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市長記者会見(2023年5月30日)

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2023年4月12日

市長定例記者会見(2023年5月30日)

ピックアップ動画(記者会見のポイントを紹介)

市長記者会見動画


「京都・文化ファンドレイジング戦略推進事業」について、京都市長が記者会見を実施しました。 

※発表内容は、令和5年5月30日時点の情報です。 

市長冒頭発言

(門川市長)

 本日は、社会全体で文化芸術を支える仕組みを構築する「京都・文化ファンドレイジング戦略推進事業」について御説明させていただきます。

 今年の3月27日に、文化庁が機能を強化して移転し、5月15日から390人体制で、本格的な業務が開始されております。オール京都で国に要請し、国の御英断がありました。文化で地方創生、日本中を元気にしよう。文化でより世界から憧れ、尊敬される日本にしていこう。さらに文化とは、多様性を認め合い、包摂性のある社会を作っていく。世界の平和にも貢献していく責務があると考えております。そして、いよいよ京都の役割が深まってきていると思います。文化庁としっかり連携を深めて、取り組んでいくときだと考えております。

 国の文化審議会文化経済部会の報告書では、「文化芸術エコシステムの基軸」の一つに「ファンドレイジングと税制措置」が挙げられております。アメリカ等では、税制の関係でどんどん寄付が集まる社会になっています。国においても、そうした取組を強化されると思います。「寄附・寄贈の推進」は、京都の千年を超える文化芸術には、土地柄、芸術家を育て、支えてこられた歴史でもあったと思います。そうしたことを踏まえて、今日発表する取組は、国の施策と方向性を同じくするもので、国の動きに先駆けて展開する取組でございます。

 お手元の記者会見資料を御覧いただきたいと思います。

 京都市では、「都市の成長戦略」の一つとして、「文化と経済の好循環を創出する都市」としており、「京都アート・エコシステム実現プロジェクト」、様々な取組の中で展開しております。文化と経済の融合が最近盛んに言われていますが、京都の産業と言うと、京焼、清水焼、京友禅、あるいは西陣織、あらゆる産業が文化と融合していることを改めて実感いたします。今では伝統産業と言っていますが、かつてはこれらはすべて基幹産業でした。そして、その伝統産業がイノベーションを起こして、新たな産業が起こっています。世界ナンバーワン、オンリーワンの企業がたくさん京都から生まれてきているのも、その根底は伝統産業であると言っても過言ではありません。印刷技術や染めの技術が、半導体製造装置に発展しているなど、たくさんございます。そのような中で、今日発表させていただきます。1ページを御覧ください。 

 事業の「背景」と「実績」です。

 まず、事業の「背景」、「コロナ禍による文化芸術の社会的価値の再認識」と実感いたしております。

 令和2年1月以来、多くの展示や公演、あるいはお茶会などが中止になりました。あらゆる芸術家や表現者が厳しい状況に陥りました。思い出しますのが、令和2年2月に全国一斉の臨時休校が要請されました。そして、4月には緊急事態宣言。外出を8割抑えましょうと言われました。そんな中、京都市では5月に、全国に先駆けて緊急奨励金制度を設けました。最初に、2件、5千万円の寄付をいただきました。そして京都市の予算も含めて、3億円の予算を用意し、上限30万円で、1,000人を超える芸術家、表現者の支援を行いました。これが全国的に大きな反響を呼び、全国紙の社説でも評価されました。その後、文科省が、文化芸術関係者を支援する制度を構築されますが、文化芸術関係者からは、その先駆的な役割を果たしたと言っていただいています。国においても、「皆さん自宅にいましょう」「演奏会も何もかも中止を要請している中、文化芸術関係者の支援をするのはいかがなものか」という議論が、3年前にはありました。そのような中で、京都市の取組は必然だったと思います。京都は文化芸術関係者がたくさんおられる、その人たちが本当に困っておられる、苦しんでおられる。その中で、自然発生的に寄付が集まり、京都市もそれに応えて決断して、官民が一体になって、苦しいときに、挑戦される方を応援することができました。そして、3年経ちました。改めて、「不要不急」の象徴のように言われていた文化芸術が、人間が人間らしく、心を繋いで生きていくために、必要不可欠なものであるという認識が深まり、高まりました。今コロナ禍が明けつつある中で、文化芸術関係に、多くの市民・国民の皆さんの関心が高まり、参加が深まっています。そして、文化庁が京都に移転し、文字通り、京都が再び日本の文化の都になった状況の中で、京都市としてどういうことをしていこうかということです。

 この事業の「具体的な取組と実績」でございます。

 令和3年10月に、文化芸術関係者の意欲的な活動を個人・企業の寄付等により社会全体で支援していくため、「Arts Aid KYOTO」という制度を創設しました。ふるさと納税制度を活かして、個人・企業からの寄付を呼びかけ、これを民間の文化事業の補助に結びつけるという取組です。令和3年は5,000万円、令和4年は2億3,000万円の御寄付をいただきました。合計約2億8,000万円と、大口の寄付もあり、昨年はどっと増えましたが、そうした御寄付をいただきました。これを基に75件の事業に補助をさせていただきました。

 そして、ガバメント・クラウド・ファンディングにも積極的に取り組んでおります。今までに約5,500万円の御寄付をいただきました。これは、令和元年から、自治体が始めて以降、一番早かったのではないかと思います。

 昨年度から、京都市京セラ美術館を会場として、チャリティ・オークションを開催しております。

 昨年5月の第1回では、名和晃平(なわこうへい)さんなど、21の錚々たる芸術家の作品を出品していただき、約3,300万円の売上げがございました。これを、新進気鋭の芸術家の支援に使っていく、そして昨年はキーウへの支援にも使わせていただきました。

 なお、ちょうど昨日、第2回目のチャリティ・オークションを開催させていただき、ガラ・ディナーもあわせて開催しました。都倉(とくら)長官も御出席いただき、御挨拶いただきました。おかげさまで、今回は昨年より多く、24点が出品され、全てが落札され、約6,300万円になりました。非常にありがたいことです。例えば、蜷川実花(にながわみか)さんの作品、あるいは名和晃平さんの作品、それから村上隆(むらかみたかし)さんが特別に、京都のためにということで、作品を出していただきました。村上隆さんの作品は1,400万円で落札されました。蜷川実花さんの作品は950万円で落札されました。そのような形で、大いに盛り上がりました。これらについて、必要経費を除き、キーウへの支援と若手芸術家の支援に活かしていきたいと考えております。

 様々な取組をしてきましたが、やはり常設のポータルサイトが無いということで、「Kyoto Art Donation」を開設しました。さらに、ここではオンライン・カード決済ができるようにして、一層、常設性と簡便性を追求していきたいと思います。こうしたことは政令市では全国初で、全国的にもあまり例がなく、文化芸術都市・京都ならではの取組であると考えています。

  社会全体で文化芸術を支え、「京都アート・エコシステム」をより確かなものとするための最新のプロジェクトとして取り組んでまいりたいと考えております。

 「Kyoto Art Donation」のおおよその構成を御説明申し上げます。

 まず1つは、「寄付で応援」ということです。もう1つは、「参加で応援」、ボランティア等への御参加でございます。そして、その次は、「1度だけの寄付」から「継続的な寄付」につながっていくということです。さらに、「施設や事業を選んでの寄付」、そして「遺贈寄付」も、これからのメニューとして用意したいと思っています。

  この部屋と隣の茶室も1億円の寄付を活用したものです。そうしたことも、これからしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。そして、寄付は御縁があって、初めての「1度だけの寄付」から、「継続寄付」として、例えば二条城の寄付も、毎年いただく方もおられます。そうしたことが京都のファンになっていただく、そうした取組にもつなげていきたいと思っています。そうした方に、この仕組みの中で、定期的にメールや会報をお送りし、交流の場を設ける、そしてファンのコミュニティを醸成していく、そうしたことも進めたいと考えております。関係人口という言い方ができると思います。経済的な御寄付もありがたいですが、いろいろな文化事業をするときに、ボランティアとして参加していただくことも尊いことです。そうした事も含めて、取り組んでいきたいと思います。

 改めて「Kyoto Art Donation」の特徴をまとめます。

 まずは何と言っても「協働性」です。市民の皆さんと共に汗をかいて、全国の、世界の京都ファンの方と一緒に取り組んでいくことです。そして、できるだけ取組を可視化したい。何にお金を使っているのかをしっかりと説明して、究極的には「ファン」の「度合い」を高め、つながりをひろげていく取組にしてまいりたいと考えております。

 結びになりますが、「目標」と「今後の予定」でございます。この戦略によって、毎年1~2億円の文化芸術振興財源にしていきたいと思っています。額に幅がありますが、大口寄付がありますと、額がどんと上がり、2億円を超えるときもあります。現に昨年度は2億3,000万円でした。皆さんの善意で、非常に厳しい状況にある文化芸術関係者を支援していきたいと思っております。よく言われることですが、日本のアート市場は、世界の3%あまりです。世界のアート市場の40%はアメリカです。そして、中国圏が従来数%だったところ、20%を超えてきました。日本で、京都で頑張っておられる作家の作品が無くなり、欧米に流れ、そこでは10倍、100倍で取引される例がいくらでもある状況です。アート市場を拡充していくことも大事ですので、昨日のオークションも、民間での取組を支援することも含めて、頑張っていきたいと思います。私からは以上です。

質疑応答(摘録)

発表案件『京都・文化ファンドレイジング戦略推進事業』について

記者

 寄付者に寄付をして良かったと実感してもらうための仕組みは、どのように作ろうとお考えですか。

 

市長

 その点が現時点では、まだまだ不十分であるように思っております。

寄付者との連携だけではなく、寄付によって様々な文化が成り立ち、また人が育っているということを、市民の皆様、また全国の方々と共有していくこと、これも極めて大事なことだと思います。最近では、ネットで情報発信もできますし、会報なども作成し、そして可能であれば、例えば京都市京セラ美術館で、あるいは二条城で交流の機会を作っていく。そうした取組をしていきたいと考えております。皆様の御意見も大事にさせていただき、取り組んでまいりたいと思います。

 

記者

 情報発信やコミュニティを作っていくという部分に市としては力を入れていくという理解でよろしいですか。

 

市長

 はい、そうです。去年から「Arts Aid KYOTO」などの取組を文化財保護にも拡大し、例えば、輪違屋の建物の補修などにも多くの方が寄付されました。今後は文化財が修復されていく様子も発信していくことで、みんなで支援する持続可能な取組になり、また新たな展開ができると考えております。


記者

 文化の中でも特にどの部門に積極的に投資が必要だとお考えですか。

 

市長

結論から言いますと、どの部門が大事だということは申せません。京都の文化は多様性と重層性だと思います。文化庁に京都移転の要請活動をしている時に、伝統文化、文化財は圧倒的に京都だという意見がある一方で、現代アート、先端の舞台芸術などは東京だという意見がありました。

それに対して、ドイツ、フランスは世界に4か所しかない滞在型の芸術家を育てる拠点として、ヴィラ九条山やヴィラ鴨川を京都に両方とも置いています。そこはドイツの最先端の舞台芸術家が京都の能・狂言から学び、最先端の現代アートの方が漫画から、あるいは京都の伝統的な絵画から学んでいます。これが京都の素晴らしさだと思っています。

つまり、伝統と先端を分けることはできないと考えております。

どの部門に投資が必要というよりも、人を育てること、そして審美眼を持った人を育てることの両方が大事だと思います。同時に、それを分かる人を育てていく。幅広い取組をしていきたいと思っています。

 

記者

 再来年、関西万博が控えています。今回、新たなポータルサイトも作成していますが、これからどんな取組をしていきたいとお考えでしょうか。

 

市長

 関西万博まで700日を切りました。私は昨年11月、さらに今年の4月、醍醐寺で行われた機運醸成の催しに参加させていただきました。10人のすばらしいプロデューサーのうち6人に来ていただいて、それぞれ抱負、構想を語られましたが、それらがいかに京都と繋がっているかということを実感しました。

 そして、4月13日、夢洲で行われた起工式にも行きました。総理も来られたセレモニーの後、プロデューサーが一言ずつコメントされました。これも京都と繋がっているなと。京都と御縁の深い方もたくさんおられました。

 例えば、食を中心とした文化は小山薫堂さん、観光大使もやっていただいていますし、京都館の館長でもある。また、落合陽一さんは市立芸大の客員教授をしていただいています。そして、会場の大屋根の世界最大の木造のリングは、清水の舞台をイメージし、(万博終了後は)解体できる(再利用できる)ということでした。京都というまちは、いのちをテーマに芸術家が、科学者が、宗教家が、町衆がいのち輝く未来を、千年を超えて創り上げてきたということです。あの木造のリングの真ん中に森がありますが、その森の原点は京都の庭園文化であるという説明もありました。

このように、京都が果たすべき役割は非常に大きいということで、昨日、西脇知事や塚本商工会議所会頭などと大阪・関西万博を京都でどう成功させていくのか、成功のために京都がどういう役割を果たしていくのか、京都でいかにレガシーを残していくかということを議論しました。多彩な意見が出て、基本構想等はまとまりました。

 その中で一つ面白かった、良かったなと思うのは、若手部会をつくり、もっと学生さんにも参画いただこうという方針が盛り込まれました。中身はこれからですが、京都ならではの取組に繋がっていくことを確信しました。

 池坊専好さんも大阪・関西万博のスタッフに参加をされており、昨日もお越しでしたが、裏千家の千宗室家元がおっしゃった市民大茶会が素案にあります。これは家元がJCの関係で関与されたことですが、以前金沢で街角茶会というのを開催されたそうです。上から目線で行わず、それぞれの街角でお茶を点て、そこにお菓子や料理、点心、お酒が出てくるというものだったそうです。金沢の場合は歩ける範囲で実施し、非常に盛り上がったとのことです。これを京都なら、例えば京都の交通の利便性も考えながらやれば良いのではないかとの話でした。また、座長の山極壽一先生が、川が人を繋ぐということで、川を生かしてやれば良いのではないかとの御意見もおっしゃっていました。まだ構想段階ですが、非常に議論が盛り上がりました。

 6か月間という長期にわたっての開催期間で、かつ多言語での情報発信、若い人の参画ということを考え、私が改めて痛感しているのは、かつての万博は一方的な情報発信だったということです。これが今は万博の考え方が180度変わり、ドバイ万博などは対話型でした。もう一つは社会課題の解決というのが万博の最大のテーマになっています。そして、今回コロナ禍が明けて環境問題といのち、そして持続可能な社会をテーマにしています。これは京都の強みが最大生かされる機会になると思います。関西全体で連携しながらしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 

記者

 先ほどの発表の中で、芸術家を育てていかないといけないとおっしゃっていましたが、市立芸大などを卒業された方々が京都で就職できないなど、芸術家の育成について現時点で何か課題を感じられている部分はありますか。

 

市長

 京都は市内だけで36の大学があり、それから15万人の学生さんがおられ、1万4,000人の留学生がおられます。全体として学生さんや芸術家が育っています。京都は人口当たりの芸術家の数が多いということです。

六つの芸術系大学があると一般的には言われていますが、この表現はいかがなものかと思います。例えば、同志社大学にも、立命館大学にも、芸術を学ぶ人はいっぱいおられます。あるいは、京都大学でも龍谷大学でも(芸術を学ばれる方はいるが)、芸術系大学とは言いません。多くの大学で若い人が芸術を学んでおられます。世界で最も芸術を学ぶ人が人口当たりで多いのではないかと思います。もちろん京都で学ばれた方が、全国に、世界に行かれて活躍される、京都の大学で学んだ人は京都で活躍してくださいというものでもないと思います。大学のまちは、そういうことだと思います。

 ただ、今、京都で芸術家が定着しようという動きがあります。あるいは、昨日のアートオークションでも、他都市の出身の方が京都で最近住まわれ、京都で創作活動をされるという機運も起こってきました。

 一つ典型的なものが、梅小路周辺にKAGANHOTELというホテルがあります。かつてそこは30室の女子寮でしたが、10室をホテルとして使っておられます。あとの20室は、芸術家が創作活動しながら、ホテルでアルバイトもできます。そして、制作の発表もできます。野菜の倉庫もあり、天井高が5mあります。したがって、真ん中を抜いたら100号の絵が入ります。芸術家の方はここに2年間滞在できますが、2年経ったら出て、京都の町家等で展開されるといった取組が広がってきています。

 私どもも今、HAPS(東山アーティスツ・プレイスメント・サービス)がその典型ですが、そうした取組を民間事業者と一緒になって進めていきたいと思っています。

 もう1点は天才アート、障害者アートの取組です。例えば北区の楽只小学校の跡に、創作の場所と、さらに展示の場所を作る(ふれあい共生館)。そうしたことで障害のある人が芸術で社会参加されるような取組も促進していきたいと思っています。


一般質問

記者

 門川市政でどういうところが一番達成できたのか、課題に感じていらっしゃることは何か、そして残りの任期で大切にしていきたいところは何かについて教えてください。

 

市長

 先だっての市会本会議でも私の考え方を述べさせていただきましたが、4期目は、京都の伝統を生かしながらあらゆる改革を進めてきました。

 収支均衡を目指すことが、私の4期目の最大の目標でございました。改めて財政状況を全て公開し、市民の皆さんや議会にも分かりやすく御説明させていただきました。そして、改革の方針を定め、10年を超えてかかると言われた収支均衡を、3年で達成することができました。市民の皆さん、事業者の皆さんの御理解、御協力の賜物だと思っています。

 もう一つは、4期目に立候補した選挙の最終盤で直面したコロナ禍です。厳しい状況の中で市民の皆さんの命と健康、暮らしを守り抜くということで、あらゆる取組に集中してきたというのがこの3年あまりでございます。ようやくコロナ禍も新たな展開になり、収支も均衡し、財政難克服への道筋が明らかになってまいりました。

 そして、今進めておりますのが、3年半前に市民の皆さんにお約束した今と未来に責任を持つこと。特にコロナ禍が明け、文化庁が京都に移転しました。市民の皆さんの豊かさにつながるあらゆる成長戦略、これは文化も一つあります。また、あらゆる社会課題解決のためのスタートアップ、これも世界的にも評価していただける取組が始まってきていると思っています。

 もう一つは景観政策。私が市長に就任する直前に前市長が景観政策、6つの条例をつくっていただき、徹底して大切にしてきました。

 京都のまちは、保全と再生と創造、この三つの調和であります。ところが、あたかも京都市域全域が保全であるかのような誤解を与え、現に総合設計制度や地区計画といった様々な特例許可がほとんど適用されなかった10年間でありました。5年前、市長就任10年、新景観政策10年の時に、景観政策の成果と課題、そして活力ある京都をつくっていくために審議会を立ち上げ、そしてその審議会の答申に基づき都市計画の見直しを実施したのが、この4月でございます。

 しかし、今が大事なときです。人口減少社会への対応も含めて、あらゆる取組を市民の皆さんの豊かさ、そして京都の経済、京都の企業の活性化のためにあらゆる政策を一気呵成に進めています。今が大きな転換点だと思います。10年後、50年後に、あの令和5年という年が、100年に一遍のコロナ禍が明けて、文化庁が京都に移転してきて、新たな取組が始まった年だと言われるように、しっかりとスピード感を持ってあらゆる政策を推進していきたいと思っています。

 したがって、まず、議会でも申し上げましたように、この4期目の任期をしっかりと全力投球していきたいと考えております。

 

記者

 転換点というお話がありましたが、舵取りという意味で言うと、引き続き市長を担われるという選択肢もあると考えますが、現時点ではその点をどのようにお考えですか。

 

市長

 任期中の仕事、公約にさせていただいた市民の皆さんとのお約束に全身全霊で取り組む、それ以外のことは何も考えておりません。


記者

 3月に別荘・空き家税(非居住住宅利活用促進税)が国に同意されましたが、導入の狙いと期待される効果は。

 

市長

 京都市では、空き家対策に先進的に取り組んできました。平成26年施行の空き家の適正な管理と活用に関する条例は、全国に先駆けたものでした。それを制定し、全国で空き家は増加している中で、京都市は国の調査でわずかですが減少傾向になってきております。しかし、これからが大事です。高齢化社会等々も含めて、都心部の比較的便利なところで空き家が増える傾向にあります。

 さらに、空き家が増えている要因として、相続の段階でその利活用について十分な合意形成を行わずに放置されているケースなどがあります。また、京都の大事な地域コミュニティの活性化、あるいは安心・安全、あるいは若い人が京都の便利なところに住むなど、様々な課題があります。

 もう1点は、最近、京都の都市の魅力が高まり、京都に住みたい一方で、週末に住みたい、来たい、年に何度か来たいなどという方が増えており、ほとんど完売となっているはずのマンションに電気が点いていないというような状況もあります。

 それら含め審議会で議論をし、パブリックコメントも行い、空き家の利活用促進税の導入を日本で初めて同意いただきました。総務省と協議をしましたが、普通は数か月もかからずに決定されるところ、全国初めての例ということで、丁寧に議論されて1年かかり、3月に同意をいただきました。全国的にすごい反響で、全国のモデルケースになるのではないかと思っております。

 さて、この適用ですが、税金をいただくための条例ではなく、利活用していただくための制度です。その周知を図りながら、まずは空き家を持っておられる方にその利用方法を考えていただきたいということを啓発しております。

 もう一つは、税制度を適用するために、システム変更等に非常に膨大な手続が必要ですので、今、全国で(基幹情報システムの)標準化作業をしていることもあり、二重投資にならないようにしております。

 したがいまして、実際に課税するのには少し時間がかかります。課税が目的ではありませんので、これはいいことだと思います。ですから、この間に、利活用についてより一層啓発することに取り組んでおります。

 おかげさまで京都の不動産関係者等にもこの制度を理解いただきまして、この制度の周知も図りながら、空き家対策をより一層頑張っていこうという機運も高まっていますので、ありがたいことだと思っています。


記者

 空き家を所有されたままになっている事情は様々だと思います。そもそも売りたくない人もいれば、売りたくても売れないケースもあると思いますが、特に売りたくても売れないケースに対して、どうアプローチされていかれますか。

 

市長

 (床面積の)非常に狭い、昭和40年代ぐらいに宅地開発され、たくさん建てられた郊外の小さな住宅は、売りにくい、住みにくい空き家の典型ですが、その多くは今回の課税対象ではありません。したがいまして、非居住住宅利活用促進税が入ってきましたら、そういった空き家の活性化の財源にもしていけるのではないか、答申(京都市持続可能なまちづくりを支える税財源の在り方に関する検討委員会)の中でもそういう趣旨のことも謳われていましたので、税金を掛けることが目的ではなく、空き家を利活用していただくことが目的になります。

 さらに今回、新たに取り組んでおりますのが、若い人が路地に住むイメージができないということで、路地カルテを作って、若い人に路地に魅力を感じていただく。街中の路地は、比較的利便性が高く、子育てしやすい、コミュニティがしっかりしている、といったこと(メリット)があります。若い人が路地で暮らす、路地で子育てする魅力を知っていただく仕組みを作りました。

 あるいは、若い人は新築を望まれる傾向にあります。中古住宅を購入すると、どれだけ改修費がかかるか分わからない(という不安が若い人にあります)。どういう業者に対応してもらった方がいいのか分からない方に対して、京(みやこ)安心住まいセンターに、安(あん)すまパートナーという制度を作り、若い人が安心して相談いただける不動産屋さん、設計屋さん、建築屋さんを京都市が責任を持って紹介する制度です。新築の戸建てやマンションは(価格が)高いですが、中古住宅を賢くリノベーションして若い人が住むことができる仕組みです。あらゆる政策を総動員して取り組んでいきたいと考えております。

 ありがたいことに、京都の不動産関係者は(この制度に)理解のある方が非常に多いです。今まで、そういう不動産関係者は、例えば、高齢者の安心な住まい、障害のある人の住まいという部分で、非常に実績を持っておられます。若い人が住むという視点は、今まであまり施策としてなかったということで、そこに焦点をしっかりと当てて取り組んでいきたいと思っています。


記者

 琵琶湖の水に異臭を放つプランクトンが増えており、脱臭に費用がかさんでいるという報道が出ていたが、市長の見解は。

 

市長

 おかげ様で、京都市の水道水は安心・安全、そしておいしい、世界最高水準という評価もいただいております。国内外の方が来られて、京都市の水道水はそのまま飲んでもおいしいという評価を得ていることは、京都の自慢でもあります。

 これには、過去から大変な努力をしてきております。上下水道局で高度な(技術を持った)技術者を確保し、その技術を伝承してきております。プランクトンの発生原因は十分に解明されていませんが、原水にプランクトンによるカビのような臭いを察知した時には、最高級の臭い除去のための活性炭、ヤシ殻等で環境に優しいものを使っていますが、それを投入して臭いを除去しております。この数年、プランクトンの発生が増えてきましたが、市民の皆様から臭いについての苦情はございません。

 ただ、コストが高くつくことがこの間の議会でも言われました。約2億円だったのが去年は約4億円かかり、今年は円安等でさらに費用が上がり、約5億円の予算を確保しております。最新の情報では、(プランクトンの発生は)少し落ち着いている状況です。引き続き、安心・安全、そしておいしい水道水(の供給)に取り組んでまいりたいと思います。

 

記者

 先日、広島でG7(主要国首脳会議)、サミットが開催され、関係閣僚会合も全国で開催されました。京都市では国立京都国際会館というサミットなどの会議が開催できる施設もありますし、今年は文化庁が移転しており、世界にPRする大きな一つのチャンスだったと思うが、関係閣僚会合の誘致に手を挙げられなかった理由を教えて下さい。

 

市長

 私が市長に就任した時はG8が札幌で開催されました。その数年前からG8京都誘致を、経済団体、府、市で一生懸命要望しました。誘致活動時、私は教育長をしており、安倍総理の下での教育再生会議で毎週、東京の官邸に行っていましたので、(総理と)お話する時には、ぜひ京都で、ということを申し上げていましたが、結局札幌になりました。(主要国首脳会議を)都心で開催しないというのが世界の流れです。

 その当時は、京都の魅力をいかにサミットの時に世界に発信するか、世界からお客様に来ていただける最大のチャンスであるということでの誘致活動でした。

 それ以後、何回か(チャンスは)あったのですが、大規模な、治安のために日本中から警察官が来て、修学旅行生もお断りするというような体制を作っての誘致は、いかがなものか。それよりも常日頃から京都の魅力を世界に発信する。来られた方のおもてなしをもっと高めて、リピーターになっていただいて、そこからまた広がっていく、これが大事だという多くの関係者のコンセンサスができてきまして、そういう(大規模な)会議の誘致は見合わせていこうというのが暗黙の了解事項になってきました。

 同時に、札幌のサミットでもそうでしたし、今回広島で行われたサミットでも、食文化(の発信について)、日本料理アカデミーの理事長、菊乃井の村田さんがフル回転して御活躍されました。(そういう事実からしても)京都の文化はしっかりと発信をできていると思っています。


記者

 財政状況について、昨年3月ベースのデータですが、地方債が大半を占め、負債が総資産に占める割合が、人口が同規模のさいたま市や神戸市より若干負債の割合が多くなっている一方、高度経済成長期に建てられた建物の老朽化が進んでいて、10年、20年後ぐらいに建替えのラッシュが起こるとのことですが、今後、公共事業への投資や、財政状況の改善をどう両立していくのでしょうか。

 

市長

 22年ぶりに収支均衡を達成できました。市長就任後、市役所の職員を4,000人以上削減して、年間人件費は300億を超えて大幅に減少させております。

 人件費率は他の指定都市より高いと言われていますが、例えば、障害のある子どもが学ぶ支援学校は全国では都道府県立です。京都市内は全て京都市が運営しています。国の補助金もありますが、人件費率が高いのはそれが原因です。しかし人件費率もこれから下がっていきます。構造的な課題というのは改善していくと考えております。

 同時に、三位一体改革により、地方交付税を減らして財源を地方にというフレーズとしては非常に良かったのですが、結論から言いますと、京都市は約47%も地方交付税が削減されました。京都は都市部だけ見ていたら活気に満ちていますが、4分の3は森林で、その中に限界集落がたくさんあります。例えば橋、大阪が800、京都は2,900もあります。きめ細かい要素で地方交付税は算出されていましたが、簡素にされたために、京都のような大都市、政令指定都市でありながらも小さな田舎の集合体のようなまち、そうした都市特性が配慮されずに全国で最も人口当たりの地方交付税が削減されました。それらについてもきめ細かく国に要望し続けてきた結果、地方交付税の算定について昨年、今年と改善されました。国も様々な事情が分かってこられたかなという気がします。

 そして、成長戦略についてであります。様々な面で京都の強みを生かした取組を推進し、税収が伸びております。これから社会が激動する中、あらゆる対応、財政改善にしっかりと取り組んでいけると思っています。

 なお、老朽化の建物等につきましては、それぞれの施設のマネジメントをしっかりとして、長寿命化対策をやっていく。あるいは、学校でもボトムアップで統合していくという取組も進んでおります。明るい未来が展望できると考えております。


記者

 観光地の混雑対策について、コロナ禍の前のゴールデンウィークで市バスの乗客数が9割ぐらいまで戻ってきたと伺っています。楽洛ラインの増発や地下鉄への乗り継ぎなどたくさん対策を取られているというのは理解していますが、もっと対策が必要ではないですか。市民が乗れないという声も伺っておられると思いますが、今後の対策について市長の受け止めと取組は。

 

市長

 観光が一番厳しかった令和2年、3年、市民の代表、観光事業者、学識者に参画いただいて、様々な議論をしていただき、観光振興計画2025、京都観光モラル、観光事業者25団体によるこれからの観光、あらゆる社会課題解決、観光先進都市から観光課題解決先進都市へということで、様々な具体的な取組も含めて宣言(令和3年11月新しい京都観光に向けた共同宣言)し、それぞれ実行しております。

 その中で、バスの混雑対策も最優先課題ということで、いますぐ着手できる取組を進めると同時に、長期にわたっては一極集中を是正していく取組として、旅前、旅中、到着時点で、プッシュ型の情報発信を進めております。

 もう一つバスの混雑の原因は、利用者の9割が旅行者であるバス1日券です。これの発売停止がこの9月末です。京都市内は74系統、そして801台のバスがきめ細かく走っているのが便利だということが定着しており、京都駅からバスに乗って金閣寺に行かれる。また京都駅に戻ってきて今度は清水寺に行かれる。京都駅から地下鉄で北大路まで行ってください。あるいは京都駅から嵐山だったら山陰線ではなく、嵯峨野線がいいですよということを、随分、JR東海、JR西日本と一緒に発信し、改善してきています。このバス1日券の廃止、そしてバス1日券を地下鉄・バス1日券に替えることで鉄道とバスをうまく利用いただいて、目的地に早く快適に着いていただく。

 そして、手ぶら観光です。これも随分取り組んでおります。ただ、預けて必ず確実に届くのが京都の、日本の宅配制度であり、保管制度であるわけですが、持ってないと気が済まないという文化の人もおられます。まだ中国からはたくさん来られていませんけれども、中国の旅行者に対してもしっかりとそれを周知することを今もやっております。

 引き続き、市民の皆さんの安心・安全を最優先に観光と地域の文化、市民生活を調和していくように取り組んでまいりたいと思っています。


記者

 地下鉄で北大路まで行ってほしいなど、なかなか観光客で知らない人も多いかなと思いますが、どういうふうに周知していくのか、考えや対策をお聞かせください。

 

市長

 例えば、花見小路で舞妓さん、芸妓さんの前に立ちはだかって写真を撮るというようなことがすごく多かったので、徹底して周知したら劇的に改善されました。

 ちょっと古いですが、どっと嵐山に外国人が来られた時に、いろいろなトラブルが起こりました。原因を分析したら周知できていないということでした。

 例えば、20年前ですけれども、お寺、神社の御札を黙って持っていかれるとか、土足で上がられるなどということがよくありました。なぜ御札を持っていくのかと観光客に聞いたら、日本に来たら道で歩いていればティッシュが配られる。これもそういうものだと思っていたと。文化の違いですね。これを中国語で大きく有料ですと書く必要がある。あるいは絵文字(ピクトグラム)で書くことを徹底したら収まっていきました。時間がかかることですけども、拒絶するのではなく、そういうことを丁寧に取り組んでいく必要があると思います。

記者会見動画

下記URLから御視聴いただけます。(京都市動画情報館(YouTube))

https://www.youtube.com/watch?v=pMK_81U9zc8外部サイトへリンクします

会見資料

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