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京都市基本計画/第1章3

ページ番号35908

2001年1月10日

第3節 だれもが安心してくらせるまち

1 環境への負担の少ない持続可能なまちをつくる

基本的方向
 「地球温暖化防止京都会議(COP3)」の開催都市として,市民,事業者,行政の連携の下,経済的手法の検討も含め,二酸化炭素(CO2)排出量の削減や資源・エネルギーの有効利用など総合的な地球温暖化防止対策に積極的に取り組むとともに,ごみの発生抑制とリサイクル,廃棄物の適正処理を推進する。
 さらに,豊かな自然環境との調和を図りつつ,市民の自主的な環境保全の取組を支援することで,ひとりひとりがくらしに節度をもち,環境への負担の少ない持続可能なまち「環境共生型都市・京都」を実現する。

 

(1) 「京のアジェンダ21フォーラム」を核とした環境問題への取組

ア 市民,事業者,行政等の対話と協働による環境問題への取組

 環境と共生する持続型社会への行動計画「京(みやこ)のアジェンダ21」の推進組織である「京のアジェンダ21フォーラム」を核として,市民,事業者,行政等の対話と協働による地球温暖化防止に向けた環境問題への取組を進める。

イ 環境にやさしいくらしへ誘導する省資源・省エネルギーのシステムづくり

 ものの長期使用,ごみの減量,リサイクルしやすい商品の購入,無駄の少ないエネルギーの利用など,市民ひとりひとりの環境にやさしいくらし(エコライフ)への誘導と住まいの断熱化,太陽エネルギー等の自然エネルギーの利用など,省資源・省エネルギーのシステムづくりを進める。

ウ 環境配慮型商品の市場拡大と環境を大切にする消費者づくり

 事業者に対しては環境に配慮した商品づくりを行うことを,また一方,消費者に対しては環境を大切にした商品を購入することを促すとともに,製造業者,流通業者,消費者等が連携・協働して,環境への負担を減らした商品を積極的に購入するグリーン購入ネットワークづくりを進める。

エ 循環型の新しい産業システムづくり

 資源・エネルギー循環型の新しい産業構造への転換をめざし,環境にやさしい取組を進める事業者等を認証する「京都版環境管理認証制度(KES)」を創設し,より多くの事業者等が環境保全活動に取り組むように誘導するとともに,それらの事業者等の連携による資源・エネルギーの循環を重視した事業を促進する。

オ 環境にやさしい新しい観光都市づくり [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)エP78「2 魅力ある観光を創造する」(1)オ参照]

 多様化する観光客のニーズに対応して,環境学習の施設や自然とのふれあいを体験できる地域などをつなぐ観光コースの開発,徒歩や自転車による観光,使い捨て用品の削減など宿泊施設における環境への配慮の促進などにより,環境を大切にした旅(エコツーリズム)の視点から新しい観光都市づくりを進める。

カ 環境にやさしい交通体系づくり [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(2),(3),(4),(5)参照]

 公共交通機関や自転車を利用しやすいまちづくり,排出ガスの少ない車や低燃費の車など環境への負担の少ない自動車の普及,公共交通機関への転換等による自動車交通量の抑制など,環境にやさしく,子ども,高齢者,障害のあるひとや旅行者にもやさしい交通体系づくりを進める。

キ 地域の文化や環境を活用する地域まるごと博物館づくり [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)エ参照]

 世界に誇る文化遺産や有形無形の文化財,環境にやさしい京都の伝統的なライフスタイルと結びついた伝統行事や工芸品,町衆の生活,さらには豊かな自然環境などを,地域まるごと博物館(エコミュージアム)として市民とともに生涯学習や観光資源に活用するとともに,それらを次世代に継承する。

 

ちょっと注目!

京都版環境管理認証制度(KES)の創設

  • 環境問題に関心をもつ多くの事業者,団体等が日常的に環境保全活動に取り組むことができるよう,規格の内容が平易で取り組みやすく,低コストで取得できる京都市独自の認証制度を創設

エコツーリズムの推進

  • 宿泊施設等,観光関連施設における環境保全活動の取組促進
  • 京都ならではのエコツアーに関する企画・調査・研究や情報発信

地域まるごと博物館(エコミュージアム)づくり

  • 世界文化遺産,有形無形の文化財,祭などの伝統行事,工芸品,町家にみられる環境にやさしいライフスタイル,豊かな自然などを,市民とともに生涯学習や観光資源に活用し,次世代に継承

 

(2) 環境と共生するくらしの実現

ア 豊かな自然環境の保全・活用 [「1 美しいまちをつくる」(3)エ参照]

 生物の生息空間の保全,都市防災力の向上,潤いのある景観の形成,レクリエーションの場の提供など,水と緑の多様な効用を生かした豊かな都市環境を実現するため,三方の山々と鴨川,桂川,宇治川など大きな川を骨格に,地域ごとの特性に応じて,豊かな自然や歴史的景観の保全,河川環境の保全・創造,公園緑地の整備,農地の計画的保全・活用などを図り,市域全体での水と緑のネットワークを形成する。

 また,自然体験などを通じて自然や生態系のしくみを理解し,自然を大切にする心を育(はぐく)んでいけるよう,公園,散策道,水辺環境など自然とふれあえる場や機会を確保する。

イ 環境教育・学習の推進

 (ア) 環境に関する教育・学習の場の提供

 地球規模に拡大した環境問題を身近な所から考え,マイカーの自粛や美化・清掃活動,リサイクル活動など,ひとりひとりが身の回りのできることから主体的に実践することにより,環境への理解を深め,環境を大切にする心を育成する。

 (イ) 環境学習・エコロジーセンターの整備

 ごみ問題から地球環境問題まで幅広い視点に立った「環境意識」の定着を図るため,市民や事業者が「学び・育つ」,「調べ・考える」,「参画し・行動する」という“3つの場”の拠点となる「環境学習・エコロジーセンター」を整備する。

 また,環境情報システムを構築し,環境の現況や各種の取組についての情報を提供するとともに,市民との双方向の情報交換を行う。

ウ 資源・エネルギーの有効利用

 (ア) 省エネ型ライフスタイルの実践の支援

 家庭での環境家計簿の利用促進,市民,事業者,環境NGO(非政府組織)等の連携による温暖化防止活動優秀団体等の表彰や実践活動報告などにより,省エネ型ライフスタイルの実践を支援する。

 (イ) 環境マネジメントの国際規格ISO14001の認証取得

 環境への負担の少ない持続可能なまちの実現をめざし,本市の環境管理システムを構築するため,市役所の本庁舎をはじめ,公的施設について率先して環境マネジメントの国際規格ISO14001の認証取得の拡大を進める。また,民間施設における取得への支援を行う。

 (ウ) 新エネルギーの利用促進

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を抑制するため,市民,事業者,行政の連携の下,「地域新エネルギービジョン」に基づき,太陽光発電や太陽熱利用,廃棄物発電,燃料電池など新エネルギーの導入を促進する。

 (エ) 環境保全に向けた市の先導的な取組の推進

 市内有数の大事業者,消費者である市役所が率先して,環境保全活動を展開する企業からの環境への負担の少ない製品やサービスの購入,市バスや公用車への低公害車の導入など,環境保全に向けたエコオフィスづくりを進める。

 また,公共建築物の長寿命化や屋上緑化,雨水や自然エネルギーの有効利用,道路等の公共空間におけるリサイクル材の利用などによる,環境への負担の少ない公共施設の整備を進める。

 さらに,費用対効果を考慮するなど,効率的に環境政策を進めるための評価手法を検討する。

エ 生活環境の保全

 (ア) ダイオキシン類対策の推進

 大気,河川水質・底質,土壌,地下水に加え,人体に直接影響を及ぼす恐れのある母乳,農作物,上水道におけるダイオキシン類濃度調査を実施し,ダイオキシン類による環境汚染の防止と市民の健康の保護を目的とした総合的,計画的な対策を進める。

 また,クリーンセンターをはじめとする本市の焼却施設について,ダイオキシン類の排出削減対策を進めるとともに,民間の廃棄物処理施設や小型焼却炉についても排出抑制に向けた指導を行う。

 (イ) 大気汚染対策の推進

 工場・事業場への規制や監視,公害防止協定の締結,大気汚染状況の常時監視を行うとともに,有害大気汚染物質の調査を継続実施する。

 (ウ) 水質汚濁対策の推進

 河川や地下水の状況を把握するため,常時監視を行うとともに,水質汚濁物質を排出する工場・事業場に対して規制や監視を行う。

 (エ) 騒音・振動・悪臭対策の推進

 騒音,振動に関する工場・事業場や建設作業への規制や監視を実施するとともに,悪臭物質の排出により,周辺の生活環境に影響を与えていると判断される工場・事業場に対し,悪臭の測定や調査を実施する。

 (オ) 自動車公害対策の総合的な取組の推進

 自動車騒音や大気汚染など自動車公害から生活環境を保全するため,排出ガス最新規制適合車の民間への普及拡大や流通部門の共同集配化,公共交通機関の優先運行システムの導入,低騒音舗装の敷設や道路緑化等による沿道環境改善事業の推進,低公害車導入への融資制度の充実など,関係機関と連携した総合的な取組を進める。

 (カ) 上下水道整備などによる水質保全・多目的利用

 安全な水を安定して供給するため,浄水処理方法の高度化の研究を進めるとともに,水道施設の整備を進める。また,市内河川や下流水域の水質保全のため,下水道施設における高度処理を進めるとともに,合流式下水道施設の改善や下水道未普及地域への下水道等の整備を進める。

 さらに,下水処理場やポンプ場の公園としての利用,下水管内の情報通信網としての利用など,多目的利用の検討を進める。

オ 環境に配慮したまちづくりを進める環境影響評価制度の推進

 開発事業等の実施に際し,「環境影響評価法」の対象としていない種類の事業やより小規模な事業を対象として,計画の早い段階から環境への配慮を促す事前配慮指針や事後調査を定めた「環境影響評価等に関する条例」に基づき,その環境に及ぼす影響を事前に調査・予測・評価するなど環境保全に十分配慮を加えることにより,公害を未然に防止するとともに,自然環境や文化環境の保全に努める。

カ 国立総合地球環境学研究所の整備支援 [「3 大学の集積・交流が新たな活力を生み出す」(5)ア「1 個性と魅力あるまちづくり」(1)ア(ウ)参照]

 地球規模の環境問題の解決に向け,人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野を総合化し,新しい視点に立って研究を行う「国立総合地球環境学研究所」の整備を支援する。

 

ちょっと注目!

環境学習・エコロジーセンターの整備

  • 市民,事業者,環境NGO(非政府組織),青少年科学センターなどと連携を図りながら,環境意識の定着に向けた環境学習を展開
  • 青少年科学センター敷地内に2002年開所予定

市役所のISO14001の認証取得

  • 環境への負担の少ない持続可能なまちの実現をめざし,自主的・積極的に環境管理システムを構築するため,山科区役所,青少年科学センター,東部クリーンセンター等に続く,市役所(本庁舎)での環境マネジメントの国際規格の認証を取得

新エネルギーの利用促進

  • 公共施設への太陽光発電システムなど新エネルギーの導入
  • 廃食用油のバイオディーゼル燃料化

ダイオキシン類対策の推進

  • 健康影響調査や大気,土壌,水質などの常時監視の強化
  • クリーンセンターにおける排ガス対策などのダイオキシン類排出削減対策の推進

低公害車の導入促進

  • 市バス・公用車の低公害化
  • 民間部門における低公害車導入に対する支援
  • アイドリングストップ運動の展開

下水の高度処理

  • 市内河川の水環境の向上,淀川・大阪湾の水質改善,阪神圏1,100万人の上水道の水質保全を図るため,下水中の窒素,リン,色等を除去する高度処理を推進

 

(3) 廃棄物を出さない循環型社会の構築

ア 循環型社会形成推進基本法の理念を踏まえた取組の推進

 循環型社会の形成に向けた取組の基本的枠組みである「循環型社会形成推進基本法」に基づき,市民,事業者,行政の役割分担を明確にしつつ,廃棄物の発生抑制や再資源化,適正な処理を進める。

イ ごみの発生抑制を基本とするごみの減量とリサイクルの推進

 (ア) 市民と一体となったごみの減量とリサイクルの促進に向けた行動計画の推進

 ごみの発生しない循環型の産業社会の形成をめざすゼロエミッションを基本に置き,ごみの減量とリサイクルの促進に向け,「ごみ減量推進会議」を中心とした,市民,事業者,行政の協働による取組を進める。

 (イ) 廃食用油を利用したディーゼルエンジン燃料化事業の推進

 地域住民の協力の下,廃食用油の回収事業を全市域に拡大するとともに,回収した廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製するための施設を建設し,燃料の安定供給と市内における資源循環の確立を進める。

 (ウ) ごみ減量・リサイクル推進店の拡充と不用品・古紙リサイクルの推進

 事業者や市民のごみ減量意識の高揚を目的とし,ごみの減量やリサイクルの推進に積極的に取り組んでいる店を「めぐるくんの店」として認定し,その拡充を進める。

 また,ごみの発生抑制や減量化を図るため,「不用品リサイクル情報案内システム」により市民から寄せられた不用品の再利用に関する情報提供を進めるとともに,古紙リサイクルの推進と再生紙の利用を促進する。

 (エ) 大規模事業所に対するごみの減量指導の充実

 大規模事業所から排出されるごみの減量指導を充実するとともに,対象事業所のさらなる拡大を検討する。

ウ 資源ごみの分別収集の拡充

 ごみの減量やリサイクルを促進するため,缶・びん・ペットボトルに加え,プラスチック製容器包装廃棄物など「容器包装リサイクル法」を踏まえた分別収集への取組を拡充する。また,缶・びん・ペットボトル排出のための推奨袋を利用して,適正な排出ルールの徹底を市民に呼びかける。

 さらに,紙パック,使用済筒型乾電池の回収を促進するため,回収拠点の増設を進める。

エ 建設副産物や下水汚泥等の有効利用

 コンクリート,アスファルト,木材等の建設副産物の発生抑制,再利用の促進や適正処理を図るとともに,土砂については,「建設発生土情報交換システム」を活用することにより工事間流用に取り組み,再利用を促進する。

 また,下水道施設から発生する汚泥を建設資材として有効利用することにより処分量の減量化を図るとともに,下水道処理水や貯留雨水の有効利用を進める。 

オ 産業廃棄物の適正処理体制の確立

 (ア) 発生抑制,減量化,再資源化の推進

 産業廃棄物を多量に排出する事業者に対し,廃棄物の発生抑制や減量化の視点を明確にした処理計画作成の指導を行うとともに,リサイクル情報の提供システムの構築や廃棄物交換制度の推進により,事業者が行う廃棄物の発生抑制,減量化,再資源化の取組を支援する。

 (イ) 適正処理の推進

 廃棄物の不適正処理に伴う生活環境保全上の支障を生じさせないよう,野外焼却や不法投棄などを防止するため,悪質業者に対しては法律を厳格に適用するなど,監視・指導体制の強化を図るとともに,産業廃棄物管理票制度による処理情報管理システムの確立により適正処理を推進する。とくに,有害廃棄物に関する徹底した管理を図る。

 (ウ) 処理・処分施設の設置促進

 事業者の設置する施設でのダイオキシン類による環境汚染などが社会問題化しているが,産業廃棄物の処理・処分施設や再資源化施設は,健全な産業活動に必要な施設であり,周辺住民の生活環境の保全に十分配慮した安全で信頼性のある施設の整備促進を図る。

 (エ) 社会意識の高揚

 産業廃棄物の処理については,不適正処理による環境汚染の発生など,社会的に信頼が低下している。このため,表彰制度を導入するなど優良事業者,業界団体の育成に努める一方,市民参加型の普及啓発事業として,市民とともに取り組むシンポジウムやフォーラムを行い,産業廃棄物に関して正しい認識を深めるための取組を進める。

カ 廃棄物処理施設の整備

 (ア) クリーンセンターの再整備

 将来の可燃ごみ量に対応するとともに,適正で確実なごみ処理を継続するため,耐用年限を迎えるクリーンセンターについては,ダイオキシン類を低減化するなどの最新設備を備えたものへと,順次,建替えや改修整備を進める。

 また,これに合わせて,ごみの焼却時に発生する余熱エネルギーを利用した,広く市民が利用できる施設の整備を検討する。

 (イ) 中間処理施設の整備

 缶・びん・ペットボトルのリサイクルの促進に対応した中間処理施設の整備を進めるとともに,プラスチック製容器包装廃棄物の中間処理施設の整備に取り組む。

 (ウ) 焼却灰溶融施設の整備

 クリーンセンターにおけるごみの焼却灰から,長期的安定性に優れ,埋立ての際の覆土材等として利用可能な固化物(溶融スラグ)を生成して再資源化する焼却灰溶融施設を整備する。

 

ちょっと注目!

資源ごみの分別収集の拡充

  • 缶・びん・ペットボトルに加えて,プラスチック製容器包装廃棄物などの分別収集の拡充
  • 紙パック,使用済筒型乾電池などの回収拠点の増設

下水汚泥のリサイクルの推進

  • 下水処理場から発生する汚泥の減量化,建設資材などへの有効利用を推進

 

 

2 災害に強く日々のくらしの場を安全にする

基本的方向
 21世紀前半は近畿内陸の活断層が活動期にあるといわれるなか,木造建築物や袋路の多い京都のまちの特色に配慮するとともに,貴重な文化財を守るという歴史都市の課題を踏まえ,地震などの大規模災害や火災への備えを充実する。
 このため,都市の空間や建築物の防災機能を強化するなど,災害に強いまちづくりに取り組むとともに,ひとりひとりが災害から身を守る知恵や工夫を日々のくらしのなかに生かす災害に強いひとづくり・組織づくりを進める。

 

(1) 京都のまちの特色に配慮した災害に強いまちづくり

ア 災害に強い都市空間の形成 [「1 産業連関都市として独自の産業システムをもつ」(2)イ(ウ)参照「3 高度情報通信社会に対応できる基盤づくり」(1)ア参照]

 地震などの大規模災害に強い都市づくりを進めるため,地震被害想定の見直しをはじめとした災害対策等の調査研究を行い,避難対策や備蓄施設を確保するなど,災害時に不特定多数のひとが利用する建築物や地下街,避難場所や避難路となる公園や道路等の公共空間の防災機能の強化を進める。

 また,高度情報化に対応した上下水道施設の管理システムの構築や共同溝の整備など,ライフラインの防災性の向上に努めるとともに,情報通信網の整備として,光ファイバーの下水管内敷設の検討を進める。

イ 災害に強い建築物,すまいづくり

 防災活動や避難の拠点となる市・区庁舎,消防署,学校施設など公共建築物の耐震改修を推進するとともに,「木造住宅耐震診断士派遣事業」の実施などにより,民間建築物の耐震診断,耐震改修を促進する。

 また,不特定多数のひとが利用する施設における消防用設備の設置指導,住宅用防災機器の普及,家庭や地域ごとの防災指導の強化などによる安全対策を進める。

 さらに,京都らしい木造の町並みを将来にわたって継承していくため,合意形成の図られた一定の区域における新たな規制誘導策の創設,袋路の協調建替えの促進など,京都のまちの特色に配慮した災害に強いすまいづくりを進める。

ウ 災害に強い水環境の整備

 (ア) 上下水道施設の防災対策の推進

 浄水場施設や配水管等の耐震化,配水池の増強や耐震性貯水槽の整備などにより,災害時の飲料水を確保する。

 また,下水道施設の改築や既設幹線の連結,下水処理場やポンプ場における基幹施設・設備の複数系列化などにより,耐震性やシステム全体の安全性・柔軟性を高める。さらに,浸水に対する安全性を向上させるため,河川事業と連携して,雨水幹線やポンプ場の整備を進める。 

 (イ) 防災水利構想の策定

 河川,池,井戸,地下水等のさまざまな水源を活用し,親水空間の創出などにも配慮しつつ,消火用水,飲料水,生活用水など命の糧となる水の確保に努め,地域ごとに必要な水利を身近な場所に確保するための「防災水利構想」を策定する。

 (ウ) 耐震性貯水槽等の整備

 地震発生時における消火用水や飲料水の確保を目的に,耐震性貯水槽等の計画的な整備を行う。 

エ 治山・治水対策の推進

 水害を防止するための河川整備については,河川のもつ多様な自然環境や潤いのある水辺空間の場としての機能を生かした治水対策を進めるとともに,下水道事業などとの連携による河川への集中的な雨水の流出を抑制する総合的な治水対策を進める。

 また,山,崖崩れなどの地盤災害を防止し,宅地の安全を確保するための規制・指導を徹底するとともに,森林を保全・育成する。

 さらに,台風や大雨による水害発生時に迅速に対応するため,地理情報システム(GIS)などを活用した被害予想シミュレーション機能を有する総合的な水害対策支援システムを整備する。

 

ちょっと注目!

高度情報化に対応した上下水道施設の管理システムの構築

  • 水道管路情報のデータベース化を進め,維持管理の効率化や事故等への迅速な対応が可能な水道管路情報管理(マッピング)システムを構築
  • 下水道施設情報のほか,浸水被害や維持管理履歴等をデータベース化し,災害時等における迅速な対応を可能にする下水道台帳システムを充実することにより,新たに下水道維持管理情報システムを構築

ライフラインの共同溝の整備

  • くらしに欠かせない電気,ガス,上下水道などライフラインの安全性・信頼性の向上を図る共同溝の整備とネットワーク化を推進

建築物の耐震性の向上

  • 新耐震基準実施(1981年5月)前に建てられた木造住宅の地震に対する安全性の確保と市民意識の向上をめざした「木造住宅耐震診断士派遣事業」を推進
  • 新耐震基準実施前に建てられた公共施設の耐震改修を推進

防災水利構想の策定

  • 大規模災害時に必要となる消火用水や飲料水,生活用水を確保するため,河川,池,井戸,地下水などさまざまな水源を活用し,地域ごとに必要な水利を身近な場所に確保することを目的に策定

総合的な治水対策の推進

  • 西羽束師川等の流域において,河川,下水道等の連携により,河川改修や雨水幹線,ポンプ場,雨水貯留池の整備などの総合的な治水対策を推進

 

(2) 災害から身を守る知恵や力をつける災害に強いひとづくり

ア 歴史的な町並みを災害から守る市民ひとりひとりの災害対応力の向上

 災害発生時に効果的な応急・復旧対策を実施するためには,市民ひとりひとりが防災に対する知識や技術をもち,それに裏付けられた行動力を発揮することが一層求められている。

 とくに,京都は戦前の木造住宅の比率が高く,袋路など狭い通路も多いなど,災害に対して脆弱な都市構造を有しており,震災時には,同時多発的な火災発生のおそれがあるとともに,交通機能の麻痺や断水などにより消防活動が阻害され,被害が甚大になることが予想される。

 このため,地震対策調査結果や危険箇所情報などの各種防災情報や災害情報を市民や京都を訪れるひとびとに対して多様な手法で提供する。

 また,災害時に地域の防災活動の中心的存在となる自主防災組織リーダーの養成,職場や地域等のさまざまな場における防災教育や防災訓練などの実施,出火防止対策や初期消火体制の充実など,市民ひとりひとりの防災意識や災害時における対応力の向上を図る。

イ 高齢者や障害のあるひと,子どもや若者に対する防災安全対策の推進

 高齢者や障害のあるひとの災害時の安全を確保するため,各種福祉団体と連携を図りつつ,介護支援専門員やホームヘルパーをはじめとする保健福祉に携わるひとを防火アドバイザーとして養成し,きめ細かな防災指導を行うなど,地域ぐるみの防災安全対策を進める。

 また,学校教育や地域コミュニティにおける防災指導を進め,子どもや若者の防災意識の向上に努める。

ウ 市民ひとりひとりの応急手当能力の向上

 自主防災組織員,学校教職員,保育関係者,事業所従業員等を対象に応急手当普及員を養成するとともに,広く市民を対象に普通救命講習を実施するなど,ひとりひとりの応急手当能力の向上を図る。

 

ちょっと注目!

多様な手段による防災情報の提供

  • 京都盆地の地下構造調査や活断層調査に基づく「京都市地域防災計画」の被害想定の見直し
  • 地震対策調査研究の調査データや見直しする被害想定に基づいた危険箇所情報,災害時の活動マニュアル等の情報を掲載した防災マップの配布
  • 区役所,文化観光施設に設置した端末機やインターネットを通じた各種防災情報や災害情報の提供

 

(3) 市民のくらしと豊かな文化・歴史の蓄積を守る災害に強い組織づくり

ア 自主防災組織等の活動を通じた地域の防災力の向上

 地域のコミュニティ意識の高揚と,それに基づく地域住民などによる防災体制の確立をめざし,自主防災組織ごとに,市民みずからが地域の事情に応じた「市民防災行動計画」を策定し,災害に備えるとともに,自主防災組織や事業所との連携の下,災害発生時の支援に関する協議や合同訓練を実施するなど,地域ぐるみの防災体制を確立する。

 また,火災原因のトップである放火火災を防止するため,市民や関係機関と連携し,放火されない環境づくりを進める。

イ 市民防災会議の創設

 市民がみずから,それぞれの家庭や地域における防災の取組について意見交換や交流を行う市民防災会議を創設し,家庭,地域の防災力の充実とネットワークの強化を図る。

ウ ボランティア活動への支援体制の充実

 災害時に大きな役割を果たすボランティア活動が円滑に行われるよう,災害時のシステム構築を進めるとともに,リーダーやコーディネーターを育成するなど支援体制を充実する。

エ 消防活動体制の整備

 近年の社会情勢の変化により,市民の日常生活を脅かす火災や事故が複雑多様化・大規模化しているなか,火災をはじめとする災害による被害を最小限にとどめるため,最新技術を導入した消防装備や車両の整備,消防署の整備,高度情報化に対応した消防防災通信ネットワークの構築などを進めるとともに,あらゆる災害に対応した迅速確実な消防活動を総合的に支援する施設の整備を進める。

 さらに,安全で災害に強い地域コミュニティの形成に中心的な役割を果たす消防団と地域との連携の強化に向け,青年層,女性層の消防団活動への積極的な参加を促進するとともに,地域における消防団器具庫などの整備を進める。

オ 救急活動体制の充実

 高齢化の進展に伴い,今後も救急出動件数の増加傾向は続くものと予想されるなか,多様な救急需要に対応した効果的な救急活動を展開するため,救急救命士の計画的養成と教育の充実,高規格救急自動車の計画的配備を進めるとともに,ヘリコプターによる機動的な救急活動を充実する。

 また,第二日赤救命救急センターの再整備を支援するとともに,関係医療機関との連携を強化する。

カ 文化財の防災対策の推進

 京都には世界文化遺産をはじめ,国宝,重要文化財,伝統的建造物群保存地区など,世界に誇る文化財が多数存在している。これらの文化財を火災から守り,後世に継承していくため,消火・警報設備などの文化財防災施設の設置指導や防火指導などを引き続き実施するとともに,平常時の火災予防や災害発生時の消火,通報,文化財の搬出などがより迅速に実施できるよう,地域住民と文化財関係者との連携による文化財市民レスキュー体制を確立する。

キ 山の緑を守る防火対策の推進

 貴重な森林資源やすそ野に広がる文化財を火災から守るため,防火水槽の整備,消火用水としての雨水や河川などの有効活用を図るとともに,空中消火や効果的な消防車両の運用など山林火災消火体制の整備を進める。

 また,山林所有者,近隣住民,ハイカーなどへの出火防止を促す啓発活動を充実する。

ク 防災ネットワークの強化

 災害発生時には,市民,事業所,地域やボランティアとの協働と,国,自衛隊,京都府,警察,京都府医師会,日本赤十字社,ライフライン・鉄道事業者などの防災関係機関との連携が重要であることから,災害の予防,災害時の応急対策,復旧対策,復興計画を総合的に定めた「京都市地域防災計画」に基づき,広域的なネットワークを充実し,防災対策を強化する。

 

ちょっと注目!

市民防災行動計画の策定

  • 防災カルテを活用し,自主防災組織ごとに策定
  • 初期消火や救出・救護,応急手当などの防災体制,高齢者や障害のあるひとの安全対策,放火火災防止対策などについて,市民みずからが地域事情に応じて策定

消防活動総合支援施設の整備

  • あらゆる災害に迅速・機動的に対応できる活動体制の構築
  • 活動支援車両や器材の集中管理
  • 消防隊等の訓練施設機能や研修機能の強化

ヘリコプター活動体制の充実

  • ヘリコプター2機体制のなかで,より効率的な防災活動を実施
  • 山間遠隔地域における傷病者に迅速に対応するため,高度救命処置用器材を搭載したヘリコプターを整備

文化財市民レスキュー体制の確立

  • 文化財の近隣の市民が文化財関係者とともに,日常の防火対策や火災発生時の消火,通報,文化財の搬出などの初動活動について連携する近隣協力体制を構築

 

 

3 日常生活における身近な安全や安心を確保する

基本的方向
 日常生活における身近な安全や安心を確保するため,市民,事業者,警察その他関係機関と連携して,市民の自主的な防犯・事故防止活動の支援,犯罪や事故などを未然に防ぐまちづくりを進めるとともに,消費者被害を未然に防ぐための情報提供を行うなど,消費者が自立し安心してくらせるまちづくりを進める。

 

(1) 犯罪や事故のない安全なまちづくり

ア 地域が主体となった生活安全対策の推進

 犯罪や事故のない,だれもが安心してくらせるまちを実現するため,地域住民や各種団体,事業者,警察その他関係機関との連携により,一体となって地域の安全活動に取り組んでいけるよう,行政区を単位とした「生活安全推進協議会」を設置し,地域が主体となった積極的な活動を展開する。

イ 情報提供や啓発活動の推進と人材の育成

 市民しんぶん,テレビやラジオなどを活用して,市民や旅行者等への生活安全に関する情報提供や啓発活動を進める。また,市民や事業者等が生活安全についての専門的,実践的知識を習得できるよう講習会や研修会を開催するとともに,安全なまちづくり運動など実践的な活動を通じてリーダーとなる人材を育成する。

ウ 交通安全対策の推進

 市民や旅行者等を交通事故から守るため,ガードレールなど交通安全施設を整備し,違法駐車や放置自転車等への対策を進めるとともに,交通ルールの遵守を呼びかける。

エ 市民の自主的活動への支援

 市民みずからが積極的に生活安全に関する知識を理解し,地域単位で住民や各種団体が一体となって,地域の安全のために幅広く活動していくことは,地域における犯罪や事故を未然に防止するうえで重要である。そのため,警察その他関係機関と連携し,情報誌,パンフレット等の発行や顕彰制度の創設など市民の自主的活動への支援を進める。

オ だれもが犯罪や事故から安心してくらせる環境づくり

 公共的建築物や道路,公園等の整備に際してバリアフリーの取組を進めるとともに,だれもが安心してくらせるまちの実現をめざして,児童や生徒などの安全な通学を確保する通学路安全対策,高齢者や重度の身体障害のあるひとの安全を確保する緊急通報システム事業,警察などと連携した青少年の非行防止対策,旅行者にわかりやすい観光標識の増設や情報提供などの取組により,犯罪や事故が発生しにくい環境づくりを進める。

カ 犯罪や事故発生時の緊急体制の整備と被害者等への支援

 地域住民や各種団体,警察その他関係機関との連携の下,犯罪や事故発生時に迅速な対応がとれるよう,危機管理マニュアルの作成など緊急体制の整備を進める。また,犯罪や事故に巻き込まれた被害者やその家族,さらには関係者等が受けた心の傷に対するケア等の支援体制の確立,暴力事案などに対応できる専門家による相談窓口の設置などを進める。

 

ちょっと注目!

生活安全推進協議会の設置

  • 地域が主体となって生活安全施策の推進に重点的に取り組むため,行政区を単位とした,地域住民や各種団体,事業者,警察その他関係機関とのネットワーク組織を設置

 

(2) 消費者が自立し安心してくらせるまちづくり

ア 消費者問題への理解の促進

 消費者月間事業の開催などを通じて,消費者団体や事業者団体と連携し,消費者問題をはじめ,地域のくらしや環境問題などについても相互理解を深め,市民の消費生活の向上を図る。

イ 消費者の選択眼を養うための学習機会の提供

 消費者契約上のトラブル,ごみ問題等を引き起こす過大包装などに関する問題意識を喚起するとともに,消費者被害の防止や消費者問題に対する理解を深めるため,家庭,地域,職場等のさまざまな場における幅広い年齢層に応じた学習機会の提供を進める。

ウ 市民生活センターにおける相談体制の充実

 消費生活相談,一般相談,法律相談,税務相談,交通事故相談などの相談事業を行う「市民生活センター」において,多様化する相談内容に対応できる体制づくりを進める。

エ 消費者への情報提供の充実

 各種のアンケート調査や「市民生活センター」に寄せられる消費生活相談を基礎に,消費者意識や消費者被害の分析を行い,消費生活の向上を実現するために必要な情報を整理し,消費者が求める情報をわかりやすく提供するとともに,悪質商法等による消費者被害を未然に防ぐため,市民しんぶんをはじめテレビ,ラジオ,インターネット等の各種広報媒体を活用し,適切で迅速な情報提供を行う。

 

 

4 歩いて楽しいまちをつくる

基本的方向
 歩いて楽しい「歩くまち・京都」の実現をめざす。「歩くまち・京都」とは,歴史文化資産や自然環境と調和した歩く魅力があるまち,だれもが歩きたくなるような安全・快適な交通環境が整ったまち,生活目的が身近な地域で歩いて果たせるまち,また,来訪者にとっても歩くことによってその価値をより深く楽しむことができるまちである。
 このようなまちをつくるため,美しい町並み景観の形成など歩くまちの魅力を高める取組を進めるとともに,自動車流入の抑制や安全な自転車利用の促進等,のびのびと歩けるための条件を整備し,環境への負担の少ないまちづくりをめざす。

 

(1) 歩く魅力のあるまちづくり

ア まちの美化の推進 [「1 美しいまちをつくる」(1)参照]

 市民ひとりひとりが,ごみを捨てない捨てさせないという意識を高め,市民,事業者と一体となって,ごみの散乱を防ぐとともに,道路や公園等の清掃を充実するなど,まちの美化に努める。また,安全・快適に歩くことができる環境を維持するため,歩道等の放置自転車や違法駐車,違反広告物や不法投棄等に対する監視指導体制を強化する。

イ 歩くまちにふさわしい景観の形成・保全

 (ア) 自然・歴史的な景観の保全 [「1 美しいまちをつくる」(2)ア「2 魅力ある観光を創造する」(1)オ「1 個性と魅力あるまちづくり」(1)ア(ア)参照]

 三方の山々やその山すそ等において,緑豊かな景観や歴史的風土等を保全することに加えて,歴史や文化,自然を歩いて楽しむことができる散策路を整備する。また,土地所有者の協力を得ながら,三方の山々をつなぐ「京都一周トレイル事業」を進める。

 (イ) 市街地における景観形成 [「1 美しいまちをつくる」(2)イ参照]

 市街地においては,景観保全・整備に関する地区の指定,歴史的意匠建築物の指定,電線類の地中化,閉校となった校舎等の良質な市有建築資産の再生利用などを通じて,京都固有の魅力的な町並みと調和した景観形成を促進する。

 (ウ) 水と緑を生かしたまちづくりの推進 [「1 美しいまちをつくる」(3)参照]

 鴨川など市街地を流れる河川等においては,良好な水辺環境の整備や緑を生かした景観の整備を促進する。

 (エ) 沿道の景観整備の促進

 本市の主要な玄関口である京都駅の駅前通りや御池通シンボルロード等において,景観に配慮した質の高い歩道整備に努め,沿道建築物等の景観の向上を誘導する。

 (オ) 清潔で利用しやすい公衆便所の整備

 観光地やひとのよく集まる所など,周辺状況から望まれる所に,歩くまちを支援する施設として,周辺の景観等と調和した清潔で利用しやすい公衆便所を整備する。

ウ まちのバリアフリー化の推進 [「2 すべてのひとがいきいきと活動する」(1)イ参照]

 すべてのひとが自動車交通に頼らず歩いてくらせるよう,公共施設の段差を解消するなど,まちのバリアフリー化を推進する。とくに鉄道駅とその周辺道路,駅前広場については,「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」を活用して取組を推進する。

エ 観光地や商店街の活性化 [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちをつくる」(1)オ,キ「1 産業連関都市として独自の産業システムをもつ」(3)イ「2 魅力ある観光を創造する」(1)イ,オ参照]

 市街地の文化遺産や有形無形の文化財等,地域の文化,環境を活用する地域まるごと博物館(エコミュージアム)づくり,徒歩や自転車による環境を大切にした旅(エコツーリズム)の推進や歩行者天国の実施など,観光客にとって歩くことの魅力が実感できるまちづくりを進める。

 また,商店街の活性化と連携して,観光客も含めた多くのひとが歩き集うような,歩くことが楽しくなるまちづくりを促進する。

オ 職住共存地区における「歩くまち・京都」の推進 [「2 魅力ある観光を創造する」(1)エ「1 個性と魅力あるまちづくり」(1)イ(イ)参照]

 都心部において「職」と「住」が共存してきた中心的な地区である「職住共存地区」を「歩くまち・京都」を実現するための先導的な地区と捉え,居住者や事業者はもとより,来訪者にとっても,まちに親しみがわき,安全・快適で歩くことが楽しくなるようなまちづくりを推進する。

 このため,自動車の通行制限や歩道のバリアフリー化など歩行空間の快適性を高め,地域拠点施設の整備など生活を支える諸機能の整備を促すとともに,京町家にみられるような伝統的な知恵と意匠による木造建築物の保全・再生・活用,袋路の協調建替え,共同建替えを促進するなど,子どもから高齢者まで多様な世代が共生できる居住環境の整備に努める。

 

(2)歩くまちの歩行空間の形成と自転車利用の促進 [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちを作る」(1)カ「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(1)イ参照]

ア 緑豊かで安全・快適な歩行空間ネットワークの形成

 高齢者や車いす利用者等,だれもが安全で快適に利用できる歩行空間を確保するため,鉄道駅や福祉施設,病院,学校等を結ぶ歩行者が多い道路を歩行空間ネットワークとして捉え,歩道のバリアフリー化のほか,自動車の走行を制限するコミュニティ道路や歩車共存道路の整備された地域づくりに取り組む。

 また,鴨川に架かる橋の調査・検討や整備,電線類地中化による歩行空間の拡大,情報通信技術(IT)を活用した歩行者支援システム(歩行者ITS)の導入などにより,安全で快適な歩道の整備を推進する。

 さらに,街路樹の整備,民有地の「生け垣緑化助成事業」や学校における「花と緑のグリーンベルト事業」等により,花と緑の豊かな歩いて楽しいまちの整備を促進する。

イ 自転車利用環境の整備

 環境にやさしく,日常生活において重要な役割を果たしている自転車の利用を促進するため,自転車走行空間や自転車等駐車場の整備に努める。また,主に通勤通学や業務・買物等の利用者を対象とする都市型レンタサイクルを普及させ,公共交通機関の利用や自転車等駐車場の効率的な活用を促進する。

 さらに,地域と一体になった啓発活動などにより,市民ひとりひとりが自転車利用のマナーやルールを守るよう呼びかけるとともに,放置自転車等の撤去を強化することにより,歩行者の安全確保に努める。

 

ちょっと注目!

だれもが安全で快適に利用できる歩行空間ネットワークの形成

  • 鉄道駅や福祉施設,病院,学校等を結ぶ利用者が多い歩行空間を選定し,歩道の段差解消,歩道を広くし車道を曲線化して車の速度を落とす等の効果のあるコミュニティ道路の整備,歩道がつくれない道路で歩くひとを優先させる工夫を施した歩車共存道路の整備などの事業を計画的に推進

鴨川に架かる橋の調査・検討や整備

  • 鴨川に架かる橋の役割や意匠・形態などについてさまざまな視点から検討する「明日の鴨川の橋を考える会」の提言に基づき,ひとにやさしい歩道橋も含めた今後の鴨川に架かる橋の調査・検討や整備を推進

歩行者支援システム(歩行者ITS)の導入

  • 情報通信技術(IT)の活用により,すべてのひとが段差・障害物の存在,最寄りの交通機関・観光地までの道案内などの情報を手軽に得ることができ,安全・快適にまちを歩くことができる歩行者支援システム(歩行者ITS)を導入

自転車等駐車場の整備

  • 自転車等駐車場整備対象駅として位置付けた近鉄東寺駅や京阪淀駅等7駅について整備推進
  • 鉄道事業者の協力や地域の協議会の取組により,近鉄桃山御陵前駅や京阪伏見桃山駅等40駅について整備検討

都市型レンタサイクルの普及

  • 放置自転車問題を解決するための新たな施策として,鉄道事業者等と協力・連携し,主に通勤通学や業務・買物等の利用者を対象とする都市型レンタサイクルの普及を促進

 

(3)歩くまちを支える公共交通の充実 [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちを作る」(1)カ「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(1)ウ参照]

ア 公共交通輸送サービスの充実

 市民の「歩くまち・京都」の実現に向けた交通行動への移行を促すため,公共交通機関については,常に路線網や乗車券制度,サービス施設等の調査研究や改善に努め,利用しやすく乗り継ぎに便利な公共交通輸送サービス網を充実する。

 また,バスや鉄道輸送のサービスを絶えず充実させるとともに,公害対策,バリアフリー化などについても推進・支援する。

イ バス輸送サービスの充実

 身近な市民の足であるバスを,より利用しやすいものにするために,定時性の確保に向けた公共車両優先システム(PTPS)等への参加や少系統多便型への取組,地下鉄との連携強化を念頭に置きながら,バス路線の再編に取り組む。

 また,乗合バス事業の自由化(国土交通省による需給調整規制の廃止)への対応,利用者の利便性を重視したサービスの充実をめざし,100円循環バスや観光旅客用路線バスの運行充実の検討など,経営の健全化を図りながら新たなバス輸送サービスの充実に取り組む。

ウ 鉄道輸送サービスの充実 [「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(2)ア参照]

 定時性が高く環境への負担が少ない,公共交通機関の基幹的な役割を担っている鉄道輸送サービスについては,地下鉄鉄道網の充実を図るとともに,JR線や民鉄線鉄道網のサービス,各鉄道機関の結節機能の充実を促進する。

エ 公共交通のバリアフリー化・低公害化の推進

 公共交通を,より利用しやすいものにするため,市バス・地下鉄等のバリアフリー化の推進,駅前広場等の改善,交通結節ターミナルの機能充実を図るとともに,市バスについては,環境負担の少ない低公害・低燃費仕様の車種を導入していく。

オ 公共交通の利用を促進する運賃・乗車券制度の改善

 地下鉄や市バスは公営交通として,公共交通のネットワークのなかで中心的な役割を果たしているため,公共交通が利用しやすい運賃・乗車券制度を検討し,経営の健全化を図りながら改善する。

 

(4)歩くまちにふさわしい道路網の整備  [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちを作る」(1)カ「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(1)アエ参照]

 公共交通機関や自転車が利用しやすく,安全・快適な歩行空間を確保した,歩くまちにふさわしい道路網を整備する。

 そのため,道路網の整備に当たっては,交通安全対策に加え,地球温暖化の防止にもつながる公害対策,円滑な自動車の流れの実現を目的として,生活道路,都市内の幹線道路,都市間の道路といった道路の機能分担を明確にしたうえで,土地利用の適正化や駐車場の適正な配置などを念頭に置きながら,生活道路のほか,幹線道路となる都市計画道路網,都心部への自動車の流入を低減させる環状道路等,安定性があり信頼性が高い道路機能の整備を推進する。

 また,未整備の都市計画道路の見直しなどの検討も行う。

 

(5)歩くまちをつくる新しい交通政策の推進 [「1 環境への負担の少ない持続可能なまちを作る」(1)カ「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(4)参照]

 既存の道路空間を有効に活用するため,自動車交通の抑制や平準化などを図る交通需要管理施策(TDM施策)高度道路交通システム(ITS)の導入を進めるとともに,道路空間を自動車から自転車やバス等の公共交通機関へ再配分するなど,地域の住民や事業者,警察その他関係機関が一体となって,自動車交通に過度に依存しない歩くまちにふさわしい交通体系の確立をめざす。

 また,利便性が高く,経済性にも優れた公共輸送サービスを提供するため,軽量軌道公共交通機関(LRT)等の新しい公共交通やそれにふさわしい道路空間のあり方について,「歩くまち・京都」の理念を念頭に検討を進める。

 さらに,今後の社会経済動向の変化等を勘案し,将来の交通政策のあり方を検討する総合的な体制を構築する。

 

ちょっと注目!

「2 多様な都市活動を支える交通基盤づくり」(4)ちょっと注目!参照]

交通需要管理施策(TDM施策)の推進

  • 増え続ける自動車交通に対して,まちのあり方や都市における空間上の制約,自動車公害などを考慮し,特定地域への流入抑制策やピーク需要の低減策,自動車以外の交通手段への誘導策など,さまざまな交通需要管理施策(TDM施策)を,市民や警察等とともに検討のうえ推進

軽量軌道公共交通機関(LRT)等の新しい公共交通のあり方の検討

  • 従来の路面電車を低床型にするなど車両や走行環境等の質を向上させ,ひとや環境にやさしく経済性にも優れた公共交通システムといわれている軽量軌道公共交通機関(LRT)等の新しい公共交通のあり方について検討

 

 

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