新指定・登録文化財 第38回京都市文化財
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2021年4月16日
新指定・登録文化財 第38回京都市文化財
京都市では,京都市文化財保護条例に基づき,文化財の指定・登録を毎年行っています。
令和2年2月に京都市文化財保護審議会から答申を受け,新たに6件を指定,2件を登録,1件の附の追加指定をしました(令和2年3月31日告示)
これにより,京都市指定・登録文化財は全部で532件になりました。(令和2年4月1日現在)
*〔 〕内は,文化財の所有者又は保持団体名です。
建造物
徳林庵 山科地蔵堂及び拝所 2棟(指定)
附
山科地蔵堂新築工費概算書 1通
明治四拾年四月の記があるもの
地蔵堂平面五十分一之図 1枚
六角堂新築見積書 1通
明治四拾年拾壱月拾六日の記があるもの
六角堂新築見積書 1通
明治四拾年拾貳月貳拾壱日の記があるもの
徳林菴本堂新築設計書 1通
直(〔値〕)段書 1通
明治四拾年十二月十日の記があるもの
再建工費概算収支取調書 1通
明治四十一年二月十日の記があるもの
〔徳林庵〕
六地蔵巡りで知られる山科地蔵堂は,山科区四ノ宮にある徳林庵の門前に位置する。現在の地蔵堂は,明治41年(1908)に堂宇の規模を拡大して再建された。京都府の寺社修理に携わった技術者・安田時秀が関わる重要な遺構であり,近代寺社建築の特徴である復古的な意匠をもつ。明治42年に建築された拝所は,装飾的な要素が強く絵様も近世的な表現である。
徳林庵境内のうち地蔵堂周辺は京都市文化財環境保全地区に指定されている。
美術工芸品(絵画)
絹本著色法華経本尊曼荼羅図 長谷川信春筆 1幅(指定)
〔妙伝寺〕
本図に落款はないが,画風などから「信春」を名乗った時期の長谷川等伯の作品とされる。本図裏面の貼紙(亡失)によれば,妙伝寺6世の日惠が永禄11年(1568)に越中・本顕寺で本図を描かせ,享保16年(1731)に妙伝寺31世日竟が能登・妙成寺で本図を見出して,妙伝寺に納めたことがわかる。
日惠は信春に他の作品も描かせており,妙成寺は複数の信春作例を伝える。本図は信春と縁が深い人物・寺に関わる重要な作例であり,かつ京都に伝来する信春期の希少な優品である。
美術工芸品(古文書)
紙本著色東山泉涌律寺図
附 紙本著色東山泉涌律寺図 1幅 (指定)
〔泉涌寺〕
泉涌寺は入宋僧・俊芿の創建である。俊芿は大陸仏教実践のため,宋風伽藍の造営を志し,俊芿示寂後も門弟により堂宇の整備が続けられた。その伽藍は応仁・文明の乱で焼失したが,本図には焼失前の泉涌寺の寺観が描かれている。絵図の中央には,三門,法雨堂,三尊殿,善本院などの主要伽藍が一直線に並び,それらを廻廊で繋ぐのが特徴的である。
補筆とされた雲龍院の建物の描き方が中央伽藍と同じであり,雲龍院創建(応安5年〈1372〉)以後の室町時代初期の制作とする説が,最近提示されている。草創期の泉涌寺の寺観を今に伝える唯一の絵図として極めて貴重である。
美術工芸品(考古資料)
本能寺跡出土品 319点 (指定)
〔京都市〕
本能寺跡出土品は本能寺が「六角与四条坊門,油小路与西洞院中間方四町々」で再建してから「本能寺の変」の廃棄物を始末するまでのものである。発掘調査で「能」の異体字を配した軒丸瓦,額に輪宝を飾る鬼瓦や大量の焼瓦・焼壁片などから,「本能寺の変」を考古学的に裏付ける資料が確認された。
また造営時の整地から「本能寺の変」の後始末までの土師器皿などが出土し,この時期の年代を示す基準資料となり貴重である。
民俗文化財(無形民俗文化財)
粟田神社の剣鉾行事 (登録)
〔粟田神社剣鉾奉賛会〕10月体育の日の前夜,夜渡神事に曳鉾の剣鉾が巡行し,神幸祭当日は差鉾の剣鉾が巡行する。江戸時代の資料には,粟田の剣鉾が白川にかかる橋の上で曲差しをしたり,その橋から川に落ちたりした様子が記されているが,曲差しの技術は伝わっていない。粟田祭では,少なくとも明治時代には差鉾だけでなく曳鉾も,町中持の剣鉾として神幸列に加わっており,今も各町で多様な剣鉾行事が継承されていることが特徴である。
吉田木瓜大明神の剣鉾差し (登録)
〔吉田剣鉾保存会〕
10月第2日曜日,今宮社(祭神は木瓜大明神)の神幸祭が行われる。江戸時代の記録では,地域住民が剣鉾5基を差していたとあり,当時から鉾差しを輩出していた地域とわかる。また,剣鉾差しの際に「サイアレ,サイアレ」と唱えていたともあり,現在もそれは吉田の剣鉾差しの特徴のひとつである。昭和初期までは5軒の頭屋が定められていたというが,現在は太元講社資料館で神号軸を祀るなど,頭屋での儀礼が継承されている。
記念物(名勝)
芳春院の庭 (指定)
芳春院は,大徳寺境内の北東の一画に位置する塔頭である。慶長13年(1608)に加賀前田家の2代利長と3代利常が,母であるまつ(1547-1617)の菩提所として創建し,後に同家の菩提寺となった。その客殿の北西庭は,東面を書院,西面を2層の楼閣建築・昭堂(呑湖閣)と土塀,南面を客殿で囲われたかぎ形の敷地を呈する。昭堂と客殿の間に架かる打月橋からは庭の全景を眺めることができ,東方には比叡山を見渡せる。
文化財環境保全地区
東海道・山科地蔵堂文化財環境保全地区 (指定)
〔徳林庵〕
“六地蔵巡り”の地蔵のひとつ山科地蔵を安置する山科地蔵堂(京都市指定文化財)は京の出入口として古くから交通の要衝であった山科区四ノ宮に位置する。旧東海道沿いに建つ地蔵堂の周囲には茶所,荷馬のための水呑場や井戸等が配され,屋根の鬼瓦には飛脚の身分を示す「丸に通」の文様が見られる。
かつての街道沿いの様子を現在に伝える山科地蔵堂とその周辺環境は,一体となって優れた歴史的景観を形成している。
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