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京都市教育委員会

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京都市道徳教育振興市民会議からのメッセージ

ページ番号6511

2008年2月12日

~共に生きるための知恵を寄せ合い~

「しなやかな道徳教育を!」

 

 世界の情勢が急激に変化してゆくなかで,それに対応しつつしっかりと生きてゆくためには,相当な道徳的考えを身につけていかなくてはなりません。それは,確固としたものでありつつ,状況の変化にも対応できる柔軟性をもつものでなければならないのです。

 このためには,子どものときから,そのようなことを自ら考え,自ら律してゆく習慣を身につけねばならず,道徳教育ということはグローバリゼーションの波の高い今日において,非常に重要になってきます。ただ,それは変化に対応し得るものとしての,しなやかさを必要とします。固くてもろいのは役に立たないのです。と言って,柔らかくて弱いものも駄目なのです。

 しなやかな道徳観を身につけるため,大人も子どもも共に,努力してゆこうではありませんか。

 

名誉座長  河合 隼雄

平成16年7月

京都市道徳教育振興市民会議


目    次

はじめに………………………………………………1

1 市民会議としての基本的な考え方…………………2

(1)      「共に生きるための知恵」としての道徳

(2)      しなやかな道徳教育

2 「しなやかな道徳教育」推進に向けて ……………4

~ 家庭で,地域で,学校で,「どうトク?」アクション ~

3 「家庭で,どうトク?」アクション ……………………7

4 「地域で,どうトク?」アクション ……………………9

5 「学校で,どうトク?」アクション ……………………11

最後に…………………………………………………13

【参考資料】

1 設置要綱 ……………………………………………17

2 委員名簿 ……………………………………………18

3 活動経過 ……………………………………………19

4 市民アンケート調査概要 ……………………………22

 

5 中間報告案に対する市民意見の概要………………29

 

はじめに 

 私たち,京都市道徳教育振興市民会議は,平成13年8月の発足以来,京都市における道徳教育の具体的振興方策について,小学校・中学校における道徳の時間などの視察や各方面の方々に来ていただいての学習会や意見交換,市民アンケート調査,フォーラムの開催などを行うとともに,会議の様子も公開し,様々な角度から幅広く討議を重ねてきました。

 

 次の時代を支える心豊かな子どもたちをはぐくむことは,親のみならず,今の時代を生きるすべての大人の願いであり,責任であることは言うまでもありません。

 しかし,かつてないほどの豊かさを実現させた私たちの社会は,物やお金などの物質的な価値を追求し,個人の利害・損得を優先させるあまり,夢や目標に向かって努力することや社会全体をよりよくしていこうとする意識を軽視する風潮を生み出してきました。地域社会では人と人との結びつきが弱くなり人間関係の希薄化が進んできました。さらに,国際化・情報化の進展や環境問題の深刻化など社会の急激な変化は,私たちにその対応を迫り,長引く経済不況の中で,社会全体に閉塞感が漂っています。

 これらのことは,そのまま多感な子どもたちの心や育ちに反映し,現代の若者の自己中心的に見える言動や規範意識の低下,正義感やマナーの欠如などに結びついていることは否めません。

 

 私たちは,道徳教育について討議するにあたって,家庭での道徳教育,地域での道徳教育を含め,社会全体で取り組む道徳教育を視野に入れなければならないと考えました。

 道徳,道徳教育,心の教育等々については様々な定義・考え方があります。私たち市民会議としては,その上に新たな理論を構築し統一していくことを目指すものではありません。

 次代を担う子どもたちにとって,今,必要なことは何か,さらに,家庭・地域・学校などで大人全体が,力を合わせて何をしていかなければならないのかということをいろいろな角度から検討することに論議の中心を置きました。そして,「提言」をまとめるにあたって,市民の皆様へ私たちの「考え」や「思い」がより広く伝わり,行動へ結びつくよう期待を込めて,「メッセージ」として呼びかけることにしました。

 市民会議での論議が,心豊かな子どもたちをはぐくむ道徳教育の充実に向けた大きな一歩となることを願っています。

1 市民会議としての基本的な考え方

 

(1)「共に生きるための知恵」としての道徳

私たちは,今,求められている「道徳」を,

「市民すべてが社会の一員として豊かに暮らしていくための支えとなるものであり,お互いの人権を守り,尊重していくために必要なもの」

であると考えました。

言いかえれば,共によりよく生きるための知恵としての道徳です。

 

 今日の日本の社会が,直面している諸課題(人権問題・環境問題・規範意識の低下・少子高齢化や国際化・情報化の進展に伴う課題など)の解決のためには,「自分だけがよければ」「人に迷惑さえかけなければ」という姿勢ではなく,お互いを認め合い,かかわり合い,支え合い,高め合うといった人間同士のつながり,また人間と自然とのつながりまで視野に入れた「共に生きる」姿勢が必要です。それは,世界・地球規模の観点から考えても,その一員であるこの日本で生きていくうえで,必ず必要とされるものでしょう。

 

 もちろん,「共に生きる」ことは決して容易なことではありません。まず,人は決して一人で生きていけるものではないこと,必ずどこかで人とかかわり,人に支えられていることを自覚しなければなりません。そのうえで,多様な意見や価値観が交錯する中で個を確立し,お互いの違いや多様性を認めることを前提として,どのようにコミュニケーションを図るのがよいのかを見出していかなければ,「共に生きる」社会をつくり出すことはできません。お互いのよさを認め,「これだけはやっていこう,守っていこう」というルールやマナーを共通理解していくことが大切であると考えます。

 それらは,伝統的な習慣の中に今も息づいているものもあるでしょうし,新たに見出し,はぐくんでいかなければならないものもあるはずです。現代に生きる私たちは,こうした「共に生きるための知恵」をともすればおろそかにしがちであったのではないでしょうか。

 


(2)しなやかな道徳教育

 今,求めようとしている道徳が「共に生きるための知恵」であるならば,この考えを子どもたちの道徳教育にどのように生かしていけばよいのか,私たちは検討し,道徳教育を次の二つの視点からとらえました。

 

▼一つは,守るべきものをきちんと教え,伝えていく道徳教育です。

 例えば「生命の大切さ」や「基本的な社会のルール」などは,お互いが生きる基盤として共有し,きちんと子どもたちに教えていかなくてはなりません。私たちは,親として,人生の先輩として,社会の中で「共に生きる」ために大切にすべきものを,子どもたちにしっかりと伝えていくことが必要だと考えます。

 そのためには,親として,また大人としての自分自身のあり方を振り返り,見つめ直すことも必要になってきます。

 

▼もう一つは,共に考え,はぐくんでいく道徳教育です。

 一つめの基本的なことをふまえて,さらに,それぞれどのように生きていくのかを語り合う道徳教育です。

 この過程を通じて,人はお互いの考え方や生き方を認め合い,支え合って生きていこうとする心をはぐくむことができます。家庭・地域・学校で,子どもたちと共に語り合い,さらに体験することも必要でしょう。道徳を頭の中だけの建前としての理解にとどめるのではなく,他者との協調やぶつかり合いといった多様な人間関係の中で,体験を通して違いを認め合い,行動につなげることが大切であると考えます。

 

 道徳教育は,この二つのどちらかが欠けても人間としての心の成長につながらないと考えます。両者は,別々に存在するものではありませんし,うまくバランスをとりながら,人間的成長を図らなければなりません。

 そこで,私たちは,目指すべき道徳教育を,「お互いの生き方や価値観の違いを認め合い,そのよさを伸ばしつつ,共通して守るべきものはしっかりと身につけていく教育」ととらえ,「しなやかな道徳教育」と名付けました。

 やわらかいけれど芯はしっかりして決して折れない。そんな「しなやかな道徳教育」の推進を提案します。

 

2 「しなやかな道徳教育」推進に向けて

家庭で,地域で,学校で,「どうトク?」アクション~

 「しなやかな道徳教育」を進めるためには,家庭・地域・学校で,そして市民みんなで,共に生きるための知恵を寄せ合い,具体的な行動へつなげていくことが必要です。

 思いやりも,声をかけなければ,手を差し出さなければ,相手には伝わりません。そこで,共に考え,行動していく際のヒントになるものを提案させていただくことにしました。

 「道徳」は一般的には「人のふみ行うべき道(広辞苑)」と定義されています。しかし,「道徳」の言葉には,固いイメージがあり,その言葉を聞いただけで,敬遠されてしまう場合もあります。そこで,市民会議としての考え方をわかりやすく示し,理解をいただくため,「どうトク?」アクションを提案することにしました。

 「どうトク?」の「トク」は「説く(道理をわかりやすく説明する)」と「解く(ほどく,答えを出す)」の二つの意味をもたせています。「説く」は,教え,伝えていく道徳教育であり,「解く」は,共に考え,はぐくんでいく道徳教育です。しなやかな道徳教育の二つの視点を表しています。

 これらを参考にしていただき,家庭で,地域で,学校で,「どうトク?」アクションが広がっていくことを願っています。

 

(1)「はっきり」教える,伝える!

  子どもたちにはっきり教え,伝えていかなければならないことがあります。

 「人の生命の尊さ」「共に生きることの大切さ」「人としてやっていいことと悪いこと」「公私のけじめ・時間のけじめ」など,くり返し,子どもたちの心に届く方法で,「はっきり」と教え,伝えていくことが必要です。

 

(2)「しっかり」見せる,示す!

 子どもたちは,口で言われるだけでは,決して納得しません。

 「まわりの人との誠実なかかわり」「手本としての礼儀やあいさつ」「感謝の心」「社会や集団で共に生きるために必要なマナーやルールを守る姿」「自然を大切にする姿」など,子どもたちが共感をもって身につけていくためには,実際に大人が「しっかり」行動で示すことが大切です。

(3)「じっくり」語り合い,考える!

 子どもが誰にも相談できずに一人で悩み,自信を失ったり,問題を抱えていることがあります。また,大人が当たり前だと思っていることでも,子どもにとって当たり前ではなかったりすることもあります。

 「本当に自分を大切にした生き方」「他者への思いやり」「将来の夢や希望」「地域や社会とのかかわり」など,まず,子どもの話に耳を傾け,子どもの心を見つめながら,本気で「じっくり」時間をかけて語り合うことが必要です。

 

(4)「たっぷり」体験させ,共に活動する!

 子どもは,他者との協働や自然体験を通して,自然の素晴らしさや生きることの意味を知り,自覚を深めていくことができます。いつも大人の力によって,子どもが苦労や辛いことにできるだけ直面しないようにすることは,決して育てることにはつながりません。苦労することや我慢すること,他の人との葛藤など,様々な経験を乗り越えてこそ,子どもは大きく育つことができます。

 「家庭での役割分担」「地域行事への参加やボランティアなどの社会体験」「自然体験」「スポーツ活動や文化的な体験」など豊かな体験の機会を「たっぷり」設けたいものです。また,まわりの大人が一緒に汗を流すことも重要です。子どもが自信を持ち,「達成感を味わえる場」をしっかりつくっていきましょう。

 

 

 家庭・地域・学校で,共に考え行動していくためには,まず,子どものありのままの姿を温かい眼差しで見つめ,見守ることが必要です。

 今日,子どもたちをめぐっては,続発する青少年による痛ましい事件についての報道などを通じて,ともすれば否定的な面ばかりが強調され,一面的な印象でとらえられがちです。また,親だからといっても子どもの本当の姿をいつも正しくとらえられているとは限りません。先入観を持って子どもを見たり,社会の風潮とあきらめたりするのではなく,「良い点,悪い点」をしっかりと見つめ,そのうえで,一人一人の大人が「良いことは大いにほめ,悪いことは悪いと指摘する」など,自信を持って,子どもをはぐくんでいきたいものです。

 

 


 私たちの提案は,大人として子どもたちにどうかかわるかが中心ですが,見方を変えれば,〈共に生きるために〉大人自身がどのように互いにかかわり,支え合っていけるかにかかわってくるものです。まず,大人自身から「人と人,心と心のつながり」をより深め,広げていきましょう。

 

 

<こんな意見をいただきました ~市民アンケート調査の自由記述欄から~>

◆ あいさつは,人間が生きていく中での基本だと思っています。親から特にそのことで注意を受けたことはありませんが,親を見ていて自然に身に付いたように思います。まず,親が子どもの前でお手本を見せていれば身に備わっていくと思います。あいさつをすることによって,コミュニケーションを図れることも多々あるし,近所付き合いもそこから始まると思います。最近は大人ですら,挨拶の出来ない人が多いことにとても困惑しています。まずは大人から――を目標にしてほしいものです。

◆ 道徳教育は大切だし,必要だとは思いますが,“人に親切にしたため” “正義をもってしたため”…に起こる事件を聞くと,自分も子どもたちにも「絶対こうしなければ」「絶対しなさい」とは思えませんし,言えません。

◆ 学校では,子どもたちはいつも評価される立場にあるように思います。“道徳面”の評価は評価する大人の価値観,道徳観で違ってくるようにも思います。先ず,大人の“道徳の常識”を問い直し,子どもに道徳を“教える”のではなく,“見せ”てゆくことが大切だと思います。

◆ 小学校高学年や中・高になると,大人があとで何をされるか分からないし,こわいからと言って注意せずに,見て見ぬふりをしてしまう。その態度が余計にその子らをつけあがらせる事になるのに…。私は,どんな時でも正義を語れる大人でありたい。子どもは親だけではなく,社会で,まわりで育ててゆきましょう。


3「家庭で,どうトク?」アクション

▼家庭こそが,どうトク?の出発点

 子どもたちを心豊かにはぐくむうえで,家庭の果たす役割が重要であるということは言うまでもありません。

 「物質的に豊かな時代」「過去の経験則がそのまま通用しにくい時代」―それだからこそ,家庭教育のあり方,親の考え方や姿勢そのものが,今問われています。

 命を大切にする心,人間としてやっていいこと悪いこと,まごころのこもった思いやりと礼儀,感謝の気持ちや我慢,物や自然を大切にする心や基本的な生活習慣などは,家庭の中で,毎日の生活の様々な体験を通してこそ生きて身に付くものと考えます。

 また,大人や親が,近所やまわりの人とのあいさつやさりげない声かけを日常的に示すなど,子どもたちが大人になった時に,他の人とのかかわりが円滑に持てるような場や機会をつくりだしたいものです。

▼子どもに家事の分担を

 家庭には,家庭でしか味わえない安堵感や温もりがあります。子どもにとって,家庭が,最良の心の居場所であるためには,「自分も家族の一員なんだ」と実感できるように,子どもとの日々の何気ない会話の時間を設けたり,子どもたちに役割と責任を持たせる活動の場を設定したりすることなども大切だと考えます。

 

▼親も子も育つ“共育”を

 子どもが誕生すれば,親自身も「親」としての新たな学びが始まります。親として子どもにとって,それぞれの時期に本当に必要なことは何か,それが身に付くために親として何をしなければならないのかを,常に考え,行動していくことが必要だと考えます。それは子どもと共に学び,成長していくことでもあります。

 核家族化が進行し,人々の地域とのかかわりが希薄化する中で,孤立に悩む親が増えています。地域の中で,そうした親を支援する活動が少しずつ進められていますが,親自身も一人で悩むのではなく,積極的にまわりの支援や助言を求めていきたいものです。

 また,学校も,地域における親としての学びの場の一つととらえ,共に学び,また共に子どもを育てる活動に積極的に参画していくことも重要です。

 

▼やっぱり子どもは親の背中を見ています

 市民アンケート調査では,約8割の子どもたちが「尊敬する人がいる」と答え,学年によって割合は異なりますが,それぞれ3~5割の子どもたちが<母親><父親>を「尊敬する人」にあげています。

 心豊かな子どもたちをはぐくむ根本は,家庭について言えば,子どもと直接かかわる親が,そしてまわりの大人自身が,子どもから「尊敬される」存在になれるかどうかにかかっているのではないでしょうか。

 しかし,「尊敬される」といっても,決して聖人君子になることを求めるものではありません。子どもの話にしっかり共感的に耳を傾け,迎合することなく,言うべきことを伝え,共に考えるべきことを考えていく――そして,その姿勢を貫き通す,そのことが大切です。

 

▼父親も子育てにもっと参加しよう

 父親が,子育てや家庭教育に,もっと参加することも必要だと考えます。「父親は仕事一筋,母親は子育て」というような従来の意識にばかりとらわれるのはどうでしょうか。市民アンケート調査では,「父親の子育て参加は重要である」と考えている人が96.3%いるものの,実際に行動している人の割合は76.6%にとどまっています。京都市でも昨年「京都おやじの会連絡会」が発足し,「我が子の父親から,地域のおやじへ」を合い言葉に,活動が広まっています。

 子育てや家庭教育への参加といっても,多くの時間をかけなければならないわけでは決してありません。限られた時間の中でも,コミュニケーションに工夫をこらし,子どもとの絆を深めていくことができるはずです。

 

<こんな意見をいただきました ~市民アンケート調査の自由記述欄から~>

 自分自身がどこまで出来ているか,自信が無いのに子どもには理想が高くなってしまいます。出来るだけ自分(親)が態度で示して,見せていくことが大事だと思います。

 

 道徳観までもが多種多様化しており,同じ道徳観を見つけることが困難になっている今日この頃です。我が家の道徳観・価値観が正しいかどうか不安になることもありますが,家庭での常の話し合いを今まで通りしていきたいと考えています。

◆ 親が理想とする思いと,現実とは差があると思います。実際,仕事と家事との合間に子どもと接する時間を取るのがやっとです。でも,今という時にしか教えてあげられないことが有ると思いますので,その時間を大切にしたいと思っております。


4「地域で,どうトク?」アクション

▼人づくりの風土を生かして

 地域は子どもを包み込み,温かく見守り,はぐくむ機能を持っています。子どもたちは地域社会の身近な人間関係の中で,自己の道徳性を高め,社会性を身につけていくことができます。また,地域は,家庭教育をサポートし,時には,それを補完する役割を果たすこともできます。

 特に,この京都では,人づくりにかける教育的風土が現在まで脈々と伝えられ,子育てに悩んだ時,まわりの人に相談できるしくみなど,地域の中に様々な支援体制や「地域ぐるみで子どもを育てる」活動も広がりを見せつつあります。

▼地域行事にみんなで参画 ~子どもたちに役割と責任を果たす喜びを~

 環境美化や高齢者・障害のある人との交流はもちろん,「都」に古くから伝わる伝統的行事,学区や地域で新たにつくり出された各種の集いなど,地域単位で実施されている取組や行事に,子どもたちが自主的にかかわり,参画していくことは,まさに「共に生きる」学びの場になります。さらに,そうした場において伝統や様々な文化にふれる体験を通して,共に生きるためのボランティア精神や地域の一員としての自覚も培われていきます。

 その際,特に,子どもたちが様々な活動や行事の企画にも積極的に参画していくことが重要です。何から何まで大人が先回りをして準備をし,子どもは参加して楽しませてもらうだけでは,決して子ども自身の育ちにはつながりません。子どもを「お客さん」にするのではなく,子ども自身が一生懸命知恵を寄せ合い,力を合わせて,喜びが感じられる体験の場と機会を設定したいものです。

 

 市民アンケート調査によれば,ボランティア活動や地域の伝統行事への参加について,意識面,行動面ともに消極的な結果が出ています。大人も子どもも同じ傾向が見られますが,まず大人自身が参加し,体験してみてはどうでしょうか。

 子どもたちが学校で体験するボランティア活動などと,どこかで結びつき,新しい話題・つながりができるかもしれません。

 

▼学校へ出かけよう

 今,京都市の学校では,「開かれた学校」として,地域との連携が進められています。それぞれの地域の特色を生かしながら,地域の方をゲスト・ティ-チャ-として招いての総合的な学習や道徳の時間での活動,学校フェスティバルや夏祭り・地域生徒指導連絡協議会の活動などが実施されています。また,地域・保護者の方に子どもの様子を知ってもらうための「休日運動会」や「自由参観」「学校だよりの地域回覧」なども行われています。

 地域の人々と触れ合ったり,直接教えていただいたりすることは,子どもにとって貴重な体験となるとともに地域への愛着を深めることにもつながります。地域の方々も子どものいる・いないにかかわらず,積極的に学校へ出かけてみてはどうでしょう。きっと新しい発見もあるでしょう。

 

 

<こんな意見をいただきました ~市民アンケート調査の自由記述欄から~>

 

◆ 躾というものは,家庭の中で親が身に付けさせていくものだとは思いますが,集団の中でルールを守ることと辛抱することは子ども自身が学ぶものです。それをどう導いていくかについては,地域の人,大人たち,学校の協力が不可欠かと思います。そのための努力・協力を,私は一人の親として希望いたします。子どもは親の所有物ではなく,未来から託された宝物です。

◆ 道徳教育は,基本的には家庭が中心となってするものだとは思いますが,近年共働き家庭が多く,子どもが一人でいる時間も多く,親子の接する(関わる)時間も少なくなってきているように思う。家庭,学校,地域の関係が密になり,地域ぐるみでの子育てが出来ればいいなあと思います。

◆ 道徳は言葉のみで教えられるものではないと思います。いろんな人との出会いやいろんな素敵な人の姿・行為を見て学んでいくものだし,自分のことを見ていてくれる人がいて実践していけるものと思います。そういう意味で,大人も子どもも地域の人との交流が大切だと思います。


5「学校でどうトク?」アクション

▼道徳教育のさらなる充実を

 学校は,子どもたちにとって,多くの人とのかかわりを通して,学習しながら道徳性を高めることができる貴重な場です。友達や先生方などとの毎日のすべてのかかわりの中に,道徳の学びの機会があります。

 「ルールやマナーの尊重」,「人としてのよりよいあり方」,「自由と責任」,「権利と義務」などについての思いや考えも,学級や部活動などの共同作業の中から体験的に学び,共感することによってこそ,自分のものとなります。

 なかでも,道徳の時間は,子どもたちが集団で一つのテーマに向き合って考えを深め,話し合える場として大切で,しかも,学校でしかできないものです。そこで,子どもたちは,多様な価値観を学び,他者とのかかわりの中で自己の確立を図っていきます。道徳の時間をはじめとした学校の道徳教育のさらなる充実を望みます。

 

▼先進的な取組をすべての学校に

 私たち市民会議は,小学校や中学校の道徳の時間を参観し,道徳の授業が一方的な教え込みではなく,一人一人の子どもたちの心の育ちや生活体験に基づいた自分の思いや意見の交流・自己の振り返りの場であり,すべての子どもと先生が共感的な雰囲気の中で,道徳的価値について学び合っている姿に触れました。それぞれが過去の経験を通して,今まで描いていた学校における道徳教育のイメージが大きく変わりました。

 さらに,いくつかの学校では,「体験活動を生かした道徳教育の取組」「小学生・中学生が合同で学ぶ道徳の授業」「保護者も参加した授業」など先進的な実践が行われていることを知りました。また,すべての市立中学校で実施されている「生き方探究・チャレンジ体験」推進事業は,実社会における様々な体験を通して,自分の生き方や働くことの素晴らしさ・厳しさを自覚できる貴重な機会であり,まさに「道徳」の学びそのものです。

 今後,こうした体験活動をはじめとする先進的な取組が,全市の学校に広がっていくことを期待しています。

 

▼道徳教育の情報発信を

 また,学校での道徳教育が本当に実を結ぶのは,家庭と地域との連携があってこそです。道徳の授業の公開や学校だよりなどで,もっと積極的に,学校における道徳教育の実践についての情報発信が行われることを望みます。


 

▼子どもと向き合って

 先生方には,教師であると同時に,「一人の人間」として,目の前にいる一人一人の子どもたちに真正面から向き合っていただくことを望みます。自分自身の道徳観を今一度見つめ,自らの教育者としての力量を高めていただくとともに,子どもたちと共に考え,学んでいくという姿勢と熱意を持って,日常の指導にあたっていただくことが大切です。家庭での親子関係,地域社会における大人のかかわりと同様に,先生も子どもから親しみやすく信頼される存在であることが,学校における道徳教育の基盤であります。

 

 

<こんな意見をいただきました ~市民アンケート調査の自由記述欄から~>

 

◆ 小学校1,2年のときに学んだクラスメートの感想文や日記を綴った文集を大切にしています。低学年のうちに勉強よりも,人と接し,先生からの愛情教育を受けた僕のクラスの先生に今も感謝しています。

◆ 学校での道徳教育が授業のみに終わらないように,学校生活及び地域や家庭での日常生活にもつなげていかなくてはならないと思います。そのための連携的な取組の必要性を感じます。

◆ 学校などで教わる道徳は,確実に子どもの深層心理の中に備わっている。思春期にはあえてそれにふたをして,自分の中の「正」の部分に反抗するものです。自分を認め,受け入れ,自分らしく生きられる時期が来たら,必ず道徳心が再び目覚めると思います。大人は,強い信念を持って子どもに教え続けるべきです。愛すべき子どもが,いつか理解できる日のためにも。

◆ 私は43才ですが,私たちの時代もあまり学校で道徳の勉強をしたことは少なかったと思います。しかし,家庭や地域の目がとてもマナーに厳しかったと思います。21世紀になって新しい道徳教育を,親子で学ぶ機会があればよいと思います。

 

 

 

 

 

 

最後に

 

 平成13年8月の発足以来,私たち市民会議は学校視察も含めて様々な角度から討議を重ねてまいりました。

 討議を進める上で,日常生活の中で大人や子どもが何を大切に考え,実際にどう行動しているのか知るために実施した「市民アンケート」では,22,327人もの多くの方々から回答をいただきました。また,最終提言の検討にあたり作成した「中間報告」には209件もの市民意見(パブリックコメント)が寄せられるなど,いずれも予想をはるかに上回る反響で,実に多くの方々に私どもの提案をしっかりと受け止めていただいております。

 表現の仕方こそ異なりますが,子どもたちに豊かな道徳性を培うことの大切さ,そして,そのために大人自身,親自身のあり方や社会のあり方を見つめ直し行動していくことの必要性を肌で感じておられることに勇気付けられ心強くも感じました。具体的には,「道徳教育=しつけだと思います」「なぜこんなにファジーなのか」という内容から,「中間報告を白紙撤回すべき」という意見まで多岐にわたっており,またこの間,直接間接に市民会議に対し,多くの励ましや「ぜひ市民の行動に結びつく提言を出して欲しい」といった期待の言葉をいただく一方,「心の教育はいらない」などの声も寄せられているのも事実です。

 このことは,市民の皆様の関心の高さの表れであると実感するとともに,いただいたご意見一つ一つを貴重なものとして受け止め,私たちの提言として盛り込むべきものは盛り込みつつ,中間報告に必要な加筆を行い,今回,「道徳教育振興市民会議からのメッセージ」として取りまとめるに至りました。

 

 これまで,我が国の,とりわけ戦後の歴史の中で,道徳・道徳教育に関しては,様々な考え方が存在してきましたし,現在も存在しています。また,社会の急激な変化の中で,一人一人の考え方や価値観の多様化が進んできたことも事実です。

 そうした中で,これまで私たちは,「道徳」について市民的な広がりの中で論ずることはもちろん,大人として子どもたちに自信を持って正面から向き合うことについて,「および腰」や「逃げ腰」になっていた面はないでしょうか。そのことが今日の子どもたちの状況を生み出す要因の一つになっているとすれば,それを乗り越えていかなければなりません。

 このメッセージでは,一貫して,「はっきり,しっかり,じっくり,たっぷり」をキーワードとして,「大人の責任として,親の責任として,子どもと真正面から向き合い,本気でかかわること」の重要性を訴えてきました。

 中間報告に寄せられたパブリックコメントの中に,「この中間報告を見て,こんなことをみんなにアピールしなければならない時代なのかと改めて思った。当たり前が通らない世の中,変えていくのは,自分自身,大人である。」という意見がありましたが,これには同感の方も多いと思います。子どもに必要なことを教え伝え,また共に考えていく営みは孤立した関係の中では不可能です。相互の信頼関係の中でこそ,初めてその「心」を伝え,「共感」を得ることができます。

 すでに,京都市において,PTAでは「できることから行動を」を合言葉に,地域女性会は「隣のおばちゃん復活」,おやじの会は「我が子の父親から,地域のおやじへ」などのスローガンを掲げ,いち早く力強い活動を展開されています。また,様々な団体,NPOやボランティア,大学生などによる活動も進められています。

 しなやかな道徳教育を進めるために,若者も含めた大人一人一人が,それぞれの地域で「近所の『おばちゃん,おじちゃん』」,「となりの『おにいさん,おねえさん』」として、粘り強く子どもにかかわり続けていきたいものです。

 

 市民会議として,このメッセージを一人でも多くの方々に読んでいただき,それを契機として、市内のいたるところで,他を思いやる心豊かな子どもたちをはぐくむための建設的な論議が巻き起こり,京都ならではの「しなやかな道徳教育」の具体的な行動が展開されることを切望しています。この提言のサブタイトル「道徳教育振興市民会議からのメッセ-ジ」にはこうした熱い思いを込めています。

 家庭で,地域で,学校で,子どもたちに豊かな心,道徳性をはぐくむ「しなやかな道徳教育」が展開され,京都はもとより全国に広がり,おおきなうねりとなることを心から願っています。

 

 さあ,子どもたちのため,子どもたちと共に,半歩を,1歩を踏み出しましょう。

 

 

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京都市 教育委員会事務局指導部学校指導課

電話:075-222-3815

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