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門川市長記者会見(2020年9月9日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2020年9月9日)

きょうと里親支援・ショートステイ事業拠点の開設及び「養育里親」の愛称決定について

 本日は,きょうと里親支援・ショートステイ事業拠点の開設及び養育里親の愛称「はぐくみさん」の決定について,御報告いたします。

 現在,世界全体が新型コロナウイルス感染拡大という共通の危機に直面しております。私たちは,この危機をきっかけに,あらゆることの本質を深く見つめ,危機を乗り越えていかなければなりません。そして,新しい未来社会を展望し,その姿を描いていかなければなりません。その時のために,今何を為すべきか,全力で取り組まなければなりません。

 例えば,先だって京都市の社会福祉審議会で議論していただき,答申をいただきましたが,引きこもり問題,8050問題,これについては相談体制の抜本的改革,そして気付き,繋ぎ,支えることが必要です。引きこもりという困りごとを抱えた方,お一人お一人に施策を合わせていく。施策にお一人一人を合わせていくのではない。そこで伴走型の相談体制,支援体制を新たに構築する取組を,スピード感を持って進めています。

 私は,未来の姿を描くとき,何よりも子どもや子育て家庭の皆様に笑顔があふれる,そんなまちづくりの推進が大切だと考えております。そのため,虐待や保護者の傷病などによって親元を離れて暮らす子どもをしっかりと支援していく。全ての子育て家庭を支える取組が必要です。

 本市では,戦後,宗教都市・京都として,寺院等において,いち早く孤児等の受入れに御尽力いただいたことを契機として,約400人の子どもたちが,児童養護施設等を中心として生活しております。その施設では,グループホームの設置等による家庭的な養育環境の確保や,職員の専門性の高さ,質・量ともに充実した養育に取り組んでいただいております。関係者の皆様に改めて敬意を表し,感謝申し上げます。

 こうした取組を,子どもの,また子育て家庭の視点に立って,より充実させていく。更に家庭的養育を大切にしていく。すべての子ども一人一人の状況にあった養育環境を確保していく。そのためには,子どもを社会で支える仕組みの一つである里親制度,特に,養育里親を中心とした里親委託の推進に取り組んでいかなければならない。そう決意を新たにしております。

 さて,子育ては,ノンストップです。里親さんに限らず,無理しながら頑張り続けると,いつかはダウンしてしまいます。そうなる前に,子育てに疲れた保護者の一時的な休息の場であるショートステイ事業を利用していただき,元気を取り戻していただく。新型コロナウイルス禍の中,ショートステイ事業の役割はますます重要となっております。

 こうした状況を踏まえ,今回,里親支援とショートステイ事業,双方の機能を担い,地域で子どもと子育て家庭を支える「きょうと里親支援・ショートステイ事業拠点」を10月1日,下京区に開設します。この拠点の開設によって,里親さんは,何か相談したいときや,誰かとつながりたいと思ったときに,身近な地域で支援を受けられます。

 例えば,悩みを打ち明けたいときには,来所やお電話,又は訪問により,専門の相談員が御相談 をお聴きします。また,里親さん同士のつながりをもっていただくきっかけとなる交流事業の場として活用いただくこともできます。さらに,子育て家庭の皆様には,身近な地域でショートステイ事業が利用できるようになります。これは対象地域の方であれば,どなたでもお使いいただけます。病気や出産と言ったやむを得ない場合はもとより,子育てに疲れたといった場合でも子どもを一時的に見てもらうことにより,多くの保護者の方が休息し,元気を取り戻していただく。様々な形で,身近な地域で子育てを支えることにより,「子どもも保護者も笑顔で子育てできるまち」を目指してまいります。新たな拠点は,五条大宮からすぐ近くにある,木造2階建ての大型京町家をお借りし,相談事業や交流事業,ショートステイ事業として活用してまいります。近くにはバス停,また,阪急大宮駅,JR丹波口駅からも徒歩圏内にあります。また,現時点で市内には8か所の児童養護施設があり,11か所のショートステイがありますが,下京区と中京区や南区には児童養護施設がありません。こうした地域からも利用しやすい場所となっております。今後は,今回開設する拠点の事業効果を踏まえ,更なる里親支援の充実を図るため,子育て中の家庭支援に取り組むためにショートステイ事業の更なる充実を図ってまいります。

 次に,『「養育里親」の愛称「はぐくみさん」の決定』です。「里親」というと,どうしても法的関係を伴う「養子縁組里親」をイメージされる方が多く,実親が育てられるようになるまで一定期間養育する「養育里親」については,まだまだ浸透していない状況です。子どもたち一人一人の状況にあった養育環境を確保していくためには,温かい愛情と正しい理解をもって養育する「養育里親」の推進は大切であります。そのため,里親制度に対して,多くの皆様に親しみを持って理解していただくとともに,特に充実が求められる「養育里親」の更なる普及を図るため,「養育里親」の愛称募集を実施したところ,456件もの御応募をいただきました。うち,35件の応募状況を参考資料4として添付しております。皆さん,様々な思いを込めて愛称を検討されており,本市の職員も含めて,養育里親についてしっかりと考える機会にもなりました。改めて,御応募いただいた方全員に感謝申し上げます。里親養育における里親会や児童養護施設長会等の御意見を踏まえ選考作業を行い,「愛情をもって温かく,子どもを育んでいる養育里親の皆様に敬意を込めて」との思いを込めて命名された「はぐくみさん」を選定しました。これは,「地域の子どもは地域で育てる」という,京都の誇る「はぐくみ文化」の実践の一翼を担う養育里親の精神に通じる呼び名あり,共に地域で社会的養育を行っていく,決意の表れでもあります。

 これをより多くの方に知っていただくため,ポスターと動画を作成しました。まず,こちらのポスターを,私鉄及び市営地下鉄駅構内・車内,市バス車内をはじめ,公共施設等への掲示を行ってまいります。併せて,リーフレットも作っています。また,2つ目に,京都市独自制作の映像を,テレビ,ラジオ,映画館などで放映します。可能な限りコンパクトにしました。「はぐくみさん」と関わることにより,子どもや周りの大人が笑顔になって繋がっていく。この思いをしっかりと受け止め,ひとりでも多くの方に「里親になりたい」と感じていただくため,みんなで子育てしていきたい,このようなはぐくみ文化をよりいっそう推進していきたいと思います。視覚的にも聴覚的にも印象に残る啓発活動を実施します。今回の取組を通じて,効果の検証しながら,子ども一人一人の状況にあった適切な養育環境の確保を引き続き進めてまいります。SDGs,誰一人取り残さない。こうした取り組みを京都で達成していきたいと思います。よろしくお願いします。

 

質疑応答

発表案件に関する質疑

記者

 これまで,児童養育施設は下京区,中京区,南区以外に偏在しているということでしたが,どのような課題があったのでしょうか。

市長

 ショートステイ利用者は施設があるところに多い。逆に,下京区,中京区,南区は近くに施設がないため,ショートステイの利用者が少ない。こうした課題があります。

 なお,京都では戦後,お寺等で孤児たちを預かって,御奉仕として養育していただいた歴史がございます。戦後の厳しい状況にあったとき,そうした施設養育としての取組をしていただいたことは,京都の大きな財産です。

 一方で現在,国から家庭的養育が大事で,施設養育から家庭養育へという方針が出されました。施設でも,家庭的な雰囲気で養育するグループホーム等の取組も進められていますが,3歳児未満,あるいは学齢未満については,75%まで家庭的養育にしていくという国の方針です。

 施設養育には,安心・安全に配慮され,職員は専門性が高いという利点もありますが,やはり家庭的養育,里親養育も大事であり,私たちもその充実に向けて取り組んでいきたいです。現在,京都市では,家庭養育は14.5%。全国の大都市等でも大体20%未満です。京都の良さを生かしつつ,それをより充実させていく。そのために,現在,児童養護施設がない地域で,ショートステイや相談機能をまず充実させてまいります。

記者

 家庭内には,子育てを取り巻く様々な問題がある中で,里親支援の根幹となるのは,どのような点にあるとお考えでしょうか。

市長

 里親制度といいますと,養子縁組里親の認知度が高い。しかし,養育里親が役割を果たしていただくことも極めて大事です。例えば,虐待の事案の場合は,しっかりと親御さんに研修等を受けていただく。再び家庭が再構築されるまでの間は,養育里親に役割を果たしていただきます。

 しかし,里親さんの負担が重いことも事実であります。里親の方が少し疲れたときは,ショートステイに預けられるようにするなど,皆で里親を支えることが大事です。そして,多くの人に養育里親「はぐくみさん」を理解していただき,こうした気運を盛り上げていくことが,一番大事なことではないかと思っています。

 なお,現状が決して悪い状態というわけではありません。今も児童一人ひとりについて,当事者も養育されている方もベストを尽くしていただいています。それを数値目標だけで,養育里親の方に移管していくという,機械的な取組だけでは良くないと思っています。一人ひとりの子どもに寄り添い,また養育里親「はぐくみさん」がどんどん活躍していただける,そんな機運を作っていくのが大事で,自然に養育里親にシフトしていくということを目指してまいります。 

記者

 既に御発言いただいた事の繰り返しになるかもしれませんが,今回のような社会で子どもを支える仕組み,拠点の開設により,どのような社会になってほしいとお考えでしょうか。

市長

 子育て家庭では,一生懸命頑張っていても,時としてしんどくなることもあります。単に親が責任を果たせないということだけではありません。皆が助け合い,子どもも子育て真最中のお母さん,お父さんも笑顔が溢れる。こういう社会を作っていかなければなりません。

 現代においては,今ほど親が孤立して子どもを育てていることはない,と言われることもあります。そんな中で,京都市は,保育所待機児童ゼロ,学童保育待機児童ゼロ等の取組を進めています。困った環境にある方々,養育里親を必要とする方々にしっかりとした取組を進めることが,みんなが笑顔になれる象徴的な取組になると思っています。

記者

 ショートステイ事業自体は以前から実施されていたかと思いますが,その利用率はどのくらいでしょうか。

市長

 昨年度の市内年間の利用児童数は7,268名です。なお,地域ごとに相当差があります。例えば,山科区では児童養護施設が専門スペースを設けて,ショートステイをやっていただいています。そうした取組を積極的にアピールしていただいているところは多いです。

 11行政区中の6行政区に施設があり,利用者の54%は施設のある地域の方々が占めています。そのため今回,下京区に拠点を作り,市内中心部をカバーしようということです。

記者

 漠然とした質問ですが,養育里親を含めて従来の家族の形とはちがう家族の在り方が今後つくられていく中で,地域の機運醸成が特に高まると思われますが,市長自身は家族観についてどのような在り方が望ましいか,また期待されていることはありますか。

市長

 難しい御質問ですね。河合隼雄先生が,文教大学の周年行事で講義をされました。「この文教大学は昔,家政学園と言いました。家を治める家政学,その一部が子育てや教育,服飾,食,住居であった。それぞれの分野ごとの専門家はどんどん育ち学問的にも高まった。社会でも活躍されている。しかし,家庭とは何でしょうか。家族とは何でしょうか。と言われたら答えられる学者はいなくなった。同じところに住んでいる,いや,別れて住んでいる。血が繋がっている,いや夫婦は血が繋がっていない。心が通じている,いや本当かな。学問は進化したけれども,社会の一番の構成組織である,また子育てや教育において,一人一人の幸せにとって最も基本である家庭,家族。これに答えることができなくなった」しかし,それでは駄目ですから,みんなが専門の分野を越えて,家族とは何だろう,ということを考えるまちづくりをともにしていきたいです。御質問を受けての答えになっていませんが。

 「お正月に家族みんなで新しいお年を迎えられたことと思います」という挨拶は禁句だと。4分の1,いや3分の1の人が1人で迎えておられる。これが日本社会の現実になってきました。したがって,同じところで住んでいなくても,心が通じている,そしてかつての大家族のような形でみんながお年寄りを温かく見守り,子供をしっかりと共に育む。こういう文化を育て,子育て真最中の人をみんなが温かく見守り支えていく。そんな家族を補完する取組が大事なのではないかと思います。今回の発表は,そういう一つの取組だと思っていただければありがたいです。

記者

 今回利用される施設は京町家だと思いますが,京町家を利用される狙いはありますでしょうか。

市長

 非常に日本の伝統的な温かみが感じられる,良い施設ができました。実はゲストハウスをされていたのですが,今こういう情勢の中でお願いしたら貸していただけることになりました。ここから京都で大事にしてきた,家族と共に育ち合う,そんなことも感じていただけるとありがたいなと思います。

記者

 下京区の事業拠点が多くの里親に利用していただくために,あるいはしっかりと機能していくために,今後必要なことはどのようなことですか。

市長

 みんなが普通に利用して欲しいなと思います。里親さんも利用して欲しいですし,子育てでちょっとしんどくなった方や,寝ているときも子供のことが気になるという方にも利用していただきたいです。かつては,大家族でおじいちゃんやおばあちゃんが面倒を見るなど,色んな助け合いがありました。しかし,なかなかそれも厳しい中で,みんながほっこりしていただける,英気を養っていただける場所にする。まずは,それを知っていただくことが大事です。そして,利用していただく中で,様々な御要望もあると思います。そうしたことをきちっとお聞きしながら,制度の改善も,さらに他の拠点の創設についても,取り組んでまいりたいと思います。

記者

 今おっしゃったように,知ってもらうことが大切ということですが,それは今後どのようにPRしていくのでしょうか。

市長

 ポスターやパンフレット,そして動画を作り,テレビ,ネット,公共空間など,あらゆる場面で発信していきたいと思っています。

発表案件以外に関する質疑

(新型コロナウイルス感染症の状況について)

記者

 新型コロナについてお伺いします。6月下旬以降,家庭内感染などが広がっていると思われますが,現在の受け止めをお伺いします。

市長

 この9月を感染防止徹底月間として,市民ぐるみ,地域ぐるみ,さらに全庁を挙げて取り組んでおります。感染状況は,なお厳しい状況にあると考えております。週ごとの状況をまとめて月曜日に発表しておりますが,3週間前は新規感染が154件。それが,2週間前が101件。そして先週が88件と徐々に落ち着いてきているとは思います。しかし,この間,私立高校の課外活動に端を発するクラスターが発生しており,昨日も市内で新規感染者9名でしたが,そのうち7名がそれに関連するものです。そのうちの6名が家庭内感染。高校生がうつってこられて,下の子の中学生や小学生,保育園,幼稚園に感染しているという状況です。加えて医療機関と高齢者福祉施設。これらにつきましては,徹底したPCR検査をして掘り起こしています。したがって,多くが無症状ないし軽症ということですが,早期収束へ向けて,あらゆる関係機関と連携して取り組んでまいりたいと思っています。

 そんな中,この1週間で申しますと,8割を超えて,感染経路を把握できています。保健所機能を強化するとともに,関係者の協力を得ながら,取組を徹底したいと思っています。約1ヶ月前は,いわゆる飲食店,接待を伴う飲食店,キャバクラ,あるいは,カラオケでのクラスターが厳しい状況でありました。店舗等クラスター拡大防止対策指導チームを立ち上げ,市の幹部職員が先頭に立って,クラスターが発生したところへ指導に回っておりました。今月から,6人体制を20人体制にして,クラスターが発生する可能性のあるところにも指導を広げております。そんな中で,業界団体の努力もあり,まだ楽観はできませんが,この1ヶ月で飲食店におけるクラスターの発生は抑えられております。一つ一つ,起こった現象により,徹底的に取り組むことが大事だと思います。

 1点目は,それぞれの業界団体でしっかりとした,ガイドラインを作っていただいています。1ヶ月前は,ガイドラインを知らない方もおられました。そこで,約2万店の飲食店に通知文を出し,そしてクラスターが発生した時などの公表基準も明確にして,さらに,業界団体と京都市が縦に横に徹底して啓発を進めてまいりました。引き続き,取り組んでまいりたいと思います。

 2点目は,市民の皆さん一人ひとりの行動様式の変容です。新しい生活スタイルを徹底していただくことです。お店も頑張っていただく,同時にお客さんも頑張っていただく。両方の取組が大事だと思います。

記者

 秋以降,インフルエンザを含めて流行の拡大が予想されますが,秋以降の対策で考えらえていることはありますか。

市長

 この秋から冬,インフルエンザもございます。そもそも感染症というのは,寒いときに流行ると一般的に言われていました。こんな猛暑の中で,感染症が拡大するということは,あまり考えなかった。したがって,第二波は,これが第二波かどうかわかりませんが,秋から冬にかけて心配と言われていましたが,この猛暑の中でも感染が拡大してきました。この9月,徹底して収束に向けて取り組んでまいります。同時に,様々な知見も出てきました。一つは,府との協力による,さらなる検査体制の充実。唾液検査も随分充実してきました。そうした検査体制の充実,医療体制の確保に,引き続き取り組んでまいります。そして,京都大学,それから山中先生のiPS細胞研究所と連携して,リスクの高い方々に対する抗体検査と一緒にPCR検査も実施していくことが既に始まっております。その同じ人を3ヶ月ごとに繰り返し複数の方法で検査していく。そのことによって検査精度も検証する取組が進められております。しっかりと京都大学等と連携し,感染拡大防止にもその知見を活かしていきたいと思います。

 ただ,ワクチン,治療薬について,いろいろ研究はされていますが,早くにワクチンが全国民に行き渡ることを期待しつつも,それに頼っているだけではいけません。新しい生活様式を徹底して,三密を回避していただく。こまめな手洗い,マスクの着用などの徹底。キャバクラであっても,できれば2m,少なくとも1mは離れて接待していただく。これを徹底していただくことが大切です。

 それと市民,お客さんの行動様式の変化,事業者のガイドラインをどこまで徹底できるか。京都ならではの市民力,また,業界団体のネットワーク力。これらを生かして取り組んでまいりたいと思っています。

 

(大学の再開について)

記者

 大学で,秋以降授業が再開されるかと思いますが,改めて呼びかけたいことはありますか。

市長

 明日から,早いところは後期のスタートであります。大学コンソーシアムと京都市とで,先立って,学長とサマーミーティングを行い,大学コンソーシアムと京都市の連名のメッセージを出そうということになりました。一つは,大学生に対して,せっかく京都に学びに来られたのに,京都で学ぶ実感がない,様々な困りごとを抱えられておられる方々に対するメッセージ。大学も,コンソーシアムも,京都市も頑張ります。市民の皆様にも大学生を温かく迎えて欲しい。大学生は学業に励んでいただくと同時に,自分がうつっているかもしれない,うつさない,うつらない,この徹底をメッセージとして発していく。そのことを確認させていただきました。

 なお,そのサマーミーティングでも小中高等学校は,ほぼ普通の授業をされています。もちろん感染拡大防止のために,あらゆる注意をしながらであります。ただ,大学だけが,なかなか普通の講義自体ができないという状況になっています。このことに対して,疑問の提起もありました。また,大学の教育活動,研究活動において全国的にクラスターが発生していないという意見もありました。したがって,注意しなければならないのは,部活動,その部活動の後の更衣室での行動であるとか,あるいは,打ち上げであるとか。そういうところでクラスターが発生しています。もう一つは寮です。したがって,ポイントを押さえた感染拡大防止というのがより重要です。大学と連携し,取り組んでまいりたいと思っています。

 

(自民党の総裁選挙及び新党の代表選について)

記者

 今,自民党の総裁選挙,野党第一党の立憲民主党と国民民主党の合流による新党の代表選が行われておりますが,両選挙について,市長はどのようなところに注目されていますか。

市長

 自民党の総裁選挙においても,立憲民主党,国民民主党が統合される新たな党首の選挙においても,それぞれがコロナの感染防止対策は当然ですが,地方創生,地方重視ということを掲げていただいております。それに大いに期待をしております。この間,地方創生,あるいは地方分権など,様々な言葉で語られて久しいですが,東京一極集中が止まらない,そして,人口の東京一極集中だけでなく,あらゆる財が東京一極集中し,そういう課題が日本社会を厳しい状況に追い込んでいくのではないかと思っています。そんな中で,文化庁が京都へ機能強化して全面的に移転します。この成果をしっかりと実現していかなければなりません。そして,より一層,地方創生をお願いしたいと考えております。

 

(地方創生について)

記者

 安倍首相の記者会見の中で,東京一極集中については,なかなかパラダイムシフトが起こらなかったとの発言もありました。京都市としては,観光分野での地方創生というのも大きなテーマかと思いますが,その点について,自民党総裁及び野党の新しい党首に対し,どのような期待をされていますか。

市長

 私は従前より常に京都は観光都市ではない。このように申してきました。文化都市であります。今,京都で観光的に評価されているお寺,神社,景観,食文化,様々な伝統文化,伝統産業,これらは観光のために作られたものではありません。千年を超えて伝わる人々の暮らしの美学,生き方の哲学,これらが大都市でありながら脈々と伝わっています。これが国内外から多くの人を魅了し,観光的にも評価されています。文化を大事にする。このことを強く訴えて,文化庁の京都移転も決まりました。

 京都は民間シンクタンクの調査において,3年連続,都市総合力1位という評価をいただきました。「文化・交流」,「研究・開発」が大きく評価され,これらが両立している世界に冠たる文化都市であるという評価をいただきました。こうしたことをこれからも大事にしていきたいです。日本は,観光立国ということが言われていますが,その前に文化立国であります。文化を徹底的に大事にする,地域の固有の文化を大事にする。そして,文化庁が京都に移転する時には,今までの文化庁にはなかった,衣食住や地域コミュニティ,社会包摂をしっかりと大事にする。その根本のところをしっかりと押さえていただいて,それを社会的課題の解決,ソーシャルイノベーション,スタートアップ・エコシステム,観光などの経済に活かしていく。昨年の「国連観光・文化京都会議2019」においても,観光と文化に関する取組指針となる「観光・文化京都宣言」が会議の成果として取りまとめられました。「観光が地域文化の消費者になってはならない,観光をしっかりとマネジメントすることで,地域固有の文化が継承・発展され,地域のコミュニティが元気になる,こういう観光でなければならない」これはその宣言の主な内容です。こうしたことに取り組んでいきたいです。なお,昨年,京都市内で国際会議が391回行われました。この6年間で2.2倍になり,毎日,国際会議の開会式が行われている京都でありました。しかし,今年は多くの国際会議が中止,延期となっています。こういった厳しい現実もあります。やはり,水際対策,検査体制をきっちりすることが重要です。同時に,留学生や研究者が訪れることができ,国際会議も開ける日本,京都でなければなりません。そんなことも改めて国にも要望していきたいと思います。

 

(大阪都構想について)

記者

 大阪府の方で,早ければ11月1日に大阪都構想についての住民投票が行われます。同じ政令市である大阪市が消滅することについて,市長の認識をお聞かせください。

市長

 政令指定都市は20市になりましたが,それぞれ歴史的な経緯,あるいは地政学的な差,都市特性がございます。それぞれの都市が住民及び広域的な連携にとって,より良い都市像を目指していこう,こういうことを指定都市市長会において確認しております。私たちは,より一層地域に根差した基礎自治体を大事にするため,大都市制度について議会も含め都市の理念として求めてきました。政令指定都市において,大都市制度を求められる自治体が多いですが,それぞれの都市の住民の選択だと思います。したがって,大阪市民・府民の方々が充分な議論のもとに,方向を決められて,未来を展望していくことが良いと思います。どんな形になろうと,大阪と京都は深い関係がありますので,その関係は維持していきたいと思っておりますし,維持できるものと考えています。

 

(「Go To Eat」キャンペーンについて)

記者

 昨日,農林水産大臣から「Go To Eat」の飲食店の登録を順次開始するという旨の発表がありました。京都市では,クラスター対策班を派遣するなど,ターゲットを絞った対策をしてきた中で,「Go To Eat」が始まることについて,どのように受けとめておられますか。

市長

 正直言いまして,今,飲食店や料理旅館等が,極めて厳しい状況にあります。そこで働く職人,匠の方々も非常に厳しい。何としても京都の宝である飲食店,料理人の継承が大事であります。京都市においても,この間「京都で食べよう,泊まろうキャンペーン」,京都の人が京都の魅力を知るという取組をしてきましたが,国レベルで様々な取組を進めていただくことも大事であると思います。感染拡大防止を徹底し,そして飲食店も含めて社会経済活動をしっかりと回していくことが大事な時期であると思います。先ほども申しましたが,京都市ではこの間,発生者の7割は感染経路を把握できております。その中で,飲食の場が多かったですが,最近では激減しております。また,他都市から来られた方が感染の原因になっている事例もあまりないです。そういうことも認識して,人が動くこと,飲食店を利用することと,感染拡大防止の両立を徹底してまいりたいと考えております。

 

(私立高校におけるクラスターの発生について)

記者

 先日,私立高校の課外活動においてクラスターが発生しましたが,学校の意向でどんな活動であったのか等は,公表されておりません。どのような活動が行われていたのか,どのような対策が取られていたのかという点については,市はどの程度把握されているのでしょうか。また,公表の予定はありますでしょうか。一方で公立学校であれば公表するところを,今回私立高校ということで公表していないというダブルスタンダードな状況については,どのようにお考えでしょうか。

市長

 京都市立小・中・高等学校については,たとえ一人の感染者が出ても公表しております。これは,公の施設であるという基本的な考え方に立っております。したがって,多くの人に知っていただいて,注意を喚起するという意味もございます。この理念は,京都の大学においても同じであり,大学内の感染ではなく,カラオケにおいて感染したようなケースでも,いち早く公表されています。私立の高等学校においても,当事者において公表すべきということで働きかけております。また,私立高校を所管される京都府においても同じ考えで働きかけていただいていると聞いております。もちろん自ら公表されない根底には,感染者に対する社会の様々な偏見や差別があります。これはなくしていかなければなりません。学校法人において公表していただくように,そして,内部的にも,また社会に対しても,事例として啓発していただけるよう引き続き要請していきたいと思います。なお,これまで本市において,民間企業も含めて,行政側が一方的に公表した事例はございません。働きかけを行ったことで,当事者が発表されています。これを,行政が公衆衛生の観点から,同意を得ずに発表するかどうか,これは非常に難しい問題であります。色んな御意見を賜っておりますが,公表しなければ感染拡大が止まらないという事態であれば,直ちに,当事者からどのような批判,不満があったとしても京都市として公表します。京都府もされると思います。保健所は私たちの責任でありますが,私立高校の所管は京都府ということになります。ただし,今,徹底して接触者のPCR検査を実施し,家庭内感染についても,保健師が一人一人にお聞きして,PCR検査をしています。そうした疫学調査に,それぞれの御家族の方も含めてしっかりと協力していただいていますので,公表しなければ感染拡大を防止できないという事態ではありません。そのため,京都府・市においても,一方的に公表するということは控えている状況であります。ただし,こういうことが事例,前例になってくると,非常に難しいと思います。全国でも多くの私学が公表されていますので,そういうことも含めて,引き続き要請してまいりたいと考えております。

記者

 学校名が公表されない以上,実態としてどのような状況であったかということは知ることができません。京都市の保健所が指導に入っていると聞いていますが,対策として不十分であった点や改善点等を京都市として発表されるのでしょうか。

市長 

 これまでも,クラスターが収束してきた時に,まとめて公表してきていますので,今直ぐにというわけにはいきませんが,某私立高校ということで公表になるかと思います。

 なお,生徒の日々の健康観察が充分であったのか等については,知見を得られていますので,これは常に情報発信して,同じことが繰り返されることのないよう,徹底して生かしております。

 

(観光施策について)

記者

 市長は会議の場において,よくオーバーツーリズムの状況には戻さないとおっしゃっています。戻さないという言葉は,コロナ前には様々な課題があったということを意味する表現かと思います。オーバーツーリズムについては,京都市が誘客してきたことが影響した面も否定できないと思いますが,コロナ以前において,京都市として反省すべき点についてはどのようにお考えでしょうか。

市長

 明確であります。去年の12月「国連 観光・文化京都会議2019」が,日本で初開催されました。その時に,京都で取り組んできた3つの集中を打破する取組について発表しました。1つは季節。もう1つは時間の集中であり,朝観光・夜観光の推進。もう1つは場所の集中。京都には魅力あるところがたくさんありますが,今,観光客が集中している場所は10箇所に満たないと思います。こうした3つの集中を打破する成功事例については,「国連 観光・文化京都会議2019」の成果物である「京都宣言」に盛り込まれ,そして,世界に広げていこうと掲げていただきました。それぞれの地域の奥深い魅力を発信し,分散化していく。ようやく,大原が注目されるといった傾向もでてきており,去年の秋ごろから嵐山や花見小路等の集中は少しずつ改善されてきたところであります。そうした取組をより積極的に行っていくことが大事であります。同時に,国内外の人が交流する,異文化を理解し合うことで,世界平和を目指す「世界文化自由都市」を都市の最高理念に掲げています。世界の人々が人種,宗教,社会体制の違いを越えて,自由に京都に集い,そして相互交流の中から新たな文化を創造していく。世界中がややもすれば自国中心主義になろうとしている時に,そうした理念を大事にしながら,観光も大事にしていかなければならないと考えております。

記者

 オーバーツーリズムが起きた原因に関して,市として反省すべき点はありますか?

市長 

 総括し,様々な取組を進めております。しかし,私たちはオーバーツーリズム,観光公害という言葉は使っておりません。一部の地域に集中しているということであります。これは,例えば,20年前の秋の嵐山はもっと集中していましたし,高雄も物凄く集中していました。紅葉や桜の時,円山公園は20年前も50年前も集中していました。これが,かなり分散化されてきたところであります。

 ただ1点,新たな集中というのが発生しております。例えば,伏見のお稲荷さん。10年前,お祭りの時以外は,ほとんど観光客がいませんでした。それが今,ネット社会によって急に広がり,たくさんの方が来られるようになりました。伏見のお稲荷さんに,外国人が訪れるようになったことを京都市が反省しろというのであれば反省します。伏見にはお稲荷さんだけではなく,他にも多くの魅力があることを,地域と一緒になってどんどんと発信している中で起こったことです。祭というのは,必ず集中します。「密集,密着というのがお祭りの原点である」とおっしゃる方もおられます。したがって,これと感染拡大防止との両立については,徹底して取り組んでいかなければならないと思います。行政の取組も大事であります。しっかりと総括し,新たな指針も出していきます。そのための審議会も今スタートさせております。

 なお,ネット上で「あのお店が美味しい」となればざっと行列ができます。かつて,行列ができる文化は京都にはありませんでした。大体は予約する文化でした。これをどうしていくのかということは,我々に突き付けられた新たなテーマであります。インスタ映えという文化はかつてありませんでした。我々が市民の皆様と,また様々な文化事業者と一緒になり,この新たなテーマを乗り越えるために研究し,共に取り組んでいきたいと思います。

記者会見動画

下記URLから御視聴いただけます。(京都市動画情報館(YouTube))

https://www.youtube.com/watch?v=Z-Tln4ZleY8&feature=youtu.be外部サイトへリンクします

 

記者会見資料

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