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京都市基本計画/第1章1

ページ番号35906

2001年1月10日

第1章 安らぎのあるくらし

・日々のくらしのなかで,ひとりひとりが個人として厚く尊重され,高齢者や障害のあるひとをはじめ,すべてのひとが積極的に社会参加できる場や機会に恵まれるとともに,学校と家庭・地域との連携の下で豊かな心と社会性を身につけた子どもたちが育つ,すべてのひとがいきいきとくらせるまちをめざす。

・保健・医療・福祉などくらしの基盤となるサービスや支援ネットワークを充実することで,子どもを安心して産み育て,すべてのひとが心身ともに健やかにくらせる,ひとりひとりが支え,支えられるまちをめざす。

・ひとりひとりがくらしに節度をもち,環境への負担の少ない持続可能なまち,歩いて楽しいまちをつくるとともに,災害に強く犯罪や事故などのない,だれもが安心してくらせるまちをめざす。

 

 

数字で見る2010年の市民のくらしとまち

第1節 すべてのひとがいきいきとくらせるまち
○審議会等の女性委員比率 22.7%(2000年) 35%(近年の増加率による)
○精神に障害のあるひとの障害者手帳取得率 21.7%(1999年) 50%
最低居住水準未満世帯数の割合 6.3%(1998年) 0%
○高齢者等のための設備のある住宅の割合 42.1%(1998年) 60%(半数を大きく上回る)
○障害のあるひとが社会参加(スポーツ・文化活動等)している割合(身体障害者実態調査・知的障害者実態調査)(身体障害者)
16.2%(1996年)
50%
(知的障害者)
17.7%(1996年)
50%
スクールカウンセラー配置数 37校(2000年度) 79校(全中学校)
○子どもボランティアリーダー数 0人(2000年度) 約200人(小学校区に1人以上)

 

第2節 ひとりひとりが支え,支えられるまち

○介護保険給付対象サービス
在宅サービス
 訪問介護(ホームヘルプサービス)
施設サービス
 介護保険施設の定員(介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設の合計)

32,000回/週(2000年度)

7,900人分(2000年度)


45,760回/週(2004年度)

9,331人分(2004年度)

○保育所待機児童数 533人(2000年度)0人
○地域子育てステーション数85箇所(2000年度)180箇所(概ね小学校区に1箇所)
○基本健康診査受診率32.6%(1999年度)50%
○地域体育館の整備数10施設(2000年)14施設(人口10万人程度,徒歩30分の生活圏に1箇所)

 

第3節 だれもが安心してくらせるまち
○市域における二酸化炭素排出量 7,279千トン(1990年) 10%削減
○ごみ処理量(焼却処理する可燃ごみと埋立処分する不燃ごみ) 777,790トン(1997年度) 15%削減
○ごみ処理量に占める資源回収の割合 2.5%(1997年度) 16%
○10年確率降雨(62mm/h)に対応した公共下水道施設の整備率 1.0%(1999年度) 30%(市街地の1/3)
○火災件数 330件(1995~1999年の平均) 約220件(火災の少なかった1980年代の火災件数)
○文化財市民レスキュー体制の確立数 2件(2000年) 200件(体制が必要な対象物すべて)
○市民防災行動計画の策定組織数 0組織(2000年) 約6,000組織(ほぼすべての自主防災部)

 

 

第1節 すべてのひとがいきいきとくらせるまち

1 ひとりひとりが個人として厚く尊重される

基本的方向
 日々のくらしのなかに人権を大切にし,尊重し合う習慣が根付いた「人権文化」を築いていくことにより,子どもも高齢者も,女性も男性も,障害のあるひともないひとも,また国籍や民族,生まれや生い立ちに関係なく,すべてのひとがいきいきとくらせるまちをめざす。

 

(1) 日々のくらしのなかに人権を大切にし,尊重し合う習慣が根付いた「人権文化」の構築

ア 人権尊重の考え方が日常生活に根付いていくための多彩な取組の推進

 人権文化がしっかりと根付いた社会の構築に向け,市民しんぶん,テレビ,ラジオ,パンフレット,ポスター,インターネット等,各種広報媒体の特性を生かした広報・啓発活動を推進するとともに,憲法月間,人権月間,人権強調月間を中心として,講演会等の各種啓発事業を実施する。

 また,市民の興味,関心や学習段階に応じて学習の場や教材の提供などを進めるとともに,参加型・体験型の学習など,多様な手法を取り入れた学習機会を提供する。さらに,人権学習に関する調査・研究により,市民に幅広く人権学習に関する情報を提供し,人権にかかわる相談について適切な対応を図ることができるよう,相談体制の整備と関係機関との連携を強化する。

イ 保育所,幼稚園,学校における人権教育の推進 [「3 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ」(2)エ参照

 子どもを主体として捉えた「児童の権利に関する条約」を踏まえながら,保育所や幼稚園においては,集団のなかで,ひとりひとりの子どもが人権を尊重する気持ちを育(はぐく)み,将来にわたって思いやりと協調性に富んだひととなるための基礎を培う。

 さらに,学校においては,児童・生徒みずからが進路を切り拓き,自立して生活することができる力を培うとともに,人権の大切さを理解し,人権尊重を規範として行動していけることを目的とした取組を行う。

ウ 豊かな共生社会をめざした社会参加と交流の促進

 だれもが社会を構成する一員として,自己の希望に応じて社会活動に参加することは,自己実現を図るための当然の権利である。

 このため,すべてのひとの平等な社会参加を支援するとともに,区民ふれあい事業,高齢者と子どもとの世代間の交流事業など,市民相互の幅広い交流を促進する。

エ 市民の自主的な取組の支援

 地域,学校,企業・職場,家庭など,市民がかかわるさまざまな場面で,人権学習に自主的に取り組み,学習活動を効果的に進められるよう,指導者の養成や人権研修会への講師(市民啓発推進員)の派遣,保育所,幼稚園,学校における保護者対象の学習会の開催など多様な支援を行う。

オ 世界人権問題研究センターの整備

 人権問題の総合的な調査・研究や関連機関との連携・交流を推進し,市民がその成果を享受できる拠点として,「世界人権問題研究センター」の施設整備を京都府と協調しながら進める。

 

ちょっと注目!

世界人権問題研究センターの整備

  • 京都府との協調により,人権問題に関する学術研究の振興に寄与する拠点として整備
  • 人権問題について広く世界的視野に立った総合的な調査・研究の推進
  • 研究機関や研究者との連携・交流の推進

 

(2) 男女がともに自立,参画,創造する男女共同参画社会の実現

ア 男女の人権の尊重

 (ア) 女性に対するあらゆる形態の暴力への対策強化

 セクシュアルハラスメント(性的いやがらせ),ドメスティックバイオレンス(夫や恋人からの暴力),性犯罪など,女性に対するあらゆる形態の暴力は,女性の基本的人権を侵害するものであり,男女共同参画社会を形成していくうえで克服すべき重要な課題である。すべてのひとが女性に対する暴力について正しく理解できるよう広報・啓発活動を行うとともに,とくに緊急を要するドメスティックバイオレンスの被害者支援策として,関係機関との連携の下,シェルター(緊急一時避難所)等の保護体制を整備する。

 (イ) メディアにおける女性の人権尊重の取組

 高度情報化が進展するなかで,メディアによる情報の影響はさらに拡大するものと予想される。男女平等の視点から,各種メディアにおける女性の人権尊重の自主的取組を促進するとともに,メディアからの情報を読み解く能力(メディア・リテラシー)向上のための取組を進める。

 (ウ) 生涯を通じた女性の健康の保持・増進

 性や母性に関する学習活動や情報提供の拡充などにより,母性を尊重し保護するとともに,学校や地域における性教育・健康教育の充実,女性に対する健康診断や健康増進,産前産後の支援,相談体制の充実などにより,女性の健康の保持・増進に努める。

 (エ) 男女平等の視点に立った生涯学習・啓発の推進

 「女性総合センター(ウィングス京都)」を拠点として,「京都市女性大学」をさらに発展させるとともに,「男女共同参画市民会議(ウィングス・フォーラム)」の開催,啓発誌等による情報提供の充実,学習・研修活動など多彩な事業の展開を通じて,男女共同参画社会の実現に向けた意識改革を進める。

イ 職場,家庭,地域における男女共同参画の実現

 (ア) 就業における男女平等の確保

 女性が自分らしく安心して働き続けられるよう,男女平等の雇用環境を確保するための普及啓発に努めるとともに,雇用・労働問題に関する各種情報の提供や相談体制を充実する。また,女性の職業能力の開発・育成や起業を支援する。

 (イ) 男女の家庭,地域社会への参画

 男女共同参画社会では,個人の生きがいの場が職場だけでなく,家庭,地域社会にバランス良く展開されることが必要であり,家庭における男女の責任分担の促進,地域活動・ボランティア活動など社会活動への男女共同参画を進める。

 (ウ) 子育てや介護支援の充実

 働く女性の増加と就労形態の多様化に対応して,育児・保育環境などの整備や子育て支援ネットワークの構築,家庭において主として女性が負担している高齢者や障害のあるひとの介護支援などの取組を進める。

ウ 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

 市政の政策・方針形成過程への女性の参画を進めるため,各種審議会等への参画を促すとともに,管理職等への登用を一層促進し,女性の職域の拡大と能力開発を進める。

エ 女性の国際活動の支援

 女性問題に関する国際会議への参加の促進など,すべての女性の地位向上に貢献するため,女性の自主的な国際活動を支援する。

オ 第3次男女共同参画推進計画の策定と男女共同参画推進条例の制定

 社会経済情勢の変化や国際社会の動向に対応した「第3次男女共同参画推進計画」を策定するとともに,男女共同参画社会を支える「男女共同参画推進条例」を制定し,市民,事業者,行政の連携を強化し,男女がともに自立し,その個性と能力を十分に発揮できる豊かな社会の実現に向けた取組を進める。

 

ちょっと注目!

男女共同参画推進条例の制定

  • 男女共同参画社会基本法の理念に基づく,市民,事業者,行政が果たすべき役割の明確化と連携の強化
  • 2003年度制定予定

 

(3) 子どもの人権の尊重

ア 子どもの虐待防止と権利擁護 [「2 子どもを安心して産み育てる」(5)イ参照]

 児童虐待の未然防止や早期発見,早期対応,再発防止を図るため,児童相談所の機能や体制を充実するとともに,市民への広報・啓発活動の推進,関係機関の協力・連携体制を強化する。

 また,「児童の権利に関する条約」,「児童福祉法」の理念に基づき,子どもを大人が保護・指導する対象としてだけではなく,子ども自身の意思を尊重した権利擁護システムを構築する。

イ 子どもの公共心を培う教育の推進 [「3 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ」(2)イ(ア)参照

 昨今,いじめや学級崩壊,集団による路上生活者(ホームレス)の襲撃,さらにはひとの命を奪う凶悪犯罪まで起こっている。こうした状況を踏まえ,命の大切さについての理解を深め,社会におけるルールを守るなど物事の判断基準を養い,子どもたちの公共心を培う教育を推進する。

 

(4) 高齢者の人権の尊重

ア 高齢者の自立と社会参加の支援

 高齢者がみずからの居場所を確認でき自信をもってくらせる長寿社会の実現をめざし,介護サービスの質的向上を図るとともに,高齢者の自立を支援し社会参加を促進するための取組を進める。

イ 痴ほう性高齢者等の権利擁護 [「1 すべてのひとが相互に支え合い安心してくらす」(2)エ(イ)参照

 痴ほう性高齢者をはじめ,介護が必要な高齢者に対するプライバシーの侵害や虐待を防止するための積極的な広報・啓発活動を推進するとともに,専門相談体制の整備を進める。

 

(5) 障害のあるひとの人権の尊重

 障害のあるひとが特別な存在として見られるのではなく,障害のあるひともないひとも同じ生活が送れる社会こそ普通の社会であるという「ノーマライゼーション」の理念に基づき,建物や道路等についての物理的な壁,障害だけを理由に社会参加を妨げるような制度的な壁,障害のあるひとに対する誤った知識や偏見による心の壁を取り除くため,保健・医療,福祉,教育,就労・雇用等の分野において,総合的な取組や施設の整備などを積極的に推進するとともに,障害に関する正しい理解と認識の普及に向け,広報・啓発活動を充実する。

 とりわけ,いまだ根強い精神障害に対する誤解や偏見を取り除くため,精神に障害のあるひとの社会復帰の道筋を理解できる「複合的社会復帰モデル施設」を整備するなど,精神障害に関する正しい理解と認識の普及を図る。

 

ちょっと注目!

複合的社会復帰モデル施設の整備

  • 精神に障害のあるひとの社会復帰を促進するため,退院後の生活訓練を行う援護寮,就労訓練を行う授産施設,在宅生活の支援を行う地域生活支援センターの3施設が一体となった,社会復帰の道筋を明確にした施設を整備

 

(6) 特別施策としての同和対策事業の終結とその後の取組

ア 特別施策としての同和対策事業の終結

 同和地区のおしなべて低位な実態を解消して一般地域との格差を是正し,住民の生活基盤の安定,向上と自立を促進する事業や人権意識の高揚をめざした事業を一般施策を補完する特別施策として推進してきたことや,同和地区住民の努力とがあいまって,住環境や住民の生活実態が大きく改善されてきた。このことを踏まえ,特別施策としての同和対策事業の廃止や一般施策への移行などの見直し,改革を進めており,「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の期限である2001年度末には,特別施策としての同和対策事業を終結する。

イ 一般施策での取組の推進

 今日の同和地区においては,若年・壮年層の地区外流出,地区内人口の減少,これに伴う高齢化の急激な進展や地域コミュニティ機能の低下,ひとり親家庭の増加,大学進学率の格差,住宅の老朽化に伴う建替えなどの課題が存在し,一方で就職,結婚時の差別につながる身元調査などの実態がある。これらの諸課題については,他の人権問題の解決のための取組と同様に,広く市民を対象とする一般施策での取組を進め,同和問題の早期解決を図る。

 (ア) 住民の自立を支援する取組

 保護者の子育てに関する支援や地域の子育て支援を柱とする保育の取組,同和教育の成果を普遍化した人権教育や保護者の教育力向上に関する支援などの教育の取組,住宅の建替えを契機とする,将来にわたり良好な住環境のなかで子どもから高齢者までの多様な世代が安心して永住でき,住民が快適にくらせるまちづくりの取組などにより,住民の自立に向けた自主的な努力を支援する。

 (イ) 交流と共生をめざした取組

 隣保館などの公共施設については,広く市民が利用できるように有効活用を図り,住民の自主的・主体的活動を促進するとともに,生涯学習の取組,交流と地域コミュニティの振興をめざした取組などを推進する。また,在宅高齢者などを地域ぐるみで支えるしくみとしての保健・医療・福祉のネットワークづくりにより,住民の健康の保持・増進を図るなど,さまざまなひとが交流し共生する地域社会づくりを進める。

 

(7) 多文化共生社会の実現

ア 外国籍市民の市政への参画の拡充

 外国籍市民を含む委員で構成する「外国籍市民施策懇話会」の開催や各種審議会等への外国籍市民の参画の推進などを通じて,外国籍市民の声を市政に反映させる取組を推進するとともに,国籍,民族,文化等の違いによる精神的,制度的な「壁」の解消に向け,より効果的な取組を検討する。さらに,外国籍市民の市職員への採用の拡大や地域活動に参加しやすい環境づくりに取り組む。

イ 多様なニーズに対応した情報提供・相談体制の充実

 外国籍市民の多様化,増大するニーズに対応するため,国際交流協会,市民・民間団体等との連携強化や外国籍市民ボランティアの登用を図るとともに,日本の言葉や文化に不慣れな外国籍市民,海外からの観光客をはじめ来訪者にも親切でわかりやすい案内表示や各種パンフレット等の多言語化を進めるなど,生活全般にわたる情報提供・相談体制を充実する。

ウ 住宅問題への対策の強化

 外国籍市民に対する入居差別の解消に向けて,留学生と家主の交流会の開催など,宅地建物取引業者や家主に対する啓発・指導の強化を図るとともに,入居に伴う不安を払拭するための情報提供や相談体制を充実する。さらに,市営住宅への入居に関する情報提供を充実する。

エ 就職差別の解消に向けた取組の推進

 外国籍市民の就職時において公正な採用・選考が行われるよう,市民や事業者等を対象にした研修会やシンポジウム等の事業により啓発を強化するとともに,外国籍市民の積極的な採用に向け,関係機関との連携を図りながら,各業界団体や求人者に対する進路指導を充実する。

オ 多文化共生社会の実現に向けた教育・啓発

 国籍にかかわらず,すべての児童・生徒が自国の文化と伝統を理解するとともに,他国・他民族との違いを尊重し,ともに生きる国際協調の精神を養うための学習・交流機会や啓発活動を充実する。さらに,外国籍の児童・生徒への日本語教育,日本社会への適応教育の充実など,学校での幅広くきめ細かな指導により子どもたちの教育を受ける機会の保障を図るとともに,保護者の不安の解消に向け,円滑な連絡体制の整備を進める。

 また,外国籍市民への差別や偏見の解消に向け,「多文化共生社会」をテーマとしたシンポジウムの開催などを通じた啓発を進める。

 

(8) 現代社会における多様な人権問題への対応

ア HIV等の感染症についての正しい知識と理解の普及啓発 [「3 心身ともに健やかにくらす」(2)ウ(ア)参照]

 市民がHIV(エイズの原因となるウイルス)等の感染症を予防できるよう,感染症についての正しい知識の普及に努めるとともに,患者・感染者に対する差別や偏見の解消に向け,感染症についての正しい理解と認識を深めるための教育・啓発活動を進める。

イ 現代社会における多様な人権問題への取組の推進

 刑を終えて出所したひと,婚外子,路上生活者(ホームレス)等に対する差別や偏見,インターネット等を利用した人権侵害など,多様な人権問題に対する正しい理解と認識をもち,自分の身近な問題として,考え,対処する力を身につけられるよう教育・啓発活動を進める。

 

 

2 すべてのひとがいきいきと活動する

基本的方向
 子どもから高齢者まですべての市民がいきいきとくらせるまち,とくに高齢者や障害のあるひとが,住み慣れた地域社会のなかで,積極的に社会参加ができる場所や機会に恵まれ,多くのひとたちとふれあいながら社会の一員としての生きがいをもって活躍できるまちの実現をめざす。

 

(1) だれもがずっとくらし続けたくなるすまい・まちづくり

ア 安らいだ気持ちでくらせるすまいづくり

 (ア) 市民の多様な都市居住形態に応じた住宅の供給

 多様な世代が都市に集まって住むという永い歴史をもつ京都では,地域における相互扶助の精神や生活の知恵が継承されてきた。この市民の「得意とするところ」を新しい時代に合ったかたちで再生して,市民が地域社会のなかで安らいだ気持ちで心豊かにくらせるまちをめざし,多様な世代が共生する都市居住を進める。

 そのために,特定優良賃貸住宅定期借地権付住宅の供給など,若年層や子育て世帯の都心居住を促進するとともに,住宅に困窮する低所得者層に対して,公営住宅の的確な供給を行うなどの住宅施策を進める。

 また,市民の世帯構成の変化等に応じた住居選択の幅を広げるため,中古住宅市場やリフォーム市場の水準の向上と活性化を図り,既存住宅の有効活用を促進する。

 (イ) 高齢者や障害のあるひとがくらしやすい住宅の整備

 高齢者や障害のあるひとが自立して,快適な生活を安心して営むことができるよう,福祉施策との連携の下,民間活力を生かしながら,既存住宅の改修を含めた住宅のバリアフリー化の普及に努めるとともに,高齢者向けの賃貸住宅を供給するなど,高齢者や障害のあるひとがくらしやすい住宅の整備を促進する。

 また,在宅福祉を支援する新たな居住形態に関する検討,緊急通報システムの設置や生活援助員の派遣など生活支援サービスの充実に関する検討を行うとともに,バリアフリー等に対応した住宅に改修・建替えをするための相談事業を充実する。

 (ウ) 住宅施策の基本的な指針となる新たな住宅マスタープランの策定・推進

 少子高齢化,単身世帯の増加など,住生活を取り巻く社会情勢の大きな変化のなかで,多様化,複雑化する市民の居住ニーズに対応した良好な都市居住の実現に向け,住宅施策の基本的な指針となる「住宅マスタープラン」を見直し,市民,事業者との協働による住宅施策を進める。

イ ひとにやさしいまちづくりの推進 [「4 歩いて楽しいまちをつくる」(1)ウ参照]

 すべてのひとがいきいきと都市生活を楽しむためには,だれもが気軽にまちに出かけることができるような「ひとにやさしいまちづくり」を推進していく必要がある。

 そのため,多くのひとびとが利用する建築物等が新たに整備される際には,すべてのひとが利用しやすいデザイン(ユニバーサルデザイン)が採り入れられ,バリアフリー化された歩行空間が整備されるよう,「人にやさしいまちづくり要綱」等に基づく協議を行う。既存の建築物については,公共建築物のバリアフリー改修を進めるとともに,要綱の基準に適合した建築物の維持管理の状態を調査する福祉パトロールを実施する。

 また,市民,事業者とともにバリアフリーについて学ぶ講座を創設するなど,ひとにやさしいまちづくりを促進する。

 さらに,国と連携しながら,情報通信技術(IT)を活用した歩行者支援システム(歩行者ITS)の検討を進め,その導入を図る。

ウ 良質な住宅・居住環境の整備

 (ア) 分譲マンションの適切な維持管理の誘導・支援

 多くのひとが集まって住む分譲マンションは,都市における主要な居住形態のひとつであるが,その維持管理に係る諸問題が近年大きな社会問題となっている。そのため,分譲マンションの適切な維持管理を誘導・支援するための取組を実施する。

 (イ) 適正な品質・性能を有した住宅の普及

 建築物の安全性と適法性を確保し,市民が安心して良質な住宅を取得できるような住宅市場の形成を促進する。そのため,適正な工事監理の実施,中間検査や完了検査の的確な実施を促進し,瑕疵保証制度の徹底や住宅性能表示制度の普及に努める。

 また,省エネルギー,建物の高耐久化,廃棄物の発生抑制等の面で環境に配慮した住宅,建材等から発生する化学物質への対策等の面で健康に配慮した住宅の普及に努める。

 (ウ) 狭小・老朽化した市営住宅の総合的改善の推進

 計画的な建替えや長期管理を前提とした改善などにより,狭小で老朽化した既存の市営住宅を有効に活用する。

 また,団地の再生に当たっては,福祉施設等の導入,地域の景観形成,環境問題への対応など地域のまちづくりへの寄与という視点を重視しつつ進める。

 (エ) すまいづくりに関する情報の交流促進

 市民,事業者,行政それぞれが,すまいづくりに関する主体として互いに連携を強め,良質な住宅の供給や維持管理と居住環境の向上をめざす。

 そのため,すまいづくりの情報交流拠点である「すまい体験館」を中心として,住宅・住環境に関する相談体制や情報提供機能を充実し,情報の交流を促進する。

エ 京都に合った木造住宅の継承・創造 [「1 美しいまちをつくる」(4)参照]

 京都のまちを特徴付けている京町家をはじめとする木造住宅については,優れた町並み景観や都市のなかの住宅としての工夫を,時代に応じたかたちで発展的に継承する。そのため,「京町家再生プラン」に沿って京町家の保全・再生・活用を促進するとともに,環境や防災面等を考慮した新素材や新技術を活用した木造建築物の開発,既存木造住宅の改修手法の検討などに取り組む。また,安全性を確保したうえでの規制の柔軟な運用や制度の見直しなどの検討を進め,京都に合った新しい木造住宅の開発・普及について検討する。

オ 住み続けられるまちの形成

 住環境整備施策は,安全性や居住性等の観点から住環境の整備が必要な地域において,多様な世代が快適に安心して住み続けられるまちをめざして,住宅地区改良事業や密集住宅市街地整備促進事業等を展開し,住環境の整備と地域コミュニティの醸成を図ってきた。今後は,これまで培ってきた経験と蓄積を生かすなかで,住民と協力・連携して,将来にわたり地域コミュニティや地区活力が維持できる魅力のあるまちの形成に向けた各種施策を実施する。とくに,崇仁地区における住環境の整備については,住宅地区改良事業の早期完了を図るとともに,東九条地区における密集住宅市街地整備促進事業とあわせて京都駅周辺の交通至便な立地特性を生かしたまちづくりを進め,三条鴨東地区については,京阪三条駅との隣接条件を生かした住環境の整備をめざして,住宅地区改良事業を進める。

 一方,地域のまちづくりと連携し,住み続けられるまちの形成が求められている鴨川陶化橋上流域においては,公営住宅や親水空間の整備を中心とした事業を進める。

 

ちょっと注目!

公共建築物等のバリアフリー改修の推進

  • すべてのひとが利用できる公共施設を整備するため,既存の公共建築物の資産を生かしながら,ユニバーサルデザインを採用した施設のバリアフリー化を推進
  • 民間の公共的な建築物については,改善方法の研究を行い,施設管理者などへ広く情報を提供し,バリアフリー化を促進

 

(2) 高齢者や障害のあるひとが積極的に社会参加できる機会の提供

ア 市民すこやかセンターの整備

 「中央老人福祉センター」を移転・改編し,豊かで活力ある長寿社会の実現をめざした,さまざまな施策を総合的に進める基幹施設として「市民すこやかセンター」を開設する。同センターにおいては,社会参加を促進する啓発活動,ボランティア活動等の自主的な活動を支援するための情報提供やリーダーの養成,活動のきっかけづくりなどにより,高齢者の社会参加を支援する。

イ 地域において高齢者が生きがいをもって社会参加できる機会の拡大

 高齢者が生きがいをもって社会参加できるよう,老人クラブ活動をはじめとした自主的なグループの活動に対して支援を行うとともに,健康の増進や教養の向上,レクリエーションのための施設である老人福祉センター,集会やクラブ活動の場である老人クラブハウス等をはじめとした,地域で気軽に社会参加できる拠点の整備を促進する。

 また,高齢者が子どもたちとも交流できる,入浴施設やスポーツ施設,公園等を備えた総合的な施設を整備する。

ウ 世代を越えた交流の場となるイベント開催の促進・支援

 「市民すこやかフェア」など高齢者をはじめすべての市民が世代を越えて交流でき,また高齢者が行う活動の発表の場ともなるイベントの開催を促進・支援する。

エ 障害のあるひとの自立と社会参加の促進

 在宅の身体障害や知的障害のあるひとの自立と社会参加を促進するため,通所により日常生活の訓練や軽作業などを実施する日帰り介護(デイサービス)事業を充実させるとともに,重度の知的障害のあるひとが外出しなければならないときに,付き添うひとがいなくても不自由しないよう,ガイドヘルパーを派遣する。

 また,地域社会で孤立しがちな精神に障害のあるひとの自立と社会参加を促進するため,地域住民やボランティアとともに気軽に社会参加でき,社会性や社交能力を養える「精神障害者ふれあい交流サロン」を増設する。

オ スポーツに親しめる環境づくり [「3 心身ともに健やかにくらす」(7)ア(イ)参照]

 高齢者や障害のあるひとも気軽に体を動かすことができ,積極的に社会参加できるよう,だれもが親しめるスポーツやレクリエーション活動を普及・振興することにより,世代を越えてみんなでスポーツに親しめる環境づくりを進める。

カ 情報通信技術(IT)を生かした新しい社会参加への支援 [「3 高度情報通信社会に対応できる基盤づくり」(5)ア参照]

 高齢者や障害のあるひとが,外出しなくても多くのひとと交流でき,情報の受け手であるだけでなく発信者にもなれる,インターネットなどの情報通信技術(IT)を生かした新しい社会参加について,情報機器の基礎技術の習得をはじめとした支援を行う。

 

ちょっと注目!

市民すこやかセンターの整備

  • 中央老人福祉センターを移転・改編し,菊浜小学校跡地(下京区)に2003年に開館予定
  • 高齢者関係の情報収集や研究,援護の必要な高齢者に関する専門的な相談や助言,介護等に関する研修等の実施
  • 痴ほう性高齢者等に関する権利擁護対策の推進
  • 介護実践の経験を相談,研究,研修等に生かすための短期入所施設の併設

情報通信技術(IT)を生かした社会参加への支援

  • 高齢者や障害のあるひとが,インターネットなどの基本的な知識や操作技術を身につけるための支援

 

(3) 高齢者や障害のあるひとの能力向上や働く場の確保

ア 高齢者が能力を発揮し働ける場の確保

 高齢者が長年培った知識,技能,経験を生かし,社会にとって大切な人材として,その能力を発揮し希望に応じて働けるよう,継続雇用の斡旋・啓発や自発的な職業能力開発の奨励,起業に関する総合相談等を行うとともに,高齢者に対して地域に密着した仕事を提供する「シルバー人材センター」の事業拡大に向けた支援を行う。

 また,高齢者の雇用創出につながる地域の民間非営利組織(NPO)の活動に対する支援についても検討する。

イ 障害のあるひとが地域で生活しながら働き活動できる場の整備促進

 障害のあるひとが地域で自立した生活を送れるよう,就労に向けた訓練や仕事に就き働ける場である通所授産施設や福祉工場等の整備を促進する。

 また,法制度外の施設である共同作業所の運営を支援するとともに,その特色を生かしながら法定施設である小規模通所授産施設への移行を支援する。

 さらに,国や府と連携して,事業主等に対して障害のあるひとの雇用促進についての啓発を行う。

ウ 情報通信技術(IT)を生かした就労支援 [「3 高度情報通信社会に対応できる基盤づくり」(5)イ参照]

 インターネットなどの情報通信技術(IT)を生かし,高齢者や障害のあるひとが自宅等で仕事に従事できるよう,情報機器の基礎技術の習得や実践的な技能の向上等を支援する事業を実施する。

 

(4) だれもがいきいきと働けるまちづくり

ア 勤労者福祉の向上を図るための総合的な施策の展開

 働くひとのニーズの調査を行うとともに,女性の働く権利の保障,高齢者の雇用や障害のあるひとの雇用拡大,外国籍市民の雇用環境の向上など,働くひとに関する各分野の施策と連携しつつ,勤労者福祉の総合的な施策の展開を図る。

イ 働くひとへの支援の充実

 低利の生活資金の融資をはじめとする勤労者融資制度,インターネットや情報誌を通じた労働に関する情報提供など,働くひとに対する支援を充実する。

ウ 働くひとの学習意欲にこたえる学習機会の提供

 「京都労働学校」において,資格取得講座など働くひとのニーズに対応した科目を充実し,働くひとの学習意欲にこたえる。

 

 

3 子どもたちが心豊かで社会性を身につけみずからの生き方を学ぶ

基本的方向
 子どもたちにとって,「家庭」が最も安心できる場所となり,温かく,また時には厳しく見守る「地域」の存在が必要である一方,集団のなかで子どもたちの可能性を開花させるなど「学校」の果たす役割もまた大きい。
 家庭・地域・学校がそれぞれの役割に応じた教育責任を果たすとともに,三者が一体となった取組を進めるなかで,生命や人権,社会的規範等を尊重する豊かな心と社会性を身につけ,みずから考え,行動できる「生きる力」を備えた子どもたちを育(はぐく)む。

 

(1) 学校と家庭・地域の連携

ア 開かれた学校づくりと家庭・地域の教育力の向上

 (ア) 開かれた学校づくり [「4 生涯にわたってみずからを磨き高める」(4)参照]

 保護者や幅広い世代の地域住民が,校長の求めに応じて学校運営に参画する「学校評議員制度」の活用や,各々の学校の特徴を生かすための「学校評価システム」の導入,就学前の子どもをもつ保護者を対象とした授業参観の実施,学校だよりやホームページによる情報発信を進める。合わせて,地域の住民や地域にある大学の教員等,さまざまな分野の専門家が学校の教壇で教えるなど,学校と家庭・地域が相互に結ばれた関係をつくることにより,地域の特性を踏まえた特色ある学校運営・教育活動を展開する。

 また,「学校ふれあいサロン事業」や「学校コミュニティプラザ事業」を推進するとともに,児童館や老人デイサービスセンター等の他の施設との合築・複合化を進めるなど,学校の敷地や余裕教室等を地域に開放し,生涯学習や福祉など世代を越えた交流につながる地域活動の拠点として,学校施設の高度活用を進める。

 さらに,都心部の小規模校については,地域の協議を基本に統合を進め,その跡地活用については,長期的な展望に立って検討する。

 (イ) 家庭・地域における教育力の向上

 子どものしつけなど人生最初の教師ともいえる家庭や地域の役割をもう一度見直し,学校との連携の下,PTAや青少年健全育成団体の活動を支援するとともに,保護者相談の充実など家庭や地域における教育力の向上を図る。

 また,家庭・地域が主体的に学校教育活動を支援する「ボランティア人材バンク」を充実する。

 (ウ) 学校休業日における子どもたちの体験的活動の推進

 子どもたちが学校休業日を有意義に過ごせるよう学校を開放し,地域の各種団体が主体的に行う昔の遊びや伝統産業等,地域の特色に応じた体験の場づくりを支援する。

 また,「子どもボランティアリーダー」を養成し,子どもたちが地域活動に企画段階から主体的にかかわることができる取組を進めるとともに,地域の生涯学習資源を活用した学習プログラムを開発する。

イ 人づくり21世紀委員会の活動の推進 [「2 子どもを安心して産み育てる」(4)イ参照]

 「子どもたちの未来が輝くために何ができるか」について,親や大人としての役割・責任を確かめ合うなかで,市民みんなで考え,行動し,情報発信する場として「人づくり21世紀委員会」の活動を進め,社会全体で子どもを育(はぐく)む気運を高める。

 

ちょっと注目!

地域の特性を踏まえた開かれた学校づくり

  • 学校教育活動や地域との連携などについて,保護者や幅広い世代の地域住民が意見を述べる「学校評議員制度」の全校での実施
  • 外部評価を含む学校評価の方法やその活用などの研究を行い,各校の実状に応じた学校評価を実施

子どもボランティアリーダーの養成

  • 地蔵盆等の地域の行事に子どもたちが主体的にかかわるために,中学生を中心にリーダーを養成

 

(2) 子どもたちの社会性を高める教育の推進

ア 京都の歴史や伝統に親しみ次代へ引き継ぐ教育の推進

 西陣織や京焼・清水焼等の伝統産業,茶道,華道,日舞,能等の伝統文化・伝統芸能,年中至る所で行われている行催事など,京都だからこそできるさまざまな体験活動を推進し,京都の歴史や伝統に親しみ,次代へ引き継ぐ京都ならではの教育を展開することにより,子どもたちに文化財を大切にする気持ちや来訪者を温かくもてなす心などを育(はぐく)むとともに,将来の京都のまちづくりを担う自覚や使命感を培う。

イ 豊かな人間性とたくましさを育む教育の推進

 (ア) 公共心を培う教育の推進 [「1 ひとりひとりが個人として厚く尊重される」(3)イ参照]

 社会の基本的なルールの認識がなく,自己中心的で,善悪の判断に基づいた自己規律ができない子どもたちが増えている。こうした状況に対し,子どもたちに命の大切さはもとより社会におけるルールなど物事の判断基準を養い,公共心を培う教育を進めることで,ひととひととの相互の信頼に基礎を置く社会の再構築をめざす。

 また,児童会,生徒会活動や奉仕活動などを通じて,子どもたちの社会性や自主性を育(はぐく)む。

 (イ) 子どもたちの「心の居場所」づくり

 教育相談の要となる新たなカウンセリングの拠点の設置,臨床心理士等の資格をもったスクールカウンセラーの配置拡大や教職員との連携強化,余裕教室を活用した「心の教室」の設置など,子どもたちに対する相談体制を充実し,「心の居場所」づくりを推進する。

 また,学校内において別室での支援を要する児童・生徒のための指導者の配置を進めるとともに,「不登校児童・生徒支援連絡協議会」の活動を充実する。

 さらに,子どもたちの置かれた状況などに配慮し,通学区域制度の弾力的な運用に努める。

 (ウ) 心や体を健やかに育む教育の推進

 性教育,エイズ教育や薬物乱用防止教育等の健康教育,生徒指導の充実に努める。

 また,スポーツ少年団やスポーツ教室,合同部活動等による基礎体力や競技力の向上,豊かな感性を養う芸術教育等,子どもたちの心や体を健やかに,たくましく育(はぐく)む教育を推進する。

 さらに,弁当持参か給食かが自由に選択できる中学校給食の導入,小学校における栄養のバランスのとれたおいしい「手作り給食」の充実などを通じて,望ましい食生活習慣に関する教育を進める。

ウ 子どもたちの「生きる力」の基礎を育む教育の推進

 (ア) ひとりひとりに応じたわかる授業の展開

 30人学級を展望した学級編制の弾力化,習熟度別学習の推進などによるゆとりある学習環境のなかで,子どもたちが基礎的な学力を確実に身につけ,豊かな個性を伸ばせるよう,ひとりひとりに応じたわかる授業の展開を図る。

 (イ) さまざまな体験によるみずから考える力の育成

 「総合的な学習の時間」の活用や職場体験,奉仕活動,長期の宿泊学習,作文・読書などにより,子どもたちが多様な価値観に触れる機会を充実し,みずから学び,考え,自己責任をもって主体的に行動できる「生きる力」を育成する。

 (ウ) 高度情報化や国際化などに対応できる子どもたちの育成 [「3 高度情報化社会に対応できる基盤づくり」(6)参照

 高度情報化が進展するなか,コンピュータを扱うことができ,ネットワーク上での必要な情報を選択・収集し,さらにはみずからのものとして読み解くことができる情報活用能力を養う教育を進める。

 また,日本の文化・伝統はもとより,他の国や民族の文化・伝統の存在を尊重し,ともに生きることが前提となる国際社会に対応できる国際理解教育,地球規模に拡大した環境問題を身近な所から考える環境教育など,新たな時代に対応できる教育を充実する。

 さらに,起業家精神の育成など,将来の京都の産業を担う企業人を生み出す基礎となる教育を進める。

エ ひとりひとりを大切にする人権教育の推進 [「1 ひとりひとりが個人として厚く尊重される」(1)イ参照

 さまざまな人権問題が社会問題として現存していることを厳しく受け止め,今まで積み上げてきた同和教育をはじめとする人権問題解決への取組を踏まえ,学校教育のあらゆる分野でひとりひとりを大切にする人権教育を進める。

 また,子どもひとりひとりの良さや可能性を引き出し,伸ばすことを重視するとともに,子どもたちがお互いを認め支え合い,ともに生きることの大切さを学ぶなど,人権という普遍的文化の担い手の育成をめざした教育を進める。

 

ちょっと注目!

京都ならではの教育の展開

  • 京都をこよなく愛する先行世代の大人たちが人生経験のなかで得た,京都ならではの知恵や経験を次世代に伝承
  • 地域の行催事や伝統産業の体験など京都の伝統を取り入れた教育活動の推進

新たなカウンセリングの拠点の設置

  • 教育相談・生徒指導などの機能を集約し,子どもへの支援を総合的に推進
  • 不登校児童・生徒の新たな出会いと発見を支援する「ふれあいの杜(もり)」(適応指導教室)の充実

スクールカウンセラーの配置拡大

専門的な資格をもつスクールカウンセラーを全中学校に配置し,子どもが気軽に相談できる体制を整備

  • 教員と連携したカウンセリング体制の推進

 

(3) 障害のある子どもの教育の推進

ア 養護育成教育の充実

 障害のある児童・生徒ひとりひとりの状態や発達段階等に応じた指導の充実,教育内容の改善,医療的介護をはじめとした障害の重度・重複化等への対応,交流教育の推進などに努める。

 また,発達や情緒,言語,聴覚などに障害のある子どもの教育の場として育成学級通級指導教室を充実し,地域の学校で学びたいという保護者や子どもたちの要望にこたえる。

イ 地域に根ざした養護学校への再編

 市内北部に新たな養護学校を整備し,総合制・地域制を基本に養護学校を再編するとともに,子どもたちの社会参加を促進する新たな高等部教育により,地域でともに支え合って学ぶ養護学校教育を充実する。

 

ちょっと注目!

育成学級等の充実

  • 発達・情緒,病弱,肢体等の育成学級の新増設
  • 普通学級に在籍し,視覚,言語,聴覚に軽度の障害のある子どもを対象とした通級指導教室の設置拡大

統合制・地域制による新たな養護学校教育の創造

  • 市内北部に新たな養護学校を整備し,既存の養護学校と合わせ,肢体に障害のある子どもと発達に遅れのある子どもがともに学べる総合制・地域制を備えた養護学校に再編
  • 職業的自立をめざす子どもの希望を実現する高等部単独養護学校の整備

 

(4) 教職員の能力・意識の向上

 個人面接の実施やクラブ・ボランティア活動歴の重視などの総合的な判断に基づき,教育への情熱にあふれ,人間性豊かで指導力を有する人材を教職員として採用する。

 また,医療機関やスクールカウンセラーとの連携を密に小児疾病や心的疾患に対応し,子どもたちと心を通わせることができ,情報教育,国際理解教育など今日的な課題に対応し時代の変革期における教育についての課題意識をもつ,保護者から信頼される教職員を養成する。

 このため,教職員研修,教育研究の中核施設である「永松記念教育センター」において,先進的な教育情報の収集・提供などの機能を充実するとともに,教職員研修に関する受講システムの開発など総合的な研修体系をつくる。

 

(5) ゆとりと潤いのある学習環境づくり

ア.時代に対応した学校施設の整備

 学校施設において,児童・生徒が障害の有無などにかかわらず,安心して快適に利用できるユニバーサルデザインの採用や温(ぬく)もりと潤いを感じる「木」の使用を進めるとともに,災害時には地域の防災拠点となる学校施設の防災機能を強化する。

 また,情報通信技術(IT)の進展に対応した情報ネットワークを整備するとともに,学校に安らぎの空間を創造し,子どもたちがさまざまな動植物とふれあい体感できる「花と緑のグリーンベルト事業」や「学校ビオトープ(小さな生態系)事業」を進める。

イ.自然とふれあえる野外活動施設の整備

 海に接する機会が少ない本市の子どもたちが,海での生活を体験し,また,京都の山の豊かな自然を身近に体験できる野外活動施設の整備を進めることにより,子どもたちが本物の自然のすばらしさを実感し,草木や生き物とふれあうなかで,自然をいつくしむ心や生命の尊さを学ぶ機会を提供するとともに,集団活動のなかで子どもたちの豊かな心とたくましさを養う。

ウ.若者に魅力ある高校づくり

 (ア) 市立高校の改革と施設整備の充実

 京都の特性を生かした工業・商業・芸術等の専門教育を充実するなど,時代の進展に応じた市立高校の改革や施設整備を進める。

 また,「西京商業高校」については,全面改築とあわせて,起業家精神やコミュニケーション能力,情報活用能力,国際感覚等を育成する新たな学科を開設する。

 (イ) 府立高校,私立高校等との連携

 市内の多くの子どもたちが通っている府立高校との連携を図りつつ,高校教育の充実に努める。

 また,私立高校教育の振興に向けて私立高校等への補助を行うとともに,私立高校や専修学校・各種学校と連携した進路開拓事業等を進める。

 

ちょっと注目!

学校施設の新しい時代への対応

  • エレベータやスロープの設置によるバリアフリー化
  • 「防災スクールウェル(井戸)」やステンレスプールの整備,校舎の耐震補強などによる防災機能の強化
  • 学校敷地内に池・樹木・緑地を設置して,昆虫・野鳥・魚等さまざまな動植物が共生できる「学校ビオトープ事業」を推進
  • 学校のブロック塀を生け垣にし,合わせて花の庭園を整備する「花と緑のグリーンベルト事業」を推進

西京商業高校における新学科の開設

  • 校舎の全面改築に合わせ,従来の普通科・商業科の枠を越えて,起業家精神やコミュニケーション能力,情報活用能力,国際感覚等を育成する新たな学科を開設

 

お問い合わせ先

京都市 総合企画局都市経営戦略室

電話:075-222-3030

ファックス:075-213-1066

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