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「第3期京都市市民参加推進計画」(音声読上げ版)

ページ番号283287

2021年4月12日

表紙

第3期京都市市民参加推進計画
令和3(2021)年度~7(2025)年度

第3期京都市市民参加推進計画策定に当たって

京都市長 門川大作

 今,京都市は未曾有の危機にあります。世界的に流行している感染症の対策や,待ったなしの財政難に対する改革に全庁を挙げて取り組んでいます。
 あらゆるものを取り巻く環境がめまぐるしく変化し,将来の予測も困難な時代であります。しかし,人口減少局面の進展,担い手の不足,デジタル化,SDGs・レジリエンスの達成等,地域社会をめぐる課題は一層複雑さ,重要性を増し,立ち止まっている暇はありません。これまでの常識や慣例は通用しない今の時代こそ,より一層,市民と行政,市民同士がつながり,支え合い,知恵と力を結集し,この困難に立ち向かうことが重要になります。

 そんな中重要になってくるのが,京都市の財産,資産ともいえる「市民力」,「地域力」です。全国初の番組小学校の創設など,京都のまちは,町衆,市民が力を合わせて自らつくり上げてきた誇るべき歴史があります。
 京都市では,平成13(2001)年に全国に先駆け,市民参加を市政運営の根幹に据え,「第1期市民参加推進計画」を策定,平成15(2003)年には政令市で初めて市民参加推進条例を制定し,「参加と協働」による市政運営を進めてまいりました。

 この20年の間に,パブリック・コメントなど様々な制度の整備,「京都市未来まちづくり100人委員会」の運営,“みんなごと”のまちづくり推進事業,市民協働ファシリテーターの育成などの様々な取組の中で,市民の皆様の知恵と力の結集による市政運営,まちづくりが進みました。
 平成28(2016)年に策定した,「第2期京都市市民参加推進計画(改定版)」では多くの市民との対話を通して,京都市の市民参加が目指すべき地域の姿を描くことができました。

 今回,この「第3期京都市市民参加推進計画」では,ウィズコロナ,ポストコロナ社会とも言われるこれからの5年間,信頼に満ちたつながりを基盤とし,柔軟かつ大胆に,課題解決にチャレンジしていくために,前計画に設定した目指す地域社会の姿や基本方針の理念を引き継ぎながら,特に重視する視点として,先行きの見えにくい社会において未来像や課題を深く共有するための相互の学びや信頼につながる「対話」の推進,次世代につながる新たな参加者を呼び込む市民参加の「裾野の拡大」,さらに失敗を恐れず協働で「課題解決へ挑戦」することを力強く進めていきます。

 全庁一丸となって「挑戦と変革」をスローガンに本計画を推進し,市民の皆様と共に,挑戦し,支え合いが生まれる,包摂的で,持続可能な協働のまちづくりを実現させたいと思います。

 最後になりましたが,本計画の策定に多大な御尽力をいただいた,「京都市市民参加推進フォーラム」の皆様,貴重な御意見をお寄せいただいた全ての皆様に心から御礼申し上げます。

目次

第3期京都市市民参加推進計画の全体像

第1章 はじめに(1ページ)
1 計画策定の趣旨・考え方(1ページ)
2 計画の位置付け及び計画期間(2ページ)
3 社会情勢の変化(3ページ)

第2章 第2期計画の総括(4ページ)
1 第2期計画(改定版)の取組状況(4ページ)
2 各基本方針の取組状況(5ページ)
3 調査・分析(9ページ)

第3章 第3期計画の考え方(14ページ)
1 理想像の実現に向けた進捗確認(15ページ)
2 重視する視点と指標(16ページ)

第4章 推進施策・取組(18ページ)
基本方針1 市民との未来像・課題の共有(19ページ)
基本方針2 市民の市政への参加の推進(22ページ)
基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化(27ページ)
計画を着実に進めるための推進体制(32ページ)

資料(35ページ)

第3期京都市市民参加推進計画の全体像

「京都市市民参加推進計画」とは,京都市の市民参加の取組を,総合的に推進するための計画です。「市民参加」は市民が行政に意見を伝えたり,一緒に考えたり,行政の仕事を一緒に進める「市政参加」と,地域の清掃や,自治会・町内会への参加,個人や団体の社会的な活動等の自主的な「まちづくり活動」の二つを合わせたものです。

目指す未来像(行政運営の理念)

「参加と協働により,豊かで活力のある地域社会の実現」

目指す地域社会の姿(ビジョン)

京都に関わるあらゆる主体が,まちづくりにおけるそれぞれの役割を積極的に果たすとともに,相互に信頼し,対等の立場で知恵と力を出し合い,これまでの役割の範囲を超えて連携し,支え合い,挑戦している。包摂的で持続可能な協働のまちづくりや,地域コミュニティの活性化が進み,その成果をみんなで共有し,実感している。

社会情勢の変化

社会課題の多様化・複雑化
●少子化・長寿化の更なる進行
●地球温暖化や自然災害の発生
●社会的孤立
●地域における担い手の不足

SDGs の広がり(誰一人取り残さない持続可能な開発目標)
●あらゆる危機にしなやかに対応するレジリエンスの重要性
●パートナーシップや協働の重要性

新型コロナウイルス感染症の流行
●社会経済活動に対する大きな影響
●新しい生活スタイル・働き方等変革への新たな動き

新しい社会「Society 5.0」の実現
デジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性

重視する視点

重視する視点1
「学び」や「信頼」をはぐくむ対話の推進

重視する視点2
次世代につながる市民参加の裾野の拡大

重視する視点3
協働による課題解決への挑戦

基本方針1 市民との未来像・課題の共有

施策1 到達を重視する情報発信
施策2 信頼や学びにつながる「市民と職員との対話」の推進
施策3 共創のための「多様な主体の対話」の推進

基本方針2 市民の市政への参加の推進

はじめる 市民の関心を市政への参加につなぐ機会の充実やきっかけづくり
施策4 市政参加の機会の充実
施策5 誰もが参加しやすいデザイン
つながる 市政に参加した市民が継続して参加したくなる,また次世代につながる
施策6 協働の成果や手ごたえの共有
施策7 次世代につながる市政参加
ひろがる 市民と協働する市政分野が拡大する
施策8 協働する市政分野の拡大と新たな挑戦

基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

はじめる 市民や,新しい主体がまちづくりをはじめるきっかけづくり
施策9 まちづくりに取り組むきっかけづくり
施策10 SDGsを背景とした多様な主体の参画促進
つながる まちづくり活動が地域につながり持続可能なものとなるような取組
施策11 地域コミュニティ活性化への支援
施策12 持続可能なまちづくりを支援する仕組み
ひろがる より多くのプレイヤーや多くの分野に協働のまちづくりが拡大する
施策13 多様な主体の協働による社会課題解決への挑戦

市会との連携

計画を着実に進めるための推進体制

取組1 協働の成果の政策への反映,変革に挑戦する組織づくり
取組2 最も身近な区役所・支所における協働を支援する役割
取組3 市民参加を実践する職員の育成 

第2期計画策定後の状況

市民との未来像・課題の共有
成果
・市民との対話のスキルを身に着けた職員を育成・任命する「市民協働ファシリテーター制度」の創設
・市の保有するオープンデータの公開拡大と,その活用による市民との課題解決の実践
課題
・より一層の対話を重視,信頼や学びが生まれるような場の創出
・ICTの普及促進など技術革新に,民間・行政共に適応していくことが必要

市民の市政への参加の推進
成果
・「公募委員の在籍する附属機関等の割合」や,パブリック・コメントの1件当たりの平均意見数の増加
・対話型パブリック・コメントの推進
・市民協働ファシリテーターによる市民との対話の場の企画・運営等,対話による市政とのつながり創出
課題
・各種制度の認知度は2~3割,参加経験が1割と低く,より参加しやすい制度設計が必要
・企業等が社会課題に取り組む動きを,より一層市政につなぎ生かせる可能性

市民のまちづくり活動の活性化
成果
・「未来まちづくり100人委員会」をきっかけとし,まちづくりカフェや区民提案型まちづくり支援業務を全区で展開
・各区まちづくりアドバイザーによる継続的な支援,市民の自主的なまちづくり活動を登録・支援する“みんなごと”のまちづくり推進事業の開始
課題
・少子化の進行,働き方,価値観の多様化,家族形態の変化等による,若い世代や働く世代のまちづくり活動の難しさ
・より多くの主体による助け合う包摂的な関係づくりや,イノベーションを生み出す取組が必要

計画を着実に進めるための推進体制
成果
・各種ワークショップなど対話の機会拡大による,市民参加に関する職員の意識の醸成
・区役所・支所の機動的かつ柔軟な体制の整備
課題
・多様化・複雑化する社会課題に,協働によって柔軟に挑戦,試行できる文化の醸成
・自身の社会的活動も含めた多様な経験による職員の意識・能力の更なる向上

凡例

~この計画で使用する用語について~

 この計画では,特別な言葉の使い方や,専門的な用語がいくつか登場します。この計画で特によく使われる用語の意図を以下の凡例に示すほか,専門的な言葉や近年登場した新しい言葉等については,本文の中で適宜,注釈や,事例や概要を紹介するためのコラムを記載していますので合わせてお読みください。
 専門用語やカナカナ語の使用は,平易な言葉,日本語に置き換えることでその元の意味が損なわれる,あるいは伝わりにくくなると考えられる場合はあえてそのまま使用しています。

市民
京都市の住民のみならず,京都市で学ぶ,働く人々,訪れる,関心をもって関わろうとする人々,国籍,居住地を超えて,京都市に関わる全ての人々を含みます。

主体
市民のほか,地域の住民組織,NPO,企業・事業者,小中高等学校,大学等,寺社,行政など,自らの意思で行動する全ての個人や組織,団体を指します。

市民参加
市民の知恵と力を最大限いかしたまちづくりを目指す京都市の行政運営の原則となるもので,「市政参加」と「まちづくり活動」を合わせて「市民参加」としています。

市政参加
行政に意見を伝えたり,一緒に考えたり,行政の仕事を一緒に進めるなど,市民が市政に参加することを「市政参加」といいます。

まちづくり活動
まちを良くするため,住みやすいまちにするための自主的な活動,社会に興味を持って社会に関わる行動など,全ての地域,社会と関わる活動のことを「まちづくり活動」といいます。例えば家の門の外を清掃する「門掃き(かどはき)」も京都の誇るまちづくり活動の文化です。

対話
単に向かい合って話すだけではなく,相互に敬意と理解しようとする気持ちを持って,対等の立場で会話することを指します。特に学び合いや信頼関係の構築につながる,未来志向のコミュニケーションをすることを重視します。

デザイン
ものの意匠や造形,設計だけではなく,イベントや場の設計,制度設計上の工夫,対話の手法など,人や組織同士が関わるときの,関わり方全般の工夫を指します。

次世代
特に,子ども,学生,子育て世代を一つのターゲットに想定しながら,地域や組織の状況や世代構成によって,それぞれの行政のターゲットとすべき次世代を柔軟に設定します。(例:高齢者中心のコミュニティでは,退職年齢の層を次世代とする等)

イノベーション
従来のやり方や考え方の延長線上ではなく,新しい視点,技術,切り口,発想などを取り入れ,新たな価値や行動を生み出し,社会や組織,人に革新,変革をもたらすこと。

第1章 はじめに(1ページ)

1 計画策定の趣旨・考え方

京都の誇る「市民力」
 京都市は,地域活動・市民活動が非常に活発で,歴史的にも市民の自治やまちづくりの意識が高く,市民が誇りを持って,率先してまちをつくってきた「市民力」の高いまちです。自治や市民力の源には「対話」があり,「対話」を大切にする文化が,全国で活躍する多くの人材を輩出した「京都市未来まちづくり100人委員会」やイノベーション・革新性につながっていると考えます。
 こうした「市民力」や「対話」は目に見えにくいものですが,京都市の価値や魅力,活力を高めてきた非常に大切な「資産」とも言うべきものです。市民参加推進計画は,豊かで活力ある地域社会の実現のために,この大切な資産を守り,次世代に継承するとともに,様々な危機や社会課題をあらゆる主体が連携し,協働で乗り越えていくために必要な力を発揮できるよう,市民と行政が一緒に取り組むためのものとして策定します。

京都市のこれまでの取組
 京都市では市民参加を市政運営の基本原則とし,平成13(2001)年12月に「京都市市民参加推進計画」を策定すると ともに,平成15(2003)年8月に「京都市市民参加推進条例」を施行し,市民参加の制度や仕組みの整備とこれらの着実 な運用を進めてきた結果,この20年間で,市民による多様なまちづくり活動が展開されるようになりました。 
 市政においても,公募委員が在籍する附属機関等の割合やパブリック・コメントの意見数の増加などにおいて大きな進捗が見られます。また,市民協働ファシリテーターとして研修を受けた市職員が,市民との対話の場に積極的に出向くなど,市民と共にまちづくりに取り組む場面も増えました。このほかにも市民参加を進めるための制度や仕組みは充実し,市民,行政それぞれに経験を重ねてきました。

第3期計画の方向性
 第3期京都市市民参加推進計画では,前計画の目指す未来像や基本方針を継承しながら,市民参加と協働の多様性をさらに高め,相互信頼の対話を深め,社会課題解決を次々と実現していくための新たな挑戦を重視する計画とします。本計画の推進に当たっては,「京都市市民参加推進条例」の基本理念に基づき,市会との連携を十分に図り,職員一人一人が対話を重視し,より多くの市民が市政やまちづくりを自分ごと,みんなごとで捉えるようになることを目指します。その結果,参加と協働による社会課題解決が進むことで,「参加型・協働型の地域社会」のモデルとして全国の自治体のリーダーシップをとっていきます。

本計画の性質

 社会状況の急速な変化や,未来予測が困難な時代の中で,行政も時機をとらえて柔軟に対応していくことが求めらるため,本計画では市民参加の推進の大きな理念や方針を設定するとともに,施策の推進例,留意すべきポイント等を示しますが,具体的には,全ての局や区において,毎年度の施策・事業の計画,実践,評価,見直しのサイクルの中で,計画の趣旨を踏まえて,柔軟に新しい取組や工夫を生み出していきます。

2ページ

(1)計画の位置付け

 京都市市民参加推進条例では,市民参加を市政運営の基本原則として,市民参加を総合的に推進する計画として「市民参加推進計画」の策定を義務付け,5年を超えない期間ごとに見直すものとしています。
 この計画は,京都市があらゆる政策の最上位の都市理念に位置付けている「世界文化自由都市宣言」(昭和53( 1978)年10月)のもと,市政の基本方針である「京都市基本構想(グランドビジョン)」(平成13(2001)年~令和7( 2025)年)を具体化するための「京都市基本計画」の行政経営の大綱に基づく計画にも位置付けられ,全ての市政運営の根幹となる考え方を示す計画です。
 前計画である平成28(2016)年3月策定の「第2期京都市市民参加推進計画 改定版」の計画期間が令和2(2020) 年度までであること及び上位計画にあたる「京都市基本計画」も新たに策定することから,この間の社会情勢の変化や計画に基づく各種施策の現況・動向,市民の意識調査等を踏まえ,「第3期京都市市民参加推進計画」を策定します。


(都市理念)世界文化自由都市宣言 昭和53年10月
(市政の基本方針)京都市基本構想(グランドビジョン) 平成13年~令和7年
京都市基本計画「はばたけ未来へ!京プラン2025」令和3年度~7年 ⇔ 各区基本計画

各政策分野別の推進計画
・地域コミュニティ活性化推進計画などその他の分野別計画

市民参加推進計画と特に関わりの深い計画
・京都市レジリエンス戦略
・まち・ひと・しごと・こころ京都創生総合戦略

市民参加を総合的に推進する計画
・第3期京都市市民参加推進計画 令和3年度~7年度

(2)計画期間

第3期京都市市民参加推進計画の計画期間は,令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までの5箇年です。

世界文化自由都市宣言

 世界文化自由都市とは,全世界のひとびとが,人種, 宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに,ここに自由につどい,自由な文化交流を行う都市をいう。
 1978年10月15日,京都市は市会の議決を得て「世界文化自由都市宣言」を行い,以来,宣言をあらゆる政策の最上位の都市理念と位置付け,この理念の下,文化を基軸とした都市経営を進めています。

3ページ

3 社会情勢の変化

 第2期計画(改定版)の策定から5年が経過し,少子化,長寿化の更なる進行,地球温暖化や自然災害の発生など社会を取り巻く環境も変化し,社会的孤立や地域における担い手の不足等,社会課題は多様化・複雑化しています。
 とりわけ,昨今の新型コロナウイルス感染症は,社会経済活動に大きな影響を及ぼす一方,ウィズコロナ社会,ポストコロナ社会における新しい生活スタイルに応じた行動様式の変化や急速なデジタル化,働き方の変化など,変革への新たな動きも生まれはじめています。
 また,今日では「SDGs(誰一人取り残さない持続可能な開発目標)」が,全世界的に取り組まれているとともに,京都市では,持続可能な社会の実現に向けて,あらゆる危機にしなやかに対応する「レジリエンス」がSDGsとともに都市経営の理念の前提とされています。これら2つに共通することは,様々な主体のパートナーシップや協働することの重要性があげられていることです。
 併せて,AI,IoT,ロボット等の先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ,経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会「Society 5.0」の実現や,デジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性がさらに高まっています。

SDGs(Sustainable Development Goals)の取組

 2015年9月の国連サミットにおいて,気候変動,自然災害,生物多様性,紛争,格差の是正などの国内外の課題の解決に向けて掲げられた国際目標(17の目標と169のターゲット)としてSDGsが採択されました。2030年までの目標達成に向けて,世界の全ての国・地域の政府,更には地方自治体や民間企業等も取り組むこととされています。
 京都市の市民参加の施策を直接表現する項目としては,「目標16」で掲げられるターゲット「有効で説明責任のある透明性の高い公共機関の発展」や「対応的,包摂的,参加型及び代表的な意思決定の確保」,「目標17」で掲げられるターゲット「公的,官民,市民社会のパートナーシップの奨励・推進」等が挙げられます。市民をはじめあらゆる主体と行政が共に社会課題の解決に取り組むSDGsの理念そのものが京都市市民参加推進計画の理念と共通しており,京都市は,SDGsと市民参加の推進を一体的に進めています。

レジリエント・シティの取組

 「レジリエンス」とは,様々な危機からの「回復力,復元力,強靭性(しなやかな強さ)」を意味するとともに,ダメージを受けても粘り強くしなって元に戻りながら,以前よりもより良く立ち直る状態を表現しています。京都市では,自然災害や人口減少をはじめとする様々な危機に対し,粘り強くしなやかに対応し,将来にわたって人々がいきいきとくらせる,魅力と活気に満ちた都市(=レジリエント・シティ)の実現に向けた取組を進めています。
 市民参加推進計画でも,参加と協働の手法により,持続可能なまちづくりを目指しています。
 ※京都市はアメリカのロックフェラー財団により創設された「100のレジリエント・シティ」プロジェクトに参加する世界100都市の1つとして,2016年5月に選定されました。

「Society5.0」と「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」

 「Society5.0」は日本が提唱する未来社会のコンセプトで,「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する“人間中心の社会”」と定義されています。その実現に向けた重要な施策の一つがDXで,データやデジタル化の浸透により新たな価値を創造し,組織・社会・生活を根底からより良い方向に変革する一連の動きのことです。ビジネス変革に向けた企業での取組はもちろん,デジタル技術やデータを活用して住民の利便性を向上させることを目的に,自治体における取組も求められています。
 特に新型コロナウイルス感染症の発生以降,新しい生活スタイルに基づいた働き方の見直しや効率化が求められる中で, デジタル化の動きは急伸しており,京都市市民参加推進フォーラムでもいち早く,オンライン会議,ビジネスチャットシステムを取り入れ,コロナ下における新しい市民参加の可能性を模索しています。

第2章 第2期計画の総括(4ページ)

1 第2期計画(改定版)の取組状況

 第2期計画(改定版)では,目指す未来像である「豊かで活力ある地域社会の実現」に向けて,「市民との未来像・課題の共有」を基盤に,「市民の市政への参加の推進」,「市民のまちづくり活動の活性化」を計画の柱となる基本方針として掲げていました。これらの3つの基本方針のもと,計画を着実に推進できる体制を整えながら,全ての施策・取組を実施してきました。

 京都市は,市民参加の仕組みを全国に先駆けて早くから整え,推進してきており,これまでの5年間も「目指す未来像」の実現に向けて,各施策を着実に進捗してきました。市政への参加や自主的なまちづ くり活動に積極的に取り組む市民が着実に増加するなど成果をあげています。一方で,関心を持てない市民や,興味を持ちながらも取り組むきっかけが分からない市民など,市民参加に至らない市民が一定多い状況にあり,今後の持続可能な「市民が主役のまちづくり」の推進に当たって取り組まなければいけない課題です。また,市民参加の制度の運用においては,量的な側面だけではなく,実質的な効果がどう生まれたかなど,質的な側面からの充実を更に図っていく必要もあります。

第2期計画(改定版)に掲げる施策・取組の実施状況(令和3(2021)年3月現在)

基本方針1 市民との未来像・課題の共有・・・3施策
基本方針2 市民の市政への参加の推進・・・・7施策
基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化・・9施策
計画を着実に進めるための推進体制・・・・・・・4取組

毎年度の実施状況詳細
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000035247.html

指標の推移

「 基本方針1 市民との未来像・課題の共有」に関わる指標の推移
・市所管ソーシャルメディア数 平成28年度 77件 → 令和元年度 93件
・「みんなでつくる京都」の閲覧数 平成28年度 46,869 → 令和元年度 185,556

「 基本方針2 市民の市政参加の推進」に関わる指標の推移
・パブリック・コメント平均意見数(実施数) 平成28年度 383.4件(25) → 令和元年度 459.3件(14)
・市民協働ファシリテーター派遣件数・延べ人数 平成30年度 13件 56名 → 令和元年度 14件 120名
・公募委員が在籍する附属機関等の割合 平成28年度 60.8%(90/148) → 令和元年度 93.8%(105/112)

「 基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化」に関わる指標の推移
・まちづくり・お宝バンク 件数(累計) 平成28年度 227件 → 令和元年度 350件
・クラウドファンディングの活用・支援(累計) 平成29年度 3件 → 令和元年度 13件

5ページ

2 各基本方針の取組状況

 第2期計画(改定版)の3つの基本方針と計画を着実に進める推進体制に関する取組状況は次のとおりです。

基本方針1:市民との未来像・課題の共有

成果
 前計画では,市民参加を推進するための前提として,単に情報を共有するだけでなく,あらゆる主体が協働して課題解決に取り組めるよう,市民と職員,さらには市民同士が対話する機会を充実させるよう取組を進めてきました。
 平成29(2017)年度からは,市民との対話のスキルを身に着けた職員を育成・任命する「市民協働ファシリテーター制度」を新たに創設し,任命された職員が庁内各部署の垣根を越えて,市民との対話の場の企画や運営において活躍するなど,効果をあげています。
 また,オープンデータの推進では,市の保有するデータの公開について拡大させるとともに,その活用による市民との課題解決の実践も進みました。
 さらに,市民と共にアイデアを出し合い構築した,ポータルサイト「みんなでつくる京都」では,市政参加とまちづくり活動の新鮮な情報の発信を行ってきました。

課題
 社会課題の解決に取り組む企業が増えるなど参加する主体や手法も多様化しています。さらに,現状の延長線ではないイノベーションが求められるようになってきており,あらゆる主体同士で対話する重要性が高まっています。対話の機会を充実させることはもとより,対話から行動を生み出すことや,信頼や学びが生まれるような場の創出など,より一層対話を重視した取組を進める必要があります。
 また,ICTの普及など技術革新も進む中,利活用しやすい形式でのオープンデータの推進など,課題解決に協働で取り組むための情報共有のあり方等について,効果的な取組が求められています。

ファシリテーターの役割

 対話や会議での整理役や,発言を促す進行役として有名になった言葉ですが,近年では,対話の場のデザインから関わり,多様なステイクホルダー(利害関係者)を招き入れ,参加者がテーマや課題を「自分ごと」として行動できるようになることを促進させる存在が注目を浴びています。これに近い考え方として,内閣府経済社会総合研究所が提唱する,多様な主体をつなげ,既存の枠にとらわれない革新的な解決のアイデアを生み出すことを促進する「交流型イノ ベーター」という考え方もあります。
 対話そのものの価値だけでなく,対話から生み出されるイノベーションや成果が求められる時代であり,京都市が育成する市民協働ファシリテーターもその役割や意義を学び,実践しています。

6ページ

2 各基本方針の取組状況

基本方針2:市民の市政への参加の推進

成果
 令和元(2019)年度時点で「公募委員の在籍する附属機関等の割合」が93.8%(平成15(2003)年度 28.9%)に達し,また,パブリック・コメントでは,1件当たりの平均意見数が,478件(平成15(2003)年度 67件)となるなど,市政参加の各制度は進捗が図られました。
 また,対話型パブリック・コメントの推進や,市民協働ファシリテーターによる市民との対話の場の企画・運営など,市政とのつながりを対話によって生み出す取組も進められました。

課題
 令和元(2019)年度に実施された市政総合アンケートによると,市政参加の各制度(パブリック・コメント,ワークショップ等)の認知度は2~3割にとどまり,また実際に利用したことのある市民の割合については1割に満たないことが分かりました。参加に至らない市民が一定多い状況にあることは,市民が主役の市政運営において課題です。
 さらには,企業等様々な主体が社会課題の解決に取り組もうとする中で,行政との連携を模索する動きも盛んになってきており,これを生かすことの必要性も高まっています。
 市政参加の制度の運用においては,量的な側面だけではなく,幅広い市民の参加につながりやすい制度設計や,参加の結果を実感しやすい情報発信など,質的な側面からの充実を更に図っていく必要があります。

7ページ

2 各基本方針の取組状況

基本方針3:市民のまちづくり活動の活性化

成果
 平成20(2008)年度に設置された「京都市未来まちづくり100人委員会」により,市政やまちづくりに関心を持ち,活躍する多くの市民を輩出しました。そして,100人委員会をきっかけとした各区まちづくりカフェや,区民提案型支援事業が全ての区で展開されるとともに,各区でのまちづくりアドバイザーによる継続的な支援,市民の自主的なまちづくり活動を登録・支援する“みんなごと”のまちづくり推進事業が開始される等,市民が主役のまちづくりの取組が充実してきています。

課題
 社会情勢の変化に伴い,社会課題や地域課題はより一層多様化・複雑化し,行政の手が回らない課題が見えにくい形で数多く存在し,従来型の施策や個別の支援など,行政サービスで全てを解決することが困難な状況となっています。また,少子化や,働き方,価値観の多様化,家族形態の変化等により,これからの地域を担う働く世代,子育て世代の地域に関わる機会の減少も大きな課題です。
 このような様々な課題解決に取り組むには,将来を見据えて,若い世代の参加の推進等,市民参加の裾野を広げ,これまでのまちづくりの枠を越えたより多くの主体と課題を共有し,連携,協働するとともに,助け合う関係づくりやイノベーションを生み出していくような取組を進めなければいけません。

市民参加ポータルサイト「みんなでつくる京都」
https://tsukuru-kyoto.net/外部サイトへリンクします

8ページ

2 各基本方針の取組状況

計画を着実に進めるための推進体制

成果
 各区での「まちづくりカフェ」や市民協働ファシリテーターを活用した各種ワークショップなどの市民と職員が直接対話をする機会の増加や,民間と連携した課題解決の取組への職員の積極的な参加など,職員の市民との協働,市民参加を推進する意識は着実に醸成されてきています。
 区役所・支所では,平成24(2012)年度から総務課及びまちづくり推進課を統合して,「地域力推進室」を設置し,より機動的かつ柔軟な区政運営を図る体制を構築し,「区民提案・共汗型まちづくり支援事業」をはじめとしたまちづくりに係る様々な取組を展開するなど,参加と協働によるまちづくりを推進しています。

課題
 庁内では市民協働ファシリテーターの派遣依頼が増加するなど,地域課題,社会課題解決のための市民との対話の重要性も高まっています。行政の役割も変化しており,これまで以上に積極的に市民との協働による新たな課題の発見や,庁内各部局の連携による政策への展開など能動的な動きが求められるとともに,地域の自発的かつ持続的な活動の好循環を生み出していく必要があります。同時に,職員自身が社会的活動に, より積極的に参加し意識や能力の更なる向上に努める必要があります。
 加えて,他者と連携し,尊重し合いながら新たな取組を生み出していく際には,予定どおりに行かないことにも柔軟に対応し,正解や道筋が見えにくい課題にも前例にとらわれることなく挑戦できる文化の醸成も重要です。

新たな時代への適応

 先行きの不透明な現代社会において,地域,都市の持続可能性を高めるためには,全ての政策分野において,可能な限り課題や情報を市民と共有して,世代や分野を越えて,異なる視座や専門,資源などを持つあらゆる主体が協働し,地域課題や社会課題の解決に取り組んでいく行政運営やまちづくりが必須要件となっています。こうした新しい流れは「オープンガバナンス」と呼ばれています。
 市民参加,多様な主体の協働の政策は,これらの新しい時代の社会を市民と共につくるための基礎とならなければなりません。

「オープンガバナンス」

 2009年オバマ元アメリカ大統領が示した「オープンガバメント覚書」をきっかけに,行政が,「透明性」,「参加」,「協働」を原則として,行政情報を利用可能な形で公開し,地域や社会の課題に対して,市民がその分析や解決に関わりながら,市民と行政がそれぞれ主体者として,行政運営やまちづくりを進める動きが世界に広がっています。
 日本でも2016年から,東京大学公共政策大学院主催の,市民と行政が協働で地域の課題解決に取り組むアイデアコンテスト「チャレンジ!!オープンガバナンス」が実施され,京都市は市民と共に参加した大会の全てでファイナリストに選ばれました。

京都市から参加してファイナリストに選ばれた市民と行政の協働の取組
2017 「自転車でつながる人・街・自然・文化! ~ chariP naViと共創コミュニティデザイン ~」(総合賞)
2019 「ICTの活用により市民と薬局・薬剤師と繋がり合う事ができ,身近に相談できる地域社会を実現する新サービス“ Pharmatching(ファーマッチング)”」(視聴者投票1位)※コロナにより審査なし
「京都の“木”と ICT の“目”でつながる“心” 〜林福連携「京想」プロジェクト〜」※コロナにより審査なし
2020 「HANKEI 3m ~身近な人と本音を言い合える関係へ~」(LINEチャレンジャー賞)

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3 調査・分析

第2期計画(改定版)の進捗管理・分析

 第2期計画(改定版)については,平成28(2016)年度から京都市の附属機関「京都市市民参加推進フォーラム」で議論を重ねて,進捗の管理・分析を実施してきました。それを取りまとめた結果が,この章の第2期計画の総括であり,次章に示す第3期計画の考え方です。進捗確認にあたり,年度ごとに実施した分析と,そこから得られた示唆については次のとおりです。

平成28(2016)年度 基本方針2に関して,特徴的な2事業についてヒアリング調査を実施

成果
市民参加手法の拡大,職員育成の効果(組織的な取組),市民自身の活動の広がり
課題
協働の成果の効果的な発信,共有

 土木管理課が実施した「みっけ隊アプリケーション」では,事業の企画段階から市民参加型のワークショップを複数回実施し,スマートフォン用アプリケーションを開発しました。土木管理部門では市民参加の手法の取り入れは難しいと考えられていましたが,意欲のある若手職員を上司が応援する機運があり,創意工夫により取組が実現しました。
 景観政策課による「京都市景観市民会議」では,公募された市民との意見交換により,景観政策の有効性や社会への影響などの検証が行われており,これをきっかけにシンポジウムの開催など市民による独自の取組が広がっていることが分かりました。
 こうした好事例が更に広まるよう,市民及び庁内への発信・共有が重要であることが指摘されました。

みっけ隊
https://mikketai.city.kyoto.lg.jp/外部サイトへリンクします

平成29(2017)年度 基本方針3に関して,まちづくり活動をしている方にアンケート及びヒアリング調査を実施

成果
社会や地域をより良くするための活動の広がり,多様化
課題
活動主体の状況に応じた柔軟な支援,行政のコーディネーターとしての役割の重要性

 基本方針3フェーズ1「まちづくり活動への関心が高まり参加する」ことを広げるためには,社会や地域を良くしたいという想いを持つ人を増やす取組が重要であること,フェーズ2「まちづくり活動が成果をあげ,継続的に活動する」ためには,資金,仲間集め,組織・チーム運営に苦労があることから,活動主体の置かれている状況に応じた支援の必要性が指摘されました。フェーズ3「多様な主体と協働する」ためには,自治体・町内会等とその他の団体との連携の必要性の高まりを受け,行政に対して協働のコーディネーターとしての役割への期待とともに,行政だけでコーディネートする限界があることから,実情に詳しい市民や団体の把握も重要であることが指摘されました。

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3 調査・分析

平成30(2018)年度 基本方針1と2に関して,アンケート及びヒアリング調査,ワークショップを実施

成果
各局区による積極的な情報発信,SNSの活用,オープンデータ推進
課題
若者への市民参加の裾野の拡大,安心できる対話の場の必要性,到達主義の情報発信

 施策6「子ども,大学生など若い世代の市政への参加の推進」に関してアンケート及びヒアリング調査を実施し,市政参加制度に対する若者の認知度の低さが浮かび上がりました。若者に対して市政参加の魅力を伝えると同時に,安心して市政について対話できる場が必要であることなど議論されました。
 施策1「市民との情報共有の推進」に関しては,京都市はSNSの活用などの市政情報の発信について,より市民の目に留まる効果的な発信をしなければいけないこと,また,オープンデータの推進については,データの公開数だけでなく,分析・加工しやすさへの考慮が指摘されました。

令和元(2019)年度 基本方針1と2に関して,他都市の先進的な事例を調査

成果
市民協働ファシリテーターの育成による対話の推進
課題
民間主導の社会課題解決の取組との連携,
企業・事業者等への裾野の拡大,オープンガバナンス

 施策2「市民と市職員の対話の推進」に関して,京都市は職員ファシリテーターの育成に取り組んでいますが,牧之原市では「市民ファシリテーター制度」を運営しています。行政主催の対話で,市民がファシリテーターを担うことで,市民目線の対話の場が創出でき,市民の参加意識も高まり,シビックプライドの醸成に寄与していることが分かりました。
 また,施策9「あらゆる市政分野での市民と京都市の知恵と力を最大限いかす協働の推進」については,鎌倉市の「カマコン」の事例を調査しました。民間主導で始まった取組で,毎月の定例会で数名の発表に対して,参加者が自由なアイデア出しをするとともに,関わりたい人は名刺で投票し,プロジェクト化を支援するということが行われています。協働による地域の課題解決に向けては,地域課題とのつなぎ方が重要になると示唆を得ました。
 施策10「市民と共に政策課題に取り組む協働型事業の充実」に関しては,横浜市と神戸市の事例を参考としました。横浜市は,民間事業者から公民連携に関する相談・提案を受ける窓口として「共創フロント」を設置し,団体・法人側から提案されるフリー型と,行政から提案を募るテーマ型の二種で運営しています。また,神戸市では,行政が公開した課題に対して,企業や団体など事業者からサービスや解決策の提案を受け,協働で解決方法の検討を行う「Urban Innovation Kobe」を運営しています。両者とも,今後重要な考え方となる「オープンガバナンス」の先進的な取組といえます。

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3 調査・分析

アンケートから見る市政参加

 「京都市市民参加推進フォーラム」での議論に加えて,市民の市政やまちづくり活動への参加状況を把握し,本計画を策定するための基礎資料とすることを目的に,令和元年度に市政総合アンケートを実施しました。

 市政参加制度については,「参加・利用・回答したことがある」方の割合は,平成22(2010)年の調査と比較して向上していました。しかし,制度による増減の違いはあるものの認知度自体は3割程度に留まっています。また,市政参加制度に参加したことのない方が,今後も参加したくない理由として「参加する時間がない」と答えた方が一番多くなりました。そのうち10〜30代が特に多く,学業や仕事,子育てなどで忙しい世代の参加が課題としてあがりました。次に多いのは「市政に反映される実感がわかない」という理由で,こちらは60〜70代以上の割合が高くなりました。市民が市政参加しやすくなるために京都市がすべきこととしては「市政に関する分かりやすい情報発信」,次いで「インターネットやSNSなどを活用した,意見や提案ができる機会の充実」に期待を寄せられました。

 まちづくり活動への参加に関しては,「自治会・町内会などの活動」の経験者が一番多く,4割強となりました。ただし,60〜70代の割合が高く,学生の割合は特に低く表れています。まちづくり活動に「参加したことがない」方も4割強存在し,こちらは10〜40代及び学生では割合が5割を超えています。まちづくり活動に参加したことがない理由としては,「参加のきっかけ,方法がわからない,わかりにくい」が5割弱となり,全世代で高い傾向にあることが分かりました。「参加する時間がない,合わない」と回答する方も4割弱に上り,特に10〜40代の割合が高くなっています。

令和元年度第2回市政総合アンケート「市民参加(市政,まちづくり活動への参加)について」の結果について

・調査対象:市民(民間の調査会社に登録するインターネットモニター)1,000人
・調査方法:パソコン,スマートフォン等での回答  
・調査期間:令和元年12月16日(月曜日)~19日(木曜日)
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/cmsfiles/contents/0000264/264600/0202.pdf

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3 調査・分析

市民参加の政策に携わられた有識者からのメッセージ

 第3期計画の策定にあたり,これまでの20年間の市民参加の取組と成果を振り返り,今後の目指すべき方向性の検討の参考とすることを目的に,歴代の市民参加推進フォーラム座長をはじめ有識者にヒアリング調査を行いました。市民との未来像や課題の共有,多様な主体による協働の推進と行政の役割,社会の変化に合わせた市民参加の推進などの観点が上がりました。(調査期間:令和元(2019)年5月~令和2(2020)年1月)

市民との未来像や課題の共有
◎ 市民と分担できる範囲と,行政側が責任を持つべき部分はしっかり意識しないといけない。行政課題を市民と話し合う会合ができたらよい。その時に重要なのは,場における共有認識であり,市民が「自分ごと」としてとらえて議論に参加できる場を作らないといけない。
◎ 市民参加の次の方向性として,課題(利害)を共有するコミュニティづくりが求められる。コモンウェルス(「公共」,「私たち」という感覚)を育てる必要がある。市民参加もやはり,楽しいか,必要かという基準で内発的,自発的に起きることが望ましく,そのためには課題の可視化と共有が何より重要である。
◎ 京都市として,地域とどう付き合うのか,地域をどうしていきたいのかというビジョンを持つ必要がある。ビジョンが共有されないと局や所管課の縦割りの壁もなくならない。

多様な主体による協働の推進と行政の役割
◎ 企業等の参加は重要である。京都には人と自然と地球を大切にする「地域企業」があるが,全国的にも企業は,営利目的だけでは立ち行かなくなっている中で, 次の展開として社会への貢献を模索している。京都市の社会課題の解決に臨むには,地域の多様な主体や活動体を連携する仕組みが必要である。
◎ セクターを超えた連携は非常に難しいと感じるが,SDGsは,連携を働きかける際の共通言語であり,特に企業との連携を進めるチャンスだ。行政職員には異動があるが,立場が変わっても人脈を生かして人と人,人と活動をつなげてくれるような職員が増えれば良いと思う。現在,市民協働ファシリテーターとして制度化されているのはその点でもよいことである。
◎ 市民生活に関わるサービスや地域の管理を,市民,事業者,NPO等市民にどこまで任せられるか。行政はそのつなぎ役としての役割が求められる。市民も職員もそれぞれ市民力,職員力を上げる努力が必要である。

社会の変化に合わせた市民参加の推進
◎ 市民活動の活発な状況を,評価し伝えることが重要と考える。社会の変化に合わせた市民参加の考え方を取り入れることも重要である。地方創生の取組等もあるが,社会全体で人口減少が進む中,地方同士の人の取り合いではなく,時代,社会の変化に合わせた市民参加の考え方を取り入れることも重要である。例えば,観光客等が市民参加することも可能である。

第3章 第3期計画の考え方(14ページ)

 第3期計画の策定に当たっては,第2章で示したこれまでの総括を踏まえつつ,市民参加推進フォーラムで議論を重ね,令和2(2020)年10月「第3期京都市市民参加推進計画策定に当たっての提言書」が市長に提出されました。
 提言書では,第2期計画(改定版)で示された「目指す未来像」「目指す地域社会の姿」は,この間,市民と共に積み重ね,今後も目指すべき市民参加の理想的な姿であり,「基本方針」はそれを具体化するものとして,社会変化や重視する視点を盛り込みながら,これらを継承すべきとされています。
 本計画では,この提言内容を踏まえ,第2期計画(改定版)の「目指す未来像」,「目指す地域社会の姿」及び「基本方針」を市民参加の推進のための大きな柱として継承し,それぞれ「理念」「ビジョン」「運営方針」 と体系的に位置付けました。さらに,現下の課題や社会情勢の変化を踏まえて,今後5箇年の計画期間に重点的に取り組むべき「重視する視点」を設定し,実効的で実質的な計画の推進を目指します。

15ページ

1 理想像の実現に向けた進捗確認

 京都には,地域の未来のために人を育てていく土壌や,「自分たちのまちは自分たちでつくる」自治の伝統を引き継ぎ,実践する「市民力」「地域力」,人口の1割に相当する学生の力や,文化を基軸とした国際交流の推進など,多くの強みや特徴を備えています。
 それらは,市民をはじめ京都に関わるあらゆる人々が,「対話」を重ね,「つながり」「協働」し,「挑戦」してきたからこそ高められてきた,測ることの難しい大きな価値そのものです。
 こうした京都の強みや特徴を生かしつつ,参加と協働による市民が主役のまちづくりを進めるため,「目指す未来像」(行政運営の理念)と「目指す地域社会の姿」(ビジョン),「基本方針と推進体制」(運営方針)を体系的に掲げるとともに,今後5年の計画期間で特に重点的に進めていくべき「重視する視点」を新たに設定し,実効的,実質的な推進を図ります。
 計画の推進に当たっては,社会情勢の急速な変化など,未来予測が困難な時代の中で,各施策の具体的な取組は,固定的に考えるのではなく,柔軟性を重視し,計画,実践,評価,見直しのサイクルの中で,新しい取組や工夫を生み出していきます。
 計画の着実な推進について,市民参加推進フォーラムによる継続的な審議や,毎年度市会へ報告する「市民参加推進計画に基づく施策実施状況及び実施計画」を元にした議論により進捗を管理するとともに,その成果となる「市民力」の向上の評価についても,評価方法そのものも含めた議論を継続していきます。
 市民参加の行政運営,まちづくりの進捗や評価,協働の取組事例など日々の新鮮な情報は,ポータルサイト「みんなでつくる京都」により発信し,開かれた形,見える形で,市民の皆様と成果を共有・実感していきます。

【目指す地域社会の姿(第2期計画(改定版))】

 「市民,地域の住民組織,NPO,企業・事業者,大学,寺社,行政等のあらゆる主体が,まちづくりにおけるそれぞれの役割を積極的に果たすとともに,これまでの役割の範囲を越えて連携し,対等の立場で知恵と力を出し合う協働のまちづくりや,地域コミュニティの活性化が進み,その成果を市民が実感している。」
 第3期計画では,前計画で示したこの姿を継承しつつ,「信頼」「支え合い」「挑戦」「包摂的で持続可能なまちづくり」など,社会情勢や今後の取り組むべき課題を踏まえた表現で示している。

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2 重視する視点と指標

 本計画期間5箇年で,より実効的に市民参加の取組の質を向上していくために,全ての政策分野,施策・事業を通して重視すべき横断的な観点として,「重視する視点」を掲げるとともに,その成果目標となる指標を設定します。
 「市民参加推進計画」そのものの目標としての「市民力の向上」は,定性的で多面的な評価が必要なため,「市民参加推進フォーラム」による進捗分析・評価,市会に報告する毎年度の進捗状況をもとにした議論などにより状況を評価するプロセスをとりますが,課題や社会情勢に即応し,個別の事業・取組に具体化させ,成果を見える化して評価したり,時には見直すため,「重視する視点」においては,代表的取組について「計画期間(令和7年度まで)に目指す指標」を設定し,より実効的な運営を進めます。

重視する視点1 ▶「 学び」や「信頼」をはぐくむ対話の推進

 あらゆる主体が,つながり,共に行動し,持続・発展するには,各主体が対等の立場で,安心して対話することにより,情報を共有し,共に学び合い,信頼し合えるようにします。

質を高める方策
〇市民協働ファシリテーターを積極的に派遣し,対話の場の質を上げられるよう努めます。また,市民の間で対話やつながりを促進するための市民の担い手育成も行います。
〇対話の場における参加者のアンケートの結果やリピート率を把握し,参加された方々との持続的な関係性の構築により,市民が参加する事業を通して,行政への信頼感,参加の手ごたえが得られるように努めます。
〇意見や提案を頂いた数ではなく,施策や事業にタイミングよく生かせるよう,対話の場を増やし,市民意見を効果的に反映するよう努めます。

指標1 ファシリテーターによる対話の場の創出(令和7年度までの累計)
・対話の場への職員ファシリテーター派遣:延べ500名以上
・市民の参加者:延べ5,000名以上
*「学び」と「信頼」をはぐくむ対話の推進のためには,対話の場のデザイン,対話の姿勢が重要になります。京都市では,平成29(2017)年度から「市民協働ファシリテーター」を育成し,未来志向による市民との対話の場づくりや,対話の質の向上 を目指してきました。本計画期間にはこのファシリテーターの活躍の場を増やし,庁内全体の対話への意識の変革を促すとともに,対話の場を通じて市民と職員が共に学び合い,信頼を深める対話の意識醸成に努めます。そして,未来志向の対話によって生み出された意見やアイデア,行動を,より効果的・効率的な施策・事業につなげます。

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2 重視する視点と指標

重視する視点2 ▶ 次世代につながる市民参加の裾野の拡大

 多様な市民一人一人が,一歩踏み出し,主体的に取り組めるよう,子ども・若者をはじめ,より多くの方が市民参加しやすい仕組みづくりやきっかけづくり,学ぶ機会の創出など,次世代につながる,市民参加の裾野を更に広げていけるようにします。

質を高める方策
〇継続して参加いただくことも大事ですが,同時に継承に重点を置き,参加のしやすさ,楽しさ,顔の見える関係づくりにより,新たな参加者の拡大に努めます。
〇現在の参加の中心となる層の次の世代,子ども,若者,子育て世代の参加度を意識し,参加される方が増えるよう努めます。
〇SDGsを背景に関心を高める企業等の新たな主体や,学生等の若い世代との連携を強めます。また,各政策分野の施策・事業において,地域の小中高等学校や大学,若者を支援する団体等との連携を積極的に進め,市民参加の機会の提供,学びの機会の創出に努めます。

指標2  多様な主体が活躍する市民によるまちづくりの取組の拡大(令和7年度までの累計)
・まちづくり・お宝バンク取組提案数:500件以上
*京都のまちの課題を「ひとごと」とせず「自分ごと」「みんなごと」として,市民・行政が協働する“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」は平成28(2016)年度の制度創設以降,市民による取組提案が年々増加し,様々な活動が展開されています。市政とまちづくり活動をつなぎ,多様な市民同士をつなぐプラットフォームとしての機能を発揮し,次世代や新たな主体の拡大も含め多様な市民の参加の裾野を広げます。

重視する視点3 ▶ 協働による課題解決の挑戦

 多様化,複雑化する課題の解決に向けて,課題も含めて行政の情報をオープンにし,組織や立場,分野や世代を越えて,多様な主体が参加し,知恵と力を結集し,協働して実践する,挑戦できる仕組みをつくります。

質を高める方策
〇社会的な活動に企業が参加する,行政だけで担ってきた事業に学生が参加する等,参加者の多様性を意識的に増やすことで,課題に新たな視点,考え方を導入し,解決のイノベーションが起きるよう努めます。
〇民間主体の先進的な取組・活動に呼応し,期を逸さず連携し,試行錯誤で実践することが,社会課題解決にかかる社会的コストを抑えることにつながります。公民連携による効果的な市政運営,持続可能なまちづくりを進めます。
〇各政策分野保有の行政データを積極的にオープンデータ登録することで,市民参加型の課題解決(オープンガバナンス)の推進に努めます。

指標3 行政と多様な主体の協働による社会課題・行政課題への挑戦(令和7年度までの累計)
・公民連携・課題解決推進事業によるプロジェクト(ラボ)数:30件以上【財政的効果 1億円以上】
・プロジェクトを企画,立案,推進できる職員数:150名以上
*公民連携の窓口機能と実装を支援し,民間企業等の有する技術やノウハウを行政課題,社会課題の解決に生かします。効果的な市政運営とともに,財政的効果や経済の活性化につなげ,取組過程も含め,連携による成果を見える化し,発信します。また,当事業を通じて,職員が実践的なマネジメント,コーディネートを学び,多様な主体と協働する力を養います。

第4章 推進施策・取組(18ページ)

 本章では,第3章に示した目指す未来像の実現のための3つの基本方針に基づいた,京都市が市民とともに市民参加を進めるための13の施策と計画を着実に推進するための京都市の推進体制に関する3つの取組について示します。

基本方針1 市民との未来像・課題の共有(3施策)
施策1 到達を重視する情報発信
施策2 信頼や学びにつながる「市民と職員との対話」の推進
施策3 共創のための「多様な主体の対話」の推進

基本方針2 市民の市政への参加の推進(5施策)
はじめる 市民の関心を市政への参加につなぐ機会の充実やきっかけづくり
施策4 市政参加の機会の充実
施策5 誰もが参加しやすいデザイン
つながる 市政に参加した市民が継続して参加したくなる,また次世代につながる
施策6 協働の成果や手ごたえの共有
施策7 次世代につながる市政参加
ひろがる 市民と協働する市政分野が拡大する
施策8 協働する市政分野の拡大と新たな挑戦

基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化(5施策)
はじめる 市民や,新しい主体がまちづくりをはじめるきっかけづくり
施策9 まちづくりに取り組むきっかけづくり
施策10 SDGsを背景とした多様な主体の参画促進
つながる まちづくり活動が地域につながり持続可能なものとなるような取組
施策11 地域コミュニティ活性化への支援
施策12 持続可能なまちづくりを支援する仕組み
ひろがる より多くのプレイヤーや多くの分野に協働のまちづくりが拡大する
施策13 多様な主体の協働による社会課題解決への挑戦

市会との連携

計画を着実に進めるための推進体制(3取組)
取組1 協働の成果の政策への反映,変革に挑戦する組織づくり
取組2 最も身近な区役所・支所における協働を支援する役割
取組3 市民参加を実践する職員の育成 

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基本方針1 市民との未来像・課題の共有

 基本方針1では, 後述する「基本方針2 市民の市政への参加の推進」と「基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化」を進める必要条件として,「行政の情報の発信,共有」,「市民と職員の関係をつくる対話」,「あらゆる主体間での未来像・課題共有のための対話」に関して3つの施策に取り組みます。

施策1 到達を重視する情報発信

 政策,施策,事業だけでなく,課題も含め,市政参加やまちづくりに興味を持つきっかけのために,あらゆる主体に向けて,必要な情報発信を行います。情報発信は,分かりやすさとともに,到達主義(届けたい対象にしっかり伝えること)を重視します。

施策の推進例
(1)重要な市政課題の自分ごと,みんなごと化
 財政状況の厳しさや,感染症拡大防止の取組など,全ての政策分野に共通する重要な行政課題,社会課題等について,しっかりと市民と行政が自分ごと,みんなごととして共有できるよう推進します。
 ●重要課題と各政策分野のテーマを紐づけて,当事者として課題を意識してもらう工夫
 (例:重要課題と各政策分野の関係を意識した情報発信,施策・事業運営コストと使用料や税の負担との関係,予算編成過程等の分かりやすい発信 等)
 ●重要課題について,あらゆる職員が共通の課題として認識できるような工夫 等

(2)想像しやすく実感が湧きやすい情報発信
 市政やまちづくりを身近に感じていただくため,情報発信に際して,暮らしとの関わりや影響を想像しやすくする工夫を行います。
 ●現状や効果,影響を言葉だけでなく数値であらわす,図やグラフを使う 等

(3)ターゲットを意識した情報の発信
 よりターゲットを意識し,多様な機会や媒体を通じて情報発信をします。
 ●届けたい対象が触れる機会の多い媒体や集まる場所での情報発信
 ●発信した情報の到達度の確認(例:アンケートで何の媒体を見て参加したか聞く 等)
 ●利活用しやすい形式でのオープンデータの推進 等

(4)人づてによる情報発信の活用
 個人の情報発信や口コミ等の力を,市政やまちづくりに活かす取組を進めます。
 ●活動している方,協働を実践している方など生の声を通じた情報発信
 ●興味を持った市民から市民へ市民同士の情報の伝播の工夫 (例:SNS,音声SNS,動画サイトの利用 等) 等

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基本方針1 市民との未来像・課題の共有

施策2 信頼や学びにつながる「市民と職員との対話」の推進

 未来像と課題を共有し,良い方向につなげていくために,お互いに抱える課題やこれから決めなければならないこと等も含めて,職員と市民が,互いに対等の立場で,未来志向の対話を行います。市民にとっても,職員にとっても,安心安全で話しやすい対話の機会づくりを推進します。

施策の推進例
(1)政策や方針等の検討段階早期での市民意見の聴取
 政策や方針の検討過程において,早い段階で,市民意見をお聴きします。
 ●検討段階早期での関係者ヒアリングやワークショップの実施 等

(2)職員ファシリテーターの育成と対話の場の拡充
 職員ファシリテーターを育成し,活躍の場を広げ,市民との対話の場を拡充します。
 ●ワークショップの設計段階から,職員ファシリテーターの参画
 ●職員ファシリテーターが活躍する場の充実・拡大 等

(3)市民が活動する場への市職員の参加の推進
 市民同士の地域のまちづくりの問題発見や課題設定を話し合う場など,市民が活動する場に,職員が積極的に参加します。
 ●市政出前トークや出前講座,小中高等学校や大学等への出講など,地域に出向く取組の推進
 ●職員の社会的活動の促進 等

(4)未来志向の対話の推進
 市民も職員もお互いに安心して参加できる,未来志向の対話を推進します。
 ●職員が肩書を外して参加できる場の設計と場の創出
 ●対話の場におけるグランドルール(※)の徹底
 ●市民の中のファシリテーターの活躍,育成 等

 ※グランドルール:安心して発言できるよう会議,ミーティングなどを行う際に参加者同意の上で設定するルールや方針。(例:頭から否定しない,人の話を最後まで聞く,分からないことは聞く,積極的に話す 等)

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基本方針1 市民との未来像・課題の共有

施策3 共創のための「多様な主体の対話」の推進

 官民が連携して対等な立場で,未来像と課題を共有し,解決のために協働したり,新しい未来を共に創るために,行政だけでは解決できない取組や新しい挑戦を行います。そのために,多様な主体が,協働して,未来のために行動するきっかけとなる対話の場,情報共有の場をつくるオープンガバナンスを推進します。

施策の推進例
(1)多様な主体の参加機会の拡充
 多様な主体が自由に参加し,地域の課題やまちづくりについて対話する機会づくりとそれらの連携を促進します。
 ●多様な市民同士の交流,対話が生まれる場づくり
 ●様々な政策分野やテーマに横断的に参加できる工夫 等
 (例:複数イベント共同で情報発信,庁内公式SNSやHP間での相互リンク,興味ありそうな方を他の場に紹介する 等)

(2)多様な主体同士の対話を課題解決・実践につなげる仕組みづくり
 行政課題や社会課題と,市民や事業者からの提案を効果的に結びつけるため,対話によって本質を追及,分析し,連携・協働を実装する仕組みづくりを行います。
 ●社会課題解決を志向する民間事業者等との連携の一元的窓口の設置
 ●複数の主体で対話し,課題解決を目指す取組の推進(例:オープンガバナンス,クロスセクター京都 等) 等

(3)民間の社会課題解決プラットフォームとの連携
 民間の社会課題解決に向けたまちづくりプラットフォームと行政課題を共有し,政策・事業との連携や協働の実践に向けて職員の参加を促進します。
 ●民間主体の課題解決プラットフォームや公民連携の研修への職員の派遣
 ●社会課題,地域課題の解決に取り組む民間事業者,市民との交流 等

民間主導の社会課題解決の取組

 近年,公的部門や非営利部門以外の民間事業者の間で,社会的な課題や問いを引き出し,対話を通してソーシャルイノベーションを起こすことを目的とした組織や施設の運営の動きが広がっています。例えば,民間企業のプログラムとして,地域の企業やNPO,行政等多様なメンバーを集め,対話を通して課題を発見し解決のイノベーションにつなげる取組が実施されたり,企業が自社の施設の中に,外部との交流・対話が生まれるようなコワーキングスペースや学生用スペース,学びの場を設けるなど,その動きは加速しています。こうした動きに行政も敏感に反応できるよう常に感度を高めておかなければなりません。

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基本方針2 市民の市政への参加の推進

 基本方針2では,京都市が市民参加の両輪の一つと位置付ける「市民の市政への参加」についての施策に取り組みます。市政参加とは,市の政策の形成,実施,評価のあらゆる過程において,市民が積極的に市政に関与し,共に考え,共に行動するものです。ここでは,市民が市政に参加するために必要な制度・工夫・配慮・観点等について次のように,市民の市政への参加の段階や目的に応じて3つの種別に分けて施策を行います。

はじめる  市民の関心を市政への参加につなぐ機会の充実やきっかけづくり
つながる  市政に参加した市民が継続して参加したくなる,また次世代につながる
ひろがる  市民と協働する市政分野が拡大する

施策4 市政参加の機会の充実(市政参加×はじめる)

 市政参加は,市民の権利であり,また,複雑多様化する社会課題の解決のためには,政策の形成段階から市民と行政が共に考えることが必要です。市政の分野の隅々まで,常に市民の知恵が反映される制度を充実させていきます。

施策の推進例
(1)市民参加制度の適切かつ効率的・効果的な運営
 政策の企画・形成,実施,評価等,あらゆる段階において,それぞれ適切かつ効率的・効果的な市政参加手法を提供します。
 ●各種市政参加制度の効率的・効果的な実施の事例共有や活用促進
 ●市政参加の件数等の量の評価だけでなく,市政に反映した意見数等,質の評価も重視
 ●意見集約や結果の見える化等におけるICTの活用 等

(2)市政参加の入口の見える化・周知
 市民をはじめ多様な主体に市政参加の入口を見える化し,周知します。
 ●ポータルサイト「みんなでつくる京都」による新鮮な情報の発信
 ●企業等の提案窓口の設置,ホームページでの情報発信 等

(3)継続的な市民参加による政策形成の機会づくり
 長期的な視点が必要な政策形成のための市民参加の仕組みづくりを進めます。
 ●特定の政策やテーマについて市民が継続的に参加,議論できる場の設定,活用
 ●基本計画や各区基本計画をテーマにした対話の場や会議体の推進 等

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基本方針2 市民の市政への参加の推進

施策5 誰もが参加しやすいデザイン(市政参加×はじめる)

 市政参加の裾野拡大のためには,市民視点に立ち,全ての方に参加してもらいやすい場や手法を工夫する必要があり,参加のハードルを下げることや,参加に楽しみや気軽さが生まれるデザインを考えます。

施策の推進例
(1)参加にハードルを感じる方にも参加しやすいデザイン
 病気や障害のある方や言語や文化背景の異なる方,家庭の事情がある方や仕事や学業で忙しい方など,参加に制約のある方が参加しやすいよう工夫します。
 ●ユニバーサルデザインの推進(例:音声読上げ,やさしい日本語の活用 等)
 ●情報保障の推進(例:手話通訳や要約筆記,ヒアリンググループ 等)
 ●時間帯,開催場所・方法の工夫(例:休日の開催,オンラインによる開催,動画配信 等)
 ●オンライン活用の知恵や手法の共有(例:庁内でのノウハウ共有,市民とのノウハウ共有) 等

(2)心理的負担を減らす参加のデザイン
 市政やまちづくりに参加することに心理的な負担感や抵抗感のある方が参加しやすいよう工夫します。
 ●対話の場におけるグランドルールの徹底
 ●性別や年齢,属性で求められる役割や意見が固定化されない,個人が尊重される組織運営や場づくり
 ●短時間参加,部分参加が可能な取組など気軽に参加できる工夫 等

(3)自然と参加が促進されるデザイン
 日常の生活で,何かのついでに参加したり,面白そうなのでついつい参加してしまうような工夫をします。
 ●届けたい対象が触れる機会の多い媒体や日常の移動の動線の中で参加できる工夫
 (例:利用者の多いテーマ別のSNS等との連携,交通機関等との連携 等)
 ●本業,本務の中で市政と関われる仕組みづくり(例:小中高等学校や大学の授業との連携,仕事の中で関われる工夫 等)
 ●「仕掛け学」や「ナッジ」の考え方を活かした,心理学的なアプローチ(例:ゲーム性のある意見募集 等) 等

「ナッジ」と「仕掛け学」

 「ナッジ」と「仕掛け学」は人間の行動を強制や,金銭的な動機付けなしに変容させる手法です。「ナッジ」の代表的な成功例事例として,イギリスの臓器提供に関する事例があります。運転免許証の臓器提供意思表示欄の初期設定を「拒否する」から「提供する」に変更したことで,あえて変更するのが面倒な人や気にしない人が提供者となり,臓器提供者数が増えました。このように人間の無意識的な行動や習性を活かすのがナッジと言われる手法です。この時注意したいのは,この免許証の事例でも想像できるように,目的が社会的に良いことでも,行政の思惑で操られた,誘導されたと感じる人が一定数出る可能性があることです。ナッジの利用は目的と手段を慎重に検討する必要があります。一方で,「仕掛け学」は本人の意識的な行動が目的に沿った行動になるようデザインする手法です。例えば,ごみ箱にゴミを捨ててもらうために,ごみ箱の上にバスケットゴールを設置したら,ポイ捨てする人が減ったという事例があります。行動した人は,選択的に自分の欲求(ごみをゴールに入れる喜び)を優先した結果,設置者の期待する行動になっているという構図です。この場合,自発的に行動した人は行政への不満は起きにくいでしょう。
 両者の違いも知った上で,「ナッジ」や「仕掛け学」を取り入れると,啓発や罰則だけでない,費用対効果の高い政策運営が期待できます。

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基本方針2 市民の市政への参加の推進

施策6 協働の成果や手ごたえの共有(市政参加×つながる)

 市政参加が継続的なものになるために,市民と行政がどのような過程で政策形成を進めたか,市民と行政の協働によって,どのような成果が生まれたかなど,共に手ごたえを実感できるようにしていきます。

施策の推進例
(1)市民参加制度の適切かつ効率的・効果的な運営(再掲)
 政策の企画・形成,実施,評価等,あらゆる段階において,それぞれ適切かつ効率的・効果的な市政参加手法を提供します。
 ●各種市政参加制度の効率的・効果的な実施の事例共有や活用促進
 ●市政参加の件数等の量の評価だけでなく,市政に反映した意見数等,質の評価も重視
 ●意見集約や結果の見える化等におけるICTの活用 等

(2)協働の成果の見える化
 市民と行政の協働の実践について,過程も含めて情報発信するとともに,わかりやすい指標の設定も含め,協働,共創の成果を共有します。
 ●協働の成果について,指標による見える化
 ●パブリック・コメントやワークショップの成果の公表
 ●“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」の市民・行政の協働,活動状況の発信
 ●公民連携による社会課題解決の実践的な取組・成果の発信
 ●まちづくり活動や,市民参加の取組の表彰 等

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基本方針2 市民の市政への参加の推進

施策7 次世代につながる市政参加(市政参加×つながる)

 多くの市民が社会に興味を持って参加し,市民と行政が良好な協力関係をもって未来を共に創るために,子どもや学生をはじめ,社会人,子育て世代など,次世代の地域社会を担う若い世代の市政参加を推進します。

施策の推進例
(1)社会課題や地域課題への関心を高める学びの場づくり
 まちづくりの担い手としての資質や能力を高めるため,社会課題・地域課題に関心を高める学びの場をつくります。
 ●シチズンシップ教育,SDGs教育の推進(例:総合学習や社会の学習を通じた市政参加 等)
 ●小中高等学校や大学,教職員,若者の活動を支援する団体等と連携した学びの場の提供
 (例:対話型パブコメ,出前トーク,授業,イベント等への出講 等)
 ●学校運営協議会を通じた,地域ぐるみの教育の推進 等

(2)自然と参加が促進されるデザイン(再掲)
 日常の生活で,何かのついでに参加したり,面白そうなのでついつい参加してしまうような工夫をします。
 ●届けたい対象が触れる機会の多い媒体や日常の移動の動線の中で参加できる工夫
 (例:利用者の多いテーマ別SNS等との連携,動画サイト活用,学校内での情報提発信 等)
 ●本業,本務の中で市政と関われる仕組みづくり(例:小中高等学校や大学の授業との連携,仕事の中で関われる工夫 等) 
 ●「仕掛け学」や「ナッジ」の考え方を活かした,心理学的なアプローチ(例:ゲーム性のあるシチズンシップ教育 等) 等

市政参加,まちづくりと関わる教育

 2000年頃から欧米を中心に,「シチズンシップ教育」が学校教育に取り入れられてきました。「シチズンシップ教育」とは,市民社会の一員としての必要な知識,自ら意見を発信する,他者との関係を構築するという,民主主義社会の基本的な振る舞い方を学ぶ教育分野です。日本では公教育においては,社会との関わり,ルール等については,知識中心の公民教育や道徳教育に委ねられてきた背景がありますが,参政権年齢の引き下げ等もあり,内閣府は「平成25年版 子ども・若者白書」の中で,「社会の一員として自立し,権利と義務の行使により,社会に積極的に関わろうとする態度を身に付けるため,社会形成・社会参加に関する教育(シチズンシップ教育)を推進することが必要である。」としました。
 また,近年SDGsの世界的な広がりを受けて,持続可能な社会の担い手の教育としてESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発教育)も学習指導要領に盛り込まれるようになりました。
 京都市では,これまでから,学校と地域との協働活動を通して子どもたちに地域への愛着や地域の一員としての役割,人との絆の大切さを伝えるなど,将来の地域の担い手の育成を図るとともに,地域の活性化を図るため,2004年度に初めて学校運営協議会を設置するとともに,以降全校設置に向けて取組を推進しています。学校運営協議会では,家庭・地域・学識経験者など幅広い分野の方々に,委員として学校運営についての意見や承認をいただくだけでなく,多くの学校では,協働活動を担う企画推進委員会を設置し,そこで多くの保護者や地域住民の方々によるボランティア(子どもたちのために汗をかく学校の応援団)に積極的に参画いただくことで,地域に応じた様々な協働活動が実施されています。
 市民参加の裾野の拡大のためにも,市役所が積極的に地域の教育に関わることはこれからとても重要になってきます。

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基本方針2 市民の市政への参加の推進

施策8 協働する市政分野の拡大と新たな挑戦 (市政参加×ひろがる)

 あらゆる市政分野において,施策・事業を実施するうえで市民意見を反映することはもとより,社会的な活動を推進する企業等事業者も含めた幅広い市民の知恵と力を最大限活用し,より効果的な事業・施策運営をしていきます。

施策の推進例
(1)市政の課題解決に向けた多様な主体との協働促進
 市政の課題解決に,市民をはじめ多様な主体と共に取り組みます。
 ●“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」の実施
 ●公民連携・課題解決推進事業の実施
 ●民間の持続可能なビジネスと連携した課題解決の取組創出 等
 (例:ビジネスチャンスの拡大や社会的貢献(CSR(※),CSV(※))を目指す企業と政策の適切なマッチング 等)
(2)全庁的な連携による協働分野の拡大と挑戦する組織文化の醸成
 全庁を挙げて,全ての政策分野において,様々な課題に対し失敗を恐れず,前例にとらわれない,協働による解決に向けた挑戦を行います。
 ●公民連携・課題解決推進事業の実施
 ●多様な主体との協働と庁内の複数部署の連携による政策横断的な課題への対応
 ●挑戦,変革を進められる人材の育成 等

 ※CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任):社会的責任としての企業のボランタリーな社会貢
献活動。
 ※CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造):社会課題を解決することによって,社会価値と経済価値の両方
を創造する次世代の経営モデル。

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基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

 基本方針3では,京都市が市民参加の両輪の一つと位置付ける「市民のまちづくり活動の活性化」についての施策に取り組みます。まちづくり活動とは,市民が地域や社会を良くしようとする自主的な全ての活動を指し,京都市は,市民による自主的なまちづくり活動について,必要な支援を行うとともに,市民との協働を推進しています。ここでは市民のまちづくり活動への参加の段階や目的に応じて3つの種別に分けて施策を行います。

はじめる  市民や,新しい主体がまちづくりをはじめるきっかけづくり
つながる  まちづくり活動が地域につながり持続可能なものとなるような取組
ひろがる  より多くのプレイヤーや多くの分野に協働のまちづくりが拡大する

施策9 まちづくりに取り組むきっかけづくり(まちづくり×はじめる)

 より多くの市民がまちづくりに興味を持って参加するために,参加のハードルを下げる,楽しさや意義を感じてもらう,ちょっとしたきっかけから自然と参加へつながるなどにより,参加の好循環を生み出す取組を行います。

施策の推進例
(1)参加しやすい対話や学び合いの機会の提供
 「まちづくり活動への入口」となる対話や学び合いの機会をつくります。
 ●“みんなごとのまちづくり”つながり促進プログラム公開講座
 ●各区役所・支所で開くワークショップ等
 ●ボランティア情報の発信,参加者の交流,マッチング 等

(2)まちづくり活動の見える化と情報発信
 市民のまちづくり活動の見える化とともに,まちづくりに役立つ情報を発信します。
 ●ポータルサイト「みんなでつくる京都」による新鮮な情報の発信 等

(3)つながりや経験から生まれる参加への動機付け
 人と人とのつながりの中から生まれる参加の促進,サービスを受けたりイベントに参加した体験から自ら取り組むきっかけづくりの推進に取り組みます。
 ●既に活動している方,協働を実践している方からの紹介による参加の促進
 ●サービスや支援を受けた方が次に提供側になりたくなるような場の工夫
 ●興味を持った市民から市民へ市民同士の情報の伝播の工夫(再掲)(例:SNS,音声SNS,動画サイトの利用 等) 等

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基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

施策10 SDGsを背景とした多様な主体の参画促進(まちづくり×はじめる)

 2030年を目標としたSDGsの達成のために,多様な主体が協力することが求められるなかで,これまでになく,企業や大学をはじめとした多くの主体が,社会活動,地域活動への意欲を高めています。地域の窓口である区役所・支所をはじめ各行政分野の部署ともに,行政はその意欲,提案を受けとめ,適切に政策とつなげるとともに,地域課題,社会課題とのマッチングや,様々な主体間のコーディネート等の役割を果たし,より多くの主体のまちづくり活動への参加を推進していきます。

施策の推進例
(1)社会課題や地域課題への関心を高める学びの場づくり(再掲)
 民主主義の担い手としての資質や能力を育むため,社会課題・地域課題に関心を高める学びの場をつくります。
 ●シチズンシップ教育,SDGs教育の推進
 (例:総合学習や社会の学習を通じた市政参加 等)
 ●小中高等学校や大学,教職員,若者の活動を支援する団体等と連携した学びの場の提供
 (例:対話型パブコメ,出前トーク,授業,イベント等への出講 等)
 ●学校運営協議会を通じた,地域ぐるみの教育の推進 等

(2)民間事業者との連携の拡大・強化
 民間事業者との連携を拡大・強化し,社会課題や地域課題とつなげます。
 ●社会課題解決を志向する民間事業者等との連携の一元的窓口の設置
 ●企業の持つ強みと社会課題・行政課題とのマッチング・コーディネート
 ●連携協定等に基づく事業者との対話の促進,新たな取組の創出 等

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基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

施策11 地域コミュニティ活性化への支援(まちづくり×つながる)

 担い手不足や新型コロナウイルス等の課題に直面する地域の様々な活動において,活力のある地域コミュニティをこれからも維持・継承していけるよう,住民同士のつながりづくりや地域活動への住民の参加促進,多様な主体と地域団体との連携など,地域コミュニティの活性化に向けて取り組んでいきます。

施策の推進例
(1)住民同士のつながりづくり
 顔の見える関係づくりやICTの活用などにより,住民同士のつながりづくりを支援する取組を進めます。
 ●地域情報の受発信におけるICTツールの活用促進
 ●住民それぞれのライフステージに応じた効果的な情報発信 等

(2)地域コミュニティにおける多様な主体の協働
 自治会・町内会などの地域団体と専門的な知識やノウハウを持つ地域の市民活動団体や事業者,地域の小中高等学校,大学等の各主体の交流や連携,協働を促進します。
 ●地域における多様な主体の連携
 ●市民活動総合支援センター等における協働のコーディネート 等

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基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

施策12 まちづくりを支援する仕組み(まちづくり×つながる)

 担い手不足や新型コロナウイルス等の課題に直面する市民のまちづくり活動において,共に支援し合いながら,持続可能な取組となるために,行政の支援(コーディネート,財政での支援,人的支援等)と, 市民同士で活動を支え,理解する社会全体の環境づくりの両方を推進していきます。

施策の推進例
(1)まちづくり活動に必要な資源のコーディネート
 持続可能なまちづくりのため,協力者,情報,資金などの活動に必要な資源を適切にコーディネートします。
 ●知識・ノウハウを学ぶ講座,専門家の派遣
 ●市民や多様な主体同士で成功事例や情報を共有
 ●市民の中のファシリテーターの活躍,育成 等

(2)社会全体で活動を支える機運の醸成
 まちづくり活動の社会的意義の浸透や事業者等の地域活動,社会活動の推進など,活動しやすい社会環境づくりを進めます。
 ●寄付,クラウドファンディングの更なる活用
 ●地域への貢献の表彰や情報発信,「真のワーク・ライフ・バランス」,「働き方改革」の周知・啓発 等

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基本方針3 市民のまちづくり活動の活性化

施策13 多様な主体の協働による社会課題解決への挑戦(まちづくり×ひろがる)

 多様化・複雑化した社会課題に簡単な正解はありません。市民によるまちづくり活動が,行政も対等なパートナーの一人として含んだ多様な主体と協働し,それぞれの知恵と力を出し合うことで,大きな成果や社会課題,地域課題の解決に近づくよう推進していきます。

施策の推進例
(1)市政の課題解決に向けた多様な主体との協働促進(再掲)
 市政の課題解決に,市民をはじめ多様な主体と共に取り組みます。
 ●“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」の実施
 ●公民連携・課題解決推進事業の実施
 ●民間の持続可能なビジネスと連携した課題解決の取組創出(例:ビジネスチャンスの拡大や社会的貢献(CSR,CSV)を目指す企業と政策の適切なマッチング 等) 等
   
(2)民間の社会課題解決プラットフォームとの連携(再掲)
 民間の社会課題解決に向けたまちづくりプラットフォームと行政課題を共有し,政策・事業との連携や協働の実践に向けて職員の参加を促進します。
 ●民間主体の課題解決プラットフォームや公民連携の研修への職員の派遣
 ●社会課題,地域課題の解決に取り組む民間事業者,市民との交流 等

(3)持続可能な協働のイノベーションが生まれる仕組みの構築
 多様な主体が,社会課題解決へ挑戦し,新たな価値や行動を生み出し(イノベーション),持続可能に支援し合える関係(エコシステム)を築く仕組みをつくります。
 ●社会課題解決に取り組む主体や行動,成果を見える化
 ●地域企業未来力会議(※)やSILK(※)による社会課題とビジネスの連携
 ●公民連携・課題解決推進事業の実施 等

 ※ 地域企業未来力会議:地域の多様な業種の若手経営者等が集まり,地域企業が持続的に発展していくため,直面している経営課題等について,業種横断的に議論。現場の声を反映した実効性ある取組を検討・推進するとともに,企業間連携による「社会課題」や「地域課題」,「経営課題」の解決につながる新たなビジネスモデルの創出を図る。
 ※ SILK:京都市ソーシャルイノベーション研究所。市民,企業,NPO,大学などの多種多様な組織や個人が,京都で社会的課題の解決に挑戦することで,過度の効率性や競争原理とは異なる価値観を日本はもとより,世界にも広めることを目的にした「京都市ソーシャル・イノベーション・クラスター構想」の推進拠点として2015年4月に設置されました。

32ページ

計画を着実に進めるための推進体制

 市民参加推進計画に掲げる施策を進めるに当たっては,京都市の全ての部署,職員一人一人が協働型社会の必要性,共創により生み出されるイノベーションの重要性を十分に理解し,常に意識するとともに,代表民主制を基本 とする地方自治制度のもと,市会との連携を十分に図りながら,施策や事業を推進する必要があります。
 計画の着実な実施に向けては,その進捗状況を見える化し,分かりやすく示すとともに,効率的・効果的に実施することを前提に,以下の取組を進めます。

取組1 協働の成果の政策への反映,変革に挑戦する組織づくり

 京都市の市民参加を一層進めるためには,市長を議長とする市民参加推進会議のもと,全庁的な市民参加に関するマネジメントを強化し,実践的な協働や公民の連携を進め,その成果を共有し,政策・施策への反映につなげます。
 また,正解のない課題に取り組むためには,前例がない改革的な取組の試行や,成果の見えにくいことへの挑戦が必須ですが,失敗を恐れず挑戦できる組織風土の醸成に取り組んでいきます。

取組例
(1)市民参加のマネジメント強化
 市民参加推進会議をはじめ,全庁的なマネジメントを発揮し,SDGsの達成,レジリエント・シティの実現に向けた政策・施策の融合強化につなげ,適切かつ効率的・効果的な市民参加・協働の市政運営を推進します。

(2)協働の成果の見える化
 市民と行政の協働の実践について,過程も含めて情報発信するとともに,わかりやすい指標の設定も含め,協働,共創の成果を共有します。
 ●協働の成果について,指標による見える化
 ●パブリック・コメントやワークショップの成果の公表
 ●“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」の市民・行政の協働,活動状況の発信
 ● 公民連携による社会課題解決の実践的な取組・成果の発信 等

(3)全庁的な連携による協働分野の拡大と挑戦する組織文化の醸成
 全庁を挙げて,全ての政策分野において,様々な課題に対し失敗を恐れず,前例を打破する,協働による解決に向けた挑戦を行います。
 ●公民連携・課題解決推進事業
 ●多様な主体との協働と庁内の複数部署の連携により政策横断的な課題に対応
 ●挑戦,変革を進められる職員の育成 等

33ページ

計画を着実に進めるための推進体制

取組2 最も身近な区役所・支所における協働を支援する役割

 区民に最も身近な行政機関である区役所·支所が,市民にとっての様々なまちづくりの入口となり, 市政参加や協働のきっかけづくりや,まちづくり活動を継続するための支援,地域課題解決に向けた協働の促進など重要な役割を担っていきます。顔の見える関係で,相談や提案,支援などの窓口としての機能を発揮します。

取組例
(1)参加と協働のきっかけづくり
 地域の実情や特徴に応じた創意工夫等により,多様な主体と協働に取り組み,相談や提案, 支援などを行います。
 ●市政やまちづくり活動の情報提供や相談受付,支援
 ●地域における様々な活動に取り組む団体等の活動支援  等

(2)地域のまちづくりのコーディネート
 地域の様々な主体(市民,住民組織,市民活動団体,事業者,小中高等学校,大学等)が, 未来像・課題を共有し,それぞれの取組を有機的に連携するための場づくりなど,協働を支援す る取組を進めます。

34ページ

計画を着実に進めるための推進体制

取組3 市民参加を実践する職員の育成

 市民参加をより一層推進するため,組織としてのマネジメント強化とともに,対話力·マネジメント力・コーディネート力を養うなど,職員一人一人の意識・能力向上に取り組みます。また,多様な主体と協働する具体的な行政課題解決の取組の中での実践的な学びを重視します。社会的な活動,地域活動への参加も推奨します。

取組例
(1)職員の意識・能力の向上
 未来像・課題の共有のための「引き出す力,対話の力」,協働の取組を推進するための「マネジメント力」,多様な主体や庁内の「コーディネート力」,都市の課題を経営的視点,政策融合的視点で考えられる「政策形成能力」等,市民参加の成果を実際の政策に結び付けられる能力を向上させる研修や協働のプロジェクトの中での実践的な学び等の機会を充実させます。

(2)民間等と連携した職員育成
 民間と連携した実践的な職員育成に取り組みます。
 ●民間主体の課題解決プラットフォームや公民連携の研修への職員の派遣
 ●社会課題,地域課題の解決への取り組む民間事業者,市民との交流 等

(3)市民参加の実践による職員育成
 多様な主体との協働の取組の中で実践的に学ぶことや,職員の社会的な活動への参加を促進します。
 ●多様な主体と協働が必要な実際の事業やプロジェクトの中での実践的な学び
 ●職員の地域活動,社会活動の積極的な推進・評価,市内居住の促進 等

資料(35ページ)

1 市民参加推進フォーラムの活動(市民意見を聴く取組,提言等)(36ページ)
2 「第3期京都市市民参加推進計画 骨子案」に関する市民意見の募集結果(38ページ)
3 これまでの市民参加推進の主な取組(40ページ)
4 京都市市民参加推進条例及び同施行規則(42ページ)

36ページ

1 市民参加推進フォーラムの活動(市民意見を聴く取組,提言等)

(1)市民参加推進フォーラムの役割と取組

 「京都市市民参加推進フォーラム」は,市民参加のあり方や手法などについて京都市に意見や提案を行うとともに,市民と行政との協働を推進するため,平成14(2002)年8月に設置した京都市の附属機関であり,学識者等の有識者と市民公募委員で構成しています(定数15名)。
 これまでに,全体会議や部会,自主勉強会での議論のほかに,本市の附属機関等に在籍する市民公募委員の交流を図る「市民公募委員サロン」などの開催に取り組むとともに,「職員のための市民参加の推進の手引き」や「協働がおいしくなるKyoのレシピ帳」などの作成にも取り組み,第2期京都市市民参加推進計画及び改定版の策定に際して提言書を提出しています。

市民参加推進フォーラム
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000035250.html

 また,第2期計画(改定版)の策定後には,同計画の進捗確認のため,平成28(2016)年度から令和2(2020)年度にかけて,各施策の市の取組について,現状を把握し,分析を進めてきました。

平成28(2016)年度
基本方針2「市民の市政への参加の推進」
●特徴的な2事業について,ヒアリング調査を実施

平成29(2017)年度
基本方針3「市民のまちづくり活動の活性化」
●まちづくり活動をしている方を対象にアンケート及びヒアリング調査を実施

平成30(2018)年度
基本方針1「市民との未来像・課題の共有」,基本方針2「市民の市政への参加の推進」
●市の取組状況について調査
●若者世代を対象に,アンケート及びヒアリング調査を実施

令和元(2019)年度
基本方針1「市民との未来像・課題の共有」,基本方針2「市民の市政への参加の推進」
●全国で特徴的,先進的な取組を行っている事例について調査
●市政総合アンケートの分析
●「策定に当たっての考え方」のとりまとめ

令和2(2020)年度
計画全般●「市政参加」「まちづくりの活性化」の2つの部会による審議
●市民参加フリートークセッションの実施
●「策定に当たっての提言書」のとりまとめ

37ページ

1 市民参加推進フォーラムの活動(市民意見を聴く取組,提言等)

(2)本市への提言書の提出

 市民参加推進フォーラムでは,「第3期京都市市民参加推進計画」の策定に向けて,令和元(2019)年度から令和2(2020)年度にかけて,合計7回の全体会議,2回の部会を開催し,市民参加の現状や成果,課題等を整理し,計画に盛り込むべき内容について議論を重ねました。さらに,広く市民の意見を広く聴くための取組として,オンラインによるトークイベント「市民参加フリートークセッション」を4回実施するなど,議論を深めました。その成果として,「第3期京都市市民参加推進計画策定に当たっての提言書」を取りまとめ,令和2(2020)年10月に本市に提出しました。

[市民参加フリートークセッション]
 オンライン会議形式にて,4テーマに分けてフリートークセッションを開催し,具体的な現場の声や計画を推進するためのアイデア・施策の工夫等について,意見をいただきました。

(まちづくり1) コロナに負けない持続可能なまちづくり活動に必要なものは? 参加者数:17名
(まちづくり2) 新たな「まちづくり」プレイヤーが参画しやすいまちにするには? 参加者数:18名
(市政参加1) こども・若者が市政に関心をもつには?教育はどう関われるのか? 参加者数:18名
(市政参加2) 誰もがついつい「市政参加」してしまうデザインアイデアソン 参加者数:23名

市民参加フリートークセッションの開催結果
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000275629.html

[提言書の提出]
・令和2年10月28日(水曜日)
・京都市役所北庁舎4階 第一応接室
提言内容は,本市公式サイト「京都市情報館」で御覧いただけます。

第3期京都市市民参加推進計画策定にあたっての提言書
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000277448.html

38~39ページ

2 「第3期京都市市民参加推進計画 骨子案」に関する市民意見の募集結果

(1)募集期間
 令和2年12月25日(金曜日)~令和3年1月31日(日曜日) 38日間

(2)周知方法
 1 市民意見募集パンフレットの配布
  市役所,区役所・支所,市民活動総合センター,いきいき市民活動センター,図書館等の公共施設,市内コワーキングスペース等
 2 市ホームページ,SNS等の活用
  京都市情報館,市民参加ポータルサイト「みんなでつくる京都」,みんなでつくる京都SNS,大学のまち京都・学生のまち京都公式アプリ「KYO-DENT」 等
 3 計画骨子案についての解説動画の配信
  京都市公式パブリック・コメントチャンネル「京ぱぶ」の開設
 4 対話型パブリック・コメントの実施
  【学校の授業】京都光華女子大学,同志社大学,同志社中学校
  【イベント】ユースサービス協会との共催イベント,市民参加推進フォーラム「公募委員サロン」,パブリックコメント普及協会主催イベント
  【会議】地域景観づくり協議会の会合(2件)での説明
 5 その他市民参加に取り組む方々への周知等
  市民参加推進フォーラム元委員,まちづくり・お宝バンク取組提案者,シビックプライドランチ(職員有志による市民との対話の会)への参加者等への周知メール,その他 市民参加に取り組む有志による自主的な冊子配布 等

(3)募集結果
 意見をいただいた方の数:363人,意見の総数:473件

(4)いただいた意見と本市の考え方
 この計画は,いただいた多くの意見を元に,作り上げられました。一つ一つの意見と,本市の考え方については以下のページから御覧いただけます。

 京都市情報館
 https://www.city.kyoto.lg.jp/templates/pubcomment/sogo/0000277360.html

京都市公式パブリック・コメントチャンネル「京ぱぶ」

 市民参加推進計画や,パブリック・コメントの制度に興味を持ってもらえるよう,市内大学生チームとコラボし,計画骨子案の内容を全17話の短い動画で配信しました。
 学校や大学の授業でも取り上げていただき,たくさんの御意見につながりました!

京ぱぶ
https://www.youtube.com/channel/UCpEMG7DD1GWxyqeSGqGUJKw外部サイトへリンクします

40~41ページ

3 これまでの市民参加推進の主な取組

42~49ページ

4 京都市市民参加推進条例及び同施行規則

京都市市民参加推進条例

 1200年を超える歴史の中で,京都は,世界に誇るべき「都市の自治」をはぐくみ,自治の伝統に培われた市民の多様な活動及び市政への参加により,自立性の高い活力あふれるまちとして発展してきた。
 21世紀においても,京都が有する多様かつ豊かな蓄積を輝きに変え,個性豊かな魅力あふれるまちとして,京都が発展し続けるためには,事業者,市民活動団体等を含むすべての市民が,その持てる力を存分に発揮し,地域社会の一員として,自覚と責任を持って,まちづくりを進めるとともに,市政に積極的に参加し,協働の成果を挙げることが必要である。
 本市は,代表民主制を基本とする地方自治制度の下,市民の市政への参加と市民による自主的なまちづくりについて,これらを市政運営の基本原則とし,基本理念を定め,並びに本市及び市民の責務を明らかにするとともに,多様な参加の機会を確保することにより,本市と市民とのパートナーシップに基づく市政の推進を図り,もって豊かで活力ある地域社会を実現することを決意し,この条例を制定する。

(目的)
第1条 この条例は,本市及び市民が共に市民参加(市民が市政に参加し,及びまちづくりの活動を行うことをいう。以下同じ。)を推進するための基本的事項を定めることにより,市民の知恵と力を生かした市政及び個性豊かなまちづくりの推進に資することを目的とする。

(基本理念)
第2条 市民参加は,本市と市民との協働(自らの果たすべき役割を自覚して対等の立場で協力し合い,及び補完し合うことをいう。以下同じ。)の精神に基づき,市民による市政への参加とまちづくりの活動とが相まって,推進されなければならない。
2 市民参加は,市民の豊かな社会経験及び創造的な活動が尊重されるとともに,市民の福祉の増進及び市政運営の効率性が確保されることを基本として推進されなければならない。
3 市長その他の本市の行政機関は,市民参加の推進に当たっては,市会の権限及び役割を尊重しなければならない。

(本市等の責務)
第3条 本市は,京都市情報公開条例の趣旨にのっとり,情報の提供及び公開を推進することにより,政策の形成,実施及び評価の一連の過程における透明性を向上させるとともに,政策の目的,内容,効果等を市民に分かりやすく説明する責務を果たし,もって市民がこれら一連の過程において市政に参加することができるよう,その機会の確保に努めなければならない。
2 本市は,市政に関する市民の意見,提案等を総合的に検討し,これらに誠実に応答するとともに,それらの内容を市政に適切に反映させるよう努めなければならない。
3 本市は,市民による自主的なまちづくりの活動について,これを尊重しつつ,必要な支援を行うとともに,市民との協働に努めなければならない。
4 本市の職員は,基本理念にのっとり,あらゆる職務について,市民参加の推進を図る視点に立ち,公正かつ誠実にこれを遂行しなければならない。

(市民の責務)
第4条 市民は,市政に関する情報並びに政策の形成,実施及び評価の一連の過程における参加の機会を活用することにより,積極的に市政に参加するよう努めるものとする。
2 市民は,地域社会の課題の解決に主体的に取り組むことを通じて,まちづくりの活動を推進するよう努めるものとする。
3 市民は,市民参加の推進に当たっては,地域社会の一員としての自覚と責任を持って,本市との協働及び市民相互の協働に努めるものとする。

(市民活動団体の責務)
第5条 市民活動団体(ボランティア活動その他の公益的な活動を行うことを目的として市民が組織する団体をいう。以下同じ。)は,その活動を通じて,本市及び市民との協働を図り,市民参加の推進に寄与するよう努めるものとする。
2 市民活動団体は,その社会的な役割の重要性にかんがみ,積極的に事業運営の状況等について市民に説明する等組織及び活動の透明性の向上に努めるものとする。

(市民参加推進計画)
第6条 市長は,市民参加を総合的に推進するための計画(以下「市民参加推進計画」という。)を定めなければならない。
2 市長は,市民参加推進計画を定め,又は変更したときは,速やかにこれを公表しなければならない。
3 市長は,毎年度,市民参加推進計画に基づき講じる施策の実施計画及びその実施状況を市会に報告しなければならない。
4 市長は,市民参加の推進状況等を踏まえ,5年を超えない期間ごとに,市民参加推進計画を見直さなければならない。

(附属機関等の会議の公開)
第7条 附属機関の会議及び市民,学識経験のある者等で構成する会議は,公開しなければならない。ただし,会議を公開することにより非公開情報(京都市情報公開条例第7条に規定する非公開情報をいう。以下同じ。)が公になる場合その他別に定める場合は,この限りでない。
2 前項の会議を招集する者は,当該会議の期日までに相当な期間を置いて,当該会議について,開催する日時及び場所,議題,傍聴の可否その他必要と認める事項を公表しなければならない。ただし,緊急を要するとき,又はこれらの事項を公表することにより非公開情報が公になるときは,この限りでない。
3 第1項本文の規定により公開した会議については,会議録を作成し,これを公表しなければならない。

(委員の選任)
第8条 市長その他の執行機関,公営企業管理者及び消防長(以下「市長等」という。)は,附属機関の委員の委嘱等に当たっては,民意を適切に反映させるため,多様な人材を登用しなければならない。
2 市長等は,附属機関の委員の委嘱等に当たっては,市民の市政への参加意欲を高めるとともに,前条第1項の会議において広く市民の意見が反映されるよう,委員の一部を公募により選任するよう努めなければならない。

(市政への参加の手続)
第9条 市長等は,政策の形成,実施及び評価の一連の過程において,公聴会,ワークショップ(本市及び市民による自由な議論により,政策,施策又は事業(以下「政策等」という。)の方針,内容等に関する意見を集約するための会合をいう。)その他の市政への参加の手続のうち,最も適切かつ効果的であると認められるものを行うよう努めなければならない。
2 市長等は,市政に関する基本的な計画の策定又は改廃,重要な制度の創設又は改廃その他の行為で別に定めるものを行うときは,パブリック・コメント手続(政策等について,その目的,内容その他の事項を公表し,広く市民の意見を募集し,当該意見に対する本市の見解を公表し,当該意見を勘案して意思決定を行う手続をいう。以下同じ。)を行わなければならない。
3 パブリック・コメント手続の実施に関し必要な事項は,別に定める。

(まちづくりの活動の支援)
第10条 市長は,情報の提供,相談,専門家の派遣,活動拠点の確保等市民による自主的なまちづくりの活動を促進するために必要な措置を講じるものとする。

(フォーラム)
第11条 市民参加の推進に関する事項について,市長の諮問に応じ,調査し,及び審議するとともに,当該事項について市長に対し,意見を述べるため,京都市市民参加推進フォーラム(以下「フォーラム」という。)を置く。

(フォーラムの組織)
第12条 フォーラムは,委員15人以内をもって組織する。
2 委員は,公募により選任された者,学識経験のある者その他市長が適当と認める者のうちから,市長が委嘱し,又は任命する。

(委員の任期)
第13条 委員の任期は,2年とする。
2 公募により選任された者を除き,委員は,再任されることができる。

(委任)
第14条 この条例において別に定めることとされている事項及びこの条例の施行に関し必要な事項は,市長が定める。

附 則
(施行期日)
1 この条例は,市規則で定める日から施行する。
(平成15年7月31日規則第43号で平成15年8月1日から施行)
(経過措置)
2 この条例の施行の日前に市長が定めた京都市市民参加推進計画は,第6条第1項の規定により定められた市民参加推進計画とみなす。この場合において,同条第4項に規定する期間は,この条例の施行の日から起算する。

附 則(平成25年11月15日条例第49号) 抄
(施行期日)
1 この条例は,公布の日から施行する。
(旧附属機関等の廃止及び新附属機関の設置に伴う経過措置)
5 この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前に次の表の中欄に掲げる附属機関又は合議体(以下「旧附属機関等」という。)にされた諮問で,この条例の施行の際当該諮問に対する答申がされていないものは,それぞれ同表の右欄に掲げる附属機関(以下「新附属機関」という。)にされた諮問とみなし,当該諮問について旧附属機関等がした調査,審議その他の手続きは,それぞれ新附属機関がした調査,審議その他の手続きとみなす。

1 附則第2項各号(第7号を除く。)に掲げる条例に基づく附属機関
別表に掲げる附属機関で中欄に掲げる附属機関と同一の名称のもの
2 施行日前に存する合議体で右欄のいずれかに相当するもの
別表に掲げる附属機関(1の項の右欄に掲げるものを除く。)第2条第2項に規定する附属機関又は附則第3項の規定による改正後の京都市市民参加推進条例第11条に規定する京都市市民参加推進フォーラム

(委員の任期の特例)
6 この条例の施行の際現に従前の旧附属機関等の委員である者は,それぞれ施行日に新附属機関の委員として委嘱され,又は任命されたものとみなす。この場合において,その委嘱され,又は任命されたものとみなされる者の任期は,別表に掲げる委員の任期にかかわらず,施行日における従前の旧附属機関等の委員としてのそれぞれの任期の残任期間とする。

京都市市民参加推進条例施行規則

(用語)
第1条 この規則において使用する用語は,京都市市民参加推進条例(以下「市民参加推進条例」という。)において使用する用語の例による。

(市民参加推進計画)
第2条 市民参加推進計画には,次の各号に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 市民参加の推進に関する長期的な目標
(2) 市民参加の推進のための取組
(3) その他市民参加の推進に関する重要な事項

(附属機関等の会議を非公開とする場合)
第3条 市民参加推進条例第7条第1項ただし書に規定する別に定める場合は,条例の規定により附属機関等の会議(同項本文に規定する会議をいう。以下同じ。)が非公開とされている場合とする。
2 市長等は,市民参加推進条例第7条第1項ただし書の規定により附属機関等の会議を非公開にしようとするときは,その理由を明らかにしなければならない。

(パブリック・コメント手続の対象)
第4条 市民参加推進条例第9条第2項に規定する別に定めるものは,次の各号に掲げる政策等とする。
(1) 地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)による改正前の地方自治法第2条第4項の規定に基づき定めた基本構想その他の市政に関する基本的な計画の策定又は改廃
(2)条例の制定又は改廃に係る案の策定(次に掲げる事項を決定し,又は変更するものに限る。)
ア 本市の基本的な制度
イ 市民生活又は事業活動に直接かつ重大な影響を与える事項
ウ 義務を課し,又は権利を制限する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか,市長等が,市民生活又は事業活動への影響を勘案してパブリック・コメント手続を実施することが適当であると認める制度の創設若しくは計画の策定又はこれらの改廃
2 前項の規定にかかわらず,同項各号に掲げるもののうち,次の各号のいずれかに該当するものは,市民参加推進条例第9条第2項に規定する別に定めるものとしない。
(1) 市税,使用料,手数料その他の徴収金の額及び徴収方法の決定又は変更を行うもの
(2) 法令又は条例の規定により,政策等に係る意思決定前に,公聴会の開催その他の市民の意見を反映させるために必要な手続を経るもの
(3) 附属機関が次条から第7条までの規定による手続に相当する手続を経て策定した答申に基づき行うもの
(4) 法令の改正その他の事由により迅速に行わなければならないもの

(政策等の目的,内容等の公表)
第5条 政策等(前条第1項各号のいずれかに該当するもの(同条第2項各号のいずれかに該当するものを除く。)をいう。以下同じ。)の目的,内容その他の事項の公表は,インターネットの利用,本市の広報紙への掲載,市長等が指定する場所における閲覧,印刷物の配布その他の適当な方法によって行うものとする。

(意見の募集)
第6条 政策等に対する市民からの意見の募集は,前条の規定による公表の日から起算して30日間を標準として市長等が定める期間,行うものとする。
2 前項の意見は,次の各号に掲げる方法によって受け付けるものとする。
(1) 市長等が指定する場所への書面の提出
(2) 郵便又は信書便の利用
(3) ファクシミリ装置の利用
(4) 電子メールの利用
(5) その他市長等が必要と認める方法

(本市の見解及び意思決定の内容の公表)
第7条 前条第1項の意見に対する本市の見解及び意思決定の内容の公表は,インターネットの利用その他の適当な方法によって行うものとする。

(実施状況の公表)
第8条 市長は,毎年1回,パブリック・コメント手続の実施状況を取りまとめて,公表するものとする。

(フォーラムの座長及び副座長)
第9条 京都市市民参加推進フォーラム(以下「フォーラム」という。)に座長及び副座長を置く。
2 座長は委員の互選により定め,副座長は委員のうちから座長が指名する。
3 座長は,フォーラムを代表し,会務を総理する。
4 副座長は,座長を補佐し,座長に事故があるときは,その職務を代理する。
5 座長及び副座長に事故があるときは,あらかじめ座長の指名する委員がその職務を代理する。

(フォーラムの招集及び議事)
第10条 フォーラムは,座長が招集する。ただし,座長及びその職務を代理する者が在任しないときのフォーラムは,市長が招集する。
2 座長は,会議の議長となる。
3 フォーラムは,委員の過半数が出席しなければ,会議を開くことができない。
4 フォーラムの議事は,出席した委員の過半数で決し,可否同数のときは,議長の決するところによる。
5 フォーラムは,必要があると認めるときは,委員以外の者に対して,意見の陳述,説明その他必要な協力を求めることができる。

(フォーラムの庶務)
第11条 フォーラムの庶務は,総合企画局において行う。

(フォーラムに関する補則)
第12条 この規則に定めるもののほか,フォーラムの運営に関し必要な事項は,座長が定める。

(補則)
第13条 この規則に定めるもののほか,市民参加推進条例の施行に関し必要な事項は,総合企画局長が定める。

附 則
 この規則は,平成15年8月1日から施行する。
   附 則(平成21年3月31日規則第99号)
 この規則は,平成21年4月1日から施行する。
   附 則(平成23年8月15日規則第23号)
 この規則は,公布の日から施行する。
   附 則(平成25年11月15日規則第62号)

(施行期日)
1 この規則は,公布の日から施行する。

(経過措置)
2 この規則による改正後の京都市市民参加推進条例施行規則第9条第2項の規定にかかわらず,この規則の施行の際現に従前のフォーラムに相当する合議体の座長又は副座長である者は,それぞれこの規則の施行の日にフォーラムの座長又は副座長として定められ,又は指名されたものとみなす。

   附 則(平成26年3月31日規則第193号)
 この規則は,平成26年4月1日から施行する。
   附 則(平成27年3月30日規則第104号)
 この規則は,平成27年4月1日から施行する。
   附 則(平成28年3月31日規則第98号)
 この規則は,平成28年4月1日から施行する。

裏表紙

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〒604-8571 京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488 番地  
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令和3年3月発行 京都市印刷物第023278号

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