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■平成17年度実践UD第12回講義の様子(河原林 桂一郎先生)

ページ番号27611

2016年4月14日

「実践ユニバーサルデザイン」第12回講義の様子

講義の様子


第12回講義
 7月9日(土曜日)

講師
 河原林 桂一郎 氏
 (静岡文化芸術大学大学教授)

テーマ
 家電製品におけるユニバーサルデザイン

 

講義の概要

 第12回は,静岡文化芸術大学教授 河原林 桂一郎さんが研究されているユニバーサルデザインについて,株式会社東芝在職中での経験を踏まえての講義でした。

 まず,ユニバーサルデザインの定義は「誰もが共用でき,しかも使いやすいものを作るという考えでデザインされたもの」であるとし,ロン・メイス博士の7原則についてもふれられました。ただし,この7原則はあくまで,目安であり,全部クリアーするのはなかなか困難で,このうちどれだけできているか、どれを優先するかということが大切と説明されました。

 次に,バリアフリーデザインとの違いですが,バリアフリーデザインはアメリカでは、朝鮮戦争やベトナム戦争の負傷帰還兵の生活を守るために発達し,最近では増大する交通事故の受傷者も含め「特別な人のための特別なデザイン」のことで,たとえば,「車いすの方のために別の入口をつくる」,「車椅子専用のリフトの設置」「車椅子専用の別のトイレを作る」等を例として挙げられました。

 ユニバーサルデザインは「みんなのための普通のデザイン」として定義され「車椅子でも入れるようにした間口の広いトイレ」などを例に挙げられました。またいくつかの例を挙げられました。まず,蛇口の変遷を例に挙げられ「ひねり式(バリアー)」から「レバー式(バリアフリー)」そして「センサー式(ユニバーサルデザイン)」,次に洗面所の鏡は「通常高い位置(バリアー)」,「斜めにつける(バリアフリー)」,「縦長の大きなものにする(ユニバーサルデザイン)」,そして,バスでは「階段式(バリアー)」,「リフト付バス(バリアフリー)」,「低床バス(ユニバーサルデザイン)」として説明されました。ユニバーサルデザインにはコストがかかるが,その負担をみんなで分かち合う思想を誰もが普通に持てたときにユニバーサルデザインが本当の意味で実現できるとし,出来た形も大切であるが,私達一人一人の頭の中の認識が大切であると説明されました。また「これからのあたりまえ」として「誰かにしか使えない」ではなく,「誰もが使いやすい」商品をかたちにしていくことが大切とも説明されました。

 その一方で,現実として「専用のもの」が必要な方もおられ,「障害や高齢に伴う身体機能の低下は個性として考えるべき」としたうえで,必要に応じた区別も大切であると説明されました。

 次に,デザインをするうえでの,ポイントとして,健常者としての「思い込み」によるデザインはしてはならず,かならず,利用対象者の検証を踏まえることの重要性を説明されました。たとえば,点字も貼ればよいのではなく,貼る位置が重要ですし,視覚障害者優先で考える傾向があるが,聴覚に障害のある方への配慮も十分考慮する必要があります。特に家電は様々な方が必ず使う生活必需品なので,幅広い理解と検証が必要であると説明されました。また,パソコンのキーボードや携帯電話、電卓の数字配置などを例に挙げられ,ユニバーサルデザインの推進には標準化(規格化)が重要なポイントになるとも説明されました。

 次に,老化についての研究について説明されました。例えば,視覚の老化については,「誰でも加齢に伴い,紫外線により水晶体が黄白濁するため,見えている色が変化し,背景の配色により,見えにくくなる文字色が出てくる。実験結果では,文字の組合せにもよるが,一般的には背景は白が最もよく,灰色,黒になるにつれ,文字との識別が困難になる。」と説明されました。また,手先の老化としては「加齢に伴い,ボタン操作の押圧が低下する。若い方は300gであるが,高齢者は100gが好ましくなる。また手が震える状態になることが多い。」とし,これらを検証した上で,ボタンを押すための強さを考える必要があると説明されました。また「指先の動き,指先の力が低下する。」ため,できればボタンの表面に凸凹を付け滑らないようにするのが望ましいと説明されました。また,「加齢に伴い脊柱湾曲,関節の硬化により動作範囲が縮小化する。」ため,製品の高さへの配慮が必要なことも説明されました。また,開発者は「インスタントシニア体験」などで,「高齢」を実体験するが,開発者だけでなく,現場の「営業担当」も体験し,「高齢」を把握しないと意味がないと説明されました。

 これらを踏まえて,東芝では冷蔵庫の開閉を「タッチオープン式」にしたり,洗濯機に縦型傾斜投入口の「ドラム式」を採用し,高さ調整が出来るような仕様にしたと説明され,その他の東芝製品についてユニバーサルデザインの実例を挙げて説明されました。

 最後の締めくくりとして,

1.対処療法的な対応でなく,全体像を幅広く考える視点が必要

2.障害は個性として理解すること

3.ユニバーサルデザインにかかるコストはみんなで負担すること

4.日本は高齢化の速度が速いが,これを活用して世界をリードするユニバーサルデザイン社会を構築する必要があること

などが大切であると説明されました。

 

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