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■平成20年度実践UD第6回講義の様子(木島英登先生)

ページ番号44601

2016年4月14日

障害とは何か?

(はじめに)

私は高校時代にラグビーの練習中に脊髄を損傷し,下半身が麻痺になり,それ以来車いすの生活を送っています。小さい頃からの夢が世界旅行だったため,車いす生活となった現在でも旅を続け,これまで82箇国を旅しています。

(障害者とは)

みなさんは障害者とはどのような人のことを指すと思いますか?日本では障害者手帳を持っている人がほぼそれに該当すると思います。障害者手帳があれば,バスや地下鉄の運賃が無料になったり,施設の入場料や医療費が安くなったり,年金が支給されたりするなどのメリットがあります(ただし,障害者手帳がない場合,ある場合と比べて必要なサービスが受けられないこともあります。)。一方でメリットの代わりにデメリットもあると思います。私自身が思うデメリットは障害者手帳を持ってしまうと周囲から「障害者」として見られることです。みなさんも周囲からそのように見られるとあまりいい気はしないのではないでしょうか。

障害者の割合については,日本では人口の約5%と言われていますが,アメリカでは約20%,イギリスでは約14%となっており,世界的に見た場合,WHOは約10%と推計しています。国によって値が違うのは,それぞれの国で障害の定義が異なるからです。この定義について,イタリアでは職業に就く上で何らかの不自由を感じる人となっているため,刑務所の出所者なども障害者に含まれますし,フランスでは雇用へのアクセスが困難な人となっているため,ニートや外国人も障害者に含まれます。日本においても定義を変えれば障害者の割合が20%となりますが,この20%の人に障害者手帳を交付すれば,日本の福祉制度は崩壊すると思います。

また,アメリカで最もバリアフリーが進んだ街のひとつであるバークレーでは多くの人が電動車いすを使用しています。しかし,彼らの多くは日本の定義では障害者には当たらない肥満の人たちです。バークレーでは,車いすで移動しやすい環境が整備されているため,車いす使用に対する心理的障壁が低くなっているのです。

さらに,日本人はメガネを使用している人の割合が外国人に比べて高いと言われていますが,メガネのない時代では(現在メガネを使用する人は)障害者になってしまいます。

このように障害の定義とは,国によっても異なりますが,周囲の環境や時代によっても異なります。

(ユニバーサルデザインについて)

人や環境,時代によって理想のユニバーサルデザイン(UD)は違ってくると思います。日本のUDはすべての人の要求を満たす最小公倍数的な考え方ですが,海外のUDはそれぞれの要求の共通する部分だけを満たす最大公約数的な考え方であると思います。

UDを進めるうえで大切なことは,要求を「絶対に必要なこと」,「できれば必要なこと」,「あればうれしいこと」の3つに分けることです。この3つはそれぞれ要求のレベルが違います。まずは「絶対に必要なこと」を満たすことが重要です。たとえばスロープの場合,スロープは滑りやすいので使いにくいという人もいますが,スロープがなければ移動できない人もいます。整備するに当たってどちらを優先するかは後者であると思います。このように,使いにくい人もいるが,(それがなければ)使えない人もいる場合,順序としては使えない人をなくしていくべきです。

また,すべての人の要求を満たすことは困難です。すべての人の要求を満たすために立派な基準を設けたとしても,その基準を満たすことが困難なために,結果的に設置(整備)されないことが起こりかねません。

UDを考えるとき,完璧なものを求めがちですが,完璧を求めるとコストも高くなってしまいますので,設備の数も少なくなってしまいます。完璧ではなくとも,(ある程度)使いやすくアクセス可能なものが増えればと思います。

 

講義の様子

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キャンパスプラザ講義「実践ユニバーサルデザイン」について

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