京都市基本計画/第3章
ページ番号35912
2001年1月10日
第3章 市民との厚い信頼関係の構築をめざして
・地方分権の本格化,急速な少子高齢化の進展など,今,まさに,地方自治体の力量が問われる時代の転換期を迎えている。新しい世紀において,京都らしい個性と魅力あるまちづくりを進め,この計画の第1章,第2章に掲げた「安らぎのあるくらし」と「華やぎのあるまち」を実現していくためには,市民の代表である市長や市会,市民みずからが,それぞれの役割を果たしながら互いに協力し合い,人権の尊重や環境の保全,経済の活性化など,ひとつひとつの課題の解決に向け努力する必要がある。市民との厚い信頼関係は,本計画を進めるに当たっての基本となるものである。
・本市自身が間断なき市政改革に取り組み,実際に各職場で市政の運営を担うひとりひとりの職員が京都市の職員としての自覚と誇りをもって積極果敢に取り組むとともに,市民がその力を向上させ,責任をもって市政に参加していくことが求められる。
・このため,積極的に情報を提供・公開し,市民とともに政策を考え,決定された政策を市民とともに実施する。さらに,その政策を市民とともに評価し,政策の見直しと新たな政策の企画・立案につなげる。
・その際,区レベルへのさらなる分権の工夫を行い,市民に身近な地域の問題は,できる限り地域の独自性を生かしつつ意思決定を行って,きめ細かな行政サービスの提供に努める。
・市民と共通の情報を基に,政策の企画・実施・評価を行うことにより,透明な行政システムを築き,地方分権時代にふさわしい個性ある政策を市民とのパートナーシップで展開する自治体へと京都市が脱皮する。
○市政に関心のある市民の割合(市政総合アンケート調査) | 75%(1999年) | → | 90% |
○公開している審議会等の数 | 23(2000年) | → | ほぼすべて |
○委員を公募している審議会等の数 | 4(2000年) | → | ほぼすべて |
○パブリックコメントの実施件数 | 2(1999年) | → | 市政の各分野の構想や計画の策定に当たってはほぼすべて |
○市内における民間非営利組織(NPO)法人認証数 | 48(2000年) | → | 450(法人資格取得意向のある団体すべて) |
第1節 情報を市民と共有する
基本的方向
市民との厚い信頼関係構築のための前提として,市政情報の積極的な提供や公開を進めるとともに,市民との対話を通じ市民の意見・提案やニーズを的確に把握し,市政にかかわる情報を市民と共有する。
1 市民の目線での市政情報の提供や公開
(1) 公平・迅速に市政情報を伝える広報活動の充実
市民に公平・迅速に市政に関する情報を伝えるため,「市民しんぶん」をはじめとする印刷物やテレビ,ラジオ,インターネットなど,さまざまな媒体を活用した自主広報活動や報道機関への情報提供を充実する。とりわけ,市政に関する情報を得にくい障害のあるひとや外国籍市民,学生などのニーズに対応する。
(2) 開かれた市政を推進する情報公開制度の確立
請求対象範囲を拡大し,非公開事由をより厳格に規定するなど,公文書公開制度を見直し,公正で透明度の高い開かれた市政を推進する情報公開制度を確立する。
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インターネット「市民しんぶん」のメール配信
- 市政情報が定期的に簡単に入手できるよう,市民しんぶんの概要版を電子メールで希望者に配信
- さらに詳しい情報を希望するひとのため,本市のホームページとリンクさせ,利便性を確保
2 市民との対話による双方向性の確保
(1) 市民が気軽に意見が言えるしくみの充実
市政に関する意見や提案を受け付ける「市長への手紙」,くらしやまちづくりに対する市民の意見やニーズを把握し市政に生かす「市政総合アンケート」,行政サービスの市民窓口でのさわやかな応対など,市民が気軽に意見や提案を言えるしくみを充実するとともに,要請に応じて,職員が出向き市民の求めるテーマに沿った説明や意見交換を行うなど,双方向・対話型の新たなしくみを構築する。
(2) 市民活動団体等との対話の場づくり
ひとりひとりの市民では担いきれない重要な機能を果たす都市の一員である企業,大学,宗教法人,市民活動団体など,各種の法人や団体との市政に関する対話の場づくりを進める。
3 市民とともに政策を企画・実施・評価していくための情報の共有
(1) 市民との情報の共有化の推進
情報通信技術(IT)を活用し,市民が知りたい情報を早く,簡単に入手することができるしくみをつくるとともに,受付窓口の部署にかかわりなく,市民の意見や提案等が市政の各部門に確実に伝わるしくみを構築し,市民が市政に参加していくための基本となる情報の共有化に努める。
とくに,財政状況については,「財政のあらまし」の発行などにより,その現況や課題をわかりやすく市民に伝えるとともに,「バランスシート(貸借対照表)」を作成し,官公庁会計では把握できない資産や負債の状況まで含めて明らかにする。
また,公的サービスの一翼を担っている外郭団体についても,その経営状況等について積極的な情報提供に努める。
(2) 市民意見の提出状況とその反映状況等の公表
ひとりひとりの市民や市民活動団体等から寄せられる意見や提案の提出状況を公表する。
また,それらの意見や提案がどのように市政に反映されたかについても公表に努め,市民との円滑な対話の糸口とする。
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バランスシート(貸借対照表)の作成
- 財政のアカウンタビリティ(税の使途についての説明責任)とディスクロージャー(財政に関する必要な情報の開示)の拡充
- 官公庁会計では把握できない資産や負債の状況を明示
- 職員のコスト意識の向上にも寄与
第2節 市民の知恵や創造性を生かした政策を形成する
基本的方向
市民の多様なニーズに的確に対応した質の高い行政サービスの効率的な提供を図っていくため,代表民主制度を補完する,さまざまな段階での広範な市民参加の下に,多彩な市民の知恵や創造性を生かした政策形成を行う。
1 市民が政策形成に参画できるしくみづくり
(1) 市民の企画立案の支援
市民が政策形成の一翼を担うことができるよう,ひとりひとりの市民や市民活動団体等の企画立案に対し支援する。
また,これらの市民や市民活動団体等が,それぞれの特徴や専門性を生かしつつ,相乗効果を発揮できるよう,自由で創造的な企画力をもつ組織づくりやその企画立案に対し支援する。
(2) 政策形成過程への多様な参加のしくみづくり
政策形成過程の透明化を図るため,審議会等を原則公開するとともに,委員の公募制を進めるなど,企画段階から市民の知恵や創造性が生かされるしくみを構築する。
また,計画策定や施設設計等において,さまざまな立場のひとびと,ひとりひとりの意見や提案を生かしながら合意形成を図っていくワークショップをはじめ,市政の各分野の構想や計画を素案段階から広く市民に公表し,意見を求めるパブリックコメントの制度化等のさまざまな機会を提供することにより,多くの市民や専門的な活動を担う市民活動団体等が政策形成に参画できるしくみづくりに努める。
なお,時に応じて市民が直接に代替案を提示できるしくみについても検討を行う。
また,環境影響評価制度のように市民が政策を事前に評価できる機会を増やし,政策形成過程の透明化に努める。
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審議会等の原則公開,委員公募制の推進
- 政策形成の早い段階から市民意見の反映を図るため,審議会等を原則公開
- ホームページなどを活用し議事録等を公開
- 委員の公募制の導入・拡大
- 審議事項に応じ女性や外国籍市民,市民活動団体等の委員の積極的登用
パブリックコメントの制度化
- 政策の立案に当たって,市政の各分野の構想や計画を素案段階から広く市民に公表し,意見を求めるパブリックコメントを制度化
市民参加推進計画の策定・推進 市民参加推進条例の制定
- 複雑・多様化する市民のニーズを的確に捉え,市政運営に生かしていくため,より多くの市民の主体的な参加が得られるよう,参加手法の充実や制度化を推進する「市民参加推進計画」を策定・推進
- これらの制度やしくみを支える市民参加の基本原則を示した「市民参加推進条例」を制定
2 個性ある政策を形成するための条件整備
(1) 個性ある政策の企画ができる職員の育成
市民の意見や提案を大切にしつつ,将来ニーズを的確に把握し,幅広い角度から先駆的で大胆な個性ある政策の企画ができるよう,職員の意識改革を図るとともに,政策形成能力などの向上に努める。
(2) 個性ある政策を展開していくための税財政力の強化
本市が大都市としての一般的機能を十分に発揮するとともに,京都市独自の個性ある政策を展開するため,法定外目的税等の研究を含め税財政力強化に向けた取組を進める。
とりわけ,税負担の公平性を確保するためにも,実効ある徴収体制の強化に努める。
また,行政が提供するサービスであっても,その性質に応じて受益者に適正な負担を求める。
第3節 市民とともに政策を実施する
基本的方向
環境,高齢者介護,子育て支援,防災,まちづくりなど広範な領域における市民の自発的活動への支援等を行い,市民との適切な役割分担を図りつつ,協働して政策を実施する。
1 市民との協働による政策の推進
(1) 政策実施を支える市民の力の向上
地域の課題やさまざまなテーマにかかわる問題の解決に向けて,ひとりひとりの市民や市民活動団体等の力を高め,そのもてる力を発揮できるよう,市民コーディネーターを養成するとともに,市民からの発案による事業の実施のしくみを構築する。
また,これらの市民や市民活動団体等が,それぞれの特徴や専門性を生かしつつ,相乗効果を発揮できるよう,自由で機動的な実行力をもつ組織づくりやその活動に対し支援する。
(2) 市民の自主的な活動の支援
「市民活動支援センター」や「景観・まちづくりセンター」など,ひとりひとりの市民や市民活動団体等の自発的,主体的な活動を支援する拠点となる施設を整備する。
また,これらの施設を核とした市民のネットワークづくりの支援,施設運営組織への市民の参画のしくみの構築に努める。
さらには,市民のもつ専門的知識や能力,ボランティア精神等を十分に生かすなかで,市民との適切な役割分担を図りつつ,協働して政策を実施する。
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市民コーディネーターの養成
- 市民参加のさまざまな手法を身につけ,地域のひとびとの力を引き出して課題の解決に取り組むコーディネーターを養成し,市民による主体的な活動を支援
市民活動支援センターの整備
- 福祉,環境,国際交流,青少年等の各分野と連携を図りながら,民間非営利組織(NPO)をはじめとする市民活動団体等による広範で多様な市民活動を総合的に支援する中核施設として,菊浜小学校跡地(下京区)に2003年に開館予定
- 市民にボランティア・民間非営利組織(NPO)等に関する総合的な情報提供などを行う窓口機能
2 新たな発想・手法を取り入れた行政運営の推進
(1) 市民サービス向上のための行政の柔軟なしくみづくり
社会経済情勢の変化や市民の多様化,高度化するニーズに的確・迅速に対応するため,市民に身近な政策実施部署への権限の委譲を進めるなど行政内部の分権化を図る。
また,縦割り行政の改善のため,行政内部での情報の共有化を進めるとともに,横断的で機動的なプロジェクトチームを導入するなどにより,職員のチャレンジ精神やプラス思考が生かされ,時代の変化に対応し,新たな市民ニーズや課題に的確に対応できる柔軟な執行体制を整備する。
(2) 高い政策実施能力を備えた職員の育成
多様化,高度化する市民ニーズ等にこたえるため,既存の組織や前例にとらわれない柔軟な発想で市民とともに政策を実施・調整する能力を備えた職員を育成する。
(3) 限られた行政資源の効果的な活用
限られた財源,人材等の資源を行政が本来行うべき分野に重点的に配分するなど,効率的・効果的な行政運営を推進するため,徹底した事務の簡素化や経費節減に努めるとともに,職員数の適正化を図る。
また,事業所,公共施設については,利用者の視点に立った柔軟な運用や多角的な活用を進め,利用者数と利用者満足度の向上に努めるとともに,社会経済情勢や市民ニーズの変化等に対応した統廃合や業務の見直しを行う。
なお,市民満足度の高い上質なサービスを提供するため,これまで実施してきた政策の見直しによる将来的な財政負担の軽減を視野に入れて,新たな対応を迫られている市民ニーズ等へと行政資源を振り向けることについても検討する。その際,部分的にサービス量の減少があったとしても,社会全体としての市民サービスの水準が維持・向上するよう努める。
(4) 公営企業等の経営健全化
バスや地下鉄,上下水道などの公営企業については,利用者の立場に徹したサービスの向上に努めるとともに,コストの縮減や人件費の削減等に取り組み,経営の効率化・健全化を推進する。
あわせて,外郭団体についても,客観的な経営評価の実施や経営計画の策定の支援等を行うとともに,財政的支援のあり方を見直し,経営健全化を図る。また,経営評価システムの取組等により統廃合等を行うことが適当と判断される団体については,整理・統合を進める。
(5) 民間のもつさまざまな力や専門性の活用
民間企業などがもつ多彩な人材や技術,情報や経営能力等の活用や導入を進めるほか,PFI(Private Finance Initiative:公共施設等の建設,運営等における民間の資金や専門性の活用)などの新たな事業手法も検討する。
また,民間でのサービス提供が可能なものについては,提供主体の民間への移行を進める。
さらに,本市が提供するサービスについても,その内容の向上と効率的な提供が可能なものについては,行政責任に留意しながら民間に委託する。
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PFI手法の検討
- 公共部門によって行われてきた公共施設等の建設,維持管理,運営等を民間の資金,経営能力,技術力を活用して行う新しい手法の導入を検討
- 「PFI検討委員会」において,「PFI導入ガイドライン」を策定
第4節 市民とともに政策を評価して市政運営に生かす
基本的方向
行政活動の基礎的な単位となる個々の具体的「事務事業」だけでなく,これらの「事務事業」を包括した基本的方針を示す「政策」そのものについても,市民とともに評価を行うことのできるしくみを整え,評価から得られた成果を「政策」や「事務事業」の見直しと新たな形成につなげる。
1 市民とともに行う評価のしくみづくり
政策の企画・立案,実施,評価(いわゆる「PLAN-DO-SEE」のサイクル)のなかで,政策形成過程の透明性の確保や成果重視による執行の効率化,市民サービスの向上を図るため,行政活動の基礎的な単位となる個々の具体的「事務事業」と,これらの「事務事業」を包括した基本的方針を示す「政策」そのものに関する評価を市民とともに行えるしくみをつくる。
その際,情報通信技術(IT)の活用などにより,「政策」や「事務事業」の実施状況,本市の財政状況等をわかりやすく市民に伝える方法を工夫し,時代状況に応じて充実することにより,ひとりひとりの市民や市民活動団体等のさまざまな主体が,地域,性別・年齢等の属性,利害関係等のさまざまな視点から評価できる条件の整備に努める。
また,この評価結果に基づき,「市民と行政の役割分担」を意識した「政策」や「事務事業」の廃止を含む見直しを,市民との協働により定期的に行うしくみづくりを進め,その見直しの結果を実施方法の改善や予算へ反映させる。
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京都市版行政評価システムの構築
- 全国的にも先駆的な取組として,行政の守備範囲に主眼を置いた「市民と行政の役割分担評価」を開発・導入
- 市民サービスや公共施設など事務事業の形態別にその行政効果を評価する「形態別事務事業評価」を構築・導入
- これまで計画や予算中心であった行政過程に評価を加え,財務,人事,組織,事業進捗管理といった各行政管理活動が統一した目標に向けて有機的に連携するよう,「政策-施策-事務事業」の各レベルごとの評価システムを核とした総合的な行政経営システムを構築・導入
2 公共事業の再評価
公共事業の効率化・重点化と実施過程の透明化を図るため,国補助事業と本市単独事業のいずれについても,事業着手後一定期間を経過したものを中心に,その進捗状況や社会経済情勢の変化等を踏まえ,第三者機関による再評価を定期的に実施し,その結果を公表して必要な見直しを行う。
また,多額の経費を必要とする公共事業については,緊急性,必要性等を尺度に重点化を推進し,事業効果の早期発現をめざすほか,施設完成後の維持・管理費用を含めたトータルコストの縮減,入札・契約制度の改善,既存ストックの有効活用,さらには情報通信技術(IT)を活用した受発注をはじめとする各種手続きのオンライン化や公共事業情報の市民との共有化を促進し,透明性,効率性の確保に努める。
第5節 個性を生かした魅力ある地域づくりを進める
基本的方向
地方分権の大きな流れのなか,福祉や防災,環境など市民に身近な地域の問題は,できる限り地域の独自性を生かしつつ意思決定を行うことが必要である。
このため,「各区基本計画」の策定過程で得たさまざまなノウハウやネットワークなどを生かし,各区の個性を生かした魅力ある地域づくりの拠点としての区役所機能の強化を図り,きめ細かな行政サービスの提供に努める。
また,市民に親しまれる総合行政機関としての役割を強化するため,区役所の総合庁舎化を進めるとともに,新市庁舎の整備に向けた取組を進める。
1 魅力ある地域づくりの拠点としての区役所機能の強化
(1) 地域における総合行政機関としての区役所の位置付けの明確化
地域における市民の意見や要望を的確に市政に生かし,市民に身近な課題解決のための横断的な調整を行うとともに,地域における市民参加を進めるため,地域の総合行政機関としての区役所の位置付けを明確にし,個性を生かした魅力ある地域づくりの拠点とする。
(2) 個性的で魅力ある地域づくりを進めるための区役所機能の強化
市民に対して市政に関する情報を正確に伝え,市民と情報を共有するとともに,市民との活発な交流や活動を通じて,市民の声が集まり対話が始まる場となるよう,区役所における情報の受発信機能を強化する。
また,得られた市民意見を的確に市政に生かすことができるよう,市政の各部門との連携を密にするとともに,区役所の総合的・横断的な政策の企画・実施機能を強化することにより,地域における自主的なネットワークづくり,ルールづくりにかかわり,ひとりひとりの市民や市民活動団体等と協働して個性的で魅力ある地域づくりを進める。
その際,区民とともに策定した「各区基本計画」の作成過程で得たさまざまなノウハウやネットワークなどを生かしつつ,区役所独自の取組を進めるとともに,区民主体の取組等に対する支援を行う。
2 区役所の総合庁舎化
保健,福祉など市民生活に密着した要望や地域課題の解決に向けて,それぞれの地域のニーズや実状を踏まえ,総合的に市民サービスの向上を図るため,市民に最も身近な総合行政機関である区役所の総合庁舎化を進める。
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