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京都市消防局

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平成29年1月号 救急の窓

ページ番号212811

2017年1月8日


 救急課では,12月上旬の3日間で京都市消防学校において,平成28年度後期救急業務指導医師研修を消防救助課と一部合同で開催しました。この研修は,当局の救急業務指導医師である京都第一赤十字病院の髙階謙一郎医師を講師として,市内31隊の救急隊長,隊員を対象とし,年に2回開催している研修です。

 今回は,近年の救急救助業務の高度化に伴い必要とされる外傷処置について,髙階医師の講義や事例検討,処置訓練等を行いました。

 ここで外傷処置について少し説明したいと思います。

 日本の外傷処置は,平成13年度の全国の救命救急センターに対する調査で,適切な対応によって死を回避できたと推測される,いわゆる「防ぎえた外傷死」(preventable trauma death:PTD))の割合が高く,その要因として,地域間や施設間の格差が問題視されました。これらを受けて,日本外傷学会では,外傷に対する病院前医療の標準化を提言し,平成15年には外傷病院前救護の向上を目的にJPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)協議会を発足し,外傷処置のコース教育を全国的に展開して外傷病院前救護の標準化を推進しています。

 消防機関では,交通事故や高所からの転落など,いわゆる高エネルギー外傷と呼ばれる現場で,外傷の病院前における救出救護活動を行っています。救急隊や救助隊が,連携して適切な活動を行うことによって,「防ぎえた外傷死」を減少させることが可能となります。

 特に,阪神・淡路大震災の際に注目された挫滅症候群(クラッシュシンドローム)が疑われる現場では,救出者の強固なチームワークが傷病者の予後を左右します。

 挫滅症候群(クラッシュシンドローム)とは,重量物等で四肢が長時間圧迫を受けた場合や,窮屈な肢位を強いられた場合に生じる骨格筋損傷(横紋筋融解症)により発生した細胞逸脱物質が,重量物等の開放で血流が全身を循環することにより,ショックや腎不全などさまざまな全身症状が現れる外傷性疾患です。最悪の場合,心室細動(VF)などから死に至るケースも多く,未然に防ぐためには,重量物等の開放前に静脈路確保(点滴)の処置を実施し,たくさんの輸液を行うとともに,除細動器(AED)を装着しておく必要があります。

 「心肺機能停止前の静脈路確保及び輸液」は,当局では平成26年10月から,同症候群が疑われる傷病者で15歳以上であれば,「心肺機能停止前の静脈路確保及び輸液」の資格を持った救急救命士も行うことができます。

 救急隊は,事故概要や傷病者の観察結果から本症例を疑い,心電図をはじめ継続した観察が重要となります。

 救助事故現場では,要救助者救出のため,要救助者の容態や現場状況に応じた救助活動方針を決定し,救出活動が行われます。

 救急隊と救助隊の役割は違いますが,負傷者を迅速に救出し,後遺症なく社会復帰させるという目的は同じです。それぞれの考えや活動をお互いに理解し,救急隊や救助隊だけでなく,その現場へ出動したすべての隊の強固なチームワークがなければ,その目的を達成させることはできません。

 今回の研修では,現場活動における各隊の連携に活かそうと,事例を挙げて検討会を行いました。その内容は,重量物で挟まれた者を含む複数の負傷者がいるとの想定で,救急隊と救助隊がお互いの活動内容とそれぞれの役割について確認し,負傷者の容態を悪化させることなく救出する方法について,活発な意見交換が行われました。更に,検討会の想定と同じ状況を再現した訓練では,救急隊と救助隊が,それぞれの役割を認識して連携した活動を行うとともに,医師を現場に要請した際の医療との連携も行いました。


 受講者からは,「救助隊の配置されていない所属では,合同で連携訓練を行う機会が少ないため,今回の研修は良い経験となった。」といった声や,「現場では時々顔を合わせるが,今回ほど意見交換したことはなかった。」といった声など,今後の現場活動の更なる向上が期待できる貴重な意見もあり,合同研修の成果があったと考えます。

 救急課では,今後も集合教育の場を活用し,災害現場で活動する各隊の連携強化につながる研修を実施するとともに,受講した者が研修で得た知識や技術,経験を各所属にフィードバックすることによって,部隊を越えた連携のネットワークが更に広がることを期待しています。

 そして,「防ぎえた外傷死」を減少させる目的にとどまることなく,多種多様化する災害現場への対応能力の向上に貢献できる研修を行っていきます。
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京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195