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京都市基本計画/第2章1

ページ番号35909

2001年1月10日

第2章 華やぎのあるまち

・景観や緑地を保全し,地域住民のまちづくり活動や美化活動を支援するなど,美しいまちの実現をめざすとともに,成熟した文化・芸術の豊かさを享受できる文化首都をめざす。また,国内外との多彩な交流を進めるとともに,京都の豊富な学習資源を生かした創造的な生涯学習を促進し,魅力あふれるまちをめざす。

・ものづくりの伝統を生かし,産学公の連携による京都独自の産業システムを発展させるとともに,21世紀の京都を牽引する新たな観光を創造する。また,大学の集積を生かしたさまざまな交流を進め,若者がいきいき学び,働き,くらすことができる活力あふれるまちをめざす。

・「保全・再生・創造」を基本とし,多彩で個性的な機能をもつ魅力あるまちづくりを進める。また,「歩くまち・京都」の考え方を踏まえた公共交通優先の交通基盤,高度情報通信社会に対応した情報基盤を整備し,豊かな市民生活と多様な都市活動を支える。

 

 

数字で見る2010年の市民のくらしとまち

第1節 魅力あふれるまち
○電柱の見えない道路の延長(電線類地中化等)30km(1999年度)60km(倍増)
○市民1人当たりの都市公園面積3.08m2(2000年)6m2(倍増)
○留学生数2,677人(1999年)3,700人(1,000人増)
○市立図書館の蔵書数 140万冊(2000年度)300万冊(倍増)
○学校コミュニティプラザ数7ゾーン(2000年度)17ゾーン(1年間に1ゾーン整備)
○地域の生涯学習コーディネーター数0人(2000年度)500人(概ね小学校区に2人以上)

 

第2節 活力あふれるまち
○事業所開業率2.3%(1991~1996年)10%
○観光客数 3,899万人(1999年)5,000万人
○海外からの観光客(宿泊客)数39万人(1999年)80万人(倍増)
○シティカレッジ科目提供数250科目,34大学(2000年度)500科目,49大学(倍増)
○「青年の家」の利用者数24万人(1999年度)30万人(近年の増加率による)

 

第3節 市民のくらしとまちを支える基盤づくり
○「地区計画」策定箇所数30地区(1999年度)60地区(倍増)
○市内におけるひとの移動の公共交通機関分担率48.2%(1998年)55%(10年前(1990年)の分担率に回復)
○インターネット利用率 28.9%(1999年)90%(3倍増)

 

 

第1節 魅力あふれるまち

1 美しいまちをつくる

基本的方向
 京都が魅力あふれる美しいまちであり続けるため,規制の強化のみによるのではなく,住民みずからが取り組む活動に対する支援を行うなど,まちの美化を進めるとともに,地域の個性や自然・歴史的な条件を十分に考慮して,景観や緑地の保全と向上に努める。
 このようにして,自然・歴史的な風土と調和したまちを保全・再生するとともに,京都の華やぎを後世に伝える新しい景観を創造するための取組を進める。

 

(1)市民,事業者と一体となったまちの美化の推進 [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)ア参照]

ア 美化活動の促進

 (ア) まちの美化活動の促進

 「世界一美しいまち・京都」を実現するため,ひとりひとりが決してごみを捨てない,また,捨てさせない意識を築いていくよう,市民,事業者と一体となって,まちの美化の推進に取り組む。また,身近で日常的なまちの美化活動の定着を図るため,「まちの美化推進住民協定」の締結拡大を促進する。

 (イ) 公園の美化活動の促進

 花と緑のくつろぎ空間でもある身近な公園を,市民の協力の下,適正に維持管理していくため,地域で自発的に結成されている公園愛護協力会の活動を支援する。

 (ウ) 河川の美化活動の促進

 鴨川をはじめとする市内の河川を美しく保つため,各河川ごとに付近の住民を中心に自発的に結成されている河川愛護団体の活動を支援する。

 (エ) 地域の自転車等駐車対策協議会の設置促進

 歩行空間をはじめとする道路の景観を美しく維持するため,自転車の適正な利用マナーやルールを守るよう呼びかける地域の自転車等駐車対策協議会の設置を促進する。

イ まちの美化に向けた監視・指導の強化

 警察等関係機関との連携強化の下,不法投棄監視パトロールや悪質な投棄者の告発など指導取締りを強化するとともに,放置自転車等の撤去,違法駐車,違反広告物等の防止・啓発活動を推進する。

 

ちょっと注目!

まちの美化活動の促進

  • まちの美化推進住民協定の締結促進運動や地域一斉清掃等の取組への支援
  • 観光地や繁華街,駅,幹線道路等における美化活動の促進
  • 美化運動の全市的ネットワークづくり
  • まちの美化市民総行動の促進

 

(2) 個性的で美しい景観の形成

ア 自然・歴史的な景観の保全 [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)イ(ア)「1 個性と魅力あるまちづくり」(1)ア(ア)参照]

 (ア) 歴史的風土の保存・緑地の保全

 三方の山々やその山すそ等の歴史的に意義の高い景観のうち,五山の送り火を含むとくに重要な所を「歴史的風土特別保存地区」に,吉田山等の都市内のまとまった緑地を「緑地保全地区」に指定している。これらの地区においては,現状変更行為を原則として禁止することにより,歴史的風土の保存や緑地の保全を図るとともに,本市所有地を中心に市民が親しめる広場や防災施設の整備を行うなどの適切な維持管理により,これらの地区の創造的な活用も進める。

 また,現状変更行為の禁止のため,土地利用に著しい支障を及ぼす場合には,土地所有者の申出により土地の買入れを行う。

 (イ) 自然景観などの保全

 「風致地区」や「自然風景保全地区」においては,開発に際して,自然景観や緑豊かな住宅地を保全するため,きめ細かな規制と誘導を行う。とくに,「自然風景保全地区」においては,市民の自然風景保全育成活動に対する支援や助成を行い,景観保全施策の一層の強化を図る。

イ 市街地のきめ細かな景観づくり [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)イ(イ)参照]

 (ア) 景観保全や整備に関する地区の指定

 景観の保全や整備を図るため,景観上一定のまとまりのある地域を調査し,町家が連なる歴史的な町並み景観を保全する「歴史的景観保全修景地区」,地域の特徴を生かした町並み整備を図る「界わい景観整備地区」,将来の歴史的景観を創り出す「沿道景観形成地区」等に指定し,地区の景観の維持向上を支援する。

 (イ) 電線類地中化等による道路の景観向上

 景観の保全・再生が望まれる主要道路や観光地等を中心に,市民,事業者との連携を図りながら,電線類の地中化を推進するとともに,道路の舗装や照明のデザインを工夫するなど,道路の景観の向上に努める。

 (ウ) 歴史的意匠建造物の指定等による地域の景観誘導

 歴史的な意匠を有し,周辺の景観整備のシンボルとなるような建物を「歴史的意匠建造物」に指定して,その外観の保存を図るとともに,地域のまちづくりに対する住民の意識を高める。また,閉校となった校舎等の良質な市有建築資産の再生活用を図るなど,地域の景観資産を大切にしつつ活用する,きめ細かな景観誘導を行う。

 (エ) 景観整備に関する住民活動に対する支援

 地域の景観を整備するため,住民などが主体的に締結した協定の認定や,地域住民で構成された景観整備に関する活動を行う団体への助言者の派遣等を行う。

 (オ) 屋外広告物の規制・指導等の強化

 「屋外広告物等に関する条例」に基づき,屋外広告物等が地域の特性に調和したものになるよう規制や指導を行うとともに,違反広告物の撤去を強化する。また,歴史的意匠屋外広告物の指定制度等を活用した市街地景観の向上のための活動を強化する。

 (カ) 都心部における町並み景観保全方策の検討

 都心部における文化財の周辺環境や京都らしい町並み景観を保全するため,都市計画規制や文化財保護のあり方等についての検討を進める。

 (キ) 南部地域における新しい都市景観の形成促進

 21世紀の本市の新たな活力を担う南部地域においては,緑豊かで,ゆとりと潤いのある歩行空間と沿道景観の整備を促進する。

ウ 財団法人京都市景観・まちづくりセンターと連携した市街地景観向上への支援

 地域の身近なまちづくりを支える「財団法人京都市景観・まちづくりセンター」と連携して,シンポジウムやコンクール等を開催することにより,市民の景観保全・再生・創造活動を支援する。また,京都独自の景観をかたちづくっている京町家の保全・再生等に向けた取組を市民とともに進める。

 

ちょっと注目!

電線類地中化の推進

  • 比較的大規模な商業地域や駅周辺などを中心に整備
  • 東堀川通(二条城前,丸太町~御池通間)等,景観の保全・再生が望まれる主要な観光地などにおいても重点的に整備

 

(3)水と緑を生かしたまちづくり [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)イ(ウ)参照]

ア 自然や歴史環境を生かした特色ある公園等の整備

 (ア) 宝が池公園「新・子どもの楽園」の整備 [「2 子どもを安心して産み育てる」(5)ア(イ)参照]

 周辺の自然環境を生かした都市防災,自然体験学習や憩いの場などの多様な機能をもつ宝が池公園において,自然とのふれあいやさまざまな体験を通じて子どもたちの感性を豊かにする遊び場となる「新・子どもの楽園」を整備する。

 (イ) 桂川緑地の整備

 桂川河川敷において,安全な親水空間,スポーツなど自由に利用できる多様なレクリエーション空間を創出するとともに,災害時の物資集積拠点等としても活用できる場の整備をめざす。

 (ウ) 淀城跡公園等の整備

 地域の歴史を示し,憩いの場や観光資源として活用できるよう,住民の協力を得て,淀城跡公園を再整備する。また,自然休養レクリエーションの場としての大見公園,緑化や環境保全の意識向上を図る都市緑化植物園,環境保全型公園の整備について検討する。

イ 身近な地域の公園の整備

 地域住民のレクリエーションや憩いの場として,街区公園等の身近な地域の公園を,歩いて行ける範囲に適正に配置されるよう整備する。また,スポーツ施設と合わせた公園の整備を検討する。

ウ 水辺環境の整備

 治水対策を念頭に置きながら,生物が生息する美しく豊かな水を保つ快適な水辺環境を整備することにより,川のもつ多面的な役割をまちづくりに生かす。とりわけ,京都府の西高瀬川の整備事業と連携した堀川における水辺環境の整備,生態系の復元・創造を心がける有栖川等での多自然型川づくりを推進する。

エ 水と緑のネットワークの形成 [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちをつくる」(2)ア参照]

 市民と一体となって,緑の文化の継承と発展を図るとともに,小鳥や昆虫など小動物の生息する魅力的で豊かな都市の生態系を拡大していくため,家庭の生け垣,社寺,公園などのさまざまな規模の緑化を促進し,街路樹や河川と連結して,水と緑のネットワークを形成する。

 そのため,「生け垣緑化助成事業」や「区民の誇りの木選定事業」,「保存樹木,保存樹林の指定」を推進する。また,「緑のボランティアリーダー」の育成,「国際伝統庭園研究センター」の設立についても検討する。

 

ちょっと注目!

宝が池公園「新・子どもの楽園」の整備

  • 宝が池公園の「子供の楽園」や「憩いの森」にまたがる区域を中心に,既存施設の有効活用を図りながら整備

桂川緑地の整備

  • 桂川の高水敷等の利用による緑地づくりの一環として,西大橋右岸地区を災害時には広域避難地や災害支援の拠点となり,平常時には親水,スポーツ,レクリエーション施設となる公園として整備

淀城跡公園の再整備

  • 歴史的観光やレクリエーション資源として地域のシンボルとなるよう,また,地域の活性化に寄与する公園として住民の協力を得て淀城跡公園を再整備

堀川の水辺環境の整備

  • 堀川のせせらぎ復活や水辺空間の整備のほか,二条城外堀や西高瀬川への導水,災害時の河川水活用など総合的なまちづくりのなかで水と緑のネットワークを整備

 

(4)木の文化が息づくまちづくり [「2 すべてのひとがいきいきと活動する」(1)エ参照]

 本市は,三方を山で囲まれ市域の7割近くを森林が占めており,町家建築,社寺建築,庭園文化をはじめ,漆器,木工品,竹細工等の工芸品を育て,伝統行事とも密接な関係を保ちながら木づくりの文化やすまいの文化を守ってきた。これまで育ててきた木の文化を守り育てるため,木造公共施設の整備,京町家にみられるような伝統的な知恵と意匠による木造建築物の建設の誘導,京都の伝統を受け継ぐ木造建築の技能継承等への取組支援など,木の文化が息づくまちづくりを進める。

 また,環境や防災面等を考慮した新素材や新技術を活用した木造建築物の開発など,京都の風土に合った新しい木造住宅の開発・普及について検討する。

 

 

2 成熟した文化が実現する

基本的方向
 芸術文化振興の拠点として設置した「京都芸術センター」を中心に,芸術文化の新たな担い手を育成し,市民文化の振興を図るとともに,多彩な芸術文化交流を推進するなど,文化の創造・発信に向けた総合的な取組を進める。
 さらに,京都のまちを構成する主要な要素である文化財の保護に努めるとともに,市民が文化・芸術の豊かさを享受することができるよう積極的な取組を進め,観光や産業分野との連携を一層強めることにより,国内外の文化交流の中心地である文化首都をめざす。

 

(1) 文化の創造・発信に向けた総合的な取組の推進

ア 京都芸術センターの機能の充実

 「京都芸術センター」の機能を十分に発揮することにより,多様な芸術に関する活動を支援し,情報を広く発信するとともに,芸術を通じた市民と芸術家等との交流を促進するなど,本市における芸術を総合的に振興する。

イ 「芸術祭典・京」の充実

 優れた文化の創造をめざし,京都を文化・芸術の発信基地としていくため,京都全体を劇場,美術館としてさまざまな取組を行ってきた「芸術祭典・京」について,「京都芸術センター」の機能の活用や産業・観光施策,学術との連携により,さらなる発展・充実と情報の発信力を強化する。

ウ 芸術文化振興計画推進プログラムの策定

 「芸術文化振興計画」に掲げた具体的施策について総括するとともに,新たな時代に対応した具体的施策を盛り込んだ推進プログラムを策定し,「芸術文化振興計画」に掲げた目標のさらなる追求を行う。

エ 京都の歴史を総合的に物語る歴史博物館の整備

 世界的にも貴重な1200年という悠久の歴史をもつ京都がみずからの歴史を総合的に物語る「都市の記憶装置」となる新しいタイプの都市史博物館として,「歴史博物館」を整備し,多角的に京都の歴史・文化資源を掘り起こすとともに,資料の収集,保存,展示等の活動を通じて京都のまちづくりに生かし,京都の価値を市民だけでなく,全国,世界に伝える。

 

ちょっと注目!

歴史博物館の整備

  • 京都の歴史を総合的に物語る「都市の記憶装置」となる新しいタイプの都市史博物館として整備
  • 3つの開かれた顔:世界に開かれた顔,地域に開かれた顔,ビジターに開かれた顔
  • 5つの基本的な機能:研究・調査機能,展示・学習支援機能,収集・保存機能,交流・情報交換機能,集客機能

 

(2) 市民文化の振興

ア 市民文化活動の支援

 市民の文化力の向上を図るため,文化ボランティアを育成するとともに,市民文化活動の支援や情報の提供を行うなど,市民が芸術文化を支え,実践し,楽しさを享受するための取組を行う。

イ 市民文化活動顕彰制度の創設

 活動が全国的規模でとくに優れた評価を受けたり,地道な日常活動で文化創造に貢献した個人・団体を顕彰する制度を創設し,市民文化の振興を図る。

 

ちょっと注目!

市民文化活動顕彰制度の創設

  • 全国的な規模で優れた評価を受けたひとだけでなく,地道な活動で文化創造に貢献した個人・団体も顕彰する制度を創設
  • 被顕彰者の業績を広く知らせるとともに,さらなる市民文化の振興に資することを期待

 

(3) 多彩な芸術文化交流の推進

ア 市民と芸術家との多彩な交流事業の推進

 「京都芸術センター」に国内外の芸術家を受け入れ,その芸術活動を支援するとともに,芸術家と市民,または芸術家相互の交流事業を推進する。

イ 国際芸術文化交流の推進

 本市と関係の深い姉妹都市だけでなく,文化的風土に共通点の多いアジアの都市など,さらに視野を広げる契機となる都市との芸術文化交流を行い,京都が世界の芸術文化交流の拠点となることをめざす。

 また,大阪市が招致している2008年のオリンピックと連動して,世界の芸術が京都において一堂に会する「世界芸術祭」の開催を検討する。

 

ちょっと注目!

世界芸術祭の開催検討

  • 文化首都をめざす京都において,世界の芸術が一堂に会する「世界芸術祭」の開催を検討
  • 大阪市が招致しているオリンピックと連動させ,観光客の集客を期待

 

(4) 芸術文化の新たな担い手の育成

ア 芸術文化特別奨励制度による若手芸術家等の支援 [「4 若者が集い能力を発揮する」(1)イ参照]

 公募した将来有望な若手芸術家等に審査のうえ奨励金を支給する「芸術文化特別奨励制度」により,京都の芸術文化の新たな担い手を育成する。

イ 京都芸術センター等における制作・発表の支援 [「4 若者が集い能力を発揮する」(1)イ参照]

 活動の場を求めている国内外の芸術家・団体を公募・審査し,「京都芸術センター」において活動の場を提供するなど,その制作・発表を支援する。

ウ 京都市立芸術大学における新たな担い手の育成 [「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(5)イ参照]

 「京都市立芸術大学」における日本伝統音楽研究センターや大学院美術研究科博士(後期)課程の機能を生かし,最先端の研究や伝統的な芸術文化の振興を通じた芸術文化の新たな担い手の育成に努める。

エ 芸術系大学の連携による芸術家の育成支援 [「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(5)イ参照]

 「財団法人大学コンソーシアム京都」等を通じて市内にある芸術系大学の連携を強めるとともに,公共の場所での作品発表の機会の確保を図るなど,将来の芸術文化の担い手となる若手芸術家の育成を支援する。

 

(5) 豊かな文化資源を生かした芸術文化の振興

ア 神社仏閣等を会場とした伝統芸術の振興

 京都の伝統芸術の総合的な振興を図るため,神社仏閣等を会場とした芸術文化事業を実施し,伝統芸術の普及,担い手の育成,観光集客力の向上をめざす。

イ 文化施設の機能の向上

 「京都会館」や「京都コンサートホール」とともに,地域の身近な文化創造の拠点である地域文化会館において,市民がより広く文化活動を展開できる環境づくりを行う。また,芸術・文化に親しみ,集い,語らい,学べる空間として,美術館の活動や展示環境等を充実するとともに,貴重な文化財である二条城の恒久的保存に努め,築城400年を契機として,その歴史や文化についての情報発信を行う。

ウ 新たな映画文化の創造

 京都は,日本で初めて映画が上映されたまちであり,映画の撮影所が集積し多くの映画が製作された歴史をもつ。こうしたことから,京都をテーマとした映画製作に対して製作費の助成を行う「京都シネメセナ」の実施,「京都映画祭」の開催などにより,京都に蓄積されている日本映画を育(はぐく)んできた人材や技術・経験を生かし,新たな映画文化の創造をめざす。

エ 音楽文化の振興

 「京都コンサートホール」を音楽文化の発信基地として,「京都音楽祭」をはじめとしたさまざまな活動による良質な音楽を市民に提供し,市民の音楽に対する親近感を深めることで,市民の自主的な音楽活動を促進するとともに,音楽芸術を通じた国内外の文化交流を図る。

 

ちょっと注目!

二条城築城400年事業

  • 世界遺産に登録されている二条城が2003年に築城400年を迎えるに当たり,これを記念する施設の整備やイベントを実施

 

(6) 文化財保護の推進

ア 未指定・未登録の有形・無形文化財の調査等の実施

 調査ができていない貴重な文化財を計画的に調査し,文化財としての重要性や保存の緊急性などの観点から文化財保護制度の計画的な適用を進めるとともに,効率的・効果的な文化財の保護を行うため,文化財の指定や登録制度を検討し,今後の文化財保護施策の基盤となる考え方を確立する。

イ 新たな文化財保護施策の検討

 点の保存を基本とするこれまでの文化財保護の考え方から,景観等の空間的な視点を合わせた保存への移行を検討する。さらに,市民ボランティアとの連携により,身近な文化財の発掘や後継者不足により存続が困難となっている伝統・民俗文化の保存を図るための方策を検討する。

ウ 文化財の活用と情報発信

 文化財を恒久的に記録として保存するため,資料のデジタル化を進め,さまざまな分野で活用するとともに,インターネット等により京都の文化財情報を広く発信する。

 

(7)文化と観光・産業の連携 [「1 産業連関都市として独自のシステムをもつ」(1)ア(イ)「2 魅力ある観光を創造する」(1)カ参照]

 1200年を超える歴史に培われた京都の文化は,世界のひとを引きつける魅力をもつものであり,この豊かな文化資源を観光や産業にも生かしていくという視点が必要である。

 このため,美術館や二条城,「大学のまち交流センター(キャンパスプラザ京都)」などの文化・学術関連施設の活用や社寺等との連携により,観光客に魅力ある芸術文化事業やイベントを実施し,国内外に発信することで,観光集客力の向上を図る。

 また,本市がコーディネーター機能を果たし,地元企業と芸術家との交流・連携を促すことにより,新進・若手芸術家のデザインを販売・流通する場を創出するなど,京都の文化を生かした産業振興に努める。

 

 

3 国内外との多彩な交流を行う

基本的方向
 京都が培ってきた伝統や文化を生かしながら,世界との自由な交流により平和を希求しつつ,新たな文化を創造する文化首都であり続けるため,姉妹都市交流や留学生交流など市民ひとりひとりが主役として活躍する多彩な国際交流活動やそれを支えるまちづくりを進めるとともに,地球規模の問題や歴史都市としての共通の課題の解決のため,京都の特性を生かした国際協力を推進する。
 また,近隣自治体などとの地域間交流を進めることにより,市域を越えた連携による都市活力の増進を図る。

 

(1) 多彩な国際交流の推進

ア 姉妹都市交流を中心とした国際交流の推進

 姉妹都市交流事業について,広く市民に周知し,アイデアや事業の進め方について意見を聞きながら,市民が幅広く参画できる交流事業を進めるとともに,市民・民間団体等による自主的な交流活動に対する支援を行う。

イ 新しい形態の都市提携による交流の推進

 学術やスポーツなど個別分野に限定した多様な都市提携の手法である「パートナーシティ」交流を進める。

ウ アジアの諸都市との交流の推進

 市内に居住する外国籍市民の多くがアジア国籍の市民であり,歴史的にも密接な関係にあるアジア諸国との交流を広げ深めていくため,「アジア映画祭」など各種イベントの開催やアジア理解を促進する講座の開催などにより,アジア諸都市との市民レベルでの交流活動を促進する。

エ 外国籍市民との多彩な交流の促進

 「財団法人京都市国際交流協会」や外国文化センター,大学,留学生寮,市民・民間団体等と連携し,学術,芸術,伝統文化,経済,スポーツ等のさまざまな分野における多彩な交流を促進するとともに,外国籍市民が参加しやすい,地域での国際交流事業の企画・推進を図る。

オ わかりやすいまちの表示の促進

 市バス・地下鉄の行き先表示や案内表示,災害時の避難表示等において,表示の多言語化や絵文字による表示など,日本の言葉や文化に不慣れな外国籍市民や海外からの観光客をはじめ来訪者にとって親切でわかりやすいまちの表示を促進する。

カ 国立京都迎賓館等の整備支援 [「2 魅力ある観光を創造する」(4)ウ参照]

 京都の伝統的な産業と文化が「しつらい」,「もてなし」に生かされた,後世に誇り得る和風の「国立京都迎賓館」の整備を支援し,国際交流や文化交流の場として京都の活性化・国際化を推進する。

 また,国際会議や国内会議の拠点施設として,多様化する利用者のニーズに対応するため,会議場の増設など「国立京都国際会館」の施設整備の促進を図る。

 

ちょっと注目!

パートナーシティ交流の推進

  • 個別分野に限定した多様な都市提携として,スポーツ,歴史遺産・景観保全,環境保全,経済,音楽文化,学術研究などの分野における市民レベルでの国際交流を支援

 

(2) 京都の特性を生かした国際協力の推進

ア 歴史都市としての国際協力の推進

 「世界歴史都市会議」の提唱都市として,世界歴史都市連盟の活動を通じた「保存と開発」という歴史都市共通の課題解決のため,1200年の蓄積のある京都の豊富な経験と知識,そして人材を生かして,各歴史都市の発展に貢献する。

イ 市民レベルの国際協力の促進

 「京都国際交流団体連絡協議会」の活性化により,多くの民間交流団体と連携し,市民レベルの国際協力を促す。

ウ 海外自治体との国際協力の推進

 「財団法人自治体国際化協会」との連携の下,「自治体職員協力交流事業」による海外自治体の研修員の受入れなどにより,文化,芸術,伝統産業など日本を代表する歴史都市としての特色を生かした国際協力を進める。

エ 環境分野における国際協力の推進

 公害や地球規模の環境問題に取り組んできた本市の経験や知識を,「APEC環境技術交流促進事業運営協議会」や「国際環境自治体協議会(ICLEI)」を通じて情報発信することにより,環境分野での国際協力を進める。

 

(3) 都市の活力を生む多様な交流の推進

ア 広域連携の推進

 広域化した地域課題に対応するとともに関西の総合力を高め,そのなかでの本市の発展を図るため,産業,歴史,文化など関西の各都市が有する優れた特性を最大限に生かしながら,さまざまな分野で広域的な連携を進める。とりわけ,「関西広域連携協議会」や京阪神三都市における取組を通じ,既存の行政単位を越えた広域的な連携を進める。

 また,京都市を中心に,通勤・通学など日常生活で強い結びつきのある市町村からなる京都都市圏自治体ネットワークづくりや京滋奈三広域交流圏づくりに参画するなど,近隣自治体との交流を進める。

イ 京都と共通性を有する自治体との交流の推進

 小京都をはじめとする京都ゆかりの市町,和装産地である市町村など全国に散らばる京都と共通性を有する自治体との交流を進める。

ウ 豊かな「知」の交流の促進 [「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(1)イ(イ)参照]

 新たな「知」の創出や学生の豊かな創造力をまちづくりに生かす場として,京都の玄関口という立地条件を生かした「大学のまち交流センター(キャンパスプラザ京都)」を核として,京都の大学はもとより,関西,ひいては日本,世界の「知」の交流を促進する。

 

 

4 生涯にわたってみずからを磨き高める

基本的方向
 京都は神社仏閣,大学・研究機関,匠(たくみ)の技や伝統文化・伝統芸能など豊富な学習資源に恵まれており,この特性を生かし,市民はもとより国内外の生涯学習ニーズにもこたえる創造的な学びの機会・場・しくみづくりを進める。
 また,地蔵盆をはじめ京都ならではの行催事の活用などにより,地域のなかで世代を越えてともに楽しみながら学び,学習の成果を分かち合い,学習の輪を広げる。

 

(1) 多彩な学習機会の確保・提供

ア 京都ならではの学習機会の確保・提供 [「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(1)イ(ア)参照]

 京都に古くから伝わる遊びや生活の知恵等を伝え合い共有化する,世代間の交流講座を実施するとともに,博物館を活用した巡回展や移動教室,豊富に存在する神社仏閣など,恵まれた生涯学習資源を活用した学習機会の確保・提供に努める。

 また,本市を中心とする地域の大学の集積を生かした,社会人向けの総合的で体系的な生涯学習講座「シティーカレッジ事業」を充実する。

イ 社会的課題等についての学習機会の確保・提供

 民間事業者と競合する講座内容を見直し,役割分担を図るなかで,男女共同参画やノーマライゼーションの推進など人権文化の構築,高齢化や国際社会への対応,環境の保全など,さまざまな社会的課題についての学習機会を確保・提供する。

ウ 生涯学習におけるバリアフリー化の推進

 情報通信技術(IT)を活用した学習機会の提供を進めることなどにより,障害のあるひとや育児・介護中のひとでも受講できるよう,学習環境のバリアフリー化を推進する。

 

ちょっと注目!

生涯学習におけるバリアフリー化の推進

  • インターネットやテレビ等により,自宅や病院などでの生涯学習機会を提供
  • 各種講座の開催などに当たり,手話通訳者,要約筆記者の配置や託児サービス等を実施

 

(2) 時代に応じた学習関連施設の充実

ア 図書館機能の充実

 (ア) 新中央図書館の整備

 21世紀の「京都学」を育(はぐく)み,京都のすべてがわかる「京都大百科事典」機能を有する新中央図書館を整備する。

 (イ) 市民に役立つ使いやすい図書館機能の充実

 図書の相互検索などができるよう,市立図書館と国立・府立・大学等の図書館とのネットワーク化を進める。

 また,地域図書館の夜間・祝日開館を推進するとともに,子どもから高齢者まで楽しめる図書の充実を図る。

イ 生涯学習関連施設の整備

 「生涯学習総合センター(京都アスニー)」や「青少年科学センター」,「学校歴史博物館」等の生涯学習関連施設において,時代の進展に応じた整備を行う。

 

ちょっと注目!

新中央図書館の整備

  • 市民の知的活動と創造的文化活動を支援し,21世紀の「京都学」の育成に貢献
  • 市民はもとより,全国,世界のひとびとに,京都の歴史,文化,芸術から衣食住にわたる京都のすべてを紹介する「京都大百科事典」機能を整備

地域図書館の機能強化

  • 夜間・祝日開館の拡大
  • 全図書館へのコンピュータの導入,オンライン化の推進
  • 下京図書館を修徳小学校跡地へ移転・新築

 

(3) 新たな学習支援のしくみづくり

ア 民間事業者等と連携した生涯学習支援体制の構築

 生涯学習の総合的な推進を図る「生涯学習新世紀プラン」に基づき,さまざまな生涯学習の関連機関や企業・団体等との役割分担と連携の下で,民間事業者等の豊富な学習資源や学習プログラムを段階的・系統的に活用できるようにするなど,市民の自主的な学習活動を支援する新たなしくみづくりに努める。

イ 魅力ある学習資源の内外への情報発信 [「2 魅力ある観光を創造する」(1)ア参照]

 京都の豊富な学習資源を生かし,歴史,文化,宗教など伝統の粋に触れられる体験を中心とした滞在型の学習プログラムを開発し,京都がもつ生涯学習の場としての魅力を,市民に再発見してもらうとともに,国内外に向けた情報発信を行う。

ウ 新たな学習資源の創出・展開

 博物館等が有する文化財や伝統産業などの学習資源のデジタル情報をネットワーク化し,どこからでも情報が取り出せる「電脳博物館」をつくるとともに,情報通信技術(IT)を活用した双方向の学びの場を創出する。

 また,博物館施設で実際に展示品に触れられる体験展示等の手法を研究・開発し,単に見るだけではなく,触って,試して,理解を深める展示方法(ハンズ・オン)の導入を促進する。

 

(4) 世代を越えてともに学ぶ地域づくり [「3 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ」(1)ア(ア)参照]

ア 地域での学びを支える人材育成

 市民が,学びの成果を広く社会に還元できるよう,地域の学びや遊びのリーダーとして活躍するしくみづくりを行うとともに,地域の生涯学習活動を支援するための企画・相談に応じるコーディネーターを養成する。

 また,伝統技能保持者をはじめ地域の住民が,地域に受け継がれている文化,伝統,歴史を学校の教壇で教えるなど,経験のなかで培われた豊富な知識,技術が社会において適正に評価されるしくみを構築する。

イ 地域の学びの場・機会づくり

 学校の余裕教室等を活用・整備し,地域に開放する「学校ふれあいサロン事業」,校区を越えて交流する「学校コミュニティプラザ事業」を推進し,身近な生涯学習の場づくりを進め,そこを拠点に子どもから高齢者まで幅広い世代のひとびとが世代を越えてともに学び,ふれあう「ようこそ!まなびや事業」を充実する。

 また,地域住民の作品展示などができるよう,身近な公共・民間施設内へのギャラリー設置,民間事業者が保有する研修施設や福利厚生施設等の地域への開放を働きかける。

 

ちょっと注目!

生涯学習コーディネーターの養成

  • 地域に根ざした生涯学習を展開するため,多種多様な学習内容の企画・相談に応じるコーディネーターを養成

学校ふれあいサロン事業の推進

  • 小学校の余裕教室を中心に改修整備
  • 地域の子どもから高齢者まであらゆる世代の市民が集い,相互に学び合える身近な生涯学習の場を提供

学校コミュニティプラザ事業の推進

  • 概ね2中学校区をひとつの生涯学習ゾーンとし,校区を越えた交流の場を提供
  • 小・中学校の校舎・体育館の新築・改築・改修時に地域ごとの特色ある生涯学習ができる場を整備

民間施設等の生涯学習の場としての開放促進

  • 民間事業者等との役割分担と連携の下での生涯学習支援機能の充実
  • 民間事業者等が保有する施設等を身近な生涯学習の場として,地域への開放を促進し,地域住民の作品展示や交流を支援

お問い合わせ先

京都市 総合企画局都市経営戦略室

電話:075-222-3030

ファックス:075-213-1066

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