スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市みやこユニバーサルデザイン推進指針(目次,第1章~第2章)

ページ番号269167

2021年10月22日

目次

はじめに
 1 ユニバーサルデザインの考え方
 2 本市におけるこれまでの取組
 3 京都市みやこユニバーサルデザイン推進指針策定の趣旨 

第1章 みやこユニバーサルデザインとは
 1 社会的背景
 2 みやこユニバーサルデザインで目指す社会
 3 みやこユニバーサルデザイン推進の基本理念
 4 各主体の責務や役割、相互の協力

 第2章 みやこユニバーサルデザイン推進指針の基本的考え方

 1 基本目標
 2 基本原則
 3 推進のための視点
 4 留意点

 第3章 分野別の施策の方向と取組事例

 1 みやこユニバーサルデザインの普及推進
 2 すべての人が暮らしやすいまちづくり
 3 すべての人のためのものづくり
 4 すべての人のための情報づくり
 5 すべての人のためのサービスづくり

 第4章 推進体制

 1 事業者、市民、各種団体などとの連携
 2 みやこユニバーサルデザイン審議会の設置、運営
 3 庁内推進プロジェクト体制の設置、運営
 4 指針の進行管理、評価
 5 みやこユニバーサルデザイン推進に向けた今後の取組の方向性

参考資料

はじめに

1 ユニバーサルデザインの考え方

 「ユニバーサルデザイン」は、一般に「すべての人のためのデザイン」と言われ、アメリカの建築家でノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンター所長であった、故ロン・メイス氏らによって提唱された考え方です。「すべての人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、環境をデザインすることであり、デザイン変更や特別仕様のデザインが必要なものであってはならない」と定義されています。
 今日では、年齢、性別、国籍、文化、心身の能力や状態といった人の様々な特性や違いを超えて、すべての人に配慮したまちづくりやものづくり、情報やサービスの提供を進め、だれもが生活しやすい社会環境をつくっていくという非常に幅広い意味で使われています。
 わが国でも、この考え方が企業理念や製品開発に導入されるとともに、国や自治体の施策にも積極的に採り入れられ、活発な取組が進められています。  

  
  (ユニバーサルデザインとバリアフリー)

 「ユニバーサルデザイン」と比べられる考え方に「バリアフリーデザイン」があります。ユニバーサルデザインもバリアフリー(デザイン)も、だれもが参加しやすく、暮らしやすい社会をつくるという目標は共通しています。
 バリアフリーは、日常生活や社会生活の中での様々な障壁(バリア)となるものを取り除いていこう(フリー)という考え方であり、例えば、段差解消のためのスロープやエレベーターの設置など、すでにある個々のバリアを取り除くことで、これまで行動しづらかった人々の社会参加のために成果を挙げています。バリアフリーは、物理的なバリアだけでなく、より広く法律やルールなど制度のバリア、文化活動や情報受発信のバリア、差別や無理解など意識のバリアの除去という意味でも用いられていますが、バリアがある限り、これらを取り除いていくことが重要であることに変わりはありません。
 ユニバーサルデザインは、バリアフリーの取組を更に進め、様々な人の特性や違いなどを考慮し、すべての人の利用を前提に計画、実施することで、はじめからバリアをつくらない、バリアを限りなく少なくしていこうという考え方です。

 


2 本市におけるこれまでの取組

(1)人にやさしいまちづくりの推進

 これまで本市では、だれもがバリアを感じることなく社会に参加できる「人にやさしいまち」の実現に積極的に取り組んできました。
 建築物、道路、公園、公共交通機関などの整備基準を定めた「人にやさしいまちづくり要綱」などを活用して、主に高齢者や障害のある人などの利用のしやすさを基準に、だれもが安心して円滑に利用できる施設の整備を進めてきました。
 また、高齢者や障害のある人の社会参加の支援、子どもを安心して生み、育てることができる環境の整備など、市民の安らぎのある暮らしや、安心・安全な暮らしに向けて、各種の政策を進めてきました。
 そして、障害のある人が一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであるという「ノーマライゼーション」の理念も普及しています。

(2)京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例の制定

 現在の社会は、長寿化、少子化、情報化、国際化といった社会経済状況を背景に、多様な個性や価値観を持つ人がともに暮らす、成熟した社会であるとも言われています。このような成熟した社会にあって、将来にわたって活力ある京都であり続けるためには、これまで以上に、一人ひとりの個性や価値観が尊重されるようにしなければなりません。
 本市では、このような社会経済状況を背景に、京都の生活文化に新たな視点として「ユニバーサルデザイン」の考え方を採り入れ、これまでの人にやさしいまちづくりの取組を更に一歩進めるものとして、次の考え方に沿って、今後の暮らしづくりに取り組むことが必要であると考えました。

(1)障害のある人や高齢者といった属性でとらえず、同じ地域に住み、また、歴史と文化のまち京都を訪れるすべての人にとっての様々な生活上の支障をなくしていく。

(2)建築物や道路などのハード面だけでなく、その周辺環境や、もの、情報、サービスなどソフト面でのバリアフリーを広げていくとともに、暖かく思いやりのあるこころを持った「人の行動」を進めていく。

(3)行政のみならず、事業者や市民などの主体的、積極的な取組を進めていく。

 そして、このような暮らしづくりを、本市、事業者、市民、観光旅行者その他の滞在者などが協働して進めることを目的として、「京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例」を制定し、平成17年4月から施行しました。


(京都市基本計画などにうたわれたユニバーサルデザイン)

 本市では、「京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例」を制定する以前から、ユニバーサルデザインの推進に取り組んでいました。
 平成13年に策定された「京都市基本計画」では、ユニバーサルデザインが採り入れられた建築物の整備をはじめ、学校施設、歩行空間、公共交通などの分野で、すべての人の利用に配慮した取組をうたっています。その他、「人権文化推進計画」、「障害者施策推進プラン」、新「京(みやこ)・子どもいきいきプラン」、「長寿すこやかプラン」、「都市計画マスタープラン」、「公共建築デザイン指針」など、様々な計画やプランにおいて、ユニバーサルデザインの考え方や実践の必要性を掲げ、その取組を進めてきました。

 


3 京都市みやこユニバーサルデザイン推進指針策定の趣旨

(1)目的と性格

 「京都市みやこユニバーサルデザイン推進指針」は、京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例第4条の規定に基づき、条例の趣旨を具体の行動へと橋渡しすることを目的として、ユニバーサルデザインの考え方を採り入れた施策や仕組みづくりを総合的に実施するための方向性を示すものとして、策定したものです。
 推進指針は、条例で責務や役割を定められた本市、事業者、市民、観光旅行者その他の滞在者の各主体が、各分野でどのような行動や活動を協働して進めていくのかを示すガイドラインとしての性格を有しています。

(2)推進指針の構成

 この推進指針では、第1章で「みやこユニバーサルデザイン」の考え方を、第2章で基本目標、原則、視点など「みやこユニバーサルデザイン推進指針の基本的考え方」を説明した上で、具体的な進め方として、第3章「分野別の施策の方向と取組事例」、第4章「推進体制」を掲げています。また、巻末に審議会委員名簿、用語集などの「参考資料」を掲載しています。

第1章 みやこユニバーサルデザインとは

1 社会的背景

(1)長寿社会の進展

 わが国の65歳以上の高齢者人口比率は、19.9%(平成17年7月推計人口)となっており、京都市では、それを上回る率(20.1%)で高齢化が進行しています。高齢化は今後も加速し、平成26年には26.5%と市民の4人に1人は高齢者となることが予測されています。  加齢により身体的機能が低下し、自力で思うように行動しづらい人が増えていく中で、日常生活に不便や不自由を感じることのない社会づくりが求められています。

(2)少子化の進展

 女性が一生の間に生む子どもの数の動向を示す合計特殊出生率は、年々減少しており、平成15年のわが国では、人口の維持に必要とされる2.08を大幅に下回り、1.29となっており、京都市では、それを更に下回る1.14となっています。
 子どもを安心して生み育てることのできる、子育てしやすい生活環境づくりを進めるため、まちづくりやものづくりなどに、妊産婦や子ども連れ、子どもの立場からの取組が求められています。

(3)障害のある人の自立と社会参加の支援

 障害のある人が自己選択と自己決定の下に、社会のあらゆる活動に参画できる社会環境づくりが求められています。
 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害といった違いにかかわらず、障害のある人の活動を制限し、社会への参加を制約することのないよう、バリアのない生活環境を整えるとともに、障害のある人が自らの能力を最大限発揮し、自己実現できるよう支援するための諸施策の推進が求められています。

(4)国際化の進展

 京都市における平成16年12月末の外国人登録者数は、約4万3千人で、京都市人口の約3%となっています。国籍(出身地)は、韓国及び朝鮮、中国、アメリカ、フィリピンなど様々です。また、平成16年の宿泊施設利用外国人客数は、約54万4千人となっています。
 外国籍市民、ビジネスや観光で来訪する人など、言語や文化、風習の違う人々にとっても、暮らしやすく訪れたくなる環境づくりが求められています。

(5)情報通信技術(IT)の飛躍的発展

 近年のパソコンやインターネット、携帯電話などの情報通信技術(IT)の飛躍的な発展により、だれもがいつでも情報を発信し、様々な情報を容易に手に入れることが可能になっています。
 ITは、移動や言葉によるコミュニケーションが困難な人にとって、情報を容易に伝達したり表現能力を高める手段になっていますが、一方で、情報活用の格差(デジタルデバイド)といった現象が指摘されています。

(6)産業の活性化

 今日、ユニバーサルデザインの考え方が、ものづくりやサービスの分野で急速に浸透してきています。これは、社会的責任や顧客満足度の向上を掲げる企業にとって、ユニバーサルデザインの推進が、企業価値を高めていくための有効な手段として捉えられているためと考えられます。

 ユニバーサルデザインの考え方を採り入れたものづくりやサービスを進めることによって、産業の活性化や新規産業の可能性が大きく広がることが期待されます。

(7)国における取組の推進

 国においても、これまでから「ハートビル法」や「交通バリアフリー法」の制定などにより、バリアフリーのまちづくりが進められてきましたが、近年、まちのバリアフリー化だけでなく、生活環境、教育、情報、製品などの分野を含んだバリアフリー化推進の動きが見られます。
 平成17年7月には、国土交通省において、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえて、ハード・ソフトの両面から、生活環境や連続した移動環境の整備、改善を継続して進めることを目的とした「ユニバーサルデザイン政策大綱」が策定されました。

2 みやこユニバーサルデザインで目指す社会

 21世紀の最初の四半世紀における京都のグランドビジョンを描いた「京都市基本構想」(平成11年12月策定)は、その一節である「すべてのひとがいきいきとくらせるまち」の冒頭において、次のように述べています。

【「わたしたち京都市民は、子どもも高齢者も、女性も男性も、障害のあるひともないひとも、また国籍や民族、生まれや生い立ちに関係なく、すべてのひとが自分の居場所を確認し、自己の資質を十分に発揮しつつ、いきいきと活動できる場所と機会に恵まれたまちをめざす。」】

 本市では、年齢、性別、国籍、文化、心身の能力や状態といった人の様々な特性や違いにかかわらず、だれにとっても安全、簡単、快適、最適であることを目指すユニバーサルデザインの考え方は、「すべての人がいきいきとくらせる」社会環境づくりのための基本的な理念や手段となり得ると考えます。

 また、「京都市基本構想」の一節、「これからの京都市民の生き方」の一文では、「わたしたち京都市民がこれまで細心の注意を払って築き上げてきたくらしとものづくりのあり方や自治の伝統を、こうした将来のまちづくりに大いに活用していきたい。」と述べています。

 このため、本市では、このような連綿と続く京都の生活文化に、新たな視点として、ユニバーサルデザインの考え方を採り入れた社会環境づくりである「みやこユニバーサルデザイン」を推進することが必要と考えました。
そして、「京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例」の前文では、

【今日の社会経済情勢の変化の中で、京都が有する多様かつ豊かな蓄積にユニバーサルデザインを採り入れた「みやこユニバーサルデザイン」を総合的に推進することにより、すべての人が個人として尊重され、その能力を最大限に発揮できる、将来にわたって活力に満ちた社会を実現する)】

ことを決意し、条例を制定する。としています。


(京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例(前文))

 ここ京都では、長い歴史の中ではぐくまれてきた支え合いの精神、芸術、技術等の京都が有する多様かつ豊かな蓄積により、個性豊かで先駆的な生活文化を生かした活力ある社会が築かれてきた。
 このような京都が、情報化、国際化、少子長寿化その他の社会経済情勢の変化の中で、将来にわたって、活力ある社会を形成し続けるためには、市民一人一人の多様な価値観や暮らし方が尊重されるようにしなければならない。
 これまでも、本市においては、自治の伝統、もてなしのこころ、ものづくりの文化その他の京都固有の文化を生かしながら、高齢者や障害者の社会参加への支援、子どもを安心して生み、育てることができる環境の整備、建築物のバリアフリーの促進その他の多様な考え方や生き方が尊重される社会の実現に向けた歩みを進めてきた。
 その歩みをより強く確実なものにしていくためには、京都が有する多様かつ豊かな蓄積にユニバーサルデザインを採り入れ、年齢、性別、言語、習慣、心身の状態にかかわらず、すべての人にとってできる限り生活しやすい社会環境の整備に積極的に取り組む必要がある。
 ここに、本市は、みやこユニバーサルデザインを総合的に推進することにより、すべての人が個人として尊重され、その能力を最大限に発揮し、心豊かに、生きがいを持って、安心で安全な生活を営むことができるとともに、将来にわたって活力に満ちた社会を実現することを決意し、この条例を制定する。

3 みやこユニバーサルデザイン推進の基本理念

 京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例は、みやこユニバーサルデザインを推進する上で、踏まえておくべき5つの基本的な理念を定めています。

1 一人一人の個性を理解し、尊重すること

 多様な人の特性や行動、様々な生活上の支障となるものを認識し、互いを尊重し合う社会を目指すことが、ユニバーサルデザイン推進の出発点です。

2 健康の保持増進その他福祉の増進を図ること

 「すべての人の利用しやすさ」を目指す上で、身体機能の低下を招かないといった、人の健康を損なわないように留意することが必要です。

3 安心で安全な生活を確保すること

 どのような状況でも、まず人の安全が確保される、安心できる生活や社会環境をつくりあげていくことが必要です。

4 環境に配慮すること

 様々な人や将来の利用を想定して取り組む上で、可能な限り、環境への負荷を低減させるように留意することが必要です。

5 ユニバーサルデザインの推進に関する国際社会の取組と協調すること

 個性豊かで先駆的な京都の生活文化を生かした取組を、国際社会におけるユニバーサルデザイン推進との協調のもとに進めることが必要です。

4 各主体の責務や役割、相互の協力

 京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例は、本市、事業者、市民、観光旅行者その他の滞在者の責務や役割を定めるとともに、各種団体、大学などとの相互の協力により、みやこユニバーサルデザインを推進することを定めています。また、この推進指針の「第3章 分野別の施策の方向と取組事例」では、普及推進、まちづくり、ものづくり、情報づくり、サービスづくりの各分野で、責務や役割を定めた本市、事業者、市民、観光旅行者その他の滞在者ごとに、具体的な取組事例を掲げています。 

(「気付き」のための姿勢~ユニバーサルデザインは、あなたとわたしの間から~)

 ユニバーサルデザインは、一人ひとりの「自分と違う立場の人に気付き、思いやるこころ」からはじまります。健康な人にとっては何でもない階段やドアノブが、高齢者や子どもなどにとって大きな障壁になっているかもしれません。こうしたことに気付くには、一人ひとりの考え方を変えていかなければなりません。
 「自分にとって当たり前」のことでも、「すべての人にとって当たり前」なのか、「未来の自分や周りの人にとって当たり前」なのかどうかということを日々の生活の中で常に問い直す姿勢や考え方をもつ必要があります。
 ユニバーサルデザインは、あなたとわたしの間からはじまります。

第2章 みやこユニバーサルデザイン推進指針の基本的考え方

 条例の考え方を踏まえて、みやこユニバーサルデザイン推進によって目指す社会を、みやこユニバーサルデザイン推進指針の基本目標として定めるとともに、この目標を達成するための基本原則、視点、留意点を次のとおりとします。

1 基本目標

 「京都の豊かな蓄積を資源として、国際社会の取組との協調を図り、すべての人が個人として尊重され、その能力を最大限に発揮できる、活力に満ちた社会の実現」

 ユニバーサルデザインの考え方を採り入れ、すべての人々が、人の様々な特性や違いを理解し、認め合うこと、相手を思いやり、互いに尊重し合うことで、それぞれが自己の持てる能力や可能性を最大限発揮し、社会生活全般にわたって、自らが望む生活を選択できる、活力に満ちた社会を目指します。
 ユニバーサルデザインの考え方を採り入れるに当たっては、京都が長い歴史の中ではぐくんできた、人々の支え合い、ものづくりの精神、芸術、技術といった個性豊かで先駆的な生活文化を生かすとともに、国際社会におけるユニバーサルデザイン推進との協調を図ることとします。

2 基本原則

「交流と協働による暮らしづくり」

 ユニバーサルデザインは、「すべての人が利用しやすい」を目指す考え方であり、計画、実施などの各段階で、多くの人が参画し、様々な意見を出し合いながら、ともに考え、つくりあげていく過程やその姿勢が重要であり、そのための交流と対話(コミュニケーション)を重視します。
 より多くの人にとって、より利用しやすいデザインを目指すためには、提供者と利用者などの関係者間で、交流と対話(コミュニケーション)を通じて、課題やニーズを把握することが必要です。交流と対話を重ねることにより、お互いの主張や意見の相違を認め合い、歩み寄り、解決策を見出すことができます。
 また、まちづくり、ものづくり、情報、サービスといったあらゆる分野においてユニバーサルデザインを進めていくためには、行政だけでなく、多くの人の主体的な参加によって、互いに協力していくことが不可欠です。このため、本市、事業者、市民、滞在者、NPOなどの活動団体、大学、研究機関が連携、協働して、社会全体でみやこユニバーサルデザインを進めていく必要があります。

3 推進のための視点

(1)視点1 「すべての人に安全」

  自然災害、凶悪犯罪、健康や食の安全を脅かす問題など、様々な危機の発生するおそれがある今日の社会では、何よりも生活上の安全の確保が求められています。
 間違いや危険をできる限り防止するよう配慮され、うっかりした行動や意図しない動作をしても、大きな事故につながらないなど、どのような状況でもすべての人が安全に利用できるという視点です。
 

(2)視点2 「すべての人に簡単」

 複雑、多様化、高度化している今日の社会では、施設や製品といった有形のものだけでなく、情報やサービスといった無形のものも含めて、あらゆる「もの」や「こと」ができるだけ簡単であることが重要です。
 利用方法や内容がすぐにわかる、直感的に理解しやすいなど、利用する人の知識や経験などにかかわらず、すべての人にとって利用しやすい、分かりやすいという視点です。
 

(3)視点3 「すべての人に快適」

 生活の質が問われる社会では、様々な工夫がさりげなく、しかも利用したいと思わせるような美しさを備えた魅力的なデザインが求められるのも事実です。
 できるだけ楽な姿勢や十分なスペースといった使い勝手の良さがあり、だれもが心理的な抵抗や身体的負担を感じず、さりげなく自然に利用できるという視点です。
 

(4)視点4 「すべての人と状況に最適」

 私たちは、年齢、性別、体格、心身の能力、言語などあらゆる面で一人ひとりが異なっており、かつ時間の経過や様々な状況の変化によって差異を生じるため、それらの違いや変化に対応した最適な解決策をあらかじめ考えておく必要があります。
 一人ひとりの特性やそのときどきの状況に合わせて使い方が選べたり、できるだけ多くの人と状況に対応できるという視点です。

4 留意点

(1)利用者重視

 製品、建物、情報、サービスなどの利用しやすさの基準は、利用する人が決めるものです。利用者にとって使いやすいものであるためには、利用者が何を求めているのか、今あるもののどこに不便を感じているのかを徹底して把握する姿勢が大切です。
 

(2)検証と改善の絶え間ない取組(スパイラルアップ)

 ユニバーサルデザインは、すべての人にとって、より良いものに変えていこうという考え方であり、デザインの過程が重要です。逆に言えば、一定の水準を達成しさえすればよいというものではなく、唯一、これが完全なユニバーサルデザインというものがあるわけでもありません。
 例えば、建物や製品が完成した時点では最良のものであっても、技術向上や利用者のニーズの多様化などによって、あるいは時間の経過とともに、利用しにくく感じたり、もっと利用しやすい方法が見つかるかもしれません。
 また、製品やサービスをかたちにしようとするときに、これまでに行われた類似の取組で明らかになったこと(技術、知識、そこでは解決できなかった問題点、利用する段階で発生した問題点など)を、次の類似の取組での改善に活用していくことも重要です。
 このように、ユニバーサルデザインの考え方に基づいて、常に点検、検証し、見直しや改善を行い、時間の経過とともに更に良いものへと進化していく、段階的かつ継続的な発展(スパイラルアップ)の仕組みが重要です。


(3)地域特性への配慮

 ユニバーサルデザインの考え方を採り入れるということは、必ずしも、全国的、更には世界的に画一的なものを目指すことではありません。ユニバーサルデザインの考え方でより良いものを生み出し、またユニバーサルデザインを地域に根付かせるためには、地域の特性に合うようにすることが必要です。
 京都には、長い歴史の中ではぐくまれてきた、ものづくりの文化、もてなしのこころ、支え合いのこころが連綿と続いています。また、京都は、山紫水明の自然に恵まれ、世界に誇る文化遺産などの蓄積があり、それらの中には、法的、構造的、文化価値的などの理由から、物理的なバリアを取り除くことが困難なものもあります。取り除けない物理的なバリアは、京都ではぐくまれてきた市民の「こころ」や「行動」で、克服することも重要です。
 

(4)ユニバーサルデザインはみんなのため、自分のため

 ユニバーサルデザインは、「人は多様である」という認識が出発点です。人は、年齢、性別、体格、心身の能力、言語など、あらゆる面で一人ひとりが異なっています。赤ちゃんからお年寄り、男性と女性、右利きの人左利きの人、身長の高い人低い人、身体的機能の高い人低い人、国籍の異なる人など様々です。
 また、人生の中で、ケガ、病気、事故、出産などにより日常的な動作に苦痛を感じることもありますし、年齢を重ねるにしたがい視力や筋力の衰えなど身体機能が低下し、日常生活に不便や不自由を感じたりすることが一般的です。
 様々な人々がともに生活する今日の社会では、多数を占める「平均的な人」を標準として設定していたこれまでの種々の社会システムを見直し、多様な人々の利用を前提として、できる限り多くの人が生活しやすい環境づくりを進めていくユニバーサルデザインの考え方が非常に重要です。
 また、これまでの「人にやさしいまちづくり」の取組が、高齢者や障害のある人などの利用のしやすさに基準を置くことで、特別な人への特別な配慮であるといった理解にとどまってしまっているという側面もあります。
 自分以外の人には不便なもの、不便なことがあるかもしれません。今、自分が不便を感じていない「もの」や「こと」であっても、未来の自分にとって不便に感じることがあるかもしれません。ユニバーサルデザインの推進は、他人ごとではなく、自分自身の問題とすることが大切です。

(「できるところから」「ちょっと工夫」)

 すべての人のニーズを満たすということは、実際はほとんど不可能なことかもしれません。むしろ、ちょっとした気付きや配慮で、より多くの人にとって使いやすくなるということのほうが現実的でしょう。
 ユニバーサルデザインは、身の回りの利用しにくいものに気付き、「できるところから」「ちょっと工夫」することを求めているとも言えます。

*京都市みやこユニバーサルデザイン推進指針(テキスト版)(第3章~第4章、参考資料)

お問い合わせ先

京都市 保健福祉局障害保健福祉推進室

電話:075-222-4161

ファックス:075-251-2940

フッターナビゲーション