第3章 京都市障害者生活状況調査について
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2021年5月25日
京都市障害者生活状況調査
本市では,平成18年11月から12月にかけて「京都市障害者生活状況調査」を実施しました。調査の結果を分析したところ,今後の障害保健福祉施策の課題として次のようなものが明らかになりました。
福祉サービスの一層の充実及び家族への支援
本人の年齢について,身体障害者では,「70歳以上」の比率が,前回調査と比較して11.0 ポイント増加し全体の57.9%を占めています。また,主な介助者に「夫又は妻」,「父・母」などの家族がなられている場合,「60歳以上」が占める比率は,身体障害者で57.8%,知的障害者で46.1%,精神障害者(家族調査)で68.9%となっており,いずれも高齢化の傾向にあります。
ホームヘルプサービス(居宅介護)の利用状況について,「利用又は利用経験あり」は,身体障害者で15.1%,身体障害児で14.2%,知的障害者で11.3%,知的障害児で14.5%,精神障害者(通院患者調査)で10.3%を占めており,年々,比率が高くなっています。
短期入所(ショートステイ)の利用状況について,「利用又は利用経験あり」の比率は,身体障害者で7.8%,身体障害児で12.9%,知的障害者で9.7%,知的障害児で6.5%となっています。
日帰り介護(デイサービス)又は児童デイサービス(通園施設を含む。)の利用状況について,「利用又は利用経験あり」の比率は,身体障害者で17.1%,身体障害児で29.4%,知的障害者で7.1%,知的障害児で38.3%となっています。
このように,平成15年度開始の支援費制度を契機として,サービスの利用が堅調に進んでいる状況がうかがえますが,今後,引き続き,高齢化の進展が予測される中,障害のある市民やその家族が安心して地域生活が送れるよう,福祉サービスの一層の充実や家族を支える施策が必要です。
とりわけ,知的障害や精神障害の分野については,サービスの提供体制が十分に確保されているとは言い難い状況にあり,サービス提供体制の確保に向けた取組が必要です。
外出・社会参加の促進
外出の際の問題点として,「道路や駅に階段や段差が多い」が身体障害者で55.2%,身体障害児で49.5%,「駅や道路の案内や表示がわかりにくい」が知的障害者で22.4%,「車などに危険を感じる」が知的障害児で42.6%と,それぞれ最も高い比率となりました。
バリアフリー新法や京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例等の法制面での整備は進んでおり,引き続き,バリアフリー移動等円滑化基本構想に基づくより一層のバリアフリー化の推進や「みやこユニバーサルデザイン」の普及推進に努める必要があります。
外出支援を行うガイドヘルプサービスについては,知的障害者の38.4%が利用し,外出や社会参加に大きく貢献しています。また,外出回数(仕事・通学以外の場合)が“月10回以上”の比率は,身体障害者(33.6%),知的障害者(27.5%),精神障害者(通院患者調査38.3%)のいずれの調査においても最も高い比率となっていますが,一方で,社会参加に「参加していない」人が身体障害者の76.5%,知的障害者の75.3%,精神障害者(通院患者調査)の74.7%を占めており,より一層,社会参加の促進を図る必要があります。
ライフステージを通じた支援
身体障害児,知的障害児ともに,育成学級で就学している比率は増加傾向にあり,知的障害児では,小学校68.2%,中学校63.9%と高い比率を占めています。
引き続き,一人一人のニーズに応じた教育支援に積極的に取り組むとともに,今後は,生涯にわたって一体的に効果的な支援を行えるよう「福祉」,「教育」,「就労」の3者の連携強化を図る必要があります。
雇用・就労の促進
就労している人のうち,「授産施設・共同作業所など」で働く人の比率は,知的障害者の52.6%,精神障害者(通院患者調査)の33.1%であり,このうち企業での就労を希望している人は,知的障害者で24.0%,精神障害者で54.0%となっています。
また,年収の額については,100万円未満の比率は,身体障害者では31.6%,知的障害者では73.2%(「家の仕事なのでない」を含む。),精神障害者(通院患者調査)では62.6%となっています。
これまで,授産施設・共同作業所等の整備を計画的に進め,福祉的就労の場の確保に努めてきたところですが,今後,授産施設・共同作業所等の就労支援事業への円滑な移行を促進するとともに,労働局や京都府との連携の下,企業側の理解促進を図ることにより,希望者が企業就労できる条件整備を行い,併せて,引き続き,障害特性を踏まえた多様な就労の場を拡充する必要があります。
また,所得保障については,障害者自立支援法の附則や法に付された附帯決議において検討が加えられることとされており,今後,国における検討状況を注視し,必要に応じて,国へ要望を行う必要があります。
災害時の対応
災害時の不安について,身体障害者では「自分で避難ができない」が40.2%,知的障害者では「初期消火ができない」が42.0%,精神障害者(通院患者調査)では「医療器具の使用・服薬ができなくなる」が32.6%で最も多くなっています。
災害時の単独避難の可否については,「一人でできる」が,身体障害者では52.4%,知的障害者では57.6%,精神障害者では74.8%となっており,前回調査と比べて比率の低下が見られます。
災害対策においては,平常時から地域での交流が図られることが重要であり,地域福祉活動との連携を図りながら,災害対策の取組を進める必要があります。
精神障害者入院患者の退院後の支援の充実
入院中の精神障害者の退院可能性(専門職調査)について,「病院内で当面の治療や処遇が必要」が47.1%で最も多いが,「環境が整えば,近い将来退院が可能」も30.0%を占めています。
退院後の最適だと思われる活動の場について,専門職調査では「デイ・ケア」が41.3%で最も多くなっています。入院患者(本人)調査では「特にない」が33.7%で最も多くなっています。
退院後の就労意向について,入院患者(本人)調査では,「希望しない」や「できない」といった「その他」の比率が36.9%を占めました。いわゆる社会的入院の解消に向けて,グループホームやケアホームなどの住まいの場の確保や,ホームヘルプサービスをはじめとする在宅サービスの充実など地域生活支援施策の整備が課題です。
また,退院後の社会参加を促進するため,徐々に自信をつけ意欲を高めていくプログラムや本人の個性と能力に応じた支援が必要です。
相談支援の充実
利用を希望する施設・障害者施策について,「地域で生活するうえでいろいろな相談にのってくれる窓口(障害者地域生活支援センター)」が身体障害者では35.9%,身体障害児では42.9%,知的障害者では32.6%,知的障害児では43.7%であり,いずれの調査においても最も比率が高くなっています。
障害児の調査における「障害判定時の悩み」でも,「療育上の相談相手がいなかった」が,身体障害児で34.6%,知的障害児で38.3%と最も高い比率であったことからも,地域で生活していく上で相談機関の存在の大きさが明確になっています。
京都市障害者施策推進プランにおいては,「相談支援と情報提供」を7分野で構成する施策体系の一つに掲げて取り組んできたところですが,今後とも相談支援の充実を図る必要があります。
障害のある人に対する理解促進
福祉施策への要望において,「障害のある人に理解と関心をもつ」が,身体障害児で43.1%,知的障害児で55.5%を占め,「精神障害やてんかんへの理解」が精神障害者(通院患者調査)で42.5%,精神障害者(家族調査)で34.7%と比率が高くなっており,前回調査と比べて比率の低下が見られるものの,依然として高い比率となっています。
ノーマライゼーションの理念には,多様な価値観を認め合い,互いの個性を尊重するという点で,すべての人の人権を尊重するという考え方がその根底にあります。障害のある人に理解と関心を持つことは,すべての人の人権が尊重される社会の実現に欠かせないものであるとともに,障害保健福祉施策の推進の基礎になるものであり,今後とも積極的な取組が必要です。
成年後見制度等の利用促進
成年後見制度について,「利用している」が,知的障害者で2.4%,精神障害者(家族調査)で1.6%となっています。また,地域福祉権利擁護事業について,「利用している」が,知的障害者で3.9%,精神障害者(家族調査)で6.2%となっています。
成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が進んでいるとは言えない状況にあり,利用促進に向けた啓発活動が必要であるとともに,より利用しやすくなり,権利擁護を実質的に推進していけるよう問題点を検証する必要があります。
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