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門川市長臨時記者会見(2019年1月31日)

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2023年4月12日

平成31年度予算案の概要

【予算の基本姿勢】

 はじめに,予算編成に当たっての,私の考え方を申し上げます。昨年は,大地震,豪雨,3つの台風など,相次ぐ自然災害に見舞われ,本市でも道路・河川等の都市・生活基盤,住宅,学校,文化財など,広範囲にわたって被害が生じました。今も,地域の方々等々,復旧・復興に全力を挙げているところであります。

 しかし,こうした厳しい被害の中にあっても,1人として市民の尊い命は失われませんでした。命と暮らしを守ることの重要性を改めて実感しております。これは,東日本大震災,平成25年の台風18号など,日本で,また京都で様々な災害がございましたが,しっかりと総括し,教訓とし,市会における熱心な御議論を踏まえ,厳しい財政状況の中,この5年で1,853億円の経費を投じ,スピード感を持って,着実に防災・減災対策に取り組んできたこと。そして,何より,現場において,自主防災会,消防団,水防団,自治会,社会福祉協議会など,皆様の一丸となった取り組みのおかげであります。そんな地域力によって命が守られ,そういう地域力があるからこそ,お年寄りや障害のある方が地域で命を輝かせることができる。子供たちがすくすくと育つ,そうしたまちづくり,子育て環境日本一の京都。さらに,福祉や文化においても京都の素晴らしさを維持・向上させていけることを念頭に予算を編成しました。

 ちょうど,世界のレジリエントシティ100都市の一つに選ばれ,この2年,市民ぐるみで,あらゆる災害に対応でき,よりしなやかで強靭なまちづくりをしていこうという取組にも議論を重ねて取り組んできました。「誰一人取り残さない」,「全ての人に健康と福祉を」, 「すべての人に質の高い教育を」,「働きがいも経済成長も」など,多様性と包摂性のある,持続可能な社会を目指す,国連が2015年に決めた17の目標,「SDGs」の理念であります。先般の,報道機関の徹底した74項目の調査によりまして,「SDGs」先進度・持続可能性で京都市が,全国815の自治体の中で1位という評価もいただきました。とりわけ,「環境」「歩くまち」「公共交通優先」,教育,子育て支援,防災・減災等の取組が高い評価を受けました。これらは市民との協働で,市会とも車の両輪となって力を尽くしてきた結果であり,非常に喜ばしいことであります。こうした,京都が脈々と培ってきた地域力,文化力。「SDGs」,「レジリエンス」の概念ができる以前から取り組んできた京都の誇りであります。宝であります。今,環境破壊,パリ協定の実践,さらに自然災害の多発,人口減少。我が国において,京都において様々な課題が山積しております。今こそ,「SDGs」「レジリエンス」が重要であります。  

 31年度予算では,この「SDGs」,「レジリエンス」の理念を,本市行政のあらゆる分野を横断する都市経営の理念として位置づけ,「誰一人取り残さない,持続可能なまちづくり」を推進します。全ての施策をそうしたことに関連させる。京都ならではの「文化」を基軸としたまちづくりを進め,地域経済の活性化,市民の皆さんの豊かさにも繋げてゆきたいと考えております。本市の財政は依然として,厳しい状況が続いておりますが,徹底した行財政改革の断行により,施策の推進に必要な財源はしっかりと確保し,市民生活の安心安全,全国トップレベルの福祉,医療,子育て支援,教育を維持・充実させるとともに,京都の強みを活かした成長戦略を積極的に推進,「はばたけ未来へ! 京プラン」実施計画第2ステージに掲げる全307施策を着実に前進させてまいります。

【政策の柱立て】

 2ページを御覧ください。31年度予算は3つの政策の柱に沿って編成いたしました。まず1つ目の柱は「安心・安全で,子育てしやすいまちづくり」。子育て環境日本一の京都であります。私が2期目の公約でトップに掲げたことを,西脇新知事が同じテーマで掲げていただいていることが,府市協調の象徴だと心強く感じております。昨年の相次ぐ自然災害に対して,道路,河川等の復旧,被災された方の住宅再建への支援,ブロック塀の安全対策等に,今年度は100億円,来年度は26億円,合計126億円の経費を投じることとしております。この126億円に対して,国から17億円,国からの補助基準が厳しいということで国からの財政支援は17億円であります。京都府から1億7,000万円でございます。残りの107億円は,本市が市債や一般財源で賄わなければなりません。このうち,特に48億円の一般財源負担については,厳しい本市財政にとって,極めて重い負担となりますが,市民のいのちと暮らしを守ることを最優先に,対策に必要な予算を計上いたしました。31年度は,政府の「防災・減災,国土強靭化のための3か年緊急対策」による財源も活用して,防災・減災対策の予算を500億円を確保し,取組を加速させてまいります。社会福祉関連経費は,前年度から93億円を増額し,とりわけ,子育て支援については,府市協調により,本市の子ども医療費支給制度を拡充するほか,本市として,保育所等の受入枠の拡大や,保育の担い手確保のための新たな取組を実施します。また,49億円の本市独自財源を投入して,例えば90人定員の保育所では国基準の1.3倍となるなど手厚い保育士を配置しております。国の基準では12人,京都市では16人配置しております。また,優れた保育士を確保していくために,民間保育園平均の1.4倍,468万円という処遇改善をしております。人口100万人以上の都市で,5年連続待機児童ゼロは京都市だけですが,それだけでなく保育の質を高める,より優れた保育士を確保するため,京都市独自の巨額財源を投入してここまできました。加えて,児童虐待対策の機能強化,スクールソーシャルワーカーの全中学校区への配置を行い,様々な背景を持つ子どもたちにきめ細かく施策を充実させてまいります。また,国民健康保険事業については,今年度から都道府県単位化されております。国保財政の運営主体である京都府の試算に基づき,収支を計算したところ,来年度の本市国保特別会計は,37億2,000万円もの赤字が見込まれ,厳しい財政状況となっております。このため,一般会計からの繰出金を18億6,000万円増額し,総額81億円の財政支援を行うとともに,国保基金の残高18億6,000万円全額を充当することにより,保険料率を据え置き,被保険者の負担増とならないようにしてまいります。

 3ページを御覧ください。2つ目の柱は「京都の強みを活かした,豊かさを実感できるまちづくり」であります。機能を強化した文化庁の京都への全面的な移転を控え,「世界の文化首都・京都」として,京都の強みである文化力や地域力を生かし文化を基軸としたまちづくりを更に加速します。また,文化と経済の融合,好循環に一層磨きをかけ,地域企業,伝統産業,大学など,京都が世界に誇る価値を徹底的に活かし,市民生活の豊かさにつなげてまいります。観光については,市民生活と観光の調和を図ること,観光の質を高めることをこれまで以上に重視し,「時期・時間・場所」の分散化,市バスや観光地等の一部における混雑への対策強化に取り組んでまいります。

 3つ目の柱は「参加と協働による,市民・地域が主役のまちづくり」であります。「京都のまちをもっと良くしたい」という熱い気持ちを持った,市民・地域が,様々な課題の解決に向けて,ひとごとではなく,「自分ごと」「みんなごと」として考え,提案することを京都市としてサポートする,そうしたまちづくりを進めてまいります。

【重点施策 安心・安全で子育てしやすいまちづくり】

 5ページを御覧ください。安心・安全で子育てしやすいまちづくり,子育て環境日本一の京都であります。ここからは具体的な施策の内容について御説明いたします。まず,防災・減災・老朽化対策の加速化です。橋りょうの耐震化,河川の浸水対策など,「いのちを守る都市基盤防災・減災対策プロジェクト」に,2月補正予算も合わせまして50億円を確保しました。また,雨水幹線等の整備には30億円を確保しました。なお,国の発表によりますと,5年に一度の降雨への対応が完了した面積の割合は,本市は91%と,全国平均の58%を大きく上回るトップの水準です。こうした取組をこれまでから着実に積み重ねて来たからこそ,昨年の相次ぐ自然災害にあっても,市民の皆様のいのちを守ることができたものであります。近年の大規模災害への対応の検証等も踏まえ,危機管理センターの設置に伴う災害対策本部機能の強化等に新たに1億円の予算を確保し,防災体制を更に強化してまいります。災害時に避難場所へ移動する際に支援が必要な単身等の重度障害の方を対象に,一部地域でモデル的に個別避難計画を作成し,課題を検証いたします。さらに,「まちの匠の知恵を活かした京都型耐震リフォーム支援事業」大工さんや左官屋さん等々の伝統的な知恵をいかして家屋等を改修し,耐震性を高める取組を進めてきておりますが,防火改修の支援メニューを新設します。6ページを御覧ください。昨年の災害で大きな被害を受けた農林業への対策については,農業用施設の水害防止対策や,倒木被害を受けた森林の再生支援を行ってまいります。合わせて,京都府に対しても倒木被害対応への更なる財政支援を求めてまいります。地域において日常的に利用される道路の補修や,河川の浚渫・除草等についても,市民の皆様のニーズにしっかりと応えられるよう,予算を1.4億円増額し,しっかりと進めてまいります。また,学校施設の長寿命化改修については,約14億円を確保し,箇所数を年3校から6校に拡大します。財政負担の平準化の観点を踏まえつつ,スピードアップを図ってまいります。なお,市民サービスや,防災機能の拠点となる市庁舎については,現在,全国的にも極めて低い耐震性能(本庁舎Is値0.101)であり,この改善に向け整備を進めています。文化財的価値の保存・継承を両立させるため,コストと時間はかかりますが,着実に整備を進めており,この3月に西庁舎が,5月に分庁舎が竣工する予定です。

 続いて,「子育て・教育環境の充実」です。まず,府市協調による,本市の子ども医療費支給制度の拡充です。3歳~15歳の通院医療費の自己負担上限額を現行の3,000円から半額となる1,500円に引き下げし,保護者の負担を軽減いたします。保育所等の受入環境については,5年連続で国定義による「待機児童ゼロ」を実現するなど,全国トップ水準の取組を続けてまいりました。本年4月についても,369人の受入枠を増やすほか,2020(平成32)年度以降に向け,298人分の受入枠を拡大する予算を計上し,更なる環境整備を進めてまいります。7ページを御覧ください。質の高い保育を支える担い手の確保についてもしっかりと取り組んでまいります。近年,児童虐待の認定件数は増加傾向にあります。このため,児童相談所だけでなく,市民,区民に最も身近な区役所・支所の機能を強化し,児童虐待の未然防止や早期発見等につなげてまいります。教育環境の充実については,学校の増収容対策,総合支援学校の対策,学校統合,安心安全等に着目して着実に進めてまいります。また,教員が子どもたちと向き合う時間を確保するため,業務をサポートするスタッフの配置を拡大するなど「学校・幼稚園における働き方改革」を強力に推進いたします。 

 続いて,「すべての人がいきいきと健やかに暮らせる環境づくり」です。市民のスポーツ環境の更なる向上に向けて,西京極総合運動公園,横大路運動公園など運動公園・体育館等の改修・整備を着実に進めます。なお,宝が池公園の体育館は本年8月に竣工いたします。8ページを御覧ください。また,改正健康増進法が2020(平成32)年に完全施行されることを踏まえ,約2万件の市内全ての飲食店の受動喫煙防止に万全を期してまいります。年齢を重ねた方や障害を抱える方など,すべての人が暮らしやすいまちづくりにも取り組んでまいります。駅等のバリアフリー化として,新たに北野白梅町駅の整備に着手するほか,増加する救急出動要請に対応するため,救急安心センター事業「♯7119」の実施に向けた検討を府と連携して進めてまいります。

【重点施策 京都の強みを活かした,豊かさを実感できるまちづくり】

 9ページを御覧ください。「世界の文化首都・京都」の実現に向けた取組です。京都を題材とする文学作品を募集・表彰する「京都文学賞」を,新聞社,書店,出版社などの協力を得て,創設いたします。更に,京都は映画の聖地であります。映画に関する新たな顕彰制度の創設に向けて検討してまいります。京都の,日本の文化を将来に伝えていくためには,優れた伝統や文化の担い手となる「ひとづくり」が何よりも大切であります。次代を担う子供たちが,伝統文化など「ほんもの」の文化芸術に触れることのできる機会を充実いたします。祇園祭は,今年,創始1150年目を迎えます。貞観年間人々を悩ます天変地変が全国で起こり,疫病が発生し多くの方が亡くなったときに,平安を祈る御霊会として当時の国の数である66本の矛を立てて祈ったところに,神泉苑に神輿が3基送られたことが,祇園御霊会,祇園祭の始まりとされています。祇園祭関係者が,世界の人々の幸せ,温暖化,格差・貧困,あらゆる社会の難儀に視点を広げて取り組まれている,祈りながら行動されていることが祇園祭の今日的意義のひとつだろうと思います。1150年目の節目に,「SDGs」にもつながる祇園祭の今日的意義を,全国と世界に向けて発信してまいります。また,9月には,ICOM京都大会が開催されます。これに合わせ,博物館・美術館の意義と日本文化の神髄を,市民の皆様に理解していただき,同時に国内外に発信・共有してまいります。10ページを御覧ください。続いて,来年3月には,芸・産学官の連携により,岡崎エリアを中心に,アートとサイエンス・テクノロジーをテーマとする国際的な文化・芸術の祭典「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」を開催し,文化創造の担い手育成,国際的ネットワークづくりにつなげてまいります。京都市美術館は,10月末の竣工を経て,いよいよグランドオープンを迎えます。新設する常設展に加え,開館記念展をはじめとする多彩な記念事業を通じて,レトロからモダンまで様々な形で,京都の「美」を国内外に発信してまいります。世界遺産・二条城については,文化財の保存と活用の全国モデルとして,高く評価され,国内外から非常に多くの方々に訪れていただいております。英語版ガイドブックの作成や,未公開文化財の公開・活用,城内園路・通路の改修など,更なる保存とおもてなし環境の向上に取り組みます。新景観政策については,これも国内から高く評価されており,11年目を迎えております。この理念を生かしながら持続可能な都市の構築という視点を踏まえ,更に進化させてまいります。また,大学のまち・学生のまち京都の発展に大きな役割を果たしている留学生の誘致に向け,首都圏等での戦略的な取組を進めます。11ページを御覧ください。「京都経済の持続的発展」に向けた施策の推進です。まず,地域企業応援プロジェクトです。地域企業を応援する条例も制定を予定しておりますが,京都市中小企業未来力会議における3年間の議論を経て発せられた「京都・地域企業宣言」を踏まえ,地域企業の新事業への進出,企業防災,事業承継などの取組をしっかりと支援するとともに,民間事業者のアイデアを生かした創業・第二創業・イノベーションの拠点づくりを進めてまいります。12ページを御覧ください。続いて,31年3月にグランドオープンの京都経済センターの取組です。立石会頭から,現地での建て替えは事実上無理であると,場所についてのご相談を受け,旧京都産業会館や市バスの操車場,年間約3億円の収入をあげる本市の四条烏丸駐車場でございましたが,経済界からの要請に応じ,市の所有する京都の心臓部といえる四条室町の一等地を,権利の整理等に市職員が大変な尽力をし,多くの関係者のご理解をいただき,そのうえで提供しております。「京都経済百年の計」として,市・府・経済団体によるオール京都体制の下,新たなビジネスの創出を支援してまいります。市内企業の事業拡大や,新たに京都市内へ進出を希望する企業のニーズに応えるための産業用地の創出は,喫緊の課題であります。31年度は,久我の工業専用地域や土地区画整理施行中の伏見西部第五地区における用地創出の取組を進めます。また,「らくなん進都」への更なる企業集積促進にも取り組んでまいります。本年10月から,消費税率の引上げが実施されます。国の消費税率引上げに伴う経済対策に応じ,低所得者・子育て世帯向けのプレミアム付き商品券を発行するほか,府市協調による中小企業向けの融資制度の創設や本市独自の消費喚起対策を実施いたします。13ページを御覧ください。続いて,「市民生活と調和した,観光MICEの推進による経済効果の波及」です。市バスの一部路線における混雑への対策を更に強化するとともに,伏見,右京,西京,山科,大原など隠れた魅力を持つ「とっておきの京都」への誘客や,京都・花灯路など「夜観光」の魅力アップなど,観光地の「時期・時間・場所」の分散化を推進し,市民・観光客双方の満足度を更に向上させてまいります。また,外国人観光客をはじめとする観光客へのマナー啓発にも引き続き,取り組んでまいります。14ページを御覧ください。観光の活況は,観光客等の消費活動を通して,本市経済,市民生活にも大きなプラスの効果を生んでおり,平成29年の観光消費額約1.1兆円は,京都市民の約78万人分,京都市の人口の約53%の年間消費支出に相当する規模であります。市民生活との調和をしっかりと守り,配慮しつつ,更なる質の高い観光振興につなげるため,ラグビーワールドカップ観戦などを機に訪日する外国人旅行客を効果的に京都へ呼び込み,一般的な混んでいるところでなく,奥深いところに誘客していく。「ほんまもんの京都」の静かな素晴らしさを感じていただく取組,更なるMICE誘致に向けた,国際競争力の強化を進めてまいります。

【重点施策 参加と協働による,市民・地域が主役のまちづくり】

 15ページを御覧ください。「参加と協働による,市民・地域が主役のまちづくり」です。区役所窓口サービス向上の取組として,引越し等に伴う複数の手続きを一つのエリアで受け付ける総合受付窓口をモデル区の右京区で創設するほか,西京区役所の総合庁舎整備に向けた基本計画の策定に着手いたします。 また,西陣や京都駅東部エリア,京都駅東南部エリアの活性化に向け,地域の資源を活かした取組を進めてまいります。山科駅は市営地下鉄,京阪電鉄,JRの3路線が走る「京都の東の玄関口」であります。この山科駅前の地下道をリニューアルし,乗降客を商業施設へ誘導し,更なるにぎわい創出につなげます。16ページを御覧ください。低炭素・循環型まちづくりについては,本年4月に本市で開催される,IPCC気候変動に関する政府間パネル総会に合わせて,シンポジウムを行います。また,ごみ量については,市民の皆様にご協力いただいたおかげで,ピーク時の82万トンから半減の41万トンまで減量できました。一方,レジ袋等の使い捨てプラスチックの削減については,世界的にも課題となっております。 市内のスーパー等では,レジ袋有料化にはしっかりと取り組んでまいりましたが,まだ有料化が進んでいないコンビニ等への実施拡大に向けた連携・支援や,市民の皆様にマイボトルの更なる利用を呼びかけるなど,2Rについて取り組み,持続可能な循環型社会の実現を目指してまいります。また,本年10月に開設いたします南部クリーンセンター第二工場の環境学習施設においても,こうした情報も学んでいただけるように工夫し,しっかりと取り組んでまいります。

【宿泊税充当事業】

 17ページを御覧ください。ここからは,政策の垣根を超えて展開する,6分野36事業の全体像をお示ししております。30年10月に導入しました宿泊税は,31年度は税収が平年度化することにより,対前年度比23億円増の42億円を見込んでおります。これを活用し,観光課題の解消,市民生活との調和を図る取組をはじめ,市民,観光客,観光関係事業者が宿泊税の導入効果を実感できる取組を加速させてまいります。なお,一部の市バスや観光地周辺をはじめとする混雑対策には,昨年度のおよそ2倍に近い,約9億円を充当し,市民・観光客の快適性を更に向上させてまいります。

【予算規模】

 19ページを御覧ください。ただいま御説明いたしました施策を盛り込んだ31年度予算の規模は,特別会計,公営企業会計も含めた全会計で1兆7,223億円,一般会計で7,944億円となります。一般会計は,国民健康保険事業特別会計への財政支援をはじめ,社会福祉関連経費が大きく伸びることにより,対前年度比で99億円の増となりました。なお,国民健康保険事業特別会計では,冒頭申し上げたとおり,府の試算に基づき,37億円という多額の赤字が見込まれますが,一般会計からの財政支援と国民健康保険事業基金の充当により補てんし,保険料率を据え置くこととしています。市バス・地下鉄事業については,市民・事業者の皆様のご理解・ご協力のもと,大きく経営状況を改善させてまいりました。お客様視点,市民目線に立ちまして74系統から84系統へと,大きく拡充しております。しかし,この84系統のうち6割は,赤字という現実であります。その中で,黒字のところで稼がせていただき,赤字のところの市民の足をしっかりと守っている仕組みであります。全国的なバス運転士,整備士の担い手不足や,軽油価格の高騰など,財政面で急激に経営の変化が起こってまいりました。市バス事業の31年度予算は,平成20年度予算以来となる5億円の赤字予算となりました。しかし,しっかりと「市民の足」を守り抜く決意のもとの予算であります。厳しい経営環境にはありますが,更なる増客,収入増,コストの点検にしっかりと取り組み,これからも「市民の足」を守り抜く決意であります。  

 次に,一般財源収入の状況でございます。来年度は,市民税法人分が30年度当初予算から18.3%増と大きな伸びが見込まれるほか,市民税個人分が8年連続の増収,固定資産税は7年連続増収と,市税は堅調な伸びが見込まれ,30年度当初予算から148億円の増となっております。一方で地方交付税等が減少することにより,一般財源収入総額は前年度から70億円の増を見込んでおります。一般財源収入は30年度当初予算からは増加いたしますが,「三位一体の改革」以降の地方交付税等の削減により,ピークであった平成12年度からは,250億円以上減少しており,引き続き厳しい状況にあります。それらに耐えるために職員1万6千人から1万3千人に削減する等の取り組みを進めてきたのですが,非常に厳しい状況が続いております。

【収支不足額の改善と特別の財源対策】

 20ページを御覧ください。予算編成前には,国民健康保険事業への財政支援をはじめとする社会福祉関連経費の増や,相次ぐ災害への対応に要する経費として,30年度の100億円に引き続き,31年度も26億円が必要となることもあり,実に369億円もの収支不足が見込まれました。こうした中にあっても,現下の課題に的確に対応するとともに,未来をしっかりと見据えた施策を進めていくため,徹底した事業見直しをはじめ,収支不足の改善に取り組みました。まず,財政構造改革の断行であります。職員数削減などによる人件費の削減,あらゆる政策分野における事業見直し,資産の有効活用により,72億円の財政効果を生み出しました。また,特別会計繰出金や公共投資事業,公債費などあらゆる歳出の精査や財源確保の取組を徹底して進めるとともに,国民健康保険事業への財政支援の財源として,財政調整基金を19億円充当することといたしました。これらの結果,収支不足額は241億円改善し,128億円となり,30年度予算の収支不足127億円とほぼ同規模となっております。冒頭申し上げたとおり,昨年の災害発生を受け,被害の復旧,被災住宅の再建支援,ブロック塀対策等に48億円の一般財源を投じたうえでの収支不足であります。この災害がなければ収支不足は100億円以下に圧縮できましたが,市民のいのちと暮らしを守ることを最優先といたしました。この財源不足128億円については,全国トップ水準の福祉や子育て・教育支援,そして市民の安心・安全をしっかりと守り,京都の未来に繋げていく先行投資を推進するため,行政改革の取組により将来の財政負担が軽減される額の範囲内で活用することができる「行政改革推進債」の発行や,「公債償還基金取崩し」による特別の財源対策を講じてまいります。

 最後に,国が返済に責任を持つ臨時財政対策債を除く実質市債残高の状況です。全会計では,実質市債残高を前年度から111億円減らし,1兆6,691億円となる見込みです。市長就任当時2兆円近くあった残高は,この10年で3,200億円,16.1%縮減することができました。一般会計については,「特別の財源対策」である公債償還基金の取崩しを実質市債残高の増として取り扱っていることから,これを含めると前年度末残高から33億円の増となります。なお,この市債残高には,昨年の災害への対応に要した市債が30年度,31年度合わせて59億円含まれていますが,(参考2)にありますとおり,私の市長就任以降,1,000億円,10.5%を縮減しております。今後とも将来世代の負担を可能な限り軽減するため,市債発行額の抑制に努めるとともに,成長戦略と財政構造改革を一体的に推進し,厳しい目標ではありますが,「特別の財源対策」からの脱却を目指してまいります。私からの説明は以上です。平成が終わり,新たな御代が始まる年度となります。世界で,環境破壊や貧困・格差,様々な課題があります。国内でも,人口減少が本格化しております。国連のSDGsが示すように持続可能なまちづくりをしていくことが求められております。京都は,そうした理念が一番ふさわしい,同時に大事にしなければならないと思います。自然を敬い,共生し,その恵みで京都が持続可能な都市として今日まで発展してきた。文化の面でも,レジリエントシティの面でも,SDGsの面でも,市民の皆さんの取り組みの結果,評価が高まってきているときに,ひたすら経済成長だけを求めるのではなく,自然との共生,包摂,多様性,世界文化自由都市宣言にも掲げた理念を大事にしていかなければなりません。文化庁の移転が控える今,永久に新しい文化都市として生き生きと持続可能な歩みを続けることのスタートとなる予算と考えております。

質疑応答

(31年度予算について)

記者

 31年度予算は,市長の3期目集大成の予算ですが,特に力を入れた分野はありますか?

市長

 議会でも議論いただき策定した「はばたけ未来へ!京プラン」には,私の公約全てが入っており,これまで市民ぐるみで取り組んでまいりました。京プランに掲げる全307事業を着実に推進することが大前提であります。また,安心安全は目立たないことですが,いざという時に結果が出ます。このような大事さと,厳しさを昨年は改めて実感した1年でした。防災・減災には,巨額の経費が掛かりますが,全力を尽くしていく。さらに,子育て支援,教育,京都ならではの福祉,これらを充実させてまいります。この間,文化芸術,大学,科学技術,観光など,あらゆる面で,京都の都市格が向上したと評価を受けております。この強みを,市民生活の豊かさに繋いでいく。そうしたことにも重点を置きました。

記者

 京プランでは,平成32年度までに公債償還基金の取り崩しを解消するとしていますが,今後の見込みについてどのようにお考えか?

市長

 昨年の災害がなければ,かなり近づいてきたということも言えるわけですが,現実に災害が起こりました。そのために万全な体制を取ることは我々の責務であります。引き続き,厳しいなかでも努力していまいります。なお,市民税等が好調に推移していることは新たな強みでもあります。市民の豊かさに繋げることが,税収にも跳ね返ってくる。この王道が一番大事だと思っています。

記者

 来年度予算の宿泊税充当事業では,どの事業を重視されているのですか。

市長 

 喫緊の課題は混雑対策であります。先日,関西広域連合で,インバウンドが大阪と京都に集中しているという指摘がありました。正しくは,京都の一部に集中している。訪日外国人のうちで,京都に泊まる方は約12%であります。決して多い数字ではありません。また,その外国人宿泊客は特定の地域に泊まっています。それを分散化していくことが必要です。西京や山科,大原,伏見等の地域の方々は,観光客が来られることを望んでいます。そうした地域に,分散することで,地域の発展,経済も活性化し,観光客の満足度も高まる。これが,最重要であると思います。日帰り観光客が減って,宿泊客が増えているのは,良い傾向です。日帰りの観光客の影響で,お昼から午後6時までは混雑しますが,午後6時半以降は混雑がなくなってきます。こういう現実も,市民の方自身が実感されています。場所・時間・時期の3つの分散化に重点的に取り組んでまいります。

 もう一つは,京都の観光の一番の魅力は,京都に伝わる暮らしの美学,生き方の哲学であります。京都はレジャーランド,いわゆる観光のために出来たまちではありません。千年続く文化を継承し,新たな文化を創造する力があります。したがって,担い手の育成も重要です。これは狭い意味での観光事業者に対する取組だけでなく,子ども達が伝統文化を学ぶ,あるいは,京町家の保全継承。これらも,宿泊税の大きな目的であるということを,市民の皆様,議会にも説明しています。そうしたことに,充当していきたいと思っています。

 

記者 

 誰一人取り残さない持続可能なまちを作っていくということですが,たくさん施策がある中で,市長の思いが強いものはどれでしょうか。

市長

 どれかに絞るというのは難しいですね。保育所待機児童ゼロの継続,また,公立学校での確かな学力の保障。さらに,昨年の災害の教訓として,一人暮らしの障害者の個別の避難計画の作成。おじいちゃんやおばあちゃん,障害のある人等がどうしているか分かるよう,地域の御理解の下で情報を共有し,対応していくということをモデルケースとしてやっていきたいです。

 同時に,環境問題として,温暖化防止,さらなるごみの減量などにもしっかりと取り組んでいきます。また,歩くまち京都,公共交通優先の取組を進めていくことで,交通弱者を減らし,そして,厳しい状況になろうとしている市バスの持続可能な経営にもつなげ,三方,四方良しの取組としていきたいです。

 

記者

 宿泊税について,当初は46億円を見込んでいましたが,今回の充当額が42億円となっています。この4億円の計上の違いについて,少し見込みが違ったということでしょうか。

 

市長

 45億6千万円という見込みでしたが,観光庁の統計データを基に京都市内の延べ宿泊者人数を推計し,その推計値から見込んだものです。

 宿泊事業者については非常に協力的でしっかりと取り組んでいただいていますが,実際の宿泊者が推計より少なかったということで,来年度予算については慎重な数字を見込みとしております。

記者

 10月からの徴収が想定より少なかったということでしょうか。

市長

 想定の宿泊者数よりも少し少ないということです。大阪府が税収を10億円と見込んでおりましたが,実際は7億円台であったことが非常に話題になりましたが,そうした面では確度が高いと思っています。

 

記者

 政策の柱の3つ目で「参加と協働による,市民・地域が主役のまちづくり」とありますが,市長の思いをお聞かせください。

市長

 先日,同志社大学で実施した“みんなごと”のまちづくり推進事業「交流会」には,全国から約150人の方が参加されました。また,「まちづくり・お宝バンク」では,広く市民の皆様から,まちづくりに関する取組提案を募集していますが,そこに寄せられた提案も310件程になっています。

 その場に私も寄せていただきました。以前は,こういった場に寄せていただくと,京都市にこれをやってほしい,あれをやってほしいと要望を受けることもありましたが,今では,みんなでやろうという雰囲気になってきています。これは,先程から申しております,防災,減災についてもそうですが,京都の最大の宝は,地域力であり,文化力であり,それを支えていただいている人々の人間力です。こうしたことを改めて実感しました。そういう力を活かし切れる京都のまちづくり,京都市政であるのかということが最も大事です。

 これは,レジリエントシティにおいても言えることです。行政が取り組んでいくということではなく,市民の皆様が主体的に取り組まれることを行政がサポートする。SDGsについても,行政が取り組んできたから全国トップの評価を受けたのではなく,市民の皆様が様々な取組を進めてこられて,それを行政が応援してきました。そうしたまちづくりの原点をもう一度再認識し,それを加速化させていていきたいです。

 小さな成功を大事にして,それをネットワークとして,大きな街づくりの変化にしていく。地味ですが,そのような取組に全力を上げていきたいと思います。

 地域企業宣言がこの典型です。中小企業未来力会議を発足した時には今のような展開になるとは思っていませんでした。しかし,規模を基準とするのではなく,人と自然と地域を大切に,地域に根ざし,地域と繋がり,地域と共に継承・発展する「地域企業」であるという宣言がされ,それを応援する条例を制定していく。また,それを行政がサポート,コーディネートしていく。これが持続可能なまちづくりの根本だと思いますし,そこから人も担い手も育つと思います。

記者会見資料

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