スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市教育委員会

言語選択を表示する

検索を表示する

スマートフォン表示用の情報をスキップ

現在位置:

【レポート】 令和2年度総合教育会議(令和3年1月21日)

ページ番号283142

2021年4月9日

【テーマ】ウィズコロナ時代における個別最適な学びの実現に向けて~京都ならではの学校教育を通じて~

 令和3年1月21日,「ウィズコロナ時代における個別最適な学びの実現に向けて~京都ならではの学校教育を通じて」をテーマに令和2年度京都市総合教育会議を開催しました。

 ICT活用の充実に向けた環境整備や対面指導とオンライン活用のハイブリッド型による教育活動の展開,茶道・華道体験体験の実施や自然体験活動などの新しい生活スタイルの下での京都ならではの体験的・協働的活動の推進等について議論しました。

 【当日資料】

 会議での概要は以下のとおりです。また,会議全体の議事録は本ページ最下部の「会議の詳細はこちら」をご覧ください。

一人一台PC端末の活用に向けて

門川 市長

 新型コロナウイルスの厳しい影響により,貧困,孤立,格差など,さまざまな社会的課題が顕在化・加速化し,ますます先行き不透明な時代を迎えています。一方で,新型コロナウイルスをきっかけとして,GIGAスクール構想等,学校現場においても,これまでにないスピードで新たな学びの環境整備が進んでいます。

 令和3年度はGIGAスクール元年度。飛躍的に向上したICT環境を有効に活用し,子どもたち一人一人の能力を伸ばすとともに,集団的な学びの場を構築することが重要です。また,学級閉鎖や学年閉鎖等になった際もICT活用により,学びの保障が可能となります。一方で,家庭状況や学校の指導体制など,子どもたちを取り巻く様々な環境の違いが,新たな学力格差を生む結果となってはなりません。

 GIGAスクール構想による授業改善,教育活動の充実をいかに図るのか。また,集団宿泊活動,茶道・華道等の伝統文化体験活動等,これまで本市が大切にしてきた体験的・協働的な取組の重要性を再確認し,新しい生活様式の下でいかに充実していくのか。本日は,ウィズコロナ時代における京都ならではの学校教育について,様々な視点から忌憚のないご意見をいただき,意見交換を行っていければと考えています。

在田 教育長

 一人一台PC端末をいかに活用するか,また,これまで本市が大切にしてきた体験的・協働的活動とどのようにミックスするかが重要です。さらに,「教え育む」という教師目線の取組から,子どもが協働的な学びの中で,自ら「学び育つ」という教育観の転換が必要です。

 この間,皆様に見ていただいた学校現場でのPC端末の活用状況も踏まえ,令和3年度に推進すべき取組等について議論していきたいと思います。

奥野 教育委員

 2回目の緊急事態宣言が発令され,子どもを登校させることに後ろ向きである一方,登校させないと学習が遅れることに不安を抱く保護者がいました。GIGAスクール構想はそのような家庭に対する学習保障の点でも活用できるものでもあるため,端末を家庭に持ち帰ることができる環境を早急に整えていただきたいと思います。

 また,端末を使用するにあたり,最初は子どもがログインすることに非常に時間がかかるなど,0から1にすることが大変だと思いますが,ICTが苦手な教員にも頑張っていただき,対応していかなければなりません。この大変な状況をチャンスと捉えて,教員の皆様にも尽力いただき,京都の子どもたちのためにICT活用を推進していただきたいです。

 私自身はスポーツを通じてオンラインで様々な人と情報共有をしていますが,4月の緊急事態宣言の際に,京都でシンクロをしている子どもたちがスペインのナショナルチームの子どもたちとオンラインで一緒にトレーニングを行いました。コミュニケーションは難しい部分があったものの,子どもたちにとって非常に貴重な経験となりました。このように,新型コロナウイルスを機に,ICTを用いて京都の子どもたちと遠くにいる人や多様な人とをつなげることができると考えています。

 また,花が成長するプロセスを観察したり,走ってしんどいと感じたりするなど,リアルの部分とICTを有効にミックスして取り組んでいく必要があると思います。

 さらに,運動不足にならないよう,感染症対策として距離を保ちながら,自然体験などの屋外での活動が増えればよいのではないでしょうか。大人からの強制ではなく,遊びの中で体を楽しく動かしながら,子どもたちが主体性をもってルールを作るなど,運動を通じて創造性を育んでいただきたいです。

 新型コロナウイルス感染症から派生される物事には,これまでの常識にない考え方をしなければ打ち勝てません。授業でも新型コロナウイルスを教材として活用することを進めていただきたいと思います。

野口 教育委員

 ICTを進めていくためには,困ったときに対応できるよう,各校にICTスキルが高い教員が少なくとも1人はいる必要があると考えます。本市でもハード面は整いつつあるため,今後,ソフト面を充実させるために,各校の代表者が参加するICT活用に係る研修を開催し,代表者が各校に持ち帰って研修内容を広げていただくことが必須です。

在田 教育長

 教職員研修については,昨年から基盤ソフトとなるMicrosoft365の研修に全校から参加いただくとともに,各学校の中核となる教職員や管理職を対象に,GIGAスクール構想のビジョンや4月までに必要な準備等についての研修を行っています。また,最低でも学校と同じレベルで使用できる状態でないと学校へ指導・助言等できないことから,1月以降は事務局向けにも研修を実施しており,引き続き,重点的に教職員研修等を進めてまいります。

 学校体制については,来年度から新たにGIGAスクール推進主任を各校に1人設置し,学校の中で比較的ICTスキルの高い教員に学校全体の教育情報化を牽引していただきます。また,GIGAスクール推進主任をリーダーとするGIGAスクール推進委員会を設置し,授業のみならず校務支援においてもICTを活用し,働き方改革につなげられるよう,効果的・効率的に校内の情報化を推進してまいります。


笹岡 教育委員

 ICTを活用するにあたって,教職員1人1人のスキル向上も必要ですが,支援員の配置など担任のサポート体制の構築も検討する必要があります。また,子どものICTスキルについては,PC端末を使用することで向上していくと思いますが,PC端末の中毒性や依存性など,負の側面に対する対策等を考えなければなりません。

 伝統文化体験については,対面指導が難しい場合,オンラインでも続けることが大切だと考えています。実際に,京都市外の学校ですが,花材を学校に送付し,ZOOMとパワーポイントを使用してオンラインで授業をしたことがあります。今後,1人1台端末となれば児童生徒の作品を個別に評価することも可能であるため,よりよい授業の展開を期待できます。一方,我々が伝統文化体験で伝えたいことは技術ではなく「心」ですが,オンラインでその点を伝えられるかどうかが非常に重要な視点であり,講師側の教える力の向上が課題となります。また,伝統文化を伝える役割を担っていただいている方はICTになじみのない世代でもあるため,ICTを活用いただけるような仕掛けやサポート等も必要です。

 自然体験活動等について,私も遊びの中での体験が重要であると考えており,外での活動時間は保障するべきです。リアルな体験がベターですが,教育活動の意義があるのであればオンラインでの実施も選択肢として考えるべきだと思います。

星川 教育委員

 本市の「一人一人の子どもを徹底的に大切にする」という教育理念を教職員が実践できるよう,環境整備等を含めて支えることが教育委員会の大きな役割です。様々な課題を抱えている子どもたちを大切にしながら学習等を進めるには,ICTはなくてはならないツールです。しかし,諸外国では学校だけでなく家庭でもICTを学習のために使用している一方で,日本では諸外国と比較してICTを用いた家庭での学習時間が少なく,SNSやゲームの使用時間が多いという結果が出ています。今回のGIGAスクール構想による一人一台端末の整備により,学校でのICT活用が前進しますが,家庭学習での活用も含め,効果的なICT活用の在り方について研究していただきたいと思います。

  一人一台端末をどのように活用するのが子どもにとって最も良いのかということを検討することにより,ICTの活用が早く普及するのではないでしょうか。本市における先進的な取組も早急に全市に広げていただきたいです。

 また,ICT活用の取組等を推進するにあたり,若い教職員が活躍することにより学校が活性化する点も期待しています。

在田 教育長

ICTを活用する場面設定は非常に重要です。全教職員がそれについて共通理解し,実践できるよう,現在作成している京都市スタンダードにICTを活用する場面を設定し,記載することとしており,内容を充実させてまいります。

門川 市長

 京都市においても教育においても,これまで,危機の時に人が育ち,組織が活性化し,まちづくりが前進してきましたが,今できること,やらなければならないことを徹底して取り組んでいかなければならないことを改めて実感しています。とりわけ,多様性が増している中で,ICTを活用することにより本市の教育理念である「一人一人を徹底的に大切にする」ことが一層可能になると考えています。

 先日,ICTを活用した授業を拝見しましたが,筆記用具と教科書に加えて,タブレットを机に出すことにより,机のスペースに余裕がなくなるという新たな課題がありました。また,ICT支援員の配置についても永続的に必要とは思いませんが,特に端末の導入時には必須であると実感しました。

 また,リアルの良さをオンラインで,オンラインの良さをリアルで活かすということが重要であるとともに,ICTを活用し,姉妹都市の学校と簡単に交流できるようになると考えています。

 さらに,ICTの活用により,採点の簡略化等による時間短縮などの教職員の働き方改革や教職員自身の深い学びにもつなげるとともに,教職員が児童生徒と向き合う時間を確保するため,仕事量だけが増えることのないよう文科省にも要望していく必要があります。

村上 副市長

 GIGAスクール構想により,教職員が児童生徒へ教えることから,子ども同士が教え合うことに重点が移っていくなど,学びの場がフラットになることは非常に大きなことです。また,学びの多様化が進んだことで多様性を受け入れる素地ができたと考えており,人と違うことにより疎外感を感じたり,場合によってはいじめられることが問題となったりしますが,今後,そのような課題が解消されることを期待しています。

 ICTは新しいツールであり,便利なものほど副作用に注意が必要という話がありましたが,刃物や火を使うのと同様に,実際に使うことで注意点等が明確になってくると考えます。教職員にはその点にも気を配りながら指導をお願いしたいです。


京都ならではの体験的・協働的活動等の重要性

笹岡 教育委員

 市立小・中学校のすべての児童生徒が中学校卒業までに茶道・華道を体験できるよう段階的に取組校数を増加させながら全校実施を目指すなど,子どもたちが伝統文化やいのちに触れる時間を設けていただいていることは有難く思います。今年度は新型コロナウイルスの影響で,取組校数は増やさずに,令和元年度実施校の継続実施のみとされていますが,伝統文化を体験するのとしないのとでは全く異なると考えており,厳しい財政状況ですが,当初予定通り全校実施に向けて引き続き取り組んでいただきたいです。

 華道で言えば,花と向き合い,家に持ち帰り,花が朽ちるところまでをしっかりと見届けることで,命に向き合うことができるとともに,それらを経て生き方にも影響を与えると考えています。人間と自然は対立する存在ではなく,人間も自然の一部であり,生け花を通じて自然との距離感を子どもたちが感じることにより,今後,社会で生きていくにあたっての何らかのヒントを得ることができると思います。

在田 教育長

ICTに触れる時間が増えれば増えるほど,自然の大切さや実体験の大切さを実感するのではないかと考えており,教育課程において体験活動等は引き続き取り入れていくことが重要だと考えています。

門川 市長

 ICTの活用や個別最適化を積極的に進めると同時に,生け花などの伝統文化を通じて自然や命を学んだり,体を動かしたりすることは非常に重要です。また,学校視察をした際,感染対策のため子どもたちが小さな声で発表していましたが,このような状態が数年続くと,子どもたちが大きな声で話すことができなくなるのではないかとも心配しており,大きな声を出せるような機会を作ることも必要だと考えます。

 文化庁が京都に全面移転しますが,京都で育った子どもたちが世界を視野に入れるとともに,京都の文化と先人たちの生き方に軸足をおいて学んでいくことが重要です。そのような学びを学校から家庭に戻していくことも必要であり,そのための条件も整えていかなければなりません。


世代間ギャップを生み出さないために

奥野 教育委員

 若い世代はいとも簡単に動画を編集することができるなど,我々世代にはない能力を備えています。子どもたちは様々な可能性を秘めており,我々がこれまで思いもしなかったことを考え出すことができるため,ICTを活用するにあたり,子どもたちのやりたいことや,大人が考えるICTの活用方法にはない方法を子どもたちから引き出すような授業ができればよいのではないでしょうか。例えば,姉妹都市の学校とオンラインで繋がり,互いの都市の良さや同世代の世界の子どもたちがコロナ禍において何を考え,どのように生活し,どのように生きていくかを知ることは子どもたちの成長の起爆剤になると思います。

 また,ICT活用の世代間ギャップが大きな課題であると感じています。京都市総体としてICTを進めていくことは必要ですが,特に年配の方などICTが推進されることにより取り残される方がいないよう生涯教育等でフォローするとともに,ICTの活用によってよりよい生活が送れるような取組の提案があればよいと思います。

 さらに,画面越しで集中できる時間は30分が限界であると言われています。子どもたちの身体に影響を与えないような形でのICT活用となるよう本市が率先して研究を進めていただきたいです。

門川 市長

 世代間ギャップを生み出さないことはSDGsが掲げる誰一人取り残さない社会の実現のためにも重要であり,一人暮らしのお年寄りが急速に増えている中,ICTでつながることも考えられるため,生涯学習でもICT活用に関する取組を推進する必要があります。

  一部の地域では体育振興会や自治会等がLINEでつながっているところがありますが,今後,危機管理や地域住民との連携をするにあたり,回覧板とLINEのそれぞれの良さを生かし,両輪で取り組んでいくことが大切です。また,自治会が高齢化している中,ICTを活用するためには若い世代の力が求められる傾向にあることを考えると,自治会等の世代交代にもつながると考えます。

 ICTの活用は全庁を挙げて取り組んでいきたいと考えており,教育委員会でも活用の推進をお願いします。

結びに

在田 教育長

令和3年度はGIGAスクール元年度となり,1人1台端末をどのように多角的に活用するかということが最重点課題だと考えていますが,端末を単なる箱とならないようにするためにはソフトが重要です。

  本市の財政状況は大変厳しい状況にある中, AIドリルや授業支援ソフト,採点補助ソフト等の予算要求をさせていただいています。また,端末導入当初は,ICTを円滑に活用できるようサポート体制の構築等が必須であり,ICT支援員の確保や約2万台から約10万台に一挙に増加した端末の維持管理等の体制整備のための予算についてもお願いしています。さらに,今回整備されたICT環境を学校全体の働き方改革につなげるためにも,今申し上げたICT支援員や端末の維持管理,さらには学校全体の校務支援のあり方は重要な点であり,予算に関わるものでもあるため,お取り計らいのほどよろしくお願いします。

 奥野委員から提言のあったICTの推進に伴う世代間ギャップが生じないように生涯学習を進めるべきという点については,これまで学校教育におけるICT活用の在り方ばかりを考えてきたが,約10万台もの端末が学校に配備されるため,それを地域の生涯学習にどのように活かしていくかということも今後検討してまいります。

門川 市長

 様々な課題や困りをかかえる子どもを大切にしていかなければならないが,ICTを活用した教育の推進などの取組により,誰一人取り残さない社会の実現に寄与するのか,あるいは新たな格差を生み出すのかという分岐点に立っているとも言えます。ウィズコロナ時代において全員が社会の参画意識を持つことができるよう,私自身も決意を新たにして取り組んでまいります。

 今年度,新型コロナウイルスの影響等で極めて厳しい状況にありますが,ICT活用の推進にあたり,様々な研修などを体系的に取り組むほか,若い世代が学校現場で生き生きと頑張っておられる様子を聞き,本市は全国でトップ水準の教育を推進することができるという確信を持つことができました。

 同時に,ICTを活用するためのソフトの重要性やサポート体制,教職員のICTを活用した働き方改革なども必要であり,厳しい財政状況ではあるが取り組んでいかなければならないと考えています。また,文化庁の京都移転は,これは京都から文化で日本中を元気にしよう,文化で世界から尊敬される日本にしていこうという政府の意思や国民の声が表れていると思いますが,教育においても茶道や華道等の体験活動を大切にしていかなければなりません

 これらの取組は危機的な財政の中で推進していく必要がありますが,一番大事なことは市民の皆様の豊かさを実現し,財政も持続可能なものにすることです。ようやく経済が活性化してきた中,新型コロナウイルスの影響により財政状況が悪化することとなりましたが,これまで取り組んできたことに間違いはなかったと考えています。文化が大切にされたら経済が活性化する。これが京都の一番の強みであり,学校で華道や茶道を体験することは子どもたちの将来だけでなく京都のまちの活性化につながると思います。

 学校に1人1台端末があることは家庭に影響を与えると考えており,家庭において子どもが親や祖父母にICTの使い方等を教えるようになれば良いのではないでしょうか。GIGAスクール構想による1人1台端末に係る取組が学校から社会や家庭を変えていけるものになることを期待しています。

 京都の教育は様々な危機のときに前進してきました。今,コロナ禍において尽力いただいているすべての方々に敬意を表するとともに,この危機の中で,より一層,一人一人を大切にし,教職員の働き方改革を含め本市教育が前進できる機会となるよう,共に取組を推進できればと考えております。


お問い合わせ先

京都市 教育委員会事務局総務部総務課

電話:075-222-3767

ファックス:075-256-0483