■平成20年度実践UD第7回講義の様子(久保雅義先生)
ページ番号44797
2016年4月14日
電器製品のUD
(松下電器のユニバーサルデザインに対する考え方)
私が以前に勤めていました松下電器では,戦時中の物不足の時代に,創業者の松下幸之助がすでに「製品には親切味,情味,奥ゆかしさ,ゆとりの多分に含まれるものを製出し,需要者に喜ばれることを根本的な信念とすること。」と述べており,このころからユニバーサルデザインの必要性を訴えていました。
また,松下電器には製品におけるユニバーサルデザインの基本規程として,「(1)理解しやすい操作への心配り,(2)わかりやすい表示と表現への心配り,(3)楽な姿勢と動作への心配り,(4)移動と空間への心配り,(5)安心・安全への心配り,(6)使用環境への心配り」の6つが定められており,この規程を満たしていなければ製品化されないことになっています。
(座シャワーの開発)
私は,1990年代に業界に先駆けてユニバーサルデザインの商品を何点か開発・デザインしましたが,座ったままにシャワーを浴びる新しい入浴「座シャワー」について説明します。
この製品の商品化には5年の歳月がかかっています。開発当時はまだユニバーサルデザインという言葉が普及していなかったため,バリアフリーの視点から開発し,楽しいシャワーライフのためにお風呂の代わりとなるものをつくろうと考えていました。この製品の特徴は,「タブ入浴より楽に入れる」,「シャワー並みにすぐ使える」,「タブ入浴と同じくらい温まる」,「使用湯量はタブ入浴の4分の1」です。当初は単独のシャワールームとしてイメージモデルやワーキングモデルを作成し,これを社内提案展に出したり,モニター実験をした結果,非常に高い評価を得ました。
しかし,「専門的データの裏づけ」や「商品化する上での市場性」が必要との指摘を受けたため,「入浴効果の生理的検証」,「入浴中の身体的負担の検証」,「家庭内介護軽減効果の確認」を行い,商品化を意識したサンプルを1995年にバリアフリー展に参考出展したところ,非常に大きい反響を呼びました。「すぐ販売してほしい」という切実な声を事業責任者に伝えたのですが,システムバス自体の販売が思わしくなく,単独のシャワールームの商品化は社内の理解を得ることはできませんでした。
そこで,シャワールームを単独で商品化するのではなく,既存の浴室内へ設置することとしました。また,その対象をより多くの人が使用できるように,高齢者から家族みんなで楽しめる入浴装置へと拡大し,ようやく浴室内に設置する方式の「座シャワー」が完成しました。この商品は第1回のGマークのユニバーサルデザイン賞に選定され多くの話題を呼びました。
現在では,個人宅のほか,病院,介護施設などでも需要があります。また,最近開発した新しい座シャワーには,ミストシャワーが使用できるようになっています。ミストシャワーは従来のシャワーに比べ,より発汗が促進され美容や健康に効果的な入浴を楽しむことができます。
(UNIRICHI(ユニリッチ)の開発)
2000年に更なる高齢社会の到来を踏まえ,徹底したユニバーサルデザインのシステムバス「ユニリッチ」を開発しました。これは特に「安全性・快適性・簡便性・環境性」に優れ,浴室内の浴槽とカウンターを広くすることにより,カウンターに腰掛けて移乗したり,半身浴などゆったりした入浴や,浴室内床暖房の設置により,ヒートショックの防止や床をすべりにくくするなどの多数の配慮を施しました。この商品は当時のGマークの金賞を受賞いたしました。
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