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■平成20年度実践UD第4回講義の様子(福富昌城先生)

ページ番号42534

2016年4月14日

社会福祉とユニバーサルデザイン

(もののデザインと,ことのデザイン)

ユニバーサルデザインというと,まずイメージするのは「もののデザイン」ですね。社会福祉などの対人サービスは「もの」をつくっているわけではありません。しかし,対人サービスのありかたをどんな人でも使いやすいものにしていくことは大切なことです。社会福祉のサービスをユニバーサルデザインで考えていくことは「こと」のデザインと言えるでしょう。

(スウェーデンのLidköping(リチャーピン)の事例)

スウェーデンのLidköping(リチャーピン)という町では,デイサービス施設などの福祉施設が街中(まちなか)につくられています。こうした施設が町の役所から歩いてすぐの所に作られています。すなわち援助が必要な人たちが普通に街中(まちなか)で暮らせるよう,最初からこうした街づくりがなされています。こうしたことは,援助が必要な人の暮らし方を支えるデザインといえるでしょう。我が国でも,近年では街中(まちなか)に施設が建てられるようになってきています。こうしたことは,大切なことです。

(「誰でも乗れる地下鉄にする運動」について)

京都の地下鉄に乗ったことがあるでしょうか?この地下鉄の建設計画が発表された1972年に,車いすを使う障害を持った人たちの会を中心に「誰でも乗れる地下鉄にする運動協議会」が設立され,誰でも地下鉄に乗れるようにする請願書が提出されました。この運動で注目すべきは「障害者だけでなく高齢者も含めたすべての人に乗りやすい地下鉄に」というところにあります。当時は,ユニバーサルデザインという考え方が定着していませんでしたが,この運動の発想はユニバーサルデザインであったと思います。この運動によって,開業当初は烏丸線の主要4駅にエレベータが設置され,現在では烏丸線,東西線の全駅にエレベータが設置されています。

(当事者運動としてのバリアフリー)

バリアフリーとは,既にあるバリア(障壁)をなくしていこうという取り組みです。こうしたバリアフリーには,身体に障害のある人達の当事者としての権利要求運動として取り組まれ,これらの運動によって様々な環境が改善されてきました。しかし,このようなバリアフリー環境づくりが,「環境が整っているから,障害を持った人のことは気にしなくてもよいんだ」ということになってはいけません。障害がある人もない人も,共に生きる「共生」社会を実現していくことが大切です。

(社会福祉の考え方について)

社会福祉は社会保障制度の中の一つの領域であり,その根拠には憲法第25条(生存権)があります。25条は「すべての国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあり,すべての国民を対象にしており,その理念はユニバーサルデザインになっています。ところが,一般的に社会福祉とは,「困っている人を助けるもの」であって「困っていない人にとっては無関係な存在」と捉えられがちでもあります。そのため,本来福祉サービスの情報が必要な人であっても,そうした人達に十分に行き渡っていない面もあります。

このように,社会福祉は,理念的には普遍主義(対象を限定せずあらゆる人を対象とする考え方)ですが,個々のサービスにおいては対象を限定していこうとする制限主義的な性格も持っています。現代における社会福祉のニーズは,貧困の問題だけでなく,心身の障害のほか社会的排除や摩擦(ホームレス,外国人など),社会的孤立や孤独(虐待,孤独死など)にまで拡大しているため,社会的に阻害・排除されやすい人々を社会の構成員として包み込み,誰もが共に生きる社会の創造を目指す「ソーシャルインクルージョン」の考え方,すなわちすべての人にとって利用しやすい社会福祉サービスが重要になってくるのです。

(社会福祉領域でのユニバーサルデザインの考え方の応用)

こうしたユニバーサルデザインの考え方を取り入れた実践例を紹介しましょう。

1 「東松山総合福祉エリア相談センター」の実践

・ひとつの窓口で高齢者も障害者も,様々な人達の相談に乗れる総合相談窓口(ワンストップ窓口)の実践に取り組んでいます。

・夜間の電話相談に対応するために,日勤,遅番,夜勤という体制を組んで相談を行っています(夜間は電話相談のみ)。

2 「尼崎喜楽苑」の実践

・「地域の中の施設」という考え方のもと,徘徊する認知症の利用者は止めずに職員が一緒についていったり,酒を飲みたいという利用者と一緒に街中の酒屋に呑みに行く等々,施設の暮らしを地域での普通の暮らしに近づけていく取組をしています。

3 「健光園ももやま」の実践

・地域と施設の垣根を取り払っていくために,地域の人が施設に来やすいようにしています。地元住民との交流,ボランティアの協力,児童館の子ども達とのふれあいなど。これは施設の暮らしを一般の市民の暮らしに近づけようとする取組(ノーマライゼーション)でもあります。

講義の様子

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キャンパスプラザ講義「実践ユニバーサルデザイン」について

お問い合わせ先

京都市 保健福祉局障害保健福祉推進室

電話:075-222-4161

ファックス:075-251-2940

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