■平成20年度実践UD第3回講義の様子(三浦 研先生)
ページ番号41796
2016年4月14日
ライトハウスのUDへの取組み
(教室内での実験)
※次の2つの状態で受講生に教室内を約5メートル歩行してもらいました。
(1)視覚を奪った状態(目を閉じた状態)で歩行
(2)視覚と聴覚を奪った状態(目を閉じた状態に加え,音楽を聴いた状態)で歩行
講師:どちらの歩行が怖かったですか?
受講生:視覚と聴覚を奪った状態の方がどこまで歩いたかがわからないので怖かった。
講師:視覚障害を考えるときに,私たちは見えるか見えないかを中心に考えますが,人間には五感があり,視覚が機能しないときにはその他の感覚をうまく使っています。今回の視覚と聴覚を奪った状態では,視覚が機能しないときに次に頼るべき耳からの情報がなくなったため,結果,足裏の感覚だけに頼ることとなり不安になったのだと思います。この実験の趣旨は,視覚障害者に対する情報提供の方法は様々で,それを考えることがユニバーサルデザインにつながるということにあります。
(視覚障害に配慮したまちづくり)
私たちにとっては視覚障害の状態をイメージしづらく,大学の授業などにおいてあまり専門的な説明がなされていないことがあるため,まちづくりにおいて視覚障害への対応は遅れています。その結果,設計者は最後に視覚障害への対応(誘導ブロックの敷設)に直面することとなりますが,誘導ブロックを敷設することは設計者自身のデザインを阻害する要因となり,設計者は仕方なく誘導ブロックを敷設し,本来誘導ブロックは黄色であるべきところを,色を抑えたものにするというようなことが起こり得ます。現在,誘導ブロックについては国際的に統一したルールがないため,近年,国際標準化(ISO化)する動きが起こっています。
(音環境と歩行の関係を調べる実験)
視覚障害者の歩行と音環境との関係を示す実験結果を紹介します。この実験では,廊下の形状(四方が壁で囲まれている,片側が吹き抜けに面するなど)や被験者の状態(白杖を持つ,両耳を耳栓で塞ぐなど)を変えて,被験者の歩行の軌跡を調べる実験が行われました。
その結果,白杖を持った状態での歩行が最も乱れが少なく,耳栓をした状態での歩行が最も大きいことが確認されました。また,片側が吹き抜けに面する廊下の場合にも歩行に大きな乱れが生じることが確認されました。このことから視覚障害者の空間把握において,聴覚が重要な役割を持つことがわかり,さらには空気の流れからも空間把握できる可能性があるということがわかりました。
(床素材と歩行の関係を調べる実験)
次に,視覚障害者の歩行と床素材との関係を示す実験結果を紹介します。この実験では,京都ライトハウス1階ホールを実験場所として,そこの床に直径5ミリメートルのゴム線を敷き,又は2ミリメートルの点状突起のあるマットを敷き,被験者の歩行の軌跡を見る実験が行われました。
その結果,床の素材が変わると杖をついた際の音や足裏の触感が変化することで,歩行の軌跡が改善されることが確認されました。このことから,視覚障害者はそこに「情報」があるとわかると,視覚障害があっても環境の変化に適応可能であり,繰り返し使用する場所にあっては,床の素材は誘導ブロックを補完できることがわかりました。
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