新指定・登録文化財 第24回京都市文化財
ページ番号5529
2020年4月6日
建造物
九頭神社本殿(くずじんじゃほんでん) 1棟(登録)
〔京都市右京区京北細野町〕
当社は右京区京北の山間部にある。本殿は東向きで覆屋(おおいや)に収められており,傷みが少なく保存状態は良好である。造営は安永7年(1778)で,地元余野村の大工等が手掛けている。建物はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃながれづくり)で,内部は内陣と外陣に分かれている。屋根の正面には,軒唐破風と千鳥破風が付いており,縁には出三斗(でみつど)と蟇股(かえるまた)を用いた腰組を設けている。装飾彫刻は,龍や麒麟など多種にわたり見ごたえがある。
覆屋の内側には,本殿の計画図である板絵図が掛けられており,墨で建物の正面と側面の立断面図が描かれている。現在の建物と部分的に異なる点があるが,規模や構造形式はほぼ一致する。
この本殿は建築年代が明らかで,板絵図や棟札などの史料とともに保存状態が良好である。保守的な様式の建物が多い京北地域においては珍しく,構造や装飾が派手で凝った造りになっている。
美術工芸品
〔京都市北区紫野大徳寺町 真珠庵〕
本図は徳川家康・秀忠・家光に仕えた武家,佐久間将監真勝(1588~1642)を描いた肖像画である。茶人としても知られ,大徳寺龍光院に寸松庵(すんしょうあん)を創建している。重要文化財の「寸松庵色紙」は,堺の南宗寺に伝来し,将監が所有したことから,その名で呼ばれている。
本図の賛者,江月宗玩(こうげつそうがん・1574~1643)は大徳寺156世の住持。当代随一の文化人でもあった。賛には将監生前の肖像(寿像)であることが記されている。
落款はないが,他作品との比較から,筆者は伝承どおり狩野探幽(1602~74)と考えられる。探幽・江月・将監には親密な交流があり,本図もその中で生み出された作品である。制作年代は寛永(1624~44)後半頃と思われ,その出来映えは探幽の肖像画として高く評価できる。また,本図の将監は隠者のスタイルで描かれている。正装が多い武家肖像画の中,自身を隠者の姿で描かせた本図は「物数寄(ものずき)」と評された将監にふさわしく,寛永期の文化人の交流と嗜好を物語る作品として重要である。
〔京都市右京区花園妙心寺町 隣華院〕
隣華院は慶長4年(1599),豊臣秀吉に仕えた脇坂安治(1554~1626)が建立した塔頭である。客殿で創建当初の姿を残しているのは,室中(しっちゅう)障壁画の長谷川等伯筆「山水図」のみであり,重要文化財に指定されている。現在の客殿は文政7年(1824)に上梁したもの。本件は室中及び仏間を除いた,上間(じょうかん)一の間,二の間,下間(げかん)一の間,二の間,南北鞘の間,中眠蔵(なかめんぞう),西眠蔵(にしめんぞう),杉戸の障壁画計113面が対象である。制作年代は文政8年(1825),筆者は狩野永岳(1790~1867)である。
永岳は京狩野家の9代目当主。幕末の京都画壇の重鎮として活躍した。禁裏絵師として朝廷に仕えたほか,九条家・彦根井伊家にも仕えた。本障壁画は上間一の間,二の間,下間一の間,二の間が紙本金地著色画で,杉戸が板絵著色画,南北鞘の間,中・西眠蔵が紙本墨画である。金地著色画は極めて華麗で,彩色が濃厚,細部まで入念に描き込まれている。また水墨画は,モチーフの扱いや構図に工夫が凝らされており,見ごたえがある。永岳の作品のうち,制作年代の判明する大半が40代以降のものであるが,本障壁画は36歳と若い時期の制作にかかる,希少な基準作であり,その質の高さ,多彩さから永岳の代表作に位置づけられる。また保存状態も良好で,江戸後期の京都における漢画派の大規模な障壁画の遺例としても貴重である。
〔京都市中京区上本能寺前町 京都市〕
本品は,右京区嵯峨鳥居本化野町から出土した金銅製の蓋を有する蔵骨器(ぞうこつき)である。壺は,高さが20.8㎝の中国製褐釉壺(かつゆうこ)で12世紀後半の製品と考えられる。金銅製の蓋は,褐釉壺に合わせて国内で製作された直径が10.1cmの特注品である。蓋の上には蓮華座と梵字の「あ」(あ)を線彫りした後,鍍金する。表面の仕上げにやや荒さが認められるが,その製作技術に稚拙さはなく,法具に関連した金属工房によって製作されたと考えられる。金銅や銅で製作された蔵骨器は,奈良時代の遺品にあるが,陶器の身と金属製の蓋の組み合わせは,本品以外に出土例は無い。また,本品は,地中に作られた小石室に納めた後,木炭で覆って埋め戻されていた。類似の火葬墓の発見例が稀なことから,貴族や高位な僧侶の墓が想定される。本品は,平安時代末期から鎌倉時代初期の金銅製品の製作技術を知る上で貴重な蓋を有する資料であると共に同時代の埋葬法を知る上でも貴重な遺品である。
有形民俗文化財
〔京都市下京区郷之町 崇仁自治連合会〕
東山区の新日吉神社の祭日に曳き出される祭屋台である崇仁地区の「崇仁船鉾(すうじんふねほこ)・十二灯(じゅうにとう)」は,昭和30年代後半以降中絶していたものを,かつて使用されていた木彫や金工品などを利用して平成10年に復原されたものである。
現在の祭屋台の初発は,天保10年(1839)に,出された提灯台,いわゆる十二灯であったと推測できるが,徐々に整備されるとともに,明治期には船鉾も作成され,かつては2基の船鉾,4基の十二灯が出ていた。
今回登録されたのは,それらを飾った金工品や木彫類を主体とした装飾品である。
無形民俗文化財
〔京都市伏見区八幡町 御香宮獅々若会〕
御香宮祭礼獅々は,伏見区に鎮座する御香宮の祭礼に出る練り物で,御香宮獅々若会によって保存・継承されている。
もともと神輿の先払いの行道獅子(ぎょうどうしし)の系譜をひくもので,特に芸を演じるというわけではなく,口をぱくぱくさせる邪気払いの所作が基本であるが,現在では,重厚な獅々頭を担いで疾走する勇壮さが見物となっている。獅子頭は2頭で雌雄1対といわれ,木製でそれぞれが約60キログラムである。
伝承母体である御香宮獅々若会は,濠川の西側に南北に広がる町々の青年団組織で構成されるが,その中核組織はかつて高瀬川水運に従事した人々の系譜をひいている。
名勝
鴨脚家庭園(いちょうけていえん) (指定)
〔京都市左京区下鴨宮河町 個人〕
鴨脚家(いちょうけ)庭園は賀茂川に架かる葵橋東詰の北部に位置する。近隣は,応仁年間からの記録が残る賀茂御祖(かもみおや)神社の社家町であったが,下鴨本通の開通に伴い数多くの社家が退去したため,鴨脚家は唯一現存する賀茂御祖神社の祝(はふり)※の屋敷である。
庭園は東西に並列する和館2棟に南面し,形態は全体として歪(いびつ)な方形の擦り鉢といった形態をしており,周囲より一際窪んだ中心部に泉がある。塀際には築山が配され,高さの異なる石積が築山と和館の際を取り囲むようにして高低差を埋めている。石積みの上面は園路を兼ね,数個の石段で連絡しており,山道のような雰囲気を醸し出している。泉の水は鴨川の伏流水による湧水であり,かつて祝が禊(みそぎ)に用いたと伝えられる。泉の水面は季節ごとに変わる湧水量に応じて上下する。
水の供給を湧水という自然の力に頼り,賀茂御祖神社の祝の現存する唯一の屋敷に設けられた庭園として貴重である。
※ 祝(はふり):神官
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