新指定・登録文化財 第29回京都市文化財
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2020年4月6日
新指定・登録文化財 第29回京都市指定文化財
平成23年3月に京都市文化財保護審議会から答申を受け,新たに6件を指定しました。(平成23年4月15日告示)
これにより,京都市指定・登録文化財は全部で480件になりました。(平成23年4月15日現在)
*〔 〕内は,文化財の所有者名です。
建造物
妙光寺方丈(みょうこうじほうじょう) 1棟(指定)
附 西玄関 1棟
東玄関 1棟
〔京都市右京区宇多野上ノ谷町 妙光寺〕
妙光寺は右京区宇多野にある臨済宗建仁寺派の寺院である。弘安8年(1285)に伽藍を建立したのに始まり,至徳3年(1386)には京都十刹の8位に列せられている。室町時代後期の荒廃の後,江戸時代前期に至り,順次伽藍の復興が進められ,現在の方丈はこの復興過程の寛永年間に建立されたとみられる。
建物は一般の形式に準じた小規模な六室型の方丈建築で,上間(じょうかん)諸室を中心に,格調高い書院建築の構えをあらわす一方,縁先や柱間装置の特殊な工夫により景趣を屋内へ導入するなど,数寄な気分をもつ作意を働かせ,書院を備えた方丈の堅い気風を見事にやわらげている。また,通用玄関とは別に貴人用の玄関を開く,前列天井の竿縁(さおぶち)を梁間(はりま)方向とするなど,方丈建築の常法を破った他に例をみない構成をもつ。保存状況も良好であり,建築年代もほぼ明らかであることからその価値は高い。
また,境内の中枢部には方丈と共に伽藍を構成していた建物跡などが確認できる。江戸時代前期の創建以来,現地現存する方丈は往時の境内景観を知る上でも貴重である。
美術工芸品
紙本金地著色萩芒図(しほんきんじちゃくしょくはぎすすきず)(指定)
長谷川等伯筆 六曲屏風 一双
〔京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前町 相国寺〕
6曲1双の総金地の屏風に,秋草の萩と芒(すすき)を描く作品である。
両隻の端に押される「等伯」印は,桃山時代に活躍した絵師,長谷川等伯(1539~1610)の基準印で,慶長4~8年(1599~1603)まで使用が確認されるため,本図もこの時期の制作と考えられる。右隻には白い花を付けた萩が,左隻には芒が描かれている。両隻とも右から左へ吹き抜ける風が表現されており,丁寧な描写と卓越した構成力,加えて背景の金地の効果で,たいへん華やかな画面となっている。
等伯の金地著色画(金碧画(きんぺきが))といえば,智積院障壁画(国宝)が有名だが,現存作品数は少なく,本図は数少ない等伯の金碧画として貴重である。
紙本墨画檜原図(しほんぼくがひばらず)(指定)
近衛信尹の賛がある 六曲屏風一隻
〔京都市左京区永観堂町 禅林寺〕
水墨で檜林(ひのきばやし)を描く6曲1隻の屏風に,寛永の三筆として知られる近衛信尹(このえのぶただ)(1565~1614)が「初瀬山夕越え暮れてやどとへば(三輪の檜原(ひばら)に)秋かぜぞ吹く」という和歌を大書している。
信尹は,屏風に直に大書する作例をいくつか残しているが,下絵の水墨画と融合して,和歌の世界を表現する例は本図のみである。また,和歌の「三輪の檜原に」をあえて書かず,絵が代わって表現する趣向や,賛を予定してモチーフが中央に寄せられた構図など,水墨画と書との計算し尽された関係は特筆に値する。
檜林は,抑制の効いた筆致と墨の階調で巧みに表現されており,絵師の優れた技量がうかがえる。落款はなく,筆者は不詳であるが,長谷川等伯(1539~1610)とする説が提出されている。上質の絵画と書をあわせもち,近世初期の書,工芸,絵画の動向が深く絡み合う貴重な作例。
木造伝梵天立像(ぼんてんりゅうぞう) 1躯
木造伝帝釈天立像(たいしゃくてんりゅうぞう) 1躯 (指定)
〔京都市山科区北花山河原町 元慶寺〕
両像は元慶寺(がんけいじ)山門に安置されていたもので,寺の記録から,享和元年(1801)に,妙法院から元慶寺に移されたことがわかる。両像とも平安時代の造立ながら,様式からすると制作年代にやや開きがあると見られる。伝梵天像は,若干遡る可能性はあるが,10世紀後半頃の特徴を示し,伝帝釈天像は,それよりもやや下る11世紀初め頃の様式とみられる。
また,両像とも着甲しているが,通常着甲するのは帝釈天像であるため,現在,梵天とされる像も,当初は帝釈天として造立された可能性がある。ただし,唐招提寺金堂の木造梵天・帝釈天立像(国宝)のように両像とも着甲する例もあるため,現状で尊像名は確定しがたく,伝梵天像,伝帝釈天像とするのが妥当である。本格的な作風を示す平安時代半ば頃の作例として貴重。
賀茂季鷹関係典籍類(かものすえたかかんけいてんせきるい) 1269点(指定)
附 書籍箱33合,蓋20枚
〔京都市北区 個人〕
本品は,江戸中後期の代表的歌人の一人である上賀茂神社祠官,賀茂季鷹(かものすえたか)(1754~1841)の蔵書群を中核とし,季鷹の家系で江戸後期に蒐集された書籍類である。本品は1269件,冊数にして3100冊余りを数え,内容は21分野の多岐に渡る。
書籍には「季鷹」「賀茂県主」等の蔵書印が押されており,季鷹自筆の書入れや奥書が多数認められる。特徴的な書物として,蔵書の全容がうかがえる『歌仙堂書籍目録』,古活字版の貴重な版本『慶長版節用集(せつようしゅう)』,季鷹の書込みがある『源氏物語』写本,同じく書入がある古活字版『蜻蛉(かげろう)日記』等が挙げられる。さらに,鎌倉時代後期の古写本『清輔朝臣(きよすけあそん)片仮名古今集下』も含んでおり,重要な書籍,未紹介の書籍も多く含み貴重である。
また,表紙に旧架号名と思われる源氏物語の巻名が直書されており,それに対応する書籍箱が現存する。書籍から知り得ない情報も含まれており,貴重であるので,附とする。
長岡京東南境界祭祀遺跡出土品(指定)
墨書人面土器 584点
土製祭祀具 103点
木製祭祀具 20点
共伴遺物 123点
〔京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町 京都市〕
平成2年度に京都市伏見区淀水垂町で実施の発掘調査で出土した祭祀遺跡出土品。発掘調査地は長岡京左京七条三坊三町の北西部に該当し,長岡京の東二坊大路と七条条間小路の交差点を検出した。交差点のほぼ中央を,北西から南東方向に斜めに流れる河川跡がみつかり,その中から多くの祭祀遺物が出土。七条条間小路と東二坊大路の検出状況から,この付近が長岡京の東南隅となる。道路交差点付近で祭祀がおこなわれ,河川に墨書人面土器・土製祭祀具・木製祭祀具・土器類などが投棄されたと推定できる。
本品は、長岡京の東南隅に近い道路交差点付近で,墨書人面土器や土製・木製祭祀具を駆使して執行した祭祀に関わる出土品と評価できる。共伴遺物には「延暦(えんりゃく)十年(791)三月十六日」の紀年銘(きねんめい)木簡もあり,祭祀を執行した時期の一端を特定できる。墨書人面土器584点は,圧倒的な量を誇り,描かれた人面がよく残っていることも含めて,長岡京期における境界祭祀の実態を示す貴重な資料である。
祇園会保昌山前懸胴懸裏地(ぎおんえほうしょうやままえかけどうかけしうらじ) 3枚(指定)
「画工 圓山主水」の墨書がある
〔京都市下京区東洞院通松原上る燈籠町 財団法人保昌山保存会〕
昨年度,指定した円山応挙筆「祇園会保昌山前懸胴懸下絵」3点の附である前懸胴懸裏地には「画工 圓山主水(まるやまもんど)(中略)安永二癸巳歳六月日」の墨書がある。これと同質と思われる布の残片3枚を,附の追加指定とするものである。
同じ横幅の2枚が,当初上下に連続していたと思われ,一部欠失しているものの,墨書をつなげると「町中/安〔欠〕癸巳歳六月日/年寄 錺屋治兵衛/組 河内屋治兵衛/絵屋彦右衛門/十一屋源兵衛」となり,もう1枚には「画工 圓山主水」と記される。墨書の内容が,附とした裏地1枚とほぼ同じで,応挙の下絵の制作年代を証する貴重な資料である。
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