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人権総合情報誌「きょう☆COLOR」Vol.4(平成28年5月号)(HTML版)

ページ番号197043

2016年4月18日

人権総合情報誌「きょう☆COLOR」Vol.4(平成28年5月号)

輝きピープル ファッションモデル・タレント 佐藤 かよさん

一人の人間として向き合い、素直に受け止めてほしい。

 

女性モデルとして活躍していた平成22(2010)年に男性であることを公表し、その後も講演活動やSNSで自分らしく堂々と生きる考えを語り、多くの共感を得ている佐藤かよさん。私たち一人一人が自分らしく生きるために大切なことをお聞きしました。

 

物心付いたときから女の子


  不思議に思われるかもしれませんが、私自身、特に女の子になりたいとか、性同一性障害だとか意識したことはないのです。ただ、幼稚園で男の子、女の子に分けられたとき、おかしいなと思った記憶はあります。物心付いたときから長い髪の女性やイヤリングなどに憧れて、誕生日にはリカちゃん人形やセーラームーングッズを親におねだりするのが自然でした。兄がいますが、遊びや好みは正反対でした。

  小学生になると男女別々に遊びますが、私は野球やサッカーに興味がなく、女の子とも男の子とも遊んでいました。いつも周りに友だちやかわいがってくれる年上のお姉さんがいて、楽しかったです。けれども高学年になると、私が女の子と遊ぶと先生からよく思われないことが増えてきました。友達より周りの大人が過敏に反応していた気がします。

  家庭では、兄と同じ男の子のおもちゃを買ってもらっても面白さが分からず、自分自身が無理しているんだと気付きました。母もそのことに気付いたようでしたが、父は厳しい人なので、一時期、お人形遊びや女の子向けのテレビ番組を見ることも禁止されていました。それでも隠れて、ビニールひもでお人形を作って遊んでいましたね。できるだけ悩まないように、嫌なことは見ないようにしていた面がありました。 

 

学ランは着たくない


 中学では吹奏楽部に入り、友達もいて、学校は楽しかったです。ただ、学ランの制服を着るのがつらく、しばらくは我慢していましたが、徐々に落ち込むようになりました。中学2年の夏休みに母とけんかして1箇月家出。それまで母に悩みを打ち明けたことはなかったのですが、家出をきっかけに気持ちを酌んでくれるようになりました。学校には行きたい、吹奏楽も続けたいけれど、学ランは着たくないという私のために、母や友達が「体育の授業で使っているジャージで通わせてほしい。」と、学校にお願いしてくれました。

 しかし、先生の答えは、「前例がないし、他の保護者からどうしてあの子だけ?と聞かれたら困る。」。それで、私はここで生きていくことはできないんだと思いました。学校や部活が大好きだったけれど学校に行けない理由を先生に理解してもらうことは無理なんだと。もう先生とぶつかり合うことにも疲れていたんだと思います。

 

生き方を探して動き回る


 このとき14歳。女の子として生きていこうと決意しましたが、女の子の服を買うにもお金が必要。それは親に頼むのではなく、自分で稼いで好きなものを買いたいと思い、16歳からコンビニや飲食店でアルバイトを始めました。ファッションが好きだったので18歳からアパレル店に勤務。そこでモデル事務所にスカウトされ、「私にどこまで出来るんだろう。でもきっかけがあるなら、楽しそうだし、やってみよう!」と思いました。

 10代後半は生き方を探して動き回っていた時期。皆が学校で勉強している間、自分はどう生きていくかを真剣に考えなくてはと思っていました。普通に生きる同年代の友達を羨んでも、何も始まらない。自分で外に出て何かをつかむしかない。学校には行けなかったし、好きなものは手に入らなかったけれど、この頃、必死にもがいたことで意外な所から道が開け、他の人とは、違う形で夢を得られたと思います。

 

勉強も吹奏楽も 友達も好き。学ランを着なくていいなら、学校に通い続けたと思います。

 

モデルとして活躍中に公表

 

 女性としてファッションモデルの仕事をするうちに、チャレンジするからには皆に知ってもらえる存在になりたい、大きく実らせたいと思いました。既に普通の女の子として生活しており、モデル事務所の人もそう見てくれていたので性別のことは気にしなくなっていました。

 モデルとしてテレビや雑誌に出るようになってきた6年前、地元から私の性別についてうわさが出始め、事務所の社長の耳にも入ってきました。この先も女の子として生きていくつもりだったので、公表するかどうか悩みましたが、母に相談すると、「いつかそういう日が来ると思っていた。これからモデルの仕事で成功したいなら、避けては通れない道。あなたを信頼してくれている社長さんに話してみたら。」と言われました。

 私自身には男である自覚がなく、うそをついているつもりもないのに、そう思われるのは嫌だと思い、社長や周囲に打ち明けました。社長はすごく驚いたものの、一緒に頑張っていこうと背中を押してくれ、東京へ行きたいとの希望を酌んで、現在の事務所を紹介してくれました。そして、テレビ番組の中で公表するという方針を決めたのです。

  カミングアウトによって長年の肩の荷が下り、自分に正直になれました。家族とは衝突した時期もありましたが、この頃は既に見守ってくれていたので、「よかったね。」と言ってくれました。今では母や兄は「うちの娘がね。」「妹がいてね。」と私のいない所で周りに話してくれているそうです。私が頼んだわけでもなく、「妹」や「娘」と呼んでくれていたことはとてもうれしかったです。

 

「自分は自分」という考え方

 

 私の中で性同一性障害という自覚はなく、「私は私」であって、自分がどう思うか、どう生きるかが大事なのです。それを認める人と認めない人がいるとして、その天秤の中で生きるのはすごく難しいこと。なぜなら、その人たちは私がどう生きていけばよいかを教えてくれるわけではないから。結局、自分の生き方は、自分自身で考えて決めるしかないのです。

   性別に縛られず生きるためには、「自分は自分」という考え方を基本にすることです。その方が自分に自信が付くし、自分が本当にやりたいことも見えてきます。同じことで悩んでいる人が私を見て、「そういう道もあるんだ。」と生き方の幅、選択肢を少しでも広げられたらいいし、なりたい生き方がないなら、「自分で作ればいいかな。」くらいに感じてくれればいいと思います。誰かが考えたことや、誰かが作った仕組みの中で苦しむより、「そこから飛び出して、好きな生き方を見つけていく方法もあるよ。」と言いたい。強制はしたくないですが、※LGBTの当事者の方には勇気を持ってほしいと思います。 

※「LGBT」とは、L(レズビアン=女性同性愛者)、G(ゲイ=男性同性愛者)、B(バイセクシュアル=両性愛者)、T(トランスジェンダー=性同一性障害を含む体と心の性が一致しない人)の頭文字を取って並べた言葉で、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表しています。

 

決め付けず人間性を見る


 周囲の人は、LGBTの当事者、その人自身を素直に見てあげてほしい。何か協力や支持をしようとするのではなく、困っている人がいたら、ただ寄り添って話を聞いてあげる余裕を持ってほしいと思います。悩みの内容が理解できないとしても、一人の人間として向き合い、思いを酌み取るだけで、当事者はすごく救われます。私も、自分の人間性を素直に受け止めてくれた友人たちが周りにいましたが、特に性について相談したことはないのです。

 性同一性障害ということが目立ってしまうと、「そういう人はどう生きる?こう生きるんじゃないか。」みたいな決め付けがどうしても生まれる。私が一番苦しかったのは、そういう決め付けがあったこと。大切なのは、LGBTの知識を深めることではなくて、一人の人間として向き合うこと、それが特別なことではなくなることです。もし不思議に思うことがあるなら、素直にそれをぶつけてみてもいいのではないでしょうか。


 

プレゼント

サイン色紙を差し上げます!
佐藤かよさんのサイン色紙を3名様にプレゼントします。どしどし御応募ください!

 

応募方法

ハガキに郵便番号・住所・氏名・年齢・電話番号・「きょう☆COLOR」への感想・意見を必ずお書きのうえ、以下の宛先へお送りください。

 

締切り

6月30日(木曜日)(当日消印有効)

 

宛先

〒604-8571(住所不要)京都市人権文化推進課「きょう☆COLOR」Vol.4プレゼント係

★抽選結果の発表は発送をもって代えさせていただきます。

 

Profile

佐藤 かよ(さとう かよ)さん

昭和6 3(1 9 8 8)年1 2月2 6日愛知県生まれ。平成2 0(2 0 0 8)年より雑誌、広告などで女性モデルとして活動をしていたが、平成22(2010)年にテレビ番組内で男性であることをカミングアウト。現在では、テレビ、ファッションショーなど、モデル・タレントとして幅広く活躍中。

 

 

「人権ゆかりの地マップ」を持って出掛けましょう!

 

 京都市内に数多く存在する名所・旧跡等の中から、人権にゆかりのある地を紹介する地図を新たに作成しました。日本語版のほか、英語、中国語、ハングル版もあります。

 京都総合観光案内所(京都駅ビル2階)、市役所や区役所・支所等で無料で配布しているほか、京都市のホームページでも御覧いただけます。

 

⑴昨年11 月にグランドオープンした京都市動物園を一度見に行こうか。

⑵この「人権ゆかりの地マップ」を見ると近くに「全国水平社創立の地」を示す石碑があるよ。併せて見てみようよ。

⑶このマップは「人権ゆかりの地」だけでなく、近くにある有名な寺社仏閣や観光地なども載っているから、観光しながら「人権」についても学ぶことができるのよ。

⑷京都は、人権文化が歴史の中に脈々と息づくまちなんだね。


https://www.city.kyoto.lg.jp/menu1/category/19-2-0-0-0-0-0-0-0-0.html

「京都はぐくみ憲章」を実践しましょう!

 

 皆さんは「京都はぐくみ憲章」を御存じですか?

 京都市では、子どもの尊厳や命を守り、健やかな成長を支えるため、大人としてどのように行動すべきかを示した「子どもを共に育む京都市民憲章(愛称:京都はぐくみ憲章)」を定めています。子どもたちの今と未来のため、いつでも、どこでも、だれもが、「自分ごと」として、「京都はぐくみ憲章」を実践しましょう。
(詳しくは、 http://hagukumi2525.kyoto.jp/外部サイトへリンクします

 

こんな憲章実践の取組があります!
・NPO法人使い捨て時代を考える会 ~子どもたちの食のために~
「食育について、親子で学ぶことができる取組」

・京都教育大学 幼児教育科 ~親と子の心をつなぐ「うたとおはなしの会」「えほんのもり」~
「親子の感動と癒しを生み出し、学生も学ぶことができる取組」

・日本新薬株式会社 ~日本新薬こども文学賞~
「絵本をきっかけとして、子どもたちの夢を育む取組」
(「京都はぐくみ憲章」を実践している団体については、京都市においてその活動内容を広く周知いたします。)



「京都はぐくみ憲章」
いつでも どこでも だれもが 「自分ごと」として

 

我ら,企業市民

45 株式会社 京繊の場合

 

総合支援学校の実習受入れと積極的な採用


 京繊は、室町通四条上る東側にある明治33(1900)年創業の老舗。呉服店としてスタートを切り、現在は「京都さがの館」のブランド名で着物の仕立て・販売から成人式や観光客向けのレンタル事業まで幅広く手掛けています。その一方で、京都市立鳴滝総合支援学校などから障害のある生徒の職場実習を受け入れ、また、その採用も積極的に進めています。田中元子代表取締役社長(以下「社長」という。)、実習生を経て同社の社員に採用された谷めぐみさん、鳴滝総合支援学校進路指導主事の髙橋英子さんほか関係者の皆さんにお話を伺いました。

 

自立する力を着ける学習をサポート


 京繊が鳴滝総合支援学校の実習を受け入れたのは丁度2年前。それまでにも軽の精神障害者の採用実績があり、鳴滝総合支援学校で衣類の水洗いやアイロン掛けなどの技術を学んでいた谷さんらを着物類のメンテナンス部門の研修生として受け入れることにしました。年間の受入人数は4人程度で、実習期間は1週間から3箇月と生徒に応じて異なります。 

 社長は「障害のある人たちも私たちも、人間はみんな同じだと考えています。うちの会社には、丁度やってもらえる仕事があり、社会人としての目標を見付けてもらえるのではないかと受入れを決めました。先に採用した障害のある社員も顧客管理のデータ入力を任せていますが、ミスが許されない仕事をきちんとこなしてくれています。」と話します。

 鳴滝総合支援学校高等部生活産業科では、約70人の生徒全員の就職を目指して取組を進めています。働くことを通じて、社会人として自立できる力を身に着ける教育の一環として、京都市内の約200事業所の協力を得て、食品製造やクリーニング、スーパーマーケットなど様々な職場で1年生の時から職場実習を体験しています。

 同校の髙橋進路指導主事は「1、2年生は様々な職種や色々な環境での実習を通じて、働くこととはどういうことかを体験します。3年生は、本人の希望に沿いながら、障害のある人の採用計画が示されている事業所でできることを探り、就職を目指した実習を繰り返します。実習は、生徒にとっては自分を知り、可能性を広げるとても大切な機会。実習に行く度に生徒たちが確実に成長していると実感します。こういう機会や実習の場を与えていただいて本当に感謝しています。」と話します。

 

社内の雰囲気もより良い方向に変化


 谷さんは、2年生の時に京繊に実習に来て、そのまま着物類のメンテナンス部門に採用されました。現在は、1年後輩の達岡輝さんが同じ職場で実習生として研修を積んでいます。二人は主に襦袢(じゅばん)の洗濯やアイロン掛け、腰ひもや草履など小物の維持・管理を担当しています。

 谷さんは「最初はたくさん仕事があって、しんどいなと思うこともありましたが、何回もやっているうちにだんだんと慣れ、仕事が楽しくなってきました。」と振り返ります。また、現在実習中の達岡さんは「支援学校に入学した時は、着物の会社で働くなんて想像もしていませんでした。実習を通じて職場の皆さんとも良い人間関係が出来ているので、一生懸命頑張りたいと思います。」と笑顔を見せます。

 今では支援学校の職場実習受入れがすっかり当たり前になった京繊ですが、最初は社内に戸惑いや反感があったようです。実習には担当する社員が付き添いますが、社員自身も仕事を抱えているために十分に目が行き届かないときもあります。また、実習に手を取られて自分の仕事が遅れたり、うまく意思疎通ができずにいら立つ社員もいました。それが一緒に仕事を続けるうちに社内が少しずつ和らいだ雰囲気に変わっていったと言います。

  「最初は「どんな人が来るか分からん。」と反発する社員もいました。これに対し、私は、「分からんから来てもらうのよ。」と言っていました。」と社長。「ところがしばらくして、実習生と接することで相手のことを思いやって話すことの大切さに改めて気付いたという社員が出てきました。普段の接客と同じだと言うのです。うれしかったですね。」

  そうしたことがきっかけで、社内の雰囲気も良い方向に変わっていきました。実習担当の西垣康子さんは「実習受入れも3年目になり、社内に定着してきました。時間的にも精神的にもゆとりを持って実習生の皆さんと接していくことが大切だと考えています。」と話します。

 

もっと多くの実習生に職業体験の場を


  京都市内には7つの総合支援学校があり、就職を前提にした職場実習のプログラムがあるのは鳴滝と白河の2校。職業科の生徒数は両校合わせて約270名。しかし、生徒たちを受け入れる企業の数は、決して十分と言える状況ではありません。社長は「どんな会社でもできるとまでは言えませんが、できる限り障害のある人たちに働く楽しさを知ってもらえる場を作り、その機会を提供する経営者でありたいと考えています。また、他の会社の方々にもそうあってほしいと思います。」と話します。

 現在、メンテナンス部門で実習を積んでいる達岡さんは、今年4月から、社員として採用されることが決まりました。達岡さんは「職場実習を通して、だんだんと働くイメージが出来てきました。両親とも就職してからのことを色々と話しています。就職したら、休みの日には旅行に行ってみたい。」と夢を膨らませています。先輩になる谷さんは「私もしっかり頑張り、色々な仕事を覚えて、後輩にきちんと教えられるようになりたい。」と抱負を語ります。

 自社での職場実習の受入れや障害のある若者の雇用を通じて、社長には次の新たな目標が出来ました。それは、自ら設立した障害者雇用を支援するNPO法人の活動についてです。今春にも本社近くに福祉作業所をオープンして活動を本格化させる計画です。

 社長は「障害のある人たちにとっても、仕事は自分のためだけでなく、社会貢献の場でもある。できれば社会全体で働く場をもっと増やしたいのですが、会社の規模や業態によって、やはり限界があるのも事実。そこを何とかしたいと思い、福祉作業所を開設することにしました。障害のある人たちの働ける場をもっと作りたい。」とライフワークに懸ける意気込みを語ってくれました。

 

掲載した内容は、本年1月に取材した際のやり取りを基に作成したものです。

 

 

 

見て・知って人権 京の学生が行く

  

このコーナーでは、学生の皆さんに取材や誌面作りに参加していただき、毎号、京都市の人権関連施設を1箇所ずつ紹介していきます。

 

第4回
京都市長寿すこやかセンター
京都市成年後見支援センター

相談部部長 木村好美さん
担当部長  矢部典子さん

 

京都文教大学3 回生
藤崎 未来(ふじさき みく)さん

京都文教大学3 回生
佐伯 恵(さえき めぐみ)さん

京都文教大学3 回生
宮本 龍之介(みやもと りゅうのすけ)さん

両センターはどのような施設ですか。


 (木村)京都市長寿すこやかセンターは、高齢者が住み慣れた地域で、いきいきと健やかに暮らすことができるよう、高齢者の社会参加の促進や権利擁護、その他福祉の増進を図ることを目的に、平成15(2003)年6月に開設しました。認知症や介護、虐待、成年後見制度などの権利擁護に関する相談・援助や、講座・研修による正しい知識の習得や理解の普及、高齢者のサークル活動等の支援による社会参加の推進などに取り組んでいます。また、平成24(2012)年度には、京都市成年後見支援センターを併設し、成年後見制度※1に関する相談対応から制度利用に至るまでの一貫した支援を行うとともに、「市民後見人※2」の養成・支援を行っています。

 (矢部)事業内容は大きく分けて相談と講座・研修の2つがあります。相談事業はセンターの職員が電話、来所や電子メールで受ける一般相談と、弁護士や医師等の専門家による専門相談(来所・事前予約が必要)があります。また、講座・研修は、認知症等の方の介護や権利擁護、社会参加・仲間づくりを促すような様々な内容で開催しています。地域や団体向けに講師を派遣するものもあります。

※1「成年後見制度」
認知症などで判断力が不十分な方に代わり財産管理や契約等を行う人を選任し本人を支援する制度。

※2「市民後見人」
親族や専門職以外の一般市民の方々を、後見業務の新たな担い手「市民後見人」として養成し、後見業務の受任や活動への支援を行っている。

 

どのような方が利用されていますか。


 (木村)一般相談や専門相談は認知症の方を介護する家族の相談から高齢の一人暮らしの方の「終活」まで、実に様々な内容で幅広い市民の皆さんに利用していただいています。認知症についての正しい知識の普及促進については、平成18(2006)年度から「認知症あんしんサポーター」を養成する講座に力を入れています。地域包括支援センター※3等の関係機関の協力を得て、地域で開催し、平成26(2014)年度末までに60,870人のサポーターを育成しました。このほか、市民向けや社会福祉士、ケアマネージャーなどの専門職向けの高齢者の権利擁護や虐待防止のための講座・研修や成年後見制度に関する講座を開いています。本格的な長寿社会を迎えて、参加者は増えていますし、関心も高まっていますね。講座・研修などの詳細については、気軽にお問い合わせください。

※3「地域包括支援センター」
地域で暮らす高齢者を、介護、福祉、健康、医療など様々な面から総合的に支援するために各区市町村に設置されている機関。

 

成年後見支援センターではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。


 (矢部)長寿すこやかセンターでは、以前から成年後見制度の普及・啓発を行っていましたが、認知症高齢者が増加する一方で、手続が煩雑であることなどを理由に、十分に利用されていませんでした。そこで、成年後見支援センターが設置され、利用促進が図られることになりました。判断能力が十分でない方が介護サービス等を適切に利用するためには、契約を結ぶ等の手続が必要となりますが、財産を守るという経済的・法的な側面だけでなく、本人の権利擁護の側面からも成年後見制度が必要とされています。そのため、この制度を当事者や家族だけでなく、若い方も含めた幅広い市民と介護関連の専門職の方々に周知・広報・啓発するため、講座・研修を開催しています。また、今後、高齢化の進展に合わせて、この制度を利用される方が増えてくると、「市民後見人」の必要性が高まってくるため、その養成と活動支援にも取り組んでいます。志を持った「市民後見人」の重要性と必要性はますます高まってくると思われますので、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

 

読者の皆さんにメッセージをお願いします。


 (木村)「団塊の世代」が75歳を迎えるときには、認知症はもっと大きな社会的課題になってくると思います。年齢と共に罹患率が高まり、平成37(2025)年には、65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。そのため、たとえ認知症になっても安心して住み慣れた所で暮らせるように、「認知症にやさしい地域づくり」を推進していくことが大切です。そのためには、まず認知症について正しく理解してもらうこと、これも私たちの重要な仕事です。さらには、早く気付いて専門医の治療を受ければ進行を遅らせることができる場合もあります。是非、いつでも気軽に相談してください。また、元気な方も多いですから、高齢になっても介護サービスの受け手としてだけではなく、高齢者同士が支え合えるような活動も支援していきたいと考えています。

(矢部)その人らしく生きることを望むのは、人間として当然の権利です。そのような当然の権利を守るための制度の1つが成年後見制度です。是非、当センターが開催する講座・研修で制度についての理解を深めていただくとともに、必要であれば制度を利用してください。なお、相談は日・祝休日も含めて、ほぼ毎日受け付けています。分からないことや困ったことがあれば、気軽に相談していただきたいと思います。

 

相談室

相談室が3つあり、介護をされている家族や本人など関係者の様々な相談を予約制でお受けしています。平成26年度には2,095件(電話等を含む。)の相談がありました。

相談員の皆さんのほかに、司法書士や弁護士など専門家の方にも相談できるので安心ですね。個室で周囲の目を気にすることなく、落ち着いて相談できる雰囲気もいいと思います。

京都文教大学3 回生
藤崎 未来(ふじさき みく)さん

 

成年後見支援センター

成年後見制度の利用等に関する相談に11人の職員が対応しています。司法書士や弁護士等による専門相談も行っています。成年後見制度の普及・啓発活動にも取り組んでいます。

私にも高齢の祖母がいますが、何かあったときに気軽に相談できるので安心ですね。より多くの市民の皆さんに成年後見支援センターの存在を知ってほしいですね。

京都文教大学3 回生
宮本 龍之介(みやもと りゅうのすけ)さん

 

図書情報室

老人福祉センター、入所施設や在宅デイサービスなど高齢者に関わる様々な情報が入手できます。ソファに座って、ゆっくりと資料を御覧いただけます。

ここに来れば、色々な情報が入手できますね。こんなにもたくさんの情報があるなんて、ちょっとびっくり。エレベーターホールのすぐそばにあり、利用もしやすいですね。

京都文教大学3 回生
佐伯 恵(さえき めぐみ)さん

 

 

施設情報

所在地 〒600-8127 京都市下京区西木屋町通上ノ口上る梅湊町83番地の1(河原町五条下る東側)ひと・まち交流館 京都4階

問合せ先 TEL:075-354-8741

ホームページ http://sukoyaka.hitomachi-kyoto.jp/外部サイトへリンクします

開館時間 【平日】9時~21時30分 【日曜日・祝日】 9時~17時

閉館日 毎月第3火曜日(国民の祝日に当たるときは翌日 、年末年始(12月29日~1月4日)

入館料 無料

市バス4、17、205号系統「河原町正面」下車
京阪電車「清水五条」下車で徒歩約8分又は地下鉄烏丸線「五条」下車で徒歩約10分

 

 

障害者差別解消法が施行されました!!「障害を理由とする差別」?「合理的配慮」?

ひとがつながり みんなでつくる やさしさあふれる 人権文化の息づくまち・京都

 

 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が平成28年4月に施行されました。この法律のことを御存じでしょうか。

 障害のある人が社会の一員として尊厳を持って生活していくことを目的とした障害者権利条約が平成18年12月に国連で採択されました。日本は、国内の法整備を進め、平成26年1月に条約を締結しました。障害者差別解消法にも、条約の大切な考え方が多く含まれています。

 「差別がいけないこと」は誰もが分かっています。しかし、「障害を理由とする差別」とは何でしょう。この法律は、行政や民間事業者が、障害を理由に「不当な差別的取扱い」をしないこと、そして「社会的障壁」(バリア)を取り除くために「合理的配慮」を行うことなどを定めています。

 それでは、キーワードを通して、障害者差別解消法の概要を見てみましょう。

 

障害を理由とする差別


国・地方公共団体等や民間事業者が事務・事業を行うときに、障害のある人に対する次のことが差別になります。

「不当な差別的取扱い」をすること

「合理的配慮」をしないこと

※ これらの差別が禁止されているのは、障害のない人と平等な機会(チャンス)や待遇( 扱い)を保障するためです。なお、民間事業者による合理的配慮は努力義務とされています。

 

不当な差別的取扱い


正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供などを拒否したり、制限したり、条件を付けたりすることであり、例えば、次のようなことが差別に当たります。

障害があるという理由だけでスポーツクラブの入会を断る。

盲導犬の同伴を理由にタクシーの乗車を断る。

 

合理的配慮


個々の場面で、障害のある人から何らかの意思表明があった場合に、「社会的障壁」(バリア)を取り除くために必要となる配慮です。状況に合わせて、過度の負担にならない範囲で行います

例えば、車いすは、数㎝の段差で前に進めなくなることがありますが、このような場面で、簡易スロープを付けたり、人力で補助したりすることで、目的の場所に行けるようにすることが合理的配慮です。求められているのに適切な対応をしないと差別になります。

※ 合理的配慮は個別的な対応です。同じような配慮が多く必要とされることが見込まれる場合は、個々の配慮を的確に行うための「環境の整備」(あらかじめ環境を整えておくこと)も大切です。

 

社会的障壁


障害のある人にとって日常生活や社会生活を送るうえで支障となるものです。利用しにくい施設や制度、障害者の存在を意識しない習慣、障害に対する偏見などがあります。

例えば、難しい漢字ばかりの書類では、理解しづらい人がいます。画像ばかりのホームページは、読上げソフトが使えないため、目の見えない人には分かりません。

※ 障害のある人が障害のない人よりも不利になる(制限を受ける)のは、その人の心身の障害のみに原因があるのではなく、様々な社会的障壁が存在するからであるという考え方を「社会モデル」といいます。これは、障害者権利条約にも大きく反映されています。法が合理的配慮を義務付けているのも、この考え方に立っているからです。

 

まずは身近な所から


障害者差別解消法の目的は、障害を理由とする差別の解消を進めることで、障害の有無によって分け隔てられることのない、全ての人が相互に尊重し合いながら共生する社会(共生社会)の実現に向かっていくことです。

その人にとって必要な配慮は何か。もちろん思いやりは大切ですが、他の人と同じように権利を使えるために、どのように対応の仕方を変更・調整できるかが問題です。

一口に「障害」と言っても、人によって事情は様々です。まずは、知ること、知らせること。そして、実践すること。コミュニケーションを大切にしながら、共に考え、バリアをなくすためにできることを一つ一つ実行していきましょう。

 

障害の多様性、障害に関する理解の促進


 障害を理由とする差別をしないよう、国・地方公共団体等は自ら「対応要領」を定め(地方公共団体等は努力義務)、民間事業者は主務大臣が定める「対応指針」(ガイドライン)により、それぞれが適切に対応することになっています。

 京都市では、本年1月に「京都市対応要領」を策定しました。策定に当たり、障害のある方や、家族の方から多くの御意見等をお聴きする中で、障害が多様であること、理解されにくいことについて、御指摘を頂きました。

 例えば、聴覚障害のある方からは、「手話を使う者にとって手話は言語そのものである。筆談さえできればよいという問題ではない。」というお話がある一方で、「聞こえないから手話を使えると誤解される。筆談等による適切な対応をしてほしい。」というお話もありました。

 なお、京都市では、手話に対する理解の促進及び手話の普及に関して、「京都市手話言語がつなぐ心豊かな共生社会を目指す条例」をこの4月に施行しています。

 

京都市のホームページ「障害を理由とする差別の解消の推進(トップページ)」

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000192671.html
(保健福祉局障害保健福祉推進室)

 

 

《お知らせ》

講座開催の御案内 京都市主催 平成28年度 企業向け人権啓発講座

参加費無料

※対象は、京都市内に事業所を持つ企業等の経営者層、人事・総務責任者、人権研修推進者等です。

 

第1回 講演及びグループディスカッション


ハラスメント対策の心得~防止に努め、発生に正しく対処するために~
アンコールの声に応えて、昨年度好評の講座を開催!

●日時 平成28年5月26日(木曜日) 午後1時30分~午後4時30分

●場所 場所 京都私学会館 大会議室(下京区室町通高辻上る山王町561番地)

●講師 辻 孝司(京都はるか法律事務所弁護士)

●定員 60名(先着順)

●申込期間 平成28年4月18日(月曜日)~平成28年5月25日(水曜日)
(中小企業庁委託事業)

 

第2回 講演


インターネット社会と人権~企業に求められる情報管理の徹底とリスク回避について~

●日時 日時 平成28年6月28日(火曜日) 午後2時~午後4時

●場所 京都私学会館 大会議室(下京区室町通高辻上る山王町561番地)

●講師 山崎 文明(公立大学法人会津大学特任教授)

●定員 100名(先着順)

●申込期間 平成28年4月18日(月曜日)~平成28年6月27日(月曜日)
(中小企業庁委託事業)

 

第3回 講演及びパネルトーク


ストップ!ブラックバイト ~配慮すべき企業の心得~

●日時 平成28年7月27日(水曜日) 午後2時~午後4時30分

●場所 京都私学会館 大会議室(下京区室町通高辻上る山王町561番地)

●講師 京都労働局、社会保険労務士

●パネリスト 株式会社エムジー、株式会社京進、株式会社ナジック・アイ・サポート

●定員 100名(先着順)

●申込期間 平成28年4月18日(月曜日)~平成28年7月26日(火曜日)

●共催 京都CSR推進協議会
(中小企業庁委託事業)

 

第4回 講演


犯罪被害者等の人権 ~企業が理解し、配慮すべきことについて~

●日時 平成28年8月25日(木曜日) 午後2時~午後4時

●場所 京都私学会館 大会議室(下京区室町通高辻上る山王町561番地)

●講師 岩城 順子(犯罪被害者遺族、京都府犯罪被害者支援コーディネーター、社会福祉士)

●講師 冨名腰 由美子 (公益社団法人京都犯罪被害者支援センター事務局長)

●定員 100名(先着順)

●申込期間 平成28年4月18日(月曜日)~平成28年8月24日(水曜日)
(中小企業庁委託事業)

 

第5回 講演及び演習


人を大切にする企業活動に向けた人権感覚の育成 ~想像して気付く現状と課題~

●日時 平成28年9月28日(水曜日) 午後1時30分~午後4時30分

●場所 京都私学会館 大会議室(下京区室町通高辻上る山王町561番地)

●講師 福田 弘(筑波大学名誉教授、公益財団法人人権教育啓発推進センター上級特別研究員)

●定員 60名(先着順)

●申込期間 平成28年4月18日(月曜日)~平成28年9月27日(火曜日)
(中小企業庁委託事業)

 

申込方法

京都市ホームページ(京都市 企業向け人権啓発講座 検索)からFAX 366-0139(お問合せはTEL 366-0322へ)
入手した申込書に必要事項を記入してFAX(075-366-0139)でお送りいただくか、電子メール([email protected])に必要事項を記載して送信してください。


※各会場などにお越しの際は、公共の交通機関を御利用ください。

※手話通訳・要約筆記を必要とされる方は事前にお申し込みください。

※定員を超えた場合は、その旨をホームページに掲載し、受付を終了しますので、あらかじめ御了承ください。

※頂いた個人情報は、京都市個人情報保護条例に基づき、他の目的には使用しないとともに厳重に管理します。

※詳細につきましては、京都市人権文化推進課のホームページから「企業啓発」のページを御覧ください。
 また、過去の「企業向け人権啓発講座」の講演録等も公開していますので、御参照ください。

御利用ください!! 企業向け人権クイズ


人権研修のノウハウがなくても、時間に制限があっても、15分程度で手軽に研修が行えるクイズ形式の教材を配信します。「人権クイズ」で社内研修をやってみませんか?

詳細は、京都市ホームページ 京都市 人権クイズ検索へ

 

「企業内人権啓発推進員」の設置のお願い


経営理念に人権尊重を位置付け、人権尊重の風土づくりに努めましょう。公正な採用選考をはじめとする人権尊重を基盤とした活動を行うとともに、「企業内人権啓発推進員」の設置をお願いします。

「企業内人権啓発推進員」の設置や変更をされた場合は、京都地方法務局人権擁護課【TEL:075-231-0131】まで御連絡ください。

 

編集後記


 障害者差別解消法が4月1日に施行されました。「障害」という言葉については、「障がい」と表記すべきとの御意見もあります。いずれにしても、社会に存在する様々な差別やバリア、これこそが「障害」であり、この「障害」をなくすことにより、誰もが相互に人格と個性を尊重し合いながら共生できる社会を目指すことが法律の目的です。法律の内容は本号でも特集として採り上げていますので、是非御一読いただき、身近な所から、それぞれの立場でできる配慮や工夫を始めましょう。

 

人権総合情報誌 きょう☆COLOR vol.4 (発行 平成28年4月)

発行:京都市 文化市民局 くらし安全推進部 人権文化推進課

☎ 075-366-0322 FAX 075-366-0139

〒604-8091

京都市中京区寺町通御池下る下本能寺前町500番地の1 中信御池ビル6階

URL https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/soshiki/6-2-3-0-0.html

この冊子はホームページでも御覧いただけます。また、区役所・支所地域力推進室、市役所案内所ほかで配布しています。

 

この印刷物が不要になれば「雑がみ」として古紙回収等へ

京都市印刷物第283015号

お問い合わせ先

京都市 文化市民局共生社会推進室人権文化推進担当

電話:075-222-3096

ファックス:075-366-0139

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