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パネルディスカッション

ページ番号47608

2011年11月22日

「地域とマンションとの共存に向けて」

 

<パネラー>
○明倫まちづくり委員会
 委員長 井上成哉氏
○本能まちづくり委員会
 苅谷謹子氏
○豊園自治連合会
 総務理事 柴 佳伸氏
○京滋マンション管理対策協議会
 事務局長 谷垣千秋氏
○格致自治連合会
 総務委員会 田原大仁氏
○格致自治連合会
 副会長 中井敏男氏
○本能まちづくり委員会
 委員長 西嶋直和氏
○有隣自治連合会
 会長 西村正美氏
○修徳まちづくり委員会
 委員長 平井常夫氏

 

<コーディネーター>
○立命館大学
 助教授 リム・ボン氏

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
それでは早速始めさせていただきたいと思います。今日は京都の中の京都,都心部のまちづくりについての活動をお話いただけるということで,願ってもない機会です。同時に,もう一つは今大変話題になっておりますマンション問題を巡る,すでに住んでいらっしゃる住民の方と新しく来られた住民の方の関係がどうなるかということを,これから後半でお話し頂けるのですが,こういう機会は滅多にないといいますか,初めてのことですので,私はワクワクしておりました。
今日は司会の方から方針に沿って議論をリードするのではなく,自由にお話しいただいて,その後フロアの皆さんの質問も交えてディスカッションをしていきたいと思います。

 

(井上成哉氏:明倫まちづくり委員会委員長)
明倫まちづくり委員会の井上です。端的に2つだけ自己紹介と問題提起をさせてもらいたいと思います。1つは3年にわたってリクルートコスモスとの戦いといいますか,京都市の行政と大阪高等裁判所までいった申請で,マンション建設業者と町内近隣住民とで戦ってきました。その結果,先ほどの基調報告の中でも修徳,本能,格致の各自治連合会及び町内会の方々も非常にご努力をされているのですが,実際にこの問題の本質というのは4つあると思います。

1つは皆さんどういう方が今日参加されているのか分かりませんが,基本的にマンションを建てる業者,そこに住まわれる住民の方,それからそれが建つ町内の住民の方,そしてそのマンションの建設に許可を下ろした行政,という4つの構図をしっかりと頭の中に入れて,これからのパネルディスカッションを考えていって欲しいと思います。

2つめには,私ども明倫学区はそこの説明に書いてある通りなのですが,先ほどの方々の学区と比べて非常に遅い立ち上がりでして,その中で今回,本当に遅くに失した嫌いがありますけども,ようやく町内のアンケート調査を致しました。その結果,非常に意外な現実が見えてきましたので,お時間があれば後でその点について少し述べたいと思います。以上です。

 

(西村正美氏:有隣自治連合会会長)
有隣自治連合会の西村です。色々なところから聞いておりますと,下京区のマンション,地域住民の問題点は共通しているように思います。それで我々はまちづくりの話が出ました時に漠然とした大きな話では具体性がないということで,平成11年にアンケートを行いました。有隣学区は跡地問題等も抱えておりまして,その時に3つの問題点が出ました。1つはやはり跡地問題がどうなるか,これは有隣の地域の中における位置付けとして非常に住民が関心をお持ちであると。それからやはりマンションの住民,地元に居られた住民という,地元の方もマンションの方がどういう方か心配なのですが,それ以上にマンションの方がこの有隣学区に住む上において,ここがどういう学区なのかを知りたいのではないかというようなことも出ておりまして,その結果交流が盛んになって,地元のつながりを深めたいと。そのために我々自治連合会と致しまして,有隣まつりを8月の第一日曜日に行っておりますが,これも最近盛大になりまして,各団体に応援して頂いています。最後にやはり安全です。災害のない町にしていただきたい,この3点に要約されております。

2番目に,具体性と先ほど申しましたが,ちびっ子広場というものが牛若弁慶の五条の橋の袂にございまして,これは公園と少し違いまして,20数年前にちびっ子広場として子ども達に遊んでもらう小さい広場ができましたが,これが時代の変遷と共に何かもう少し地域の皆さんが利用できる内容のものができないかということで,行政,地域の地元町内の方々,自治連合会,伝統産業もんげつ館,そういう方々のご協力の下に昨年来突貫工事で完成いたしまして,4月8日に竣工式となりました。こういった具体的なまちづくりの一環で,地域の方にご理解いただけることもさせて頂いております。これについては37ページから40ページに説明させて頂いております。このちびっ子広場は約20坪ほどなので,行政の方に空いている40坪ほどの土地を貸していただけるように申し入れたところ非常に努力して頂いて,京都市の道路維持課,南土木所,水道局,区役所,それから地域が一致協力して見事な公園が出来ました。夏には芝生が生えてきて,地域の人に利用していただける。また23ある団体に何かそこでイベントをしていただいて,楽しんでいただくという計画が出ているようです。そういうところからまちづくりを進めていきたいと思っております。

それから先ほどから出ている地区計画でございますが,やはり何か難しいということで,我々の身近な具体性を織り込んだ中から協力していきたいということで,この間第2回のアンケートを取ったのですが,「緑の町」,「住み良い町」,「職住一体の町」,非常に良いことばかり書いてあるけど具体的にどこからどういう風なことがされていくのかということが住民の方々に不明でしたので,これから実行委員会を立ち上げまして,地域の住民の方々の意見を踏まえながら少しでも住み良い,生活環境のいい有隣学区に育てていきたいと考えています。

 

(柴 佳伸氏:豊園自治連合会総務理事)
豊園自治連合会の柴です。私どもの学区が元の豊園小学校,つまり5校が統合いたしまして,洛央小学校という形で生まれ変わった場所にございます。洛央小学校も小学校の統合問題の先駆けとなった学校ですが,今年10周年を迎えまして,つい先ごろ記念式典が行われたところです。豊園学区は烏丸通のビル街,四条通の繁華街,こういう所を有しておる学区ですが,一方中に入ってみますと割と静かな町並みが形成されている所なんです。地域には,この地域は皆そうですが,染物屋さん,呉服屋さん,伝統産業に携わる方々が大変多い商業地域です。丁度学区のど真ん中に真宗仏光寺派の本山,仏光寺がございまして,ここの境内が子どもたちの遊び場でもありますし,また私たち大人にしましても色々な集会,例えば豊園祭りのような大きな行事もここで行われておりまして,我々の憩いの場でもありますし,この地域のシンボルともなっている所なんです。この仏光寺がありますことが豊園学区に静かな,落ち着いた雰囲気を醸し出していると感じております。

まちづくりですが,この10年,1990年代に入った頃から経済の不況の中で空き地,ガレージがかなり目立つようになってまいりました。そんな中で静けさや落ち着きといったものはちょっと何処かへ行ってしまいそうな,そんな雰囲気になってまいりました。それに次いで地価の下落ということからマンションが大変増えてまいりまして,そういうところから,町内会長さんの方からどう対処していいのか,何か方法はないだろうか,私どもにはよく分からないという声があがるようになりました。と言いますのは町内会長さんというのは大体1年で交代されますので,初めてのことになりますと全然分からないという方が多いんです。それで自治連合会で何か基準になるようなものを作ってくれないだろうか,あるいは指針を出して欲しいというお話がありまして,それでは一つ取り組んでみようということになりました。他の学区は何年も前から取り組んでおられるようですが,私どもはアンケートをこの4月と5月に実施しまして,やっとまとめあげて出来上がりました。言ってみましたらこのシンポジウムに間に合うように作ったという状態でして,本当のところ言いますと地域の皆さんにはこの資料をまだ全然公表していない訳で,皆さんが一番最初に見て頂けるということで,またこれからこういうことに具体的に取り組んでいきたいということです。また詳しいことは後ほどお話させていただきたいと思います。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
先ほど中井さんの基調報告の中で,町内の住民が20世帯のところに100世帯のマンションが出来たら住民構成のバランスが変わるわけで,異民族が来るみたいという話がありました。旧住民と新住民という形で,旧住民と言っても今も住民な訳ですから旧でも何でもなくてむしろ既存住民という方が良いと思いますが,今までは既存住民の方でしかもまちづくりに熱心な方のお話をお伺いすることが出来たのですが,これからは初めて新住民のマンション居住者のお話を少しお伺いしたいと思います。

 

(苅谷謹子氏:本能まちづくり委員会)
本能まちづくり委員会の新住民の苅谷です。元々私は中京の朱八学区からこちらの本能学区に移り住んだのですが,娘の小学校入学を機にマンションを探そうということで,縁あって本能学区に来たわけですが,私が魅力を感じたことは,先進的な学校教育を充実されている高倉小学校の学区であったということ,織田信長の最後の地であった本能寺の址だということ,個人的に私は着物が好きなのですが,着物や染めに携わる職人さんが多くいらっしゃる学区であったということ,その3つが私にとっては大きな魅力であった訳です。

その魅力を私は感じながら生活していけた訳ですが,マンションの住民の中にはそういうことが魅力だと感じながら生活をしていって,自分の住む町が住みやすい町であることというのは新住民も旧住民も変わらないと。だとしたらやはり私の立場で何か考えたりお手伝いできることがまちづくりに対してあるのではないかということで,第一歩は大変勇気が要りましたが,バリアフリーでそれこそ間口が広くて奥行きが深い委員会であったので,大変拍子抜けするぐらい気安く入らせていただけました。その中で私自身がマンション住民として,それから母親として,色々な立場でまちづくりということを考えて,皆さんにお伝えするなり,お手伝いするなりということを考えていこうかなと思っています。

 

(田原大仁氏:格致自治連合会総務委員会)
格致自治連合会の田原と申します。今言われましたように新住民,旧住民,この言葉を私は大嫌いなんです。やはり皆人としてその町内に住むわけですから,始めから区別を無くしてもらっていきたいなと思っております。

まず10数年前に格致学区太子山町にあるマンションを見に行きました。そうしますと説明員の方が管理規約や重要規約など色々説明されたのですが,要するに町内会に入っていただきます,町内会費を支払ってください,それからこの町内は祇園祭の山鉾町内なので祇園祭保存会にも入会してください,保存会費もお願いします,というような形で説明されました。私は京都に生まれてずっとこのかた京都に居るのですが,今まで祇園祭というものを見る側であった訳ですが,それなのに我々がこの太子山町の保存会に入ると祇園祭を一体に参加できる。こういう町内もあるのかなとそこで思ったのですが,後々色々と他の町内の話を聞いてみますと,マンションなんて入れるかという形のすごい反対が起こっている訳です。

こうやってこのマンションに普通に入らせていただいた訳なのですが,マンションの住民の歓迎会をやっていただいて,それも弦楽奏団をつれてこられて,子どもたちには金魚すくいをさせていただき,お酒もいただき,一番初めに交流を深められました。我々マンション住民は入っていく所がどんな町内か心配なわけですね。でもこうやって歓迎していただくと,良い町内に入ってきたなという安心感がございました。今,太子山町といいますと70~80m両側に家があるのですが,格致元小学校が道の半分を占めていまして,あとは3棟のマンションがございます。マンション住民が114世帯,前から住んでおられる方が34世帯,こういう町内に住まわせて頂いております。なにぶん太子山町のマンションのことしか分かりません。他の人の話を聞きますと,そんなこともあったのか,太子山町にはそんなことはない,というような形が色々耳に入ってきます。私としては太子山町という町内に入らせて頂いて良かったなと思っているこの頃です。以上です。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
苅谷さんも田原さんも新住民とは言えないわけですね。どちらも京都の方で,その方が元学区のマンションに入ってこられて,祇園祭に参加できるとか,まちづくり委員会に入ってみたら皆バリアフリーだったとか。本来の京都の町衆はそうなんですよね。世間の噂では京都人はどうとか言われますけど,本当の町衆とは豪快でインターナショナルな人達で,新しいもの好きで。ですから今日は新住民と既存住民は対立するかというようなタイトルで論争になれば面白そうかなと内心思っているのですが,それは後半の討論の中でもう少し本音をぶつけていきたいと思っております。

次でコメントいただく方としては最後になりますが,日本でマンション管理問題といえばこの人です。震災以降,マンション管理問題も含めて今,NPOも立ち上げておられますけど,京都の都心部におけるマンション問題をどう見ておられるのかご意見いただきたいと思います。

 

(谷垣千秋氏:京滋マンション管理対策協議会事務局長)
京滋マンション管理対策協議会の谷垣です。今日は皆さん,地域の自治連やまちづくり委員会から出席していただいている中で私だけが元々マンションに携わってきて,マンションの管理組合の団体なのですが,マンションの側から京都の都心部の問題を見てみますと,結局マンションというのは京都において矛盾の象徴のようなもので,一方では景観破壊の現況であり,一方では,特に洛中の地域において,人口減少を続けていたところにマンションが建つことによって人が戻ってきて,地域の活性化の源になっていく存在でもある。そういう二律背反した面を持っている住居なのですが,これをプラスの方に持っていくのかマイナスの方に持っていくのかということで,今後の京都の,特に一番京都らしい洛中のまちづくりに対しては大変な影響を与えてしまう。そういう意味で,京都の都心部でマンションを建てていくことについては,本当に慎重でなければならないなという風に思うわけです。

今日はマンションから見たとき,こういうことを地域の皆さんも知っていて欲しいと思うのは,例えばマンションの中には大体集会室というものがあるのですが,特にファミリータイプのマンション等に行きますと,処狭しと賞状やトロフィーなどを飾ってあるマンションが沢山あります。これは地域の色々な活動にマンションの人達が積極的に参加して,地域の活動の中でリーダー的な役割を果たしているところが多いということを表していると思います。

一方でそういう風になっていく理由としては,先ほどから出ている新住民,旧住民という,これは好むと好まざるとに関わらず,そういう風な見方が根強くある。その中でマンションの人達が懸命に地域に溶け込もうと努力しているひとつの現われではないかなと思うわけです。

もう一つは,地域には自治会というものがありますが,マンションには賃貸と分譲があり,実は賃貸と分譲では全然意味が違いまして,分譲マンションの場合は管理組合という住民の自治組織がありまして,都心部,中京や下京あたりは大体平均が50戸前後のマンションです。人口にすると150人くらいの方が住んでおられるのではないかと思いますが,それは一つの地域社会になる訳です。その地域社会を治めていく自治組織として管理組合があります。皆さんが管理費や積立金を出して,そのお金で自分たちの地域を治めているという仕組みになります。ここで実は,マンションの人達はトレーニングを積んでいる訳です。どういうトレーニングかと言いますと,実は地域づくり,まちづくり,普通はマンション管理と言いますが管理と言うとあまりいい響きではないので言葉を変えて言うと,50世帯,100世帯の地域の地域づくりを自分たちでやって,その担い手として管理組合という組織があるとご理解いただきたい。こういう組織でマンションの人達は定期的に色々な事業をやります。使うお金も何百万,何千万とかなり大きなお金を使うわけですが,そういう事業を自主的にやることによって,本当に地域を治めていく自治的な力を蓄えていけば良いと思います。こういう力を持った住民組織が地域の中にいくつか出来てくると,その地域全体のまちづくりにそれを生かすか,あるいは殺してしまうかで大きな差になってくる訳です。ですから,今後京都のまちづくりを考えていく上で,高齢化の中で,マンションの持っている力を地域の人達が十二分に生かしていけば,非常に素晴らしい地域生活を作っていけるのではないかと考えています。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
今,後半の討論をする上で非常に重要な問題提起をして下さったと思います。その中の一つに私も全く同感なのですが,マンション問題というのは一方で確実に京都の町並みを破壊している。一方でファミリー向けマンションが増え,世帯数人口が増えることによって活力が出て,その人達が地域の担い手にもなっていく。現に今日のパネリストでいらっしゃいます苅谷さんや田原さんはまさにその例だと思うんです。そう考えていくと,地域の活力にとって重要な担い手の方が増えているのだけれど,町並みの問題も別途ある。しかもマンションが出来るまでに色々なトラブルがあって,先ほどの中井さんのご指摘がありましたように業者さんとの交渉で疲れ果てて,だんだん苛立ちが増して,何とかが憎ければ何とかまでというご指摘がありましたが,そういう問題もある。

実は冒頭に井上さんから,主体を4つに分けて考えなくてはならないというご指摘がありました。業者,マンション入居者,地域住民,行政で,マンション入居者の方はここに住みたいという所に物件があってそれを購入してくるわけですから,全然悪いことはしていないわけです。地域住民の方は色々迷惑を被っていてもちろん悪いことはしていない。行政は個々の物件ごとにこれは良い,これは駄目だと恣意的に言うわけにはいかず,やはり制度に基づいて動いてもらわなくてはならないということで,結局業者だけが今の京都の都心部で飛ぶように売れるマンションを売るだけ売って得しているのかなと思うのです。

さて,井上さん。初めて明倫学区にアンケートを取られて,今出たような意見と関連するようなこともあると思うのですが,少しその内容を紹介していただけますか。

 

(井上成哉氏:明倫まちづくり委員会委員長)
先ほど4つの分類について,リム先生の言われたように,業者だけが一人儲けて東京,大阪へ帰っていくという構図が一つあるのですが,明倫学区でも先ほどの豊園さんと同じようにアンケートを取ってみたのですが,実は先ほどマンション管理事務局長の谷垣さんが言っておられますけど,マンションの持つ力というのがどういうことを指すのかが具体的に見えてこないのが元々の町内会の活動で,今回アンケート調査を取ってみたところ,実はマンションの管理が分譲と賃貸,及びワンルームと明確に3つに分かれております。分譲は非常に協力的で町内に溶け込もうという意欲が見られますが,その管理について大きな違いがありました。管理はほとんどが9時から5時までで,土日は無人である。ところが一番問題が起こりやすいのは土日で,その時にここに電話してくださいというところに全然連絡が取れないことが沢山ありました。2つめには管理人が町内会,町内会長の問題もあると思いますが,どこの学区も町内会長というのは1年間,隣順番に渡っていきますので,そこに24時間居住しておられる方と,会社のオーナーでただ9時から5時まで来ているという方の対応の違いが非常に明確です。それでも一応町内会長を順番にされますので,特に明倫学区では烏丸通に面している所は夜間居住者はゼロなんです。全部銀行や大きい商社で,そうすると町内会といっても誰が構成するのか。ほとんど実態は成し得てない訳です。

そういうマンションが出来て,そのマンション業者との最初の建設段階の問題がまず最初にあって,2つめには,町内会の一番前面に立つのはその管理人なんです。ところが今度のアンケート調査で明らかになったのは,自治連合会なり町内会なりが,ここの分譲マンションの組合の対応者はどなたですかと尋ねたところ,プライバシーだから教えられない,文書でもって出してくださいと拒否されました。管理人のプライバシーに対する意識一つで,町内会に対する顔が開けているのか狭まっているのかが各分譲マンションによって明確でした。

ワンルームマンションはほとんど管理形態が不明,無人でした。ただし元々のオーナーさんから町内会費は一括して振り込んで頂いておりますが,誰が住んでいるのか町内会長は全く掴んでいませんでしたので,実は町内会長イコール市政協力委員という制度があるのですが,町内会費を頂いていないワンルームマンションにおいては,市民新聞やその他一切の行政サービスが全く成し得ていないというのが実態として見えてきました。非常に熱心な町内会長さんはその辺りのことを悩んでおられまして,何度もマンションオーナーに掛け合われますと,明倫学区では2軒,町内会を離脱したいというマンションがあって,町内会とはどういう法的根拠をもって存在しているのか全く見えてこないということが現実に起こってきました。これに対しては,やはり自治連合会で取り組まなくてはならない。町内会長はたまたま当たっただけなのに非常にご迷惑をかけているのが現実になっている。

先ほどの4つの分類で,業者は建築基準法に則って合法的にマンションを建てられ,それを建築基準法でもって行政は認可されますが,現実にはそこにお住まいの住民と,そこに隣接した住民,この両者が一番困っていることが考えられると思います。先ほどの基調報告でのお話も,元々の町内の自治会がいかに交流を図っているか,積極的にマンションに対して働きかけようとしているかということがよく反映されていると思いますが,実はマンションの住民の方から,谷垣さんが言われたようなマンションの中の自治会活動及びマンションの中の自治会への働きかけは,明倫学区においてはほとんど見られないのが事実です。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
豊園ではアンケートを取られて,まだ地元にも公開していないそうですが,よろしければ今の明倫学区と比較してお話いただけますか。

 

(柴 佳伸氏:豊園自治連合会総務理事)
かなり明倫学区と重複するところがあると思いますが,資料の34ページから38ページに渡りまして,簡単に資料を基にしてお話させていただきたいと思います。

私たちの豊園学区にはマンションが全部で43軒ございました。その中の27軒から回答が寄せられまして,約63%の回答率になると思います。その結果に基づきまして,今回のマンションの調査結果は大きく分けて2つの要点がございます。1つは計画段階でどういう話合いをしてきたかということ。それから入居者と町内会の関わり,町費の問題や行事の参加などがどうであったか,こういうことに絞られているわけです。

マンションが賃貸か分譲かという権利方式ですが,大体6割が賃貸で,3割くらいが分譲マンションです。そして賃貸の場合は87.5%までがワンルーム,分譲の場合は85.7%がファミリーであるという結果が出ております。これは大体当たり前な結果で,他の地域でも同じではないかなと考えております。

次にマンションの問題について公表はどのようにしたかということですが,建設計画の段階で話合いを持たれた事例が,賃貸の場合は31.3%ですが,分譲の場合は42.9%。それから説明会以外で個別に話合いがあったかということも含めますと,分譲が大体8割くらい話合いをしている。賃貸の場合は何もしていないという結果が結構あるという結果が出ております。

次に交渉をした相手ですが,賃貸の場合には意外とそのマンションのオーナーが多い。分譲の場合には業者の方との話合いが多い。これは何故かと言いますと,オーナーは大体そこに住んでおられたり,すぐ近くに住んでおられて,割と小規模なものが多いのでそういう結果が出ているのではないかと思います。一方受け手の方ですが,やはり町内会長,町内の対策委員,そして主に町内の方が取り組んでおられて,私たち連合会が関わったことはございません。

続きまして,建設工事について協定を建設業者と結んでいたかどうかですが,賃貸の場合は31.3%,要望書を出したのが6.3%,口頭で伝えたのが6.3%。一方で分譲の場合は57.1%が協定書を締結しております。そういうことで,やはり分譲の場合の方が割ときっちり話合いをしているということになります。

入居後の色々な問題について,居住者とどのようにやっていくかにつきましては,意外と話合いがされていないという結果が出ております。つまり建ってしまった後のことがきっちり話されていないことが比較的多いことが分かりました。

管理人が常駐しているかどうかですが,やはり協定書を締結しているかしていないかによってかなり違ってまいります。

町内会への加入ですが,賃貸と分譲で分けた場合,分譲の方ではある程度加入してる方が多いようですが,賃貸のほうは非常に少ないという結果が出ております。

地域への行事参加ですが,まだ非常に少ないのが実情であります。

自治連合会への期待は無回答が多いのですが,常々町内会で言っておりますが,やはり我々に対して,情報提供など側面での支援をしてほしいという答えがかなりを占めています。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
さて,ものすごい数の質問が出ております。事務局がこれを整理してくれておりますので,これを紹介しながら残りの時間を議論したいと思います。

「新旧住民の対立が問題みたいになっていますが,そうではないのではないか。むしろマンションの建て方が問題なのであって,業者が地域にどう貢献できるか,そういうプロジェクトを考えるべきだ。」というご指摘があります。

もう一つはやはり交流について,「マンション建設反対運動の後,入居者の方とウェルカムパーティーをされたり交流するのですけど,それでわだかまりは残らないのか。」と。

最初に紹介した意見で「新旧対立ではなく建て方の問題なんだ」というご指摘はそれはそれで正しいと思いますけど,実はそれがその後の交流と密接な関わりをどうしても作ってしまうわけで,しかも今日のテーマは「交流・まちづくり」ということで,やはり交流が基本となってきます。今のマンションの出来方というのは,もしかしたらその後々の交流までも阻害するような条件があるのではないか。そういったことも指摘できると思います。

さらに「先ほど地域資源というお話がありましたが,その地域の祭りの伝統や文化の伝統をどう生かしていくか,新しく来られた住民の方との交流の中で考えていかなくてはならない問題だ。」という,ご指摘であり尚且つその点についてどう考えるのかというご質問がかなり沢山あったようです。この辺りについて,基調報告をしていただいたお三方はいかがでしょうか。新旧住民の交流というのは,マンション問題の後に業者とこじれた後は住民の間にわだかまりが残るのかどうか。その辺はいかがですか。

 

(西嶋直和氏:本能まちづくり委員会委員長)
今お話を聞かせていただいて,地域の方がマンションであろうがそうでなかろうが,我々と気持ちは多分同じです。ただ,谷垣さんがご説明をされた中で納得いかない点が,マンションの持てる力というのは管理組合を作ってトレーニングしている,こういったところが私は何か溶け込んでいく上において何かマイナスになるのではないかなと思うのですが,そこのところをお話いただきたい。

(谷垣千秋氏:京滋マンション管理対策協議会事務局長)
確かにマンションの人達と地域の人達がなかなか溶け合わないという問題はあると思います。どうしてもマンションごとの個性というか性格で,それがスムーズにいっている所となかなか溶け合わない所とに分かれているのは事実だと思います。先ほど集会室に賞状があるという話をしましたが,どこのマンションにも多いわけではなくて全然無いマンションもある。そういうところはやはりあまり地域に溶け込んでいない。地域の色々な,体振の活動にしても,自治連の活動にしても,あまり積極的に言っていないということだと思います。

それから今のマンションと地域の問題で我々が一番思っているのは,計画段階のシステムが何も無いことです。地域の人達が常に受身である。デベロッパーが作った計画に対して反対することからしかスタートできない。デベロッパーは地域のことは何も知らないわけです。京都の,今日出ておられるような地域は皆由緒正しい地域ばかりで,今日格致のホームページ見ても中国の古典から引いてあったり,修徳にしても皆由緒正しい場所に住むことになるわけですが,その歴史一つ知ることだけでも,そこに住むことの意味というか,京都の街中に住むことに誇りを持てるということがあると思います。そういう所にずっと住んでいる人達と一緒に,デベロッパーも作る。それから難を言うと,そこのマンションの人達もマンション作りに参加する。町家の人達だけで作るのではなく,マンションに住んでいる人がマンション作りに参加するということも非常に大事ではないか。そういう意味で,計画段階の仕組みが何も無いというのがこういう問題の現況にあると思うんです。だからぜひ京都市でマンション条例を作ってもらって,計画段階から地域の人達が参加できるような仕組みを作ってもらいたいと思います。

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
今日のこの場に井上さんの指摘された4つの主体のうち3つは集まっておりますけど,デベロッパーが誰一人いない。これはやっぱりフラストレーションが溜まりますよね。今日は時間が全然無いので,第2回をやらなくてはなりません。一方でどうしてもやはり聞いてみたいのは,新しく来られたマンション住民の方,やっぱりいじめられたりとか,嫌な思いとかはするのでしょうか。

 

(苅谷謹子氏:本能まちづくり委員会)
あまり私は感じたことが無いです,鈍感な性格のせいもあるとは思いますが。何と言いますか,マンションに住んでいる人間もやはり何かしらアクションを起こさないことには,マンションというのは住んでいるか住んでいないか外から見ただけでは分かってもらえない訳です。特に今ではオートロックが主流になっていますので,オートロックを一回入らないと入りにくいというマンションの作りもありますが,何よりも私たちがそこで生活していますよということがアクションを起こして初めて分かってもらえる。そこで,町内の方が声を掛けてくださるという部分が多いので,いじめられるかどうかという前に,まずマンションの住民も生きてますよということを皆さんにお知らせするような所がどこか見つけやすい場所にあればいいなという気がします。

今は本当に,自分はラッキーだったという気持ちでいますし,他のマンションの方がどういう意見か分かりませんけど,私自身が住みにくいと思ったことは無いです。

 

(田原大仁氏:格致自治連合会総務委員会)
私もそういう出る杭は打たれるというようなことは全然無かったです。太子山町についても,格致学区についても,協力する人がいる形で,受け入れていただいていると感じています。

ちょっと一言言いたいのですが,先ほどマンションが建って近所の人が迷惑していると,それから景観破壊をしていると言われていました。それは分かるのですが,マンションに入った住民としてはそれを面と向かって言われるとムッと来る訳なんです。我々は太子山町というマンションに,横に入るスペースが無いから縦に入ってきた。我々「人」が入ってきたということを認めて欲しい。私はマンションに一世帯の人間として入ってきたわけです。ですから町内の人間として入ってきたわけで,マンションの組織の中の一員として入ってきたのではないわけです。ですから,人を受け入れて考えていただきたい。景観破壊も色々ありますが,そこは景観破壊と活性化など,同じような感じですが並列して考えていただけたら違うのではないかなと思います。ですから人を受け入れていただけるかどうかということを,先に住んでおられた方がどうするかを決めていただきたいと思います。

 

(井上成哉氏:明倫まちづくり委員会委員長)
確かにそうなのですが,少し話が違うかもしれませんが,共生という言葉があって,よく私たちもマンションの人達と一緒に共生したいと言いますが,言葉を間違っていまして,共生というのはお互いがどう調和するのかということですが,先ほど言われたようにマンションの方はそれを一度破壊して,そこに縦に入ってこられると,共生の仕様が無いというのがまず一つあります。

それから先ほどのオートロックの問題ですが,安全という言葉が一人歩きしていて,マンションの住民の方は非常に安全なのですが,周辺住民の方の安全性が全く守られていません。これからは教育問題や高齢化社会に向かって,安心がまちづくりのキーワードになると思います。安全というのは自分のマンションだけは安心ですが,実は三条町のリクルートマンションが出来たが故に,そこを伝って泥棒が入ってきたというのが何件かあって,マンションが出来たが故に町内近隣住民の安全性が脅かされるという事態に陥っております。マンションの住民には全く悪意はないと思いますので,現実的にはそういうことも考えて,先ほど言われたようにマンション住民の力というものを見せてもらいたいと思います。

最後に,具体的には本能学区の六角通西洞院の少し南に下がった所で,マンションの南側にすぐ隣接してマンションが立ち上がっているのですが,こうするとせっかくマンションを買われた人達自体が,今度は新しいマンションによって日照とプライバシーが阻害されていく。そのマンション住民の方がどのような行動をされるか,知らん顔なのか,団結して新しいマンションに対して何らかのアクションを起こされるかというのは,今は静観しているところです。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
今日は決して新しく入られた住民の方と既存の住民の方の対立を煽ろうとしているわけではなく,どうすれば交流できるかというお話で,はっきりしているのは交流もしなくてはならない,皆まちづくりをやっていこう,ということで,今言われましたけど,まちづくりというのは実は安心づくり,安心して暮らせるための条件作りであって,それがややもすると谷垣さんが指摘されたことや質問にもあったように,建てるプロセス,計画のプロセスがどうかというところをしておかないと,後で入居した人達にそのつけが跳ね返ってくる面もあるということだと思います。

 

(谷垣千秋氏:京滋マンション管理対策協議会事務局長)
今日のこのシンポジウムは京都市の主催ですが,ぜひ行政の方にお願いしたいと思うのは,今は規制緩和の時代で行政があまり色々規制が出来ないということですが,やはりヨーロッパの古い土地などはすごい規制をしているわけです。京都市でも今まで色々な試みをされてきて,93年の町家型共同住宅の研究に参加したことがありますが,そこでデザインガイドラインが示されています。私はそれが良いガイドラインだと思いますが,あの通りにマンションが建てられていれば,今の洛中の街並みが相当変わっていたのではないか。少なくともそういうガイドラインを研究して作っているということをもっと京都市民に知らせてもらいたいし,そういう問題提起を行政の側からもっと積極的にやって,例えばこういう場で発表して市民にアピールするとか,そういう姿勢を見せていただきたい。ただ研究会をやって,冊子にまとめて終わりということでは不十分というか,行政の取り組み自体をもっと積極的にしてもらえれば,マンションのデザイン面での色々な問題が解決できる可能性が出てくると思います。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
丁度質問の中に「要するに今後何を最も重視して,政策として取り組むべきなのかそこをはっきりしなくてはならない。」というものがありました。

 

(中井敏男氏:格致自治連合会副会長)
行政はちゃんと法律に則って通しましたと言う反面,京都市のまちづくりと言うなど,同じ行政なのに片方は建設を許可して,片方ではこんなことをしている。我々町衆に自分たちで何とかしてくれと言わんばかりの仕様です。京都市も町衆の町を考えていただいて,もう少し京都らしい街を考えてもらいたい。

 

(会場参加者)
・ 尚徳学区の自治連合会長の伊藤です。私はこれまでのマンションと住民との問題につきまして辛抱が切れました。それで市長宛に手紙を書いたわけです。マンションを建てる時に自治連合会長がいちいち交渉するわけにもいきませんので,町内とマンション業者とが交渉するためのマニュアルを作って欲しいと手紙を書きましたが,未だになしのつぶて,というよりも一度電話がかかってまいりました。先ほど谷垣先生が言われたマンション条例は非常に良いと思います。その中には色々な条件が付いてくると思います。規制が今一番駄目なように言われておりますが,やはり規制は必要だと思います。その中に我々は生きている訳ですから,ある程度の規制は必要だと申し上げたい。そのマニュアルが来ましたら皆さんに公開いたします。早く返事をしてほしい,皆さんの方からも伊藤が出した手紙に早く返事をくれと市のほうに言っていただけたら結構かと思います。

 

(リム・ボン氏:コーディネーター,立命館大学助教授)
・今日はまだまだ柴さんの所のアンケートの具体的な話や,西村さんの所の取り組みなど,聞きたいことが沢山ありましたし,中井さんの所で今度ウェルカムパーティーをされますが,それが今後どうなっていくのかなとか,それから今ご指摘があったようなことも含めて,これはもう一度やらなくてはいけないのではないかと思うのですが,今日はあまり時間が無かったので,基調報告をされた皆さんになかなか後半に発言していただけなかったと思います。それから大変多くの質問を頂いたのですが,それも全てを紹介しきることが出来ませんでした。しかしこれをまた何らかの形でまとめて,ホームページで公開するなど色々なことを都市づくり推進課が考えてくださると思います。ということで今日はこの辺で終了したいと思います。皆さんどうもありがとうございます。

 

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