京都市指定・登録文化財-美術工芸(北区)
ページ番号189353
2020年4月6日
京都市指定・登録文化財-美術工芸(北区)
麻布著色洋船図扁額 若杉五十八筆(まふちゃくしょくようせんずへんがく わかすぎいそはちひつ)
船が礼砲を打つ光景を描く。寛政3年(1791)に,長崎系の洋風画家である若杉五十八(1759~1805)が,舶載の筆彩銅版画を模写したと考えられるもの。
方丈障壁画 狩野興以筆(ほうじょうしょうへきが かのうこういひつ)
等持院方丈は,もと妙心寺海福院にあったものを文政年間(1818~30)に内部の障壁画と共に移築したもの。元和年間(1615~24)初期に遡る,狩野興以(~1636)の障壁画の遺例。
方丈障壁画 狩野探幽筆(ほうじょうしょうへきが かのうたんゆうひつ)
方丈南側に水墨で「龍虎図」「梅に波涛図」「竹虎図」を余白を大きくとって描いた,探幽の大作。
紙本墨画董奉図 6曲屏風 狩野探幽筆(しほんぼくがとうほうず ろっきょくびょうぶ かのうたんゆうひつ)
董奉は呉の人で医術に妙を得た仙人。彼に関する故事を描いた狩野探幽(1602~74)初期の作品。
絹本著色玉甫紹琮像(けんぽんちゃくしょくぎょくほじょうそうぞう)
大徳寺塔頭高桐院の開祖で,細川幽斎の弟にあたる玉甫紹琮(1546~1613)を描いたもの。自賛の年紀と,画面左下端の印章から,桃山時代の巨匠の一人,長谷川等伯が慶長14年(1609)に描いたものとわかる。簡潔かつ的確な描写が特徴で,等伯最晩年の肖像画基準作の一つとして貴重。
絹本著色豊臣秀吉像(けんぽんちゃくしょくとよとみひでよしぞう)
数多い豊臣秀吉像の中でも体躯の均衡の点で誇張がなく理想化をおさえた作品。天竜寺第195世三章令彰(さんしょうれいしょう)の賛文から,秀吉一周忌にあたり,秀吉に恩顧を受けた北政所の従兄弟杉原長房が慶長4年(1599)に作らせたものと判断される。秀吉没後翌年の制作になることから,像主の容貌の真をよく伝えるものと考えられる点においても貴重な作例。
絹本著色立花宗茂像(けんぽんちゃくしょくたちばなむねしげぞう)
立花宗茂(1569~1642)は九州柳川藩の藩主で,豊臣秀吉のもとで天下統一,朝鮮出兵にも従っている。本図は,承応3年(1654)の原本を土佐光起(1617~91)が貞享5年(1688)に模写したもの。
紙本金地著色唐人物図,紙本金地著色四季花鳥図,座頭屏風 狩野松栄筆(しほんきんじちゃくしょくとうじんぶつず しほんきんちゃくしょくしきかちょうず ざちょうびょうぶ かのうしょうえいひつ)
座頭屏風は禅宗本山系寺院の調度の一種で,儀式の際に用いられる一対の小型の衝立。本作には唐人物図と四季花鳥図とを表裏に描き分ける。作風から狩野永徳の父狩野松栄(1519~92)の作と考えられ,桃山時代前期にさかのぼる金碧画遺品の一つとして貴重。
木造阿弥陀如来坐像(もくぞうあみだにょらいざぞう)
西向寺の客仏として安置されているものである。面幅の広い豊かな面相で,肩幅を十分にとり,膝張を小さくして小づくりな感じにまとめた藤原風の像で,眼が極端に細く,衣文に一種の動きが見られる点や,木寄せの細かさなどから平安時代後期の制作と考えられる。西向寺に蔵される,もう1体の阿弥陀如来坐像と膝前の衣文を除くと,大変よく似ており,本体台座を含めて同一作者または同一工房による制作と考えられる。なお,像内に納入された文書から本像がもと上賀茂御堂西念寺の像であったことがわかる。
木造薬師如来坐像(もくぞうやくしにょらいざぞう)
大森東町の安楽寺の本尊である本像は,坐像としては珍しく,ほぼ全体をヒノキの巨材一材から彫り出す。肉身部は漆箔,衣は彩色,眼は彫眼で仕上げられている。全体に寸のつまった塊量性の豊かな造形で,粗々しく豪快な作風から平安時代前期の制作と考えられる。
木造如来形立像(もくぞうにょらいぎょうりゅうぞう)
本尊薬師如来坐像と同じく安楽寺本堂に安置される。頭部を小ぶりにまとめた姿態は奈良時代の木彫の特徴を受け継ぐ。また,両袖口には15個の旋転文を配す点が注目される。これは古密教系彫刻等,平安時代初期の作例にしばしば認められるもので本像はその極点を示すものとして貴重。
木造僧形坐像,木造天部形立像(もくぞうそうぎょうざぞう もくぞうてんぶぎょうりゅうぞう)
安楽寺に伝わる一連の仏像。僧形坐像は,角張った顔に大ぶりな目と口を配し,皺を深く彫り込んだ,他に例を見ない厳しい老相で,聖僧文殊像と考えられる。特に顔面の彫り込みは深く鋭く,対して衣文は大まかで塑像風の柔らかさを表す。制作年代は木造天部立像をはじめ当寺の他の諸仏と同じく,9世紀中葉を下限とする頃と推定される。天部形立像は,短躯肥満で,顔面に鎬立った鋭い皺を走らせた厳しい風貌で,僧形坐像と類似する。右手を振り上げたポーズから,持国天か増長天のいずれかと考えられる。
木造菩薩立像(もくぞうぼさつりゅうぞう)
わずかに肥満気味に整えられたプロポーションや優しく円満な相貌,各部の丸みのある膨らみなどから,本像は定朝以降の和様の熟成したころの特色を示す,12世紀前半の美作。なお,平成2年度の修理により後世に十一面観音に改変されたことがわかり,頭上面を取り去って旧に復している。
木造阿弥陀如来立像(もくぞうあみだにょらいりゅうぞう)
生々しさを捨て,衣の起伏が複雑になっていく13世紀半ば頃の特色をよく示した,安阿弥様の流れに属する像。また,着衣に配された繊細な截金文様は当初のものをよく留める。当寺に安置された由緒は明らかではないが,本像の像内納入品から,嘉禎元年(1235)という本像の造立年代,沙弥昇蓮・比丘尼善阿弥陀仏という二人の願主が判明し,納入品も完存する点において貴重な作例である。なお,体内に黒漆を塗って納入品を納める本像の手法は,阿弥陀寺(滋賀県西浅井町)の行快作木造阿弥陀如来立像と共通する。
金銅鳳凰(旧金閣屋根頂飾)(こんどうほうおう)
金銅製の本鳳凰は旧金閣の屋根上に飾られていたものを,明治の解体修理の際に別途保存したもので,応永4年(1397)の金閣建立当初のものと伝える。頭部が大きく,脚部のやや短い鳳凰で,総体に肉取りの厚い重厚な姿で表現されている。また頭部や翼部の下面は丁寧な造作になる。制作時期は室町時代と考えられ,伝承も妥当性が高いと言える。
隔冥記(かくめいき)
江戸時代初期の鹿苑寺住持鳳林承章(ほうりんじょうしょう)(1593~1668)の自筆日記。寛永12年(1635)から寛文8年(1668)までの分が現存。公家を中心とした文化サロンの動向を知るうえで不可欠の資料。
鹿苑寺出土の修羅(ろくおんじしゅつどのしゅら)
修羅とは巨石等の重量物を運搬するための道具。鹿苑寺庭園の発掘調査により池跡から出土したもので,年代は15世紀と推測される。中世の土木技術を知る上で貴重な資料。
方丈障壁画 狩野興以筆(ほうじょうしょうへきが かのうこういひつ)
等持院方丈は,もと妙心寺海福院にあったものを文政年間(1818~30)に内部の障壁画と共に移築したもの。元和年間(1615~24)初期に遡る,狩野興以(~1636)の障壁画の遺例。
今北家文書(いまきたけもんじょ)
北山杉の山地である北区大森に伝わる江戸時代初期からの文書。山売渡証文,銀子借用証文や争論関係を含む口上書類,また菖蒲役関係の文書など,山間林業村落を理解する上で貴重。
岩佐家文書(いわさけもんじょ)
上賀茂社家及び賀茂六郷関係の文書。賀茂六郷の中世的形態や中世末期に形成した上賀茂周辺の門前町の形成過程・形態等を知る上で貴重。
絹本著色以天宗清像 雪村筆(けんぽんちゃくしょくいてんそうせいぞう せっそんひつ)
本図は戦国時代に活躍した禅僧画家,雪村周継(1492/1504~?)が描いた箱根・早雲寺の開創,以天宗清(1472~1554)の肖像画である。以天宗清は京都の生まれで,大徳寺第83世。大永2年(1522),北条氏綱の招きで,早雲寺の開祖となった。本図には天文19年(1550)に記された以天の自賛がある。制作年が判明する作例が少ない雪村の作品中,貴重である。また,本図のように手堅い作風の著色人物画は雪村には珍しく,雪村の画技の幅を示す希少な作例でもある。
絹本著色佐久間将監像(けんぽんちゃくしょくさくましょうげんぞう)
本図は徳川将軍に仕えた,佐久間将監真勝(1588~1642)を描いた肖像画である。本図の賛者,江月宗玩(こうげつそうがん)(1574~1643)は大徳寺156世の住持。当代随一の文化人でもあった。 筆者は伝承どおり狩野探幽(1602~74)と考えられ,探幽の肖像画として高く評価できる。また,本図の将監は隠者のスタイルで描かれている。正装が多い武家肖像画の中,自身を隠者の姿で描かせた本図は「物数寄(ものずき)」と評された将監にふさわしく,寛永期の文化人の交流と嗜好を物語る作品として重要である。
賀茂季鷹関係典籍類(かものすえたかかんけいてんせきるい)
本品は,江戸中後期の代表的歌人の一人である上賀茂神社祠官,賀茂季鷹(かものすえたか)(1754~1841)の蔵書群を中核とし,季鷹の家系で江戸後期に蒐集された書籍類である。本品は1269件,冊数にして3100冊余りを数え,内容は21分野の多岐に渡る。書籍には「季鷹」「賀茂県主」等の蔵書印が押されており,季鷹自筆の書入れや奥書が多数認められる。特徴的な書物として,蔵書の全容がうかがえる『歌仙堂書籍目録』,古活字版の貴重な版本『慶長版節用集(せつようしゅう)』,季鷹の書込みがある『源氏物語』写本,同じく書入がある古活字版『蜻蛉(かげろう)日記』等が挙げられる。さらに,鎌倉時代後期の古写本『清輔朝臣(きよすけあそん)片仮名古今集下』も含んでおり,重要な書籍,未紹介の書籍も多く含み貴重である。また,表紙に旧架号名と思われる源氏物語の巻名が直書されており,それに対応する書籍箱が現存する。書籍から知り得ない情報も含まれており,貴重であるので,附とする。
木造薬師如来立像(もくぞうやくしにょらいりゅうぞう)
本像は,上賀茂神社の西方に所在する神光院所有の木造薬師如来像である。本像は,典型的な平安初期一木造の作風を示している。量感のある体躯は,奈良・元興寺薬師如来立像(国宝)や京都・金剛心院如来立像(重要文化財)などの平安時代前期の彫刻に近似し,正面大衣(だいえ)の下縁に立ち上がりをつけながら波打たせる処理は,唐招提寺伝薬師如来立像(重要文化財)や神護寺薬師如来立像(国宝)など,奈良時代後半から平安時代初期の彫像に相通ずる古様さがある。以上から,本像の制作は9世紀前半にさかのぼると考えられる。本像は,慶応3年(1867,慶応4年の誤りヵ),上賀茂神社の神宮寺から旧本尊の十一面観音立像と共に移されている。ただし,上賀茂神社神宮寺の創建は10世紀末頃と考えられており,9世紀前半の制作と推定される本像は,神宮寺創建当初からの安置仏とは考えにくい。そこで興味深いのは,当初の安置場所として上賀茂神社の東方に所在した岡本堂をあてる説である。岡本堂は『続日本後紀』によれば,賀茂社の神戸(かんべ)の百姓が賀茂大神のために建立したが,天長年間(824〜834)に破却され,天長10年,勅により再建が許された。本像の制作年代は岡本堂が再建された時期に合致し,その作行きの素朴さも,神戸の百姓によって建立された岡本堂に安置されたと見るにふさわしいものである。本像は上賀茂神社における神仏習合思想を背景に制作された,9世紀前半の一木造として貴重な遺品である。
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