祇園町南歴史的景観保全修景地区歴史的景観保全修景計画
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2022年9月1日
平成11年6月3日京都市告示第144号
京都市市街地景観整備条例(以下「条例」という。)第24条の規定により,祇園町南歴史的景観保全修景地区における歴史的景観保全修景計画を次のとおり定める。
なお,この計画において用いる用語の意義は,建築基準法又は条例において使用する用語の例による。
1 保全及び修景に関する基本計画
(1)地区の指定
祇園町南地区で歴史的様式を継承する町家が連担する市街地及び計画的にそのような市街地に整備する区域を指定する。
家屋の形態・意匠の異なる次の3地区で構成する。
Ⅰ地区;祇園町南側地区
おおむね,祇園町南側の市街地で,面積約6.6ヘクタール
Ⅱ地区;宮川町地区
おおむね,宮川筋3丁目から6丁目の市街地で,面積約2.1ヘクタール
Ⅲ地区;八坂通地区
おおむね,東大路通から大和大路までの八坂通沿道市街地で,面積約1.5ヘクタール区域は計画図に示す。
(2)町並みの形成の沿革
建仁寺は,1200年代に開かれた最古の禅宗寺院で,その境内地を取り巻くように祇園町南地区の市街地が形成されている。16世紀後半,豊臣秀吉が方広寺,伏見城を築いたことにより,大和大路は,にわかに人の往来が増え,通り沿いに町並みが形成された。寛文6年(1666),宮川町通が開通し,同10年(1670)に鴨川護岸の石積みも完成したことから,急速に宮川町の町並みが整い,歌舞伎の流行もあって,茶屋町として発展した。
明治(1868年~)に入り,維新前夜の祇園の火災や洛中の戦火などにより衰退する京都の救済策として,建仁寺の塔頭を整理して町地とし,祇園町南側の町並みが形成された。また,大正初期,東大路通の開通を機に八坂通が築造され,沿道の町並みが形成された。
現在は,鴨東の山紫水明の地に,木造建築の宝庫として繊細で雅やかな町並み景観を生み出し,京都を代表する歴史的景観地区となっている。
(3)景観整備の目的
長い歴史の中で洗練され,優れた意匠・形態を有する京風町家で構成される町並み景観を後世に伝え,かつ魅力ある生業や生活が営めるよう環境を維持・増進することを目的とする。
(4)地区の景観特色と整備方針
歴史的な様式を継承しながらも家主の人格が表されるように,洗練されたデザインで造られる家屋が連担する木造建築の宝庫として町が営まれてきた。茶屋様式の町家を主流としつつ,各家屋はそれぞれに形態・意匠を異にして,個性を発揮しているが町並みとしては,落ち着きのある洗練された風情を醸し出し,訪れる人に深い感銘を与える。これらの家作は,住まい手の美意識とそれを見事に表現する職人の作品であり,木造建築の芸術品と言え,この家作の伝統を継承し,さらに磨きをかけることにより,京都固有の町並み景観の粋を増進していく。
2 建築物その他の工作物の位置,規模,形態,意匠に関する事項
地域固有の意匠・形態を継承するため,次の基準に適合すること。
(1)3地区共通基準
ア 建築物の位置
建築物の主壁面は,道路沿いに塀・柵などを設けない場合は,両隣の家屋の壁面と連続するよう配慮し,また,1階壁面が道路境界からおおむね1.8メートル以上離れていないこと。
イ 建築物の規模
建築物の高さは,15メートル以下とし,公共用空地から(目線の位置から見た場合。以下同じ。)見える部分の高さは,12メートル以下とすること。ただし,公益上必要と認められるもの並びに形態及び意匠が特に優れていると認められるものについてはこの限りでない。
ウ 建築物の形態,意匠
(ア)屋根は切妻平入りとし,屋根勾配は,3.0/10から4.5/10の範囲内にあること。ただし,道路交差部に位置する建築物は,この限りでない。
(イ)前面道路に面して深い軒を設けること。ただし,張り出し2階の場合は,この限りでない。
(ウ)通り庇(1階上部の軒庇)を設けること。ただし,高塀等により1階壁面が公共用空地から見えない場合はこの限りでない。
(エ)屋根材は,日本瓦,銅板又はこれらに準じる材料で葺くこと。
(オ)建築物の外観の形態及び意匠は,真壁造りを基調とし,当該区域の歴史的な様式を尊重すること。
(カ)通りに面した窓,入口などの1階開口部は,和風デザインとし,ガラス面を露出しないこと。ただし,ショーウィンドー及び飾り窓などこれらに類するものは,この限りでない。
エ 門・塀などの位置,規模,形態,意匠
(ア)塀の高さは1.8メートルから2.5メートルの範囲内にあること。ただし,既存のもので,2.5メートルを超えるものは既存の高さ以下とすること。
(イ)塀又は柵の意匠は,和風を基調とすること。
(ウ)門灯,外灯など照明器具の意匠は和風を基調とすること。
(エ)その他の工作物は,できる限り石,木材などの自然材で造ること。
オ 建築物以外の工作物の規模
土地に定着する工作物の高さは15メートル以下とする。ただし,公益上必要と認められる第2類工作物並びに形態及び意匠が特に優れていると認められる第2類工作物についてはこの限りでない。
(2)地区別基準
ア 祇園町南側地区
(ア)公共用空地から見える部分で3階建てにする場合,3階壁面は2階壁面より後退し,かつ,道路境界より次の数値以上後退すること。
a 花見小路通に面した敷地では,おおむね4メートル
b その他の通りに面した敷地では,おおむね3メートル
(イ)軒の出は,おおむね0.9メートル以上とすること。ただし,張り出し2階形式の場合は,0.6メートル程度とする。
(ウ)通りに面した2階窓には,可能な限り簾をかけること。
イ 宮川町地区
(ア)建築物の敷地が宮川町通と川端通に面する場合にあっては,川端通に面する外観の形態・意匠についても,本基準に適合するように配慮すること。
(イ)公共用空地から見える部分で3階建てにする場合,3階壁面は2階壁面より後退し,かつ道路境界より次の数値以上後退すること。
a 宮川町通に面した敷地では,おおむね2.7メートル
b その他の通りに面した敷地では,おおむね1.8メートル
(ウ)軒の出は,おおむね0.6メートル以上とすること。ただし,張り出し2階の場合は,0.4メートル程度とする。
(エ)宮川町通に面して,物干し台,テラス又はバルコニーなどこれらに類するものを設けないこと。
(オ)通りに面した3階窓には,簾をかけること。ただし,住宅用途の建築物等で,居住のための居室の場合は,この限りでない。
ウ 八坂通地区
(ア)軒の出はおおむね0.9メートル以上とすること。
(イ)1階上部に通り庇,屋根付高塀を設けるなどして,1階軒庇線の連続性を保つこと。
(ウ)八坂通に面する側を3階建てにする場合は,3階壁面を2階壁面より後退させること。
(エ)門及び塀を設ける場合は,次の基準に適合すること。
a 門の位置は,塀に位置より,後退させること。
b 門,塀の形態及び意匠は和風デザインとし,ガラス面を露出しないこと。
c 塀の形態及び意匠は,長大感を感じさせないデザインとすること。
d 塀の高さは,既存の塀の高さ以下,又は地盤面から1.8~2.5メートルの範囲とし,地盤面と道路中心との間に高低差がある場合は,石積みなどの自然素材感のある材料で処理すること。
e 塀に設ける目隠し塀又は犬矢来などの工作物は,木竹などの自然素材感のある材料で造ること。
(3) 京都市美観風致審議会の意見の聴取
次に掲げる行為をしようとするときは,あらかじめ,京都市美観風致審議会の意見を聴かなければならない。
ア 2(1)イのただし書きの規定を適用して行う条例第25条第1項の規定による承認
イ 2(1)オのただし書きの規定を適用して行う条例第25条第1項の規定による承認
3 歴史的様式
建築物の歴史的様式を地区別に次のように定める。なお,本二階の様式には中二階,平屋のものを含むものとする。
(1)祇園町南側地区
次の様式を祇園町南側地区の歴史的様式とする。
ア 住居様式2種類
(ア)本二階格子造しもたや様式(様式図1-1)
(イ)玄関庭付本二階住居様式(様式図1-2)
イ 店舗様式4種類
(ア)本二階格子造店舗用式(様式図2-1)
(イ)本二階土間造店舗様式(様式図2-2)
(ウ)本二階数寄造店舗様式(様式図2-3)
(エ)本二階飾り窓付店舗様式(様式図2-4)
ウ 茶屋様式7種類
(ア)本二階茶屋様式(様式図3-1)
(イ)本二階塀造茶屋様式(様式図3-2)
(ウ)本二階数寄造茶屋様式(様式図3-3)
(エ)玄関庭付本二階茶屋様式(様式図3-4)
(オ)玄関棟付本二階茶屋様式(様式図3-5)
(カ)高塀前庭付本二階茶屋様式(様式図3-6)
(キ)高塀玄関棟付本二階茶屋様式(様式図3-7)
(2)宮川町地区
次の様式を宮川町地区の歴史的様式とする。
ア 住居様式3種類
(ア)本二階格子造しもたや様式(様式図1-1)
(イ)玄関庭付本二階住居様式(様式図1-2)
(ウ)前庭付本二階住居様式(様式図1-4)
イ 店舗様式4種類
(ア)本二階格子造店舗様式(様式図2-1)
(イ)本二階土間造店舗様式(様式図2-2)
(ウ)本二階数寄造店舗様式(様式図2-3)
(エ)本二階飾り窓付店舗様式(様式図2-4)
ウ 茶屋様式5種類
(ア)本二階茶屋様式(様式図3-1)
(イ)本二階塀造茶屋様式(様式図3-2)
(ウ)本二階数寄造茶屋様式(様式図3-3)
(エ)高塀前庭付本二階茶屋様式(様式図3-6)
(オ)本二階破風付茶屋様式(様式図3-8)
(3)八坂通地区
次の様式を八坂通地区の歴史的様式とする。
ア 住居様式6種類
(ア)本二階格子造しもたや様式(様式図1-1)
(イ)玄関棟付本二階住居様式(様式図1-3)
(ウ)前庭付本二階住居様式(様式図1-4)
(エ)高塀前庭付本二階住居様式(様式図1-5)
(オ)高塀前庭付本二階数寄造住居様式(様式図1-6)
(カ)高塀付本二階邸宅様式(様式図1-7)
イ 店舗様式3種類
(ア)本二階格子造店舗用式(様式図2-1)
(イ)本二階土間造店舗様式(様式図2-2)
(ウ)本二階数寄造店舗様式(様式図2-3)
□住居様式(様式1)
○本二階格子造しもたや様式
(様式1-1)
店舗様式の家屋の二階部分の格子窓の格子をはずすなど,居住性を高めて居住専用に改装した様式
○玄関庭付本二階住居様式
(様式1-2)
しもたや様式(様式1-1)の玄関口部分を後退させて,玄関庭及び玄関口を設ける様式
○玄関棟付本二階住居様式
(様式図1-3)
主棟に玄関棟を増設し,玄関庭や玄関口を設ける様式
○前庭付本二階住居様式
(様式図1-4)
家屋前面に庭を配置し,塀や垣根で囲み,玄関口を設ける様式
○高塀前庭付本二階住居様式
(様式1-5)
家屋前面に庭を配置し,高塀で囲み道路から一階部分を見えなくし,玄関口を設ける様式
○高塀前庭付本二階数寄造住居様式
(様式図1-6)
家屋前面に庭を配置し,高塀で囲み道路から一階部分を見えなくし,玄関口を設け,家屋,高塀,玄関口などを茶室風のしょうしゃなデザイン(数寄屋)で造る様式
○高塀付本二階邸宅様式
(様式1-7)
家屋の2方向以上に庭を配置し,高塀で囲み,玄関口を設ける様式
□店舗様式(様式2)
○本二階格子造店舗用式(様式2-1)
外壁を面格子や出格子窓で構成し,通り庭を配置し,それに面して居室を設け店舗として利用する様式
○本二階土間造店舗様式
(様式2-2)
二階外壁を面格子や出格子窓で構成し,一階の玄関口の居室を上げ床にしないで土間で造り,店舗として利用する様式
○本二階数寄造店舗様式(様式2-3)
格子造店舗用式(様式2-1)で,外観を数寄屋で造る様式
○本二階飾り窓付店舗様式(様式2-4)
格子造店舗用式(様式2-1)の一階の格子窓を飾り窓に替えた様式
□茶屋様式(様式3)
○本二階茶屋様式(様式3-1)
二階壁面を通り庇の上に張り出して立ち上げ,二階を接客空間として利用する茶屋や旅館などで採用される標準様式
○本二階塀造茶屋様式
(様式3-2)
通り庇の先端部に塀を設け,それを家屋の外壁とし,通り庇の軒下部を室内に取り込んだ様式
○本二階数寄造茶屋様式
(様式3-3)
茶屋様式で,外観を数寄屋で造る様式
○玄関庭付本二階茶屋様式
(様式3-4)
茶屋様式で,玄関口部分を後退させ,玄関庭と玄関口を設ける様式
○玄関棟付本二階茶屋様式
(様式3-5)
茶屋様式で,主棟に玄関棟を増設し,玄関庭と玄関口を設ける様式
○高塀前庭付本二階茶屋様式
(様式3-6)
家屋前面に庭を配置し,高塀で囲み,一階部分を通りから見えなくし,玄関口を設ける様式
○高塀玄関棟付本二階茶屋様式
(様式3-7)
塀造茶屋様式(様式3-2)に玄関棟を増設し,玄関庭と玄関口を設ける様式
○本二階破風付茶屋様式
(様式3-8)
茶屋様式(様式3-1)で,通り庇の玄関口の上の破風を設ける様式
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