スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市教育委員会

言語選択を表示する

検索を表示する

スマートフォン表示用の情報をスキップ

第1次答申 2

ページ番号6333

2012年12月25日

 

2 21世紀に向けた京都市立高等学校の在り方

 

 京都は,世界に誇りうる歴史と伝統をもつ都市である。京都市立高等学校は,その中に存在しているのであって,その点から教育の在り方を考察することが必要である。また,市民の教育に対する期待と要請によって設立された公立高等学校としての使命を決して忘れてはならない。

 京都市立高等学校は,普通科,及び商業・工業・美術工芸・音楽に関する専門学科と多岐にわたっており,開校以来それぞれの独自性を発揮してきた。生徒に対して,選択の機会を多くすることは,公立高等学校の責務であり,またその選択に伴う期待に応えることは,公立高等学校としての使命である。生徒の興味・関心,適性,能力,進路等の多様化が進む中で,就職についても進学についても,生徒の希望する進路の実現に向けて,京都市立高等学校の教育活動全般にわたる一層の取組の推進が必要である。
 明治期からの歴史において,京都市立高等学校は,それぞれの時代に応じた市民の直接的な要請に応えてきている。社会の変化に的確に対応しつつ,個々の生徒の適性,能力等に応じた教育活動を展開し,社会の進展に寄与してきた。その基調には,伝統を守りつつ新しいものに積極的に取り組む進取の精神が見られる。このことは激しく変化する社会にあって,極めて重要な教訓である。
 京都市立高等学校は,いずれも市民の教育への情熱によって設立されてきたものであり,市民の要請や期待から離れて存在することはできない。生徒個々の基礎基本の充実と個性の伸長を図るとともに,あらゆる教育活動の場で,人とのふれあいを通して他者を思いやるやさしさが涵養されなければならない。
 また,人づくりは京都のまちづくりの基盤である。京都の未来を創造するという観点も忘れてはならない。一方,大学・短期大学への進学率が高等学校卒業者の4割を超え,しかも全国的に志願者の多い大学への進学者が一部の私立高等学校に集中している現状も直視しなければならない。京都市立高等学校においては,生徒・保護者の期待する充実した高校生活を保障するとともに,確かな進路を実現するための教育の在り方についても,一層の追求が必要である。
 新しい高等学校の教育を進めるためには,それにふさわしい教育施設等の物的教育条件についてもその整備が急がれなければならない。京都市立高等学校は,その沿革を明治期にさかのぼるものが半数以上あり,京都市における先人の教育にかける情熱・努力を窺うことができる。しかしながら現在は,建築後60年を超える校舎も多く,その大半が建替期を迎えるに至っている。
 京都市においては,第2次ベビーブームと呼ばれる児童・生徒の急増期に,義務教育諸学校の新設などの事業を推進してきたが,今日では,少子化傾向などとあいまってその新築・増築需要が少なくなってきている。高等学校については,生徒数の増加に対応するため,校舎増築などを行ってきたが,今後は施設設備等についても量から質への転換を進め,一層多様化する生徒の個性を伸長する必要がある。京都府立・私立高等学校においては,生徒の減少を踏まえ,施設設備の充実を図っているところであり,京都市立高等学校においても,建替・新築を含む抜本的な施設設備の早急な改善が求められている。
 これらの建替・新築事業を実施するにあたっては,画一から多様への転換を図り,新しい時代の要請に応じ,「校風創生」の契機ともなり得る施設設備の充実が必要である。すなわち,教職員と生徒,生徒相互の豊かな人間的ふれあいを育む空間としての学校の機能をより高めることはもとより,生涯学習の時代に対応する地域開放型施設の設置,人と環境に配慮した施設・機能の整備,建物としての安全性はもとより,高度な防災機能を備えた施設・機能の整備を図ることなどが求められる。
 なお,これらの教育内容と施設設備を基に,魅力ある教育を推進していくためには,教育水準の維持と高度化が必須条件となる。そのためにも教職員の一人ひとりが研鑽を積むとともに,資質の向上のため,必要な研修を積極的に行わなければならないことは言うまでもない。

 

 

Ⅰ 社会の変化や生徒の多様な実態に対応した魅力ある新しい京都市立高等学校の教育の在り方について

 

(1) 専門教育の新たな展開を中心にした特色ある学校づくりの推進

 

①現行専門学科の充実
 京都市立高等学校は,職業専門学科・芸術系専門学科など,専門教育に永い歴史と伝統を持っている。

 それぞれの高等学校がその時代時代の京都市民の期待と要請を的確に把握し,それに応えるとともに,先駆的な教育活動を行ってきている。

 現行専門学科については,現在進められている各学校での討議を十分に踏まえながら,その歴史と伝統を引き継ぎ,21世紀を展望した一層の専門教育の充実・発展を目指して取り組んでいくことが求められる。

 
②学力の伸長と個性の伸長を図る新たな専門教育の創造
  国際化の進展の中で紫野高等学校普通科に「英文系」が,日吉ヶ丘高等学校には「英語科」が設置された。

 これは国際化に対する市民のニーズに応えるとともに,従来の職業・芸術系の専門教育とは異なり,普通教科を充実発展させ,社会の急激な変化にも対応し,生涯にわたっての自己教育力の育成を図るものであり,普通教科である「英語」に重点を置いた新しい専門教育の一つの在り方を提示してきた。これらの成果をふまえ,国語,数学,外国語(英語)などの基礎的な普通教科の内容をより高度化・深化させることによって,生徒の個性と学力の伸長を図り,後期中等教育と高等教育を橋渡しする専門教育の充実・発展を期す取組が必要である。 

 

(2) 理科・数学離れや活字離れなどの今日的課題の解決


 科学の高度な発達は,われわれの生活に多大な恩恵を与える一方で,それからの疎外を進行させている。その現れの一つとして挙げられるのは,先端の機器を身近にして自在に操作しながら,その構造や原理に関わる理科や数学に対する関心の少ない子どもたちの増加である。
 また,子どもたちは高度情報化の影響を大きく受けている。情報量の増加と情報伝達の高速化は,じっくり物事に取り組む姿勢を軽視する傾向と深く関わっている。視覚や聴覚に訴える情報の増大は,生活の範囲と可能性を飛躍的に拡大したが,他方で,活字離れを助長している側面もある。「言葉が痩せてきている」という指摘がある。読書によって自分の世界を構築し,修正し,時に破壊もし,再び構築するなかで自己を成長させるという重要な過程が失われつつある。
 わが国の文化や科学を継承し発展させていく上でも,こうした理科・数学離れや活字離れなどの今日的課題に対する取組は極めて重要である。
 高等学校においては,科学技術の恩恵を享受し積極的に活用するとともに,課題の克服のため常に現状を見つめ改善する多面的な教育形態が重要である。これまでの講義に偏した学習形態を見直し,実感と成就感をもって理解を深めることができるように,生徒自らの実体験を重視した学習形態を導入することが求められる。

 

(3) 学力の伸長と個性の伸長の調和をめざした特色ある学校づくりの推進


 少子化の進行は学校教育に大きい影響を与えるが,生徒一人ひとりを大切にし,学力の伸長と個性の伸長の調和を図る教育をめざすという点からは,教育改革・改善の契機としてとらえることができる。科学技術の高度化や情報化は,個に応じた教育システムへの改善の可能性を高めている。
 個を生かす多目的に使える教育施設,高度な教育機器の活用,科目履修における選択幅の拡大,高度な専門的教育に触れる機会の設定,生徒に他の高等学校の科目を受講する機会を与え,その学習の成果を自校の科目の単位として認める学校間連携,「普通教科」に着目した専門学科の設置など,生徒の興味・関心や目的意識などに的確に応え,時代と社会の変化に対応して,一人ひとりの個性を尊重し,その適性・能力や希望に応じた進路を保障しうる教育を進めていかなければならない。その際,次の諸点について,具体的な検討が必要である。

 

① 生徒の個に応じた柔軟な教育システム

② 啓発的経験学習,課題解決学習など生徒の主体的活動を重視した学習活動の展開

③ 地域と結びつき,地域に開かれた学校と教育活動の展開


 

Ⅱ 特色ある京都市立高等学校の教育にふさわしい施設等の教育条件について

 

(1) 高度情報化にも対応し,特色ある多様な教育が可能となる施設等
 京都市立高等学校の建替・新築事業を推進するにあたっては,その立地条件等を踏まえ,敷地の有効利用を図ることが重要である。また,京都市立高等学校の新たな教育内容に対応し,生徒一人ひとりの興味・関心,適性,能力,進路希望に基づく主体的な学習を促し,それぞれの個性と能力を最大限に伸長させることができるよう,インターネットなどを利用できるニューメディア対応設備など,高度情報化時代にふさわしい施設内容を取り入れ,高機能かつ多機能な学習空間の整備を図る必要がある。

(2) 生涯学習時代にふさわしい魅力ある新しい学校像
 1200年の歴史に育まれた京都のまちは,国際的なレベルの学術・文化・芸術等に関する学習資源が集積しており,大学,博物館施設,外国文化センター等多彩な機関が,市民の学習機会を創出している。また,地域に身近に存在する小・中学校は,「学校開放」によって市民が気軽に利用できる学習や交流の拠点となっている。
 京都市立高等学校は,市民の期待と要請のもとに発展してきた経過から,あらゆる世代の市民にとって身近な学習・交流の拠点であるとともに,個々の学校が持つ特色を生かした専門性の高い教育機能を市民に還元していくことが求められる。単に,体育館や校舎施設等の開放だけでなく,質的にもよりグレードの高い,いわばコミュニティカレッジとも言うべきさまざまな活動の場として,学習文化活動,スポーツ・レクリエーション活動,ボランティア活動など,その学校の特色に応じた生涯学習活動を可能とする施設・機能が必要である。
 なお,その際,学校は生徒の学習の場であるという本来の機能に十分留意しながら,市民が利用しやすい条件整備を図るとともに,効率的な運営が図れるよう,市民と学校が協力し合い学び合う体制づくりが必要である。

(3) 人と環境に配慮した施設・機能の整備
 生徒と教職員や,生徒同士の憩いの場,語らいの場としてのオープンスペース,カフェテラスや,生徒と地域の住民とのふれあいの場など,うるおいある環境の整備を図り,魅力ある学校としなければならない。
 また今日,地球規模での環境問題が提起される中,エネルギーシステムをはじめとした「人にやさしい」快適な街づくりは重要な課題である。「エネルギーの有効利用」,「リサイクルの促進」,「緑化促進」,「水資源の有効利用」など地球環境の保全に加えて,周辺環境との調和を図り,身体に障害のある人等への配慮も含めた施設・機能の整備が必要である。

(4) 耐震性などを備えた防災拠点としての整備
 先の阪神・淡路大震災がもたらした未曾有の被害を教訓に,国をはじめとして地域防災計画の見直しがなされているところであるが,中でも,学校建物の耐震能力を強化し,生徒の安全確保を図ることは緊急の課題である。
 また,学校が地域住民の避難収容施設等としての重要な役割を果たしたことからも,学校における防災機能の整備の必要性がさらに求められており,その強化を図る必要がある。

(5) 建替期を迎えている高等学校の校舎新築整備計画
 建替・新築計画の策定にあたっては,21世紀を展望した当該校の創生への具体的プログラムの策定を前提とし,それを効果的に実現しうるものとすべきである。校舎新築の物的緊急度については,単に校舎の建築年次だけでなく,学校全体の老朽建物面積の比率に応じるのが妥当であり,戦前に建築された60年以上経過する老朽建物の保有率が,堀川高等学校においては極めて高く,西京商業高等学校,銅駝美術工芸高等学校がそれに続くことを考慮すべきである。
 なお,現在,京都市において小学校統合跡地について,その活用が検討されているところであるが,高等学校の校舎新築に際して,その施設設備の充実を図るため,近隣の統合跡地を最大限に活用することが必要である。

 

 

<戻る  目次へ  次へ>

お問い合わせ先

教育委員会事務局 指導部 学校指導課
電話: 075-222-3811 ファックス: 075-222-3759