上賀茂伝統的建造物群保存地区保存計画
ページ番号281306
2021年3月12日
昭和63年5月26日京都市告示第65号
京都市教育委員会告示第3号
京都市伝統的建造物群保存地区条例第3条に基づき上賀茂伝統的建造物群保存地区(以下「保存地区」という。)の保存に関する計画を次のように定める。
1 保存地区の保存に関する基本計画
(1)発祥と沿革
洛北,上賀茂神社の境内を流れる清流ならの小川が境内を出ると明神川と名を変えて東に流れる。このあたりは,室町時代から上賀茂神社の神官の屋敷町として町並みが形成されてきたところである。
明治維新までの旧集落は,上賀茂神社の神官(社司と氏人)と農民が集住する特殊な性格を持つ集落であった。そこで一般に社家町とよばれるようになった。明治以後は京都の近郊農村的性格を徐々に強め,社家町の性格は薄らいでいった。
しかし,ここ明神川沿いには今日も社家が旧来のまま連担し,他所で滅びた貴重な社家町が清々しく残っている。
(2)現況及び保存に関する基本的な考え方
当地区は,明神川に架かる土橋,川沿いの土塀,社家の門,妻入りの社家,土塀越しの庭の緑,これらが一体となって江戸期にできた社家町の貴重な歴史的風致を形成している。
当地区の伝統的建造物の特徴を述べると,社家の住宅は,主屋は切妻平屋建て桟瓦葺が原則で妻入りのものと平入りのものがある。妻入りの場合には庇を付け,妻壁に独特の妻飾りをみせる。町家は,平入りで少したちを高くして2階に居室を設けるが,正面は,つしとし,じゅらく又はしっくい塗りの壁にむしこ窓を設け,柱と貫とで飾っている。また,本2階建てに建て替えられている町家も見受けられる。
現在,当地区の建造物は52戸で,このうち伝統的建造物群を構成している伝統的建造物は,約63パ-セントである。
これらの伝統的建造物は,社家と町家の様式に大別できる。社家主屋の妻飾りに多少のバリエ-ションが見られるが全体の屋敷の構成はほぼ同じ様式である。特に明神川から前庭の池に取り入れた水を清いままで,また,元の明神川に返す水を通しての連帯ができているのが珍しい。
近年,周辺の区画整理事業なども完成し,これに伴い,一般住宅やアパ-トの建設が迫ってきている。そこで,この優れた上賀茂社家町の町並みを,そのまま修理あるいは修景することにより,当地区の伝統的建造物群の特性を保存し,良好な近郊住宅の環境の保全を図るものである。
(3)概要
当地区内において,伝統的建造物群の特性を維持していると認められる約63パ-セントの建造物を伝統的建造物と定める。
伝統的建造物については,主としてその外観を維持するため修理を実施し,伝統的建造物以外の建造物等については,当地区の伝統的建造物群の特性と調和するよう修景を実施するものとする。そのほか,当地区の保存のため必要な施設及び設備並びに環境の整備を行うとともに,地区の保存のため必要と認められるときは,建造物等の修理修景等に要する経費の一部について京都市伝統的建造物群保存地区補助金交付規則により補助するものとする。
2 保存地区内における「伝統的建造物」及び「伝統的建造物群と一体をなす環境を保存するため特に必要と認められる物件」の認定
(1)伝統的建造物
社家及び町家の伝統的様式の外観を持つもので,伝統的建造物群の特性を維持していると認められるもの (図-1,表-1)
(2)伝統的建造物群と一体を成す環境を保存するため特に必要と認められる物件明神川の石積みの護岸並びに明神川に架かる土橋,板橋,石橋並びに樹木及び前庭 (図-1,表-2)
3 保存地区内における建築物等の保存整備計画
(1)保存整備の考え方
建築物等の保存整備に当たっては,次に揚げる当地区の伝統的建造物群の特性に応じて行うものとする。
特 性
明神川の清流,これに架かる土橋及び石橋。これを渡っての門,社家主屋の妻飾り,川沿いの土塀,土塀からのぞく緑,これらの構えや本2階建て町家などの連なりが全体として上賀茂神社の社家町らしい伝統的なたたずまいを示している。
(2)保存整備計画
ア 伝統的建造物については,主としてその外観を維持するため次に定める基準(表-3)により修理を実施するものとする。ただし,基準に規定のないものについては,その建造物固有の様式に従い修理を実施するものとする。
イ 伝統的建造物以外の建造物等については,当地区の伝統的建造物群の特性と調和するようアに定める基準(表-3)に準じて修景するものとする。
ウ 社家にあっては,敷地内の伝統的な建造物や庭などの配置の特性を保存するものとする。
4 保存地区内における建築物等及び伝統的建造物群と一体をなす環境を保存するため特に必要と認められる物件に係る助成措置等建造物等の修理,修景,復旧及び管理に要する経費の助成については,市長が定める。
5 保存地区の保存のため必要な管理に関する施設及び設備並びに環境の整備
(1)当地区の要所に伝統的建造物群保存地区であることが分かる標識又は説明板を設置するものとする。
(2)当地区の防災面の向上を期するため,必要箇所に防火水槽などの消防水利,その他の消防活動上必要な設備を整備する。
図-1・表-1
伝統的建造物
(位置を示す 図1,個別の情報 表1は共に省略)
図-1・表-2
伝統的建造物群と一体をなす環境を保持するため特に必要と認められる物件
(位置を示す 図1,個別の情報 表2は共に省略)
様式 | 材料 | 色彩 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 構造 | 屋根及びひさし | 壁面 | |||
社家 | 豕扠首様式 | 木造真壁造りで平屋建てとする。 | 屋根ひさし共に,日本瓦葺で切妻とする。軒裏は垂木及び野地板をみせる。 | 妻面に豕扠首をくみ,その上に斗をのせ棟木をうける。妻壁は白しっくい塗りとする。 | 柱は桧またはこれに準ずる材で,木部の見掛りは,上小節以上とする。 | 木部は生地仕上げまたはべんがら塗とする。 |
束貫様式 | 同上 | 同上 | 妻面に束と貫を縦横にくみあわせる。裏面は,白いしっくい塗りとする。 | |||
町家 | 和風住宅様式 | 木造真壁造りで平家建てまたは2階建てとする。 | (1)屋根,入母屋で日本瓦葺とし,屋根裏は垂木及び野地板をみせ,すだれ掛付きとすること。 (2)ひさしは日本瓦葺とし,ひさし軒裏は,垂木及び野地板を見せるものとすること。 | (1)壁は,京壁とすること。 (2)1階は,ガラス格子引違戸,下地窓または下地欄間及び腰すぎ板張りによって構成すること。 (3)2階は,手すり付き掃き出し窓,欄間及び数寄屋風戸袋によって構成し,すだれをかけること。 | 同上 | 同上 |
むしこ造り町家土間店舗様式 | 木造真壁造りで,中2階建てとし,平入形式とする。 | 屋根,ひさし共に日本瓦葺で切妻とする。軒裏は,垂木及び野地板を見せる。 | 壁はしっくい塗または京壁とし,腰は羽目板よろい張りとする。1階は出格子戸,平格子及び引込格子戸によって構成する。2階はむしこ窓をつける。ただし,1階は腰高障子戸または格子戸及び戸袋によって構成する。 | |||
中二階建て町家店舗様式 | 同上 | 同上 | 壁はしっくい塗または京壁とし,腰は羽目板よろい張りとする。1階は出格子戸,平格子及び引込格子戸によって構成する。2階は平格子及びむしこ窓によって構成する。ただし,1階は腰高障子戸または格子戸及び戸袋によって構成する。 | |||
本2階建て町家住居様式 | 木造真壁造りで,中2階建とし,平入形式とする。2階壁面は1階壁面より後退とする。 | 屋根は,ひさし共に日本瓦葺で切妻とする。軒裏は,垂木及び野地板を見せる。 | 壁はしっくい塗または京壁とし,腰は羽目板よろい張りとする。1階は出格子戸,平格子及び引込格子戸によって構成する。2階は平格子及びむしこ窓によって構成する。 | |||
本2階建て町家土間店舗様式 | 同上 | 同上 | 同上。ただし,1階は腰高障子戸または格子戸及び戸袋によって構成する。 | |||
平家建町家住居様式 | 木造真壁造りで下屋付平屋建とし,平入り形式とする。 | 同上 | 壁はしっくい塗または京壁とし,腰は羽目板よろい張りとし,出格子,平格子及び引込格子戸によって構成する。 |
2 へいの様式,材料及び色彩の基準
様式 | 材料 | 色彩 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 構造 | 屋根 | 壁面 | |||
塀 | 土塀 | 下地材を泥土で塗り固める。 | 屋根は日本瓦葺とする。 | 土塗り壁とする。 | 泥土(しっくいは塗らない) | 黄土色 |
3 門の様式,材料及び色彩の基準
様式 | 材料 | 色彩 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 構造 | 屋根 | そで壁 | |||
門 | 薬医門 | 木造で,門柱及び控え柱により屋根を支える。 | こう配屋根を付け,日本瓦葺とする。 | 木造の見掛りは,上小節材とする。 | 木部は生地仕上げまたはべんがら塗とする。 | |
腕木門 | 木造で,腕木によって屋根を支える。 | 同上 | そで壁は,屋根小壁付和風板塀とする。 | 同上 | 同上 | |
数寄屋門 | 木造で,杉皮張りの引違い戸を設ける。 | 屋根は日本瓦葺とし,すそを銅板一文字葺とする。 | そで壁は,杉皮張りとする。 | 同上 | 同上 | |
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