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門川市長定例記者会見(2016年8月3日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2016年8月3日)

平成27年度決算概況(速報値)

 本日は,平成27年度の決算が固まりましたので,概況を御説明します。今後,決算の分析を行い,9月市会に歳入歳出決算を報告させていただきます。

 最初に,決算のポイントについて概略を申し上げます。1ページを御覧ください。

 実質収支につきましては,全会計で360億円の黒字,一般会計は19億円の黒字となりました。私は,福祉や教育・子育て支援,安心・安全などの施策,都市の成長戦略と,行財政改革を一体のものとして進めていくという姿勢で市政運営を推進してまいりました。その結果,本市の今と未来に責任を持つ,必要な施策はしっかりと推進しつつ,同時に行財政改革を徹底し,公債償還基金の取崩しなどの特別の財源対策を可能な限り圧縮したうえで,27年度決算におきまして前年度と同水準の黒字を確保することができました。

 ポイントを3点御説明いたします。

 1点目ですが,市民の皆様とともに描いた京都の未来像の実現に向けまして,「はばたけ未来へ!京プラン」実施計画第1ステージの総仕上げを図る年でありましたが,プランで掲げました260の事業を実施して,「人口減少社会」の克服,東京一極集中の打破に挑戦する成長戦略を,国の経済対策とも呼応しながら,強力に推進してまいりました。

 厳しい財政状況が続く中にあっても,都市の成長戦略,都市格の向上につながる施策には,これまでからも重点的に取り組んでまいりましたが,本市の果敢な取組は,着実に花開いております。

 我が国全体が人口減少という課題に直面する中,本市においても,永年,人口が減少しておりましたが,「住みたいまち,子育てしたいまち,働きたいまち」としての魅力を向上させるあらゆる取組が結実し,この5年間で人口が若干でありますが,増加に転じました。

 また,本市では,昨今の地方創生の流れを先取りしまして,平成15年度から「京都創生」を掲げて取組を進めてまいりました。「京都市民ができることはまず徹底してやると同時に,国の取組なしに実現できないものは,国家戦略として国に要望していく」,という取組が京都創生でありますが,その後,国が地方創生を大きなテーマとして取り組みを始め,京都市民の永年の悲願ともいうべき,文化庁の全面的な京都への移転が決定しました。

 これを機に,京都に伝わる日本の文化の力によって全国における地方創生を推進し,そして世界に貢献する,文化首都・京都の一層の飛躍を目指していきたいと考えております。

 京都の強みを活かした経済活性化としては,東京オリンピック・パラリンピック,ワールドマスターズゲームズなどを見据えた観光政策を推進してまいります。また,オリンピックの前年に開催されますラグビーワールドカップですが,その抽選会が,イギリス,アイスランド以外の国で初めてとなる,京都で来年5月に開催されるという英断が下されました。こうしたことをしっかりと活かしていきたいと思います。

 観光面も順調であります。観光客数は過去最高となる5,684万人,そして1兆円を目標として取り組んでいる観光消費額は9,704億円と,こちらも過去最高を大きく更新しました。

 経済活性化とともに,子育て環境の充実にも力を注ぎ,3年連続の保育所等待機児童ゼロを達成することができました。就学前児童に占める利用児童数の割合は,過去最高の46.5%と政令指定都市平均(33.8%)を12.7ポイント上回ります。人口100万人を超える都市で最も保育所に入りやすい都市になっております。

 2ページを御覧ください。2点目として,こうした都市の成長戦略を進める一方で,市民の皆様の御理解・御協力の下,市税等の徴収率向上の取組や徹底した行財政改革に,しっかりと取り組んでまいりました。

 市税徴収率は98.3%と,4年連続で過去最高を更新し,介護保険料や保育所保育料,市営住宅の家賃徴収率についても,過去最高を更新することができました。また,「子どもや孫の世代に過度な負担を残さない」という信念のもとに,実質市債残高を着実に縮減いたしました。

 3点目として,地下鉄事業の黒字計上,そして,連結ベースでの財政健全化も加速させました。市バス,地下鉄を合わせた1日当たりのお客様の数は,前年度から2万5千人増加して初めて70万人を突破し,経常損益は地下鉄も含めて両事業とも黒字となりました。特に地下鉄は,一般会計からの補助金を繰り入れたうえではありますが,昭和56年の開業年度以来34年ぶりの黒字となったものであります。

 しかしながら,地下鉄事業そのものは,依然として309億円もの累積資金不足が残っており,また,企業債等の残高も3,911億円にのぼるなど,引き続き経営健全化の取組が重要であります。

 以上のように,成長戦略と行財政改革を推進し,黒字を確保しておりますが,依然として本市財政が,「特別の財源対策」に依存せざるを得ない厳しい状況に置かれていることに変わりはありません。

 なぜ本市が,今なおそのような厳しい財政状況にあるのか,後ほど詳しく御説明いたしますが,今回の決算で決して気を緩めることなく,今一度,市役所と市民の皆様が本市の財政状況等につきまして,危機感を共有しなければならないと,冒頭に強く申し上げておきたいと思います。「京都はまちが活気づいていますね」「税収も伸びているんでしょうね」と言われますが,決して,そういう状況ではありません。

 3ページを御覧ください。まず全会計の連結実質収支でございます。市バス・地下鉄の収支改善などにより,360億円の黒字となっています。また一般会計は,市税等の徴収率向上の取組や,徹底した行財政改革を推進したこと,予算執行における効率的な事業執行などにより,実質収支は前年度と同水準の19億円の黒字を確保しました。

 黒字額は前年度から縮小しておりますが,自治体の使命は民間企業のように黒字を積み上げることではありません。市民の皆様が,安心・安全に暮らし,豊かさを実感できる社会の実現のために,必要な施策をしっかりと推進しながら,持続可能な財政運営のために黒字を計上し,翌年度以降の施策推進のための財源を確保する。この両立を実現できた決算であると考えております。

 4ページを御覧ください。ここから,今回の決算に至った要因について御説明します。まず,市税等徴収率の向上と市税収入額の推移でございます。市税収入確保推進本部の下,職員が一丸となって取組を推進した市税をはじめ,徴収率の向上については,歳入の確保はもとより,市民負担の公平性確保のため,市民の皆様の御理解を得て,全庁を挙げて取り組んでまいりました。

 市税,介護保険料,保育所保育料,市営住宅家賃の徴収率は全て過去最高を達成しました。また,国民健康保険料も過去最高となった26年度と同様に高い徴収率を維持しており,滞納繰越分を含めた全体では過去最高を達成しました。

 市税の徴収率については,かつて平成6年度は政令指定都市最下位でありました。前市長の桝本市政から現在に至るまで努力を積み重ねてきた結果,今は政令指定都市トップ水準に達し,この徴収率の向上によって,単年度で165億円の増収効果となっております。財政健全化に,また,福祉や子育て支援などに,財源として,しっかりと活かされております。ちなみに,市税徴収率は,今年,0.4ポイント上がりました。これは,税収に直しますと,10億4千万円に相当します。

 次に,27年度の市税収入については,徴収率の向上もあって,前年度から9億円の増となる2,530億円と,3年連続の増収となりましたが,これはリーマンショック前の水準である20年度の2,664億円をまだ134億円下回っており,下げ止まったままの状態が続いている厳しい状況でございます。

 5ページを御覧ください。次に,行財政改革の取組です。財政健全化のために全職員の協力を得ながら,最大限の努力を行った職員数,人件費の削減でございます。社会福祉や防災・安全等,必要な部署には必要な人員をしっかりと配置する一方,業務の効率化や「民間にできることは民間に」を基本とした委託化・民営化などにより,少ない人数で効率的な仕事ができるメリハリのある職員体制を構築し,職員数の削減を推進してきました。

 私が市長に就任した平成19年度以降,職員数については,約3千人削減,人件費は318億円削減しました。その結果,28年度の職員数は13,466人で,ピーク時の昭和55年度(20,095人)と比較しますと,3分の2の体制となっています。

 6ページを御覧ください。次に,市債残高の縮減でございます。「子どもや孫の世代にこれ以上借金を増やしてはならない」という信念の下,私が市長就任後直ちに,平成21年に設置した財政改革有識者会議において,公開の下に,徹底的に御議論いただきました。その提言に基づき,国が返済に責任を持つ臨時財政対策債を除く実質市債残高について,京プラン実施計画で目標を定め,縮減に取り組んでまいりました。27年度も,前年度の残高から,全会計では359億円,一般会計では132億円を縮減し,生産年齢人口1人当たりの残高も着実に縮減しています。生産年齢人口が減っていくと同じように減らしていくというのが大方針でございます。

 次に,臨時財政対策債についてです。臨時財政対策債は,すべての自治体が標準的な行政サービスを行うために必要な財源を保障する仕組みである地方交付税の代わりに,国が機械的に配分するもので,本市において発行額をコントロールできません。また,平成22年度からは,それまでは,人口規模に基づいて配分されてきた算定方式が財政力指数に応じた方式に変更されました。

 京都市財政は厳しい状況にありますが,一般市町村と比べますと財政力指数が高いということになっています。グラフにありますように,近年,臨時財政対策債の残高が累増していますが,これを含めても,全会計の市債残高は横ばいで推移しています。

 7ページを御覧ください。ここからは,公営企業の経営健全化であります。まず,市バス,地下鉄についてです。私が市長に就任した当初,この二つが大きな課題でありました。市民の皆様の御理解と御協力の下,観光振興の取組や人と公共交通優先の「歩いて楽しいまち・京都」の取組などが浸透したことにより,両事業とも経営健全化は大きく前進してまいりました。

 市バスについては,利用状況に応じた路線・ダイヤの充実,そして,徹底的に市民目線に立った利便性の向上の取組や,歩いて楽しいまち京都,公共交通優先の取組が浸透し,27年度の1日当たり旅客数は,前年度から1万2千人と2年連続で1万人を上回る増客を実現し,35万3千人となりました。この6年間では4万2千人の増となっています。この結果,14年度には50億円の単年度の経常赤字を計上しておりましたが,翌15年度以降,連続して黒字を確保し,27年度も24億円の経常黒字となり,累積の利益剰余金は34億円となりました。

 バス事業の経営は全国的にも厳しい状況であります。本市においては,赤字路線をしっかりと守りつつ,74であった系統数を83へと拡充するなど,攻めの経営を推進しております。今後も,市民の皆様と心を繋いで,一層の経営の効率化を図るとともに,お客様に喜んでいただけるよう,更なる利便性の向上に努めてまいります。

 8ページを御覧ください。次に,地下鉄についてです。1日当たりの旅客数については,27年度も,多くの市民の皆様の御理解をいただきまして,「地下鉄5万人増客推進本部」による全庁を挙げたあらゆる増客の取組を推進してきた効果もあり,前年度から1万3千人の大幅増,37万2千人となりました。この6年間では,4万5千人の増であります。経営健全化計画で30年度までに達成することとしていた目標の37万5千人まで,あと3千人と迫ってまいりました。計画発表の時に,外部監査の方から絵空事と言われた目標でしたが,ここまで前倒して実現してまいりました。この結果,一般会計からの補助金を繰り入れたうえではありますが,18年度には1日当たり4,600万円の赤字だった経常損益は,1日当たり200万円の黒字となりました。また,経営の健全度を示す財政健全化法上の累積資金不足はなくなり,全国の公営地下鉄事業で唯一の健全化団体からの脱却の展望が見えてまいりました。

 しかし,これは財政健全化法における資金不足比率を計算する数字であり,実際の資金不足額は,依然として309億円の多額にのぼっております。また,資金不足比率につきましても,一般会計から73億円もの経営健全化出資金を繰り入れた上での数値であり,この繰り入れなしで,28年度以降継続して20%を下回る経営状態には,まだ改善されておりません。その見通しが立つまで,引き続き,経営健全化団体として,取組を推進してまいります。

 地下鉄事業は,20年度のピーク時において4,922億円あった企業債等の残高を,3,911億円まで1,000億円以上,大幅に削減しておりますけれども,依然として多額の企業債を抱えており,全国一厳しい経営状況に変わりありません。将来は,大きな宝になりますが,当面は厳しい状況が続くということであります。

 引き続き,経営健全化計画に掲げた5万人増客という目標の早期達成と更なる増客に向け,市民の皆様の御理解の下,公共交通優先のまちづくりの推進,地下鉄沿線地域の活性化,安全性の確保やダイヤの増便等,更なる取組を推進するとともに,徹底したコスト削減にも取り組むなど,あらゆる努力を重ねてまいりたいと思います。

 9ページを御覧ください。次に,水道事業・公共下水道事業でございます。営業所の再編や職員数の削減など,徹底して効率的な事業運営を進めたことで,水道事業,公共下水道事業ともに黒字を確保できました。また,老朽化した水道管更新のスピードアップ,雨に強いまちづくりに向けた雨水幹線の整備など,中期経営プランに掲げる取組を着実に推進してまいりました。

 水需要の減少傾向が続いております。ピーク時との水量の比較では水道が22%の減,下水道が18%の減となる厳しい経営環境ではありますが,今後も,中期経営プランに基づき,更なる経営の効率化・財政基盤の強化を図るとともに,老朽管の更新,浸水対策などを着実に実施し,引き続き,安心・安全で市民の皆様に信頼される水道事業・公共下水道事業を推進してまいります。

 なお,京都市の上下水道局は,上下水道を守ることが大きな使命でありますが,それに加えまして,世界の観光都市として,琵琶湖疏水の通船の復活,琵琶湖疏水周辺の桜並木の保全など,観光の振興あるいは景観の保全などにも,力を尽くしております。

 10ページを御覧ください。ここまで御説明したとおり,本市財政は着実に財政健全化の道を歩んでおりますが,決して安心できる状況ではございません。ここに記載した6つの要因によって,今なお厳しい状況に置かれています。

 1点目は,市民一人当たりの市税収入が,京都の都市特性により,他の政令指定都市と比較して少ないことであります。

 2点目は,全国トップ水準の福祉・教育・子育て支援,また,安心・安全の取組をはじめとして,京都の今と未来に必要な,本市独自の取組を,積極的に推進していることであります。

 3点目は,市税収入が少ない一つの要因として,観光の活況が税収増に繋がっていないという事実があります。

 4点目は,道府県に代わって様々な事務を行っている政令指定都市の責任・権限に応じた税制上の措置が極めて不十分であることがあります。これは国の制度上の問題であります。

 5点目は,こうした状況にも関わらず,地方交付税が削減され,必要額が確保されていないことであります。

 最後に,6点目は,こうした要因に加え,全国共通の課題として,高齢化の進展などもあり,一般財源収入が伸びない中で,社会福祉関連経費が右肩上がりで増加していることでございます。

 順に御説明いたします。11ページを御覧ください。

 まず,市民1人当たりの市税収入でございますが,まちづくりの大きな力である大学生が多いことや,京都の誇りである風情豊かな町並みを彩る京町家などの古い木造家屋が多いことは,京都のまちのすばらしい魅力であります。また,風致地区,市街化調整区域をしっかりと守っているところです。しかし,こうしたことが,税収面では逆に弱みとなっています。

 大阪市と比較しますと,京都市の面積は大阪市の約4倍でありますから,その市域の面積に応じて,消防・防災をはじめとした市民サービスの量が多くなるのは当然であります。しかし,市民1人当たりの市税収入は約7万4千円下回っており,大阪市よりも約3割も少ないことになります。これは京都市の人口147万人で換算すると,1,085億円も少ない計算となります。

 2点目の要因としましては,そうした中にあっても,保育所整備の推進や手厚い保育士の配置など,全国トップ水準の福祉・教育・子育て支援や,京都で暮らす,京都を訪れる全ての人々が安心・安全を実感できるまちづくり,そして歴史や文化,優れた景観をはじめとする都市の魅力を守り,高め,未来へと受け継いでいくためのあらゆる取組といった,京都の今と未来のために欠かすことのできない本市独自の施策を,積極的に推進していることがございます。

 12ページを御覧ください。3点目としまして,京都市の観光客数や観光消費額は非常に好調でございます。しかし,税の仕組上,それが必ずしも市税収入の増につながっていないことがあります。上のグラフでお示ししているとおり,法人に掛かる税率に占める市税の割合はわずか9%であり,企業業績の好調が市税収入の増につながっておらず,その多くが国や都道府県の収入増となる構造となっております。更に,法人市民税のうち観光関連の占める額は8億円,割合にして市税全体の0.3%と,ごくわずかという状況であります。

 4点目は,現在の地方税財政制度が,大都市の責任・権限に応じたものとなっていないことであります。権限と責任に応じた財政制度を構築することが我が国の使命であるはずです。しかし,本市をはじめとする指定都市は,市民の皆様に最も身近な基礎自治体であると同時に,約半世紀前に作られた制度である「事務配分の特例」として,道府県に代わって,国道・府道を管理・維持するなど,政令指定都市ならではの責任を担っております。

 例を挙げますと,京都市内の道路3,607㎞の99%,京都府道の全てと国道の7割を京都市が管理しています。政令指定都市でなければ,府県の負担となります。橋りょうにつきましても,同様で,府道・国道含めて,市内2,848橋の98%を京都市が管理しております。ところが,この大都市特例事務に対応する税制上の措置は極めて不十分であります。27年度予算に基づく概算では,本市の大都市特例事務に係る経費は144億円負担しております。これに対応する税制上の措置済額は53億円で,実に91億円が市の持ち出しになっております。こうした状況に対して,事務配分の特例に応じた大都市特例税制の創設を,国に強く求めています。

 13ページを御覧ください。5点目は,地方交付税等の削減であります。本市は市税収入が少ない分,市民サービスの維持のためには地方交付税の必要額の確保が重要であります。しかしながら,地方交付税と臨時財政対策債の合計は,ピーク時の15年度から,実に413億円の減と,この間の市税の増188億円を2倍以上,上回る状況になっております。また,地方交付税と臨時財政対策債の内訳を見ると,近年は臨時財政対策債が占める割合が増加し,27年度は44%とほぼ半分にまで上る一方,地方交付税はピーク時の12年度からは645億円も削減されて,半分以下となっている状況であります。

 臨時財政対策債の増加は,他の指定都市同様,地方財政制度の大きな課題であり,京都市会においても意見書が採択され,国に提出されています。臨時と言いながらずっと続いているという大変な問題であります。こうしたことを踏まえ,臨時財政対策債の廃止や地方交付税の必要額の確保などを,引き続き国に強く要望してまいります。

 14ページを御覧ください。最後に,社会福祉関連経費の増加傾向です。市税と一般財源収入がピーク時から大幅に減少しております。近年は下げ止まった感はありますが,回復していない状況が続く一方で,福祉・教育・子育て支援の充実,さらに,全国共通の課題であります高齢化の進展により,社会福祉関連経費は右肩上がりで増加し,この20年間で2倍以上になりました。今後も,社会福祉関連経費の増加傾向が続くことは必至であります。財政運営は一層厳しさを増しております。職員の削減,人件費の削減等で対応してきましたが,こうしたことがいつまでも続くわけではありません。抜本的な取組が必要となります。

 15ページを御覧ください。本市の財政構造はお伝えしてきましたとおりぜい弱で,必要な地方交付税も確保されないなど,依然として厳しい財政状況が続いております。こうした厳しい財政状況の中にあっても,本市は全国トップ水準の福祉・教育・子育て支援の維持・充実,そして,都市の魅力,都市格を高めていくための先行投資を行っており,その財源を確保するため,徴収率の向上や人件費の削減,事務事業の見直しなど,徹底した行財政改革を断行しております。さらに,京都府と協調して,府市合同で全国のモデルとなる効率的な施策を推進しています。

 しかし,それでもなお財源が不足し,公債償還基金の取崩しなどの「特別の財源対策」に頼らざるを得ない状況が続いております。「特別の財源対策」については,毎年度の決算において,可能な限り公債償還基金の取り崩しを回避するなど,その圧縮に努めており,27年度決算では予算計上額から33億円圧縮することができました。とはいえ,「特別の財源対策」は,いつまでも続けられるものではありません。「特別の財源対策」から脱却し,持続可能な行財政を確立するためには,更なる都市の成長戦略と財政構造改革を一層推進することが不可欠であると考えています。

 16ページを御覧ください。冒頭に申し上げましたとおり,厳しい財政状況の中でも,この間,「京都のまちが美しくなってきた」というお言葉をいただきますし,景観政策,観光人気都市,子育て環境並びに福祉の充実など,多くの取組において着実に成果が上がってきております。しかし,経済の活性化を京都のまちの隅々にまで行き渡らせ,市民の皆様に豊かさを実感していただくために,更なる努力を積み重ねていきたいと考えています。

 京プラン実施計画第2ステージでは,改革の取組を一層加速させ,同時に,決して縮み志向になることなく,「経済の活性化により,市民所得の向上や中小企業の活性化に繋げ,ひいては税収増にも繋げていく」という視点をこれまで以上に重視して,成長戦略と財政構造改革を一体的に推進してまいります。ようやく,企業の利益が出てきています。その利益を働く人の給料の増額に繋いでいくことが,国の政策として言われ始めていますが,そうしたこととも共鳴しながら,京都市の中小企業対策,また,人を育て,人を育む対策を進めていきたいと思います。

 また,「住みたい・訪れたいまち」としての京都の魅力を高めていくためには,更なる財源の確保が重要であります。これについては,明日(8月4日),検討委員会を立ち上げ,前提をつけない,幅広い議論を深めていただきたいと考えております。併せまして,国に対して,地方財政制度の改革を求めてまいりたいと考えております。

 京プラン実施計画第2ステージに掲げる財政健全化の目標であります,平成32年度の「特別の財源対策」からの脱却を目指すこと,そして,人口減少社会の克服,さらに,東京一極集中といった課題を,全国のモデルとなる取り組みによって乗り越えていきたいと思います。そして,市民の皆様に豊かさ,そして安心を実感していただくために,未来に責任を持っていきたいと思います。

質疑応答

報告案件に関する質疑

(地下鉄事業について)

記者

 地下鉄事業が開業年度以来の黒字を達成したことの要因は。また,経営健全化団体脱却に向けて今後の取組は。

市長

 市長就任時,地下鉄は1日4,600万円の赤字でした。このままでは,京都市の財政が地下鉄の赤字から崩壊していくとも指摘されました。国に対しては,経営健全化の仕組みづくりを要望するとともに,交通局を先頭に京都市職員が一丸となり,市民の皆様に御理解を求める取組を進めてまいりました。また,取組当初には,地下鉄1日5万人増客キックオフ宣言も行っていただきました。

 「地下鉄の赤字は,市民の借金でもあるが,無駄なものを作ってできた借金ではない。これを活かせば宝になる。みんなで取り組もう。」このような意気込みで,多くの市民の方々に御協力いただき,絵空事だと酷評された,「10年間で5万人の増客」という計画が6年間で実現しようとしております。駅ナカビジネスも当初は年間6千万円の収入でしたが,今では8億8千万円まで収入が上がりました。

 また,経営健全化10箇年計画では,前期5%の値上げが明記されていましたが,市民の皆様に御協力いただき,想定を超える増客となりましたので,値上げは実施しておりません。今後も値上げはせず,早期に5万人増客を実現し,更なる利用者,市民の皆様の目線に立った利便性・サービス・安心安全の向上に取り組んでまいります。

 さらに,まち全体としては,地下鉄や市バス,民間の鉄道やバスとの連携を充実し,お年寄りや障害のある方などの交通弱者,観光客にも満足していただける,歩くまち京都,公共交通優先のまちづくりを進めてまいります。

 地下鉄のトンネルは半永久的なものでありますが,60年間で償却することとしています。東西線は着工が遅れたので厳しい状況ですが,烏丸線は開通から35年が経ってようやく収支がフラットになりました。30年後には地下鉄が京都の大きな財産になっていると思いますので,それまでの間しっかりと取り組んでまいります。

 

(人員削減について)

記者

 人員削減について,これまでかなりの削減を行っており,これ以上の削減となると抜本的な取組が必要かと思うが,市長のお考えは。

市長

 人員削減については,非常に厳しい状況になってきていることは事実ですが,更なるきめ細かい検討,業務の効率化等により,「はばたけ未来へ京プラン」実施計画第2ステージでは,32年度までの5年間で,公営企業を含めて約900人の削減を目指しております。

 厳しい状況ではありますが,人員削減をはじめとする行財政改革は緩むことなく推進してまいります。

 また,市の税収という点で申しますと2点ございます。

 1点目は,安定した雇用の実現です。「観光が好調でも,市に入る税収は8億円」と説明すると驚かれます。ホテルや旅館,飲食店で働く人の給料が上がれば税収に繋がりますが,75%が非正規雇用という状況です。また,京都は,観光立国の先頭を走っていると自負していますが,このままでは日本中がこうなるのではないかと危惧しています。観光に従事する仕事を,「給料がいい」,「休暇が取れる」,「希望が持てる」の3Kにする。そのような観光立国でなければ,観光を持続可能な基幹産業にすることはできないと思います。

 今,京都市では,観光客の平準化に取り組み,春・秋の観光シーズンと夏・冬の差は,平成15年が3.6倍だったのに対して,現在では1.4倍と平準化が進んでいます。これによって通年雇用の道が開けてきております。また,従来では国の資格が必要だった通訳士について,特区制度を活用した地域限定の認定通訳士制度をつくることで,ホテルマンや仲居さん,タクシーの運転手さんが別の報酬を得られるようになっております。こうした取組を一つ一つ丁寧にやっていくことが大事であります。

 次に2点目は,都市の魅力の向上です。都市の魅力を高め,京都で学びたい,子育てしたい,働きたい,訪れたい,そんな想いを持った人たちが京都に集まることで必ず税収は増えていく。これは決して絵に描いた餅ではなく,現に実現しつつあります。例えば,京都市の景観政策は,市議会の全会一致のもと10年前にスタートしました。その時には,「近隣の都市は高層マンションが増えていくのに,こんなことでは人口が減るだろう」と言われていました。しかし,今では転入人口が転出人口を上回り,人口の増加に転じています。このように理念を明確にし,ぶれずに市民の皆様と一緒に取り組んでいくことが大事だと思います。

 

報告案件以外に関する質疑

(内閣改造について)

記者

 文化庁移転に関係する文部科学大臣の人事も含め,今回の内閣改造についての評価は。

市長

 安倍総理大臣のもと,更なる経済の活性化や地方創生を推進するための改造を目指されたものだと思います。地方創生,中小企業や伝統産業をはじめとした経済の活性化,安定した雇用の実現,貧困対策,文化庁の京都移転等々待ったなしの課題が多くあります。その課題の解決に向けた取組を強力に推進していただくように,安倍総理大臣をはじめ新内閣にお願いしてまいります。

 

記者

 文部科学大臣を務められた馳氏の文化庁移転に関するこれまでの取組についてはどのようにお考えか。

市長

 馳文部科学大臣,石破地方創生担当大臣には,度々京都にお越しいただき,力強いリーダーシップのもとに,わが国の将来を懸けて地方創生の推進に取り組んでいただきました。

 そして,文化庁の京都への全面的な移転を御英断いただき,閣議決定までしていただきました。お二人には心から敬意を表し,この取組が日本全国でしっかりと実を結ぶようにオール京都で努力していきたいと思っています。

 

(新たな経済政策について)

記者

 昨日,発表された事業規模28兆円の経済政策の目玉の一つで,リニア新幹線の前倒しを国も支援していくことについて,他の経済政策も合わせて全体的にどのように評価されるか。

市長

 地方創生や経済の活性化が大きなテーマだと思います。そして,1億総活躍として,非正規の方々の処遇の改善等にも政府として力を入れるということが一貫して言われていますので期待したいと思います。東京一極集中の是正には,新幹線やリニアが大きな要因となります。したがって私どもは,大阪までの同時開業や,北陸新幹線の関西国際空港までの早期開業も含めて要望してきました。これらは必ず将来にプラスになることですので,国の財政の出動も含めて前倒しでやるという御英断について評価したいと思います。同時に,コースについては,十分な法令に基づく議論が必要であるということについて引き続き申し述べていきたいと思います。

 

(内閣改造について)

記者

 内閣改造の関係で,石破氏も馳氏も閣外に出られる可能性があるということについてどのように考えるか。

市長

 お二人が地方創生や文化庁の京都への全面的な移転について,安倍内閣における御英断に大きな役割を果たしていただいたことは高く評価し,敬意を表したいと思います。同時に,これは閣議決定されておりますので,大臣が代わることによって,その方針はいささかも変わるものではありません。したがって,新たな文部科学大臣や地方創生担当大臣,文部科学省や文化庁としっかりと協議し,全国の方が文化庁を京都に全面的に移転してよかったと実感していただける取組を府市協調で,また経済界等と一丸となって進めていきたいと思います。

 

記者

 8月の協議に向けて,新たな大臣に期待することは。

市長

 私どもは,文化庁の京都移転に伴い,文化のすそ野を広げることや,文化庁の機能を強化すること,それから地方創生待ったなしで先行実施をしていくこと,さらには京都のまち全体を文化庁のサテライトのような形で協力していきたいということを国に申しておりました。文化庁の宮田新長官も馳大臣も,来年度の概算要求に,文化庁の京都への全面的な移転を見据えて,先行実施の構想を打ち出しておられますので,大いに期待しております。そして,これを我が国の最大の課題である地方創生を牽引し,モデルとなるような取組に進化させていくために頑張っていきたいと思います。

 

記者会見資料

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