■平成19年度実践UD第6回講義の様子(久保先生)
ページ番号27597
2016年4月14日
「実践ユニバーサルデザイン」第11回講義の様子
第11回講義
7月2日(土曜日)
講師
久保 雅義 氏
(京都工芸繊維大学教授)
テーマ
座シャワーからはじまったユニバーサルデザイン
講義の概要
第11回は,京都工芸繊維大学教授の久保 雅義さんが研究されているユニバーサルデザインについて,松下電器在職中に開発に携われた商品を題材にしての講義でした。まず,座ったまま全身にシャワーを浴びる方式の「座シャワー」についてでした。
商品開発コンセプトは「体への負担が少なく」,「お風呂と同様に温まり」,「湯の使用量が少ない」の3つでした。商品の特徴としては「タブ入浴より楽に入れる」,「シャワー並みにすぐ使える」,「タブ入浴と同じくらい温まる」,「使用湯量はタブ入浴の25%」とのことです。
商品開発のステップは3つの段階に分けることができますし,また5年の歳月かかかっています。
第1段階では,デザインの自主研究として単独のシャワールームを検討されました。しかし,「専門的整理データの裏づけ」や「商品化する上での特徴,市場性の明確化」が必要なため,第2段階のバリアフリー研究へと進みました。
ここでのポイントとして「入浴効果の生理的検証(タブ入浴と遜色ないか)」,「入浴中の身体的負担の調査と分析(高齢者などに有効か)」,「家庭内介護の研究(介護負担が楽になるか)」を設定し,開発が進められました。それぞれ公的機関による入浴効果の裏づけがとれたのですが,当時,システムバス自体の販売が伸び悩んでいる中,別のシャワールームの設置に投資効果があるのか等の指摘があり,第3段階へと進みました。
ここでは,シャワールームを別途設置するのではなく,既存の浴室内へ設置することとしました。また,その対象を,高齢者の介護負担軽減だけでなく,家族みんなで楽しめる入浴としたことで、妊婦,ペット,高齢者と孫との入浴,など「おとしよりからみんなへ」というユニバーサルデザインの考え方に基づき,商品コンセプトを変更しました。これらを踏まえ,デザインコンセプトや造形コンセプトを検討し,浴室内に設置できる「座シャワー」が完成しました。
今では,自宅だけでなく,病院,介護施設などでも需要があるそうです。「座シャワー」が完成した背景には,「デザイン部門が商品感[勘]を持ち,継続した提案活動を実施したこと」,「バックデータ収集による強力な説得材料の存在」,「社会の「高齢化」と事業部の商品開発への機運の高まり」,「商品開発へのトップの理解」等があったそうです。この商品は第1回Gマークユニバーサルデザイン賞を受賞しています。
次に,新しいCシステムバスの開発について説明されました。「ユニバーサルデザイン視点の浴室創出」を目指し,「体機能の衰えを補完でき,できるだけ自立して使えること」をコンセプトに開発されたそうです。商品化にあたっては,高齢者によるヒアリング調査や体験入浴等を行い,「安全性・快適性・簡便性・環境性」の4つのキーワードを踏まえて進められたそうです。この結果,カウンターベンチの設置,楽な洗面機能,移動が少ない機能性,ゆったりとしたスペースといった特長を備えた,新しいシステムバスが開発できたそうです。この商品は,2000年度Gマークの金賞を受賞されたそうです。
次に,松下電器のユニバーサルデザインについて説明されました。その背景としては,
(1)高齢化:日本は世界有数の「高齢社会」(機器操作に不便を感じる人の増加)
(2)技術革新:デジタルデバイトの発生(使いたいけど使えない人の発生)
(3)法制化:米国FCC255条,ISO13407
があり,これらを踏まえて,1995年には「より多くの人々への心配りを,商品・サービスを通じて提供し,共に生き生きと快適に,豊かに暮らせる生活の実現を目指す」というUD方針を作成し,中村社長が2002年11月には全松下製品のユニバーサルデザイン化の方針を発信されたそうです。
また,松下電器ユニバーサルデザインへの取り組みの6原則として
(1)理解しやすい操作への心配り
(2)わかりやすい表示と表現への心配り
(3)楽な姿勢と動作への心配り
(4)移動と空間への心配り
(5)安心・安全への心配り
(6)使用環境への心配り
の6点を挙げられました。
これらの6原則に基づき、全社を挙げたげた取組が開始されました。画期的な斜め30度洗濯乾燥機ドラム式や簡単に番組を探したりできるリモコンのついたプラズマテレビやDVDなどの開発に繋がっているそうです。
また,2003年末には国際ユニバーサルデザイン協議会(IAUD)が発足し,業種業界を超えたUDの推進がはじまっています。IAUDの総帥は三笠宮殿下,経済産業省の後援もあり約200社超の有力企業が参加しているNPOです。現在,2006年京都国際UD会議にむけて準備を開始しはじめています。
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