■平成19年度実践UD第1回講義の様子(福富昌城先生)
ページ番号27598
2016年4月14日
「実践ユニバーサルデザイン」第1回講義の様子
第1回講義
4月21日(土曜日)
講師
福富昌城氏(花園大学教授)
テーマ
社会福祉とユニバーサルデザイン
講義の概要
福富先生からは,「社会福祉とユニバーサルデザイン」という演題で講義がされました。以下にその概要を掲載します。
(ユニバーサルデザインの定義)
「全ての年齢や能力の人々に対して,可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイン」で,より多くの人々ができるだけ使えるように,最初から考慮して,ものやサービスをデザインすることである。 またそこには妥当な価格であることが必要である。
(UDとバリアフリーの違い)
UDは「あらかじめ,誰にとってもバリアのないよう配慮する」ことであり,バリアフリーは「すでにあるバリアを取り除く」ことである。
(事例)
スエーデンのLidköping(リチャーピン) のサービスハウスを事例に,援助が必要な人たちも街の中に住めるような街づくりが必要で,これがUDのあるべき姿である。
(「誰でも乗れる地下鉄にする運動協議会」について)
市営地下鉄烏丸線の建設の際(1972年~)に,現みやこUD審議会委員の長橋栄一氏が中心となり,京都市に対してエレベータをつけるよう非常に大きな市民運動を行った。注目すべきは「障害者にも高齢者にも,すべての人に乗りやすい地下鉄に」との主旨に基づく活動であったことだ。当時はユニバーサルデザインという考え方はなかったけれども,その理念は共通するものであった。この活動のおかげで,今では市営地下鉄の全駅にエレベータが設置されている。
(当事者運動としてのバリアフリー)
バリアフリーには,身体に障害のある方々の当事者としての権利要求運動という側面がある。そのため様々な状況が少しづつ改善されてきた。しかし,そのバリアフリー環境づくりが,健常者の『責任逃れ』(障害者に対する無関心)になってはならず,大切なことは,その目的が,障害がある人もない人も,共に生きる『共生』社会の実現であるということを忘れないことだ。
(ユニバーサルデザインの考え方と社会福祉について)
社会保障と社会福祉の根拠である憲法第25条(生存権)はすべての国民を対象にしており,その理念はUDと共通する。しかし,社会福祉サービスのイメージは「困っている人を助けるもの」であって「困っていない人にとっては無関係な存在」との意識がまだまだ根強い。このため,必要な人に福祉サービスの情報が十分に行き渡っていない。このように,社会福祉は,理念的には普遍主義であっても,実際は公の救済という性格から制限主義の性格を持っている。当初は「貧困」の問題解決から始まったように,社会福祉の対象を限定していたが,生活保護法の改正,児童福祉法の制定,知的障害者福祉法の制定,介護保険法の制定など,次第にその対象を広げてきた。このため,いわゆる昔の貧困的状況は改善に向かったが,現代の豊かな社会における様々な生活不安から生じる相対的貧困現象が新たに生じている。これにともない,福祉ニーズは「貧困問題」から「心身の障害」,「社会的排除や摩擦」,「社会の孤立や孤独」へと拡大しており,ソーシャルインクルージョン(社会的に阻害・排除されやすい人々を,社会の構成員として包み込み,誰もがともに生きる社会の創造を目指す考え方)が重要となってきている。
(「東松山総合福祉エリア」の相談センターの実例が紹介)
高齢者でも,様々な障害者でもワンストップで相談できる施設であり,社会福祉領域でのユニバーサルデザインの考え方が反映された実例である。
(「健光園ももやま」の実例を紹介)
特別養護老人ホームでは,従来の大部屋を解消し,個室を配置したユニットケア方式を採用している。また,児童館や地域交流スペースを設け,地元住民との交流を行っている。地域の人が施設に入りやすい構造であり,そこで障害の有無や世代を超えた自然な交流があるような実践が紹介されました。
こうした実践例の紹介を通じて,「将来,社会のさまざまな場で活躍されるときに,ユニバーサルデザインの考え方を思い出して欲しい。そして,誰もが使いやすいものやサービスをつくって欲しい」と,受講者に対してメッセージが投げかけられた講義でした。
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