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男女共同参画懇話会答申(基本的施策)

ページ番号2376

2007年10月1日

条例 に 盛 り 込 む べ き 内 容

 

3 基本的施策

 

(1)基本計画

 女性と男性の平等の推進に関する施策の実施に当たって基本となる計画について,次のように明記することを提言します。

 

  • 市長は,女性と男性の平等の推進に関する施策を総合的に実施するために,基本となる計画(以下「基本計画」という。)を策定すること。
  • 基本計画は,次に掲げる事項について定めること。
    ・長期的に講じるべき女性と男性の平等の推進に関する施策の大綱
    ・その他,女性と男性の平等の推進に関する施策を計画的に推進するために必要な事項 
  • 市長は,基本計画を策定するに当たっては,あらかじめ審議会の意見を聴くとともに,市民,事業者及び民間団体等の意見を反映することができるよう適切な措置を講じること。
  • 市長は,基本計画を策定したときは,速やかに公表すること。
  • 上記に掲げる事項は,基本計画の変更について準用すること。

 

【基本的考え方】
 女性と男性の平等の実現に向けて市が取り組むべき施策は,人権,教育,福祉など広範多岐の分野にわたり,また,それらが相互に関連しあっています。そのため,市が実施するさまざまな施策の総合的かつ効果的な推進を図るためには,その基本となる計画の策定が不可欠です。さらに,市は,計画の推進に際し,具体的な数値目標の設定や年次計画の作成などにより,着実に取組を進めていく必要があります。
 基本計画は,市のさまざまな施策を体系的に整理し,その総合的な推進を図ることを目的として策定する行政計画ですが,そこに掲げる目標は,市民,事業者及び民間団体等がそれぞれ主体的に女性と男性の平等を推進することによってはじめて達成されるものです。そのため,計画の策定に当たっては,審議会の調査審議の結果を踏まえて内容を検討するとともに,できる限り市民参加の機会を設け,幅広く市民等の意見の反映に努めることが求められます。
 なお,この基本計画は,男女共同参画社会基本法第14条第3項に基づく市の男女共同参画計画となるものであり,現行の「きょうと男女共同参画推進プラン」がこれに当たります。

 

 

(2)施策の策定等に当たっての配慮

施策の策定等に当たっての配慮について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,施策を策定し,実施するに当たっては,その施策が女性と男性の平等の推進に及ぼす影響に配慮すること。

 

【基本的考え方】
 市の施策の多くは,女性と男性の区別なく適用され,又は女性と男性を等しく扱うこととなっています。しかし,女性と男性の平等の推進に直接関係しない施策であっても,女性と男性では置かれている状況や実際のニーズが異なるので,こうした点に配慮がなされないと,結果として,女性と男性の現実の格差を固定あるいは拡大させるなど,女性と男性の平等の推進に副次的な影響を及ぼすことがあります。
 そのため,市は,施策の企画,立案,実施に際し,それが女性と男性にどのような影響を及ぼすのかを点検したうえで,その影響に十分配慮することが求められます。これは,政策過程に女性と男性の平等の視点を組み込むことであり,同時に,市のあらゆる施策ができる限り女性と男性の平等の推進に資するものとなることをめざすものです。

 

 

(3)市民等の理解を深めるための措置

 女性と男性の平等に関する市民,事業者及び民間団体等の理解を深めるための措置について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,女性と男性の平等の推進に関し,市民,事業者及び民間団体等が理解を深め,自主的な取組を行うことができるようにするために,広報活動,学習・研修機会の提供その他の必要な措置を講じること。

 

【基本的考え方】
 人々の意識の中には,今なお固定的な性別役割分業意識が残り,それが女性と男性の平等を推進するうえでの大きな障壁となっています。そのため,市は,女性と男性の平等に関する広報活動や学習・研修機会の提供などを継続して行い,ひとりひとりが女性と男性の平等についての理解を深め,その理念を実行に移すことができるよう,支援を行っていくことが必要です。
 たとえば,市が補助金交付や契約の対象とする事業者等については,市の取組に対する理解や協力を積極的に求めるべきであると考えます。そのため,補助金交付や契約に当たっては,女性と男性の平等の推進に関する一定の事項を条件に含めることまでは制度上困難であるものの,こうした機会を有効に活用して,市が女性と男性の平等の推進について相手方に働き掛けを行うことが必要です。具体的には,女性と男性の平等に関する情報を積極的に提供することなど,今後,運用において創意工夫がなされることを期待します。

 

 

(4)家庭生活と職業生活その他の活動との両立の促進

 家庭生活と職業生活その他の活動との両立の促進について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,家族を構成する者が性別にかかわらず家庭生活と職業生活その他の活動とを容易に両立することができるよう,必要な支援及び環境の整備に努めること。

 

【基本的考え方】
 固定的な性別役割分業を前提としたこれまでの社会にあっては,家事,子育て,介護などを担うことが期待される女性は,就業をはじめとするさまざまな活動が制約されてきたといえます。こうした状況の中で,今後さらに,女性が広く社会で活躍できる可能性を高め,性別にかかわりなく多様で柔軟な生き方をみずから選択できるようにすることが求められています。
 そのため,市は,女性に偏りがちな子育て,介護などの支援サービスを拡充することにより,女性と男性が社会のあらゆる分野に平等に参画できる機会を確保するとともに,家庭責任を女性と男性が公平に担っていくという意識の醸成を図る必要があります。この場合,重要なことは,ひとり親家庭などを含めた多様な家族のあり方を前提とし,また,子育て期や高齢期などの各ライフステージに応じて,きめ細かな社会的支援体制を女性と男性の平等の視点に立って整備することであると考えます。

 

 

(5)雇用等における女性と男性の平等な機会と待遇の確保

 雇用等における女性と男性の平等な機会と待遇の確保について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,雇用における女性と男性の平等な機会と待遇の確保に関する事業者の取組を促進するため,情報提供,助言その他の必要な措置を講じること。
  • 市長は,必要があると認めるときは,事業者に対し,女性と男性の平等の推進に関する取組の状況等について報告を求めることができること。
  • 市長は,前項の報告を取りまとめ,公表することができること。
  • 市は,商工業,農林業等の家族経営における女性と男性の参画を促進するために,情報提供その他の必要な支援を行うこと。

 

【基本的考え方】
 人間にとって働くことは,経済的自立の手段として不可欠であり,女性が自立するための最も重要な前提条件であるばかりでなく,自分が持っているさまざまな能力を高めていくという意味で自己実現の手段でもあり,また,社会の発展に貢献し,評価されるという意味で社会的存在証明の手段でもあります。こうした観点からみると,「労働の権利」は,性別を問わずすべての人間にとって奪うことのできない権利です。
 男女雇用機会均等法では,雇用における女性への差別的な取扱いを原則として禁止していますが,依然として,女性と男性の事実上の格差が解消されたわけではありません。今後,雇用の分野において,女性と男性の「平等な機会」のみならず「平等な待遇」を確保していくためには,事業者の積極的な取組とそれを促進させる市の強い働き掛けが必要です。
 しかし,労働条件の改善や雇用対策などのいわゆる労働行政については,国や府の所管となっており,男女雇用機会均等法では,国が,事業者に対する指導・勧告やその勧告に従わない場合の氏名公表,女性労働者と事業者との紛争解決の援助などを行うものされています。
 そのため,市は,国や府との連携・協力の下,可能な権限の範囲を最大限に活用しつつ,雇用における女性と男性の平等を推進していく必要があります。この場合,行政指導や,公表,罰則などの規制的手法が個別法令で規定されており,それらが有効に機能することを前提として,市は,緩やかではあっても事業者に対する効果的な働き掛けとして,雇用における女性と男性の平等の推進に関するさまざまな情報の提供,積極的改善措置(ポジティブ・アクション)【※5】等の助言,優良事業者の顕彰などの誘導的手法を講じることが望まれます。
 また,商工業や農林業などの家族経営に従事する女性は,産業の重要な担い手であるとともに,それぞれの生活の運営や地域社会の維持・活性化に大きな役割を果たしていますが,実際には,その貢献に見合った正当な評価を受けていない場合があります。近年,主に農業経営において,家族員間で就業条件,役割分担,収益の分配方法等について協議し,合意した事項を書面などで取り決める「家族経営協定」が普及しつつありますが,今後,市は,こうした自営業で働く女性と男性が,共に能力を発揮し,生産や経営に共同して参画できるよう情報提供などの支援を行っていく必要があります。

 

※5 積極的改善措置(ポジティブ・アクション)
 女性と男性とでは,さまざまな活動に参画できる機会に格差がある場合,その格差を改善するため必要な範囲内で,女性と男性のいずれか一方に対して,その機会を積極的に提供すること。
 

 

(6)組織の意思形成における女性と男性の平等な参画

 組織の意思形成における女性と男性の平等な参画について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,附属機関【※6】等の委員の任命又は委嘱に当たっては,女性と男性の委員の数の均衡を図ること。
  • 上記のほか,市は,率先して,その政策・方針決定過程に女性と男性が平等に参画できる機会を確保するよう努めること。
  • 市は,民間団体等に対し,その団体の意思形成における女性と男性の平等な参画を促進するために,積極的改善措置(ポジティブ・アクション)【※5】等に関する情報提供,助言その他の必要な支援を行うこと。

 

【基本的考え方】
 組織の意思形成に女性と男性が平等に参画していくことは,あらゆる分野で女性と男性の平等を実現するための基本的な要件です。そのため,市は,率先して,政策・方針決定過程への女性の登用に努める必要があり,とりわけ,審議会等の委員を任命又は委嘱するに当たっては,女性と男性の委員の数の均衡を図ることが求められます。こうした取組については,長期的な視野に立った女性の人材育成が不可欠ですが,外郭団体を含めて市が率先していくことで,社会への広がりが期待できます。
 また,事業者や民間団体等において,その意思形成に女性と男性が平等に参画できる機会の拡大を促していくためには,積極的改善措置(ポジティブ・アクション)が特に重要です。この措置については,女性差別撤廃条約【※7】において,「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは,この条約に定義する差別とは解してはならない。」(第4条1項)とされていますが,実際には,女性に対する差別や偏見を助長することも危惧されます。そのため,市は,積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の本来の意義や目的の周知に努めるとともに,その実施を促進するための情報提供,助言などを行うことが必要です。


 
※6 附属機関
 法律や条例に基づいて地方公共団体が調停,審査,諮問又は調査のために設置する機関。
 
※7 女性差別撤廃条約
  1979年第34回国連総会で採択され,日本は1985年に批准。正式名称は「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」( Convention on the Elimination of All Forms of 
Discrimination against Women )。2002年6月現在の締約国数は170か国。

 

 

(7)教育及び学習活動の振興

 女性と男性の平等に関する教育及び学習活動の振興について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,学校,家庭,地域及びその他の社会において、女性と男性の平等に関する教育及び学習活動を振興するため,必要な措置を講じること。

 

【基本的考え方】
 人権尊重を基盤とした女性と男性の平等についての意識を醸成していくうえで,学校,家庭,地域などで行われる教育・学習活動が大きな役割を果たします。とりわけ,学校教育は,子どもの民主的な人格形成を図るとともに,自立を促すための重要な営みであり,女性と男性の平等に関する教育の積極的な展開を通じて,児童・生徒ひとりひとりの多様な個性と能力を発達させることが求められます。その際,固定的な性別役割分業意識や女性と男性の不平等なあり方が,「隠れたカリキュラム」として学校教育の過程にジェンダー・バイアス【※3】を残しているとの指摘もあり,これに十分配慮しつつ,女性と男性の平等を推進する観点から学校教育活動の全般的な見直しを図ることが必要です。
 また,「性別による固定化された生き方」から「個性による多様な生き方」への転換を図る教育・学習活動は,生涯にわたってあらゆる機会にあらゆる場面で行われることが重要であり,とりわけ女性のエンパワーメント【※8】の基礎となります。そのため,市は,学校を核としつつも,家庭や地域との緊密な連携の下で,女性と男性の平等に関する教育・学習活動を振興し,年代を問わず個人の主体性と多様性を確保していくことが大切です。

 

※3 ジェンダー・バイアス( gender bias )
 「ジェンダー」とは,生物学的な性差(sex)とは直接関係のない社会的・文化的につくられた性差のことで,女性と男性の性役割,行動様式,心理的特徴などにおける合理的な根拠に基づかない「男らしさ」「女らしさ」をいう。「ジェンダー・バイアス」とは,女性と男性の間におけるジェンダーによる期待,処遇,認識等の偏りのこと。

※8 女性のエンパワーメント
 個々の女性が,みずから意識と能力を高め,政治的,経済的,社会的及び文化的に力を持った存在となること。

 

 

(8)性と生殖に関する健康の保持増進等

 性と生殖に関する健康の保持増進等について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,女性と男性が,それぞれの性についての理解を深め,妊娠,出産その他の性と生殖に関し,各々の意思が尊重されるとともに,生涯にわたる健康と権利が保障されるよう必要な支援を行うこと。

 

【基本的考え方】
 女性と男性の平等の推進に当たっては,女性と男性が共に,妊娠,出産など性や生殖に関する生物学的な違いを理解し,互いの性を認めあうことが大切です。そのため,市は,リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)【※9】の理念を踏まえて,女性と男性が共に性と生殖に関するさまざまな事項についての各々の判断・決定を尊重していくという認識を社会全体に広めていく必要があります。
 また,生涯を通じて男性とは異なる健康上の変化に直面する女性が,みずからのからだについての正しい知識・情報を得て,みずから判断し,健康を享受できるよう支援することが重要です。そのため,市は,母子保健医療をはじめ,思春期,妊娠・出産期,更年期,高齢期など女性のライフステージに応じたこころとからだの健康づくりを推進していくことが求められます。

 

※9 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)
 1994年にカイロで開催された「国際人口・開発会議」で提唱された概念。その中心課題は,いつ何人子どもを産むか産まないかを選ぶ自由,安全で満足のいく性生活,安全な妊娠・出産,子どもが健康に生まれ育つことなどが含まれ,また,思春期や更年期における健康上の問題など生涯を通じての性と生殖に関する課題が幅広く議論されている。
 

 

(9)市民等の活動に対する支援

 市民及び民間団体等の女性と男性の平等の推進に関する活動の支援について,次のように盛り込むことを提言します。 

 

  • 市は,女性と男性の平等の推進に関する活動を行う市民及び民間団体等に対し,その活動に必要な情報提供その他の支援を行うこと。

 

【基本的考え方】
 女性と男性の平等の推進には,市民や民間団体等の自主的な活動が重要な役割を果たしており,市の取組と連携・協力することにより,さらに大きな相乗効果を期待できます。そのため,市は,女性と男性の平等の推進に関し行政とは異なる立場から行われる市民や民間団体等の活動との連携・協力に努めるとともに,その活動に必要な情報の提供,活動拠点の確保,財政的支援などを行うことが望まれます。

 


 

(10)情報の収集及び調査研究

 施策の策定・実施に必要な情報の収集及び調査研究について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,女性と男性の平等の推進に関する施策を策定し,実施するために必要な情報の収集及び調査研究を行うこと。
  • 市は,上記の調査研究を行うに当たっては,大学(学校教育法第1条に規定する大学をいう。)及び研究機関等との連携に努めること。

 

【基本的考え方】
 市は,女性と男性の平等の推進に関する施策を総合的かつ効果的に実施していくための基礎資料として,市民の意識や国内外の動向を的確に把握するとともに,性別の統計データ,女性と男性の平等についての学術成果など必要な情報を幅広く収集し,分析することが必要です。また,「大学のまち・京都」の特徴を生かし,市内の大学や各種研究機関との連携を図りながら,女性と男性の平等を阻害するさまざまな課題についての調査研究を行うことが求められます。なお,収集した情報や調査研究の成果については,行政資料とするだけではなく,市民等が活用できるよう,多様な手段によって公表していくことが望まれます。

 

 

(11)推進体制の整備

 女性と男性の平等を推進する体制の整備について,次のように盛り込むことを提言します。

 

  • 市は,女性と男性の平等の推進に関する施策を総合的かつ効果的に実施するために,必要な推進体制を整備すること。

 

【基本的考え方】
 女性と男性の平等の推進に関する市の施策は広範多岐の分野にわたっており,それらの施策を総合的かつ効果的に実施していくためには,庁内において総合的な調整を図ることのできる体制を整備するとともに,女性と男性の平等に関する市職員の意識をさらに高揚させることが必要です。また,市,市民,事業者及び民間団体等の有機的なネットワークを構築することにより,女性と男性の平等の推進に関する市全体の体制づくりが求められます。 

 

 

 

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