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京都市消防局

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平成28年度 消防職員意見発表会 優秀賞

ページ番号213757

2017年2月1日


 私が目指すのは,国民全員が消防士になることです。

 みんなに消防士の意識があれば,火災件数は減少するでしょう。ただし,火災の怖さは件数ではありません。怖さの本質は,急速に拡大することです。最初はコップ一杯で消せる火災でも,タイミングを逃せば大きく拡大し,周りへ延焼し,家族や隣近所の命まで奪ってしまいます。

 つまり,初期消火が重要だということです。初期消火・・・,そう聞いて誰もが思い浮かべるのは消火器でしょう。一般住宅にもあるので認知度も高く,また,事業所や地域で訓練する機会もあるので,使える人は多いと思います。

 しかし,屋内消火栓はどうでしょうか。1分間に60リットルから130リットルを放水でき,消火器とは桁違いの威力があります。小中学校など,ある程度の規模になれば,義務で付いているので,一般の人でも目にする機会は多くあるはずです。

 しかし,これを使える人は非常に少ない。せっかく,設置されていても,事業所の訓練でさえ,なかなか使用されません。また,私の両親や友人は「消防隊が使うもんなんやろ。」という答えです。

 市民が使うために設置されていて,強力な「武器」なのに使えない,いや,使うものだと思っていない。

 だからこそ私は,まずは屋内消火栓,これを使える人を増やしたいと思います。

 ある種の強制力を持って学べる場ということで考えると,防火管理者の実技訓練をもっと充実することが考えられます。しかし,これが実現したとしても,防火管理者とせいぜいその周りの人に効果があるだけで,国民全員は教育できません。それなら,普通救命講習で,実践的な訓練を行っているのと同様に,私たち消防が,屋内消火栓の実技講習を開くという手も考えられます。しかし効果はあると思いますが,わざわざ消防署まで足を運んでもらえるかというと,疑問です。なぜなら今,救急事案と比較して,火災の発生と恐怖を,市民は真剣に考えてくれない,とこれまでの経験から感じるからです。考えてみれば,だから今まで,こういった強力な設備がほとんど使われることなく,存在してしまったのではないだろうか。

 残る手はひとつでしょう。それは,義務教育です。たいていの小中学校には,屋内消火栓があるので,家庭にはない設備について,教育することができます。ただし,この実技訓練を教職員にお願いするのは,安全面でも,無理があるので,私たちが指導しましょう。小中学校の消防訓練は,ほぼ避難訓練であり,消火器の訓練を付加する程度です。ほとんどの場合,30分ほど余ります。この時間を利用し,安全を考えて,小学校高学年以上の児童に,屋内消火栓のホースの延長や実放水訓練を行うのです。

 義務教育年齢の子供たちを教育しておけば,2,30年もすれば平気で屋内消火栓を使える大人が大多数となります。このような能力を持った人は,意識において消防士に近い存在です。その結果,最初に言ったとおり,火災の発生すら減少するかもしれない。

 さてしかし,世の中は自動化への流れを加速させています。消防用設備でいえばスプリンクラー。安全の観点から言って理想的ですが,何かあれば自動で,とか,何かあったら他人が,という流れだけでいいのかと疑問を持ちます。それは,何があっても自分では何もしない,そんな世界を準備してしまうのではないか,と感じるからです。

 デパートで買い物をしているときに,火災が発生しました。拡大中です。居合わせた人があっという間に屋内消火栓で消火しました。義務教育期間に屋内消火栓が使えるように訓練を。それは,昨今失われがちな,自分が安全の主体者であるという意識を復活させるきっかけになると思います。まずは屋内消火栓。国民全員が初期消火のできる消防士。これは社会にとって大きなプラスになる,私はこう考えます。
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電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195