平成28年9月号 調査マンからのメッセージ
ページ番号204164
2016年9月1日


京都市内で発生する火災の原因の中で,常に上位に入るのが,「天ぷらなべ火災」と「こんろからの火災(こんろ火災)」です。この天ぷらなべ火災とこんろ火災の両方の火災に共通するキーワードの1つに,「家庭用ガスこんろ」があります。
昨年,京都市内で発生した天ぷらなべ火災の件数は11件で,そのうち,家庭用ガスこんろを使用していたものが5件でした。同じように,こんろ火災の件数は15件で,そのうち,家庭用ガスこんろを使用していたものは9件となり,両方を合わせると14件になります。これは,昨年発生した天ぷらなべ火災とこんろ火災の合計数26件の54%と,過半数を占めています。
そこで,今回は家庭用ガスこんろからの火災の状況等について紹介します。

Siセンサーこんろ? 聞いたことはあるけれど・・・どのようなものなのでしょうか?
「Siセンサーこんろ」とは,住宅火災の原因の多くにガスこんろが関係していることと,オール電化住宅により急速に普及してきたIHクッキングヒーターの「クリーンで安全」というイメージに対応するため,ガス機器メーカーがガスこんろ(卓上式一口こんろと業務用こんろを除く。)に複数の安全装置と便利装置を搭載した機器を開発し,平成20年4月から製造,販売をしているものです。

全ての家庭にSiセンサーこんろが普及するまでには,まだまだ年数が必要ですが,Siセンサーこんろまでには至らずとも,一部の安全装置が搭載されたガスこんろは以前から製造,販売されており,多くの住宅で使用されています。
では,安全装置が搭載されているのに,火災の原因になるのは,どうしてなのでしょうか?

京都市内で過去5年間に発生した天ぷらなべ火災とこんろ火災の件数を見ると,全体の火災件数の約1割を占めています。(下表参照)


住宅火災(一般住宅,共同住宅,併用住宅)に対して家庭用ガスこんろが占める割合を見ると,全体の13%を占めており,いかに調理器具からの出火を防止することが住宅火災防止に重要であるかが分かります。


【 天ぷらなべ火災の事例 】
共同住宅の一室の台所から出火し,換気扇1基焼失,窓ガラス2枚の一部及び収容物を焼損したものです。
火災原因は,家人が両手鍋にサラダ油約0.3リットルを入れ,ガステーブルで加熱していたところ,その場を離れた間に,サラダ油が発火温度に達し出火に至ったものです。
この火災で使用していたガステーブルは,グリル付の二口ガステーブルで,家庭でよく見掛けるものでしたが,安全装置の調理油過熱防止装置は二口とも付いていませんでした。

【ガスこんろ火災の事例】
一般住宅の台所から出火し,台所の天井や壁体及び収容物の一部を焼失焼損したものです。
この火災の原因は,ガスこんろでお湯を沸かしていたことを忘れて,近くを離れて放置していたため,やかんが空だき状態となり,こんろの近くに置いてあった台所用品がこんろの輻射熱を受けて発火したものです。
この火災で使用していたガステーブルは,グリル付の二口ガステーブルで,家庭でよく見掛けるものでしたが,安全装置の調理油過熱防止装置は二口とも付いていませんでした。

【家庭用ガスこんろの消し忘れ】
過去5年間に京都市内で発生した住宅火災で家庭用ガスこんろの消し忘れにより発生した火災の割合は,昨年を除き概ね60%以上を占めています。

【ガスこんろが規制対象品に:マークで確認】
全国において発生する,家庭用ガスこんろ火災の多くが調理油の過熱による(天ぷらなべ火災)ものであることから,家庭用ガスこんろの技術基準等の変更により,火災事故の未然防止を図るため,平成20年10月1日に「ガス事業法」「液化石油ガス法」において,主に家庭用ガスこんろが規制対象品の1つに指定されました。
規制対象品は,国の定めた技術上の基準に適合した旨の表示「PSTG」「PSLPG(LPガス用)」マークがないと販売できなくなりました。(1年間の販売猶予期間がありました)
★規制の対象は,ガスの消費量の総和が14KW以下(オーブン付きは21KW以下)で,こんろバーナー1個当たり5.8KW以下のガスこんろとなっています。


[安全装置の搭載義務へ]
規制対象品に指定されるとともに,家庭用のガスこんろのバーナーの全てのバーナーに対して,調理油過熱防止装置及び立ち消え安全装置の設置が義務付けられたほか,早切れ防止機能や焦げ付き消火装置など各種の機能が業界の自主基準により搭載されています。


Siセンサーこんろの普及により,調理油を過熱しての火災(天ぷらなべ火災)やガス火の消し忘れ等による火災は減少する傾向になると思われますが,平成20年10月以前に製造,販売されたガスこんろには安全装置が搭載されていない製品もあり,まだまだ多くの家庭で使用されているのが現状です。
また,Siセンサーこんろであっても,全てのガスこんろからの火災を防ぐことはできません。
ガスこんろを使用して料理をする際は,下記のことに注意してください。
・ 調理油の入った鍋等を火にかけているときは,絶対にその場を離れない。
・ 着ている衣類にガス火が燃え移る「着衣着火」を防止するため,ゆったりとした服での料理を避け,アームカバーやエプロンは防炎製品等を使用する。
・ こんろの近くに調味料等を置かない。
・ グリルの火災を防止するため,グリル内は常に清掃し,グリルの内部に魚脂等を溜めないようにする。
・ ガスこんろの周りにふきん,紙類など燃えやすい物を置かず,整理をする。
・ ガスこんろと壁体との距離を保つ。

ガスこんろからの火災は,減少する傾向が予想されるものの,毎年,火災原因の上位を占めており,いくら火災を防ぐため機器の安全機能が進歩しても,最後は使用者の問題です。
火災の多くは,使用者の「うっかり」や「不注意」による「人災」です。「人災」による火災は防止することが可能です。
改めて,ガスこんろの知識を習得し,防火指導等において正しい火気の使用について,市民の皆さんに伝え,火災が発生しないよう,指導をよろしくお願いします。
お問い合わせ先
京都市 消防局消防学校教育管理課
電話:075-682-0119
ファックス:075-671-1195