■平成17年度実践UD第4回講義の様子(小林 整先生)
ページ番号27604
2016年4月14日
「実践ユニバーサルデザイン」第4回講義の様子
第4回講義
5月14日(土曜日)
講師
有)ストラトゲイト 小林 整 氏
テーマ
特殊性の中から生まれる普遍性
講義の概要
今回は,ユニバーサルデザインのものづくり・情報づくりに実際に携わっておられる小林さんの講義でした。
まず,ユニバーサルデザインの定義について,身体に障害のある方のための福祉機器サービスと,障害のない方のための一般製品サービスの間に,溝があり,それを埋めた上に,極力両者に通ずるデザインに拡張するための取組であると,説明されました。またそのプロセスには,多くの意見を聞いてそれを集約していく「帰納的プロセス」(例として多くの人に快適な自動車の開発)と,その逆である「演繹的プロセス」(例として,電話はもともと聴覚障害者用の補聴器として研究された経緯を説明)とがあると説明されました。
次に,障害のあるお子さんを御家庭にお持ちの経験を踏まえて,これらの子どもたちにもパソコンが使えるようにと,「かおマウス」の開発に到った経緯を説明されました。
通常のマウスは,障害のある方にとって,「装置自体が小さい」,「斜め方向の視線追従能力の問題」,「クリックボタンの左右の区別がしにくい」,「手首,腕,肩への負担が大きい」等を問題点として挙げられました。
その対策を講じたマウスには,ワンボタンマウス(ボタンが一つしかない),トラックボールマウス(ボールに直接触れて動かす),ジョイスティックマウス(レバー式)などがありますが,それぞれに「ボタンが一つしかない」,「不安定」,「意思とポイントの位置に誤差が出る」等の問題点があると指摘されました。
これらの課題を踏まえ,その解決策を探る中で,「かおマウス」の完成に到ったそうです。その特徴は「簡単(直交ローラー式)」,「可愛い(顔型デザインで利用の興味がわく)」,「手に優しい(木製)」,「頑丈(打撃に強い)」,「装置自体が動かず安定している。」,「左右対称なので直感的に分かりやすい。」などだそうです。実際に,小学校,医療福祉センター,シンポジウム等でも実演し,評判が良かったそうです。特にデザインが分かりやすいため,障害のない子ども達はもとより,知的障害のある子ども達にも,「利用への意欲を引き出す」効果があるとのことでした。また高齢者にとっても「分かりやすい」,「ポイントしやすい」などの特徴があると,実例を挙げてのお話がありました。
更に,「重度の知的障害のある方は,製品開発への参加,要望が困難であり,従来の開発プロセスは機能しない。長期間観察し試作を繰り返すことが必要である。」と自らの経験を踏まえた説明をされました。
講義の最後では,受講生たちが実際に「かおマウス」を利用体験し,感嘆の声が上がっていました。
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