜け出すことが将来の変化につながる。
先ほど須藤委員からドイツが32年後に現在30%の電力を供給している原発を廃止するという方針を打ち出したが,代替エネルギーがないというご指摘があった。ドイツでは2010年には自然エネルギーを10%増やす,そのための財政措置も含めた強力な手当てをする決定がされた。エネルギー問題に関してはアメリカや日本にも具体的計画がなく,2030年頃までには革新的技術開発があって何とかなるという政策だが,どちらに向くかという方向性を示してそのための準備をすべきだ。東京都にしてもディーゼル車煤煙対策のための技術開発を急いでもらうためにディーゼル車の規制という方針を打ち出したわけで,京都市もそういう目に見える政治的方向性を持つことが大切だ。
京都市民が自分のまちを誇りに思っていないというのは環境分野にも関わりがある。ゴミ問題についてもいろいろな意見があるが,現状の京都市のゴミ政策は周辺自治体と比べて遅れている。大きなゴミ焼却場をつくる計画があるが,どう解決していくかという柱を早く立て,それを市民が納得できるようにすることが重要だ。ゴミ問題と並んで現状を踏まえた解決策を早く提示する必要があるのは交通問題で,自動車に頼らなくてもいいシステムをどの場所にどうつくっていくかという具体的な議論ができるようにすべきだ。もう1つ,京都市民がまちを誇りに思えなくなっている理由の1つに景観の問題がある。まちの緑を増やし,豊かで品のいいまちをどうつくるかという方向性を打ち出すべきだ。大きな方向性を出さなければならない部分がいくつかある。こちらに行くという方向が見えて,それに向かって努力する中にアジェンダやいろいろな政策がある。2025年を目標に掲げるとすればそういうやり方が必要ではないか。
先ほど田尾委員からご指摘のあったコストの件だが,京のアジェンダ21に書かれている具体的対策についてはコストがかかる。コストを減らすために市民が関わっていくしくみを機能させることがアジェンダの中に盛り込まれており,それが行政としてのコスト削減にもなるという理解をすべきだ。事業者の中には京のアジェンダ21フォーラムでISOの簡易版の京都スタンダードをつくり,実行しようとしているところも出てきている。これらが動いていくと大きな効果を生むと思う。
最後に,エコロジーセンターを建設し,立ち上げていくためには多額のお金がいるが,これを単なる施設に終わらせないことが重要だ。どんな施設にするかについてはこれまで時間をかけて議論してきたが,実際の運営を行政の出向者だけでまかなうしくみにせず,市民ベースでどう生かすか,運営の仕方に英断をふるっていただきたい。
田尾委員
京のアジェンダ21に書かれていることが実現されると最終的なコストは下がると思うが,そこに至るまでのコストが過大になるのではないかということを指摘した。その負担に市財政が耐えられるかが問題だ。
笹谷委員
総合計画の中で行政評価指標,特にバランスシートにのっとり,どれだけのコストに対してどれだけの成果があったかを毎年チェックして進行管理すべきだ。場合によってはISO9001やそれに類する手法で,窓口サービスや住民満足度を検査するということを超えて,新しい施策を企画するときには社会実験的に必ず市民の意見を聴くとか,必ず他の部局との連携をするというしくみまで含めた提案が必要だ。それを実現するのが電子自治体化であり,国の通達も陳情も電子化され,2003年には全国の自治体をおおうことになる。それを電子学校や中小企業のIT化支援,市民のホームページづくりや情報インフラとしてのネットワークづくりなどで支えていかなければならない。そのための人材育成も課題だ。
大学コンソーシアムの授業で学生と環境アクションプランづくりをしようとしているが,環境行政はそういう社会実験的活動ができるいちばん進んだ分野である。ほかの部局もそうした社会実験をしていくことで低コスト化が可能になる。
内藤正明部会長
基本計画素案の段階で部会でご意見をいただくこととしている。本日言い足りなかった点についてはメモ書きにして6月30日までに事務局にお出しいただきたい。最後に,高月副部会長から本日の議論をまとめていただきたい。
高月副部会長
ハードなものに対応していては財政がもたないので,もう少しソフトやしくみに力を注ぐことを考えなければならない。それが京都らしさにもつながる。市民の力をフルに活用した形でのソフトづくりが重要だ。エコロジーセンターも建築計画はできたが,どう動かしていくのかという中身が見えていない。ゴミも自動車も景観も含めて,市民が主体的に動けるようなしくみを行政がどうサポートしていくか,そこに行政の力を注いでいただきたい。
内藤正明部会長
京都市から反論等があればうかがいたい。
環境局(小森局長)
エコロジーセンターの運営については,研究会を設けて引き続き議論していただくことになっている。
(2) その他
内藤正明部会長
本日のご意見は調整委員会に伝え,素案づくりに生かしたい。次回は8月下旬に,調整委員会でまとまった素案についてご議論いただきたい。
それでは,本日はこれで閉会したい。
3 閉 会
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